(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ボール発射装置用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A63B 69/40 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
A63B69/40 501P
(21)【出願番号】P 2019069767
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】596017602
【氏名又は名称】共和技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】田中 完ニ
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一郎
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033157(JP,A)
【文献】特開2015-073580(JP,A)
【文献】国際公開第2004/024246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 67/00 - 69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気タンクからの空気圧でボールを発射する空気圧ボール発射装置に用いられるボール発射装置用アタッチメントであって、
前記ボール発射装置の発射筒内部に設けられるアタッチメント本体部と、
前記アタッチメント本体部に備わり前記発射筒内部を移動するボールに摩擦を付与する摩擦体と、
前記摩擦体へ圧力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部と前記圧縮空気タンクをつなげる管路と、を、備え、
前記管路は、前記発射筒から発射されるボールに付与される前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を、前記圧力付与部に付与し、
前記圧力付与部が前記摩擦体へ付与する圧力は、前記発射筒内部を移動するボールに加える摩擦力に比例する、ボール発射装置用アタッチメント。
【請求項2】
前記圧縮空気タンクは、前記発射筒に設置されて発射される発射対象である発射ボールに発射空気圧を付与し、
前記発射空気圧の付与に併せて、同じ圧縮空気を、前記管路を通じて、前記圧力付与部に摩擦空気圧を付与し、
同一の前記発射ボールに対する前記発射空気圧と前記摩擦空気圧は、略同一である、請求項1記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項3】
前記圧力付与部は、前記摩擦空気圧に基づいて、前記摩擦体の摩擦力を生じさせる、請求項2記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項4】
前記発射空気圧は、前記発射ボールの発射速度を制御し、
前記摩擦空気圧は、前記発射ボールへ付与される摩擦力を制御し、
前記摩擦力は、前記発射ボールの前記発射速度に比例する、請求項3記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項5】
前記発射ボールに付与される前記発射空気圧に増減に応じて、前記発射ボールの発射速度の増減が制御され、
前記摩擦体に付与される前記摩擦空気圧の増減に応じて、前記発射ボールに付与される摩擦力の増減が制御され、
前記摩擦体は、前記発射ボールの発射速度に比例する摩擦力を、前記発射ボールに付与し、
前記発射ボールの前記発射速度が速い場合には、前記摩擦体が前記発射ボールに付与する前記摩擦力は高く、
前記発射ボールの前記発射速度が遅い場合には、前記摩擦体が前記発射ボールに付与する前記摩擦力は低い、請求項4記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項6】
前記摩擦体は、前記摩擦空気圧に比例する摩擦力を、前記発射筒内部を移動する前記発射ボールへの接触で付与する、請求項2から5のいずれか記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項7】
前記摩擦体は、前記摩擦力に基づく摩擦により、前記発射筒を移動する前記発射ボールに、回転を与える、
請求項2記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項8】
前記圧力付与部は、前記摩擦体を前記発射筒内部に押し出す押し出し制御部と、前記摩擦体を前記発射筒内部から引き戻す引き戻し制御部とを、備え、
前記管路が、前記押し出し制御部に前記摩擦空気圧を付与する場合には、前記摩擦体は、前記発射筒内部に押し出されて、前記発射ボールと接触可能となり、
前記管路が、前記引き戻し制御部に前記摩擦空気圧を付与する場合には、前記摩擦体は引き戻されて、前記発射筒において前記発射ボールとは非接触となる、請求項
2記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項9】
前記管路を介して前記圧力付与部に供給される摩擦空気圧を、少なくとも前記ボールが前記摩擦体を通過するまでの時間において維持する、圧力制御部を更に備える、
請求項2から8のいずれか記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項10】
前記圧力制御部は、逆止弁と絞り弁の組み合わせを備える、
請求項9記載のボール発射装置用アタッチメント。
【請求項11】
空気圧によりボールを発射する空気圧ボール発射装置であって、
発射筒と、
前記発射筒において、発射対象である発射ボールを設置して発射空気圧を付与する空気圧付与部と、
前記空気圧付与部に圧縮空気を供給する圧縮空気タンクと、
前記発射筒内部に取り付けられる請求項1から
10のいずれか記載のボール発射装置用アタッチメントと、
を備え、
前記管路は、前記圧縮空気タンクと接続されている、空気圧ボール発射装置。
【請求項12】
前記発射装置用アタッチメントは、前記発射筒内部において、前記発射ボールの上面、側面、底面の少なくとも一つに接触可能である、請求項
11記載の空気圧ボール発射装置。
【請求項13】
前記発射筒に、複数の前記ボール発射装置用アタッチメントが取り付けられる、請求項
11または12記載の空気圧ボール発射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧によってボールを発射するボール発射装置に用いられ、発射されるボールに摩擦を付与するボール発射装置用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
野球でのバッティング練習やテニスでのストローク練習などにおいて、野球ボールやテニスボールを自動で発射するボール発射装置が用いられる。野球の練習に使用されるボール発射装置は、ピッチングマシンやバッティングマシーンと呼ばれる。このようにピッチングマシンやバッティングマシーンと呼ばれるボール発射装置が、野球のバッティング練習やテニスのストローク練習などで、練習者にとって利用されている。
【0003】
