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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
H01G4/32 540
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021542001
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018698
(87)【国際公開番号】W WO2021038970
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2019157102
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】城岸 賢
(72)【発明者】
【氏名】北村 大樹
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147687(JP,A)
【文献】特開2019-081838(JP,A)
【文献】特開2011-044682(JP,A)
【文献】特開2002-124431(JP,A)
【文献】特開2006-253280(JP,A)
【文献】特開2019-083260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
H01G 4/14
H01G 4/224
H01G 4/30
H01G 4/32
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、
前記コンデンサ素子と前記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記充填樹脂は、前記コンデンサ素子を覆う第1の充填樹脂層と、前記第1の充填樹脂層よりも前記外装ケースの開口部側に配置される第2の充填樹脂層と、を備え、
前記第1の充填樹脂層及び前記第2の充填樹脂層は同一樹脂で構成され、いずれもフィラーを含有しており、
前記第2の充填樹脂層の前記フィラーの含有率が、前記第1の充填樹脂層のうち前記第2の充填樹脂層と対向している部分の前記フィラーの含有率よりも高
前記第1の充填樹脂層の前記フィラーの含有率の平均値と、前記第2の充填樹脂層の前記フィラーの含有率とが等しく、
前記第1の充填樹脂層が、前記コンデンサ素子を完全に覆っている、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記外装ケースを構成する樹脂が液晶ポリマーである、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記樹脂フィルムが熱硬化性樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記充填樹脂が、前記第1の充填樹脂層及び前記第2の充填樹脂層の2層構造を有する、請求項1~3のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、例えば、樹脂フィルムの表面に金属蒸着膜が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を外装ケースに収納した後、該ケースに樹脂を充填し、これを硬化させることにより作製される。
【0003】
このようなフィルムコンデンサを高温高湿環境下で使用する場合、コンデンサ素子に水分が浸入すると、金属蒸着膜の導電性が失われてしまい、静電容量が低下するという問題が発生する。したがって、フィルムコンデンサには、耐湿性の向上が求められている。
【0004】
特許文献1には、金属化フィルムを巻回又は積層してなるコンデンサ素子を開口部を有するケース内に配し、前記ケース内に樹脂充填してなる金属化フィルムコンデンサにおいて、前記外装ケースの開口部側に、コンデンサ素子を覆い、コンデンサ素子と反対側面は外気に露出させた平板を配することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した一対の金属化フィルムを巻回又は積層して形成したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容した上面開口型の金属ケースと、前記金属ケースに充填された樹脂を備えたケースモールド型コンデンサにおいて、前記樹脂がフィラーを含有し、前記樹脂に対する前記フィラーの含有率が、前記金属ケースの内底面から前記金属ケースの開口面に向かって漸減することが開示されている。
【0006】
特許文献3には、コンデンサ素子と、該コンデンサ素子を収容する外装ケースと、該コンデンサ素子を被覆する第1の充填樹脂層と、第1の充填樹脂層を覆う第2の充填樹脂層とを備えたケース外装形電子部品において、第1の充填樹脂層のA硬度を80以下、第2の充填樹脂層のA硬度を90以上とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-108953号公報
【文献】特開2012-69840号公報
【文献】特開昭59-11615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、ケース開口部に遮蔽物となる平板を配することで、耐熱衝撃性及び耐湿性を向上させることができることを開示しているが、部品点数が増加し、製造コストが増加するという問題があった。
【0009】
特許文献2は、放熱性を向上させるために、ケース底部側におけるフィラーの含有率を高くすることを開示しているが、ケース開口面側におけるフィラーの含有率が低いため、開口面側から水分が浸入してしまうという問題があった。
【0010】
