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  • 特許-分断方法およびブレイク方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】分断方法およびブレイク方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20230217BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20230217BHJP
   B26F 3/02 20060101ALI20230217BHJP
   C03B 33/07 20060101ALI20230217BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
B26F3/02
C03B33/07
G02F1/13 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019014672
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121478
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】朱 江
(72)【発明者】
【氏名】舩木 清二郎
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-255362(JP,A)
【文献】特開2011-241145(JP,A)
【文献】特開2007-062227(JP,A)
【文献】特開2009-083079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
B26F 3/00
B26F 3/02
C03B 33/07
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とをシール材により貼り合わせてなる基板を分断する分断方法であって、
前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置にスクライビングホイールを押し当てながら前記スクライビングホイールを移動させて、前記第1基板の表面に第1スクライブラインを形成する工程と、
前記第2基板の表面の前記シール材に対向する位置にスクライビングホイールを押し当てながら前記スクライビングホイールを移動させて、前記第2基板の表面に第2スクライブラインを形成する工程と、
前記第1基板の表面に形成された前記第1スクライブラインを含む領域を押圧して、前記第2スクライブラインに沿って前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程と、
前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインによって区切られた前記基板の領域を、前記基板の表面に平行な方向に互いに引き離すことにより、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインに沿って前記基板を分離する工程と、を備え
前記第1スクライブラインに沿って形成される第1垂直クラックの浸透度は70~100%であり、
前記第2スクライブラインを形成する工程は、前記第1スクライブラインを形成する工程の後に行われ、
前記第2スクライブラインに沿って形成される第2垂直クラックの浸透度は、前記第1スクライブラインの垂直クラックの浸透度より低い
ことを特徴とする分断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分断方法において、
前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインは、曲線を含むスクライブラインである、
ことを特徴とする分断方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分断方法において、
前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程において、弾性部材を前記第1スクライブラインに密着させて、前記第1スクライブラインを含む領域を押圧する、
ことを特徴とする分断方法。
【請求項4】
請求項3に記載の分断方法において、
前記弾性部材を固定するための固定部材に力を付与して、前記第1スクライブラインを含む領域を押圧する、
ことを特徴とする分断方法。
【請求項5】
第1基板と第2基板とをシール材により貼り合わせてなる基板を、前記第1基板の前記シール材に対向する位置に形成された第1スクライブラインと、前記第2基板の前記シール材に対向する位置に前記第1スクライブラインよりも後に形成された第2スクライブラインとに沿ってブレイクするブレイク方法であって、
前記第1スクライブラインを含む領域を押圧して、前記第2スクライブラインに沿って前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程と、
前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインによって区切られた前記基板の領域を、前記基板の表面に平行な方向に互いに引き離すことにより、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインに沿って前記基板を分離する工程と、を備え
前記第1スクライブラインに沿って形成される第1垂直クラックの浸透度は70~100%であり、
前記第2スクライブラインを形成する工程は、前記第1スクライブラインを形成する工程の後に行われ、
前記第2スクライブラインに沿って形成される第2垂直クラックの浸透度は、前記第1スクライブラインの垂直クラックの浸透度より低い
