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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】蟹のむき身食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/40 20160101AFI20230217BHJP
【FI】
A23L17/40 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018228033
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020089299
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】512228211
【氏名又は名称】東海 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100083127
【弁理士】
【氏名又は名称】恒田 勇
(72)【発明者】
【氏名】東海 勝久
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-175660(JP,A)
【文献】特開2017-112984(JP,A)
【文献】特開2015-045476(JP,A)
【文献】おいしい干物開発へ 来場者が意見交換 高岡で「塾」,富山新聞 朝刊,2018年10月26日,p.21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/00-17/60
A23B 4/00-4/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟹足から殻を外すむき身工程と、むき身を軽く塩茹でする調理工程と、塩茹でされたむ き身を載せて棚網の上でなす冷風及び光照射による乾燥工程と、乾燥により干物となった むき身を透明フィルムにより真空パックする包装工程とからなり、乾燥工程の初期におい ては、むき身への冷風および光照射を間欠的になすことでそよ風様雰囲気を作り、その雰 囲気の中にむき身を置くことを特徴とする蟹のむき身食品の製造方法。
【請求項2】
調理工程において、麦飯石の漬水または海洋深層水に食塩を添加し、むき身をつける塩 茹での水とすることを特徴とする請求項1記載の蟹のむき身食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベズニワイガニやタラバガニなどの蟹足の中身を素材とした蟹のむき身 品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蟹のむき身は、取れたての蟹を塩茹でしてから足をもぎ取り、さらに殻を取り除いたものとして、この状態で食されることが多い。殻付きのまま販売されることも多く、このときは消費者で殻から取ってむき身にされる。いずれにしても塩茹の薄い塩味だけでも十分においしく食することができた。つまり、従来、蟹のむき身は旨味成分を増加させるために天日干しする手間のかかる考え方はなく、また、足つきのまま高級料亭などに優先されることもあって、旨味成分の増加が望めるとしても干物としては存在しなかった。
【0003】
従来、干物にする食品は広く魚介類であって、例えばアジの干物の作り方としては、一匹丸ごと使うので、ワタを取ってよく洗い3.5パーセント(一般に海水の濃度が基準)の塩水につけた後、乾燥し余分な水分をぬいて干物が出来上がる。このとき、表面に膜が作られその下でイノシン酸やグルタミン酸などの旨味成分が発生し、水分が減少することで濃縮される。乾燥については、自然乾燥と、人工乾燥とに分かれていたが、自然乾燥が旨味成分の発生で美味しく、また噛みやすいソフト感の点で優れていた。
【0004】
しかしながら、安定供給を望む現代社会では、最高に美味しくなるとしても、木陰を利用するような自然現象に頼りがたく、干物では機械的に量産する体制がとられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自然乾燥の場合、下ごしらえで塩茹でが終わった材料を網で木陰に並べ、木の葉の間から点滅するようにかすかに漏れる太陽の光と、やっと気が付く程度の微風が時折り吹いてくることによって、材料に保水性の高い安定した膜が生じ、身がソフトとなることが分かった。蟹のむき身の場合は、このことが特に重要であって、機械乾燥では、身が細く水が抜けて乾燥しやすいために、老人や子供には噛み砕きがたく固くなりやすかった。しかし、この点については、自然乾燥の場合であると、最初から20分程度の初期段階で安定した膜の形成ができ、以後例えば3~5時間は軽い冷風のみで正常に乾燥できることを知った。
【0006】
上記のごとく、この発明の出願人においては、数々の実験を重ねた結果、蟹のむき身の場合でも、乾燥当初(状況にもよるが始めから例えば20分まで)に安定した保水膜を形成でき、そうしたならば残りの乾燥時間においては、軽い微風で良好に熟成できるという知見を得てこの発明を完成した。
【0007】
すなわち、この発明は、上記のような実情によるもので、蟹のむき身について、旨味成分の生成、保持(キープ)に適することはもちろん、細いむき身であっても過剰な乾燥が抑えられるために誰もが食べやすくソフトであり、量産にも適した蟹のむき身食品の製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、蟹足から殻を外すむき身工程と、むき身を 軽く塩茹でする調理工程と、塩茹でされたむき身を載せて棚網の上でなす冷風及び光照射 による乾燥工程と、乾燥により干物となったむき身を透明フィルムにより真空パックする 包装工程とからなり、乾燥工程の初期においては、むき身への冷風および光照射を間欠的 になすことでそよ風様雰囲気を作り、そよ風様雰囲気の中にむき身を置くことを特徴とす る蟹のむき身食品の製造方法を提供する。
【0009】
上記の構成によれば、乾燥工程の初期においては、むき身への冷風および光照射を間欠的になすことで、そよ風様雰囲気のなかでむき身を冷風乾燥することにより、初期の短時間に旨味成分や水分の保持に適した膜を形成できるので、それから後の時間を普通乾燥のみにしても、短時間でソフト干物を作ることができる。
【発明の効果】
【0010】
