(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】分析物の検出を行うための予め製作された微粒子
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20230217BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230217BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20230217BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230217BHJP
C12Q 1/6865 20180101ALI20230217BHJP
C12Q 1/6862 20180101ALI20230217BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
G01N33/53 M
G01N33/545 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/6865 Z
C12Q1/6862 Z
(21)【出願番号】P 2019556732
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2017084370
(87)【国際公開番号】W WO2018122162
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519236918
【氏名又は名称】ブリンク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツァー, カトリン
(72)【発明者】
【氏名】フボルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー, トマス
(72)【発明者】
【氏名】エルマントラウト, オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, トルステン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245612(JP,A)
【文献】特表2004-528574(JP,A)
【文献】国際公開第2013/024821(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0122714(US,A1)
【文献】Leng X et al,Agarose droplet microfluidics for highly parallel and efficient single molecule emulsion PCR,Lab Chip,2010年,10,2841-2843
【文献】Kumaresan P et al,High-throughput single copy DNA amplification and cell analysis in engineered nanoliter droplets,Anal Chem,2008年,80,3522-3529
【文献】Dressman D et al,Transforming single DNA molecules into fluorescent magnetic particles for detection and enumeration of genetic variations,PNAS,2003年,100・15,8817-8822
【文献】Zeng Y et al,High-Performance Single Cell Genetic Analysis Using Microfluidic Emulsion Generator Arrays,Anal Chem,2010年,82,3183-3190
【文献】Shuga J et al,Single molecule quantitation and sequencing of rare translocations using microfluidic nested digital PCR,Nucleic Acids Res,2013年,41・16,e159
【文献】Wang Y et al,Digital PCR using micropatterned superporous absorbent array chips,Analyst,2016年06月21日,141・12,3821-3831,doi: 10.1039/c6an00164e
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物の検出を実施する方法であって、
a)表面を有し、水溶液を受け取るための空隙容量を含む予め製作された微粒子を提供するステップであって、前記微粒子は、非水性媒体に分散性であり、非水性媒体に分散すると、このような非水性媒体において規定される反応空間を提供し、規定される反応空間において、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応を実施でき、前記予め製作された微粒子は、前記微粒子を、前記予め製作された微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合し、前記分析物の捕捉剤との結合の際に、前記捕捉剤と前記分析物の間に複合体を形成する捕捉剤を含み、前記捕捉剤は、前記予め製作された微粒子を取り囲む試料に由来する分析物と結合し、前記予め製作された微粒子は、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に特異的であり、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体と結合する検出剤をさらに含む、ステップと、
b)前記予め製作された微粒子を、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露し、したがって、存在する場合には、前記捕捉剤が、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合することを可能にするステップと、
c)前記予め製作された微粒子を非水相に入れ、前記予め製作された微粒子の空隙容量を、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応が、
d1)前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に結合した検出剤を検出すること、
あるいは
d2)存在する場合には、前記分析物を増幅反応によって増幅し、前記検出剤によってこのように増幅された産物を検出することであって、前記分析物が核酸であり、前記増幅反応が、核酸増幅であること
あるいは
d3)シグナル増幅反応を実施し、このように増幅されたシグナルを検出すること
のいずれかによって実施される、規定される反応空間として使用するステップと
を含み、
分析物の存在を示す前記化学的または生化学的反応が実施される前記反応空間が、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量によって規定され、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量よりも大きくな