このような野球やテニスなどの球技におけるボールを発射するボール発射装置としては、先端にボールを載せたアームを回転させてボールを発射するアーム式のものがある。あるいは、近接させた一対のローラーの間にボールを通して、一対のローラーの回転によりボールを発射するローラー式のものがある。
【0004】
これらとは異なり、筒状の発射筒に設置されたボールに対して圧縮空気による空気圧を付与して、空気圧でボールを発射する空気圧によるボール発射装置もある。空気圧でボールを発射するボール発射装置は、空気圧の調整によって、発射されるボールの速度、角度などを様々に制御できる。この様々な制御によって、使用者にとって最適な速度やコントロールのボールを発射することができる。結果として、ボール発射装置を用いた練習効率が高まる。
【0005】
また、空気圧によるボール発射装置は、発射筒に設置されたボールに空気圧が付与されて発射筒を移動して発射される。このため、発射筒を移動する過程で、ボールに摩擦を付与することができる。例えば、発射筒内部においてボールに接触可能なアタッチメントを備えておき、アタッチメントがボールに接触する過程で摩擦を付与することができる。
【0006】
このアタッチメントによる摩擦の付与で、ボールに回転や変化を与えることができる。速度のある直球、スピン回転のあるボール、カーブやシュートといった変化するボールを発射することができる。アーム式やローラー式では、このような摩擦付与によるボールへの回転や変化の付与ができない。この点でも、空気圧によるボール発射装置のメリットは高い。
【0007】
このようなアタッチメントに関するいくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-76100号公報
【文献】特開2014-076101号公報
【文献】特許5625098号公報
【文献】実開平1-77784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、空気圧でボール(2)を発射させるボール発射手段(3)にボール(2)の発射方向や回転を定める制球手段(4)を接続し、制球手段(4)にボール(2)が通過するボール通過通路(50)を形成し、ボール通過通路(50)の先端の投球口(5)からボール(2)を投げ出すピッチングマシーン(1)において、制球手段(4)は、ボール(2)の外径と略同一内径を有する制球管(34)にボール(2)の外径よりも拡径した内径を有する連結管(35)を連結し、連結管(35)にボール(2)と接触してボール(2)に回転を与える複数の摩擦体(39,42,43)を設け、一方の摩擦体(39)の表面を制球管(34)の表面よりもボール(2)が滑りやすく、他方の摩擦体(42,43)の表面を制球管(34)の表面よりもボール(2)が滑りにくくすることにしたピッチングマシーンを、開示する。
【0010】
複数の摩擦体によりボールへの摩擦付与を行う技術を開示している。
【0011】
しかしながら、空気圧でボールを発射するピッチングマシーンでは、ボールが通過する通過通路で摩擦体と接触して摩擦の付与を受ける。このとき、付与される空気圧によってボールの射出スピードを可変にできる。ボールの射出スピードが速い場合には、ボールは通過通路を早い速度で移動する。この速い速度で移動する過程でボールは摩擦体と接触する。逆に、ボールの射出スピードが遅い場合には、ボールは通過通路を遅い速度で移動する。この遅い速度で移動する過程で、ボールは摩擦体と接触する。
【0012】
ボールと摩擦体とは、物理的な接触を行うだけである。この物理的な接触のみで、ボールは摩擦体から摩擦を受ける。このとき、ボールの移動速度が速い場合には、摩擦体による押さえが弱い場合には、摩擦体は十分な摩擦をボールに付与できない問題がある。逆に、摩擦体による押さえが強い場合には、ボールの移動速度が遅い場合には、摩擦体がボールを押さえつけすぎて、射出されるボールのコントロールに悪影響が出る問題がある。
【0013】
摩擦体は、通過通路を移動するボールとの物理的な接触のみで摩擦を付与する。このため、ボールの移動速度が速い場合に合わせて摩擦体の押さえつけを強くしていると、ボールの移動速度が遅い場合に、射出されるボールのコントロールが悪くなる問題がある。逆に、ボールの移動速度が遅い場合に合わせて摩擦体の押さえつけを弱くしていると、ボールの移動速度が速い場合に、十分な摩擦を付与できない問題が生じる。
【0014】
ピッチングマシーンにおいては、練習のためにボールの射出スピードを様々に変化させることが多く行われる。この様々なスピード変化のたびに、摩擦体の押さえつける力を物理的に変化させることは、煩雑な作業となって好ましくない(摩擦体とボールとの距離を変化させたり、押さえ付けのための弾性力を変化させたりするなどが必要である)。
【0015】
また、野球やテニスなどの練習においては、ボールに十分な回転が付与されていることも必要である。逆回転による直球の十分な射出や、横回転などによる変化球の射出などのためである。上述のように、摩擦体の押さえつける力とボールの移動速度とのバランスが悪いと、摩擦による回転付与が不十分あるいは過剰となってしまう問題がある。この問題は、射出されるボールの球種やコントロールに悪影響を与える。
【0016】
特許文献2は、空気圧でボール(2)を発射させるボール発射手段(3)にボール(2)の発射方向や回転を定める制球手段(4)を接続し、制球手段(4)にボール(2)が通過するボール通過通路(50)を形成し、ボール通過通路(50)の先端の投球口(5)からボール(2)を投げ出すピッチングマシーン(1)において、ボール(2)が投げ出されることを光の点灯で報知する報知手段(52,53,54)を投球口(5)の近傍から順に複数個並べて設け、投球口(5)から遠い順に報知手段(52,53,54)を点灯するピッチングマシーンを開示する。
【0017】
特許文献2は、ボールの発射を使用者に通知することはできるが、摩擦付与の適切な制御を行うことができない問題がある。特許文献2は、特許文献1と同じ問題を有している。
【0018】
特許文献3は、ボールを発射させるボール発射手段にボールの発射方向や回転を定める制球手段を接続し、制球手段にボールが通過するボール通過通路を形成し、ボール通過通路の先端の投球口からボールを投げ出すピッチングマシーンにおいて、前記ボール発射手段は、ボールを供給するボール供給機構と、ボール供給機構から供給されたボールを空気圧で発射する空気噴射機構とで構成し、制球手段は、ボール通過通路の下側に回転体を設けるとともに、回転体をボールの進行方向に向けてボールの進行速度よりも速い速度で回転させて前記空気噴射機構から発射されたボールの下側に接触させ、回転体の上方に摩擦体を設け、ボールと接触する摩擦体の表面よりもボールと接触する回転体の表面の動摩擦係数を大きくしたことを特徴とするピッチングマシーン。
【0019】
特許文献3は、回転体と摩擦体によりボールに摩擦を付与する技術を開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献3も、ボールの移動速度と摩擦体による付与とのバランスを制御することができない問題がある。すなわち、特許文献1と同じ問題を有している。
【0021】
