(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 17/32 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
F26B17/32 N
(21)【出願番号】P 2019098613
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018164170
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503027137
【氏名又は名称】株式会社渡会電気土木
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 真彦
(72)【発明者】
【氏名】尾関 光雄
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-295975(JP,A)
【文献】特開昭53-119464(JP,A)
【文献】実開昭47-019859(JP,U)
【文献】特開昭57-030536(JP,A)
【文献】特表2010-539433(JP,A)
【文献】実開昭60-023694(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入される被乾燥材料を乾燥するための乾燥機であって、
内部に被乾燥材料を移動させる空間を備え、回転可能に設けられている筒体と、
前記筒体の長手方向一端側に設けられている、被乾燥材料導入部および加熱空気の供給部と、
前記筒体の長手方向他端側に設けられて該筒体内の空気を筒体の長手方向一端側から他端側に向けて吸引する手段と、を備え、
前記筒体には、長手方向で前記加熱空気の供給部側および該長手方向に沿った内壁面のいずれかもしくは両方に前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材が設けられて
おり、
前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材は、前記筒体の内壁面から筒体の断面中心に向け所定長さを持たせて放射状に複数配置されている掬い上げ羽根が用いられ、
前記掬い上げ羽根は、上記所定長さ方向と直角な厚さ方向の同じ面で、該所定長さ方向の先端位置に設けられた第1掬い上げ部と、該所定長さ方向の先端位置と始端位置に至る箇所との間に設けられた第2掬い上げ部とを有し、
前記掬い上げ羽根は、前記第1掬い上げ部と前記第2掬い上げ部とが前記筒体の長手方向に沿って隣り合う位置同士で交互に配置されている
ことを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥機において、
前記複数配置されている掬い上げ羽根は、同じ向きに折り曲げられた片部で構成されていることを特徴とする乾燥機。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の乾燥機において、
前記複数の掬い上げ羽根は、前記所定長さ方向を基準とする前記第1掬い上げ部の角度θ1が前記第2掬い上げ部の角度θ2に対して、θ1>θ2の関係に設定されている
ことを特徴とする乾燥機。
【請求項4】
導入される被乾燥材料を乾燥するための乾燥機であって、
内部に被乾燥材料を移動させる空間を備え、回転可能に設けられている筒体と、
前記筒体の長手方向一端側に設けられている、被乾燥材料導入部および加熱空気の供給部と、
前記筒体の長手方向他端側に設けられて該筒体内の空気を筒体の長手方向一端側から他端側に向けて吸引する手段と、を備え、
前記筒体には、長手方向で前記加熱空気の供給部側および該長手方向に沿った内壁面のいずれかもしくは両方に前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材が設けられて
おり、
前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材は、前記筒体の内壁面から筒体の断面中心に向け所定長さを持たせて放射状に複数配置されている掬い上げ羽根が用いられ、
前記掬い上げ羽根は、上記所定長さ方向と直角な方向の同じ面で前記内壁面側の所定長さ方向始端位置から該所定長さ方向先端位置との間に掬い上げ部を備え、
前記掬い上げ羽根の掬い上げ部は、前記筒体の長手方向で隣り合う位置で独立した片部で構成され、該片部は、前記所定長さ方向始端からの距離が同じ位置を屈曲点としてそれぞれ屈曲角度を異ならせてあり、
前記掬い上げ羽根の掬い上げ部は、前記筒体の長手方向において所定長さ毎に区切られた領域内で異なる角度の片部を隣り合わせて配置されている
ことを特徴とする乾燥機。
【請求項5】
導入される被乾燥材料を乾燥するための乾燥機であって、
内部に被乾燥材料を移動させる空間を備え、回転可能に設けられている筒体と、
前記筒体の長手方向一端側に設けられている、被乾燥材料導入部および加熱空気の供給部と、
前記筒体の長手方向他端側に設けられて該筒体内の空気を筒体の長手方向一端側から他端側に向けて吸引する手段と、を備え、
前記筒体には、長手方向で少なくとも前記加熱空気の供給部側および該長手方向に沿った内壁面のいずれかもしくは両方に前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材が設けられ、
該被乾燥材料の流動方向を変化させる部材として、前記筒体の長手方向で加熱空気の供給部側には、導入される加熱空気に螺旋流もしくは乱流を生起させるガイド機構が設けられて
おり、
前記ガイド機構は、前記加熱空気の供給部側に配置されて、前記筒体の周方向で等分された位置で筒体の長手方向に沿った所定長さを持つ翼と、この翼を前記筒体の長手方向に沿って揺動、あるいは、長手方向端部を周方向に沿って回転させる回転軸とを備えている
ことを特徴とする乾燥機。
【請求項6】
導入される被乾燥材料を乾燥するための乾燥機であって、
内部に被乾燥材料を移動させる空間を備え、回転可能に設けられている筒体と、
前記筒体の長手方向一端側に設けられている、被乾燥材料導入部および加熱空気の供給部と、