特許文献3は、A硬度が80以下の樹脂と、A硬度が90以上の樹脂との2種類の樹脂を併用するため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、製造コストを抑制しつつ、耐湿性に優れたフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフィルムコンデンサは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記充填樹脂は、上記コンデンサ素子を覆う第1の充填樹脂層と、上記第1の充填樹脂層よりも上記外装ケースの開口部側に配置される第2の充填樹脂層と、を備え、上記第1の充填樹脂層及び上記第2の充填樹脂層は同一樹脂で構成され、いずれもフィラーを含有しており、上記第2の充填樹脂層の上記フィラーの含有率が、上記第1の充填樹脂層のうち上記第2の充填樹脂層と対向している部分の上記フィラーの含有率よりも高い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造コストを抑制しつつ、耐湿性に優れたフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図であり、図1Bは、図1AにおけるA-A線断面図である。
図2図2Aは、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、図2Bは、図2AにおけるB-B線断面図である。
図3図3は、図2A及び図2Bに示す巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図2A及び図2Bに示す巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5A図5B及び図5Cは、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0016】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを備えるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記充填樹脂は、上記コンデンサ素子を覆う第1の充填樹脂層と、上記第1の充填樹脂層よりも上記外装ケースの開口部側に配置される第2の充填樹脂層と、を備え、上記第1の充填樹脂層及び上記第2の充填樹脂層は同一樹脂で構成され、いずれもフィラーを含有しており、上記第2の充填樹脂層の上記フィラーの含有率が、上記第1の充填樹脂層のうち上記第2の充填樹脂層と対向している部分の上記フィラーの含有率よりも高い、ことを特徴とする。
【0017】
本発明のフィルムコンデンサでは、コンデンサ素子と外装ケースとの間に充填される充填樹脂が、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層とを備え、第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層と対向している部分のフィラーの含有率よりも高い。
フィラーの含有率が高いほど、水分を遮断する特性が向上するため、外装ケースの第1の充填樹脂層よりも開口部側に、フィラー含有率のより高い第2の充填樹脂層が配置される本発明のフィルムコンデンサは、耐湿性に優れる。
さらに、本発明のフィルムコンデンサでは、第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層が同一樹脂で構成されている。そのため、樹脂種を変更することなく第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層を形成できるため、既存の生産設備をそのまま使用することができる。従って、新たな生産設備等が不要となり、製造コストを抑制することができる。
【0018】
図1Aは、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図であり、図1Bは、図1AにおけるA-A線断面図である。
図1A及び図1Bに示すフィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を内部に収納する外装ケース20と、コンデンサ素子10と外装ケース20との間に充填された充填樹脂30と、を備えている。
【0019】
コンデンサ素子10は、金属化フィルムの巻回体40の端部に第1の外部電極41及び第2の外部電極42が形成されて構成されている。第1の外部電極41にはさらに第1のリード端子51接続されており、第2の外部電極42にはさらに第2のリード端子52が接続されている。
【0020】
図1A及び図1Bに示すフィルムコンデンサ1において、外装ケース20の内部には、直方体状の空間が形成されており、外装ケース20の内面から離間しつつ、外装ケース20の内部の中央にコンデンサ素子10が配置されている。コンデンサ素子10を保持するために、コンデンサ素子10の外面と外装ケース20の内面との間には、充填樹脂30が充填されている。外装ケース20は、一端に開口部を有する有底筒状である。
充填樹脂30は、外装ケース20の内部において、外装ケース20の底面からコンデンサ素子10を覆う第1の充填樹脂層31と、第1の充填樹脂層31よりも外装ケース20の開口部側に配置される第2の充填樹脂層33とを備える。
フィルムコンデンサ1では、第1の充填樹脂層31の厚みtよりも、第2の充填樹脂層33の厚みtのほうが小さい。
【0021】
第1の充填樹脂層31及び第2の充填樹脂層33は同一樹脂で構成されており、いずれもフィラー35を含有している。
第1の充填樹脂層31においてフィラー35は外装ケース20の底面側に偏在している。
そして、第2の充填樹脂層33のフィラー35の含有率は、第1の充填樹脂層31のうち、第2の充填樹脂層33と対向している部分のフィラー35の含有率よりも大きくなっている。
【0022】
また、図1A及び図1Bに示すように、第1の充填樹脂層31におけるフィラー35の含有率は、外装ケース20の底面側から開口部側に向かって漸減している。
【0023】
なお、図1A及び図1Bに示すフィラー35は、第1の充填樹脂層31及び第2の充填樹脂層33に存在するフィラーを模式的に図示したものであり、実際の充填樹脂に含まれるフィラーの大きさや分布を反映したものではない。
【0024】
充填樹脂中のフィラーの含有率が高いほど耐湿性が高い。従って、第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層と対向している部分のフィラーの含有率よりも高くなっている本発明のフィルムコンデンサは、耐湿性に優れる。
