(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ヘルメット用カメラ及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/04 20060101AFI20230217BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20230217BHJP
G03B 17/08 20210101ALI20230217BHJP
【FI】
A42B3/04
G03B17/56 A
G03B17/08
(21)【出願番号】P 2018016050
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山路 智生
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-180954(JP,A)
【文献】特開2011-139138(JP,A)
【文献】特開2010-078772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0119512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/04
G03B 17/56
G03B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球状の帽体と前記帽体の前部側の下端から前方へ突出した庇とを有するヘルメットに装着して用いるカメラであって、
撮影機能を有するカメラ部と、
前記カメラ部を前記ヘルメットの前記庇に取り付けるための取付部と、
前記ヘルメットを着用した着装者に取り付けられる本体と、
前記カメラ部と前記本体とを接続する本体接続ケーブルとを備え、
前記取付部は、
前記ヘルメットの前記庇の周縁に結合する庇接続部と、
前記庇接続部に連結され、前記カメラ部を保持するカメラ保持部とを備え、
前記庇接続部は、
前記庇の上面に配置される上面配置部と、
前記庇の下面に配置される下面配置部と、
前記庇の先端に配置される先端配置部とを有し、
前記カメラ部が前記ヘルメットに取り付けられ
、かつ前記着装者が前記ヘルメットをまっすぐ着装し前記カメラ部のレンズを水平に向けた状態において、前記カメラ部の
前記レンズの下端が前記庇の高さ以下に位置し、前記カメラ部の下端が前記着装者の眼の高さよりも上方に位置し、前記本体接続ケーブルのうち前記カメラ部と接続されている一端側は前記庇よりも上方に位置することを特徴とするヘルメット用カメラ。
【請求項2】
前記カメラ保持部は、
一方のカメラ保持部と、
前記一方のカメラ保持部から所定の間隔をおいて配置された他方のカメラ保持部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項3】
前記カメラ部は、前記カメラ保持部に上下に回動可能に保持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項4】
前記カメラ保持部は、前記カメラ部を保持する先端が前記庇よりも前上方に位置することを特徴とする請求項3に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項5】
前記庇接続部が板ばねであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項6】
前記庇接続部は、
前記庇の前記周縁に結合する一方の庇接続部と、
前記一方の庇接続部から所定の間隔をおいて前記庇の前記周縁に結合する他方の庇接続部とを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項7】
前記カメラ部は、
前記レンズを有するカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの動作を制御する制御板と、
前記カメラモジュールと前記制御板を接続するフラットケーブルとを有し、
前記制御板は、前記カメラモジュールの上方に横倒しに配置され、
前記フラットケーブルは、前記カメラモジュールと前記制御板との間に折り畳んで配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項8】
前記カメラモジュール、前記制御板、及び前記フラットケーブルが収容される筐体を備え、
前記筐体には、前記筐体内への液体の浸入を防ぐ防水部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のヘルメット用カメラ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラが前記庇の周縁に取り付けられていることを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットに装着して用いるヘルメット用カメラ、及びヘルメット用カメラを備えたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
安全性や作業効率の向上等を目的として、作業用ヘルメットにカメラを装着し、現場の音声・映像などといった状況を記録又はリアルタイムで遠隔地に伝送することが行われている。