前記筒体の長手方向他端側に設けられて該筒体内の空気を筒体の長手方向一端側から他端側に向けて吸引する手段と、を備え、
前記筒体には、長手方向で少なくとも前記加熱空気の供給部側および該長手方向に沿った内壁面のいずれかもしくは両方に前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材が設けられ、
該被乾燥材料の流動方向を変化させる部材として、前記筒体の長手方向で加熱空気の供給部側には、導入される加熱空気に螺旋流もしくは乱流を生起させるガイド機構が設けられて
おり、
前記ガイド機構は、筒体の周方向で等分された位置で筒体の長手方向に沿った所定長さを持つ翼の表面に設けられて、加熱空気の流動方向を変化させる起立部を有するガイド片を備えている
ことを特徴とする乾燥機。
【請求項7】
請求項
6記載の乾燥機において、
前記ガイド片の起立部は、前記筒体の周方向で等分された位置に設けられている翼表面に複数設置されていることを特徴とする乾燥機。
【請求項8】
請求項1乃至
7のうちの一つに記載の乾燥機において、
前記筒体は、長手方向両側に設けられている不動部に支持されて回転可能な回転部を備え、
前記回転部は、外周下面に配置されたローラに載せられて回転可能に支持されていることを特徴とする乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機に関し、さらに詳しくは木質チップをはじめとする被乾燥材料の乾燥構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料による環境保全への危惧という観点から、化石燃料と異なる林産資源や農産物残渣などを用いて再生エネルギーを確保することが着目されてきている。再生エネルギーを確保するために用いられる資源の一つとして、林産資源から製造した木質ペレットが知られている。木質ペレットは、粉砕された木質チップを乾燥した後、所定サイズや形状を決められたペレット状に成形されて得られる。木質ペレットは燃料としての燃焼特性や成形特性、いわゆる、押し固めた際の凝縮性能を良好にするために含水率が規定される対象である。
【0003】
従来、被乾燥材料の一つである木質ペレットの製造工程には、チップ状の木質材料を乾燥する工程、乾燥されたチップを凝縮して成形する工程が含まれており、各工程において含水率を規定するための処理が施されている。例えば、乾燥工程では、木質チップに含まれている水分を蒸発させるための熱源および木質チップを搬送する機構が用いられ、成形工程では凝縮しやすい含水率を制御するための加水機構が用いられることがある(例えば、特許文献1)。特許文献1には、粗粒子状の木質バイオマスをスクリューコンベアにより搬送する際に、スクリューコンベアの外側に位置する赤外線ヒータによる加熱を行うことで乾燥し、乾燥後には加水装置により加水する構成が開示されている。乾燥工程に用いる構成の別な例として、スクリューコンベアを内部に配置した筒体の外周面に蒸気の通路を設けて筒体内を搬送される木質チップを間接加熱する構成もある(例えば、特許文献2)。
【0004】
乾燥工程に導入される木質チップは、スクリューコンベアに押し動かされながら移動する過程において加熱空気と接触することにより水分の蒸発が行われて乾燥される。しかし、乾燥条件となる水分蒸発に必要な空気の温度は、スクリューコンベアを配置している筒体の熱伝導特性に影響される。従って、空気の温度上昇は緩慢となることもあり、所定温度の熱量に達するまでの立ち上がり時間が長くなりやすい虞がある。加えて、スクリューコンベアの羽根先と筒体内壁との間に隙間が存在すると、その隙間から木質チップが漏れて搬送できない木質チップが発生することもある。このため、木質チップの供給量に対して排出量が一定しないということもあり得る。この結果、漏れる量を考慮した供給量やこの供給量に対する乾燥用熱量あるいは搬送時間などの制御が複雑になる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-214531号公報
【文献】特開2010-230230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、木質チップ等の被乾燥材料の乾燥を良好に行えるとともに、乾燥のための熱源に対する制御も複雑にすることがない構成を備えた乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本発明は、導入される被乾燥材料を乾燥するための乾燥機であって、内部に被乾燥材料を移動させる空間を備え、回転可能に設けられている筒体と、前記筒体の長手方向一端側に設けられている、被乾燥材料導入部および加熱空気の供給部と、前記筒体の長手方向他端側に設けられて該筒体内の空気を筒体の長手方向一端側から他端側に向けて吸引する手段と、を備え、前記筒体には、長手方向で前記加熱空気の供給部側および該長手方向に沿った内壁面のいずれかもしくは両方に前記被乾燥材料の流動方向を変化させる部材が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筒体内に流入する加熱空気の流動方向を変化させる部材を設けることにより、筒体内では単純な整流だけでなく乱流をも混在させることができる。結果として、被乾燥材料の拡散性が増加されることにより加熱空気との接触機会を増やして被乾燥材料の乾燥度を高めることができる。特に、乾燥時間を大幅に長くすることなく被乾燥材料の水分蒸発率を高めることができるので、大がかりな設備などを準備することなく木質チップ等が含まれる被乾燥材料の乾燥度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる乾燥機を用いた被乾燥材料の一つである木質バイオマス材料を対象とした木質ペレット製造工程を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる乾燥機の一例の部分的な外観図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる乾燥機の一例の長手方向を示す側面図である。
【
図4】
