(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】水産物流通管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/08 20120101AFI20230217BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20230217BHJP
【FI】
G06Q30/08
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2019155389
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2021-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 チューリップテレビ 直撃!とやま流ビジネス戦略(平成31年3月30日放送)
(73)【特許権者】
【識別番号】519312717
【氏名又は名称】有限会社魚河岸
(73)【特許権者】
【識別番号】501335841
【氏名又は名称】株式会社エム・ソフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広島 順三
(72)【発明者】
【氏名】田窪 三紀夫
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-175441(JP,A)
【文献】特開2002-109288(JP,A)
【文献】特開2018-206207(JP,A)
【文献】特開2002-312630(JP,A)
【文献】特開2006-114016(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0086810(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0170265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通基盤を経由して水産物流通管理を行う水産物流通管理システムであり、競りにおける、競売対象の情報を有する競売データを生成又は更新し保持する競売データ管理部と、発注元が発注した、発注対象の情報を有する発注データを生成又は更新し保持する発注データ管理部と、当該競売データ管理部及び当該発注データ管理部で保持される情報に基づき、競売対象毎に、買付申込の適否を判断するとともに、買付申込の適合を示す情報を有する適合データを生成し保持する適合データ管理部と、競売対象に対して買付申込された結果である、売買成立可否と、売買成立した場合の売買成立対象の情報を有する成立データを生成又は更新し保持する成立データ管理部を備えるデータベース
部を有
し、当該データベース部の動作は、現実に行われている物理的な競りと同時進行可能であって、当該物理的な競りには認識部が備えられており、当該認識部は、マイク等の収音、又はビデオカメラ等の録画可能な機器群から構成され、物理的な競りの様子を自動認識し、認識データとして生成するものであり、当該認識データは、データベース部の認識データ受信部に対して入力され、前記競売データ管理部は、前記認識データに基づき、前記競売データを生成又は更新し保持可能であることを特徴とする水産物流通管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水産物流通管理システムであり、前記適合データ管理部は、買付申込の適合が判断された競売対象が存在するとき、適合が判断された買付申込について、買付申込の実行を指示するデータである、指示データを生成して、模擬部に対して指示データを出力し、模擬部は、入力された指示データに基づき、適合が判断された買付申込について、買付申込を実行することを特徴とする水産物流通管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の水産物流通管理システムであり、前記発注データ管理部は、発
注受信部が生成する、発注対象の情報を有する受信データに基づき、発注データを生成又は更新し保持することを特徴とする水産物流通管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の水産物流通管理システムであり、前記水産物流通管理システムは、前記の、競売対象と、発注対象と、売買成立対象のいずれか一つ以上の情報が含まれる情報を有する伝票データを、電子データ又は/及び紙面として自動生成又は/及び自動更新する伝票データ管理部を有することを特徴とする水産物流通管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物の流通を管理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水産業は、漁獲高減少や漁業者の高齢化、魚価の低迷といった問題を抱えており、水産庁では水産政策改革のため、2017年4月に「水産基本計画」において、流通コストの削減等を課題として挙げている。また、水産物が末端消費者に届くまでに、複雑な流通経路を経由しているため、生産者価格と小売価格の乖離が非常に大きくなっており、よって、産地直送等の水産業に関連したビジネスへの需要が高まっている。