ことを特徴とするブレイク方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクライブラインを形成して貼り合わせ基板を分断する分断方法、およびこの分断方法に適用される貼り合わせ基板のブレイク方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の脆性材料基板の分断は、基板の表面にスクライブラインを形成するスクライブ工程と、形成されたスクライブラインに沿って基板の表面に所定の力を付加するブレイク工程とによって行われる。スクライブ工程では、スクライビングホイールが、基板の表面に押し付けられながら、所定のラインに沿って移動される。
【0003】
以下の特許文献1には、第1基板と第2基板とが貼り合わされて構成されている基板を、第1基板の表面に形成された第1スクライブラインと、第2基板の表面に形成された第2スクライブラインとに沿ってブレイクするブレイク方法が記載されている。第2基板の表面に形成された第2スクライブラインは、第1スクライブラインと平面視において同じ位置に形成されている。このブレイク方法では、第1スクライブライン上に載置したガイドバーに、第1基板に向かって衝撃が与えられると、第2スクライブラインに沿って第2基板がブレイクされる。この後、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインを境界とする一方の領域の一部または全部が支持部材に支持され、また、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインを境界とする他方の領域の全部が支持部材の一端から突出するように配置される。そして、この他方の領域をブレイクバーで押圧することにより、第1スクライブラインに沿って第1基板がブレイクされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-013239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貼り合わせ基板は、ブレイク位置において、第1基板と第2基板とがシール材により貼り合わされられる場合がある。このような基板では、第1基板および第2基板のうち、スクライブラインが後から形成された方の基板では、スクライブラインに沿って垂直クラックが基板に十分に浸透しにくい。垂直クラックの浸透が不十分な状態で基板にブレイク工程が実行されると、ブレイク後の基板の端縁に細かい亀裂や破損が生じ、基板の強度が低下する虞がある。特許文献1のブレイク方法は、ブレイクする対象は貼り合わせ基板であるが、各基板に対する垂直クラックの浸透状態を考慮した貼り合わせ基板のブレイク工程は開示されていない。また、特許文献1のように、貼り合わせ基板を一方向から押圧することでブレイクを行うと、基板の端面がブレイク時に互いに接触することにより基板の欠けが生じるなど、製品品質が低下する可能性がある。特に、製品形状の少なくとも一部に曲線部分が含まれる場合、曲線部分において基板の端面同士が接触し、基板の欠けが生じるため、特許文献1のブレイク方法を採用することができない。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、貼り合わせ基板に形成されたスクライブラインに沿って容易かつ良好に分断を行うことができる分断方法、およびこの分断方法に適用されるブレイク方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、第1基板と第2基板とをシール材により貼り合わせてなる基板を分断する分断方法に関する。本態様に係る分断方法は、前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置にスクライビングホイールを押し当てながら前記スクライビングホイールを移動させて、前記第1基板の表面に第1スクライブラインを形成する工程と、前記第2基板の表面の前記シール材に対向する位置にスクライビングホイールを押し当てながら前記スクライビングホイールを移動させて、前記第2基板の表面に第2スクライブラインを形成する工程と、前記第1基板の表面に形成された前記第1スクライブラインを含む領域を押圧して、前記第2スクライブラインに沿って前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程と、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインによって区切られた前記基板の領域を、前記基板の表面に平行な方向に互いに引き離すことにより、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインに沿って前記基板を分離する工程と、を備え、前記第1スクライブラインに沿って形成される第1垂直クラックの浸透度は70~100%であり、前記第2スクライブラインを形成する工程は、前記第1スクライブラインを形成する工程の後に行われ、前記第2スクライブラインに沿って形成される第2垂直クラックの浸透度は、前記第1スクライブラインの垂直クラックの浸透度より低い
【0008】
第1基板と第2基板とがシール材で貼り合わされている貼り合わせ基板は、先にスクライブラインが形成された方の基板では、垂直クラックが良好に浸透するが、後からスクライブラインが形成された方の基板では、垂直クラックが十分に浸透しにくい。この点、上記構成によれば、一旦、第2基板にスクライブラインが形成された後、第1基板を介して第2基板に力を付加することにより、後から形成された第2スクライブラインに沿って第2基板に垂直クラックが浸透する。よって、第2基板は、第2スクライブラインに沿って分離され易い状態となる。これにより、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインに沿って基板を容易に分離することができる。
