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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03G 3/00 20060101AFI20230217BHJP
   F03G 7/00 20060101ALI20230217BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
F03G3/00 E
F03G7/00 H
H02N11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022137367
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2022-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522344998
【氏名又は名称】藤田 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】522345010
【氏名又は名称】小山 林一
(73)【特許権者】
【識別番号】522346316
【氏名又は名称】中嶋 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100183586
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 眞人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 誠
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-023077(JP,A)
【文献】特開2004-312885(JP,A)
【文献】特開2006-014568(JP,A)
【文献】特開2006-141109(JP,A)
【文献】特開2006-246605(JP,A)
【文献】特開2011-097815(JP,A)
【文献】国際公開第2007/077918(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/114982(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077781(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109039017(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/00
F03G 7/00
H02K 53/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を電力に変換する発電機と、
前記回転力を生じさせる回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、
前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、
前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、
前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、
前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部とを備え、
前記位置情報取得手段は、前記永久磁石に対して位置的に関連付けて前記回転体に設けられたマークと、前記架台に固定され、前記マークを非接触で検知するマーク検知センサーと、前記回転体の回転速度を非接触で測定する速度測定部とを有し、
前記制御部は、前記マークと前記永久磁石との間の第1離間距離と、前記マークを検知する検知点と前記第1位置との間の第2離間距離と、前記マーク検知センサーが前記マークを検知した時点からの経過時間と、前記速度測定部が測定した回転速度とに基づいて、前記第1位置に対する前記永久磁石の位置を特定し、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御する、発電システム。
【請求項2】
回転力を電力に変換する発電機と、
前記回転力を生じさせる回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、
前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、
前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、
前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、
前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、
前記回転体を水力で回転駆動させる水力駆動部と、
前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部とを備え、
前記回転体は、円筒状の外周面を有する円環状の本体部と、前記外周面に周方向へ間隔を隔てて設けられた複数の水車ブレードとを有し、
前記水力駆動部は、前記水車ブレードに向けて圧力水を噴射する噴水ノズルを有し
記第2磁力発生部は、前記噴水ノズルよりも上方に設けられ
前記制御部は、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御する、発電システム。
【請求項3】
前記水力駆動部は、前記噴水ノズルの下方に前記回転体の外周面に沿って設けられた水路と、前記水路から排出された水を貯めるタンクと、前記タンク内の水を前記噴水ノズルから噴射させるポンプとを有し、
前記制御部は、前記ポンプの動作を制御する、請求項項に記載の発電システム。
【請求項4】
回転力を電力に変換する発電機と、
前記回転力を生じさせる回転体と、