図2中、矢印(4)で示す方向において筒体本体に相当する部分のみを示す矢視図である。
【
図9】
図2中、矢印(9)方向の矢視断面図である。
【
図10】
図2に示した乾燥機の一例に用いられる筒体の長手方向に沿った掬い上げ部材の第1実施形態に用いられる掬い上げ羽根の配置位相を説明するための模式図である。
【
図11】
図10中、矢印(11)で示す方向の矢視端面図である。
【
図12】
図9に示した掬い上げ羽根の構成を説明するための図である。
【
図13】
図11に示した掬い上げ羽根の作用を説明するための
図9の要部を示す図である。
【
図14】
図12に示した掬い上げ部材に用いられる掬い上げ羽根の別の構成を説明するための
図12相当の斜視図である。
【
図15】
図14に示した掬い上げ羽根の筒体での配置構成を説明するための
図9相当の断面図である。
【
図17】本発明の実施形態にかかる乾燥機の別の例に用いられる筒体の加熱空気供給側の構成を説明するための断面図である。
【
図18】
図17に示した構成と異なる他の構成を説明するための断面図である。
【
図19】
図17に示した構成とさらに異なる別の構成を説明するための断面図である。
【
図20】本発明の実施形態にかかる乾燥機を用いた木質ペレット製造工程を実施する具体的な構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1および
図20は、本発明を実施するための形態に係る乾燥機が用いられる、ペレット製造プラントの概略を示す図である。
図1に示すペレット製造プラントは、被乾燥材料として、可燃性材料の一つである木質バイオマス材料を対象としているが、これに限らず、粉体などが含まれる可燃性材料以外の材料を被乾燥材料の対象とすることも可能である。
図1においてペレット製造プラント100は、木質バイオマス材料から得られる木質チップの乾燥処理および木質ペレットの成形、そして成形後の木質ペレットをペレット完成品として袋詰めする梱包を行うために、次の工程部を備えている。すなわち、乾燥処理を行うための工程部には、粉砕済みの木質チップを乾燥工程部102に供給するバイオマス材料導入部101と、ロータリーキルン等の回転可能な筒体1を備えた乾燥工程部102と、乾燥工程に用いる加熱空気の供給部103と、が備えられている。バイオマス材料導入部101は、被乾燥材料導入部に相当している。
乾燥後の木質チップをペレット状に成形するために、例えば、次の工程部が用いられる。
(1)乾燥後の木質チップを再粉砕する2次粉砕工程部104、
(2)含水率が所定値に達していない木質チップを乾燥工程部102にて再乾燥させるとともに、所定値に達している木質チップを成形処理する成形工程部106に向けて搬送する2次供給工程部105、
(3)2次供給工程部105から選別された木質チップをペレット状に成形する成形機106Aを備えた成形工程部106、
である。
成形工程部106を経て木質ペレットとされ、所定形状あるいは所定サイズなどの規定条件を満たしているバイオマス材料は、冷却工程部107において冷却された後、ペレット完成品として袋詰めされるための袋詰め工程部108に搬送される。
【0011】
上記各工程部のうちで、乾燥工程部102は本発明の実施形態にかかる特徴部分であり、その詳細は後で説明するとして、ここでは乾燥工程部102を除く各工程部の構成を概略的に説明すると次の通りである。
バイオマス材料導入部101には、粉砕された木質チップを貯蔵する貯蔵ヤード101A、貯蔵された木質チップを乾燥工程部102の乾燥機に向け搬送する1次供給機101Bおよび搬送ベルトコンベア101Cがそれぞれ備えられている。1次供給機101Bにより搬送される木質チップは、例えば、屋外で破砕された原木などの木質バイオマス材料が所定外径に粉砕されて用いられる。2次粉砕工程部104には、乾燥工程を経た木質チップが所定サイズに粉砕されると共に含水率が所定条件である木質チップを2次供給工程部105に向け搬送するための粉砕機104Aおよび湿度センサ(図示されず)等が備えられている。なお、含水率に関しては、湿度センサを用いることに限らず、作業員が水分計を用いて計測した結果に応じて篩い分け処理を行うことも可能である。粉砕機104Aには、図示しないが、粉砕サイズを規定するフィルターの内側で高速回転するハンマーを備えたハンマーミル等が用いられる。木質チップはハンマーにより粉砕されてフィルターサイズに適合したものが次の行程に搬送される。
【0012】
2次粉砕工程部104において粉砕された木質チップは、含水率に応じて搬送経路が仕分けられる。つまり、含水率が所定条件を満たしている木質チップは2次供給工程部105に向けて搬送され、含水率に関して所定条件を満たしていない木質チップは、再度乾燥工程部102に搬送される。このため、粉砕機104Aから排出される木質チップは、含水率毎の篩い分けおよび搬送ができるコンベア104Bおよび104Cの何れかによって搬送方向が決められる。これらコンベア104B,104Cのうちで、最初に木質チップが導入される一方のコンベア104Bには篩い分け機構が持たされており、含水率が所定条件を満足している木質チップを2次供給工程部105に向け搬送するようになっている。含水率の違いによる篩い分けは、例えば、含水率の違いによる重量の違いをパラメータとして気流搬送時あるいは導入時での捕捉条件を設定される機構などが用いられる。
【0013】
他方のコンベア104Cは、含水率が所定条件を満足していない木質チップを対象として再乾燥させる際の前準備工程へと、その木質チップを迂回搬送するバイパス2次供給行程部109に連続されている。バイパス2次供給工程部109には、木質チップを撹拌しながら搬送可能なバイパス2次供給搬送装置109Aと、気流搬送に用いた空気と木質チップとを分離するサイクロンロータリーバルブ109Bと、袋詰め機(フレキシブルコンテナバック詰め機)109Cとが備えられている。バイパス2次供給工程部109では、サイクロンロータリーバルブ109Bにおいて空気と分離された木質チップが、乾燥工程部102に向け移送しやすいように袋詰め機109Cにより袋詰めされる。
【0014】