【0009】
また、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインに沿って、深い垂直クラックを予め形成し、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインによって区切られた基板の領域を、基板の表面に平行な方向に互いに引き離すことにより基板を分離することができる。このため、基板を分離する際、基板の端面が互いに接触することがなく、基板に亀裂や破損が生じる虞がない。このため、基板の強度を低下させることがなく、高品質の製品に仕上げることができる。
【0010】
本態様に係る分断方法において、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインは、曲線を含むスクライブラインが形成され得る。
【0011】
この構成によれば、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインの両方に垂直クラックを適切に浸透させることができるため、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインが曲線を含む場合であっても、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインに沿って基板を引き離すことで基板の端面の接触を防止し、基板を円滑に分離できる。よって、上記構成の分断方法は、多種多様な基板の分断に適用できる。
【0012】
本態様に係る分断方法において、前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程において、弾性部材を前記第1スクライブラインに密着させて、前記第1スクライブラインを含む領域を押圧するよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、第1スクライブラインに沿った領域に弾性部材が密着することにより、当該領域の全範囲に一律に押圧力を付与できる。これにより、第2基板の表面に形成された第2スクライブラインに均一に力を付与することができる。よって、第2基板に垂直クラックを浸透させる工程において、第2スクライブラインに沿って第2基板に垂直クラックを浸透させ易くなる。これにより、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインに沿って基板を容易に分離することができる。
【0014】
この場合、前記弾性部材を固定するための固定部材に力を付与して、前記第1スクライブラインを含む領域を押圧するよう構成され得る。
【0015】
これにより、固定部材に付与された力が弾性部材に満遍なく付与されるため、弾性部材は第1スクライブラインに沿った領域の全域に、均一に密着する。これにより、第1スクライブラインに沿った領域の全範囲に均一に押圧力が付与され、第2基板の表面に形成された第2スクライブラインに確実に均一に力を付与することができる。よって、第2スクライブラインに沿って第2基板に垂直クラックがより浸透し易くなる。これにより、第1スクライブラインおよび第2スクライブラインに沿って基板を容易に分離することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1基板と第2基板とをシール材により貼り合わせてなる基板を、前記第1基板の前記シール材に対向する位置に形成された第1スクライブラインと、前記第2基板の前記シール材に対向する位置に前記第1スクライブラインよりも後に形成された第2スクライブラインとに沿ってブレイクするブレイク方法に関する。この態様に係るブレイク方法は、前記第1スクライブラインを含む領域を押圧して、前記第2スクライブラインに沿って前記第2基板に垂直クラックを浸透させる工程と、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインによって区切られた前記基板の領域を、前記基板の表面に平行な方向に互いに引き離すことにより、前記第1スクライブラインおよび前記第2スクライブラインに沿って前記基板を分離する工程と、を備え、前記第1スクライブラインに沿って形成される第1垂直クラックの浸透度は70~100%であり、前記第2スクライブラインを形成する工程は、前記第1スクライブラインを形成する工程の後に行われ、前記第2スクライブラインに沿って形成される第2垂直クラックの浸透度は、前記第1スクライブラインの垂直クラックの浸透度より低い
【0017】
この構成によれば、第1の態様と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、貼り合わせ基板に形成されたスクライブラインに沿って容易かつ良好に分断を行うことができる分断方法、およびこの分断方法に適用されるブレイク方法を提供することができる。
【0019】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係るスクライブ装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る分断方法を示すフローチャートである。
図3図3(a)~(f)は、実施形態に係る分断方法の過程を模式的に示す側面図である。
図4図4(a)~(e)は、それぞれ、実施形態に係る分断方法の検証を説明するための模式図である。
図5図5(a)~(d)は、それぞれ、実施形態に係る分断方法の検証を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。Z軸は、鉛直方向における上方および下方を示す。以降、上方および下方は、それぞれZ軸正側およびZ軸負側を意味する。
【0022】