前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、
前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、
前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、
前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、
前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部と、
前記回転体を停止状態から回転起動させる回転起動部を備え、
前記回転起動部は、前記回転体の回転経路に軸方向から突出して前記回転体の回転を阻止するロックピンと、前記ロックピンを前記回転経路に突出させ、または、前記回転経路から退避させるロックピン駆動部と、前記回転体の回転が前記ロックピンで阻止された状態において、前記回転体に対して回転方向へ復元力を付与するバネとを有し、
前記制御部は、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御し、さらに、前記ロックピン駆動部の動作を制御する、発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料を使用しない汎用型の発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を使用しない発電システムとして、水力、風力、太陽光および地熱などの自然エネルギーを利用した発電システムがある。この種の発電システムの多くは、基幹エネルギー用の大型システムであり、個々の家庭や災害現場などに適した汎用型の発電システムは少ない。このような現状を踏まえて、従来から、化石燃料を使用しない汎用型の発電システムの開発が各方面で進められている。しかしながら、自然エネルギーだけを利用する発電システムでは、長時間にわたって安定した電力を得ることが困難であるという問題があった。
【0003】
下記特許文献1に記載された発電システムは、自然エネルギーが乏しい場合でも大きな電力を得ることを目的とするものであり、水力や風力に加えて、永久磁石どうしの斥力を動力として利用できるように構成されている。すなわち、この発電システムは、水車等の回転軸に取り付けられた回転体と、回転体の周囲に設けられたスリーブと、回転体の表面に取り付けられた第1永久磁石と、スリーブに組み込まれた第2永久磁石とを備えており、第1永久磁石および第2永久磁石は、回転体の直径方向に対してずれた方向に斥力を生じさせるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3171044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発電システムでは、永久磁石の斥力を回転体に対して回転力として作用させることが求められるが、永久磁石の斥力の方向は回転体の回転方向に対して大きく傾斜しているため、十分な回転力を生じさせることができなかった。そのため、水力および風力などの他のエネルギー源が無ければ、動作させることができず、依然として、長時間にわたって発電量を安定させることが困難であるという問題があった。また、永久磁石の磁力を大きくした場合には、組立時に回転体とスリーブとを近接させる作業が困難になり、当該作業を容易にする特別な構成を採用しなければならない結果、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、長時間にわたって発電量を安定させることができるとともに安価に製造できる、化石燃料を使用しない汎用型の発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る発電システムの特徴は、回転力を電力に変換する発電機と、前記回転力を生じさせる回転体と、前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部とを備え、前記位置情報取得手段は、前記永久磁石に対して位置的に関連付けて前記回転体に設けられたマークと、前記架台に固定され、前記マークを非接触で検知するマーク検知センサーと、前記回転体の回転速度を非接触で測定する速度測定部とを有し、前記制御部は、前記マークと前記永久磁石との間の第1離間距離と、前記マークを検知する検知点と前記第1位置との間の第2離間距離と、前記マーク検知センサーが前記マークを検知した時点からの経過時間と、前記速度測定部が測定した回転速度とに基づいて、前記第1位置に対する前記永久磁石の位置を特定し、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御することにある。
【0008】
この構成によれば、電磁石を永久磁石に対して回転体の回転方向後側から近接して対向させることができるので、電磁石と永久磁石との間で発生する斥力を回転体に対して効率よく付与することができる。したがって、他のエネルギー源が無くても回転体を回転させることが可能であり、長時間にわたって発電量を安定させることができる。また、組立作業時には、電磁石に磁力が発生しないので、組立作業を容易にするための特別な構成は不要であり、安価に製造できる。さらに、第1磁力発生部の永久磁石は、回転体の軸方向側面に固定されるので、回転体の外周面に水車ブレードなどを取り付ける部分を確保することができる。
【0014】
また、マーク検知センサーは、マークを非接触で検知し、速度測定部は、回転体の回転速度を非接触で測定するので、マーク検知センサーおよび速度測定部は、回転体の回転を妨げない。
【0015】