【0025】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層と対向している部分とは、厚さ方向に10等分した第1の充填樹脂層のうち、最も外装ケースの開口部に近い部分を指す。従って、第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層と対向している部分のフィラーの含有率よりも高いかどうかは、以下の方法で確認することができる。
まず、フィルムコンデンサを外装ケースごと、充填樹脂層の厚み方向に沿って切断して、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の境界を露出させるとともに、第1の充填樹脂層の厚さを確認する。続いて、第1の充填樹脂層を厚み方向に10等分した際の外装ケースの開口部に最も近い部分及び第2の充填樹脂層の断面をSEM-EDXで撮影して、フィラーに含まれる元素を用いて元素マッピングを行う。撮影した元素マッピング画像において、第2の充填樹脂層に存在する面積あたりのフィラーの量[面積%]が、第1の充填樹脂層に存在する面積あたりのフィラーの量[面積%]よりも多ければ、第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層と対向している部分のフィラーの含有率よりも高いといえる。また、SEM-EDXに代えてマイクロスコープを用いてもよい。この場合、元素分析は行わず、マイクロスコープにより得られた拡大画像からフィラーとフィラー以外の部分を分離して、フィラーが占める面積を求める。
【0027】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の充填樹脂層におけるフィラーの含有率は、外装ケースの底面から、外装ケースの開口部側に向かって漸減していることが好ましい。
フィルムコンデンサにおいては、充填樹脂を充填してから硬化させるまでの間に、充填樹脂に含まれるフィラーが沈降してしまうことがある。この場合、充填樹脂のうち外装ケースの開口部側におけるフィラーの含有率が、外装ケースの底面側におけるフィラーの含有率よりも低くなってしまう。このような場合であっても、本発明のフィルムコンデンサでは、第1の充填樹脂層よりも外装ケースの開口部側に第2の充填樹脂層が配置されているため、ケース開口部からの水分の浸入を第2の充填樹脂層によって遮断して、充分な耐湿性を発揮することができる。
また、フィラーが沈降する場合、予め沈降を考慮してフィラーの含有率を増加させると、充填樹脂の粘度が高くなりすぎて、充填不良や気泡が発生するおそれがある。また、コンデンサ素子の周囲を覆う充填樹脂のフィラーの含有率が高くなりすぎると、充填樹脂の線膨張係数が低下してしまい、コンデンサ素子の体積変化によってコンデンサ素子の周囲を覆う充填樹脂にクラックが発生するおそれがある。
本発明のフィルムコンデンサでは、第2の充填樹脂層によってケース開口部からの水分の浸入を遮断することができるため、上述したように、フィラーの沈降を考慮してフィラーの含有率を増加させる必要がない。従って、充填不良やコンデンサ素子の周囲を覆う充填樹脂のクラックの発生を抑制しつつ、耐湿性を向上させることができる。
【0028】
(充填樹脂)
充填樹脂を構成する第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層は、同一樹脂で構成され、いずれもフィラーを含有する。
【0029】
充填樹脂としては、必要な機能に応じた樹脂を適宜選択することができる。
充填樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを使用することができ、エポキシ樹脂を含むことが望ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。
【0030】
充填樹脂には、耐湿性の向上を目的として、フィラーが添加されている。
フィラーとしては、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
シリカ粒子としては、球状シリカや破砕シリカ等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0031】
第1の充填樹脂層に含まれるフィラーと、第2の充填樹脂層に含まれるフィラーは、同一であることが好ましい。
第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層が、同一樹脂かつ同一フィラーで構成されていると、樹脂やフィラーの種類を変更することなく、同一設備を用いて第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層の両方を形成することができるため、製造コストを抑制することができる。
【0032】
本発明のフィルムコンデンサでは、第1の充填樹脂層のフィラー含有率の平均値と、第2の充填樹脂層のフィラー含有率とが等しいことがさらに好ましい。
第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層が、同一樹脂、同一フィラーで構成されており、かつ、第1の充填樹脂層のフィラーの含有率の平均値と第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が同じであると、同じ充填樹脂を用いて、第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層の両方を形成することができるため、製造コストを特に抑制することができる。
なお、第1の充填樹脂層のフィラーの含有率の平均値は、第1の充填樹脂層を厚み方向に10等分した各領域で測定したフィラーの含有率の平均値とする。