本実施の形態は、第1基板11と第2基板12とが貼り合わされてなる貼り合わせ基板10を分断する方法に関する。以降、本明細書では、「貼り合わせ基板10」は、単に「基板10」と称される。また、本実施の形態では、特に断りがない場合、「基板10を分断する」または「基板10を分離する」とは、第1基板11および第2基板12を同時に分断または分離するという意味である。
【0023】
まず、基板10にスクライブラインを形成するためのスクライブ装置100の構成について説明する。本実施の形態では、最初に、第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1が形成された後、第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2が形成される。
【0024】
図1は、実施形態1に係るスクライブ装置100の構成を模式的に示す図である。スクライブ装置100は、移動台101と、スクライブヘッド120と、を備えている。移動台101は、ボールネジ102と螺合されている。移動台101は、一対の案内レール103によってY軸方向に移動可能に支持されている。モータの駆動によりボールネジ102が回転することで、移動台101が、一対の案内レール103に沿ってY軸方向に移動する。
【0025】
移動台101の上面には、モータ104が設置されている。モータ104は、上部に位置する載置部105をXY平面で回転させて所定角度に位置決めする。モータ104により水平回転可能な載置部105は、図示しない真空吸着手段を備えている。載置部105上に載置された基板10は、この真空吸着手段によって、載置部105上に保持される。
【0026】
スクライブ装置100は、載置部105に載置された基板10の上方に、この基板10に形成されたアライメントマークを撮像する二台のカメラ106を備えている。また、移動台101とその上部の載置部105とを跨ぐように、ブリッジ107が支柱108a、108bに架設されている。
【0027】
ブリッジ107には、レール109が取り付けられている。レール109とスクライブヘッド120とは、移動部110を介して接続され、移動部110がレール109をスライド移動することにより、スクライブヘッド120は、X軸方向に移動するように設置されている。
【0028】
スクライブ装置100を用いて基板10にスクライブラインを形成する場合、まず、スクライビングホイール1が取り付けられたホルダユニット130がスクライブヘッド120の支持部121に取り付けられる。
【0029】
次に、スクライブ装置100は、一対のカメラ106によって基板10の位置決めを行う。そして、スクライブ装置100は、スクライブヘッド120を所定の位置に移動させ、スクライビングホイール1に対して所定の荷重を印加して、第1基板11の表面11aへ接触させる。その後、スクライブ装置100は、スクライブヘッド120をX軸方向に移動させることにより、第1基板10の表面11aに第1スクライブラインL1を形成する。なお、スクライブ装置100は、必要に応じて載置部105を回動ないしY軸方向に移動し、上記の場合と同様にして第1スクライブラインL1を形成する。
【0030】
第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2を形成する場合は、図示しない反転機構により基板10を反転させ、基板12の表面12aを上方に位置付ける。この状態で、上記と同様にして、スクライビングホイール1で第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2を形成する。
【0031】
上記の実施の形態においては、スクライブヘッド120がX軸方向に移動し、載置部105がY軸方向に移動すると共に、回転するスクライブ装置100について示したが、スクライブ装置100はスクライブヘッド120と載置部105とが相対的に移動するものであればよい。たとえば、スクライブヘッド120が固定され、載置部105がX軸、Y軸方向に移動し、かつ回転するスクライブ装置100であってもよい。また、この場合、カメラ106はスクライブヘッド120に固定されていてもよい。
【0032】
本実施の形態に係る基板の分断方法は、上記したスクライブ装置100にて、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2が形成された後、第2スクライブラインL2に沿って第2基板12に第2垂直クラックC2を浸透させるための工程と、基板10を第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って分離する工程とから構成される。ここで、上記の「第2スクライブラインL2に沿って第2基板12に第2垂直クラックC2を浸透させる」ことを、以降、「プレブレイク」と称する。なお、第1垂直クラックC1および第2垂直クラックC2は、図3(b)、(c)で図示される。
【0033】
図2は、基板10の分断方法を示すフローチャートである。
【0034】
基板10の分断は、第1スクライブラインL1を第1基板11に形成するための工程(S11)と、第2スクライブラインL2を第2基板12に形成するための工程(S12)と、第2基板12に対してプレブレイクを行う工程(S13)と、基板10を第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って分離する工程(S14)と、によりなされる。このうち、ステップS11、S12のスクライブラインを形成する工程は、上記したスクライブ装置100にて行われる。
【0035】
次に、図2で示した基板の分断方法、とくに、図2のステップS13、S14の工程について、図3(a)~(f)を参照して詳細に説明する。
【0036】
図3(a)~(f)は、基板10の分断方法の過程を模式的に示す側面図である。図3(a)はY軸負側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図3(b)~(f)はX軸負側から基板10のスクライブ位置付近を見たときの模式図である。