例えば特許文献1には、作業用ヘルメットにカメラを取り付け、カメラで撮影した画像データをリアルタイムで監視用端末に送信する作業画像監視システムが開示されている。特許文献1の
図2には、カメラを作業用ヘルメットの帽体の前部に設けた例が示されている。
また、特許文献2には、カメラ、レーザーポインタ、送受信手段、及びスピーカーを備え、現地作業者が遠隔地へ現場の状況画像を送信すると共に、遠隔地からの指示を受け取ることができる指標投射手段付きヘルメットが開示されている。特許文献2の
図1等には、カメラを作業用ヘルメットの帽体の前部に設けた例が示されている。
また、特許文献3には、レンズの周方向に所定間隔で配置されたLEDを備えたカメラ付き照明装置が開示されている。特許文献3の
図1等には、カメラを作業用ヘルメットの帽体の前部に設けた例が示されている。
また、特許文献4には、作業用ヘルメットに、カメラ、送受話装置、及びモニタ装置を備え、現地作業者が遠隔地へ現場の状況画像を送信すると共に、遠隔地からの指示を受け取ることができる双方向情報伝送システムが開示されている。特許文献4の
図2等には、カメラを作業用ヘルメットの帽体の左側部に設けた例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-192202号公報
【文献】特開2010-185155号公報
【文献】特開2012-162830号公報
【文献】特開平5-211650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から3のようにカメラがヘルメットの帽体の前部に設けられている場合や、特許文献4のようにカメラがヘルメットの帽体の側方に設けられている場合は、ヘルメット着装者の視線とカメラの位置とにずれがあるため、所望の撮影結果が得られなかったり、着装者が所望の撮影角度に合わせようとカメラの位置に気を取られたりしてしまう可能性がある。
また、ヘルメットの前部にはヘッドライト等の付属品が取り付けられることがあるが、特許文献1又は2のようにカメラをヘルメットの帽体の前部に取り付けた場合は、付属品とカメラが干渉してしまうため、カメラと付属品を一直線上に取り付けることは困難である。
【0005】
そこで本発明は、ヘルメット着装者の視線とカメラの撮影方向とのずれを少なくでき、また、ヘルメットの帽体の前部に取り付けられたヘッドライト等の付属品に干渉しないヘルメット用カメラ、及びそのヘルメット用カメラを備えたヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のヘルメット用カメラ1は、半球状の帽体101と前記帽体101の前部側の下端から前方へ突出した庇102とを有するヘルメット100に装着して用いるカメラであって、撮影機能を有するカメラ部10と、前記カメラ部10を前記ヘルメット100の前記庇102に取り付けるための取付部20と、前記ヘルメット100を着用した着装者に取り付けられる本体3と、前記カメラ部10と前記本体3とを接続する本体接続ケーブル2とを備え、前記取付部20は、前記ヘルメット100の前記庇102の周縁に結合する庇接続部21と、前記庇接続部21に連結され、前記カメラ部10を保持するカメラ保持部22とを備え、前記庇接続部21は、前記庇102の上面に配置される上面配置部21Aと、前記庇102の下面に配置される下面配置部21Bと、前記庇102の先端に配置される先端配置部21Cとを有し、前記カメラ部10が前記ヘルメット100に取り付けられ、かつ前記着装者が前記ヘルメット100をまっすぐ着装し前記カメラ部10のレンズ11を水平に向けた状態において、前記カメラ部10の前記レンズ11の下端11aが前記庇102の高さ以下に位置し、前記カメラ部10の下端が前記着装者の眼の高さよりも上方に位置し、前記本体接続ケーブル2のうち前記カメラ部と接続されている一端側は前記庇102よりも上方に位置することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のヘルメット用カメラ1において、前記カメラ保持部22は、一方のカメラ保持部22と、前記一方のカメラ保持部22から所定の間隔をおいて配置された他方のカメラ保持部22とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のヘルメット用カメラ1において、前記カメラ部10は、前記カメラ保持部22に上下に回動可能に保持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載のヘルメット用カメラ1において、前記カメラ保持部22は、前記カメラ部10を保持する先端が前記庇102よりも前上方に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ1において、前記庇接続部21が板ばねであることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ1において、前記庇接続部21は、前記庇102の前記周縁に結合する一方の庇接続部21と、前記一方の庇接続部21から所定の間隔をおいて前記庇102の前記周縁に結合する他方の庇接続部21とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ1において、前記カメラ部10は、前記レンズ11を有するカメラモジュール12と、前記カメラモジュール12の動作を制御する制御板13と、前記カメラモジュール12と前記制御板13を接続するフラットケーブル16とを有し、前記制御板13は、前記カメラモジュール12の上方に横倒しに配置され、前記フラットケーブル16は、前記カメラモジュール12と前記制御板13との間に折り畳んで配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載のヘルメット用カメラ1において、前記カメラモジュール12、前記制御板13、及び前記フラットケーブル16が収容される筐体14を備え、前記筐体14には、前記筐体14内への液体の浸入を防ぐ防水部15が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の本発明のヘルメットは、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のヘルメット用カメラ1が前記庇102の周縁に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カメラ部を帽体の前面に取り付ける場合よりもレンズの位置を低くすることができる。これにより、レンズの位置が着装者の眼の高さに近くなりカメラ部の撮影方向と視線とのずれを小さくできる。また、カメラ部を庇に取り付けることができるため、ヘルメットの帽体の前面にはヘッドライト等の付属品を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施例によるヘルメットを着用した着装者を示す図
【
図2】同ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す斜視図
【
図3】同ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す図
【
図6】同ヘルメットのうちヘルメット用カメラの取付け部分を拡大した図
【
図7】同ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施の形態によるヘルメット用カメラは、撮影機能を有するカメラ部と、カメラ部をヘルメットの庇に取り付けるための取付部とを備え、カメラ部がヘルメットに取り付けられた状態において、カメラ部のレンズの下端が庇の高さ以下に位置するものである。
本実施の形態によれば、カメラ部を帽体の前面に取り付ける場合よりもレンズの位置を低くすることができる。これにより、レンズの位置が着装者の眼の高さに近くなりカメラ部の撮影方向と視線とのずれを小さくできる。また、カメラ部を庇に取り付けることができるため、ヘルメットの帽体の前面にはヘッドライト等の付属品を取り付けることができる。
【0018】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、取付部は、ヘルメットの庇の周縁に結合する庇接続部と、庇接続部に固定され、カメラ部を保持するカメラ保持部とを備え、庇接続部は、庇の上面に配置される上面配置部と、庇の下面に配置される下面配置部と、庇の先端に配置される先端配置部とを有し、上面配置部と下面配置部とは、先端配置部を介して連結されているものである。
本実施の形態によれば、庇接続部は、庇の上面に接する上面配置部と、庇の下面に接する下面配置部と、庇の先端に接する先端配置部を備えているため、庇と堅固に結合され、振動や衝撃等による揺動又は位置ずれが発生しにくい。
【0019】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、カメラ保持部は、一方のカメラ保持部と、一方のカメラ保持部から所定の間隔をおいて配置された他方のカメラ保持部とを備えるものである。
本実施の形態によれば、一方のカメラ保持部と他方のカメラ保持部を備えることにより、カメラ保持部が単一の場合よりもカメラ部の揺動を抑制することができる。
【0020】
本発明の第4の実施の形態は、第2又は第3の実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、カメラ部は、カメラ保持部に上下に回動可能に保持されているものである。
本実施の形態によれば、着装者は撮影対象の位置や作業状況等に応じてカメラ部の上下位置を任意に変更することができる。
【0021】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、カメラ保持部は、カメラ部を保持する先端が庇よりも前上方に位置するものである。
本実施の形態によれば、カメラ部が庇の前上方に突出して配置されるため、カメラ部の回動範囲を大きくすることができる。また、カメラ部が庇の水平前方に突出して配置される場合よりも庇とカメラ部との隙間を小さくして、カメラ部の揺動を抑制することができる。
【0022】
本発明の第6の実施の形態は、第2から第5のいずれか一つの実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、庇接続部を板ばねとするものである。