【0033】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、充填樹脂は、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の2層構造を有することが好ましいが、第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層以外の、第3の充填樹脂層をさらに備えていてもよい。
第3の充填樹脂層が配置される位置は特に限定されず、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の間であってもよく、第2の充填樹脂層のさらに開口部側であってもよい。
第3の充填樹脂層のフィラーの含有率は特に限定されず、フィラーの含有率が第2の充填樹脂層より高くてもよく、低くてもよい。また、第3の充填樹脂層はフィラーを含有していなくてもよい。
【0034】
(コンデンサ素子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子は、例えば断面長円状の柱状であり、その中心軸方向の両端に、例えば金属溶射(メタリコン)で形成した外部電極が設けられる。
【0035】
図2Aは、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、図2Bは、図2AにおけるB-B線断面図である。
図2A及び図2Bに示すコンデンサ素子10は、第1の金属化フィルム11と第2の金属化フィルム12とが積層された状態で巻回された金属化フィルムの巻回体40と、巻回体40の両端面に接続された第1の外部電極41及び第2の外部電極42と、を備えている。図2Bに示すように、第1の金属化フィルム11は、第1の樹脂フィルム13と、第1の樹脂フィルム13の表面に設けられた第1の金属層(対向電極)15とを備え、第2の金属化フィルム12は、第2の樹脂フィルム14と、第2の樹脂フィルム14の表面に設けられた第2の金属層(対向電極)16とを備えている。
【0036】
図2Bに示すように、第1の金属層15及び第2の金属層16は、第1の樹脂フィルム13又は第2の樹脂フィルム14を挟んで互いに対向している。さらに、第1の金属層15は、第1の外部電極41と電気的に接続されており、第2の金属層16は、第2の外部電極42と電気的に接続されている。
【0037】
第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14は、それぞれ異なる構成を有していてもよいが、同一の構成を有していることが望ましい。
【0038】
第1の金属層15は、第1の樹脂フィルム13の一方の面において一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように形成される。他方、第2の金属層16は、第2の樹脂フィルム14の一方の面において一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように形成される。第1の金属層15及び第2の金属層16は、例えばアルミニウム層などから構成される。
【0039】
図3は、図2A及び図2Bに示す巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2B及び図3に示すように、第1の金属層15における第1の樹脂フィルム13の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2の金属層16における第2の樹脂フィルム14の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1の樹脂フィルム13と第2の樹脂フィルム14とが互いに幅方向(図2Bでは左右方向)にずらされて積層される。図3に示すように、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14が積層された状態で巻回されることによって巻回体40aとなり、第1の金属層15及び第2の金属層16が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0040】
図2B及び図3では、第2の樹脂フィルム14が第1の樹脂フィルム13の外側になるように、かつ、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14の各々について、第1の金属層15及び第2の金属層16の各々が内方に向くように巻回されている。
【0041】
図4は、図2A及び図2Bに示す巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、図4に示す金属化フィルムの巻回体40のように、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが望ましい。
図4に示す巻回体40は、図3に示す巻回体40aを断面形状が扁平形状となるようにプレスしたものである。この場合、外装ケース内部のデッドスペースを減らすことにより、外装ケースを小型化することができるため、フィルムコンデンサ全体を小型化することができる。
【0042】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、コンデンサ素子は、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の金属化フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、金属化フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0043】
第1の外部電極41及び第2の外部電極42は、上述のようにして得られた金属化フィルムの巻回体40の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1の外部電極41は、第1の金属層15の露出端部と接触し、それによって第1の金属層15と電気的に接続される。他方、第2の外部電極42は、第2の金属層16の露出端部と接触し、それによって第2の金属層16と電気的に接続される。