【0037】
図3(a)~(c)は、スクライブラインが形成される工程を示し、これは、図1を参照して説明したスクライブ装置100により行われる。図3(d)は、第2基板12に対するプレブレイクがなされる工程を示す。図3(e)、(f)は基板10が分離される工程を示す。
【0038】
また、基板10は、シール材SLを介して第1基板11と第2基板12とが貼り合わされて構成されている。このような基板10として、たとえば、第1基板11にはカラーフィルタ(CF)が形成され、第2基板12には薄膜トランジスタ(TFT)が形成されているものが挙げられる。この場合、シール材SL、第1基板11、および第2基板12によって、液晶注入領域Rが形成され、この液晶注入領域Rに液晶が注入される。
【0039】
シール材SLは、たとえば、エポキシ樹脂等の樹脂材料からなる接着剤を用いることができる。シール材SLが紫外線硬化樹脂からなる場合、第2基板12の表面にシール材SLが塗布された状態で第2基板12の上面に第1基板11が重ねられ、その後、紫外線が照射される。これにより、シール材SLが硬化し、第1基板11と第2基板12とがシール材SLを介して貼り合わされる。この他、シール材SLは、熱硬化樹脂からなる場合もある。この場合、加熱によりシール材SLが硬化し、第1基板11と第2基板12とがシール材SLを介して貼り合わされる。シール材SLは、硬化すると、高い硬度を有する。
【0040】
図3(a)に示すように、第1基板11の表面11aにスクライビングホイール1を押し当てながらスクライビングホイール1をX軸正方向に移動させて第1スクライブラインL1が形成される。このとき、スクライビングホイール1は、シール材SLの直上の位置に押し付けられており、シール材SLに沿って第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1が形成される。これにより、図3(b)に示すように、第1スクライブラインL1に沿って第1基板11に第1垂直クラックC1が形成される。この第1垂直クラックC1は、シール材SLの方に向かって第1基板11の内部に浸透する。その浸透度は、70~100%と高浸透である。なお、この工程は、図2のステップS11に相当する。
【0041】
次に、基板10を図示しない反転機構で反転させ、第2基板12の表面12aを上方に位置付ける。この状態で、図3(a)で説明したように、第2基板12の表面12aにスクライビングホイール1を押し当てながらスクライビングホイール1をX軸正方向に移動させて第2スクライブラインL2が形成される。これにより、図3(c)に示すように、第2スクライブラインL2に沿って第2基板12に第2垂直クラックC2が形成される。この第2垂直クラックC2は、シール材SLの方に向かって第2基板12の内部に浸透する。第2基板12における第2垂直クラックC2の浸透具合は、第1基板11よりも格段に低く、浸透度は15~30%である。なお、この工程は、図2のステップS12に相当する。
【0042】
次に、第2基板12に対してプレブレイクが行われる。具体的には、基板10を再び反転させ、図3(d)に示すように、第1基板11の表面11aを上方に位置付ける。そして、第1スクライブラインL1を含む領域を覆うように、固定部材14に固定された弾性部材13が第1基板11の表面11aに載置される。衝撃部材15により、第1基板11に向かう力が固定部材14に付与されると、第2スクライブラインL2に沿って形成された第2垂直クラックC2が、シール材SLの方に向かって浸透する。図3(d)において、丸で囲まれた部分は、衝撃部材15に付与された力により、第2基板12の内部に新たに浸透した第2垂直クラックC2である。なお、この工程は、図2のステップS13に相当する。
【0043】
上記の弾性部材13は、たとえば、ゴムまたは樹脂である。固定部材14は、弾性部材13より硬度の高い板状の部材である。衝撃部材15は、固定部材14とは離れた位置から固定部材14に向かって移動し、固定部材14に衝突して基板10に力を付与できるよう、固定部材14よりも重量の重い部材が用いられる。
【0044】
また、第2基板12に対してプレブレイクが行われる際、基板10は載置台上に載置される。この載置台と基板10の間には、クッション材が配置される。クッション材は、例えば、紙やゴムから構成される。
【0045】
第2基板12に対してプレブレイクが行われた後、基板10の分離が行われる。具体的には、図3(e)に示すように、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って、基板10を第1基板11の表面11aに平行な方向に互いに引き離す。引き離しによる分離は手で行ってもよく、機械的に行ってもよい。これにより、図3(f)に示すように、基板10の分離が完了する。なお、この工程は、ステップS14に相当する。このようにして、貼り合わせ基板10は分断される。
【0046】
<検証>
本願発明者らは、上記構成の分断方法を用いた場合の効果を検証した。以下、この検証および検証結果について、図4(a)~図5(d)を参照して説明する。
【0047】
この検証では、第1基板41と第2基板42とを貼り合わされてなる基板40を使用し、シール材Fに沿って第1基板41と第2基板42とに形成されるスクライブラインが曲線である場合について検証を行った。このとき、第1基板41および第2基板42のそれぞれに円状のスクライブラインといわゆる補助ラインHとを形成した。この円状のスクライブラインを説明の便宜上、「製品ラインS」と称する。
【0048】
ここで、補助ラインHとは、基板40の分離により得られる製品の形状を規定する製品ラインSに沿って基板を分断する際、この製品ラインSに沿って円滑に第1基板41および第2基板42が分離されるよう、製品ラインSの外側に形成されるスクライブラインである。閉曲線状の製品を分離する際には、まず補助ラインHに沿って貼り合わせ基板40を引き離して分離する。このように分離された補助ラインHから延長された垂直クラックに誘導されるようにして、製品ラインSに沿って第1基板41の第1垂直クラックG1、および第2基板42の第2垂直クラックG2が分断される。よって、閉曲線状の製品ラインSによって規定された製品を取り出しやすくなる。