特許文献4は、高圧空気の圧力を受けて筒を移動するボールの面に、山型の凸部を接触させてボールに摩擦を付与するボール回転手段を備えるピッチングマシンを開示する。特許文献4は、筒を移動するボールの一部の面に、2つの凸部が接触することで、人間の投手が二本の指でボールに摩擦を付与することを、模擬的に再現している。この模擬的な再現により、特許文献4に開示されるピッチングマシンは、ボールに回転を付与することができる。
【0022】
しかしながら、特許文献4の技術も、ボールの移動速度と摩擦体による付与とのバランスを制御することができない問題がある。すなわち、特許文献1と同じ問題を有している。
【0023】
以上のように、特許文献1~4をはじめとする従来技術は、空気圧によって発射するボールの速度の様々な変化に、摩擦体による摩擦付与が対応できない問題があった。この問題により、ボールの速度と摩擦体による摩擦付与がアンバランスとなることがあり、アンバランスとなると、発射されるボールの速度、コントロール、球種などに不具合が生じる問題があった。
【0024】
本発明は、これらの課題に鑑み、発射されるボールの速度と摩擦体によりボールに付与される摩擦力とのバランスを最適に制御できるボール発射装置用アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題に鑑み、本発明のボール発射装置用アタッチメントは、圧縮空気タンクからの空気圧でボールを発射する空気圧ボール発射装置に用いられるボール発射装置用アタッチメントであって、
前記ボール発射装置の発射筒内部に設けられるアタッチメント本体部と、
前記アタッチメント本体部に備わり前記発射筒内部を移動するボールに摩擦を付与する摩擦体と、
前記摩擦体へ圧力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部と前記圧縮空気タンクをつなげる管路と、を、備え、
前記管路は、前記発射筒から発射されるボールに付与される前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を、前記圧力付与部に付与し、
前記圧力付与部が前記摩擦体へ付与する圧力は、前記発射筒内部を移動するボールに加える摩擦力に比例する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のボール発射装置用アタッチメントは、ボールの発射速度を決めるボールに付与される空気圧を用いて摩擦体の摩擦付与圧力を制御できる。この制御により、ボールの発射速度と摩擦体による摩擦付与圧力とが比例できる。
【0027】
すなわち、ボールの発射速度が速い場合には、早くするために高くなっている空気圧によって摩擦体による摩擦付与圧力が大きくなる。早く移動するボールに対して、十分な摩擦を付与することができる。逆に、ボール発射速度が遅い場合には、遅いのに合わせて低くなっている空気圧によって、摩擦体による摩擦付与圧力が小さくなる。
【0028】
これらの結果、ボールの発射速度が速い場合でも遅い場合でも、適正な摩擦付与が行われ、発射筒から発射されるボールの速度、球種、コントロールなどが、所望のレベルに合わせられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態1における空気圧ボール発射装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態2における、ボール発射装置用アタッチメントの側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるアタッチメントとボールとの接触関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるアタッチメントとボールとの接触関係を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における高い発射速度の場合での発射を示すボール発射装置の模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における低い発射速度の場合での発射を示すボール発射装置の模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態2における圧力付与部とその周辺を含む模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態2におけるピストンが摩擦体を発射筒内部に押し出した状態を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態2におけるピストンが摩擦体を発射筒から引き戻した状態を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施の形態3における空気圧ボール発射装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の発明に係るボール発射装置用アタッチメントは、圧縮空気タンクからの空気圧でボールを発射する空気圧ボール発射装置に用いられるボール発射装置用アタッチメントであって、
前記ボール発射装置の発射筒内部に設けられるアタッチメント本体部と、
前記アタッチメント本体部に備わり前記発射筒内部を移動するボールに摩擦を付与する摩擦体と、
前記摩擦体へ圧力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部と前記圧縮空気タンクをつなげる管路と、を、備え、
前記管路は、前記発射筒から発射されるボールに付与される前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を、前記圧力付与部に付与し、
前記圧力付与部が前記摩擦体へ付与する圧力は、前記発射筒内部を移動するボールに加える摩擦力に比例する。
【0031】
この構成により、ボールを発射する空気圧に比例する空気圧が、圧力付与部を介して、摩擦体に加わる。摩擦体は、この圧力付与部からの圧力で発射筒を移動するボールに接触する。この結果、ボールには発射圧力に比例する圧力で、摩擦体による摩擦が加わる。
【0032】
本発明の第2の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第1の発明に加えて、前記圧縮空気タンクは、前記発射筒に設置されて発射される発射対象である発射ボールに発射空気圧を付与し、
前記発射空気圧の付与に併せて、同じ圧縮空気を、前記管路を通じて、前記圧力付与部に摩擦空気圧を付与し、
同一の前記発射ボールに対する前記発射空気圧と前記摩擦空気圧は、略同一である。
【0033】
この構成により、発射空気圧に比例する摩擦空気圧で、摩擦体はボールに接触する。このため、ボールの発射速度が速い場合には、高い圧力でしっかりと摩擦体が接触し、ボールの発射速度が遅い場合には、摩擦体による接触が過剰になりにくい。
【0034】
本発明の第3の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第2の発明に加えて、前記圧力付与部は、前記摩擦空気圧に基づいて、前記摩擦体の摩擦力を生じさせる。
【0035】
この構成により、摩擦体による接触圧力は、発射速度に比例する。
【0036】