本発明に係る発電システムの他の特徴は、回転力を電力に変換する発電機と、前記回転力を生じさせる回転体と、前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、前記回転体を水力で回転駆動させる水力駆動部と、前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部とを備え、前記回転体は、円筒状の外周面を有する円環状の本体部と、前記外周面に周方向へ間隔を隔てて設けられた複数の水車ブレードとを有し、前記水力駆動部は、前記水車ブレードに向けて圧力水を噴射する噴水ノズルを有し、前記第2磁力発生部は、前記噴水ノズルよりも上方に設けられ、前記制御部は、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御することにある。
【0016】
この構成によれば、回転体の動力として、電磁石と永久磁石との間で生じる斥力だけでなく、圧力水の水力を利用することができるので、回転体を安定して回転させることができる。また、第2磁力発生部は、噴水ノズルよりも上方に設けられるので、電磁石に水が付着することを防止できる。
【0017】
本発明に係る発電システムの他の特徴は、前記水力駆動部は、前記噴水ノズルの下方に前記回転体の外周面に沿って設けられた水路と、前記水路から排出された水を貯めるタンクと、前記タンク内の水を前記噴水ノズルから噴射させるポンプとを有し、前記制御部は、前記ポンプの動作を制御することにある。
【0018】
この構成によれば、噴水ノズルから噴射された水を、タンクに回収して再利用できるので、自然環境の影響を受けることがなく、長時間にわたって発電量を安定させることができる。
【0019】
本発明に係る発電システムの他の特徴は、回転力を電力に変換する発電機と、前記回転力を生じさせる回転体と、前記回転体を回転可能に支持する支持部を有する架台と、前記回転体の軸方向側面に固定された永久磁石を有する第1磁力発生部と、前記軸方向側面に対向する前記架台の面に前記回転体の軸方向へ移動可能に設けられた電磁石を有する第2磁力発生部と、前記電磁石を前記永久磁石に対して前記回転体の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置とし、前記電磁石を前記第1位置から前記回転体の軸方向外側に退避させる位置を第2位置としたとき、前記電磁石を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動駆動部と、前記第1位置に対する前記永久磁石の位置情報を取得するための位置情報取得手段と、前記位置情報に基づいて前記移動駆動部および前記電磁石の動作を制御する制御部と、前記回転体を停止状態から回転起動させる回転起動部を備え、前記回転起動部は、前記回転体の回転経路に軸方向から突出して前記回転体の回転を阻止するロックピンと、前記ロックピンを前記回転経路に突出させ、または、前記回転経路から退避させるロックピン駆動部と、前記回転体の回転が前記ロックピンで阻止された状態において、前記回転体に対して回転方向へ復元力を付与するバネとを有し、前記制御部は、前記永久磁石が前記第1位置を通過した直後に前記電磁石を前記第2位置から前記第1位置に移動させるように前記移動駆動部の動作を制御するとともに、前記永久磁石との間で斥力を生じさせるように前記電磁石の動作を制御し、さらに、前記ロックピン駆動部の動作を制御することにある。
【0020】
この構成によれば、回転体の回転がロックピンで阻止された状態において、バネの復元力が回転体に対して回転方向へ作用するので、ロックピン駆動部でロックピンを回転経路から退避させることによって、バネの復元力で回転体をスムーズに回転起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る発電システムの構成を示す正面から見た断面図である。
図2】実施形態に係る発電システムの構成を示す右側面図である。
図3】回転体を架台の第1支持部(支持部)で支持した状態を示す正面図である。
図4】回転体を架台の第1支持部(支持部)で支持した状態を示す右側面図である。
図5】磁力駆動部の構成を示す正面から見た断面図である。
図6】磁力駆動部の構成を示す部分拡大右側面図である。
図7】水力駆動部の構成を示す図であり、(A)は部分拡大正面図、(B)は部分拡大右側面図である。
図8】実施形態に係る発電システムの電気的構成を示すブロック図である。
図9】制御部による磁力駆動部の制御動作を示すフロー図である。
図10】(A)は、磁力駆動部の第1状態を示す部分拡大右側面図、(B)は、磁力駆動部の第2状態を示す部分拡大右側面図である。
図11】(C)は、磁力駆動部の第3状態を示す部分拡大右側面図、(D)は、磁力駆動部の第4状態を示す部分拡大右側面図である。
図12】(E)は、磁力駆動部の第5状態を示す部分拡大右側面図、(F)は、磁力駆動部の第6状態を示す部分拡大右側面図である。
図13】他の磁力駆動部の構成を示す部分拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る発電システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる前後、左右、上下の各方向は、「回転方向の前側」および「回転方向の後側」を除いて、図面中に矢印で示す各方向と一致する。
【0023】
(発電システムの構成)
図1は、実施形態に係る発電システム10の構成を示す正面から見た断面図である。図2は、発電システム10の構成を示す右側面図である。図3は、回転体14を架台20の第1支持部(支持部)54で支持した状態を示す正面図である。図4は、回転体14を架台20の第1支持部(支持部)54で支持した状態を示す右側面図である。
【0024】
図2に示すように、発電システム10は、回転力を電力に変換する発電機12と、発電時に回転力を生じさせる回転体14と、発電機12と回転体14との間に設けられた増速機16と、発電機12で発電された電気を蓄電する蓄電器18と、これらを支持する架台20とを備えている。回転体14と増速機16とは、第1継手22を介して連結されており、増速機16と発電機12とは、第2継手24を介して連結されている。
【0025】
図示していないが、発電機12は、外部機器が接続される出力端子と、外部機器に与える電力量に関する情報を出力する電力量出力部とを有している。蓄電器18は、蓄電量に関する情報を出力する蓄電量出力部を有している。
【0026】