く、
前記予め製作された微粒子が、ゲル形成剤でできている、方法。
【請求項2】
ステップc)における前記非水相が油相である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd2)における前記核酸増幅が、PCR、TMA、NASBA、LAMP、3SR、SDA、RCA、LCR、RPA、およびNEARから選択され、ステップd3)における前記シグナル増幅反応が、核酸が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には核酸増幅であるか、またはステップd3)における前記シグナル増幅反応が、シグナルの酵素ベースの増幅である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd3)における前記シグナルは、酵素が前記検出剤であるか、またはその一部を形成する場合、色素またはフルオロフォアである標識の形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予め製作された微粒子が、乾燥した予め製作された微粒子として提供される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記予め製作された微粒子が、凍結乾燥した予め製作された微粒子として提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記予め製作された微粒子が、その場で作製された微粒子ではない、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記予め製作された微粒子が、分析物検出が行われるとき、またはその間に、その場所で、またはその反応中でその場で作製された微粒子ではない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉剤が、前記予め製作された微粒子の前記表面上に主に位置し、その結果、前記予め製作された微粒子が、前記微粒子の外側に位置する分析物を濃縮し集中させることが可能である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記予め製作された微粒子が、水溶液中で再構成され、再構成の際に、その空隙容量中にこのような水溶液を受け取る、請求項5から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記予め製作された微粒子が、ステップa)またはステップb)のいずれかの間に、水溶液中で再構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出剤が、予め製作するプロセスの間に前記予め製作された微粒子中に含まれるか、または請求項10に記載の前記水溶液中に含まれ、したがって、再構成の際に前記予め製作された微粒子の一部となる、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル形成剤が、熱もしくは光の印加の際に、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化の際に、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化可能である、請求項
1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル形成剤が、前記微粒子の前記表面および前記空隙容量を規定するマトリックスを形成する、請求項
1から1
3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ゲル形成剤が、
a)その対応するモノマーから調製された合成ポリマー、
b)シリコンベースのポリマー、
c)多糖;ポリペプチド;ポリヌクレオチドならびにそれらの組合せから選択される天然に存在するポリマー
を含む群から選択される、請求項
1から1
4のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
a)の前記ポリマーが、メチルアクリレートおよびアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、環状ラクタム、ならびにスチレンベースのモノマーから選択され;前記シリコンベースのポリマーが、ポリジメチルシロキサンおよびそのコポリマーから選択され;前記天然に存在するポリマーが、アガロース、キチン、キトサン、アルギネート、カラゲナン、セルロース、フコイダン、ラミナラン;キサンタンガム、アラビアガム、ガッティガム(ghatti gum)、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびイヌリンから選択されるガム;アルブミン、コラーゲン、ならびにゼラチン;ならびにそれらの組合せから選択される、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー(Spiegelmer)、分析物または分析物複合体と特異的に結合可能な非抗体タンパク質から選択される、請求項1から1
6のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記非抗体タンパク質が、受容体、受容体断片、および親和性タンパク質から選択される、請求項1
7に記載の方法。
【請求項19】
前記検出剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー、非抗体タンパク質から選択され、その各々が、必要に応じて、適したレポーター分子を用いて標識される、請求項1から1
8のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記非抗体タンパク質が、受容体、受容体断片、および親和性タンパク質から選択され、前記適したレポーター分子が、色素、酵素、化学触媒または検出されるべき前記分析物の存在を示す光学的にもしくは別の形で検出可能なシグナルをもたらす化学反応を開始可能である試薬の混合物である、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記親和性タンパク質がストレプトアビジンである、請求項1
8および2
0のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記予め製作された微粒子が、特異的に標識される、請求項1から2
1のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
予め製作された微粒子の集合体を使用して実施され、前記予め製作された微粒子が、請求項1から2
2のいずれかに定義される通りである、請求項1から2
2のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記予め製作された微粒子の集合体において、前記予め製作された微粒子が、検出されるべき異なる分析物に特異的であるという点で互いに異なり、各予め製作された微粒子が、異なる予め製作された微粒子およびその対応する検出される分析物が、前記予め製作された微粒子の特異的標識によって区別され得るように特異的に標識される、請求項2
3に記載の方法。
【請求項25】