本発明の第4の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第3の発明に加えて、前記発射空気圧は、前記発射ボールの発射速度を制御し、
前記摩擦空気圧は、前記発射ボールへ付与される摩擦力を制御し、
前記摩擦力は、前記発射ボールの前記発射速度に比例する。
【0037】
この構成により、発射空気圧と摩擦空気圧とが比例して、この結果、ボールの発射速度とボールへの摩擦力とが比例する。
【0038】
本発明の第5の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第4の発明に加えて、前記発射ボールに付与される前記発射空気圧に増減に応じて、前記発射ボールの発射速度の増減が制御され、
前記摩擦体に付与される前記摩擦空気圧の増減に応じて、前記発射ボールに付与される摩擦力の増減が制御され、
前記摩擦体は、前記発射ボールの発射速度に比例する摩擦力を、前記発射ボールに付与し、
前記発射ボールの前記発射速度が速い場合には、前記摩擦体が前記発射ボールに付与する前記摩擦力は高く、
前記発射ボールの前記発射速度が遅い場合には、前記摩擦体が前記発射ボールに付与する前記摩擦力は低い。
【0039】
この構成により、発射速度が高い場合には、ボールの発射速度に負けることなく摩擦体はボールに摩擦力を付与できる。逆に、ボールの発射速度が遅い場合には、ボールに過剰な摩擦力を付与するのを防止できる。すなわち、ボールの発射速度に最適に合わされた摩擦体によるボールへの摩擦付与(接触)が行われる。さらには、最適な回転付与が行われる。
【0040】
本発明の第6の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第2から第5のいずれかの発明に加えて、前記摩擦体は、前記摩擦空気圧に比例する摩擦力を、前記発射筒内部を移動する前記発射ボールへの接触で付与する。
【0041】
この構成により、ボールの発射速度の増減に比例したボールへの摩擦付与が行われる(接触が行われる)。
【0042】
本発明の第7の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記摩擦体は、前記摩擦力に基づく摩擦により、前記発射筒を移動する前記発射ボールに、回転を与える。
【0043】
この構成により、発射速度に応じた回転付与を実現できる。
【0044】
本発明の第8の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第2から第7のいずれかの発明に加えて、前記圧力付与部は、前記摩擦体を前記発射筒内部に押し出す押し出し制御部と、前記摩擦体を前記発射筒内部から引き戻す引き戻し制御部とを、備え、
前記管路は、前記押し出し制御部および前記引き戻し制御部のいずれかを切り替えて、前記摩擦空気圧を付与する。
【0045】
この構成により、摩擦体をボールに接触させる場合と非接触にする場合とを切り分けることができる。
【0046】
本発明の第9の発明に係るボール発射装置用アタッチメントでは、第8の発明に加えて、前記管路が、前記押し出し制御部に前記摩擦空気圧を付与する場合には、前記摩擦体は、前記発射筒内部に押し出されて、前記発射ボールと接触可能となり、
前記管路が、前記引き戻し制御部に前記摩擦空気圧を付与する場合には、前記摩擦体は引き戻されて、前記発射筒において前記発射ボールとは非接触となる。
【0047】
この構成により、ボールへ摩擦体を接触させたくない場合でも、発射空気圧の付与と合わせた摩擦空気圧を付与する処理で、ボールから摩擦体を離隔させることができる。
【0048】
本発明の第10の発明に係るボール発射装置用アタッチメントは、第2から第9のいずれかの発明に加えて、前記管路を介して前記圧力付与部に供給される摩擦空気圧を、少なくとも前記ボールが前記摩擦体を通過するまでの時間において維持する、圧力制御部を更に備える。
【0049】
この構成により、ボールの発射に対応して加えられた空気圧が、ボールのアタッチメントの通過まで、ボールに加わる圧力が維持される。
【0050】
本発明の第11の発明に係るボール発射装置用アタッチメントは、第10の発明に加えて、圧力制御部は、逆止弁と絞り弁の組み合わせを備える。
【0051】
この構成により、圧力維持を確実かつ容易に行える。
【0052】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
(実施の形態1)
【0054】
(空気圧ボール発射装置の概要)
まず、本発明のボール発射装置用アタッチメント(以下、必要に応じて「アタッチメント」と略す)を説明する前に、これが使用される空気圧でボールを発射する空気圧ボール発射装置(以下、必要に応じて「空気圧ボール発射装置」、もしくは「ボール発射装置」と略す)について説明する。
【0055】
図1は、本発明の実施の形態1における空気圧ボール発射装置の模式図である。
【0056】
空気圧ボール発射装置100は、圧縮空気タンク104からの圧縮空気による空気圧でボール10を発射する。空気圧ボール発射装置100は、発射筒102、空気圧付与部103、圧縮空気タンク104、空気供給路105、台座106を備える。発射筒102は、ボール10の設置と発射とを実現する。発射筒102は、ボール10が設置されて、ボール10に空気圧が付与されると、このボールの空気圧での移動を行わせる。
【0057】
このボールの移動の過程で、発射筒102は、ボールの加速を生じさせつつ、ボールの発射軌道の安定性を作り出す。
【0058】
発射筒102には、ボール10が設置されて空気圧が付与される空気圧付与部103が備わっている。空気圧付与部103は、空気圧を付与して発射するボール10を設置する部位である。設置と合わせて、必要に応じて、空気圧の付与を待つ間において、ボール10を固定することもよい。すなわち、空気圧付与部103は、発射対象のボール10を設置して、発射筒102からの発射の準備を行う場所である。
【0059】
ここで、空気圧付与部103は、発射筒102と別体でもよいし一体でもよい。また、空気圧付与部103は、発射筒102の一部として構成されていてもよい。
【0060】
圧縮空気タンク104は、空気圧付与部103に圧縮空気を送り出す。この圧縮空気を送り出すことで、空気圧付与部103に設置されているボール10に空気圧を付与できる。圧縮空気タンク104は、このように付与する空気圧の元となる圧縮空気を溜めている。空気供給路105は、この圧縮空気タンク104と空気圧付与部103とを結ぶ。空気供給路105を介して、空気圧付与部103に、圧縮空気タンク104からの圧縮空気が付与される。
【0061】
台座106は、空気圧ボール発射装置100を支える。可動式であったり、移動容易であったり、高低や向きを変化できることも好ましい。
【0062】
また、空気圧ボール発射装置100は、本発明のボール発射装置用アタッチメント1を備えている。アタッチメント1は、発射筒2の内周に向けて設けられる。すなわち、発射筒2の内部に設けられる。内部に設けられるとは、内部のみに設置されるということに限定されるのではなく、発射筒2内部を通過するボール10と接触できるように、発射筒2の内部に設置状態となるものである。取り付けにおいて発射筒2の外部から取り付けられて、接触可能に内部に突出していることでもよい。
【0063】
空気圧ボール発射装置100を用いたボール10の発射について説明する。