また、図1に示すように、発電システム10は、磁力を利用した磁力駆動部26と、位置情報取得手段28(図5)と、水力を利用した水力駆動部30と、バネ104の弾性力を利用した回転起動部32と、制御部34とを有している。なお、図2では、図1の断面位置をI-I線で示している。
【0027】
図2に示す回転体14は、上記の磁力、水力および弾性力により回転されて、慣性力により回転状態を持続できるように構成されたフライホイールである。図4に示すように、回転体14は、円筒状の外周面36aを有する円環状の本体部36と、本体部36の外周面36aに周方向へ間隔を隔てて設けられた複数の水車ブレード38と、回転軸40とを有している。本体部36の直径は、特に限定されるものではないが、1~2m程度であることが望ましく、本実施形態では、1mに定められている。
【0028】
また、図3に示すように、回転体14は、回転軸40を支持する円柱状の軸支持部42と、本体部36と軸支持部42との間に放射状に延びて設けられた複数(本実施形態では9本)の連結棒44とを有している。本実施形態では、9本の連結棒44のうち、120度の角度間隔を隔てて設けられた3本の連結棒44を除いた残りの6本の連結棒44に対して、慣性質量を切り替えるための慣性質量切替え機構46が設けられている。
【0029】
慣性質量切替え機構46は、連結棒44に沿って移動可能に構成された錘48と、軸支持部42に設けられ、錘48を磁力で吸着できるように構成された錘吸着用電磁石50と、本体部36に設けられ、錘48を磁力で吸着できるように構成された錘吸着用永久磁石52とを有している。錘吸着用電磁石50には、蓄電器18が接続されており、錘吸着用電磁石50の動作は、制御部34で制御される。
【0030】
回転体14が回転駆動される前の段階では、図3に示すように、錘48は、励磁された錘吸着用電磁石50に吸着されて、回転体14の中心付近で保持される。回転体14が回転駆動された後に、錘吸着用電磁石50の励磁が解除されると、錘48は、遠心力および重力で回転体14の外周部に向けて移動され、錘吸着用永久磁石52に吸着されて保持される(図示省略)。制御部34は、回転体14の回転数が予め定められた回転数に到達したことを検知したとき、励磁を解除するように錘吸着用電磁石50の動作を制御する。
【0031】
図2に示すように、架台20は、回転体14を回転可能に支持する第1支持部(支持部)54と、発電機12、増速機16および蓄電器18を支持する第2支持部56と、第1支持部(支持部)54に対して固定された中空の直方体状(箱状)のハウジング58とを有している。
【0032】
図4に示すように、第1支持部(支持部)54は、回転体14の軸方向の両側に配置された前脚部60aおよび後脚部60bを有しており、前脚部60aおよび後脚部60bのそれぞれの上部には、回転体14の回転軸40を回転可能に支持する軸受け62a,62bが設けられている。
【0033】
図2に示すように、ハウジング58は、前脚部60aと回転体14との間に配置された前壁部64aと、後脚部60bと回転体14との間に配置された後壁部64bとを有している。また、図1に示すように、ハウジング58は、回転体14の左側に配置された左壁部64cと、回転体14の右側に配置された右壁部64dと、回転体14の下側に配置された下壁部64eと、回転体14の上側に配置された上壁部64fとを有している。そして、図2に示すように、前壁部64aが前脚部60aに固定されており、後壁部64bが後脚部60bに固定されている。
【0034】
図2に示す磁力駆動部26は、回転体14の軸方向側面に固定された複数の永久磁石66を有する第1磁力発生部68と、回転体14の軸方向側面に対向する架台20(ハウジング58)の面に回転体14の軸方向へ移動可能設けられた複数の電磁石70を有する第2磁力発生部72と、電磁石70を移動させる複数のプッシュプルソレノイド74を有する移動駆動部76とを有している。
【0035】
図3に示すように、本実施形態の第1磁力発生部68は、回転体14の前側の側面14aに40度の角度間隔で設けられた9個の永久磁石66と、回転体14の後側の側面14b(図4)に40度の角度間隔で設けられた9個の永久磁石66とを有している。
【0036】
図6は、磁力駆動部26の構成を示す部分拡大右側面図である。図6に示すように、各永久磁石66は、回転体14の周方向へ長い直方体状に形成されており、各永久磁石66の極性は、回転体14の回転方向(図6中の白抜き矢印方向)の前側(回転方向前側)がS極とされ、回転体14の回転方向の後側(回転方向後側)がN極とされている。回転体14の軸方向の前側(軸方向前側)の9個の永久磁石66と、回転体14の軸方向の後側(軸方向後側)の9個の永久磁石66とは、回転体14の軸方向において完全に重なるように配置されている。
【0037】
図5は、磁力駆動部26の構成を示す正面から見た断面図である。図5に示すように、第2磁力発生部72は、架台20を構成するハウジング58の後壁部64bに40度の角度間隔で設けられた6個の電磁石70と、ハウジング58の前壁部64a(図6)に40度の角度間隔で設けられた6個の電磁石70とを有している。図5では、第1磁力発生部68を二点鎖線(仮想線)で示している。
【0038】
図6に示すように、各電磁石70は、回転体14の周方向へ長い直方体状に形成されており、各電磁石70の励磁されたときの極性は、回転体14の回転方向の前側(回転方向前側)がN極とされ、回転体14の回転方向の後側(回転方向後側)がS極とされている。回転体14の軸方向の前側(軸方向前側)の6個の電磁石70と、回転体14の軸方向の後側(軸方向後側)の6個の電磁石70とは、回転体14の軸方向において完全に重なるように配置されている。
【0039】
図5に示すように、移動駆動部76は、架台20を構成するハウジング58の後壁部64bに40度の角度間隔で設けられた6個のプッシュプルソレノイド74と、ハウジング58の前壁部64a(図6)に40度の角度間隔で設けられた6個のプッシュプルソレノイド74とを有している。図6中の二点鎖線(仮想線)で示すように、各プッシュプルソレノイド74は、電磁石70を回転体14の軸方向へ往復移動させるように構成されている。したがって、プッシュプルソレノイド74の数は、電磁石70の数と一致する。各プッシュプルソレノイド74の本体部74aは、回転体14の軸方向側面に対向する架台20(ハウジング58)の面に設けられた凹部78に収容されている。