試料中の分析物もしくは複数の分析物のデジタル検出を実施するための、または複数の規定される容量中の複数の分析物を濃縮し集中させるための、請求項1から2
4のいずれかに記載の予め製作された微粒子の、または予め製作された微粒子の集合体の使用を含む、請求項1から2
4のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記複数の規定される容量中の前記規定される容量のすべてが同等である、請求項2
5に記載の方法。
【請求項27】
前記曝露するステップb)の後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある、請求項1から2
6のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ステップa)において、前記予め製作された微粒子が乾燥した形態で提供され、ステップb)において、前記予め製作された微粒子が水溶液中で再構成され、次いで、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露され、必要に応じて、前記再構成のステップ後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある、請求項1から2
7のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
ステップb)において、予め製作された微粒子数および前記試料中の分析物分子数が、予め製作された微粒子あたりの単一分析物分子の結合が、ポワソン分布に従うように、必要に応じて維持され、調整される、請求項1から2
8のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ステップb)において、予め製作された微粒子数および前記試料中の分析物分子数が、平均して、微粒子あたり1つ以下の分析物分子が結合し、したがって、予め製作された微粒子あたり単一の分析物分子の検出が可能になるように、必要に応じて維持され、調整される、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
ステップc)の間に、存在する場合には、前記予め製作された微粒子または前記予め製作された微粒子の集合体が、前記非水相に懸濁されるか、そして/または予め製作された微粒子をそれぞれその他の予め製作された微粒子から隔離する固体基材上に位置する、請求項1から3
0のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記固体基材がフィルター、篩、ウェル、陥凹、溝、チャネル、塹壕、クレーター、孔、柱または前述の任意の組合せのパターンを有する基材である、請求項3
1に記載の方法。
【請求項33】
ステップc)の間またはステップc)の後に、前記ゲル形成剤が、液化され、非水相中の水性液滴をもたらす、請求項1から3
2のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ステップc)の間またはステップc)の後に、前記ゲル形成剤が、熱もしくは光の印加を通じて、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化によって、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化され、非水相中の水性液滴をもたらす、請求項3
3に記載の方法。
【請求項35】
前記試料中の分析物の検出を実施する方法は、分析物のデジタル検出を実施する方法である、請求項1から3
4のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物の検出および/または定量を実施するための予め製作された微粒子に関する。さらに、予め製作された微粒子による複数の分析物の検出および/または定量にも関する。また、このような予め製作された微粒子の集合体(collection)ならびにこのような微粒子(単数または複数)および/またはこのような集合体の使用にも関する。好ましくは、検出は、デジタル検出である。さらに、本発明はまた、微粒子または微粒子の集合体が使用される、試料中の分析物、または複数の分析物の検出および/または定量を実施する方法に関する。一実施形態では、微粒子の集合体において、個々の微粒子は、特定の分析物の検出のために調整され、個々の微粒子が特異的である、それぞれの分析物を示す特定の標識によって互いに区別され得る。
【背景技術】
【0002】
試料中の分析物の検出のために、多数の技術および方法が考案されている。分析物の高感度の定量的な検出は、理想の世界では、デジタルである。この目的のために、試料は、いくつかの反応空間に分配され、各反応空間中に、最大で1つの分析物分子がある。このようにして、全体的には少量の分析物にもかかわらず、バックグラウンドに関しては高い分析物濃度が到達され、ひいては、反応の効率が増大される。生成したシグナルは、小さい限定された空間に集中され、したがって、容易に検出され得る。早くも1961年に、個々の酵素分子の活性が、油中の水性液滴中で測定された(Rotman、1961年、PNAS、47巻:1891~1991頁)。これは、単一酵素分子の活性の検出の実現可能性、したがって、デジタルアッセイを実施する可能性を示した。分子増幅プロセスの開発および分布の増大とともに、「制限希釈」の概念が、核酸の分析論にその道を開いた(Sykesら、1992年、Biotechniques、13巻:444~449頁)。区分けは元々、分析物/標的分子を含有する試料溶液を、マイクロタイタープレートの個々の反応空間に分割することによって到達された。その後、キャピラリーおよび微細構造基材を使用することによって、かなり多数の反応空間が達成された(Kalininaら、1997年、Nucleic Acids Research、25巻、1999~2004頁)。同様に、微粒子に固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドが、水/油浸漬と組み合わせて使用された(Vogelsteinら、1999年、PNAS、96巻:9236~9241頁)。また、少量の水溶液の生成を可能にし、したがって、複数の反応空間をもたらす微細構造基材が使用されるデジタルイムノアッセイを実施するために利用可能な形式もある(Rissinら、2006年、Nanolett.、6巻:520~523頁)。本質的には、分析物の検出を実施するために今日利用可能である方法論は、通常、微細反応空間を生成するための、またはそれぞれの検出試験を実施するための複雑なデバイスを含む。したがって、本発明の目的は、取り扱うことが容易であり、使用される装置の部分で過度の努力を行わなくても実施できる試料中の分析物の検出、好ましくは、デジタル検出を実施するための方法論を提供することであった。多用途であり、種々の分析物に向けて調整できるが、普遍的に使用可能であり、種々の分析物に容易に適応させることができる方法論を提供することも本発明の目的である。さらに、検出反応物の最終容量を調整しなくてもよく、種々の容量の液体からの分析物の濃縮を可能にする検出方法を提供することが目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Rotman、1961年、PNAS、47巻:1891~1991頁