【0044】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有する樹脂を主成分として含むことが望ましい。このような樹脂としては、例えば、ウレタン結合を有するウレタン樹脂、ユリア結合を有するユリア樹脂等が挙げられる。また、ウレタン結合及びユリア結合の両方を有する樹脂であってもよい。具体的には、後述する硬化性樹脂、蒸着重合膜等が挙げられる。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0045】
本明細書において、「樹脂フィルムの主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0046】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよい。硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0047】
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0048】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでいてもよい。蒸着重合膜は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0049】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが望ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0050】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、樹脂フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0051】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが望ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。第1有機材料の中では、ポリエーテルポリオールに属するフェノキシ樹脂が望ましい。
【0052】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが望ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0053】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。中でも、芳香族ポリイソシアネートが望ましく、MDIがより望ましい。
【0054】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0056】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
すなわち、本発明のフィルムコンデンサにおいて、樹脂フィルムは熱硬化性樹脂で構成されていることが好ましい。
【0057】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、高結晶性ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリルアリレート等が挙げられる。
【0058】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより望ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、5μm以下であることが望ましく、3.5μm未満であることがより望ましく、3.4μm以下であることがさらに望ましい。また、樹脂フィルムの厚みは、0.5μm以上であることが望ましい。
なお、樹脂フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0060】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層に含まれる金属の種類は特に限定されないが、金属層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれるいずれか1種を含むことが望ましい。
【0061】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層の厚みは特に限定されないが、金属層の破損を抑制する観点から、金属層の厚みは、5nm以上、40nm以下であることが望ましい。
なお、金属層の厚みは、金属化フィルムを厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0062】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、コンデンサ容量に応じてコンデンサ素子のサイズや形状が決まることから、種々のサイズのコンデンサ素子を使用することができる。
例えば、コンデンサ容量が1μF以上、150μF以下であれば、コンデンサ素子のサイズは、断面長円形状において、長円方向の長さが15mm以上65mm以下、短円方向の長さが2mm以上50mm以下、長手方向(断面の奥手前方向であって外部電極を含む)の長さが10mm以上50mm以下であることが望ましい。
この場合、外装ケースの外形は、底部の長辺が16mm以上73mm以下、底部の短辺が3mm以上58mm以下であり、外装ケースの高さが10.5mm以上50.5mm以下であることが望ましい。また、外装ケースの厚みは、0.5mm以上3mm以下であることが望ましい。
【0063】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子の体積は、外装ケースの内容積に対して30%以上、85%以下であることが望ましい。コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して85%を超えると、充填樹脂によって外装ケース及びコンデンサ素子を固定することが困難となる。一方、コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して30%未満であると、コンデンサ素子に対して外装ケースが大きくなりすぎて、フィルムコンデンサが大型になる。