含水率が所定条件を満たしている木質チップは、成形工程部106に備えられている成形機106Aによって、例えば、押し固められて凝縮されることによりペレット状に成形される。成形工程部106では、ペレット状に成形されなかった木質チップなどの成形不良品の仕分けが行われたうえで、良品のみが、完成品として袋詰めされるための袋詰め工程部108に搬送される。成形不良品とされた木質チップは、サイクロンロータリーバルブ109Bに搬送され、再乾燥用と同じく袋詰め機109Cにより袋詰めされる。
【0015】
成形工程部106において所定形状や所定サイズに成形されて木質ペレットとして用いられるバイオマス材料は、良品が完成品として冷却工程部107において冷却された後、袋詰め工程部108において袋詰めされた完成品として出荷のために準備される。
冷却工程部107には、成形工程部106を経て木質ペレットとして用いられるバイオマス材料を袋詰め工程部108に向けて搬送する搬送コンベア107A、107Bが備えられている。搬送コンベアの一方107Aの上部には、冷却風を吹き付けるためのノズル107A1,ブロアー107A2が配置されている。
【0016】
以上のペレット製造プラント100において、本実施形態にかかる乾燥工程部102は、主要部として筒体1が用いられる乾燥機10を備え、筒体1の内部で木質チップを押し動かすのではなく気流搬送させながら撹拌して乾燥させる点を特徴としている。
【0017】
以下、この特徴を得るための構成について説明する。
乾燥機10の一例としては、
図1乃至4に示すように、軸方向に沿った長手方向を有する回転可能な筒体1を備えている。筒体1は、木質チップなどの乾燥材料となるバイオマス材料を移動させる空間を内部に形成され、長手方向両側に設けられている不動部1A、1A’により支持された回転可能な回転部1Cを備えている。回転部1Cは、外周下面に当接させてあるローラ1Bによって回転できるように支持されている。
筒体1の長手方向一端側の不動部1Aには、
図2に示すように、外周上面に貫通する取り込み部1Dが設けられている。取り込み部1Dは、バイオマス材料導入部101(
図1参照)に備えられている搬送ベルトコンベア101Cを介して搬送されてくる木質チップを受け入れるために用いられる。
また、筒体1の長手方向一端側には、取り込み部1Dに加えて、加熱空気の供給部103との連通部103Aが接続されている。なお、取り込み部1Dは、筒体1の不動部外周上面に設けることに限らず、
図3中、二点鎖線1D’で示すように、端面側に連通させることも可能である。なお、
図5,
図6は、筒体1の本体のみを対象とした左側および右側の面を示す図であり、
図4、
図7および
図8は、筒体1の本体のみを対象とした正面および平面そして底面を示す図である。
【0018】
加熱空気の供給部103は、
図2に示すように、木質ペレットを燃料とする火炎部1030と、火炎部1030で加熱された空気を清浄化して筒体1側に移送する燃焼筒1031,1032が備えられている。火炎部1030には、図示しない回転テーブルが設けられている。回転テーブルは、木質ペレットを搭載した状態で、バーナー1030Aで生成される種火に均等接触させるように回転することができる。
【0019】
火炎部1030で発生した加熱空気は、筒体1の長手方向他端側に設けられている送風機2の吸引作用によって筒体1の長手方向一端側に位置する加熱空気の供給部側から内部に向けて移動することができる。送風機2は、筒体1の長手方向一端側から他端側に向けて空気を移動させて、いわゆる一端側から他端側に空気を吸引する機能を備えている。
筒体1と送風機2とは、筒体1の長手方向他端側端面に接続された吸引管2Aによって接続されており、筒体1の内部に空気の流れを発生させることができる。従って、加熱空気の供給部103では、火炎部1030において発生した火炎に対して外部からの空気が筒体1側に向けて吸引される過程で加熱空気として生成される。
火炎部1030を通過した空気は、燃焼筒1031,1032を通過する時間を加熱時間に費やされることにより温度を高めたうえで、後段の燃焼筒1032と筒体1との間の連通部103Aに導かれて筒体1内に導入される。
【0020】
乾燥機10の主要部として用いられる筒体1には、
図9および
図10において符号50、50’により示されていて、被乾燥材料の一つである木質チップの流動方向を変化させる部材として掬い上げ部材が設けられている。
本実施形態では、掬い上げ部材として掬い上げ羽根(便宜上、符号50,50’を用いる)が、回転部1Cの内部に備えられている。なお、
図9,
図10において符号50’により示されている掬い上げ羽根は、後で説明するが、符号50により示されている掬い上げ羽根と周方向での配置位相が異なっていることを意味させるために異なる表示が用いられている。
図9において、掬い上げ羽根50,50’は、筒体1に用いられる回転部1Cの内周面で周方向に沿って所定間隔の位置に設けられ、かつ、回転部1Cの断面中心に向けて所定長さを持たされて放射状に複数配置されている。この構成を用いることにより、回転部1Cの断面中央部は木質チップおよび加熱空気の混合空間となり、加熱空気により気流搬送される木質チップが掬い上げ羽根により流動方向を変化されて加熱空気と接触できる空間として用いられる。なお、
図9において、符号1C1は、回転部1Cの回転駆動に用いられるチェーンホィール部を示している。チェーンホィール部1C1は、駆動モータMによって駆動されるチェーン1C2の動きに従って回転部1Cを回転させるようになっている。
【0021】
一方、回転部1Cは、
図10において符号Lで示すように、長手方向に沿って複数の領域に区分されており、区分された各領域Lに掬い上げ羽根50,50’がそれぞれ設けられている。各領域Lに設けられている、掬い上げ羽根50,50’は、隣り合う領域L同士で周方向での配置位相が異なっている。
図10は、回転部1Cの長手方向に沿った、各領域Lでの掬い上げ羽根50,50’の配置位相を示す図である。同図において、直接隣り合う領域Lに設けられている、掬い上げ羽根50,50’は、周方向で互いの配置位相が同じではない。つまり、
図9および
図10中、実線で示す掬い上げ羽根50が位置決めされている配置位相に対して
図9および