【0003】
特許文献1では、人工知能を活用し、漁獲物を識別して履歴を追跡可能とする漁獲物識別システム、漁獲物の品質管理等をシステム化する漁獲物管理システム、及び漁獲物の物流等をシステム化する漁獲物物流システムが開示されている。また、特許文献2では、ネットワークを介して商取引する電子商取引システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6401411号公報
【文献】特開平10-261026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係るシステムは、漁獲物の個別認識によるブランド化、鮮度低下の抑制、漁港間の情報共有(ただし統計的な漁獲物の品質予測を意図した情報共有)、及び、食の安全のための漁獲物の流通のトレース実現を目的としているため、当該システムでは、前述した、流通コストの削減や、水産業に関連したビジネスの活性化の効果は奏しない。また、特許文献2に係るシステムは、スーパー等において販売する商品の調達に際する取引を想定したものであり、商品の発注方法や、取引に際する交渉等は、水産業における競り等に比べて単純なため、単に当該システムを水産物の流通管理に用いるのみでは、前述した、流通コストの削減や、水産業に関連したビジネスの活性化の効果は期待できない。加えて、水産業における競りや仲卸といった、水産物の流通経路における人的作業の発生箇所は、各々の歴史や文化があり、IT化が受け入れ難い状況にある。
【0006】
すなわち、水産業においては次の(1)、(2)、(3)の課題が解決されていない。(1)流通コストの削減、(2)産地直送等といった水産業に関連したビジネスの活性化、(3)競りや仲卸といった流通経路における各箇所が有する歴史や文化に迎合したIT化。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、水産業における競りや仲卸といった、水産物の流通経路における人的作業の発生箇所に受け入れられやすく、かつ、当該各作業の利便化及び円滑化をすることで、水産業における流通コストを削減し、そして、水産業に関わるビジネスの活性化に寄与するシステムの提供を目的とする。特に、従来手作業や紙媒体で行われている、競りや仲卸が有する情報を電子データ化し、さらに、当該各情報は共通基盤を経由してやりとり可能として、物理的な移動や情報共有の作業等を不要にし、水産業における流通コストを削減させる。また、大規模なシステム導入を必要とせずに前記共通基盤を利用可能とし、末端消費者における本発明のシステムの利用も容易化することで、産地直送に加え、国内のみならず、国内外における販路や販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化へも寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る水産物流通管理システムは、共通基盤を経由して水産物流通管理を行うシステムであり、競りにおける、競売対象の水産物種、産地、価格及び量等の情報を有する競売データを生成又は更新し保持する競売データ管理部と、発注元が発注した、発注対象の水産物種、産地、目安価格及び目安量等の情報を有する発注データを生成又は更新し保持する発注データ管理部と、当該競売データ管理部及び当該発注データ管理部で保持される情報に基づき、競売対象毎に、買付申込の適否を判断するとともに、買付申込の適合を示す情報を有する適合データを生成し保持する適合データ管理部と、競売対象に対して買付申込された結果である、売買成立可否と、売買成立した場合の売買成立対象の水産物種、産地、価格及び量等の情報を有する成立データを生成又は更新し保持する成立データ管理部を備えるデータベース部を有し、データベース部の動作は、現実に行われている物理的な競りと同時進行可能であって、物理的な競りには認識部が備えられており、認識部は、マイク等の収音、又はビデオカメラ等の録画可能な機器群から構成され、物理的な競りの様子を自動認識し、認識データとして生成するものであり、認識データは、データベース部の認識データ受信部に対して入力され、競売データ管理部は、認識データに基づき、競売データを生成又は更新し保持可能である。
【0010】