【0064】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの内面とコンデンサ素子の外面との離間距離は、1mm以上、5mm以下であることが望ましく、1mm以上、2mm以下であることがより望ましい。
【0065】
(外装ケース)
本発明のフィルムコンデンサを構成する外装ケースは、例えば、一端に開口部のある有底筒状である。
【0066】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースは、金属又は合金製であってもよく、樹脂製であってもよいが、樹脂製であることが好ましい。
外装ケースを構成する樹脂組成物の種類は特に限定されないが、樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PSS)又は液晶ポリマー(LCP)を含むことが好ましい。
【0067】
外装ケースを構成する樹脂は、液晶ポリマー(LCP)を含むことが望ましい。
外装ケースを構成する樹脂が液晶ポリマー(LCP)を含むと、耐湿性に優れる。
【0068】
外装ケースを構成する樹脂に含まれるLCPとしては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基を骨格にもつLCPが挙げられる。また、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基以外にも、フェノール、フタル酸、エチレンテレフタレートなどの各種成分を用いて、重縮合体を形成したLCPを使用することができる。
また、LCPを分類する場合、I型、II型、III型といった分類方法もあるが、材料としては、上記構成要素から形成したLCPと同じ材料を意味する。
【0069】
樹脂組成物は、LCPに加えて、無機充填材をさらに含むことが望ましい。
樹脂組成物に含まれる無機充填材としては、LCPよりも強度が高い材料を使用することができる。無機充填材は、LCPよりも融点が高い材料であることが望ましく、融点が680℃以上である材料であることがより望ましい。
【0070】
無機充填材の形態は特に限定されず、例えば、繊維状又は板状などの長手方向を有するものが挙げられる。これらの無機充填材は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び板状の無機材料の一方又は両方を含むことが望ましい。
【0071】
本明細書において、「繊維状」とは、充填材の長手方向長さと、長手方向に垂直な断面における断面径との関係が、長手方向長さ÷断面径≧5(すなわちアスペクト比が5:1以上)である状態を意味する。ここで、断面径は、断面の外周上において最長となる2点間距離とする。断面径が長手方向で異なる場合、断面径が最大となる箇所で測定を行う。
また、「板状」とは、投影面積が最大となる面の断面径と、この断面に対して垂直方向における最大高さの関係が、断面径÷高さ≧3である状態を意味する。
【0072】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、樹脂組成物は、上述した「繊維状」及び「板状」の両方の条件を満たす無機充填材を含んでもよい。この場合、無機充填材としては1種類の無機材料しか含まれていない。しかし、この場合も「樹脂組成物は、無機充填材として、繊維状の無機材料及び板状の無機材料の両方を含む」と言うこととする。
【0073】
無機充填材は、少なくともその一部が外装ケースの側部の各側壁において、ケース底側から開口部に向かって配向している部分と、隣り合う側壁に向かって配向している部分とを有し、外装ケースの内部において分散していることが望ましい。
【0074】
無機充填材は、少なくとも直径5μm以上、長さ50μm以上のサイズを有するものであることが望ましい。特に、無機充填材は、凝集することなく、外装ケース全体に分散していることが望ましい。
【0075】
無機充填材として、具体的には、繊維状のガラスフィラーや板状のタルク又はマイカなどの材料を使用することができる。特に、無機充填材は、ガラスフィラーを主成分として含むことが望ましい。
【0076】
外装ケースがLCP及び無機充填材を含む樹脂組成物から構成されている場合、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、外装ケースの成形性を確保する観点から、54重量%以下であることが望ましく、50重量%以下であることがより望ましい。また、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、30重量%以上であることが望ましく、45重量%以上であることがより望ましい。
【0077】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、20mm×20mm×0.5mm厚の試験片を使用して、灰分測定あるいは熱重量分析によって、残存成分を無機成分とみなして重量を測定し、初期重量と残存成分重量から算出することができる。
具体的には、JIS K 7250 A法(直接灰化法)に基づき、有機材料を燃焼し、その燃焼残さを高温で恒量になるまで加熱する方法にて測定する。
【0078】
外装ケースがLCP及び無機充填材を含む樹脂組成物から構成されている場合、樹脂組成物中のLCPの含有量は、46重量%以上、70重量%以下であることが望ましく、50重量%以上、55重量%以下であることがより望ましい。
【0079】
外装ケースが樹脂組成物から構成されている場合、樹脂組成物は、LCPに代えて、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を含んでいてもよい。
【0080】
樹脂組成物は、PPSに加えて、無機充填材をさらに含むことが望ましい。
樹脂組成物に含まれる無機充填材としては、LCPの場合と同様の材料を使用することができる。
【0081】
樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含むことが望ましい。無機充填材として、具体的には、繊維状のガラスフィラーや板状のタルク又はマイカなどの材料を使用することができる。特に、無機充填材は、ガラスフィラーを主成分として含むことが望ましい。
【0082】
外装ケースがPPS及び無機充填材を含む樹脂組成物から構成されている場合、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、外装ケースの成形性を確保する観点から、60重量%以下であることが望ましい。また、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、30重量%以上であることが望ましく、45重量%以上であることがより望ましい。
【0083】
外装ケースがPPS及び無機充填材を含む樹脂組成物から構成されている場合、樹脂組成物中のPPSの含有量は、40重量%以上、70重量%以下であることが望ましく、40重量%以上、55重量%以下であることがより望ましい。
【0084】
樹脂組成物から構成される外装ケースは、例えば、射出成形等の方法により製造することができる。
【0085】
外装ケースが金属又は合金製である場合、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ステンレス、銅、又は、これらの合金等を使用することができる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が望ましい。
【0086】
金属又は合金製の外装ケースは、例えば、インパクト成形等の方法により製造することができる。
【0087】
(リード端子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、リード端子は、外装ケースの内部に充填された充填樹脂から外部に向かって突出する。
【0088】
リード端子がコンデンサ素子の外部電極と電気的に接続されている部分は、外部電極の小領域に設けられることから、リード端子に負荷がかかると、外部電極からリード端子が分離してしまうおそれがある。そこで、外装ケースの内部においては、コンデンサ素子の外部電極とリード端子の外部に充填樹脂が位置し、両者を密着固定する。これにより、リード端子の突出部に負荷がかかっても、充填樹脂によってリード端子と外部電極との接続が補強され、両者の分離を抑制することができる。
【0089】
外部電極とリード端子との接続位置は、外部電極の中央部でもよいし、特許第4733566号公報の図1に記載されているように開口部に近い電極端部であってもよい。
【0090】
[フィルムコンデンサの製造方法]
続いて、本発明のフィルムコンデンサを製造する方法について説明する。
本発明のフィルムコンデンサは、例えば、樹脂フィルムの表面に金属層を設けた金属化フィルムを2枚積層した状態で巻回して巻回体を得た後、巻回体の両端に外部電極を形成してコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子を外装ケース内に収容して外装ケース内に充填樹脂を充填、硬化させて第1の充填樹脂層を形成した後、第1の充填樹脂層の表面にさらに充填樹脂を充填、硬化させて第2の充填樹脂層を形成する方法等が挙げられる。
【0091】
本発明のフィルムコンデンサを製造する方法の一例について、図5A図5B及び図5Cを参照しながら説明する。
図5A図5B及び図5Cは、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
まず、図5Aに示すように、巻回体40の両端に第1の外部電極41及び第2外部電極42をそれぞれ形成し、第1のリード端子51及び第2のリード端子52を溶接して得られたコンデンサ素子10を、外装ケース20に収容する。
続いて、図5Bに示すように、外装ケース20の内部に充填樹脂を充填し、硬化させることで第1の充填樹脂層31を形成する。最後に、図5Cに示すように、第1の充填樹脂層31の上からさらに充填樹脂を充填し、硬化させることで第2の充填樹脂層33を形成することにより、本発明のフィルムコンデンサ1が得られる。
【0092】
第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂と、第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂は、同一樹脂である。
【0093】
第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂、及び、第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂は、いずれもフィラーを含有する。
第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂と、第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂は、同一のフィラーを含有することが好ましい。この場合、第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂と、第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂は、同一のフィラー含有率であることがさらに好ましい。
第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂と第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂とが、同一樹脂、同一フィラー、かつ、同一フィラー含有率であると、第1の充填樹脂層31を形成するための充填樹脂と、第2の充填樹脂層33を形成するための充填樹脂が同一組成となる。すなわち、樹脂を構成するモノマーの種類及び配合比並びにフィラーの種類及び含有量等、充填樹脂層を形成する際の諸条件が同じとなる。
同一組成の充填樹脂を用いると、同一設備を用いて、第1の充填樹脂層31及び第2の充填樹脂層33の両方を形成することができるため、製造コストを特に抑制することができる。