【文献】Sykesら、1992年、Biotechniques、13巻:444~449頁
【文献】Kalininaら、1997年、Nucleic Acids Research、25巻、1999~2004頁
【文献】Rissinら、2006年、Nanolett.、6巻:520~523頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一局面では、本発明は、試料中の分析物の検出、好ましくは、デジタル検出を実施する方法であって、
a)表面を有し、水溶液を受け取るための空隙容量を含む予め製作された微粒子を提供するステップであって、前記微粒子は、非水性媒体に分散性であり、非水性媒体に分散すると、このような非水性媒体において規定される反応空間を提供し、規定される反応空間において、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応を実施でき、前記予め製作された微粒子は、前記微粒子を、前記予め製作された微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合し、前記分析物の捕捉剤との結合の際に、前記捕捉剤と前記分析物の間に複合体を形成する捕捉剤を含み、前記捕捉剤は、前記予め製作された微粒子を取り囲む試料に由来する分析物と結合し、前記予め製作された微粒子は、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に特異的であり、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体と結合する検出剤をさらに含む、ステップと、
b)前記予め製作された微粒子を、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露し、したがって、存在する場合には、前記捕捉剤が、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合することを可能にするステップと、
c)前記予め製作された微粒子を非水相、例えば、油相に入れ、前記予め製作された微粒子の空隙容量を、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応が、
d1)前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に結合した検出剤を検出すること、
あるいは
d2)存在する場合には、前記分析物を増幅反応によって増幅し、前記検出剤によってこのように増幅された産物を検出することであって、前記分析物が核酸であり、前記増幅反応が、例えば、PCR、TMA、NASBA、LAMP、3SR、SDA、RCA、LCR、RPA、NEARなどの核酸増幅であること
あるいは
d3)シグナル増幅反応、例えば、核酸が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には核酸増幅、または、例えば、酵素が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には、例えば、色素もしくはフルオロフォアなどの標識の形態のシグナルの酵素ベースの増幅を実施し、このように増幅されたシグナルを検出すること
のいずれかによって実施される、規定される反応空間として使用するステップと
を含む、方法に関する。
【0005】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、乾燥した、好ましくは、凍結乾燥した予め製作された微粒子として提供される。
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、その場で作製された微粒子ではなく、好ましくは、分析物検出が行われるとき、またはその間に、その場所で、またはその反応中でその場で作製された微粒子ではない。
【0006】
一実施形態では、予め製作された微粒子は、多孔性微粒子である。
【0007】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、微粒子が、水性試料などの液体および存在する場合には、その中の任意の溶質、例えば、分析物を受け取るまたは取り込むことを可能にする間隙細孔空間を有する。
【0008】
一実施形態では、前記捕捉剤は、前記予め製作された微粒子の前記表面上に主に位置し、その結果、前記予め製作された微粒子は、前記微粒子の外側に位置する分析物を濃縮し集中させることが可能である。
【0009】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、好ましくは、ステップa)またはステップb)のいずれかの間に、水溶液中で再構成され、再構成の際に、その空隙容量中にこのような水溶液を受け取る。
【0010】
一実施形態では、前記検出剤は、予め製作するプロセスの間に前記予め製作された微粒子中に含まれるか、または本発明の水溶液中に含まれ、したがって、再構成の際に前記予め製作された微粒子の一部となる。
【0011】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、ゲル形成剤でできており、このようなゲル形成剤は、好ましくは、熱もしくは光の印加の際に、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化の際に、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化可能である。
【0012】
一実施形態では、前記ゲル形成剤は、前記微粒子の前記表面および前記空隙容量を規定するマトリックスを形成する。一実施形態では、前記マトリックスは多孔性マトリックスである。
【0013】
一実施形態では、前記ゲル形成剤は、
a)メチルアクリレートおよびアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、環状ラクタム、スチレンベースのモノマーなどのその対応するモノマーから調製された合成ポリマー、
b)シリコンベースのポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびそのコポリマー、
c)多糖、例えば、アガロース、キチン、キトサン、アルギネート、カラゲナン、セルロース、フコイダン、ラミナラン;キサンタンガム、アラビアガム、ガッティガム(ghatti gum)、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびイヌリンから選択されるガム;ポリペプチド、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ポリヌクレオチドならびにそれらの組合せから選択される天然に存在するポリマー
を含む群から選択される。
【0014】
一実施形態では、前記捕捉剤は、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー(Spiegelmer);受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの分析物または分析物複合体と特異的に結合可能な非抗体タンパク質から選択される。
【0015】