図10中、二点鎖線で示す掬い上げ羽根50’が位置決めされている配置位相が周方向で異なっている。つまり、
図9中、符号50’で示されている掬い上げ羽根は、
図9および
図10において、これの隣の領域に位置して符号50で示されている掬い上げ羽根の配置位相に対して周方向で、これら掬い上げ羽根50の間に位置するように、ずれた関係に決められている。
【0022】
本実施形態における掬い上げ羽根50,50’の配置位相に関しては、例えば、一つ飛び越えた位置に在る領域L同士の配置位相が同じとされ、直接隣り合う領域L同士での配置位相が互いに異なる関係に決められている。つまり、
図10において直接隣り合う領域L同士では、符号50,50’で示すように、周方向で異なる位置に掬い上げ羽根が位置し、一つ飛び越えた位置に在る領域L同士では、周方向で同じ位置に掬い上げ羽根50,50’が位置する関係を設定されている。隣り合う領域L毎に掬い上げ羽根50,50’の配置位相を周方向で異ならせると、掬い上げられた木質チップが振るい落とされるタイミングを異ならせることができる。換言すれば、回転部1Cの長手方向全域で同時に木質チップが振るい落とされるのではなく、直接隣り合う領域L毎で、異なるタイミングにより木質チップが振るい落とされる。これにより、回転部1Cの長手方向と直角な方向の断面中央部に位置する空間では、隣り合う領域Lの最上位に位置した掬い上げ羽根から振るい落とされるタイミングが同時ではなく、配置位相のずれに応じたタイミングとなる。従って、振るい落とされる木質チップは、隣り合う領域毎で同時ではなく順々に空間内に落下する。これにより、回転部1Cの長手方向に流れる加熱空気に対して周方向の同じ位置から同時に纏まった状態で接触する場合と違って、領域毎に分散された量が接触して水分蒸発が促進されやすくなる。なお、
図11は、各領域Lの一つを対象とした端面を示す図である。
なお、本実施形態では、配置位相が同じ掬い上げ羽根50,50’のいずれかを備えた領域として、一つ飛びを対象としたが、チップ形状やサイズの一つを決める要素である、粒度の違いによって配置位相の同じ領域の配置間隔を変更することも勿論可能である。
【0023】
また、直接隣り合う領域L同士において、周方向で掬い上げ羽根50,あるいは50’の配置位相が異なっていると、領域L間を通過する加熱空気の一部が掬い上げ羽根50あるいは50’の端縁に突き当たることがある。掬い上げ羽根50あるいは50’の端縁に加熱空気が突き当たると、加熱空気の流れが緩和されて層流から乱流へと変化することがある。よって、乱流部分において僅かな時間であるが、木質チップが滞留し加熱空気からの熱を受ける時間が長くなる。この結果、木質チップの水分蒸発が促進されやすくなり、乾燥効率が高められる。
【0024】
一方、符号50,50’で示す掬い上げ羽根は、回転部1Cの長手方向で振るい落としタイミングを異ならせるだけでなく、周方向での木質チップの振るい落としタイミングを異ならせることができる。
図12は、周方向で掬い上げ羽根50,あるいは50’から振るい落とされるタイミングを異ならせるための構成を示す図である。
図9,
図10において符号50、50’により示されている掬い上げ羽根は、
図12において、その一つ(符号50で示す)の掬い上げ羽根のように、回転部1Cの断面中心に向けて所定長さを持つ方向と直角な厚さ方向の同じ面に複数の掬い上げ部50A、50A’が備えられている。
【0025】
掬い上げ部50A、50A’は、一つ(以下、便宜上、第1掬い上げ部50Aという)が所定長さ方向先端位置に設けられている。今ひとつ(以下、便宜上、第2掬い上げ部50A’という)は、掬い上げ羽根50、50’の該所定長さ方向先端位置と所定長さ方向始端位置Sに至る箇所に設けられている。第2掬い上げ部50A’は、例えば、所定長さ方向始端位置S以外で、所定長さ方向先端位置との間の距離の半分の位置に溶接あるいは接着により設けられている。これら掬い上げ部50A、50A’は、
図12(A)に示すように、掬い上げ羽根50の長手方向先端と始端との間に並べて設けられる場合、あるいは
図12(C)に示すように、筒体1の長手方向に沿って隣り合う位置同士で交互に配置される場合が選択できる。
【0026】
第1,第2掬い上げ部50A、50A’は、木質チップの掬い上げができる向きに折り曲げられた片部で構成され、その折り曲げ角は、木質チップの形状やサイズに応じた角度に設定されて振るい落としが良好に行える機能を持たせてある。例えば、
図12(B)に示すように、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’の折り曲げ角、つまり、所定長さ方向に平行する面を基準とする折り曲げ角θ1,θ2が同じ角度である場合や、異なる関係の角度とされる場合が選択できる。異なる関係の角度の場合の一例として、所定長さ方向先端位置の角度θ1が所定長さ方向始端位置側の角度θ2に対して、θ1>θ2の関係を設定することも可能である。この設定により、各掬い上げ部50A、50A’により掬い取られた木質チップが滑落するタイミングを異ならせて筒体1内で木質チップの拡散性を向上させることができる。
【0027】
同じ角度である場合は、一つの掬い上げ羽根50,50’によって木質チップを掬い上げる量を増加できる。また、異なる関係の角度を持つ場合は、掬い上げる量の増加に加えて掬い上げた木質チップの滑落時期を異ならせて木質チップの拡散性を高めることができる。つまり、θ1>θ2の関係を持つ場合は、掬い上げ羽根50の先端が下向きになる位置に達するとき、第1掬い上げ部50Aが第2掬い上げ部50A’よりも先に重力方向に近づくので、第2掬い上げ部50A’よりも先に木質チップを滑落させる。
異なる関係の角度を持つ場合には、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’の複数部分から木質チップが同時に纏まった状態で滑落するのではなく、段階的なタイミングで木質チップが滑落される。よって、纏まった状態で滑落する場合に比べて滑落する木質チップの密度が低下した状態となり、個々の木質チップが加熱空気から受ける熱量に関しては、纏まって滑落する場合に比べて多くなる。この結果、加熱空気と接触した際に発生する水分蒸発が促進されることになる。
