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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】直流検電器
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/155 20060101AFI20230217BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230217BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20230217BHJP
【FI】
G01R19/155
G01R35/00 E
G01R31/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019001185
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020112363
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000214560
【氏名又は名称】長谷川電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】奥野 茂敬
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-372553(JP,A)
【文献】特許第5586800(JP,B1)
【文献】特開平07-333263(JP,A)
【文献】実開昭61-003476(JP,U)
【文献】中国実用新案第201945625(CN,U)
【文献】特開2003-052540(JP,A)
【文献】中国実用新案第203811673(CN,U)
【文献】中国実用新案第206671408(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/155
G01R 35/00
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の操作棒の先端側に取り付けられた検電金具を電車線に引掛け係止させることにより、前記検電金具を介して前記電車線の充電電圧を検出する充電検出部と、前記充電検出部を介して検電金具をアース接続する接地線の断線を検出する断線検出部と、前記充電検出部が正常に動作するか否かを点検する動作点検部とを備え、
前記充電検出部、前記断線検出部および前記動作点検部が収容された検電器本体を前記操作棒の基端側に設けた直流検電器であって、
前記検電金具と前記充電検出部とを電気的に接続する充電検出線と、前記検電金具と前記動作点検部とを電気的に接続する動作点検線とが、前記操作棒の内部に収容された二芯構造を有し、
前記充電検出線には、前記検電金具と前記充電検出部との間に介挿された限流抵抗が設けられていると共に、前記動作点検線には、前記検電金具と前記動作点検部との間に介挿された限流抵抗が設けられ
前記動作点検部と電気的に接続され、前記接地線の先端部が断接可能に取り付けられる導電性プレートを、前記検電器本体に形成された凹部内に配設したことを特徴とする直流検電器。
【請求項2】
前記操作棒は、複数の筒状部材で構成することにより伸縮自在とし、前記充電検出線および前記動作点検線は、螺旋状に巻回された絶縁被覆電線で構成することにより伸縮可能とした請求項1に記載の直流検電器。
【請求項3】
前記操作棒は、単一の筒状部材で構成すると共に、前記充電検出線および前記動作点検線は、ストレート状に延びる絶縁被覆電線で構成した請求項1に記載の直流検電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電鉄沿線の架線電圧の有無を管理するために使用される電車線用の直流検電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電鉄沿線の架線には、1500V程度の直流電圧が変電所から送電されているが、保守管理上、任意的あるいは定期的に架線電圧の有無を任意の地点で検出する必要がある。
【0003】
架線電圧の有無を検出する検電作業では、通常、架線が高所に位置することから手動で長さ調整可能な携帯式のものが必要である。本出願人は、以下の構造を有する電車線用の直流検電器を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1で開示された直流検電器は、図5図7に示すように、充電検出部1と、断線検出部2と、動作点検部3とが収容された検電器本体5を具備する。検電器本体5は、複数の筒状部材6からなる絶縁性の操作棒7の基端側に取り付けられている。