一実施形態では、前記検出剤は、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー;受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの非抗体タンパク質から選択され、その各々が、必要に応じて、適したレポーター分子、例えば、色素、酵素、化学触媒または検出されるべき前記分析物の存在を示す光学的にもしくは別の形で検出可能なシグナルをもたらす化学反応を開始可能である試薬の混合物を用いて標識される。
【0016】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、特異的に標識される。
【0017】
一実施形態では、本発明は、予め製作された微粒子の集合体を使用して実施され、前記予め製作された微粒子が、本発明の実施形態のいずれかに定義される通りである。
【0018】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子の集合体において、前記予め製作された微粒子は、検出されるべき異なる分析物に特異的であるという点で互いに異なり、各予め製作された微粒子は、異なる予め製作された微粒子およびその対応する検出される分析物が、前記予め製作された微粒子の特異的標識によって区別され得るように特異的に標識される。
【0019】
一実施形態では、試料中の分析物もしくは複数の分析物のデジタル検出を実施するための、または複数の規定される容量中の複数の分析物を濃縮し集中させるための、好ましくは、前記複数の規定される容量中の前記規定される容量のすべてが同等である、本発明において定義された予め製作された微粒子の、または予め製作された微粒子の集合体の使用を含む。
【0020】
一実施形態では、前記曝露するステップb)の後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある。
【0021】
一実施形態では、ステップa)において、前記予め製作された微粒子は乾燥した形態で提供され、ステップb)において、前記予め製作された微粒子は水溶液中で再構成され、次いで、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露され、必要に応じて、前記再構成のステップ後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある。
【0022】
一実施形態では、ステップb)において、予め製作された微粒子数および前記試料中の分析物分子数は、予め製作された微粒子あたりの単一分析物分子の結合が、ポワソン分布に従うように、好ましくは、平均して、微粒子あたり1つ以下の分析物分子が結合し、したがって、予め製作された微粒子あたり単一の分析物分子の検出が可能になるように、必要に応じて維持され、調整される。
【0023】
一実施形態では、ステップc)の間に、存在する場合には、前記予め製作された微粒子または前記予め製作された微粒子の集合体は、前記非水相に懸濁されるか、そして/または予め製作された微粒子をそれぞれその他の予め製作された微粒子から隔離する固体基材上に位置し、好ましくは、前記固体基材がフィルター、篩、ウェル、陥凹、溝、チャネル、塹壕、クレーター、孔、柱または前述の任意の組合せのパターンを有する基材である。
【0024】
一実施形態では、ステップc)の間またはステップc)の後に、前記ゲル形成剤は、好ましくは、熱もしくは光の印加を通じて、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化によって、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化され、非水相中の水性液滴をもたらす。
【0025】
一実施形態では、分析物の存在を示す前記化学的または生化学的反応が実施される前記反応空間は、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量によって規定され、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量よりも実質的に大きくない。
【0026】
さらなる局面では、本発明は、試料中の分析物の検出、好ましくは、デジタル検出を実施する方法であって、
a)表面を有し、水溶液を受け取るための空隙容量を含む予め製作された微粒子を提供するステップであって、前記微粒子は、非水性媒体に分散性であり、非水性媒体に分散すると、このような非水性媒体において規定される反応空間を提供し、規定される反応空間において、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応を実施でき、前記予め製作された微粒子は、好ましくは、前記微粒子を、前記予め製作された微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、前記微粒子の細孔において、前記細孔中に前記試料の一部を取り込むことによって前記予め製作された微粒子を取り囲む試料からの前記分析物と結合し、かつ/またはこれを固定化し、かつ/またはこれを受け取る多孔性微粒子であり、
前記捕捉剤は、前記予め製作された微粒子を取り囲む試料に由来する分析物と結合し、
前記予め製作された微粒子は、前記分析物に特異的であり、前記分析物と結合する検出剤をさらに含む、ステップと、
b)前記予め製作された微粒子を、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露し、したがって、存在する場合には、前記予め製作された微粒子が、検出されるべき前記分析物と結合し、かつ/またはこれを固定化し、かつ/またはこれを受け取ることを可能にするステップと、
c)前記予め製作された微粒子を非水相、例えば、油相に入れ、前記予め製作された微粒子の空隙容量を、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応が、
d1)前記分析物に結合した検出剤を検出すること、
あるいは
d2)存在する場合には、前記分析物を増幅反応によって増幅し、前記検出剤によってこのように増幅された産物を検出することであって、前記分析物が核酸であり、前記増幅反応が、例えば、PCR、TMA、NASBA、LAMP、3SR、SDA、RCA、LCR、RPA、NEARなどの核酸増幅であること
あるいは
d3)シグナル増幅反応、例えば、核酸が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には核酸増幅、または、例えば、酵素が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には、例えば、色素もしくはフルオロフォアなどの標識の形態のシグナルの酵素ベースの増幅を実施し、このように増幅されたシグナルを検出すること
のいずれかによって実施される、規定される反応空間として使用するステップと
を含む、方法に関する。
【0027】