本発明の請求項2に係るシステムは、請求項1のシステムにおいて、さらに、模擬部を備え、前記適合データ管理部は、前記適合データにおいて、買付申込の適合が判断された競売対象が存在するとき、適合が判断された買付申込について、買付申込の実行を指示するデータである、指示データを生成して、模擬部に対して指示データを出力し、模擬部は、入力された指示データに基づき、適合が判断された買付申込について、買付申込を実行する。
【0011】
本発明の請求項3に係るシステムは、請求項1のシステムにおいて、さらに、発注受信部を備え、前記発注データ管理部は、発注受信部が生成する、発注対象の情報を有する受信データに基づき、発注データを生成又は更新し保持する。
【0012】
本発明の請求項4に係るシステムは、請求項1のシステムにおいて、さらに、伝票データ管理部を備え、競売対象と、発注対象と、売買成立対象のいずれか一つ以上の情報が含まれる情報を有する
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、水産物の競りや仲卸といった、水産物の流通経路における作業が、共通基盤である本発明のシステムのデータベース部を用いて実行されるので、各作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。特に、従来手作業や紙媒体で行われている、発注や買付申込等の情報が電子データ化でき、さらに、各情報は当該データベース部経由でやりとりが可能であり、各情報は配送や決済においても活用でき、物理的な移動や情報共有の作業等が不要なので、水産業全体における流通コストを削減できる。また、データベース部に接続できさえすれば、利用者に特別なスキルは必要なく、大規模なシステム導入を必要としないので、末端消費者や、国内のみならず、国外においても本発明の水産物流通管理システムを容易に利用できるため、産地直送に加え、国内外における販路及び販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化にも寄与できる。
また、現実に行われている物理的な競りと同時進行可能であり、物理的な競りに具備された認識部から出力されるデータである認識データによって、競売データ管理部において競売データを自動生成及び自動更新できるので、競りにおける作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、適合データ管理部が生成する指示データに従い、模擬部は買付申込を実行するので、競りにおける作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。また、模擬部のみが競りの買付申込の仕方に合わせて、例えば音声を発したり、買付申込の動作をできるようにしておけばよいので、どのような競りの文化であっても、自動的に買付申込が実行でき、汎用性に優れる。
【0016】
請求項3の発明によれば、発注受信部が受信した情報に基づき、発注データ管理部において発注データを自動生成及び自動更新できるので、発注受信部のみが発注元の発注の仕方に合わせて、例えば発注元からの電話の音声を自動認識したり、発注対象の水産物種等の情報を認識できるようにしておけばよいので、どのような発注元の文化であっても、自動的に発注データが生成でき、汎用性に優れる。
【0017】
請求項4の発明によれば、伝票発行部において、競売対象と、発注対象と、売買成立対象のいずれか一つ以上の情報が含まれる情報を有する伝票データを、電子データ又は/及び紙面として自動生成又は/及び自動更新できるので、水産物の流通経路における作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施例における水産物流通管理システムの概要図である。
【
図2】第一実施例における水産物流通管理システムにおけるフローの図である。
【
図3】第二実施例における水産物流通管理システムの概要図である。
【
図4】第二実施例における水産物流通管理システムにおけるフローの図である。
【
図5】第三実施例における水産物流通管理システムの概要図である。
【
図6】第三実施例における水産物流通管理システムにおけるフローの図である。
【
図7】第四実施例における水産物流通管理システムの概要図である。
【
図8】第四実施例における水産物流通管理システムにおけるフローの図である。
【
図9】第五実施例における水産物流通管理システムの概要図である。
【
図10】第五実施例における水産物流通管理システムにおけるフローの図である。
【
図11】本発明の第一実施例におけるデータベース内のデータの一例である。
【
図12】本発明の第五実施例における伝票データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の水産物流通管理システムの第一実施形態の概要図を示す。
【0020】
本発明の第一実施形態の水産物流通管理システムS1は、