本実施の形態によれば、庇接続部を板ばねとすることによって、庇接続部は自らの弾性によって庇を堅固に挟み込むことができる。そのため、上面配置部と下面配置部をコイルばね等で結合した場合と比べて、庇接続部の構成を簡素化して小型化できる。
【0023】
本発明の第7の実施の形態は、第2から第6のいずれか一つの実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、庇接続部は、庇の周縁に結合する一方の庇接続部と、一方の庇接続部から所定の間隔をおいて庇の周縁に結合する他方の庇接続部とを備えるものである。
本実施の形態によれば、一方の庇接続部と他方の庇接続部を備えることにより、庇接続部が単一の場合よりも庇接続部と庇との接触面積が増すため、庇接続部をより堅固に庇に結合させることができ、振動や衝撃等が加わった場合にも位置ずれが生じにくくなる。また、結合が堅固になることによって庇接続部は長さがそれほど必要ではなくなるため、比較的庇が短いヘルメットであってもヘルメット用カメラを取り付けることができる。
【0024】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第7のいずれか一つの実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、カメラ部は、レンズを有するカメラモジュールと、カメラモジュールの動作を制御する制御板と、カメラモジュールと制御板を接続するフラットケーブルとを有し、制御板は、カメラモジュールの上方に横倒しに配置され、フラットケーブルは、カメラモジュールと制御板との間に折り畳んで配置されているものである。
本実施の形態によれば、制御板がカメラモジュールの上方に横倒しに配置され、フラットケーブルがカメラモジュールと制御板との間に配置されていることで、カメラ部の高さを低く抑えて小型化できる。これにより、帽体の前面に配置されるヘッドライト等の付属品との干渉をより確実に避けることができる。
【0025】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態によるヘルメット用カメラにおいて、カメラモジュール、制御板、及びフラットケーブルが収容される筐体を備え、筐体には、筐体内への液体の浸入を防ぐ防水部が設けられているものである。
本実施の形態によれば、カメラ部への液体浸入が防止されるため、屋外でも使用することができる。
【0026】
本発明の第10の実施の形態によるヘルメットは、第1から第9のいずれか一つの実施の形態によるヘルメット用カメラが庇の周縁に取り付けられているものである。
本実施の形態によれば、カメラ部の撮影方向と視線とのずれが小さいヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを提供することができる。また、ヘルメットの帽体の前面にはヘッドライト等の付属品を取り付けることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例によるヘルメット用カメラ及びヘルメットについて説明する。
【0028】
図1は、本実施例によるヘルメットを着用した着装者を示す図である。
ヘルメット100に取り付けられたヘルメット用カメラ1は、USBケーブルやHDMI(登録商標)ケーブル等の本体接続ケーブル2を介して本体3に接続されている。本体3は、ヘルメット100の着装者の胸部又は腰部等、ヘルメット100以外に取り付けられる。
ヘルメット100の着装者は、ヘルメット用カメラ1を用いて、工事現場や工場施設などにおける作業状況又は機器の状況等を撮影する。
本体3は、ヘルメット用カメラ1で撮影した画像を撮影場所から離れた場所へ伝送する伝送手段と、ヘルメット用カメラ1に電源を供給する電源供給手段を備える。着装者によって撮影された現場の状況が現場から離れた場所に伝送されることで、作業指揮者等は、現場から離れた場所に居る場合であっても現場の状況を把握しやすくなり、着装者に対して的確な指示を出すことができる。なお、本体3は、ヘルメット用カメラ1で撮影した画像を記憶する記憶手段を備えていてもよい。
図1のように、ヘルメット用カメラ1と本体3とを分離し、ヘルメット100にはヘルメット用カメラ1のみを取り付けることで、撮影手段を取り付けることによるヘルメット100の重量増加を少なくし、着装者の負担を軽減することができる。
【0029】
図2は、ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す斜視図である。
ヘルメット100は、工事現場や工場等で着用される産業用ヘルメット(産業用保護帽)である。ヘルメット100は、半球状の帽体101と、帽体101の前部側の下端から前方へ突出した庇(鍔)102とを有する。
ヘルメット用カメラ1は、撮影機能を有するカメラ部10と、カメラ部10をヘルメット100の庇102に取り付けるための取付部20を備える。
【0030】
図3は、ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す図であり、
図3(a)は正面図、
図3(b)は背面図である。
図3に示すように、カメラ部10は、庇102の周縁よりも前方に位置し、レンズ11を正面(水平)に向けた状態において、レンズ11の下端11aが庇102よりも下方に位置している。