この態様では、本発明によれば、予め製作された微粒子が、曝露されている周囲から液体を取り込むことが可能である限り、予め製作された微粒子上の捕捉剤の存在は必要ではないということは留意されなければならない。例えば、このような微粒子は、多孔性微粒子であってもよく、したがって、多孔性微粒子における、すなわち、前記微粒子の細孔によって提供される空間における、液体および前記液体中に存在する分析物の取り込みを可能にする。したがって、本発明のこの態様によれば、本方法は、予め製作された微粒子が、捕捉剤を有さない場合でさえ働く。代わりに、試料中に存在する任意の分析物は、本発明に従う予め製作された微粒子によって、その中に液体を受け取り、取り込む能力のためだけに受け取られ、取り込まれる。捕捉剤の存在は、前記分析物に対する予め製作された微粒子の特異性および/または選択性を増大するが、本発明に従う予め製作された微粒子が機能するために、絶対的に必要ではなく、必須ではない。しかし、予め製作された微粒子上の捕捉剤の存在は、一部の実施形態では、試料から分析物を濃縮するおよび/または集中させる微粒子の能力を増大し得る。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、試料中の分析物の検出、好ましくは、デジタル検出を実施するための予め製作された微粒子に関し、前記微粒子は、表面を有し、水溶液を受け取るための空隙容量を含み、前記粒子は、非水性媒体に分散性であり、非水性媒体に分散すると、このような非水性媒体において規定される反応空間を提供するのに適しており、規定される反応空間において、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応を実施できる。
【0029】
一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子は、好ましくは、少なくとも2カ月、より好ましくは、少なくとも6カ月の期間、貯蔵可能である。
【0030】
一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子は、乾燥され、好ましくは、凍結乾燥されている。
【0031】
一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子は、その場で(in-situ)作製された粒子ではなく、好ましくは、分析物検出が行われるとき、またはその間に、その場所(the site)で、またはその反応中でその場で(in-situ)作製された粒子ではない。
【0032】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、多孔性微粒子である。
【0033】
好ましくは、前記予め製作された微粒子は、微粒子が、液体、例えば、水性試料および存在する場合には、その中の任意の溶質、例えば、分析物を受け取るまたは取り込むことを可能にする間隙細孔空間を有する。
【0034】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、前記微粒子を、前記微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、検出されるべき分析物と選択的かつ特異的に結合し、分析物の捕捉剤との結合の際に、前記捕捉剤と前記分析物の間に複合体を形成する捕捉剤を含み、前記捕捉剤は、前記微粒子を取り囲む試料に由来する分析物と結合する。
【0035】
一実施形態では、前記捕捉剤は、前記微粒子の前記表面上に主に位置し、その結果、前記微粒子は、前記微粒子の外側に位置する分析物を濃縮し集中させることが可能である。
【0036】
一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子は、分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に特異的であり、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体と結合する検出剤をさらに含む。
【0037】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、水溶液中で再構成され、再構成の際に、その空隙容量中にこのような水溶液を受け取る。
【0038】
一実施形態では、前記検出剤は、予め製作するプロセスの間に前記予め製作された微粒子中に含まれるか、またはそれが再構成される前記水溶液中に含まれ、したがって、再構成の際に前記微粒子の一部となる。
【0039】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子は、ゲル形成剤でできており、このようなゲル形成剤は、好ましくは、熱もしくは光の印加の際に、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化の際に、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化可能である。
【0040】
一実施形態では、前記ゲル形成剤は、前記微粒子の表面および空隙容量を規定するマトリックスを形成する。一実施形態では、前記マトリックスは、多孔性マトリックスである。
【0041】
一実施形態では、前記ゲル形成剤は、
a)メチルアクリレートおよびアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、環状ラクタム、スチレンベースのモノマーなどのその対応するモノマーから調製された合成ポリマー、
b)シリコンベースのポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびそのコポリマー、
c)多糖、例えば、アガロース、キチン、キトサン、アルギネート、カラゲナン、セルロース、フコイダン、ラミナラン;キサンタンガム、アラビアガム、ガッティガム(ghatti gum)、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびイヌリンから選択されるガム;ポリペプチド、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ポリヌクレオチドならびにそれらの組合せから選択される天然に存在するポリマー
を含む群から選択される。
【0042】
一実施形態では、前記捕捉剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー(Spiegelmer);受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの分析物または分析物複合体と特異的に結合可能な非抗体タンパク質から選択される。
【0043】
一実施形態では、前記検出剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー;受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの非抗体タンパク質から選択され、その各々が、必要に応じて、適したレポーター分子、例えば、色素、酵素、化学触媒または検出されるべき前記分析物の存在を示す光学的にもしくは別の形で検出可能なシグナルをもたらす化学反応を開始可能である試薬の混合物を用いて標識される。
【0044】
一実施形態では、前記微粒子は、特異的に標識される。
【0045】
さらなる態様では、本発明はまた、微粒子の集合体に関し、前記微粒子は、上記で定義される通りである。
【0046】
一実施形態では、前記予め製作された微粒子の集合体において、前記予め製作された微粒子は、検出されるべき異なる分析物に特異的であるという点で互いに異なり、各微粒子は、異なる微粒子およびその対応する検出される分析物が、前記予め製作された微粒子の特異的標識によって区別され得るように特異的に標識される。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、試料中の分析物または複数の分析物のデジタル検出を実施するための、本発明に従う微粒子または本発明に従う微粒子の集合体の使用に関する。