図1に示される通り、データベース部DB1と、本システムS1内における情報の入出力を管理するプログラムを含む、本システムS1を機能させるためのプログラムを有するプログラム部PRGと、1つ以上の情報端末TMNとを備え、データベース部DB1は、競売データ管理部10と、発注データ管理部20と、適合データ管理部30と、成立データ管理部40とを有し、データベース部DB1と、プログラム部PRGと、情報端末TMNとは、それぞれ、物理的に同じ場所に存在するときは、同一の計算機内に設けられていてもよい。データベース部DB1と、プログラム部PRGと、情報端末TMNとは、異なる計算機内に設けられていてもよく、異なる計算機内に設けられている場合は、例えばローカルネットワーク又はインターネット網に接続可能なネットワーク等の、双方向通信ネットワークを経由して接続される。また、データベース部DB1と、プログラム部PRGと、情報端末TMNとは、物理的に異なる場所に存在するときは、例えばインターネット網に接続可能なネットワーク等の、双方向通信ネットワークを経由して接続される。
【0021】
プログラム部PRGは、本発明の水産物流通管理システムS1を機能させるためのプログラムに基づいて動作するものであり、情報端末TMN毎のID管理等を常に実施し、例えば、情報端末TMNに対して本システムのためのクラウドネットワークを常に提供する。プログラム部PRGによる、本システムS1における情報の入出力の管理とは、本システムS1内の各機能部に対する情報の入力と、各機能部からの情報の出力とを管理することを含む。
【0022】
データベース部DB1は、例えばクラウドネットワークにおけるデータベースであり、各機能部に対する情報の入力と、各機能部からの情報の出力と、各機能部が保持する情報の照合とを実施するものである。本第一実施形態において、各データとは、競売データD10、発注データD20、適合データD30、及び成立データD40である。各機能部への情報の入力方法は、情報端末TMNを用いた手入力によるものでもよいし、データベース部DB1内の機能部、又は、例えば、プログラム部PRG等の、データベース部DB1外の機能部からの入力によるものでもよいし、予め設定されたプログラム実行による自動入力によるものでもよい。予め設定されたプログラム実行による自動入力とは、例えば、スケジューリング機能や、人工知能機能等を活用して、季節や天候に合った、水産物種、産地、価格、及び量等の情報を、予め記憶や、予測させる等して、季節や天候に合わせた、水産物種、産地、価格、及び量等の情報が、各機能部に自動入力されることを意味する。これらのうちふたつ以上の入力方法を併用してもよい。
【0023】
競売データD10とは、競売データ管理部10において生成又は更新され、保持されるデータであり、競りにおける、競売対象の水産物種、産地、価格、量、鮮度、及び競り状況(買付申込件数や買付申込による価格の推移等)等の情報を有する。競りにおける、競売対象の水産物種、産地、価格、量、及び競り状況等の情報は、前述の通り、手入力や自動入力等の入力方法によってデータベース部DB1に入力された情報に基づく。よって、物理的に競りが行われる一方、競売データ管理部10が保持する競売データD10が、物理的な競りでの情報に合わせて逐次更新されることで、システムS1上においても仮想的に競りが再現される。また、物理的に競りが行われなくとも、後述の発注データD20と、適合データD30と、成立データD40が逐次更新され、連動して競売データD10が逐次更新されることで、システムS1上で仮想的な競りが行われる。
図11(a)に示される競売データD10は一例であり、例えば、競りにおいてマグロ及びヒラメが取り扱われるとすると、競売データD10には、競りで取り扱われるマグロの情報を有する、競売対象F101の情報、及びヒラメの情報を有する、競売対象F102の情報が生成され、保持される。また、競売データD10には、競売対象F101,F102毎に固有のID番号の情報も生成され、保持される。
【0024】
発注データD20とは、発注データ管理部20において生成又は更新され、保持されるデータであり、水産物の発注元が発注した、発注対象の水産物種、産地、目安価格、目安量、及び鮮度等の情報と、発注元を識別する情報(識別IDや会社名、配送先住所、決済方法等)を有する。水産物の発注元とは、水産物を販売する小売り業者でも、水産物を消費する消費者でもよい。発注対象の水産物種、産地、目安価格及び目安量等の情報は、前述の通り、手入力や自動入力等の入力方法によってデータベース部DB1に入力された情報に基づく。
図11(b)に示される発注データD20は一例であり、例えば、水産物の発注元が、マグロ及びヒラメを発注したとすると、発注データD20には、発注したマグロの情報を有する発注対象F201の情報、及びヒラメの情報を有する発注対象F202の情報が生成され、保持される。また、発注データD20には、発注対象F201,F202毎に固有のID番号の情報も生成され、保持される。
【0025】