【0064】
ボール10は、空気圧付与部103に設置される。
図1においては示されていないが、発射筒2の上方などからボール10を投入するなどして、ボール10は、空気圧付与部103に設置される。空気圧付与部103は、ボール10の設置を検出するセンサー(光学センサー、重量センサーなど)を備えており、ボール10が設置されたことを認識できる。
【0065】
操作部107が操作されることであったり、自動操作などであったりすることで、圧縮空気タンク104からの圧縮空気の供給が実行される。圧縮空気タンク104から空気供給路105に空気が供給される。この供給によって、ボール10が設置されている空気圧付与部103に圧縮空気が供給される。この結果、ボール10には、圧縮空気による空気圧が付与される。この空気圧の付与によって、ボール10は、発射筒102内部を移動する。
【0066】
図1における矢印Aは、このボール10の移動方向を示している。空気圧を受けて、ボール10は、高速で発射筒102内部を移動する。この移動の過程で、ボール10は、発射筒102内部に突出しているアタッチメント1に接触する。
図1では、接触状態も合わせて示されている。
【0067】
ボール10は、発射筒102内部の移動時にこのアタッチメント1との接触で回転付与を受ける。この回転付与を受けた状態で、ボール10は、発射筒102の射出口から発射される。
図1では、発射されたボール10までが示されている。
【0068】
このように、空気圧ボール発射装置100は、空気圧でボール10を発射し、この発射において、アタッチメント1によりボール10に摩擦を付与して、ボール10に回転を生じさせる。この回転により、ボール10の球種やコントロールが作られる。
【0069】
野球やソフトボールでは、ボールの球種やコントロールがなされることが、空気圧ボール発射装置100において重要である。ボールの構造上、ボール10に回転が付与されると、伸びのある直球、カーブやシュートなどの変化球が、実現できる。また、回転の付与により、速度も目的に合わせやすい。加えて、回転方向によって、変化球が実現できると共にコントロールの調整もできる。
【0070】
テニス等であっても、ボールに回転が付与されることで、軌道の安定や方向に変化をつけるなどのことが可能になる。
【0071】
このように、空気圧ボール発射装置100は、発射筒102内部をボール10が移動して発射する。この過程で、アタッチメント1に接触させて回転を付与させることができる。この回転によって、ボール10の球種、軌道の安定性、速度、コントロールなどを創り上げることができる。
【0072】
また、
図1における空気圧ボール発射装置100は、圧力制御部9とを備えている。圧縮空気タンク104からの圧縮空気が、ボール100を発射する空気圧付与部103とアタッチメント1の圧力付与部4とに付与される。ここで、空気圧付与部103においては、圧縮空気タンク104からの圧縮空気が付与されれば、その瞬間にボール100が発射される。このため、圧縮空気の付与は瞬間的でよい。
【0073】
これに対して、アタッチメント1の圧力付与部4に付与される空気は、後述するように摩擦体3を発射筒102を通過するボール10に対して摩擦圧力を付与する必要がある。このとき、ボール10の通過までは、摩擦体3が摩擦圧力を付与し続ける必要がある。圧縮空気タンク104からの圧縮空気は、瞬間的であり、アタッチメント1の圧力付与部4に加わる圧縮空気も瞬間的となってしまう。瞬間的では、ボール10が通過する際には、摩擦体3が付与できる摩擦圧力が弱くなってしまう可能性がある。
【0074】
圧力制御部9は、これを防止できる。
【0075】
圧力制御部9は、圧縮空気タンク104からアタッチメント1に供給される圧縮空気が、ボール10の発射後まで圧力付与部4に残ることを実現する。例えば、圧力制御部9は、逆止弁あるいは電磁弁などを備えている。この逆止弁あるいは電磁弁など(組み合わせでもよい)により、圧縮空気タンク104から管路5を通じて圧力付与部4に供給された圧縮空気が、圧力付与部4において発射後も一定時間残る。すなわち、ボール10の発射後、ボール10が摩擦体3を通過するまで、圧縮空気による摩擦圧力が維持される。
【0076】
逆止弁あるいは電磁弁などより、圧力制御部9は、圧縮空気タンク104からの圧縮空気の抜けを防止して、一定時間の摩擦体3による圧力維持を実現できる。このような逆止弁あるいは電磁弁による圧力制御部9が備わることで、ボール10の通過時において、摩擦体3は、必要な摩擦圧力での接触を実現できる。
【0077】
あるいは、逆止弁あるいは電磁弁などによるのではなく、ボール10を発射するための圧縮空気の付与後に摩擦体3での圧力を維持できる電子回路を備えることもよい。このような電子回路によって、やはりボール10の発射後において、ボール10が摩擦体3を通過するまでの間、圧力付与部4での摩擦圧力が維持されるからである。
【0078】
このように、後述するアタッチメント1の摩擦体3による圧力付与が、ボール10の通過時に適切に行われるように、圧力制御部9や専用の電子回路が備わっていることも好適である。
【0079】
また、速度制御部9は、圧縮空気タンク104からの圧縮空気を、アタッチメント1の圧力付与部4に加えないように、摩擦体3の押し出しを停止させることができる。この場合には、圧力付与部4に摩擦空気圧が付与されないので、ボール10に接触圧力をかけない。ボールに摩擦付与をしたくない場合には、このような制御も可能である。
【0080】
本発明のボール発射装置用アタッチメント1は、空気圧ボール発射装置100に用いられる。
【0081】
(アタッチメント概要)
図2は、本発明の実施の形態2における、ボール発射装置用アタッチメントの側面図である。説明の容易性のため、実際には隠れている部材が可視状態として示されているが、実際に製造されたものは、部材の組み合わせによって表に見えるものと隠れているものとがある。
【0082】
アタッチメント1は、アタッチメント本体部2、摩擦体3、圧力付与部4、管路5とを、備える。なお、
図2などのアタッチメント1では、摩擦体3と圧力付与部4が2セットとなっているが、1セットでもよいし、3セット以上であってもよい。
【0083】
アタッチメント本体部2は、ボール発射装置用アタッチメント1の全体を形成する。加えて、アタッチメント1を、発射筒102に取り付ける。例えば、アタッチメント本体部2は、発射筒102に取り付ける取り付け器具を備えており、この取り付け器具が、発射筒102へのアタッチメント1の取り付け(あるいは取り外し)を、可能とする。
【0084】
摩擦体3は、アタッチメント本体部2に備わる。あるいは、アタッチメント2に取り付けられている。摩擦体3は、発射筒102内部を移動するボール10に直接的に接触する。この接触により、発射筒102内部を移動するボール10に摩擦を付与する。この摩擦付与によって、ボール10には、回転が生じる。
【0085】
圧力付与部4は、摩擦体3に圧力を付与する。摩擦体3は、ボール10への接触を行うが、このとき、摩擦体3の摩擦付与においては、ボール10への圧力の違いによって、摩擦付与の度外が変わる。圧力付与部4は、この摩擦体3が付与できる摩擦の度合いを決める圧力を付与する。
【0086】
