(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230217BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20230217BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20230217BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20230217BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B60H1/22 611C
B60H1/22 651
B60H1/32 613C
F24F13/30
H05B3/14 A
F25B39/02 G
(21)【出願番号】P 2022003758
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2022-01-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142399
【氏名又は名称】株式会社金子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 学
(72)【発明者】
【氏名】宮林 清美
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-201411(JP,A)
【文献】特開平07-101228(JP,A)
【文献】実開昭58-152792(JP,U)
【文献】韓国公開特許第2003-0079193(KR,A)
【文献】特表2015-520067(JP,A)
【文献】実開平05-091922(JP,U)
【文献】特開2019-184192(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167509(JP,U)
【文献】特許第6933346(JP,B1)
【文献】国際公開第2012/019952(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0096796(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
H05B 3/02-3/18
H05B 3/40-3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置であって、
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を含むヒートポンプによって構成された冷房ユニットと、
正の温度係数を有する抵抗体によって構成された発熱体を耐熱絶縁板で支持して構成された面状ヒーターを含むヒーターと、
前記膨張弁、前記蒸発器及び前記ヒーターを格納し、空気調和する車内の空気をファンによって流して前記蒸発器によって冷却するか、又は前記ヒーターによって加熱し、前記ヒーターは前記ファンの下流にある室内機と
を含み、
前記室内機は車両のキャビン内に後付けで取り付けてアイドリングの停止時に使用することができ、前記ヒーターは、前記室内機が冷房の動作をするときには、前記ファンから吹き出し口に至る空気の流路から外れるように移動され
、
前記ヒーターは、積層された複数の前記面状ヒーターを含み、前記積層される方向に隣接する面状ヒーターでは、前記面状ヒーターを含む平面内において発熱体の位置は互いにずれている空気調和装置。
【請求項2】
前記発熱体は、前記耐熱絶縁板の面に沿って蛇行するように形成された請求項
1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記発熱体は、前記耐熱絶縁板の一対に挟持されることにより支持された請求項1
又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記面状ヒーターは、遠赤外線放射塗料によって塗布された請求項1から
3のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記ヒーターは、前記面状ヒーターに取り付けられた伝熱板をさらに含む請求項1から
4のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記室内機は、前記ヒーターに隣接して配置されたサーモスタット及び温度ヒューズの少なくとも一つを含む請求項1から
5のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記ファンは、前記室内機の筐体内の上部に格納された請求項1から
6のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項8】
前記蒸発器は、前記室内機において当該室内機で空気調和される空気が吸入される吸入口から前記ファンに至る空気の流路に設置される請求項1から
7のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項9】
前記蒸発器において、冷媒は当該蒸発器の高さ方向に、上部及び下部から供給されて中央から排出される請求項1から
8のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大型トラックなどの車両に後付けで取り付け、アイドリングの停止時に空調を提供することができるような空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型トラックなどの車両において、休憩や荷待ち時にアイドリングを停止するアイドリングストップが行われている。アイドリングストップ時には、車載の空気調和装置も停止するため、車内空調ができなくなり、車内の乗員の快適さが損なわれることがあった。
【0003】
アイドリングストップ時にも車内空調を提供することができるように、車両に後付けする空気調和装置であって、アイドリングストップ時には車載のバッテリーから供給された電力でヒートポンプを駆動することによって冷房及び暖房を提供することができる空気調和装置の技術が開示されている(特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-154853号公報
【文献】特開2007-50739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アイドリングストップ時に暖房を提供するときには、ヒートポンプを逆サイクルで運転する必要があるため、大きな消費電力が発生していた。
【0006】
この発明は、上述の実情に鑑みて提供されるものであって、トラックなどの車両のアイドリングストップ時に車内空調を提供することができ、暖房時の消費電力を低減するような空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、この発明に係る空気調和装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を含むヒートポンプによって構成された冷房ユニットと、発熱体を耐熱絶縁板で支持して構成された面状ヒーターを含むヒーターと、膨張弁、蒸発器及びヒーターを格納し、空気調和する車内の空気をファンによって流して蒸発器によって冷却するか、又はヒーターによって加熱し、ヒーターはファンの下流にある室内機とを含んでいる。
【0008】
ヒーターは、積層された複数の面状ヒーターを含み、積層される方向に隣接する面状ヒーターでは、面状ヒーターを含む平面内において発熱体の位置は互いにずれていてもよい。発熱体は、耐熱絶縁板の面に沿って蛇行するように形成されていてもよい。
【0009】
発熱体は、耐熱絶縁板の一対に挟持されることにより支持されていてもよい。発熱体は正の温度係数を有する抵抗体であってもよい。面状ヒーターは、遠赤外線放射塗料によって塗布されていてもよい。ヒーターは、面状ヒーターに取り付けられた伝熱板をさらに含んでいてもよい。
【0010】
室内機は、ヒーターに隣接して配置されたサーモスタット及び温度ヒューズの少なくとも一つを含んでいてもよい。ファンは、室内機の上部に格納されていてもよい。
【0011】
蒸発器は、室内機において当該室内機で空気調和される空気が吸入される吸入口からファンに至る空気の流路に設置されていてもよい。蒸発器において、冷媒は当該蒸発器の高さ方向に、上部及び下部から供給されて中央から排出されてもよい。蒸発器において、冷媒を流す伝熱管は蒸発器の高さ方向又は奥行き方向の少なくとも一方向について不規則に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、トラックなどの車両のアイドリングストップ時にも暖房及び冷房を 提供することができ、暖房時の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】空気調和装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図4】空気調和装置の室内機に格納された部材を示す斜視図である。
【
図7】室内機の動作を説明するための断面図である。
【
図8】空気調和装置の室内機を取り付けたキャビンを示す斜視図である。
【
図9】空気調和装置のコントローラーを示す正面図である。
【