適合データ管理部30とは、競売データ管理部10が保持する競売データD10と、発注データ管理部20が保持する発注データD20とに基づき、競売対象に対する買付申込の適否を判断するものである。発注データD20が有する発注対象の情報に合致する、競売対象の情報が、競売データD10に存在するとき、買付申込の適合を示す情報を有する適合データD30が生成又は更新され、保持される。適合データD30は、情報端末TMNへ出力されてもよく、その場合、情報端末TMNの操作者は適合データD30に基づき、物理的な競りにおいて買付申込を実行してもよい。物理的な競りが行われておらず仮想的な競りのみが行われている場合は、適合データ管理部30において買付申込の適合が判断されたとき、自動的に適合データ管理部30から競売データ管理部10に対して買付申込実行を示す情報が出力され、仮想的な競りでの買付申込が実行され、そして、その買付申込の実行に基づき、競売データD10は更新及び保持されてもよい。
図11(c)に示される適合データD30は一例であり、例えば、競売データD10が有する競売対象F101の情報が、発注データD20が有する発注対象F201の情報に合致した場合、適合データD30には、競売対象F101と発注対象F201が合致し買付申込の適合が判断されたことを示す、適合対象F301の情報が生成され、保持される。また、適合データD30として、適合対象毎に固有のID番号も生成され、保持される。
【0026】
成立データD40とは、成立データ管理部40において生成、又は更新及び保持されるデータであり、物理的又は/及び仮想的な競りにおいて買付申込が行われた結果である、売買成立可否と、売買成立した場合の売買成立内容である、売買成立対象の水産物種、産地、価格、量及び鮮度等を示す情報を有する。成立データD40は、前述の手入力の入力方法によって、データベース部DB1に入力された情報に基づいて生成されてもよく、競売データ管理部10が保持する競売データD10に基づいて生成されてもよい。成立データD40が生成される際、発注データ管理部20が保持する発注データD20が参照されてもよい。
図11(d)に示される成立データD40は一例であり、例えば、競りにおいて競売対象F101に対して買付申込が行われ、売買成立した場合、成立データD40には、売買成立したことと、売買成立内容を示す、成立対象F401の情報が生成され、保持される。また、成立データD40内には、成立対象毎に固有のID番号も生成され、保持される。
【0027】
次に、本発明の第一実施形態におけるフローについて説明する。
図2に示される通り、まず、競りが開始される前のステップS111,S112として、競売データ管理部10では、競売データD10が生成されて、以降更新及び保持され、発注データ管理部20では、発注データD20が生成されて、以降更新及び保持される。競り開始後に得られる情報は、次の競り開始中のステップで更新される。競売データD10及び発注データD20が生成されるための情報は、前述の通り手入力でもよいし、競売データ管理部10及び発注データ管理部20の、内部又は/及び外部の機能による自動入力でもよい。競売データD10及び発注データD20は、例えば情報端末TMNにおいて、
図11(a)(b)に示されるような表形式で閲覧可能である。
【0028】
競り開始中のステップS121として、発注データ管理部20に発注データD20が保持されている間、適合データ管理部30は、競売データD10と発注データD20とを照合し、買付申込の適否を判断し、買付申込の実行が適合する競売対象が無いかの確認が行われる。競り開始中のステップS122として、発注データD20の発注対象F201の情報に合致する、買付申込の実行が適合する競売対象F101があったとき、前述の通り適合データD30が生成又は更新され、保持される。ただし、適合データD30の生成は、競り開始前に行われていてもよい。適合データD30は、情報端末TMNへ出力されてもよく、その場合、情報端末TMNの操作者は適合データD30に基づき、買付申込を実行してもよい。ふたつ以上の発注対象F201,F202が、同一の水産物種に関する発注を有していたとしても、発注対象F201,202は目安価格の情報も有しているので、目安価格がより高額のいずれかひとつの発注対象のみが、買付申込の実行の適合が判断され続ける。また、ふたつ以上の発注対象F201,F202が、同一の水産物種、及び、同一の目安価格の情報を有していた場合は、物理的な競りと同様に、例えば、抽選によって、買付申込の実行が許される発注対象はひとつに定まる。
【0029】