【0048】
さらなる局面では、本発明は、規定される容量に分析物を濃縮し集中させるための、または複数の規定される容量中の複数の分析物を濃縮し集中させるための、好ましくは、前記複数の規定される容量中の前記規定される容量のすべてが同等である、本発明に従う微粒子、または本発明に従う微粒子の集合体の使用に関する。
【0049】
さらなる局面では、本発明は、試料中の分析物のデジタル検出を実施する方法であって、
a)本発明に従う予め製作された微粒子の集合体を提供するステップと、
b)前記集合体を、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露し、したがって、存在する場合には、前記捕捉剤が、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合することを可能にするステップであって、必要に応じて、再構成するステップおよび/または曝露するステップの後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある、ステップと、
c)前記微粒子の集合体を非水相、例えば、油相に入れるステップと、
d1)前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に結合した検出剤を検出すること、
あるいは
d2)存在する場合には、前記分析物を増幅反応によって増幅し、前記検出剤によってこのように増幅された産物を検出することであって、前記分析物が核酸であり、前記増幅反応が、例えば、PCR、TMA、NASBA、LAMP、3SR、SDA、RCA、LCR、RPA、NEARなどの核酸増幅であること
あるいは
d3)シグナル増幅反応、例えば、核酸が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には核酸増幅、または、例えば、酵素が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には、例えば、色素もしくはフルオロフォアなどの標識の形態のシグナルの酵素ベースの増幅を実施し、このように増幅されたシグナルを検出すること
のいずれかのステップ
を含む、方法に関する。
【0050】
一実施形態では、ステップa)において、前記予め製作された微粒子は、乾燥した形態で提供され、ステップb)において、前記予め製作された微粒子は、水溶液中で再構成され、次いで、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に曝露される。
【0051】
一実施形態では、ステップb)において、微粒子数および前記試料中の分析物分子数は、微粒子あたりの単一分析物分子の結合が、ポワソン分布に従うように、好ましくは、平均して、微粒子あたり1つ以下の分析物分子が結合し、したがって、微粒子あたり単一の分析物分子の検出が可能になるように、必要に応じて維持され、調整される。
【0052】
一実施形態では、ステップc)の間に、存在する場合には、前記集合体は、前記非水相に懸濁されるか、そして/または微粒子をそれぞれその他の微粒子から隔離する固体基材上に位置し、好ましくは、前記固体基材がフィルター、篩、ウェル、陥凹、溝、チャネル、塹壕、クレーター、孔、柱または前述の任意の組合せのパターンを有する基材である。
【0053】
一実施形態では、ステップc)の間またはステップc)の後に、前記ゲル形成剤は、好ましくは、熱もしくは光の印加を通じて、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化によって、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化され、非水相中の水性液滴をもたらす。
【0054】
さらなる態様では、本発明はまた、本発明に従う予め製作された微粒子を製造するための方法に関し、前記方法は、
a)任意の順序で、ゲル形成剤を含む水相と、前記水相とは別に、油相とを提供するステップと、
b)好ましくは、油相の流れを作製することによって、および規定容量の水相を、前記油相の前記流れの中に投入することによって、油相内に、ゲル形成剤を含む水相の水性液滴を形成するステップと、
c)前記油相内のこのように生成した水性液滴を集め、その後、遠心分離、篩分けまたは濾過などの機械的分離によって前記油相から前記水性液滴を分けるステップと
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明者らは、先行技術とは対照的に、予め製作された微粒子が、前記予め製作された微粒子自体が検出を行う反応空間を規定および制限する検出を実施する方法において、およびそのために使用される方法論を考案した。言い換えれば、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子(単数または複数)が、提供され、検出区画として使用される。したがって、本発明の微粒子(単数または複数)の寸法は、検出を行う前記区画の寸法を規定および制限する。それとは対照的に、先行技術によれば、多くの場合、捕捉剤がその表面に付着される固体ビーズが使用され、これらのビーズ自体が分析物を捕獲し、固定化し、または捕捉するように作用するが、その後の検出反応のために、これらのビーズまたは粒子は、前記ビーズまたは粒子よりもかなり大きい液滴または反応空間中に組み込まれる。それとは対照的に、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子自体が、検出反応を行う反応空間の寸法を規定および制限する。したがって、本発明に従う予め製作された微粒子の寸法は、分析物の検出を行う反応空間の寸法である。いずれかの理論に捉われようとは思わないが、したがって、本発明者らは、その方法論を、検出反応のための初めての唯一の微粒子媒介性区分けと考える。これによって、本発明は、上記の先行技術の方法論のすべてから区別される。したがって、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子は、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露された後、続いて、より大きな、油相に囲まれた水性液滴中に組み込まれない。同様に、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子は、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露された後、ウェルまたはマイクロリアクターなどのより大きな区画中に入れられて、そこで、微粒子自体よりもかなり大きい水性液滴を形成するために一定容量の水を含む水溶液のその他の成分と組み合わされることもない。代わりに、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子自体が、分析物の検出を行う反応空間/反応区画を規定および制限する。
【0056】