圧力付与部4による圧力が高ければ、摩擦体3がボール10と接触する際の摩擦圧力は大きくなる。逆に、圧力付与部5による圧力が低ければ、摩擦体3がボール10と接触する際の摩擦圧力は小さくなる。圧力付与部4は、このように摩擦体3がボール10に摩擦を付与する際の圧力(度合い)を、設定できる。
【0087】
管路5は、圧力付与部4と接続して、圧力付与部4に圧縮空気タンク104からの圧縮空気を付与する。すなわち、空気圧を付与する。管路5は、圧縮空気タンク104と圧力付与部4とを接続している。
【0088】
管路5は、発射筒102から発射されるボール10に付与される圧縮空気タンク104からの圧縮空気を、圧力付与部4に供給する。すなわち、管路5は、あるボール10を発射する際に、ボール10を発射する際の空気圧付与部103に付与するのと同じ圧力の圧縮空気を、圧力付与部4に付与する。同じレベルの圧力が、空気圧付与部103に設置されているボール10にも、圧力付与部4に制御される摩擦体3にも付与されることになる。
【0089】
この結果、圧力付与部4が摩擦体3に付与する圧力は、発射筒102内部を移動するボール10に付与される空気圧の圧力と同等となる。また、摩擦体3に付与される圧力は、発射筒102内部を移動するボール10に加えられる摩擦力に比例することになる。
【0090】
すなわち、ある発射対象であるボール10には、圧縮空気タンク104からある圧力の空気圧が付与される。このとき、同時に同じ圧縮空気タンク104から同じタイミングで、圧力付与部4にも空気圧が付与される。それぞれに付与される空気圧は略同一の状態となる。
【0091】
このため、ボール10が空気圧付与部103から発射される際の空気圧と、ボール10が接触する摩擦体3による空気圧とは比例した状態となる。この比例した状態の圧力で、摩擦が加えられることで、ボール10の発射速度に応じた最適な摩擦が付与されることになる。
【0092】
もちろん、上述のように、圧力付与部4が摩擦体3へ付与する圧力は、摩擦体3が発射筒102内部を移動するボール10に加える摩擦力に比例する。すなわち、摩擦体3がボール10に加える摩擦力は、摩擦体3に圧力付与部4から加えられる圧力によって定まる(圧力の増減と摩擦力の増減が比例する)。
【0093】
(摩擦体との接触メカニズム)
すなわち、圧力付与部4が摩擦体3へ付与する圧力の増減に比例して、摩擦体3がボール10に加える摩擦力が比例する。また、圧力付与部4に供給される空気圧は、発射されるボール10の発射時に付与される空気圧と同じものである。このため、発射対象であるボール10が発射されるときには、ボール10に付与されるのと同じ圧縮空気が、一方ではボール10に発射空気圧として付与され、同時に圧力付与部4に摩擦空気圧として付与される。このため、ボール10を発射するのと同等の空気圧が摩擦体3にも付与される。
【0094】
この結果、ボール10の発射に用いられる圧力と、摩擦体3がボール10に摩擦を付与する圧力とが同レベルとなる。同レベルであることで、ボール10の発射速度が速い場合には、高い圧力により摩擦体3と接触する。ボール10の発射速度が遅い場合には、低い圧力により摩擦体3と接触する。これにより、ボールの速度に応じた最適な摩擦体3との接触が実現できる。
【0095】
図3、
図4は、本発明の実施の形態1におけるアタッチメントとボールとの接触関係を示す模式図である。いずれも、ボール発射装置100において、圧縮空気タンク104から発射対象である発射ボール10Aに対して、発射されるための発射空気圧が付与されている。この発射空気圧の大きさを、矢印X1、X2で表している。また、同様に、アタッチメント1の圧力付与部4に、同じ圧縮空気タンク104からの圧縮空気による圧力である摩擦空気圧が付与されている。この摩擦空気圧は、矢印Y1、Y2で表されている。
【0096】
このとき、発射ボール10Aに付与される発射空気圧と圧力付与部4に付与される摩擦空気圧は、略同一である。同じタイミングで同じ圧縮空気タンク104から並行して供給されるので、同レベルの圧力が、発射空気圧および摩擦空気圧として付与される。同レベルとは、数値的かつ物理的な同一を要求する意図ではなく、増減の比例性があるレベルでの圧力が付与されることを意味している。
【0097】
圧力付与部4に加わる摩擦空気圧は、そのまま摩擦体3が発射ボール10Aに与える接触圧力になる。すなわち、圧力付与部4の摩擦空気圧が大きいと、摩擦体3は、強い力で発射ボール10Aに接触する。摩擦空気圧が小さいと、摩擦体3は、弱い力で発射ボール10Aに接触する。
【0098】
図3は、発射空気圧の大きさX1と摩擦空気圧の大きさY1とが、共に大きい場合を示している。矢印X1と矢印Y1との幅は、空気圧の大きさを示している。また、矢印X1と矢印Y1の幅が同等であることは、発射空気圧と摩擦空気圧が同レベルであることを示している。
【0099】
図3の場合には、発射ボール10Aを発射するための発射空気圧は、矢印X1の通り大きい。このため、圧力付与部4への摩擦空気圧も、矢印Y1の通り大きい。結果として、発射ボール10Aへ加わる高い発射空気圧に比例した大きい圧力で、摩擦体3は、通過する発射ボール10Aに接触して十分に摩擦を付与できる。
【0100】
図4は、発射空気圧の大きさX2と摩擦空気圧の大きさY2とが、共に小さい場合を示している。矢印X2と矢印Y2の幅は、空気圧の大きさを示している。また、矢印X2と矢印Y2の幅が同等であることは、発射空気圧と摩擦空気圧が同レベルであることを示している。
【0101】
図4の場合には、発射ボール10Aを発射するための発射空気圧は、矢印X2の通り小さい。このため、圧力付与部4への摩擦空気圧も、矢印Y2の通り小さい。結果として、発射ボール10Aに加わる低い発射空気圧に比例した小さい圧力で、摩擦体3は、通過する発射ボール10Aに接触して小さい摩擦を付与できる。
【0102】
圧力付与部4は、摩擦空気圧に基づいて、摩擦体3の摩擦力を生じさせる。摩擦体3は、圧力付与部4からの圧力により、発射ボール10Aに接触し、この接触力の大きさは圧力付与部4からの圧力に比例する。加えて、接触力の大きさが、摩擦力に比例する。
【0103】
これらの結果、
図3の場合には、発射ボール10Aに高い接触力で摩擦が付与され、
図4の場合には、発射ボール10Aに低い接触力で摩擦が付与される。従来技術で説明したように、摩擦体3は、発射筒102内部を通過する発射ボール10Aに接触して摩擦を付与する。このとき、発射ボール10Aの発射速度(通過速度)が速ければ、十分な圧力で接触する必要がある。圧力が低いと、発射ボール10Aに押し戻されて、十分な圧力で接触できないからである。逆に、発射ボール10Aの発射速度(通過速度)が遅ければ、低い圧力で接触する必要がある。圧力が高いと、発射ボール10Aへの接触が強すぎて、発射筒102から発射される発射ボール10Aのコントロールに狂いが生じる可能性があるからである。もちろん、球種や実速度への影響もあり得る。
【0104】
図3、
図4のように、発射ボール10Aに付与される発射空気圧と同レベルの空気圧で、摩擦空気圧で、摩擦体3が発射ボール10Aに接触する。この結果、発射ボール10Aが速いときには高い摩擦力で接触し、遅いときには低い摩擦力で接触し、速度に応じた摩擦力の付与(回転の付与)を実現できる。
【0105】
(ボール発射装置での説明)
図5は、本発明の実施の形態1における高い発射速度の場合での発射を示すボール発射装置の模式図である。矢印の幅は、発射速度、発射空気圧、摩擦空気圧の大きさを示している。