【0049】
なお、ここでは、第1基板41に形成される補助ラインも第2基板42に形成される補助ラインも「補助ラインH」と称する。「製品ラインS」も同様である。
【0050】
[検証1]
[条件]
下記の条件で貼り合わせ基板の表面にスクライビングホイールでスクライブラインを形成した。
・貼り合わせ基板 …第1基板0.2mm 第2基板0.2mm
・スクライブライン(製品ライン)の形状 … 円形状
・シール材 … 協立化学産業株式会社製 WORLD ROCK 723K1 厚み 10um
・走行荷重 … 0.06MPa
・走行速度 … 30mm/sec
・スクライビングホイール … 径2.0 mm、刃先の角 115度
溝数 360、溝深さ 3μm
・弾性部材 … 材質 ゴム
・板部材 … 重量 45g 、サイズ 50×50mm
・錘 … 重量 441g、直径 48mm
【0051】
上記の貼り合わせ基板40(以降、単に基板40と称する。)は、第1基板41の表面41aおよび第2基板42の表面42aに、それぞれ製品ラインSが形成される。そして、図4(a)、(b)に示すように、製品ラインSに沿って、板部材43に貼り付けられた弾性部材44が載置される。この状態で、上方から錘45を落下させることにより、第2基板42に対してプレブレイクを行った。その後、作業者の手により、製品ラインSに沿って基板40を分離した。
【0052】
なお、本検証では、上記の条件のうち、板部材43、弾性部材44、および錘45のそれぞれは、上記図3(d)を参照して説明した固定部材14、弾性部材13、および衝撃部材15に相当する。
【0053】
また、検証1では、図4(c)に示すような製品ラインSと補助ラインHとが形成された第1基板41および第2基板42を使用した。さらに、図4(d)の破線で示すように、製品ラインSのY軸正側の半円と、製品ラインSの接線にあたるY軸正側の補助ラインHとについて、基板40の分離が行えたか否かについて評価した。図4(d)の破線部をそれぞれ、評価対象製品ラインS1および評価対象補助ラインH1と称する。
【0054】
また、検証1では、板部材43は不透明なものを使用した。さらに、検証1では、図4(e)に示すように、弾性部材44は、製品ラインSにのみ載置し、補助ラインHには載置しなかった。なお、図4(e)においては、弾性部材44は一点鎖線で示されている。
【0055】
この状態で、錘45を板部材43の表面に、所定の高さから落下させて、第2基板42にプレブレイクを行った。また、このとき、第2基板42の下にクッション材として厚み約0.07mmの無塵紙を8枚重ねて敷き、板部材43の表面から20mmの高さから錘45を落下させた。
【0056】
そして、第2基板42にプレブレイクを行った後、基板40を製品ラインSに沿って分離した。
【0057】
[検証1の結果]
・第2基板42のプレブレイクの後、図4(d)の評価対象製品ラインS1に沿って基板40は分離されていなかったが、補助ラインHに沿って分離した後、製品ラインSの分離が可能であった。この場合、第2基板42のプレブレイクの後、基板40を容易に分離することができた。
【0058】
[検証2]
[条件]
検証2では、板部材43を透明なものにした。また、図5(a)に示すように、補助ラインHの形状を検証1と異ならせた。この場合、図5(b)の破線部分を、評価対象製品ラインS1および評価対象補助ラインH1とした。
【0059】
検証2も、検証1と同様に、弾性部材44は、製品ラインSにのみ載置し、補助ラインHには載置しなかった(図4(e)参照。)。その他の条件は、検証1と同様である。
【0060】
この状態で、錘45を第1基板41の表面41aに所定の高さから落下させることにより、第2基板42にプレブレイクを行った。このとき、第2基板42の下にクッション材として厚み約0.07mmの無塵紙を8枚重ねて、第1基板41の表面41aから50mm、40mm、30mm、20mmのそれぞれの高さから錘45を落下した。
【0061】
そして、第2基板42にプレブレイクを行った後、基板40を製品ラインSに沿って分離した。
【0062】
[検証2の結果]
・何れの高さから錘45を落下させて第2基板42にプレブレイクを行っても、図5(b)の評価対象製品ラインS1に沿って基板40は分離されていなかった。この場合、第2基板42をプレブレイクした後に、評価対象補助ラインH1を分離することに続いて評価対象製品ラインS1に沿って行われた基板40の分離により、基板40を分離することができた。
【0063】
・また、何れの場合も、評価対象補助ラインH1及び評価対象製品ラインS1に沿って形成されている垂直クラック以外のクラックが発生しなかった。
【0064】
[検証3]
[条件]
検証1および検証2では、製品ラインSにのみ弾性部材44を載置していた。検証3では、補助ラインHにも弾性部材44を載置した。つまり、製品ラインSと補助ラインHとにプレブレイクを行った。
【0065】
この場合、補助ラインHの形状は、図5(a)に示すように、検証2と同様の補助ラインHであり、図5(c)に示すように、弾性部材44を製品ラインSおよび補助ラインHに載置した。その他の条件は、検証1と同様であった。つまり、板部材43は不透明なものを使用した。また、図5(c)は図4(e)と同様に、弾性部材44は一点鎖線で示されている。
【0066】
この状態で、錘45を板部材43の表面に所定の高さから落下させることにより、第2基板42にプレブレイクを行った。このとき、第2基板42の下にクッション材として厚み約0.07mmの無塵紙を8枚重ねて、板部材43の表面から20mm、15mm、10mm、5mmのそれぞれの高さから錘45を落下させた。
【0067】