【0040】
図6に示すように、電磁石70を永久磁石66に対して回転体14の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置P1とし、電磁石70を第1位置P1から回転体14の軸方向外側に退避させる位置を第2位置P2としたとき、移動駆動部76は、電磁石70を第1位置P1と第2位置P2との間で移動させるように構成されている。各プッシュプルソレノイド74のストロークは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、35mmに定められている。
【0041】
図5に示すように、第2磁力発生部72は、噴水ノズル90a~90cよりも上方に配置されている。つまり、12個の電磁石70および12個のプッシュプルソレノイド74は、水力駆動部30の噴水ノズル90a~90cよりも上方に配置されている。
【0042】
図5に示す位置情報取得手段28は、第1位置P1に対する永久磁石66の位置情報を取得するための手段である。図5に示すように、位置情報取得手段28は、永久磁石66に対して位置的に関連付けて回転体14に設けられた9個の第1マーク(マーク)80と、架台20に固定され、各第1マーク(マーク)80を非接触で検知する1個の第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82と、回転体14の回転速度を非接触で測定する速度測定部84とを有している。
【0043】
第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82は、具体的には、図示しない投光部と受光部とを有する光電センサーであり、各第1マーク(マーク)80は、光を反射させる反射板である。第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82の投光部から投光された光は、第1マーク(マーク)80で反射されて、受光部で受光される。
【0044】
図5に示すように、位置情報取得手段28の速度測定部84は、回転体14に設けられた2個の第2マーク86と、各第2マーク86を非接触で検知する1個の第2マーク検知センサー88と、制御部34(図8)とを有している。図8に示す制御部34は、速度測定部84の一部として機能する。
【0045】
第2マーク検知センサー88は、具体的には、投光部と受光部とを有する光電センサーであり、2個の第2マーク86は、光を反射させる反射板である。第2マーク検知センサー88の投光部から投光された光は、第2マーク86で反射されて、受光部で受光される。図8に示す制御部34は、第2マーク検知センサー88が2個の第2マーク86を検知したときの時間間隔と2個の第2マーク86の離間距離とに基づいて、回転体14の回転速度を算出する。
【0046】
図8に示す制御部34は、位置情報取得手段28が取得した位置情報に基づいて移動駆動部76および電磁石70の動作を制御する機能を有している。つまり、図5を参照して、制御部34は、各第1マーク(マーク)80と各永久磁石66との離間距離と、第1マーク(マーク)80を検知する検知点P3と各第1位置P1との離間距離と、第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82が第1マーク(マーク)80を検知した時点からの経過時間と、速度測定部84が測定した回転速度とに基づいて、各第1位置P1に対する各永久磁石66の位置を特定する。そして、制御部34は、各永久磁石66の位置情報に基づいて、プッシュプルソレノイド74および電磁石70を制御する。なお、これらの制御動作については、後に詳細に説明する。
【0047】
図1に示す水力駆動部30は、加圧水の水力を利用して回転体14を回転駆動させる部分である。図7は、水力駆動部30の構成を示す図であり、(A)は部分拡大正面図、(B)は部分拡大右側面図である。図7(A),(B)に示すように、水力駆動部30は、3本の噴水ノズル90a~90cと、噴水ノズル90a~90cの下方に回転体14の外周面に沿って設けられた水路92と、水路92から排出された水を貯めるタンク94と、タンク94内の水を噴水ノズル90a~90cから噴射させるポンプ96とを有している。
【0048】
2本の噴水ノズル90a,90bは、回転体14の接線方向に向けられており、主に、回転体14の水車ブレード38に向けて加圧水を噴射するように構成されている。したがって、噴水ノズル90a,90bから噴射される加圧水が少量の場合でも、回転体14を効率よく回転させることができる。なお、図7(A)において、噴水ノズル90bは、噴水ノズル90aに隠れて見えない。残りの1本の噴水ノズル90cは、回転体14の接線方向よりも中心側に向けられており、回転体14の本体部36および水車ブレード38の両方に向けて加圧水を噴射するように構成されている。したがって、噴水ノズル90cから噴射される加圧水が多量の場合でも、水車ブレード38が受ける圧力を低減でき、水車ブレード38は損傷され難い。
【0049】
ポンプ96は、3本の噴水ノズル90a~90cのそれぞれに加圧水を供給するための3本の水路と、3本の水路を切り替えて使用するように構成された弁機構とを有している。3本の水路は、噴水ノズル90cから噴射される加圧水の水量が、噴水ノズル90a,90bから噴射される加圧水の合計水量よりも多くなるように構成されている。図5に示すように、本実施形態では、第2磁力発生部72が噴水ノズル90a~90cよりも上方に配置されているので、噴水ノズル90a~90cから噴射された水は、電磁石70およびプッシュプルソレノイド74に付着し難い。
【0050】