図5の場合には、矢印の幅の大きさに示されるように、発射速度の高さに合わせて、発射空気圧も摩擦空気圧も高い。発射空気圧および摩擦空気圧は、圧縮空気タンク104から、発射速度の設定に対応して供給される。発射空気圧が付与されるのと同時に管路5を介して、圧縮空気タンク104から摩擦空気圧に対応する空気が、圧力付与部4に供給される。
【0106】
ここで、発射空気圧は、発射ボール10Aの発射速度を制御する。摩擦空気圧は、発射ボール10Aに付与される摩擦力(接触力)を制御する。これら発射空気圧と摩擦空気圧が比例していることで、摩擦体3による発射ボール10Aへの摩擦力は、発射ボール10Aの発射速度に比例する。
【0107】
図5の場合には、発射速度が速いので、それに比例して摩擦体3による摩擦力も大きい。発射ボール10Aに付与される発射空気圧が大きいと、発射ボール10Aの発射速度が増加する。
図5はこの場合である。この結果、
図5では、発射ボール10Aは、高い速度で発射される。言い換えれば、発射空気圧の増減は、発射ボール10Aの発射速度の増減を制御する。
【0108】
摩擦体3は、この発射ボール10Aの発射速度に比例する摩擦力を、接触により、発射ボール10Aに付与する。
図5では、高い摩擦力を付与している。高い通過速度で発射筒102内部を通過する発射ボール10Aに対して、高い摩擦力を付与できる。これにより、速い通過速度の発射ボール10Aに負けることなく、十分に接触を付与することができる。
【0109】
図6は、本発明の実施の形態1における低い発射速度の場合での発射を示すボール発射装置の模式図である。
図6の矢印の幅は、発射速度、発射空気圧、摩擦空気圧の大きさを示している。
図6の場合には、矢印の幅の小ささに示されるように、発射速度の低さに合わせて、発射空気圧も摩擦空気圧も低い。発射空気圧および摩擦空気圧は、圧縮空気タンク104から、発射速度の設定に対応して供給される。発射空気圧が付与されるのと同時に管路5を介して、圧縮空気タンク104から摩擦空気圧に対応する空気が、圧力付与部4に供給される。
【0110】
ここで、発射空気圧は、発射ボール10Aの発射速度を制御する。摩擦空気圧は、発射ボール10Aに付与される摩擦力(接触力)を制御する。これら発射空気圧と摩擦空気圧が比例していることで、摩擦体3による発射ボール10Aへの摩擦力は、発射ボール10Aの発射速度に比例する。
【0111】
図6の場合には、発射速度が遅いので、それに比例して摩擦体3による摩擦力も小さい。発射ボール10Aに付与される発射空気圧が小さいと、発射ボール10Aの発射速度が減少する。
図6はこの場合である。この結果、
図6では、発射ボール10Aは、低い速度で発射される。言い換えれば、発射空気圧の増減は、発射ボール10Aの発射速度の増減を制御する。
【0112】
摩擦体3は、この発射ボール10Aの発射速度に比例する摩擦力を、接触により、発射ボール10Aに付与する。
図6では、低い摩擦力を付与している。低い通過速度で発射筒102内部を通過する発射ボール10Aに対して、低い摩擦力を付与できる。これにより、遅い通過速度の発射ボール10Aに過剰な摩擦力を与えることを防止できる。
【0113】
これらのように、実施の形態1におけるアタッチメント1は、発射ボール10Aの発射速度に比例した最適な圧力で、発射ボール10Aに摩擦を付与できる。摩擦体3は、摩擦空気圧に比例する摩擦力を、発射筒102内部を移動する発射ボール10Aへの接触で付与できるからである。
【0114】
摩擦体3は、摩擦力による摩擦(接触)により、発射筒102を移動する発射ボール10Aに回転を与えることができる。この回転は、発射される発射ボール10Aの球種、速度、軌道、コントロールを制御できる。発射ボール10Aの発射速度に比例して、摩擦力が制御されているので、発射速度に関係なく、球種、速度、軌道、コントロールなどの制御が適切に行われる。
【0115】
なお、圧力付与部4による摩擦体3への圧力付与は、適宜設定されて、摩擦空気圧による摩擦体3の摩擦力の大きさは、ボール10の種類や利用の目的に合わせて最適に設定されればよい。
【0116】
(実施の形態2)
【0117】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、追加的な工夫やバリエーションについて説明する。
【0118】
(圧力付与部の近接と離隔の動作)
図7は、本発明の実施の形態2における圧力付与部とその周辺を含む模式図である。ボール発射装置用アタッチメント1において、ここでの説明に必要な要素だけを示している。これは説明の容易性のためであり、アタッチメント本体部2などの表示を省略しているだけで、実際には備わっている。
【0119】
圧力付与部4は、摩擦体3へ圧力を付与して、摩擦体3がボール10への接触の度合い(摩擦圧力)を制御する。このとき、実施の形態1で説明したように、圧力付与部4には、ボール10を発射する際に圧縮空気を付与する圧縮空気タンク104からの摩擦空気圧が付与される。これにより、発射されるボール10の発射速度に比例した圧力で、摩擦体3は、ボール10に接触する。
【0120】
このとき、ボール10に対して回転を付与したい場合には、摩擦体3はボール10に接触する必要がある。この接触における摩擦力が、ボール10の回転および回転力を作る。このため、ボール10に回転を与えたい場合には、管路5を介して圧縮空気が供給されて、圧力付与部4は、摩擦体3を発射筒102内部に押し出してボール10へ接触させる。
【0121】
一方で、発射したいボール10の球種によっては、ボール10に回転を与えたくない場合もある。球種以外の理由によっても、ボール10に回転を与えたくない場合がある。この場合には、摩擦体3をボール10に接触させたくない。あるいは、回転を付与したくない以外の理由で、摩擦体3をボール10に接触させたくない場合もある。
【0122】
図7の圧力付与部4は、ピストン46と仕切り板45を備える。圧力付与部4は、ピストン46に対応するシリンダーのように内部空間を有している。仕切り板45は、この内部空間を2つの空間に仕切っている。ピストン46の上下移動に合わせて仕切り板45も上下移動する。この上下移動により圧力付与部4が摩擦体3を発射筒102内部に押し出すか、摩擦体3を発射筒102から引き戻すかを切り替える。
【0123】
ピストン46は、圧力付与部4の下方であって摩擦体3に向けても伸びている。この伸びた部分が、摩擦体3を下方に押せば、発射筒102内部に摩擦体3が押し出される。摩擦体3が、ボール10に接触を与えるようになる。逆に、伸びた部分が上昇すれば、摩擦体3は、引き戻される。ボール10から摩擦体3が遠ざかる方向になる。
【0124】
圧力付与部4は、摩擦体3を発射筒内部に押し出す押し出し制御部6と、摩擦体3を発射筒102内部から引き戻す引き戻し制御部7を備える。管路5は、この押し出し制御部6と引き戻し制御部7につながる。管路5は、押し出し制御部6および引き戻し制御部7のいずれかを切り替えて、摩擦空気圧を付与する。
【0125】
例えば、管路5は、押し出し制御部6に摩擦空気圧を付与する。押し出し制御部6は、これを受けて、
図7の矢印A1のように圧力付与部4内部の上側に摩擦空気圧となる空気を注入する。この空気の注入により、矢印A2のように、仕切り板45とピストン46は、下方に下がる。摩擦体3が発射筒102に押し出される方向に、仕切り板45とピストン46とが下がる。