【0005】
図5は直流検電器の概略構成を示す。図6(A)は操作棒7を収縮させた状態、図6(B)は操作棒7を伸長させた状態を示す。図7は検電器本体5の外観を示すが、表示ランプ、ブザーや押しボタン等のスイッチ類を省略している。
【0006】
充電検出部1は、操作棒7に内蔵された充電検出線8を介して、操作棒7の先端側に取り付けられた検電金具9と電気的に接続されている。充電検出部1は、検電金具9を架線(図示せず)に引掛け係止させることにより、検電金具9を介して架線電圧の有無を検出する回路である。
【0007】
断線検出部2は、充電検出部1と接地線10との間に電気的に接続されている。断線検出部2は、充電検出部1を介して検電金具9をレールにアース接続する接地線10の断線を検出する回路である。
【0008】
動作点検部3は、検電器本体5に設けられた点検電圧出力端子11および導電性プレート12と電気的に接続されている。動作点検部3は、検電前の点検時に、充電検出部1が正常に動作するか否かを点検する回路である。
【0009】
操作棒7は、複数の筒状部材6を軸方向に引き出すことにより伸長され、逆に、筒状部材6を押し込むことにより収縮される。操作棒7の伸長状態および収縮状態は、留め具13の回転操作により保持される。
【0010】
操作棒7は、検電金具9と充電検出部1とを電気的に接続する充電検出線8が筒状部材6の内部に収容された一芯構造を有する。充電検出線8は、ロッドアンテナと称される伸縮自在なGFRP(肉厚2.5mm)製の導電管が使用されている。
【0011】
接地線10は、絶縁被覆電線として検電器本体5から導出されている。接地線10の先端部14は、磁気吸着によりレールあるいは導電性プレート12に着脱自在に固定可能なマグネット構造となっている。
【0012】
なお、検電器本体5には、検電前の点検時に、動作点検線15が接続される点検電圧出力端子11が設けられている。動作点検線15は、直流検電器とは別体で用意されたカールコードと称される絶縁被覆電線である。
【0013】
動作点検線15の基端部は、点検電圧出力端子11に接続可能なバナナプラグ16を有する。また、動作点検線15の先端部は、検電金具9に接続可能なワニ口クリップ17を有する。
【0014】
以上の構成からなる直流検電器を使用した検電作業は、以下の要領で実施される。
【0015】
複数の筒状部材6を引き延ばした操作棒7の伸長状態で、接地線10の先端部14をレールに磁気吸着により固定することで、接地線10により充電検出部1をアース接続する。その上で、作業員が操作棒7の基端部を把持し、操作棒7の先端にある検電金具9を架線に引掛け係止させる。
【0016】
これにより、架線に引掛け係止された検電金具9および操作棒7内の充電検出線8を介して充電検出部1に架線電圧が印加され、充電検出部1で架線電圧の有無を検出する。架線が充電状態にあれば、検電器本体5に設けられた表示ランプまたはブザーにより作業員に報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2002-372553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、直流検電器による検電作業時、何等かの原因により接地線10が断線していたり、あるいは、充電検出部1が故障していたりする場合が考えられる。
【0019】
その場合、接地線10の断線や充電検出部1の故障に気付かず、検電作業を開始すると、架線が充電状態にあるにもかかわらず、表示ランプまたはブザーによる報知がないことになる。そのため、作業員は架線が停電状態であると誤判断し、充電状態にある架線に触れる危険性がある。
【0020】
このような危険性を回避するため、検電作業の開始に先立って、特許文献1で開示された直流検電器では、接地線10が断線しているか否かを検出すると共に、充電検出部1が正常に動作するか否かを点検することで、安全性の確保を図っている。
【0021】
つまり、接続線10の先端部14を検電器本体5の導電性プレート12に磁気吸着により接続固定する。これにより、断線検出部2で接地線10の断線を検出する。接地線10が断線していなければ、表示ランプまたはブザーにより、接地線10が断線していないことを作業員に報知する。
【0022】
その後、用意していた動作点検線15のバナナプラグ16を検電器本体5の点検電圧出力端子11に接続すると共に、動作点検線15のワニ口クリップ17を収縮状態にある操作棒7の先端の検電金具19に接続する。
【0023】