このように、カメラ部10を庇102に取り付け、レンズ11の下端11aを庇102の先端の高さ以下に位置させることで、カメラ部10を帽体101の前面に取り付ける場合よりもレンズ11の位置を低くすることができる。これにより、レンズ11の位置が着装者の眼の高さに近くなりカメラ部10の撮影方向と視線とのずれを小さくできる。
【0031】
なお、カメラ部10の高さを下げ、着装者の眼の高さにレンズ11を近づければ近づけるほど、カメラ部10の撮影方向と着装者の視線とのずれを小さくすることができるが、その一方で、カメラ部10の高さを下げすぎると着装者の視界がカメラ部10によって遮られて狭くなってしまう。そのため、カメラ部10の下端は、着装者の眼の高さよりも上方に位置させることが好ましい。本実施例では、
図1から
図3に示すように、レンズ11の中心の高さはヘルメット100の庇102の中央部の高さと略同一であり、カメラ部10の下端は着装者の眼の高さよりも上方に位置している。これにより、着装者の視界を十分確保することができる。
また、カメラ部10は、レンズ11の中心と着装者の両眼の中間点とが概ね同一直線上に位置するように、ヘルメット100の庇102の中央部に取り付けられている。これにより、カメラ部10の撮影方向と着装者の視線とのずれをより小さくすることができる。
【0032】
図4は、カメラ部の構成を示す図である。
カメラ部10は、レンズ11を有するカメラモジュール12と、カメラモジュール12を制御する矩形板状の制御板13と、カメラモジュール12及び制御板13を備え、筐体14に収容されている。
制御板13には、本体接続ケーブル2の一端が接続されている。本体接続ケーブル2を通じて、本体3から制御板13への電源供給、及び本体3と制御板13間の通信が行われる。
筐体14は、二分割構造であり、前筐体14Aと後筐体14Bを備える。
図4においては、前筐体14Aを後筐体14Bから取り外した状態を示している。前筐体14Aと後筐体14Bとの接続面は平らであり、筐体14内への液体の浸入を防ぐ防水部15が設けられている。防水部15には、例えば隔壁及びパッキンゴムが配置される。
【0033】
図5は、カメラ部の筐体内部の機器配置を示す図であり、
図5(a)は前方から見た斜視図、
図5(b)は後方から見た斜視図である。なお、後筐体14Bは省略している。
カメラモジュール12と制御板13とは、柔軟性を有するフラットケーブル16で接続されている。
矩形板状の制御板13は、カメラモジュール12の上方に、横倒しに配置されている。フラットケーブル16は、カメラモジュール12と制御板13との間に折り畳まれた状態で配置されている。
このように、制御板13がカメラモジュール12に面を向けた横倒しの状態で配置され、フラットケーブル16がカメラモジュール12と制御板13との間に配置されていることで、カメラ部10の高さを低く抑えて小型化することができる。これにより、帽体101の前面に配置されるヘッドライト等の付属品との接触を避けることができる。
【0034】
また、カメラモジュール12、制御板13、及びフラットケーブル16は、防水部15が設けられた筐体14内に収容されているため、風雨にさらされる屋外等でもヘルメット用カメラ1を使用することができる。
【0035】
また、制御板13がカメラモジュール12の上方に配置されていることにより、
図4に示すように、筐体14の上部及び本体接続ケーブル2を庇102よりも上方に配置して、着装者の視界を確保することができる。
【0036】
図6は、ヘルメットのうちヘルメット用カメラの取付け部分を拡大した図であり、
図6(a)は左方から見た斜視図、
図6(b)は下方から見た斜視図、
図6(c)は上方から見た斜視図である。また、
図7は、ヘルメット用カメラが装着されたヘルメットを示す上面図である。
取付部20は、庇102の周縁に結合される。
取付部20は、庇接続部21とカメラ保持部22を備える。庇接続部21をヘルメット100の庇102の周縁と結合させることで、取付部20を庇102に固定することができる。また、カメラ保持部22には、筐体14に収容されたカメラ部10が取り付けられる。カメラ保持部22は、庇接続部21に連結されている。
【0037】
庇接続部21は、二股状に構成されており、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21を備える。
一方の庇接続部21と他方の庇接続部21とは、上部に架け渡された架橋部23によって連結されている。一方の庇接続部21と他方の庇接続部21が架橋部23を介して連結されていることによって、庇102への庇接続部21の取付け・取外しを一体的に行えるなど、作業性が向上する。
【0038】
庇接続部21は、庇102の上面に配置される上面配置部21Aと、庇102の下面に配置される下面配置部21Bと、庇102の先端に配置される先端配置部21Cを備える。上面配置部21Aと下面配置部21Bとは、先端配置部21Cを介して連結されている。
庇接続部21は、庇102の上面に接する上面配置部21Aと、庇102の下面に接する下面配置部21Bと、庇102の先端に接する先端配置部21Cを備えているため、庇102と堅固に結合され、振動や衝撃等による揺動又は位置ずれが発生しにくい。
【0039】