そして、第2基板42にプレブレイクを行った後、基板40を製品ラインSに沿って分離した。
【0068】
[検証3の結果]
・何れの高さから錘45を落下させてプレブレイクを行っても、基板40の評価対象補助ラインHの一部から逸れたクラックが発生した。このようなクラックは、基板40の分断に寄与せず、基板40の分断の際に製品部分に亀裂や破損を生じさせる虞があるため、好ましいクラックではない。
【0069】
[検証4]
[条件]
検証4では、補助ラインHのみに弾性部材44を載置した。つまり、補助ラインHに対してのみプレブレイクを行った。
【0070】
この場合、補助ラインHの形状は、図5(a)に示すように、検証2と同様の補助ラインHであり、図5(d)に示すように、弾性部材44を補助ラインHのみに載置した。その他の条件は、検証1と同様であった。ただし、板部材43は透明なものを使用した。
【0071】
この状態で、第2基板42の下にクッション材として厚み約0.07mmの無塵紙を8枚重ねて、板部材43の表面から5mmの高さから錘45を落下させた。
【0072】
第2基板42にプレブレイクを行った後、基板40を製品ラインSに沿って分離した。
【0073】
[検証4の結果]
・評価対象補助ラインH1から製品内部へクラックが発生し、基板40の分離を行うことができなかった。
【0074】
[検証5]
プレブレイクの精度、つまり、第2基板42において第2垂直クラックG2の浸透を向上させるため、以下のような検証を行った。
【0075】
基板40に代えて感圧紙を載置台に載置し、弾性部材及び板部材を感圧紙上に載置した。このとき、検証2と同様の透明な板部材43及び弾性部材44を用いた。そして、板部材43の表面から30mm、20mm、10mmの高さから錘45を落下させた。このとき、錘45の径より若干大きい径を有する筒状の部材であって空洞の部材(図示せず。)を板部材43の上に置き、この筒状の部材を錘45のガイドとして使用した。すなわち、弾性部材の中心とガイドの中心を一致させてガイドを配置し、固定されたガイドの筒状の部材の内部に錘45を落下させて板部材43に錘45を衝突させた。このようにして、弾性部材44の形状を感圧紙に転写した。
【0076】
[検証5の結果]
・高さ10mmから錘45を落下させた場合、感圧紙に転写された弾性部材44の跡は、不均一であった。このことからは、高さ10mmから錘45を落下させた場合では、ガイドを用いても弾性部材44から基板40に加わる衝撃は均一にならないと考えられる。
【0077】
・高さ20mm、30mmから錘45を落下させた場合では、感圧紙に転写された弾性部材44の跡が均一に形成された。これは、ガイドにより弾性部材44の中心に錘45を確実に接触させることができ、弾性部材から基板へ均一に衝撃を与えることができたためであると考えられる。
【0078】
[検証6]
検証1と同様の条件で、第1基板41の表面41aおよび第2基板42の表面に製品ラインSを形成した。その後、検証1~4のように第2基板42にプレブレイクを行わず、基板40の分離を行った。
【0079】
[検証6の結果]
・評価対象補助ラインH1と第1基板41の境目でツノと呼ばれる切れ残りや製品ラインの内側にクラックが発生して基板が破壊されるなどの不具合が生じ、基板40を分離することが困難であった。
【0080】
[検証のまとめ]
・第2基板42に対してプレブレイクを行った後に基板40の分離を行った検証1および検証2と、第2基板42に対してプレブレイクを行わず、基板40の分離を行った検証6との結果から、貼り合わせ基板40では、第2基板42にプレブレイクを行えば、補助ラインH及び製品ラインSに沿って基板40を分離できることが確認できた。
【0081】
・製品ラインSにのみプレブレイクを行った検証1および検証2と、補助ラインHにもプレブレイクを行った検証3とを比較すると、検証3では、基板40の分離の際、基板40にクラックが生じた。よって、補助ラインHにはプレブレイクを行わず、製品ラインSにのみプレブレイクを行うことが適切であることが確認できた。
【0082】
・製品ラインSにのみプレブレイクを行った検証1および検証2と、補助ラインHにのみプレブレイクを行った検証4とを比較すると、検証4では、製品ラインSの内部にもクラックが生じ、分離ができなかった。よって、補助ラインHにプレブレイクを行わず、製品ラインSにのみプレブレイクを行うことが適切であることが確認できた。
【0083】
・検証1と検証2とでは、補助ラインHの形状を異ならせて検証を行ったが、両者とも第2基板42にプレブレイクを行った後、基板40を分離することができた。したがって、補助ラインHの形状の相違は、プレブレイクにあまり影響を及ぼさないと考えられる。
【0084】
・検証1と検証2との結果を比較すると、透明な板部材43を用いた検証2の方が、基板40の分離を容易に行うことができた。これは、製品ラインS上に弾性部材44を載置する際、板部材43が透明であるため、製品ラインSの位置を確認しながら弾性部材44を載置することができたためであると考えらえる。よって、プレブレイクの際、製品ラインSを含む領域に、確実に弾性部材44を載置すれば、プレブレイクが良好に行われ、容易に基板40を分離することができると推察される。
【0085】
・検証5の結果から、錘45を落下させる際、ガイド部材(筒状の部材)を用いれば、錘45を確実に、製品ラインSを含む領域の中央に衝突させ得ることが確認できた。このことから、ガイドによって錘45の衝突位置の再現性を高めることができ、また基板40に均一に力が付与されるため、製品ラインSに沿って第2垂直クラックG2が第2基板42に浸透し易くなると考えられる。
【0086】
<実施形態の効果>
シール材SLを介して第1基板11と第2基板12とが貼り合わされてなる基板10では、後からスクライブラインが形成された方の基板における第2垂直クラックC2の浸透が低い場合がある。このような状態で、基板10に所定の力を付加してブレイク工程を行った場合、基板10の断面に亀裂や破損が生じる虞がある。