図8に示す制御部34は、回転体14を標準速度(例えば、1分間に10回転)で回転駆動させるときには、噴水ノズル90a,90bから加圧水を噴射させるようにポンプ96の動作を制御する。また、制御部34は、回転体14を高速(例えば、1分間に15回転)で回転駆動させるときには、噴水ノズル90cから加圧水を噴射させるようにポンプ96の動作を制御し、或いは、全ての噴水ノズル90a~90cから加圧水を噴射させるようにポンプ96の動作を制御する。さらに、制御部34は、回転体14を低速(例えば、1分間に6回転)で回転駆動させるときには、噴水ノズル90a~90cから加圧水を噴射させないようにポンプ96の動作を制御する。つまり、ポンプ96を停止させる。
【0051】
図1に示す回転起動部32は、回転体14を停止状態から回転起動させる部分である。図1に示すように、回転起動部32は、回転体14の回転経路Rに軸方向から突出して回転体14の回転を阻止するロックピン100と、ロックピン100を回転経路Rに対して突出させ、または、退避させるロックピン駆動部102とを有している。また、回転起動部32は、回転体14の回転がロックピン100で阻止された状態において、回転体14に対して回転方向へ復元力(弾性力)を付与するバネ104を有している。
【0052】
さらに、回転起動部32は、バネ104の先端部に設けられたフック106と、バネ104を回転経路Rの径方向の外側に退避させるバネ退避機構108と、フック106を水車ブレード38に引掛けるとともに、バネ104を引き伸ばすバネ引き機構110とを有している。
【0053】
バネ退避機構108は、架台20に固定された巻取りバネ108aと、巻取りバネ108aで巻き取られるワイヤ108bとを有しており、ワイヤ108bの先端がフック106またはバネ104に接続されている。バネ引き機構110は、バネ104の基端部を回動可能に支持するバネ支持部110aと、バネ104を回転体14側へ回動させるとともに、バネ104を引き伸ばすバネ引き部110bとを有している。バネ引き部110bの動力としては、手動、モータおよびエアシリンダなどを使用できるが、本実施形態では、モータが使用されている。
【0054】
図1に示す発電システム10は、回転体14が回転駆動されている状態にあり、回転起動部32のバネ104は、回転経路Rの外側に退避されている。停止されている状態の回転体14を起動させるとき、制御部34(図8)は、まず、起動準備動作を実行し、その後、起動動作を実行する。
【0055】
起動準備動作において、制御部34は、ロックピン100を回転経路Rに突出させるようにロックピン駆動部102の動作を制御する。続いて、制御部34は、バネ104を回転体14に近接する方向へ回動させるとともに、バネ支持部110a側へ引っ張るようにバネ引き部110bの動作を制御する。バネ104が回転体14に近接したとき、フック106の先端部は、複数の水車ブレード38の外接円よりも内側に配置される。したがって、バネ引き部110bでバネ104を引っ張ると、フック106が水車ブレード38に引掛けられて、バネ104が引き伸ばされる。これにより、回転体14には、バネ104の復元力(弾性力)が回転方向へ付与される。
【0056】
起動動作において、制御部34は、ロックピン100を回転経路Rから退避させるようにロックピン駆動部102の動作を制御する。すると、回転体14の回転が許容されるので、回転体14は、バネ104の復元力(弾性力)によって回転される。回転体14が回転されると、水車ブレード38に対するフック106の引掛け状態が解除されるので、バネ104は、巻取りバネ108aで巻き取られるワイヤ108bに引かれて、回転経路Rの径方向の外側に移動される。
【0057】
図1に示す制御部34は、発電システム10を構成する各種の電気機器の動作を制御する部分であり、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(図示省略)によって構成されている。CPUには、タイマーが組み込まれており、ROMには、発電システム10を構成する各電気部品の動作プログラムが記憶されている。
【0058】
図8は、発電システム10の電気的構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御部34には、発電機12、蓄電器18、錘吸着用電磁石50、複数の電磁石70、複数のプッシュプルソレノイド74、第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82、第2マーク検知センサー88、ポンプ96、複数のバネ引き部110bおよびロックピン駆動部102が電気的に接続されている。
【0059】
(発電システムの動作)
発電システム10を用いて発電する際には、まず、制御部34は、回転体14を回転起動させるように回転起動部32(図1)の動作を制御する。その後、制御部34は、永久磁石66と電磁石70との間に斥力を生じさせるように磁力駆動部26(図6)の動作を制御し、回転体14を安定して回転させる。回転体14が回転されると、その回転力が発電機12(図2)に与えられて発電される。発電機12で発電された電気は、蓄電器18(図2)に蓄電され、或いは、外部機器(図示省略)に供給される。制御部34に接続された上記の各電気部品(発電機12および蓄電器18を除く。)は、蓄電器18から供給される電力で駆動される。
【0060】
蓄電器18の蓄電量に関する情報は、蓄電器18の蓄電量出力部(図示省略)から制御部34に与えられ、外部機器の消費電力量に関する情報は、発電機12の電力量出力部(図示省略)から制御部34に与えられる。制御部34は、これらの情報に基づいて、必要な発電量を把握する。必要な発電量が少ない場合、制御部34は、回転体14を低速(例えば、1分間に6回転)で回転駆動させるように磁力駆動部26(図6)の動作を制御する。このとき、制御部34は、圧力水の噴射を停止させるようにポンプ96の動作を制御する。必要な発電量が多くなると、制御部34は、圧力水の噴射によって回転体14を標準速度(例えば、1分間に10回転)または高速(例えば、1分間に15回転)で回転駆動させるようにポンプ96の動作を制御する。
【0061】