買付申込により売買が成立したとき、競り開始中のステップS123として、競売データ管理部10から、成立データ管理部40に対して、発注対象F201に基づいて競売対象F101が売買成立したことを示す情報が出力され、成立データD40が生成される。競り開始中のステップS124として、成立データD40を参照し、競売データ管理部10の競売データD10、及び、発注データ管理部20の発注データD20は更新され、成立対象F401に関連する、競売対象F101、及び、発注対象F201は、以降、適合データ管理部30に照合されないようにする。この時点で、競売対象F101の情報、及び、発注対象F201の情報は消去されてもよく、データベース部DB1内部又は外部の記憶部に格納されてもよい。記憶部は、記憶部に格納された情報に基づく統計予測等に活用されてもよい。適合データD30及び成立データD40は、例えば情報端末TMNにおいて、
図11(c)(d)に示されるような表形式で閲覧可能である。競り終了後のステップS131の、競りが終了した時点において、残存した競売対象の情報、及び発注対象の情報は消去されてもよく、データベース部DB1内部又は外部の記憶部に格納されてもよい。
【0030】
以上の本発明の第一実施形態におけるフローに基づいた、本発明のシステムが動作する一例を述べる。まず、水産物が水揚げされて、物理的な競りが行われる市場に持ち込まれる。持ち込まれた水産物であり、競りにかけられる水産物について、水産物毎すなわち競売対象F101、F102、・・・毎に、水産物種、産地、価格、量等が、データベース部DB1の競売データ管理部10に対し、仲買等によって手入力され、競売データD10が生成される(ステップS111)。一方、データベース部DB1の発注データ管理部20に対しては、発注元が発注した水産物毎すなわち発注対象F201、F202、・・・毎に、水産物種、産地、目安価格、目安量等が、仲買等により手入力され、発注データD20が生成される(ステップS112)。そして、競売データD10と発注データD20に基づき、データベース部DB1の適合データ管理部30では、買付申込の適否の判断結果である、適合データD30が生成される(ステップS121)。仲買等は、その適合データD30に基づき、発注対象F201に合致し買付申込の適合が判断された競り対象F101が、競り台にあがったとき、買付申込を実行する。買付申込により競り対象F101の売買が成立したら、仲買等が、競売データ管理部10に対し、発注対象F201に基づいて競売対象F101が売買成立したことを手入力し、その手入力によって、競売データ管理部10から、成立データ管理部40に対して、売買成立したことを示す情報が出力され、成立対象F401の情報を有する成立データD40が生成される(ステップS123)。のち、競売データ管理部10及び発注データ管理部20は、成立データD40を参照し、競売データD10及び発注データD20はそれぞれ更新され、売買成立対象F401に関連する、競売対象F101、及び発注対象F201は、以降、適合データ管理部30から参照されない(ステップS124)。ステップS111,S112,S123における手入力は、前述したように、プログラム部PRGのプログラムにより自動入力でされてもよく、手入力と自動入力が混在してもよい。
【0031】
続いて、このように構成した本発明の第一実施形態による作用効果について述べる。本システムS1によれば、水産物の競りや、発注元からの発注、仲卸の買付申込といった、水産物の流通経路における作業が、共通基盤である、本システムS1のデータベース部DB1を用いて実行されるので、各作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【0032】
特に、従来手作業や紙媒体で扱われている、発注や買付申込の情報が電子データ化でき、さらに、各情報はデータベース部DB1を用いてやりとりが可能であり、各情報は配送や決済においても活用でき、物理的な移動や作業等が不要となるので、水産業全体における流通コストを削減できる。より詳説すると、成立データ管理部40において成立データD40が生成される際、発注データ管理部20が保持する発注データD20が参照可能なので、発注元を識別する情報が参照でき、売買成立対象の配送や決済に活用でき、配送や決済等の作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【0033】
また、情報端末TMNがデータベース部DB1に接続しさえすれば、情報端末TMNの操作者には特別なスキルは必要ないので、末端消費者や、国内のみならず、国外においても本システムを容易に利用できるため、産地直送に加え、国内外における販路及び販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化にも寄与できる。
【0034】
加えて、全ての作業が自動的に行われる必要は無く、一部のみ手入力で行われてもよいので、大規模なシステムを導入することや、システム全体が従来文化への迎合することは不要なので、本システムS1を容易に利用でき、水産業に関わるビジネスの活性化に寄与できる。
【0035】