この状態で、検電器本体5の点検スイッチ(図示せず)をオンすることにより、動作点検部3で点検電圧を発生させる。点検電圧は、動作点検線15を介して検電金具19に印加される。検電金具19に印加された点検電圧の有無を充電検出線15を介して充電検出部1で検出する。
【0024】
これにより、動作点検部3で発生した点検電圧を充電検出部1で検出できれば、充電検出部1が正常に動作していることになる。このようにして、充電検出部1が正常に動作することを、表示ランプまたはブザーにより作業員に報知する。
【0025】
以上のような検電前の点検を実施した上で、直流検電器による検電作業を開始することになるが、従来の動作点検線15を使用した検電前の点検では、以下のような懸念があった。
【0026】
つまり、検電前の点検で使用する動作点検線15は、直流検電器とは別体で用意されたものである。そのため、直流検電器を現場へ搬送する際に、動作点検線15も現場へ搬送しなければならないことを作業員が忘れる可能性がある。
【0027】
このように、動作点検線15を現場へ搬送することを忘れると、検電前の点検を実施することが不可能となり、検電作業の安全性を確保することが困難となる。
【0028】
一方、検電前の点検時、動作点検線15のバナナプラグ16を検電器本体5の点検電圧出力端子11に接続すると共に、動作点検線15のワニ口クリップ17を検電金具19に接続しなければならない。
【0029】
この一連の接続作業が作業員にとって煩雑なものであることから、動作点検線15が現場にあっても、作業員が検電前の点検を実施しないことも想定される。このような検電前の点検の不実施も、検電作業の安全性を欠くことになる。
【0030】
そこで、本発明は、前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、検電前の点検を確実に実施させると共に、検電前の点検での作業性を向上させ得る直流検電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の直流検電器は、筒状の操作棒の先端側に取り付けられた検電金具を検電対象物に引掛け係止させることにより、検電金具を介して検電対象物の充電電圧を検出する充電検出部と、充電検出部を介して検電金具をアース接続する接地線の断線を検出する断線検出部と、充電検出部が正常に動作するか否かを点検する動作点検部とを備えている。
【0032】
本発明の直流検電器は、充電検出部、断線検出部および動作点検部が収容された検電器本体を、操作棒の基端側に設けた構造を具備する。
【0033】
前述した目的を達成するための技術的手段として、本発明は、検電金具と充電検出部とを電気的に接続する充電検出線と、検電金具と動作点検部とを電気的に接続する動作点検線とが、操作棒の内部に収容された二芯構造としたことを特徴とする。
【0034】
本発明では、充電検出線と共に動作点検線も操作棒の内部に収容した二芯構造としたことにより、直流検電器による検電作業に先立って、充電検出部が正常に動作するか否かを動作点検部で点検する検電前の点検を確実かつ簡易に実施することができる。
【0035】
本発明における操作棒は、複数の筒状部材で構成することにより伸縮自在とし、充電検出線および動作点検線は、螺旋状に巻回された絶縁被覆電線で構成することにより伸縮可能とした構造が望ましい。
【0036】
このような構造を採用すれば、筒状部材を伸長させることで長尺な操作棒を実現することができる。また、筒状部材の伸長に伴って充電検出線および動作点検線も伸長させることができる。その結果、検電対象物が高所に存在する架線である場合に好適である。
【0037】
本発明における操作棒は、単一の筒状部材で構成すると共に、充電検出線および動作点検線は、ストレート状に延びる絶縁被覆電線で構成することが望ましい。
【0038】
このような構造を採用すれば、短尺な操作棒を実現することができ、充電検出線および動作点検線もストレート状の絶縁被覆電線で済む。その結果、検電対象物が低所に存在する地下鉄のサードレール式電車線である場合に好適である。
【0039】
本発明において、動作点検部と電気的に接続され、接地線の先端部が断接可能に取り付けられる導電性プレートを、検電器本体に形成された凹部内に配設した構造が望ましい。
【0040】
検電前の点検時、接地線を導電性プレートに接続することで、導電性プレートと検電金具との間に高電圧の点検電圧が印加される。これに対して、導電性プレートが検電器本体の凹部内にあることから、作業員が導電性プレートに触れ難くなる。その結果、感電事故を防止でき、点検作業の安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、充電検出線と共に動作点検線も操作棒の内部に収容した二芯構造としたことにより、直流検電器による検電作業を開始するに先立って、充電検出部が正常に動作するか否かを動作点検部で点検する検電前の点検を確実かつ簡易に実施することができる。