同一組成の充填樹脂を用いた場合であっても、第1の充填樹脂層31の硬化が進行する前に、充填樹脂中に含まれるフィラーが沈降し、外装ケースの底面側に偏在する。これによって、第1の充填樹脂層31の外装ケースの底面側のフィラー含有率が相対的に増加し、第2の充填樹脂層33と対向する部分のフィラー含有率が相対的に低下する。
【0094】
(その他の実施形態)
図1A及び図1Bでは、単一の外装ケースに単一のコンデンサ素子が収納されている例を示したが、例えば、特開2012-69840号公報に記載されているように、単一の外装ケースに複数のコンデンサ素子が収納されていてもよい。
【0095】
また、これまでは、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された状態で巻回された巻回型フィルムコンデンサを用いて説明したが、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された積層型フィルムコンデンサであってもよい。積層型フィルムコンデンサであっても、上述した本発明の作用及び効果が得られる。
【実施例
【0096】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
[フィルムコンデンサの作製]
ポリビニルアセタールとポリイソシアネートの混合物を硬化させた熱硬化性樹脂からなる誘電体樹脂フィルムを準備した。この誘電体樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着して電極とした金属化フィルムを巻回して円筒状の巻回体を得た。続いて、巻回体の両端面に亜鉛を溶射して電極を引き出し、引出電極にリード線を溶接してコンデンサ素子を得た。その後、コンデンサ素子をPPS製の外装ケースに収容して、フィラーを55重量%含有するエポキシ樹脂をコンデンサ素子を覆うように充填し、硬化させて第1の充填樹脂層を形成した。最後に、第1の充填樹脂層を形成したエポキシ樹脂と同じ組成のエポキシ樹脂を第1の充填樹脂層上に薄く充填し、硬化させることによって、第2の充填樹脂層を形成した。
第1の充填樹脂層及び第2の充填樹脂層を構成するエポキシ樹脂は同一の組成であり、外装ケースに充填する際のエポキシ樹脂のフィラー含有率は、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層とで同じとした。なお、フィラーとしてはシリカ粒子を用いた。
第1の充填樹脂層の厚みは26mmであり、第2の充填樹脂層の厚みは4mmであった。
【0098】
(実施例2~3、比較例1)
外装ケースを構成する樹脂の種類及び樹脂フィルムを構成する樹脂組成物の種類を、表1に示すものに変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2~3及び比較例1に係るフィルムコンデンサを作製した。ただし、比較例1では、第2の充填樹脂層を形成する工程を行わず、実施例1の第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の厚みの合計と同じ厚みとなるように、第1の充填樹脂層を形成した。
【0099】
[フィラー含有率の確認]
実施例1~3に係るフィルムコンデンサを外装ケースごと充填樹脂層の厚み方向に沿って切断して、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の境界を露出させた。第1の充填樹脂層を厚さ方向に10等分した際の最も外装ケースの開口部に近い部分と第2の充填樹脂層をSEM-EDXで観察し、元素マッピングしたところ、第2の充填樹脂層の面積あたりのフィラーの含有量が、第1の充填樹脂層の面積あたりのフィラーの含有量よりも高くなっており、第2の充填樹脂層のフィラーの含有率が、第1の充填樹脂層のうち第2の充填樹脂層に対向する部分におけるフィラーの含有率よりも高いことを確認した。
なお、比較例1に係るフィルムコンデンサについては、第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の境界が存在しないため、実施例1に係るフィルムコンデンサにおける第1の充填樹脂層と第2の充填樹脂層の境界と同じ位置を境界と仮定してフィラーの含有率を比較したところ、第1の充填樹脂層に相当する部分を10等分した際の最も外装ケースの開口部に近い部分のフィラーの含有率が第2の充填樹脂層に相当する部分のフィラーの含有率よりも高くなっていることを確認した。
【0100】
[耐湿負荷試験]
実施例1~3及び比較例1に係るフィルムコンデンサに対して、温度85℃、相対湿度85%の条件において300Vの電圧を印加し続け、静電容量が5%低下するまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
なお、静電容量が5%低下するまでの時間が1500時間を超えるものについては、充分な耐湿性を有していると評価した(評価:○)。一方、静電容量が5%低下するまでの時間が1500時間未満のものについては、充分な耐湿性を有していないと評価した(評価:×)。
【0101】
【表1】
【0102】
表1の結果より、本発明のフィルムコンデンサは、耐湿負荷試験の結果、静電容量が5%低下するまでに1500時間を超える時間を要し、耐湿性に優れることを確認した。これは、本発明のフィルムコンデンサが、第2の充填樹脂層によって外装ケース開口部からの水分の浸入を抑制することができた結果であると考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1 フィルムコンデンサ
10 コンデンサ素子
11 第1の金属化フィルム
12 第2の金属化フィルム
13 第1の樹脂フィルム
14 第2の樹脂フィルム
15 第1の金属層
16 第2の金属層
20 外装ケース
30 充填樹脂
31 第1の充填樹脂層
33 第2の充填樹脂層
35 フィラー
40、40a 金属化フィルムの巻回体
41 第1の外部電極
42 第2の外部電極
51 第1のリード端子
52 第2のリード端子
第1の充填樹脂層の厚み
第2の充填樹脂層の厚み
図1
図2
図3
図4
図5