【0028】
図13は、各掬い上げ部50A、50A’の角度θ1、θ2が異なる場合を対象として、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’から木質チップが滑落する状態を示している。なお、
図13を用いた以下の説明は、筒体1が時計方向に回転することを前提としている。 筒体1の内周面において、筒体1の回転中心を通る垂直線Vに掬い上げ羽根50が近づくと、第1掬い上げ部50Aが第2掬い上げ部50A’よりも先に垂直線Vと平行する状態に近づく。これにより、第2掬い上げ部50A’よりも先に第1掬い上げ部50Aに溜まっている木質チップが滑落し、続いて、第2掬い上げ部50A’が垂直線Vに近づくと、第1掬い上げ部50Aよりも遅れたタイミングで木質チップを滑落させることができる。
図13中、符号T1,T2は、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’から木質チップが滑落し始める位置の目安を示している。
【0029】
第1,第2掬い上げ部50A、50A’から木質チップの滑落タイミングを異ならせると、纏まって滑落する場合と違って、筒体1の長手方向の各領域Lにおいて、掬い上げ部から滑落する木質チップが分散される。これにより、単一の掬い上げ羽根を利用して、木質チップの掬い上げ量を増加させると共に、増加された木質チップを纏めて滑落させるのではなく分散させて段階的に滑落させることができる。
増量された木質チップを纏めて加熱空気に接触させるのではなく、分散されて段階的に滑落する木質チップに加熱空気が接触すると、纏めて滑落する場合と違って、木質チップへの加熱空気の接触率が高められて水分蒸発を促進できる。
【0030】
木質チップの滑落タイミングを、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’同士で異ならせる構成として、
図12(A)に示した構成とは別に、
図12(C)に示す構成を用いることも可能である。つまり、
図12(A)に示したように、各掬い上げ部50A、50A’が同じ面で同じ方向に傾斜させて並べられることに限らず、
図12(C)に示すように、各掬い上げ部同士の形成位置を、異なる片部を形成して片部同士でずらすことも可能である。
図12(C)に示す構成は、第1、第2の掬い上げ部50A、50A’の両方が筒体1の長手方向に沿って交互に配置されている。第2の掬い上げ部50A’は、互いに同じ角度あるいは
図12(A)に示した場合と同様に異なる関係の角度を持たせた切り起こし片で形成されている。この構成は、
図12(A)に示した構成に比べて木質チップの掬い上げ量を増量できないものの、角度が同じ場合を含め、各領域Lでの長手方向での滑落位置を異ならせることにより、長手方向で滑落する木質チップの密度を低くできる。よって、筒体の各領域Lの長手方向に沿って流れる加熱空気に対して第1,第2の掬い上げ部50A、50A’毎に独立して滑落する木質チップが接触した際に受ける熱量を多くでき、水分蒸発を促進できる。
【0031】
一方、第1,第2の掬い上げ部50A、50A’により掬い上げられた木質チップから水分を蒸発させやすくするために、滑落する木質チップを分散させて密度を低くする構成の一つとして、
図12(D-1),(D-2)に示す構成を用いることが可能である。第1,第2の掬い上げ部50A、50A’の一部には、木質チップを滑落とは別に木質チップを振るい落とせる貫通部50B、50B’が設けられている。
【0032】
貫通部50B,50B’の大きさや形状は、木質チップの性状に応じて決められる。例えば、均一化されたサイズの木質チップを対象とする場合には、そのサイズの木質チップの一部が通過できるサイズの円穴や長穴が用いられる。また、形成位置も、回転時に生じる回転モーメントの強さなどを考慮して、例えば、所定長さ方向先端位置側の掬い上げ部50Aには1箇所、所定長さ方向始端側の掬い上げ部50A’には1箇所の位置と異なる位置で複数箇所を設定することが可能である。つまり、回転モーメントが強い位置では、木質チップが通過しやすくなるので、滑落する木質チップが少なくならないように形状、サイズが決められる。また回転モーメントが弱い位置では、回転モーメントの強い位置から振り落とされる木質チップの量を補充できる程度の振るい落とし量が得られる形状やサイズが決められる。
【0033】
貫通部50B,50B’は、掬い上げ部50A、50A’に掬い上げられて溜まっている木質チップが滑落する前に、その一部を振るい落とすことができる。これにより、掬い上げられた木質チップを加熱空気に接触させる際の分散率を高めて加熱空気と接触した際に受ける熱量を高めることができる。つまり、同時期に纏まった状態で滑落する場合と違って、少しずつの木質チップが加熱空気に接触できるので、加熱空気から受ける熱量を多くできる。よって、木質チップの水分蒸発を促すことができる。
【0034】
以上のような掬い上げ羽根は、上述した構成に限らず、次に挙げる構成を用いることも可能である。
図14は、掬い上げ部材に用いられる掬い上げ羽根51が、
図12に示した構成と同様に、板厚方向の同じ面で同じ方向に折り曲げられて独立する片部51A、51Bで構成されている状態を示している。片部51A、51Bは、筒体1の長手方向で隣り合う位置にそれぞれ独立して折り曲げられている。独立する片部51A、51Bは、符号Qで示す共通の屈曲点を基準として屈曲角度θ3,θ4に折り曲げられている。屈曲点Qは、片部51A、51Bが筒体1の内壁面に固定される片部51A、51Bの始端(
図14(A)では符号510で示す位置、
図14(B)では符号51A1,51B1で示す位置)から片部先端に向けた距離が同じ位置にある。各片部51A、51Bの屈曲角度θ3,θ4は、同じではなく、筒体1の径方向での長さが長い方の片部51Aの屈曲角度θ3が、片部51Aよりも長さが短い片部51Bの屈曲角度θ4よりも大きく決められている(θ3>θ4)。この角度の違いは、木質チップの滑落タイミングをずらすとともに、木質チップの滑落領域をそれぞれ異ならせて拡散させやすくするためである。この点に関しては後で説明する。