【0042】
その結果、直流検電器による検電作業時、従来のような動作点検線の搬送ミスや、動作点検線の煩雑な接続がなくなるので、検電前の点検において、作業時間の短縮化が図れて作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態で、直流検電器の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の直流検電器で、(A)は操作棒を収縮させた状態を示す正面図、(B)は操作棒を伸長させた状態を示す正面図である。
図3図1の検電器本体の外観を示す斜視図である。
図4】本発明の他の実施形態で、直流検電器の外観を示す正面図である。
図5】従来の直流検電器の概略構成を示すブロック図である。
図6図5の直流検電器で、(A)は操作棒を収縮させた状態を示す正面図、(B)は操作棒を伸長させた状態を示す正面図である。
図7図5の検電器本体の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明に係る直流検電器の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。以下の実施形態では、電車線用の直流検電器、つまり、検電対象物として架線を例示するが、本発明は、架線以外の他の検電対象物であっても適用可能である。
【0045】
この実施形態の直流検電器は、1500V程度の直流電圧が送電される電鉄沿線の架線を保守管理するため、任意的あるいは定期的に架線電圧の有無を任意の地点で検出するものである。架線電圧の有無を検出する検電作業では、通常、架線が高所に位置することから手動で長さ調整可能な携帯式のものが使用される。
【0046】
この実施形態の直流検電器は、図1図3に示すように、充電検出部31と、断線検出部32と、動作点検部33とが収容された検電器本体35を具備する。検電器本体35は、複数の筒状部材36からなる絶縁性の操作棒37の基端側に取り付けられている。
【0047】
図1は直流検電器の概略構成を示す。図2(A)は操作棒37を収縮させた状態、図2(B)は操作棒37を伸長させた状態を示す。図3は検電器本体35の外観を示すが、表示ランプ、ブザーや押しボタン等のスイッチ類を省略している。
【0048】
充電検出部31は、操作棒37に内蔵された充電検出線38を介して、操作棒37の先端側に取り付けられたフック状の検電金具39と電気的に接続されている。充電検出部31は、検電金具39を架線に引掛け係止させることにより、検電金具39を介して架線電圧の有無を検出抵抗(図示せず)により検出する回路である。
【0049】
断線検出部32は、充電検出部31と接地線40との間に電気的に接続されている。断線検出部32は、充電検出部31を介して検電金具39を被接地部位であるレールにアース接続する接地線40の断線を検出する回路である。
【0050】
動作点検部33は、操作棒37に内蔵された動作点検線41、および検電器本体35に設けられた導電性プレート42と電気的に接続されている。動作点検部33は、検電前の点検時に、充電検出部31が正常に動作するか否かを点検する回路である。
【0051】
操作棒37は、検電金具39と充電検出部31とを電気的に接続する充電検出線38と、検電金具39と動作点検部33とを電気的に接続する動作点検線41とが、筒状部材36の内部に収容された二芯構造を有する。
【0052】
充電検出線38および動作点検線41には、螺旋状に巻回された伸縮可能な絶縁被覆電線49、例えばカールコードと称されるものが使用されている。この実施形態では、ストレート状の絶縁被覆電線である充電検出線38および動作点検線41を二芯として一本のカールコードとした絶縁被覆電線49を例示している。
【0053】
充電検出線38には、検電金具39と充電検出部31との間に介挿された限流抵抗43(例えば10MΩ程度)が設けられている。限流抵抗43を設けることにより、不所望な高電圧(AC4000V程度)が充電検出部31に侵入することを防止している。
【0054】
動作点検線41には、検電金具39と動作点検部33との間に介挿された限流抵抗44(例えば10MΩ程度)が設けられている。限流抵抗44を設けることにより、不所望な高電圧(AC4000V程度)が動作点検部33に侵入することを防止している。
【0055】