なお、調理工程において、麦飯石の漬水または海洋深層水に食塩を添加し、むき身をつ ける塩茹での水とすると、より好ましい蟹のむき身食品を製造方法することが出来る。
【0011】
以上説明したように、この発明によれば、表面を覆う膜によって水分が適度に保水されるので、自然干しに似て旨味成分が発生するとともに凝縮され、柔らかな感じで噛み切れやすく、口当たりも良い美味しい蟹足のむき身のソフト干物を提供でき、作業性も至って良好であるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る乾燥機を示す側面からみた断面図である。
図2】同乾燥機における回転羽根のA-A線矢視の拡大断面図である。
図3】この発明による蟹のむき身食品の一部切欠いた斜視図である。
図4図3のB‐B線矢視のうちの一部拡大断面図である。
図5】別の実施例による蟹のむき身食品の一部切欠いた斜視図である。
図6図5のC‐C線矢視の拡大断面図である。
図7】この発明に関して蟹のむき身食品の素材の入手経路および業界の状況、実施形態等について記す説明図である。
図8】この発明に関して浜揚げされたベニズワイガニの処理工程について示すブロック図である。
図9】この発明に関して浜揚げされたベニズワイガニの他の処理工程について示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
紅ズワイガニやタラバガニなど、むき身として食する大型蟹の産地は、日本海側に多く存在し、本出願人に係る富山県の場合、富山湾にある魚津港や新湊港等で水揚げされ、直ちに加工業者に引き取られるが(図7上部)、富山湾以外でとれたものも引き取って移入
され同時に加工される。加工は身抜きしたむき身を容器に詰めてパックされこれで配送される。このとき業者から加工業者(株式会社IMATO)に届けられる(同図矢印参照)。
【0014】
本出願人等は、加工業者として大型冷蔵庫を導入しているので(図7中部)、それにむき身のパック詰めが保管される。しかし、干物とする冷風乾燥機を導入しているのでそれが待機している状態である。冷風乾燥機では、室内に網またはざるの棚が取り外し可能に配置されるので、それに外で並べて棚掛けすることでむき身が乾燥機用として入れて冷風乾燥に供される。そしてそれぞれ真空パックされる。また、必要によりボイルし滅菌処理される。この滅菌処理は、透明フィルム12aの上から紫外線を照射しても有効になし得る。なお、仕上げは冷蔵庫または冷凍庫に保管される(図7下部参照)。これで出荷待ちとなる。
【0015】
浜揚げからこの真空パック商品までの工程を順番に示すと次の通りである(図8図9
)。
【0016】
「浜揚げ(加工業者にて引き取り)」→「蟹を塩茹で」→「身抜き」→「選別・パック詰め」→「冷蔵庫・冷凍庫にて保管」→「乾燥機用網に並べる」→「冷風乾燥機」→「真空パック」→「滅菌処理」→「冷凍庫・冷蔵庫にて保管」であるが、 一人の業者が一貫して行う場合(図8参照)と、「冷蔵庫・冷凍庫」を中間にして業者が前後して代わる場
合がある(図9参照)。
【0017】
この発明においては、むき身を被覆する膜11と真空パックのフィルム21により水ぬけが二重に抑制されるため、ソフトな感じの旨さが保持される。また、真空パックによりむき身10の位置が無秩序に分散されることなく、食べるときに取り出しやすい。また、トレイ(図示省略)に入れて同時に真空パックしても取り出しやすい。
【実施例1】
【0018】
図1図4は、一実施例を示したもので、蟹のむき身食品を干物にする乾燥機Mが使用され、これに冷風および光照射を間欠的になすそよ風様雰囲気Wがつくられる。これについては、円筒形ケース1の上に起風装置3を搭載し、その下に送風洞5が設けられ、それが広く下向きに解放され、そこに回転羽根9が縦軸回転に設けられる。また、送風洞5を構成する天壁には、発光器14,14、・・が回転羽根9の中心を中心に配置される。
【0019】
ケース1の前部には扉7が設けられ、内部には網棚13,13・・が出し入れ自在に配置され、また、下端底部には空間を設けることにより下に排気洞17が形成され、排気洞17の後端に排気ファン19が設けられ、これにより、内部空気が吸引排出される。
【0020】
上記の乾燥器Mにおいて、網棚13の上に下処理した蟹のむき身10を並べて運転すると、起風装置3から送風洞5に送られた空気は、網棚13に向かって流下しながら間欠的に阻止され、同時に発光器14から発する光が回転羽根9により間欠的に遮断される。こ
れによって、ケース1の内部において樹木やその枝葉がそよぎながら日光をさえぎっているという自然の木陰のごとくそよ風様雰囲気Wが発生する。
【0021】
そよ風様雰囲気Wにおいて初期的に20~30分間、冷風乾燥したむき身10は、安定した膜11が形成されているので、今度は引き続き軽く微風で冷風乾燥する。これにはゆっくりと例えば3時間~6時間をあてる。これで乾燥工程は終わったので、二つ合わせにした透明フィルム12aの間に挟んで真空パック12にし商品Pとする(図3図4)。
【0022】
食するときには、透明フィルム12aを破って中のむき身10を取り出すが、棒状であ
るので、摘みやすく口に少しずつ噛みながら身と膜とを美味しく味わうことができ、比較的柔らかいソフト干物であるが、膜11に薄皮が張っていて少し歯ごたえもあって、一種独特の風味を楽しむことができた。
【実施例2】
【0023】
図5及び図6は、同じく乾燥機Mを使った別の実施例を示したものであるが、この場合は、蟹足の先端部の細い個所の関節間の細身を利用し、膜11を形成した細い足のむき身10を寄せ集めて、集合物10aを透明フィルム12aに挟んで真空パック14にした。
【0024】
このようにして製造された製品は、パックを開いて中身をおいしく賞味できるが、かみ砕きやすいので、深く味わうことができ、特に老人や小さな子供でも安心して与えることができる。なお、本製法は太い部分のむき身であっても、筋に沿って割くことにより細身として同じように製品化でき、こうすれば有効利用により経済的であるとともに、老人や子供にも適する独特の風味食品となる。
【符号の説明】
【0025】
M 乾燥器
W そよ風様雰囲気
1 ケース
3 起風装置
5 送風洞
9 回転羽根
10 むき身
10a 細いむき身の集合物
11 膜
12 真空パック
12a 透明フィルム
13 網棚
14 発光器
17 排気洞
19 排気ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9