【0035】
図14(A)に示す構成の掬い上げ羽根51は、筒体1の長手方向における一つの領域L内で隣り合う位置に屈曲角度が異なる片部51A、51Bを備えている。一つの領域L内に配置された片部51A、51Bを有する掬い上げ羽根51は、
図9に示した掬い上げ羽根50と同様に、筒体1の長手方向に沿って隣り合う領域L同士で、周方向での配置位相をずらして配置されている。一方、
図14(B)に示す掬い上げ羽根(便宜上、符号51’で示す)は、
図14(A)に示した構成と違って、隣り合う領域Lを2組組み合わせ、領域毎にそれぞれ屈曲角度が異なる片部51A、51Bの一つを配置した構成である。つまり、筒体1の長手方向で所定長さに区切られて隣り合う領域Lには、筒体1の径方向長さが異なり、長さに応じた屈曲角度θ3,θ4がそれぞれ決められた片部の一つが配置されている。
図14(B)に示した掬い上げ羽根51’は、隣り合う2組の領域L内にそれぞれ片部51A,51Bの一つが配置されている状態を一つのブロックとして用いられる。一つのブロックとして用いられる2組の領域Lとこのブロックに隣り合うブロックに位置する2組の領域Lでは、片部51A,51Bを持つ掬い上げ羽根51の配置位相が、
図9に示した場合と同様にずらされている。
図15には、実線で示す片部51A、51Bを持つ掬い上げ羽根51の配置位相に対して二点鎖線で示す片部(便宜上、符号51A’、51B’で示す)を持つ掬い上げ羽根(便宜上、符号51’で示す)の配置位相が周方向でずらされている状態が示されている。
【0036】
同一領域L内に異なる屈曲角度を持つ片部51A、51B、あるいは隣り合う領域L同士でそれぞれ異なる屈曲角度を持つ片部51A’、51B’を備えた掬い上げ羽根51の作用を、
図16を用いて説明すると次の通りである。なお、
図16は、
図14(A)に示した構成、つまり、一つの領域L内で屈曲角度が異なる片部51A、51Bを備えた掬い上げ羽根51の構成を対象とし、また、筒体1が時計方向に回転することを前提として示された、
図13相当の図である。筒体1の内周面において、筒体1の回転中心を通る垂直線Vに掬い上げ羽根51が近づくと、片部51A、51Bがともに屈曲点Qを垂直線Vに近づける。このとき、屈曲角度が大きい片部51Aは、屈曲角度が小さい片部51Bよりも先に垂直線Vと平行に近くなり、木質チップが滑落しやすくなる。このときの木質チップの滑落範囲、特に水平方向での滑落範囲は、符号X1で示す範囲である。符号X1で示す範囲は、片部51Aが垂直線Vに近づくまでの間に、重力により木質チップが滑落し始める範囲に相当している。一方、片部51Bから木質チップが滑落するタイミングは、片部51Aに対する屈曲角度との違いにより遅くなる。つまり、片部51Bが垂直線Vに平行する状態に近づくのは、片部51Aよりも屈曲角度が小さいことが原因して垂直線Vを通過した後となる。このときの木質チップの滑落範囲は、片部51Aとは違う範囲となる符号X2で示す範囲である。符号X2で示す範囲は、片部51Aと同様に、垂直線Vに平行する状態に近づき、木質チップが片部51Bの傾きにより重力を利用して滑落できる範囲に相当している。このように、木質チップの滑落条件が片部同士で異ならせてあることから、筒体1の内部において片部から滑落する木質チップが同じ位置からまとめて滑落するのを避けることができる。これにより、筒体1内において滑落する木質チップは拡散されやすくなり、加熱空気との接触機会が増やされて水分蒸発率が高められる。
【0037】
同じ屈曲点Qを有する片部51A、51Bを備えることにより、屈曲点を異なる位置に設定する場合と違って掬い上げ羽根51の折り曲げ加工に用いる型が単純化できると共に各片部の折り曲げを一括して行えることから、加工コストを下げることが可能となる。
【0038】
一方、木質チップの乾燥度を高める作用を得るには、上述したように、滑落する木質チップ自体の拡散性を高めることとは別に、加熱空気の流れを工夫することによっても可能である。
図17乃至19には、筒体1への加熱空気の流動方向を変化させるための構成が示されている。具体的には、筒体1内に導入される加熱空気に螺旋流あるいは乱流を生起させるためのガイド機構60を備えていることを特徴としている。
図17に示す構成は、ガイド機構60として、筒体1の加熱空気の供給部側内面において周方向に沿って複数配置されているガイド板61を備えている。ガイド板61は、符号γ(H)°で示すように、加熱空気の供給方向に相当する筒体1の長手方向に沿って傾斜し、かつ、符号γ(V)°で示すように、周方向で湾曲した状態の形状を持つ部材である。ガイド板61は、その形状により、筒体1内に供給される加熱空気を、
図17において矢印で示すように、螺旋流に変化させることができ、筒体1内で滑落する木質チップとの接触機会を増加させる機能を発揮する。なお、
図17(A)中、十字印を内部に有する丸印は、紙面の手前側から裏面側に向け流れる加熱空気の流れ方向を意味している。
【0039】
次に、ガイド機構の別の例を
図18において説明する。
図18に示すガイド機構60は、筒体1の加熱空気供給部側の内面において周方向で、たとえば、3等分のように等分された位置で、筒体1の長手方向に沿って所定長さを持つ翼62が用いられる。翼62は、加熱空気の供給方向(
図18中、矢印Pで示す方向)の下流側の端部が、該供給方向上流側の上端に設けられた回転軸62Aにより、図中、二点差線で示すように、揺動できるように支持されている。回転軸62Aにより揺動する翼62の揺動方向は、加熱空気の供給方向を横断する方向、つまり、筒体1の径方向を中心にして筒体1の長手方向に沿って傾くように動かせる方向に設定されている。これにより、翼62が揺動した際には、筒体1内に導入される加熱空気が突き当たり、流動方向が変化する。なお、
図18(A)において十字印を内部に有する丸印は、