図10】空気調和装置の室外機を取り付けたトラックヘッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、空気調和装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態の空気調和装置は、大型トラックなどのトラックヘッドのキャビンに後付けで取り付けることを想定している。しかしながら、本実施の形態の空気調和装置は、大型トラックに限らず、一般のトラックやバンなどの他の種類の車両、建設機械やユニットハウスのような建物などにも同様に適用することができる。
【0015】
図1は、本実施の形態の空気調和装置の概略的な構成を示す図である。本実施の形態の空気調和装置は、冷房ユニット10及びヒーター20を有している。冷房ユニット10は、圧縮機11、凝縮器12、ドライヤー13、膨張弁14及び蒸発器15を有し、これらは閉じた流路を形成して冷媒を流すように配管18によって接続されてヒートポンプを構成している。ヒートポンプの冷媒には、フロンなどが使用されている。圧縮機11には、車載のバッテリーから電力が供給されている。
【0016】
凝縮器12は、冷媒が空気と熱交換するように、複数枚の伝熱フィン12aと、伝熱フィン12aを複数回にわたり貫通するように折り返されて冷媒を流す伝熱管12bとから構成されている。伝熱管12bには、配管18を通じて供給された冷媒が流される。伝熱フィン12a及び伝熱管12bは、熱伝導率の高い銅やアルミニウムなどの金属で構成されている。蒸発器15においても同様である。
【0017】
蒸発器15は、凝縮器12と同様に、冷媒が空気と熱交換するように、複数枚の伝熱フィン15aと、伝熱フィン15aを複数回にわたり貫通するように折り返された伝熱管15bとから構成されている。伝熱管15bには、配管18を通じて供給された冷媒が流される。
【0018】
配管18を矢印で示した向きに流れる冷媒は、圧縮機11によって圧縮され、凝縮器12で放熱して凝縮し、ドライヤー13で水分を除去され、膨張弁14によって減圧され、蒸発器15で吸熱して蒸発し、さらに圧縮機11に送られる。このようなサイクルによってヒートポンプが構成され、車内に設置された蒸発器15から吸収した熱を車外に設置された凝縮器12から排出することを可能にしている。
【0019】
ヒーター20は、発熱体22を耐熱絶縁板であるマイカ板23によって支持した面状ヒーター21によって構成されている。マイカ板23に代わって、他の材料による耐熱絶縁板を使用してもよい。発熱体22は、正の温度係数(positive temperature coefficient:PTC)を有する抵抗体を想定しているが、ニクロム、カンタルの合金のような他の種類の抵抗体であってもよい。発熱体22は、マイカ板23の一組で発熱体22の層を挟持することにより支持し、発熱体22の層はマイカ板23の面に沿って蛇行するように形成されている。発熱体22はこのような構造に限らず、マイカ板23に発熱体22による線材を巻回することにより支持してもよい。なお、
図1には、1枚の面状ヒーター21が描かれているが、ヒーター20は複数の面状ヒーター21が積層されて構成されていてもよい。
【0020】
ヒーター20には、端子29を通じてバッテリーから電力が供給されている。端子29からヒーター20に至る回路にはサーモスタット27及びヒューズ28が介在している。サーモスタット27は、ヒーター20の温度が所定温度を超えると回路を開き、所定温度よりも低下すると回路を閉じるように動作し、ヒーター20の温度が一定範囲にあるように制御している。ヒューズ28は、ヒーター20の温度が所定範囲を超えると溶断してヒーター20の過熱を防止する。
【0021】
室内機46は、冷房ユニット10の膨張弁14及び蒸発器15、ヒーター20、さらにサーモスタット27及びヒューズ28を有している。室内機46には、図示しないファンが備えられ、車室内の空気を流して蒸発器15で冷却し、又はヒーター20により加熱することにより、冷房及び暖房の空気調和を提供することを可能にしている。サーモスタット27及びヒューズ28は、ヒーター20に隣接するように配置されている。
【0022】
図2は、室内機46を示す斜視図である。
図3は、室内機46の破断斜視図である。
図4は、室内機46に格納された部材を示す斜視図である。室内機46は、略直方体形状を有し、前面の大部分に格子状の吸い込み口46aが形成され、前面の上部には吹き出し口46bが形成されている。向かって右側面に隣接した前面の一部には、空気調和装置を操作するための操作盤46cが形成されている。室内機46で空気調和される空気は、吸い込み口46aから吸入され、空気調和された空気は吹き出し口46bから放出される。
【0023】