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の水産物流通管理システムS2は、基本構成は第一実施形態のシステムS1と同一だが、以下の点において相違する。第二実施形態のシステムS2は、
図3に示される通り、システムS1の各機能部に加え、認識部RCGと、認識データ受信部11とを備え、認識部RCGは、マイク等の収音機器群から構成され、物理的な競りに具備されて、競りの音声を収集し、その音声を自動認識して、認識した結果である競りの内容を示す認識データD11を生成し、認識データ受信部11に対して出力する。物理的な競りが音声ではなく、動作や札で行われるものであれば、認識部RCGは、ビデオカメラ等の機器群から構成され、競りの様子を画像として収集し、その画像を自動認識して、認識した結果である競りの内容を示す認識データD11を生成し、認識データ受信部11に対して出力する。競売データ管理部10は、認識データ受信部11に入力される認識データD11に基づき、競売データD10を生成又は更新し保持する。認識データ受信部11は、システムS2内部に有されればよく、システムS2のデータベース部DB2内部に有されても、外部に有されてもよく、競売データ管理部10内部に有されても、外部に有されてもよい。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態におけるフローについて説明する。第二実施形態におけるフローは、基本フローは第一実施形態のフローと同一だが、以下の点において相違する。第二実施形態では、
図4に示される通り、競り開始前のステップS211において、競売データ管理部10では、認識データ受信部11に入力される認識データD11に基づき競売データD10が生成されて、以降更新及び保持される。
【0037】
続いて、このように構成した本発明の第二実施形態による作用効果について述べる。第二実施形態による作用効果は、第一実施形態の作用効果に加え、競りに具備された認識部RCGから出力され認識データD11によって、競売データ管理部10において競売データD10を自動生成及び自動更新できるので、競りにおける作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。また、競りが主に声により行われるものであっても、動作で行われるものであっても、それに合わせて認識部RCGのみが適応されればよいので、汎用性に優れる。
【0038】
続いて、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態の水産物流通管理システムS3は、基本構成は第一実施形態のシステムS1と同一であるが、以下の点において相違する。第三実施形態のシステムS3は、
図5に示される通り、システムS1の各機能部に加え、模擬部RPDを備え、システムS3における適合データ管理部30は、買付申込の適合が判断されたとき、物理的又は/及び仮想的な競りにおいて買付申込の実行を指示する指示データD31を生成して、模擬部RPDに対して指示データD31を出力し、模擬部RPDは、入力された指示データD31に基づき、買付申込を実行するための動作情報を生成して、物理的又は/及び仮想的な競りにおいて買付申込を実行する。物理的な競りにおける模擬部RPDとは、競りに具備されるものであり、買付申込が声により行われるものであったら、模擬部RPDは、スピーカー等の機器群から構成され、買付申込の音声を発生させて買付申込を実行する。買付申込が動作や札で行われるものであったら、模擬部RPDは、ロボット等の機器群から構成され、買付申込の動作を模擬させて買付申込を実行する。
【0039】
次に、本発明の第三実施形態におけるフローについて説明する。第三実施形態におけるフローは、基本フローは第一実施形態のフローと同一であるが、以下の点において相違する。第三実施形態では、
図6に示される通り、競り開始中のステップS322において、適合データ管理部30では、買付申込の適合が判断されたとき、物理的又は/及び仮想的な競りにおいて買付申込の実行を指示する指示データD31を生成して、模擬部RPDに対して指示データD31を出力する。そして、模擬部RPDで買付申込が実行される。
【0040】
このように構成した本発明の第三実施形態による作用効果について述べる。第三実施形態による作用効果は、第一実施形態の作用効果に加え、適合データ管理部30が生成する指示データD31によって、模擬部RPDは買付申込が実行可能となるので、競りにおける作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。また、模擬部RPDのみが競りの買付申込の仕方に合わせて、例えば音声を発したり、買付申込の動作をできるようにしておけばよいので、どのような競りの文化であっても、自動的に買付申込が実行でき、汎用性に優れる。
【0041】