操作棒37は、例えばラジオのロッドアンテナのように、複数の筒状部材36で構成することで伸縮自在となっている。操作棒37を構成する筒状部材36には、エポキシ系GFRP(肉厚1mm)を採用する。これにより、限流抵抗43,44があっても操作棒37の軽量化が容易である。
【0056】
最も内側に位置する最小径の筒状部材36の先端に検電金具39が取り付けられている。また、最も外側に位置する最大径の筒状部材36の基端に検電器本体35が取り付けられている。この最大径の筒状部材36を作業員が把持する。
【0057】
操作棒37の伸長は、筒状部材36を軸方向に順次引き出すことにより行われ、隣接する筒状部材36の端部同士の摩擦抵抗により長尺な状態が保持される。この時、筒状部材36の内部で、充電検出線38および動作点検線41も伸長した状態となる。
【0058】
操作棒37の収縮は、筒状部材36を軸方向に順次押し込むことにより、最も外側に位置する筒状部材36の内部に残りの筒状部材36が格納される。この時、筒状部材36の内部で充電検出線38および動作点検線41が収縮した状態となり、充電検出線38および動作点検線41の弾性力により、操作棒37の収縮状態が保持される。
【0059】
従来の操作棒7〔図6(A)(B)参照〕では、伸縮時の固定のために留め具13の回転操作が必要であったのに対して、この実施形態の操作棒37では、伸縮時の固定を筒状部材36の端部同士の摩擦抵抗で実現している。これにより、操作棒37の伸縮時、筒状部材36の引き出しおよび押し込みだけで済むため、作業性が大幅に向上する。
【0060】
接地線40は、充電検出部31に接続されたアース線45と、断線検出部32に接続された断線検出線46とが収容された絶縁被覆構造で、検電器本体35から導出されている。接地線40の先端部47は、磁気吸着によりレールあるいは導電性プレート42に着脱自在に固定可能なマグネット構造となっている。
【0061】
検電器本体35は、検電前の点検で使用する導電性プレート42を有する。導電性プレート42は、検電器本体35の側面に形成された凹部48の底部に配設されている。
【0062】
検電前の点検時、接地線40の先端部47を導電性プレート42に接続することで、点検スイッチのオンにより動作点検部33で高電圧(2000V程度)が発生する。
【0063】
これに対して、導電性プレート42が検電器本体35の凹部48内にあることから、作業員が導電性プレート42に触れ難くなる。その結果、高電圧による感電事故を防止することができ、点検作業の安全性を確保できる。
【0064】
ここで、直流検電器による検電作業時、何等かの原因により接地線40が断線していたり、あるいは、充電検出部31が故障していたりする場合が考えられる。
【0065】
その場合、接地線40の断線や充電検出部31の故障に気付かず、検電作業を開始すると、架線が充電状態にあるにもかかわらず、表示ランプまたはブザー等による報知がないことになる。そのため、作業員は架線が停電状態であると誤判断し、充電状態にある架線に触れる危険性がある。
【0066】
このような危険性を回避するため、検電作業の開始に先立って、この実施形態の直流検電器では、接地線40が断線しているか否かを断線検出部32で検出すると共に、充電検出部31が正常に動作するか否かを動作点検部33で点検する検電前の点検を実施することで、安全性の確保を図っている。
【0067】
ここで、検電器本体35は、作業員が検電前の点検を実施せずに検電作業を開始しようとすると、表示ランプの点滅およびブザーの鳴動により、作業員に検電前の点検の実施を促す機能を具備している。作業員が検電前の点検を実施した場合には、表示ランプの点灯およびブザーの鳴動により、検電作業が開始可能であることを報知する。
【0068】
検電前の点検では、まず、接続線40の先端部47を検電器本体35の導電性プレート42に磁気吸着により接続固定する。これにより、接地線40が断線していなければ、表示ランプまたはブザーにより、接地線40が断線していないことを作業員に報知する。
【0069】
その後、検電器本体35の点検スイッチ(図示せず)をオンすることにより、動作点検部33で高電圧(2000V)が発生する。これにより、限流抵抗43,44で分圧された点検電圧、つまり、架線電圧(1500V)に近い点検電圧(1000V程度)が動作点検線41を介して収縮状態の操作棒37の先端にある検電金具39に印加される。
【0070】
ここで、検電前の点検では、接地線40を導電性プレート42に接続した場合に限って、点検スイッチをオンすると、動作点検部33で高電圧が発生するように構成している。つまり、接地線40をレールに接続した場合には、点検スイッチをオンしても動作点検部33で高電圧が発生しないようにしている。