庇接続部21は、細板状の板ばねであり、庇102を挟み込むことができるように、先端配置部21Cで湾曲的に180度折り返され、上面配置部21Aと下面配置部21Bが向かい合わせに形成されている。上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間隔は、少なくとも一部が庇102の厚みよりも小さくなっている。
庇接続部21を板ばねとすることによって、庇接続部21は自らの弾性によって庇102を堅固に挟み込むことができる。そのため、上面配置部21Aと下面配置部21Bをコイルばね等で結合した場合と比べて、庇接続部21の構成を簡素化して小型化できる。
【0040】
庇接続部21を庇102に接続する際は、上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間に庇102を挟み込む。上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間隔が庇102の厚みよりも小さくなっている部分があるが、庇接続部21は弾性を有するため、庇102の厚みよりも小さい間隔となっている部分は、上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間に挿入される庇102によって内側から押し拡げられる。
庇102が挟み込まれた庇接続部21は、板ばねの復元力によって、特に上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間隔が庇102の厚みよりも小さい部分において庇102の上面及び下面を押圧する状態となるため、振動や衝撃等の外力が加わった場合にも位置ずれが抑制される。
【0041】
一般的にヘルメット100の庇102は、帽体101から縁部にかけて直線状に突出しているのではなく、帽体101から縁部にかけて湾曲して突出している。よって、1枚の平板状の板ばねを先端配置部で180度折り返して形成したものを庇接続部とし、その庇接続部を用いて庇102を挟み込んだ場合には、庇接続部の上面配置部及び下面配置部と庇102との間に隙間ができるため面接触とはならず、上面側1点と下面側1点での点接触となってしまい、振動や衝撃等が加わった場合に庇接続部に揺動や位置ずれが起こりやすい。また、仮に庇接続部の形状を庇の湾曲度合いに合わせて形成したとしても、上面配置部及び下面配置部と庇102との隙間を無くすことは困難である。また、庇102の湾曲度合いはヘルメット100によって様々であるから、庇102の湾曲度合いに応じて庇接続部を形成すると、ヘルメット用カメラ1の汎用性が失われたり製造コストが上昇したりするなどの課題が生じる。
また、一般的にヘルメット100の庇102は、上面視で弧状に形成されている。よって、1枚の平板状の板ばねを先端配置部で180度折り返して形成したものを庇接続部とし、その庇接続部を用いて庇102の中央部を挟み込んだ場合には、庇接続部の先端配置部は庇102のうち最も突出した部分のみに当接し、それ以外の部分では先端配置部と庇102の先端との間に隙間が生じてしまうため、振動や衝撃等が加わった場合に庇接続部に揺動や位置ずれが起こりやすい。なお、庇102の形状に合わせて庇接続部を形成すると、上記と同様にヘルメット用カメラ1の汎用性が失われたり製造コストが上昇したりするなどの課題が生じる。
そこで、本実施例においては、上述のように庇接続部21を二股状に構成している。一方の庇接続部21と他方の庇接続部21を備えることで、一方の庇接続部21における2点接触(上面側1点、下面側1点)と、他方庇接続部21における2点接触(上面側1点、下面側1点)の計4点接触となる。接触点が増えることによって接触面積が増すため、庇接続部21をより堅固に庇102に結合させることができる。さらに、庇接続部21を二股状にすることで、庇102のうち最も突出した部分をかわして庇接続部21の両側(一方の庇接続部21と他方の庇接続部21)において先端配置部21Cを庇102に確実に当接させることができる。これにより、振動や衝撃等が加わった場合にも位置ずれが生じにくくなる。また、結合が堅固になることによって庇接続部21は長さがそれほど必要ではなくなるため、庇接続部21を短くすることで、比較的庇が短いヘルメットであってもヘルメット用カメラ1を取り付けることができる。
【0042】
また、本実施例における庇接続部21の上面配置部21Aは、全体的に直線状であり開放端部側が下面配置部21Bから離れる方向に湾曲している。また、下面配置部21Bは、先端配置部21C側(折り返し側)から上面配置部21Aに近づく方向に湾曲した後、庇102の厚みよりも上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間隔が小さくなった部分を境として、開放端部側にかけて上面配置部21Aから離れる方向に湾曲した形状となっている。すなわち庇接続部21は、略R字状に形成されている。この形状により、上面配置部21Aと下面配置部21Bをより堅固に庇102に結合させることができる。
なお、下面配置部21Bのうち庇102の厚みよりも上面配置部21Aと下面配置部21Bとの間隔が小さくなっている部分は、ゴム等の滑り止め材で覆われていることが好ましい。滑り止め材を設けることによって庇102の下面と下面配置部21B間の摩擦力が強くなり、振動や衝撃等による庇接続部21の揺動や位置ずれを抑制することができる。