図9は、制御部34による磁力駆動部26の制御動作を示すフロー図である。図10(A)は、磁力駆動部26の第1状態を示す部分拡大右側面図、図10(B)は、磁力駆動部26の第2状態を示す部分拡大右側面図である。図11(C)は、磁力駆動部26の第3状態を示す部分拡大右側面図、図11(D)は、磁力駆動部26の第4状態を示す部分拡大右側面図である。図12(E)は、磁力駆動部26の第5状態を示す部分拡大右側面図、図12(F)は、磁力駆動部26の第6状態を示す部分拡大右側面図である。
【0062】
以下では、図9のフロー図に従って、制御部34による磁力駆動部26の制御動作について説明する。なお、慣性質量切替え機構46、回転起動部32および水力駆動部30の制御動作は、既に説明した通りである。
【0063】
図9に示すように、磁力駆動部26の動作プログラムが開始されると、ステップS1において、制御部34は、回転体14の回転速度を検出し、ステップ3において、制御部34は、各第1位置P1に対する各永久磁石66の位置を検出する。回転体14の回転速度を検出する方法および各永久磁石66の位置を検出する方法は、上記の通りであり、ここでの説明は省略する。
【0064】
次のステップS5において、制御部34は、各永久磁石66が予め定められた押出し指示位置Q1に到達したか否かを判断し、「YES」と判断すると、ステップS7に進み、「NO」と判断すると、押出し指示位置Q1に到達するまで待機する。押出し指示位置Q1は、プッシュプルソレノイド74に対して押出し動作の開始を指示する時点に対応する永久磁石66の位置である。図10(A)は、各永久磁石66が押出し指示位置Q1に到達していない状態(第1状態)を示しており、図10(B)は、各永久磁石66が押出し指示位置Q1に到達した状態(第2状態)を示している。
【0065】
ステップS7において、制御部34は、電磁石70を第2位置P2から第1位置P1に移動させるようにプッシュプルソレノイド74の動作を制御し、ステップS9において、制御部34は、永久磁石66との間で斥力を生じさせるように電磁石70の動作を制御する。つまり、電磁石70を励磁させる。上記の押出し指示位置Q1は、永久磁石66が第1位置P1を通過した直後に、電磁石70を第2位置P2から第1位置P1に移動させることができるように定められている。図11(C)は、電磁石70を第2位置P2から第1位置P1に移動させた状態(第3状態)を示しており、図11(D)は、電磁石70を励磁させた状態(第4状態)を示している。なお、図10(A),(B)に示すように、第1位置P1にある電磁石70は励磁されていない。
【0066】
ステップS11において、制御部34は、各永久磁石66が予め定められた引込み指示位置Q2に到達したか否かを判断し、「YES」と判断すると、ステップS13に進み、「NO」と判断すると、引込み指示位置Q2に到達するまで待機する。引込み指示位置Q2は、プッシュプルソレノイド74に対して引戻し動作の開始を指示する時点に対応する永久磁石66の位置であり、第1位置P1から予め定められた距離だけ離れた位置に定められている。図12(E)は、各永久磁石66が引込み指示位置Q2に到達していない状態(第5状態)を示しており、図12(F)は、各永久磁石66が引込み指示位置Q2に到達した状態(第6状態)を示している。
【0067】
第1位置P1から引込み指示位置Q2までの距離は、特に限定されるものではないが、電磁石70の回転方向前側に位置する永久磁石66と電磁石70との間に生じる斥力を十分に低減させることができる距離であってもよいし、電磁石70の回転方向後側に位置する永久磁石66と電磁石70との間に吸引力を生じさせることができる距離であってもよい。
【0068】
ステップS13において、制御部34は、励磁を解除するように電磁石70の動作を制御し、ステップS15において、制御部34は、電磁石70を第1位置P1から第2位置P2に移動させるようにプッシュプルソレノイド74の動作を制御する。図12(F)は、電磁石70の励磁を解除して、電磁石70を第1位置P1から第2位置P2に移動させた状態を示している。
【0069】
次のステップS17において、制御部34は、磁力駆動部26の制御動作を終了するか否かを判断し、「YES」と判断すると終了し、「NO」と判断すると、ステップS1に戻る。
【0070】
(発電システムの効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、図11(D)に示すように、電磁石70を永久磁石66に対して回転体14の回転方向後側から近接して対向させることができるので、電磁石70と永久磁石66との間で発生する斥力を回転体14に対して効率よく付与することができる。したがって、水力駆動部30などの他のエネルギー源が無くても回転体14を回転させることが可能であり、長時間にわたって発電量を安定させることができる。
【0071】
また、発電システム10の組立作業時には、電磁石70に磁力が発生しないので、組立作業を容易にするための特別な構成は不要であり、安価に製造できる。さらに、第1磁力発生部68の永久磁石66は、回転体14の軸方向側面に固定されるので、回転体14の外周面に水車ブレード38などを取り付ける部分を確保することができる。
【0072】
図11(C),(D)に示すように、電磁石70は、永久磁石66が第1位置P1を通過した直後に第1位置P1に移動されて、永久磁石66との間で斥力を生じさせるので、電磁石70が第1位置P1に移動する際には、回転体14の回転を妨げる磁力の発生を抑制して、回転効率を高めることができる。
【0073】
図12(F)に示すように、制御部34は、永久磁石66が第1位置P1から予め定められた距離だけ離れたときに、電磁石70の励磁を解除して、電磁石70を第1位置P1から第2位置P2に移動させるので、次の永久磁石66を、第1位置P1に通して第1位置P1の前側に移動させることができる。
【0074】
図5に示すように、位置情報取得手段28の第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82は、各第1マーク(マーク)80を非接触で検知し、位置情報取得手段28の速度測定部84は、回転体14の回転速度を非接触で測定するので、第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82および速度測定部84は、回転体14の回転を妨げない。