【0071】
これにより、高電圧による感電事故を防止することができ、点検作業の安全性を図っている。また、検電作業中に動作点検部33で高電圧が発生することによる検電時の誤測定を回避することができる。
【0072】
以上のようにして、検電金具39に印加された点検電圧は、操作棒37内の充電検出線43を介して充電検出部31に印加される。その充電検出部31では、点検電圧の有無を検出する。
【0073】
これにより、検電金具39に印加された点検電圧を充電検出部31で検出できれば、充電検出部31が正常に動作していることになる。このようにして、充電検出部31が正常に動作することを、表示ランプまたはブザーにより作業員に報知する。
【0074】
以上のような検電前の点検を実施した上で、直流検電器による検電作業を開始する。この直流検電器を使用した検電作業は、以下の要領で実施される。
【0075】
複数の筒状部材36を引き延ばした操作棒37の伸長状態で、接地線40の先端部47をレールまたは導電性プレート42に磁気吸着により固定することで、接地線40により充電検出部31をアース接続する。その上で、作業員が操作棒37の基端部を把持し、操作棒37の先端にある検電金具39を架線に引掛け係止させる。
【0076】
これにより、架線に引掛け係止された検電金具39および操作棒37内の充電検出線38を介して充電検出部31に架線電圧が印加され、充電検出部31で架線電圧の有無を検出する。架線が充電状態にあれば、検電器本体35に設けられた表示ランプまたはブザーにより作業員に報知する。
【0077】
この実施形態では、操作棒37に動作点検線41を内蔵させたことにより、従来のように、直流検電器を現場へ搬送する際に、直流検電器とは別体の動作点検線15(図5参照)を現場へ搬送することを作業員が忘れることはない。また、動作点検線15が現場にあるにもかかわらず、作業員が検電前の点検を実施しないこともなくなる。
【0078】
さらに、従来の動作点検線15のように、検電前の点検時、バナナプラグ16を検電器本体5の点検電圧出力端子11に接続すると共に、ワニ口クリップ17を検電金具9に接続するという煩雑な接続作業がなくなる。
【0079】
このように、充電検出線38と共に動作点検線41も操作棒37の内部に収容した二芯構造としたことで、従来のような動作点検線15の搬送ミスや、動作点検線15の煩雑な接続がなくなるので、検電前の点検を確実かつ簡易に実施できて作業性の向上が図れる。
【0080】
以上の実施形態では、操作棒37を複数の筒状部材36で構成することで伸縮自在とし、充電検出線38および動作点検線41を、螺旋状に巻回された絶縁被覆電線で構成することで伸縮可能とした場合を例示した。
【0081】
この実施形態の場合、筒状部材36を伸長させることで長尺な操作棒37を実現することができる。また、筒状部材36の伸長に伴って充電検出線38および動作点検線41も伸長させることができる。その結果、検電対象物が高所に存在する架線である場合に好適である。
【0082】
一方、図4に示す実施形態のように、操作棒37’を単一の筒状部材36’で構成すると共に、充電検出線38’および動作点検線41’を、ストレート状に延びる絶縁被覆電線49’で構成することも可能である。この実施形態では、ストレート状の絶縁被覆電線である充電検出線38’および動作点検線41’を二芯として一本のストレートコードとした絶縁被覆電線49’を例示している。
【0083】
この実施形態における他の構成および作用効果は、図2(A)(B)に示す実施形態の直流検電器と同一であるため、同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。
【0084】
この実施形態の場合、短尺な操作棒37’を実現することができ、充電検出線38’および動作点検線41’もストレート状の絶縁被覆電線で済む。その結果、検電対象物が低所に存在する地下鉄のサードレール式電車線である場合に好適である。
【0085】
なお、この実施形態の直流検電器では、サードレール式電車線に適合するように、略T字状の検電金具39’が操作棒37’の先端に取り付けられている。
【0086】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0087】
31 充電検出部
32 断線検出部
33 動作点検部
35 検電器本体
36 筒状部材
37 操作棒
38 充電検出線
39 検電金具
40 接地線
41 動作点検線
42 導電性プレート
48 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7