室内機46には、吸い込み口46aに対向し、吸い込み口46aのサイズに略対応するような幅及び高さを有し、これら幅及び高さより小さい奥行きを有する略直方体形状の蒸発器15が設けられている。蒸発器15は、高さ方向及び奥行き方向に延びる複数の伝熱フィン15aと、伝熱フィン15aを複数回にわたり貫通するように折り返されて幅方向に延びる伝熱管15bとから構成されている。伝熱管15bは、高さ方向及び奥行き方向に不規則に配置され、蒸発器15を伝熱フィン15aに沿って高さ方向及び奥行き方向に通過する空気が伝熱管15bと接触して熱交換を促進するように図られている。また、伝熱管15bは、冷媒が蒸発器15の高さ方向に上部及び下部から供給されて中央から排出されるように配置され、蒸発器15の高さ方向の温度の分布が均一になるように図られている。室内機46において、蒸発器15に接続する冷媒の流路の上流側には図示しない膨張弁が設けられている。また、吸い込み口46aと蒸発器15との間には、塵埃などを除去する図示しないフィルタが設けられている。
【0024】
略直方体形状の蒸発器15の頂面に隣接し、蒸発器15と同様の幅及び奥行きを有し、この奥行きと同様の高さを有する略直方体形状のファン51が設けられている。ファン51は、奥側の図示しないダクトから吸い込んだ空気を手前の吹き出し口46bに向かって吹き出すような横断流送風機である。ファン51と吹き出し口46bとの間には、ファン51に隣接して吹き出し口46bに対向し、吹き出し口46bのサイズに略対応するような幅及び高さを有する略直方体形状のヒーター20が設けられている。ヒーター20は、暖房に使用しないときには、ファン51から吹き出し口46bに向かう空気の流路から外れるように、上方又は下方にスライドすることができてもよい。ヒーター20の頂面又は底面には、ヒーター20に隣接するようにサーモスタット27及びヒューズ28が取り付けられている。
【0025】
操作盤46cは、空気調和装置の運転又は停止、冷房及び暖房の切り替え、温度の設定などを制御するために、ダイヤル、スイッチ、LCDによる表示板などを備えている。空気調和装置の動作は、操作盤46cによる設定に従い、室内機46又は室外機33に備えられた図示しない制御装置によって所定の手順で実施されるように制御されてもよい。
【0026】
図5は、ヒーター20の斜視図である。ヒーター20は、第1面状ヒーター21
1から第5面状ヒーター21
5までの5枚の面状ヒーター21が、所定の間隔で積層されて構成されている。各面状ヒーター21は、ヒーター20の幅方向を長手方向とする所定厚さの略矩形板状を有し、フレーム25によって両側の短辺を支持されている。フレーム25は、耐熱性を有する無機材料、樹脂などから構成されてもよい。面状ヒーター21の底面及び頂面には、昇温により遠赤外線を放射するように遠赤外線放射塗料が塗布されている。対向する面状ヒーター21の間には、金属板を折り曲げて形成した伝熱板24が配置され、積層された面状ヒーター21の間を通り抜ける空気に伝熱板24を介して面状ヒーター21の熱を効率よく伝えるように図っている。伝熱板24は、銅やアルミニウムのような熱伝導率の高い金属によって構成されている。
【0027】
図6は、面状ヒーター21の構成を示す図である。
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ第1面状ヒーター21
1の上面図及び断面図である。
図6(b)の断面図は、
図6(a)の平面図における切断線BBによる断面を示している。第1面状ヒーター21
1は、PTCによる発熱体22が略矩形板状の一対のマイカ板23に挟持されることにより支持されている。発熱体22は、所定の幅及び高さを有し、面状ヒーター21の長手方向に向かって、対向する長辺の間で蛇行するように所定ピッチで折り返されて配置され、所定の抵抗値を有するように構成されている。一対のマイカ板23の間において、発熱体22が配置されていない部分は、適当な無機材料などで充填されていてもよい。なお、
図6(a)及び
図6(b)に示した第1面状ヒーター21
1の構成は、第3面状ヒーター21
3及び第5面状ヒーター21
5にも該当する。
【0028】
図6(c)及び
図6(d)は、それぞれ第2面状ヒーター21
2の上面図及び断面図である。
図6(d)の断面図は、
図6(c)の平面図における切断線DDによる断面を示している。第2面状ヒーター21
2も、第1面状ヒーター21
1と同様に、PTCによる発熱体22が略矩形板状の一対のマイカ板23に挟持され、発熱体22が面状ヒーター21の長手方向に向かって対向する長辺の間で蛇行するように、第1面状ヒーター21
1の発熱体22と同じ所定ピッチで折り返されて配置された構成を有している。ただし、第2面状ヒーター21
2は、第2面状ヒーター21
2を含む平面内において長手方向に半ピッチにわたって位置がずれるように配置されている。なお、