【0075】
図5に示すように、発電システム10は、磁力駆動部26および水力駆動部30を備えているので、回転体14の動力として、電磁石70と永久磁石66との間で生じる斥力だけでなく、圧力水の水力を利用することができる。また、第2磁力発生部72は、噴水ノズル90a~90cよりも上方に設けられるので、電磁石70およびプッシュプルソレノイド74に水が付着することを防止できる。
【0076】
図1に示すように、噴水ノズル90a~90cから噴射された水を、タンク94に回収して再利用できるので、自然環境の影響を受けることがなく、長時間にわたって発電量を安定させることができる。また、回転起動部32では、バネ104の復元力(弾性力)で回転体14をスムーズに回転起動させることができる。
【0077】
(変形例)
本発明の実施にあたっては、上記の実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、図6に示す各永久磁石66および各電磁石70の極性は、S極とN極が逆にされてもよい。また、永久磁石66および電磁石70の数は、特に限定されるものではなく、少なくとも1つでよい。ただし、数を変更する場合でも、複数の電磁石70の角度間隔は、複数の永久磁石66の角度間隔と一致させる必要がある。
【0078】
上記実施形態では、ポンプ96を有する水力駆動部30が用いられているが、これに代えて、自然の水流を利用した他の水力駆動部や、風力、太陽光および地熱などの自然エネルギーを利用した駆動部が用いられてもよい。また、水力駆動部30を構成する噴水ノズル90a~90cのそれぞれから噴射される加圧水の水量の比率は、適宜変更されてもよい。
【0079】
上記実施形態では、電磁石70が第2位置P2から第1位置P1に移動された後に、永久磁石66との間で斥力が生じるように電磁石70の動作が制御されるが、電磁石70が第2位置P2から第1位置P1に移動される前に、永久磁石66との間で斥力が生じるように電磁石70の動作が制御されてもよい。
【0080】
上記実施形態では、移動駆動部76がプッシュプルソレノイド74を有しているが、プッシュプルソレノイド74に代えて、ボールねじ機構、リンク機構、エアシリンダおよび油圧シリンダなどが使用されてもよい。
【0081】
上記実施形態では、位置情報取得手段28の第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)82および第2マーク検知センサー88が、第1マーク(マーク)80および第2マーク86を非接触で検知する非接触センサーとして構成されているが、これらは、物理的な接触により検知する接触センサー(図示省略)として構成されてもよい。
【0082】
上記実施形態では、図3に示す9本の連結棒44のうち6本に、慣性質量切替え機構46が設けられているが、連結棒44および慣性質量切替え機構46の数は、適宜変更されてもよい。また、上記実施形態では、図3に示す錘吸着用電磁石50に対して蓄電器18から電力が供給されるが、回転体14に取り付けられた乾電池(図示省略)から電力が供給されてもよい。さらに、錘吸着用電磁石50の動作は、回転体14に取り付けられた専用の制御部(図示省略)で制御されてもよい。
【0083】
上記実施形態では、永久磁石66および電磁石70が、回転体14の周方向へ長い直方体状に形成されているが、これらは、回転体14の周方向へ長い円柱状、楕円柱状および異形状などに形成されてもよい。また、電磁石70は、回転体14の径方向へ長い形状に形成されてもよい。
【0084】
図13は、他の磁力駆動部112の構成を示す部分拡大右側面図である。図13に示す他の磁力駆動部112では、電磁石114が回転体14の径方向へ長い円柱状に形成されており、電磁石114の突出方向の先端側がN極とされ、基端側がS極とされている。この場合でも、電磁石114と永久磁石66との間に斥力を生じさせることができるので、回転体14を回転駆動させることができる。
【符号の説明】
【0085】
P1…第1位置、P2…第2位置、Q1…押出し指示位置、Q2…引込み指示位置、10…発電システム、12…発電機、14a…前側の側面、14b…後側の側面、14…回転体、16…増速機、18…蓄電器、20…架台、26,112…磁力駆動部、28…位置情報取得手段、30…水力駆動部、32…回転起動部、34…制御部、38…水車ブレード、46…慣性質量切替え機構、58…ハウジング、66…永久磁石、68…第1磁力発生部、70,114…電磁石、72…第2磁力発生部、74…プッシュプルソレノイド、76…移動駆動部、80…第1マーク(マーク)、82…第1マーク検知センサー(マーク検知センサー)、84…速度測定部、86…第2マーク、88…第2マーク検知センサー、90a~90c…噴水ノズル、92…水路、94…タンク、96…ポンプ、100…ロックピン。

【要約】      (修正有)
【課題】長時間にわたって発電量を安定させることができるとともに安価に製造できる、化石燃料を使用しない汎用型の発電システムを提供する。
【解決手段】発電システムは、永久磁石66を有する第1磁力発生部68と、電磁石70を有する第2磁力発生部72と、移動駆動部76と、位置情報取得手段と、制御部とを備える。電磁石70を永久磁石66に対して回転体14の回転方向後側から近接して対向させる位置を第1位置P1とし、電磁石70を第1位置P1から回転体14の軸方向外側に退避させる位置を第2位置P2としたとき、移動駆動部76は、電磁石70を第1位置P1と第2位置P2との間で移動させるように構成される。制御部は、永久磁石66が第1位置P1を通過した直後に電磁石70を第1位置P1に移動させるように移動駆動部76の動作を制御するとともに、永久磁石66との間で斥力を生じさせるように電磁石70の動作を制御する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13