【0043】
図7に示すように、庇接続部21を庇102の中央部に結合させた状態において、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21とは、庇102の中央部を軸として対称的に位置する。一方の庇接続部21の外側面から他方の庇接続部21の外側面までの長さXは、ヘルメット100の一方の側部から他方の側部までの長さPの15%以上30%以内としている。
また、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21との間隔Yは、筺体14のうち本体接続ケーブル2が内部に配置されている部分を除いた領域の幅Zよりも小さい。また、一方の庇接続部21の外側面から他方の庇接続部21の外側面までの長さXも、筺体14のうち本体接続ケーブル2が内部に配置されている部分を除いた領域の幅Zよりも小さい。間隔Yは幅Zの60%以上70%以下とすることが好ましく、長さXは幅Zの80%以上95%以下とすることが好ましい。
このように庇接続部21を小型化することで、障害物等に庇接続部21が接触する可能性を下げることができると共に、取付部20全体の軽量化を図り着装者の負担を軽減することができる。
【0044】
カメラ保持部22は、二股状に構成されており、一方のカメラ保持部22と他方のカメラ保持部22を備える。一方のカメラ保持部22及び他方のカメラ保持部22は、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21との間に配置されており、一方のカメラ保持部22は一方の庇接続部21に隣接し、他方のカメラ保持部22は他方の庇接続部21に隣接している。
カメラ保持部22は、架橋部23の上面に固定された後端を基点として前上方に傾いた状態で設けられており、先端が庇102よりも前方に突出して配置される。カメラ保持部22の先端にはカメラ部10が、カメラ保持部22との接続部を中心として上下に回動可能に保持されている。
【0045】
図6及び
図7に示すように、カメラ部10が、一方のカメラ保持部22と他方のカメラ保持部22によって保持されていることにより、単一のカメラ保持部22で保持される場合よりもカメラ部10の揺動が抑制されるため、撮影時のぶれを低減することができる。
また、カメラ部10の上下の回動範囲を大きくするためには、カメラ部10を庇102よりも前方に配置して庇102との干渉を回避する必要があるが、庇102とカメラ部10との水平距離が大きくなるとカメラ部10が揺動しやすくなる。そこで、カメラ保持部22を架橋部23の上面に固定された後端を基点として前上方に傾いた状態で設け、カメラ部10を庇102の前上方に突出配置することにより、カメラ保持部22を架橋部23の上面に固定された後端を基点として水平に設け、カメラ部10を庇102の水平前方に突出配置した場合よりも庇102とカメラ部10との水平距離を小さくして、カメラ部10の揺動を抑制することができる。
【0046】
図8は、カメラ部の回動動作を示す図であり、
図8(a)は側面図、
図8(b)は背面図である。
図8(a)はカメラ部10を水平方向から上方に回動させた状態と、下方に回動させた状態を示している。また、
図8(b)はカメラ部10を水平方向から上方に回動させた状態を示している。
上述のように、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21との間隔が筐体14の横幅よりも大きく設定されているので、カメラ部10を下方へ回動させる際に庇接続部21が邪魔にならない。よって、カメラ部10の下方への回動範囲を大きくできる。なお、カメラ部10を下方へ回動させたとき、カメラ部10は、一方の庇接続部21と他方の庇接続部21との間に収まることになる。
カメラ部10が上下に回動可能であることにより、着装者は、撮影対象の位置や作業状況等に応じてカメラ部10の上下位置を任意に変更することができる。例えば、カメラ部10を下方に回動させて手元の資料を撮影したり、撮影が不要な場合にはカメラ部10を上方に回動させて、
図8(b)に示すように視界を広げたりすることができる。
なお、本実施例では、水平方向から上方には90°まで、下方には60°までカメラ部10を回動可能としている。
【0047】
図9は、ヘルメット用カメラの断面図である。
カメラ部10とカメラ保持部22との接続にはラチェット機構30が用いられており、カメラ部10の回動角度は多段階に調節可能であると共に、任意の回動角度で保持することができる。
これにより、着装者が容易にカメラ部10の回動角度を変更して撮影を行ったり、視界を広げたりすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ヘルメット用カメラ
2 本体接続ケーブル
3 本体
10 カメラ部
11 レンズ
11a 下端
12 カメラモジュール
13 制御板
14 筐体
14A 前筐体
14B 後筐体
15 防水部
16 フラットケーブル
20 取付部
21 庇接続部
21A 上面配置部
21B 下面配置部
21C 先端配置部
22 カメラ保持部
23 架橋部
30 ラチェット機構
100 ヘルメット
101 帽体
102 庇