【0126】
ピストン46が矢印A2のように下がると、摩擦体3が発射筒102内部に押し出される。この押し出された結果、ボール10に摩擦体3が接触する。このとき、実施の形態1で説明したように、押し出し制御部6を介して加わる摩擦空気圧は、ボール10の発射速度を作る発射空気圧に比例している。このため、ボール10の発射速度に応じた圧力で、摩擦体3は接触する。この接触により、摩擦体3は、ボール10の発射速度に最適な圧力で摩擦を付与して回転力を付与できる。
【0127】
図8は、本発明の実施の形態2におけるピストンが摩擦体を発射筒内部に押し出した状態を示す模式図である。押し出し制御部6により、摩擦付与部4の上部空間に空気が供給され、ピストン46が下方に下がる。下方に下がることで、ピストン46は、摩擦体3を発射筒102内部に押し出す。押し出し制御部6が、矢印A1のように、圧力付与部4の上部空間に空気を送り込む。これにより、ピストン46が矢印A2のように下方に下がる。下方に下がれば、摩擦体3が発射筒102内部に押し出される。
【0128】
摩擦体3は、
図8に示されるように、ボール10に接触でき、発射空気圧を受けて発射筒102内部を移動するボール10に接触する。この接触により、発射速度に応じた摩擦力で、摩擦および回転を付与する。
【0129】
図9は、本発明の実施の形態2におけるピストンが摩擦体を発射筒から引き戻した状態を示す模式図である。管路5は、引き戻し制御部7に摩擦空気圧による圧縮空気を供給する。これにより、引き戻し制御部7は、矢印B1のように、圧力付与部4の下部空間に空気を送り込む。下部空間に空気が送り込まれると、仕切り板45が上昇して、これに合わせてピストン46も上昇する。ピストン46は、矢印B2の方向に移動する。
図9は、この状態を示している。
【0130】
図9の状態によって、摩擦体3は、発射筒102から引き戻された状態となる。
【0131】
引き戻されると、摩擦体3は、ボール10から離隔した位置となり、発射筒102を移動するボール10に接触しなくなる。接触しないことで、ボール10に摩擦(回転)が付与されず、摩擦体3による回転付与がない状態で、ボール10が発射される。なお、発射筒102を移動する過程での摩擦や回転は、ボール10に付与されている。
【0132】
このように、引き戻し制御部7による摩擦体3の位置制御により、摩擦体3がボール10へ接触しない状態を作ることができる。
【0133】
以上のように、管路5が押し出し制御部6に摩擦空気圧による空気を付与する場合には、摩擦体3は、発射筒102内部に押し出される。この押し出しによって、摩擦体3は、発射筒102を移動するボール10と接触可能となる。一方、管路5が引き戻し制御部7に摩擦空気圧による空気を付与する場合には、摩擦体3は、発射筒102内部から引き戻される。この引き戻しによって、摩擦体3は、発射筒102を移動するボール10と非接触となる。
【0134】
以上のように、実施の形態2におけるボール発射装置用アタッチメントは、摩擦体3によるボール10への接触と非接触を、管路5からの空気付与の切り替えのみで切り分けできる。
【0135】
(実施の形態3)
【0136】
実施の形態3について説明する。実施の形態3は、実施の形態1、2で説明したボール発射装置用アタッチメントを備える、空気圧によるボールを発射する空気圧ボール発射装置について説明する。
【0137】
図10は、本発明の実施の形態3における空気圧ボール発射装置の模式図である。空気圧ボール発射装置100は、空気圧によりボール10を発射する。空気圧ボール発射装置100は、発射筒102、発射筒102において、発射対象である発射ボール10Aを設置して、発射空気圧を付与する空気圧付与部103、空気圧付与部103に圧縮空気を付与する圧縮空気タンク104と、ボール発射装置用アタッチメント1を備える。
【0138】
発射筒102は、発射ボール10Aを発射する筒である。発射筒102内部を移動して、発射ボール10Aは加速されつつ軌道を安定させて発射される。空気圧付与部103は、発射筒102内部に発射ボール10Aが設置される部位である。圧縮空気タンク104と接続されており、圧縮空気タンク104が、発射空気圧となる圧縮空気を、空気圧付与部103に供給する。この供給によって、発射ボール10Aに発射空気圧が付与される。
【0139】
この発射空気圧の付与によって、発射ボール10Aは、発射筒102から発射される。発射においては、発射空気圧の付与によって、発射ボール10Aは発射筒102の根元から先端に向けて移動する。この移動の過程で、加速される。また、先端から発射された後の軌道の安定が図られる。
【0140】
この発射筒102内部を移動する際に、発射ボール10Aは、アタッチメント1の摩擦体3と接触する。接触においては、実施の形態1において説明したように、発射空気圧の付与と同タイミングで、圧縮空気タンク104から摩擦空気圧が付与される。このため発射空気圧に比例する摩擦空気圧が、アタッチメント1の圧力付与部4に付与される。結果として、発射ボール10Aには、発射空気圧に比例する摩擦空気圧での摩擦体3との接触が生じる。
【0141】
摩擦体3と接触した発射ボール10Aは、接触によって生じる回転を持った状態で、発射筒102の先端から発射される。このとき、発射速度に比例した圧力での摩擦により、発射ボール10Aの発射速度に合わせて回転が付与される。
【0142】
ここで、摩擦体3(ボール発射装置用アタッチメント1)は、発射筒102においてさまざまな位置あるいは角度に設置可能である。設置角度によって、摩擦体3は、発射筒102内部において、発射ボール10Aの上面、側面、底面の少なくとも一つに接触可能である。もちろん、ななめ下の面、斜め上の面など、摩擦体3の設置角度や設置位置によって、様々な面に、接触可能である。このように接触位置が異なることで、発射ボール10Aの球種に変化を生じさせることができる。例えば、野球のボールであれば、カーブ、シュート、スライダー、直球などを、摩擦体3との接触角度や接触位置によって実現させることができる。
【0143】
また、発射筒102には、複数のボール発射装置用アタッチメント1が取り付けられてもよい。複数のアタッチメント1が取り付けられることで、発射ボール10Aへの回転付与のバリエーションが高まる。これにより、発射ボール10Aの球種や軌道などを、様々にすることができる。
【0144】
また、実施の形態2で説明したように、摩擦体3が発射ボール10Aと接触しないようにしてもよい。この場合には、積極的な回転付与をさせないでボールを発射できる。
【0145】
以上のように、実施の形態3における空気圧ボール発射装置100は、ボール10の発射速度に応じた最適な圧力により、ボール10に摩擦を付与できる。
【0146】
以上、実施の形態1~3で説明されたボール発射装置用アタッチメントおよびボール発射装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0147】
1 ボール発射装置用アタッチメント
2 アタッチメント本体部
3 摩擦体
4 圧力付与部
5 管路
6 押し出し制御部
7 引き戻し制御部
10 ボール
100 ボール発射装置
102 発射筒
103 空気圧付与部
104 圧縮空気タンク