【0087】
この点、図2、および図3(a)~(e)に示すように、上記の構成では、第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1を形成し、第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2を形成した後、第2基板12にプレブレイクを行う。これにより、第2基板12に生じた第2垂直クラックC2を、シール材SLの方に向かって浸透させることができる。これにより、第2基板12は、第2スクライブラインL2に沿って分離され易い状態となる。これにより、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って基板10を容易に分離することができる。
【0088】
また、上記のように第2基板12にプレブレイクを行った場合、第2基板12には当初生じた第2垂直クラックC2が厚さ方向に伸展することで、より深い垂直クラックとなり、これにより基板10を分離することができる。よって、基板10を分離する際、基板10に亀裂や破損が生じる虞がない。このため、基板10の強度を低下させることなく、高品質の製品に仕上げることができる。
【0089】
また、図3(f)に示すように、基板10を分離する際、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2によって区切られた基板10の領域を、第1基板11の表面11aに平行な方向に互いに引き離す。これにより、分離した断面が互いに接触することがなく、分断後の基板10の表面の端部に欠けや割れが生じにくい。よって、基板10の強度の低下を生じさせることなく、高品質の製品に仕上げることができる。
【0090】
また、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2が曲線を含む場合であっても、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って基板10を円滑に分離できる。
【0091】
図3(d)に示すように、第2基板12にプレブレイクを行う際、第1スクライブラインL1に沿った領域に弾性部材13を密着させている。これにより、当該領域の全範囲に一律に、衝撃部材15による押圧力を付与できる。そして、第2基板12の表面12aに形成された第2スクライブラインL2に均一に力を付与することができる。よって、第2スクライブラインL2に沿って最初に生じた第2垂直クラックC2が、第2基板12に浸透し易くなる。これにより、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って基板10を容易に分離することができる。
【0092】
また、弾性部材13は、固定部材14に固定されている。このため、固定部材14から弾性部材13に満遍なく力が付与されるため、弾性部材13は第1スクライブラインL1に沿った領域の全域に、均一に密着する。これにより、第1スクライブラインL1に沿った領域の全範囲に均一に押圧力が付与され、第2基板12の表面に形成された第2スクライブラインL2に確実に均一に力を付与することができる。よって、第2スクライブラインL2に沿って生じた第2垂直クラックC2が、第2基板12にさらに浸透し易くなる。これにより、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って基板10を容易に分離することができる。
【0093】
なお、上記実施の形態では、図3(c)に示すように、第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1が形成された後、基板10を反転させて、第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2が形成されたが、これに限られない。たとえば、2つのスクライビングホイール1を用意し、一方のスクライビングホイール1で第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1を形成させながら、もう一方のスクライビングホイール1で第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2を形成させるよう構成してもよい。つまり、第1スクライブラインL1と第2スクライブラインL2とが同時並行に形成されるような構成であってもよい。
【0094】
この場合も、第2基板12側のスクライビングホイール1が第1基板11側のスクライビングホイール1よりも所定距離だけ遅れて移送されると、第1基板11の表面11aに第1スクライブラインL1が形成された後に、第2基板12の表面12aに第2スクライブラインL2が形成されることとなるため、第2基板12に生じる第2垂直クラックC2の浸透が浅くなり得る。よって、この場合も、上記実施形態のように、第2基板12に対するプレブレイクを行うことにより、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2に沿って基板10を容易かつ良好に分離できる。
【0095】
また、第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2は直線のみで構成されてもよく、その一部に曲線を含んでもよい。また第1スクライブラインL1および第2スクライブラインL2により構成される製品形状の一部が、製品側にくぼんだ凹部を含んでもよい。
【0096】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 スクライビングホイール
11 第1基板
11a 第1基板の表面
12 第2基板
12a 第2基板の表面
L1 第1スクライブライン
L2 第2スクライブライン
13 弾性部材
14 固定部材(板部材)
図1
図2
図3
図4
図5