図6(c)及び
図6(d)に示した第2面状ヒーター21
2の構成は、第4面状ヒーター21
4にも該当する。
【0029】
ヒーター20は、
図6(a)及び
図6(b)に示した第1面状ヒーター21
1、第3面状ヒーター21
3及び第5面状ヒーター21
5、並びに第6(c)及び
図6(d)に示した第2面状ヒーター21
2及び第4面状ヒーター21
4が第1面状ヒーター21
1から第5面状ヒーター21
5の順に積層して構成されている。このため、一つの面状ヒーター21と対向する他の面状ヒーター21とでは、面状ヒーター21の長辺の間で蛇行する発熱体22は、面状ヒーター21を含む各平面内で面状ヒーター21の長手方向に互いに半ピッチずれて配置されている。これによって、これらの対向する一組の面状ヒーター21の間では、面状ヒーター21の長手方向に温度が均一になることが図られている。したがって、面状ヒーター21の長手方向、すなわちヒーター20の幅方向に温度が均一になり、ヒーター20を通り抜ける空気と効率よく熱交換をすることが図られている。
【0030】
なお、
図5及び
図6に示したように、ヒーター20は第1面状ヒーター21
1から第5面状ヒーター21
5の5枚の面状ヒーター21で構成されるものとしたが、このような構成に限られない。ヒーター20は、面状ヒーター21から構成されるものであれば、1枚の面状ヒーター21で構成されてもよいし、5枚以外の複数枚の面状ヒーター21で構成されてもよい。また、ヒーター20は、
図5に示したような1台のヒーター20から構成される構成に限らず、2台以上の複数のヒーターモジュールが組み合わされて構成されてもよい。この場合、各ヒーターモジュールは、面状ヒーター21から構成されていればよい。
【0031】
本実施の形態の空気調和装置において、ヒーター20はマイカ板23のような耐熱絶縁板で発熱体22を支持した面状ヒーター21によって構成されている。このため、ヒーター20の熱容量は小さく、通電されると素早く昇温して暖房の動作を開始することができる。ヒーター20は、ファン51に隣接して室内機46の吹き出し口46bに対向するように配置されているため、暖房時にはヒーターの昇温により加熱された空気が直ちに吹き出し口46bから吹き出される。また、発熱体22を支持して面状ヒーター21を構成するマイカ板23は軽量で弾力を有しているため、外部からの衝撃に対して堅牢である。マイカ板23などの耐熱絶縁板は比較的高温に耐えることできるため、面状ヒーター21と空気との温度差を確保することにより、熱交換の効率を向上させることができる。
【0032】
さらに、ヒーター20を構成する面状ヒーター21には遠赤外線放射塗料が塗布されているため、面状ヒーター21が昇温すると遠赤外線によって効率よく熱を放射することができる。対向する面状ヒーター21の間には伝熱板24が配置されているため、対向する面状ヒーター21の間を通り抜ける空気は、面状ヒーター21だけではなく、伝熱板24を介しても熱交換をすることができる。
【0033】
図7は、室内機46の動作を説明するための断面図である。室内機46においては、吸い込み口46aから吸入した空気が吹き出し口46bから放出されるようにファン51によって送られている。詳しくは、室内機46の前面に形成された格子状の吸い込み口46aから吸入された空気は、フィルタを通り抜けるときに、塵埃などが除去される。フィルタを通り抜けた空気は、蒸発器15の前面側から伝熱フィン15aの間を通って蒸発器15の背面側に抜けると、図示しないダクトに沿って上方に案内され、ファン51の背面側に達する。ファン51に達した空気は、ファン51の奥側から吸い込まれ、ファン51の前面から室内機46の吹き出し口46bに向けて放出される。ファン51から放出された空気は、空気の流路においてファン51の下流であって、ファン51と吹き出し口46bと間に配置されたヒーター20を通って吹き出し口46bから放出される。
【0034】
室内機46は、冷房の動作をするときには、冷房ユニット10を運転して蒸発器15を降温し、蒸発器15を通り抜ける空気と熱交換させることにより空気を冷却する。このとき、冷房には不要であるヒーター20の位置を例えば下方のヒーター20´の位置までスライドさせることで、空気の流路からヒーター20´が外れるようにしてもよい。空気の流路からヒーター20´を移動させることにより、空気が滞りなく流れるようになり、冷却の効率が向上することが図られる。
【0035】