続いて、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態の水産物流通管理システムS4は、基本構成は第一実施形態のシステムS1と同一であるが、以下の点において相違する。第四実施形態のシステムS4は、
図7に示される通り、システムS1の各機能部に加え、発注元からの発注を受信する発注受信部21を備え、システムS4における発注データ管理部20は、発注受信部21から入力される受信データD21に基づき、発注データD20を生成又は更新し保持する。発注受信部21は、システムS4内部に有されればよく、システムS4のデータベース部DB4の内部に有されても、外部に有されてもよく、発注データ管理部20の内部に有されても、外部に有されてもよい。発注受信部21は、音声認識又は/及び画像認識機を有し、発注元からの発注が電話等の音声によるものならば、その音声認識結果に基づき受信データD21を生成する。発注元からの発注がメール等の文章によるものならば、その画像認識結果に基づき受信データD21を生成する。
【0042】
次に、本発明の第四実施形態におけるフローについて説明する。第四実施形態におけるフローは、基本フローは第一実施形態のフローと同一であるが、以下の点において相違する。第四実施形態では、
図8に示される通り、競り開始前のステップS412、及び競り開始中において、発注データ管理部20では、受信データD21に基づき発注データD20が生成されて、以降更新及び保持される。
【0043】
このように構成した本発明の第四実施形態による作用効果について述べる。第四実施形態による作用効果は、第一実施形態の作用効果に加え、発注受信部21により生成される受信データD21によって、発注データ管理部20において発注データD20を自動生成及び自動更新できるので、発注受信部21のみが発注元からの発注の仕方に合わせて、例えば発注元からの電話の音声を自動認識する等して、受信データD21を生成できるようにしておけばよいので、どのような発注元の文化であっても、自動的に発注データD20が生成でき、汎用性に優れる。
【0044】
続いて、本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態の水産物流通管理システムS5は、基本構成は第一実施形態のシステムS1と同一であるが、以下の点において相違する。第五実施形態のシステムS5は、
図9に示される通り、伝票データ管理部50を備え、システムS5における発注データD20、適合データD30、又は成立データD40に基づき、発注があった日時及び発注の内容、買付申込があった日時及び買付申込の実行の内容、売買が成立した日時及び売買成立した内容のいずれかひとつ以上を有する伝票データD50を、電子データ又は/及び紙面として自動生成又は/及び自動更新する。したがって、情報端末TMNが伝票を発行する際、システムS5のデータベース部DB5を利用して、電子データ又は/及び紙面として伝票が発行される。
図12に示される伝票データD50は一例であり、例えば、伝票データD50内の伝票対象F501には、伝票対象毎に固有のID番号等が生成され、保持される。
【0045】
次に、本発明の第五実施形態におけるフローについて説明する。第五実施形態におけるフローは、基本フローは第一実施形態のフローと同一であるが、以下の点において相違する。
図10に示される通り、競り開始前、競り開始中、又は競り終了後、ステップS520において、伝票データ管理部50は、発注データD20、適合データD30、又は成立データD40に基づき、伝票データD50を、電子データ又は/及び紙面として自動生成又は/及び自動更新する。伝票データD50は、例えば情報端末TMNにおいては、
図12に示されるような表形式で閲覧可能である。
【0046】
このように構成した本発明の第五実施形態による作用効果について述べる。第五実施形態による作用効果は、第一実施形態の作用効果に加え、伝票データ管理部50において、発注データD20、適合データD30、成立データD40に基づき、発注があった日時及び発注の内容、買付申込があった日時及び買付申込の実行の内容、売買が成立した日時及び売買成立した内容のいずれかひとつ以上を有する伝票データD50を、電子データ又は/及び紙面として自動生成又は/及び自動更新できるので、水産物の流通経路における作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【0047】
本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば、水産物に限らず農産物の流通管理のために利用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
S1 システム
DB1 データベース
10 競売データ管理部
20 発注データ管理部
30 適合データ管理部
40 成立データ管理部
D10 競売データ
D20 発注データ
D30 適合データ
D40 成立データ