図17に示した場合と同様に、紙面手前側から裏面側に向けた加熱空気の流れ方向を意味している。翼62の揺動は、等分位置で個々に選択される場合あるいは、同時に行われることが可能であり、揺動方向も筒体1の内壁面側に向ける方向として加熱空気の分布を均等化できるようにしている。揺動時期や揺動量は、例えば、筒体1内に搬入される木質チップの量に基づき決定される。一例として、木質チップの量が多い場合には、筒体1の内壁面近くまで加熱空気を供給できるように揺動量が多くされて開始されることにより、乱流が大きくなるように設定される。これとは逆に木質チップの量が少ない場合には、揺動しない状態を維持されることがある。これにより、木質チップの搬入量に応じて加熱空気の流動方向を変化させて筒体1内の温度分布を適正化することができる。
【0040】
なお、
図18に示した翼62は、揺動可能に支持する代わりに、温度に応じた形状変化が可能な形状記憶合金などを用い、筒体1内の温度分布の変化に応じて揺動量に対応する変形を行わせて加熱空気の流動方向を変化させる構成とすることも可能である。この場合にも、加熱空気の流動位置をコントロールして筒体1内の温度分布を適正化することが可能となる。筒体1の内部において周方向全域にわたって加熱空気を均等に拡散させて温度分布を均等化する別の形式として、上述した形状記憶合金を用いた板材の回転支持構造がある。つまり、筒体1の長手方向に平行する長さを持つ板状の形状記憶合金を用い、その長手方向端部中心部に設けられた回転軸(図示されず)により回転中心が決められている。翼62は、温度に応じて筒体の長手方向での形状が変化し、長手方向での加熱空気の流れを変える一方、自身が長手方向端部の回転中心を基準として、回転すると、いままで接触していた筒体内壁面から翼62の一部が離れる。筒体内壁面に接触していた翼62が離れることによりその接触していた位置にも加熱空気を流すことができるので、壁面との接触が原因で比較的加熱空気の流れが低下しやすい内壁面近くへの加熱空気の供給が可能となる。この結果、長手方向での形状変化による螺旋流に加え内壁面近くでの流れを促進できることにより、木質チップと加熱空気との接触機会を増やして乾燥効率を向上できる。
【0041】
翼62を用いたガイド機構のさらに別の例が
図19に示されている。
図19に示すガイド機構60は、筒体1の周方向で、3等分された位置で筒体1の長手方向に沿った所定長さを有する翼62が固定され、その翼表面に起立部63Aを持つガイド片63が複数設置されている。ガイド片63は、
図19(B)に示すように、翼62の表面において筒体1の長手方向の位置をずらされている。例えば、ガイド片63が3個などの奇数個備えられる場合には、その中央に位置するガイド片(
図18(B)において符号63’で示すガイド片)は、他のガイド片63よりも筒体1の長手方向で加熱空気の流動方向(矢印Pで示す方向)後方側に配置される。ガイド片63には、加熱空気の流動方向を変化させることができる起立部63Aが形成されている。
【0042】
起立部63Aは、複数設けられた場合の配置位置をずらされることにより、加熱空気の拡散範囲を広げることができる。つまり、筒体1の長手方向において全ての起立部63Aが同じ位置に並んでいる場合に発生しやすい不具合である、方向を変化される加熱空気が筒体1の長手方向において概ね同じ位置に集中するのを防いで拡散性を高めることができる。これにより、加熱空気と筒体1内を移動する木質チップとの接触機会が増やされて木質チップの水分蒸発率が高められることになる。なお、起立部63Aは、起立状態を維持する構成とすることに限らず、
図18に示した翼62の場合と同様に、ガイド片63を形状記憶合金などで作り、その一部を起立させる構成とすることも可能である。この構成によれば、
図18に示した翼62と同様に、筒体1内の温度分布の変化に応じて揺動量に対応する変形を行わせて加熱空気の流動方向を変化させるように、加熱空気の流動位置をコントロールして筒体1内の温度分布を適正化することが可能となる。
【0043】
以上の構成を備えた本実施形態にかかる乾燥機10は、掬い上げ羽根から振るい落とされる木質チップの滑落タイミングおよび滑落範囲を異ならせることができる。これにより、木質チップの分散を許容し、加熱空気と接触した際に効果的に木質チップの水分蒸発を促すことが可能である。特に、掬い上げ羽根が回転する際に、木質チップの掬い上げ量を増加するだけでなく、分散させることで加熱空気に接触する木質チップの密度を低くして木質チップが受ける熱量を多くできる。よって、木質チップの水分蒸発を促進して乾燥効率を上げることができる。
本発明者は、一例として、含水率50%の黒松を対象として、乾燥特性に影響する含水率を実験したところ、概ね、ペレット成形時に燃焼性を損ねないで凝縮力が得られる最小限の含水率としての12%程度の含水率まで下げることができるという結果を得た。
【0044】
また、本実施形態にかかる乾燥機10は、回転部1Cの長手方向で段階的、つまり異なるタイミングで木質チップを滑落させることができるので、各領域で小分けされた量の木質チップと加熱空気との接触が可能となることで、水分蒸発を促進できる。しかも、掬い上げ羽根の延長方向に沿って第1,第2の掬い上げ部を備えているので、順次、滑落する木質チップの密度を低くできることにより、単位面積当たりでの加熱空気から受ける熱量を高めることができ、乾燥効率を高めることができる。以上のように、木質チップの乾燥効率を高められるので、乾燥のための熱源への制御も複雑にする必要もない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、木質チップを筒体内で気流搬送させることにより加熱空気との接触機会を増やす際に、特別な流量制御や温度制御を要することなく、筒体内での木質チップの分散性、拡散性を高めるだけで乾燥性能を向上できる点で利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0046】
1 筒体
1A、1A’ 不動部
1B ローラ
1C 回転部
2 吸引手段としての送風機
10 乾燥機
50,50’ 掬い上げ羽根
50A、50A’ 掬い上げ部
50B,50B’ 貫通部
51 掬い上げ部としての掬い上げ羽根
51A、51B 片部
60 ガイド機構
61 ガイド板
62 翼
62A 回転軸
63 ガイド片
100 ペレット製造プラント
101 バイオマス材料導入部
102 乾燥工程部
103 加熱空気の供給部
L 領域
R 筒体の回転方向
θ1~θ4 傾斜角度