室内機46は、暖房の動作をするときには、ヒーター20に通電して昇温し、ヒーター20を通り抜ける空気と熱交換させることにより空気を加熱する。ヒーター20が冷房のために下方のヒーター20´の位置にスライドされているときには、暖房を開始するときに元のヒーター20の位置にスライドしてヒーター20が空気の流路内に戻るように移動する。ヒーター20は、空気の流路においてファン51に隣接してファンの直後にあり、ヒーター20で加熱された空気は直ちに吹き出し口46bを通って室内機46から放出される。したがって、室内機46から吹き出された空気からは、ヒーター20の昇温による暖房の効果が直ちに表れる。
【0036】
図8は、空気調和装置の室内機46を取り付けたトラックヘッドのキャビン40を示す斜視図である。この斜視図は、キャビン40の運転席41の前方からリアウィンドウ43に向かう視点によるものである。室内機46は、キャビン40の後方の壁42において、天井に近く、リアウィンドウ43の横に隣接するような位置に取り付けられている。室内機46は、車外にある室外機33に冷媒を流す配管18によって接続されている。
【0037】
室内機46の下側の壁42には、室内機46のコントローラー47が取り付けられている。壁42に沿ってリアウィンドウの下側に簡易ベッド48が設置されている。コントローラー47は、簡易ベッド48に横たわった乗員の手が届くような範囲に取り付けられてもよい。
【0038】
図9は、空気調和装置のコントローラー47を示す正面図である。コントローラー47の前面には、LCDなどによる表示部47a、電源スイッチ47b、冷房・暖房の運転切替スイッチ47c及び選択ボタン47dが設けられている。表示部47aには空気調和装置の冷房・暖房の運転モード、設定温度などが表示される。表示部47aの表示に従って選択ボタン47dを操作することで、温度などを設定することができる。コントローラー47は、簡易ベッド48の直上の壁に取り付けられ、簡易ベッド48に横になった乗員が容易に操作することができるものであってもよい。
【0039】
図10は、空気調和装置の室外機33を取り付けたトラックヘッド30を示す斜視図である。トラックヘッド30のリア面31には、リアウィンドウ32の横に隣接するように空気調和装置の室外機33が取り付けられている。室外機33の略中央には、室外機33から空気を排出するための排出口33aが形成されている。室外機33の底部には、空気を吸入するための図示しない吸入口が形成されていてもよい。
【0040】
室外機33には、圧縮機11、凝縮器12及びドライヤー13などが格納されている。室外機33には、車外の空気との熱交換によって凝縮器12から冷媒の凝縮熱を放出するように、室外機33の内部の流路に沿って凝縮器12を通して空気を流すための図示しないファンが備えられている。このファンは、排出口33aの内側に配置されてもよい。
【0041】
本実施の形態の空気調和装置は、室内機46、室内機46に付属するコントローラー47及び室外機33から構成されている。したがって、大型トラックなどの車両に後付けで容易に取り付けることができる。取り付けは、キャビン40の壁42に室内機46及び付属のコントローラー47を取り付け、トラックヘッド30のリア面31に室外機33を取り付け、室外機33及び室内機46を冷媒の配管18、室内機に電力を供給する電線などで接続すれば足りる。
【0042】
また、本実施の形態の空気調和装置において、冷房にはヒートポンプから構成された冷房ユニット10を使用しているが、暖房にはヒーター20を使用している。このため、空気調和装置を暖房に使用するときにも大きな消費電力を要することがない。したがって、アイドリングストップ時にも車載のバッテリーに大きな負担を与えることなく車内の冷房及び暖房の空気調和を継続することができ、乗員に与える快適さを保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、大型トラックなどの車両、建設機械やユニットハウスのような建物などに後付けで取り付ける空気調和装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 冷房ユニット
11 圧縮機
12 凝縮器
14 膨張弁
15 蒸発器
20 ヒーター
21 面状ヒーター
22 発熱体
23 マイカ板
27 サーモスタット
28 ヒューズ
46 室内機
【要約】
【課題】アイドリングの停止時に暖房を提供するときに消費電力を低減する。
【解決手段】空気調和装置は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14及び蒸発器15を含むヒートポンプによって構成された冷房ユニット10と、発熱体22をマイカ板23で支持して構成された面状ヒーター21を含むヒーター20と、膨張弁14、蒸発器15及びヒーター20を格納し、空気調和する車内の空気をファンによって流して蒸発器15によって冷却するか、又はヒーター20によって加熱し、ヒーター20はファンの下流にある室内機46とを有している。
【選択図】
図1