したがって、本発明の実施形態によれば、本発明の予め製作された微粒子(単数または複数)は、前記予め製作された微粒子の総空隙容量またはその一部のみが満たされるような程度まで、水溶液で満たされるまたは満たされるようになる容量によって規定されるスキャフォールドを提供する。言い換えれば、本発明の実施形態によれば、分析物の検出を行う反応空間の総容量は、予め製作された微粒子によって提供される最大容量によって上限で制限され、前記予め製作された微粒子によって取り込まれた液体または液体試料の総容量によって事実上制限される。したがって、前記液体で満たされた予め製作された微粒子が非水相中に組み込まれると、前記予め製作された微粒子の液体で満たされた容量は、分析物の検出反応を行う反応空間に相当し、それとして働く。
【0057】
自身が容量スキャフォールドとして働いて、このような反応空間を提供する予め製作された微粒子による反応空間のこのような区分けは、以前に記載されていない。
【0058】
このような方法を実施するための、および水性液滴を生成するための微小液滴生成デバイスは、存在し、本発明に容易に適合させることができる。例えば、本発明にとって有用であるデバイスは、Dolomite Microfluidics、UK製の投入デバイスである。このようなデバイスはまた、WO2002/068104およびWO2005/089921にさらに記載されている。本明細書に記載されるデバイスを、本発明の実施形態に従って、油相内に水性微小液滴を生成するように適合させることができる。さらなる実施形態では、上記の方法によって、特に、ステップc)の後に、生成された別個の水性液滴を、水溶液または水を使用して洗浄してもよい。さらに、その後、それらを乾燥、例えば、凍結乾燥させてもよい。本発明によれば、このように製造された水性液滴が、本発明に従う予め製作された微粒子である。一実施形態では、ゲル形成剤を、水性液滴/予め製作された微粒子を形成するために使用してもよく、このようなゲル形成剤は、上記でさらに定義される通りである。一実施形態では、ゲル形成剤を含む水性液滴を乾燥させ、好ましくは、凍結乾燥させる。あるいは、溶媒を取り除く任意のその他の適した手段を使用してもよい。溶媒が除去され、水性液滴/製造された微粒子を乾燥させると、それを粉末として貯蔵してもよい。本発明者らは驚くべきことに、本発明に従う予め製作された微粒子を提供することによって、検出反応のために、例えば、試料中の分析物のデジタル検出を実施するために、極めて多用途の方法で使用できる小型化され、規定された反応空間を提供することが可能であるということを見出した。予め製作された微粒子は、本発明の実施形態によれば、予め製作された微粒子によって含まれ、微粒子を、微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に曝露すると、検出されるべき分析物と選択的かつ特異的に結合する適当な捕捉剤を選択することによって個別に適したものにすることができる。微粒子は、その規定される大きさのために、規定される容量の液体を取り込み、したがって、規定される容量の液体中で任意の(検出)反応を行うことが可能となる。事実上、粒子は、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料を、十分に明確に規定される小容量に分割する効率的な容易な手段を提供する。本発明の実施形態に従う微粒子はまた、微粒子の表面上の選択的に検出されるべき分析物を選択的に濃縮および/または集中させる容易な手段を提供する。必要に応じて、それらはさらに、種々の容量および種々の出発濃度の分析物を有する種々の試料から生じる均一な標準化された濃度の分析物の達成を可能にする。種々の微粒子は、適当な捕捉剤(単数または複数)の選択によって検出されるべき種々の分析物にとって特異的であり得る。さらに、種々の微粒子およびその対応する検出される分析物が、微粒子の特異的標識によって区別できるように、本発明の実施形態に従って、検出されるべき分析物のそのそれぞれの特異性に応じて、種々の微粒子を特異的に標識することができる。このような特異的標識およびそれによって達成され得る区別は、本明細書において、「コード化」と呼ばれることもある。「コード化された」微粒子は、特定の分析物に対するその結合能に関して特異的にされており、したがって、また特異的に印が付けられているまたは標識されている微粒子である。一実施形態によれば、予め製作された微粒子は、ゲル形成剤でできている。一実施形態では、ゲル形成剤は、2つの異なる状態で存在することがあり、一方の状態は、固体状態または半固体状態であり、もう一方の状態は、液体状態である。一実施形態では、固体状態または半固体状態では、ゲル形成剤は、マトリックスを形成するゲルの形態で存在し、このようなゲルを用いて、微粒子は、例えば、微粒子が一定容量の水溶液を含み、油媒体などの非水性媒体中に分散されている懸濁液の形態であり得る。事実上、この状態では、微粒子は、ゲル形成剤/ゲルによって形成されるマトリックスによって強化される水性液滴を表す。上記でさらに概説されるように、このようなマトリックスは、微粒子の表面および空隙容量を規定する。さらなる実施形態では、ゲル形成剤は、適当な刺激の印加の際に固体/半固体状態から液体状態に移行され得る。このような刺激は、例えば、熱もしくは光の印加であり得るか、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化を含み得る。あるいは、このような外部刺激は、酵素(例えば、ゲル形成剤によって形成されたマトリックスを消化し得る)に対する曝露であり得るか、またはゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような刺激は、このような酵素の基質に対する曝露であり得る。また、前述の刺激のいずれかの組合せも想定される。ゲル形成剤が、固体/半固体状態から液体状態に移行されると、非水性媒体(例えば、油)中の水性液滴をもたらす。ゲル形成剤が固体/半固体状態にある限り、微粒子は、非水相中のこのような固体/半固体粒子の懸濁液の形態である。ゲル形成剤が液化されると、微粒子は、非水相中の水相のエマルジョンの形態である。
【0059】
本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子は、特に、乾燥状態または乾燥した状態で、好ましくは、少なくとも2カ月の期間、より好ましくは、少なくとも6カ月の期間、貯蔵可能である。一実施形態では、それらは、少なくとも1年の期間、貯蔵可能である。一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子は、微粒子を保存するのに役立つ1種または数種の安定化剤を含み得る。このような安定化剤の例として、シクロデキストリン(例えば、Cavasol(登録商標))、トレハロース、スクロース、ラクトース、マンノース、グルコース、ガラクトース、マンニトール、ミオイノシトール、ポリ(アルキレンオキシド)、特に、ポリ(エチレングリコール)およびそれらの誘導体がある。用語「予め製作された(prefabricated)」とは、本明細書において、本発明に従う予め製作された微粒子(単数または複数)が、その意図される使用の時間および/または場所で作製される粒子(単数または複数)ではないという点で、本発明に従う微粒子(単数/複数)を、おそらくは検出目的で使用され得る先行技術から得られたその他の微粒子から識別することを意味する。したがって、本発明に従う予め製作された微粒子は、その場で作製される粒子ではない、すなわち、反応、例えば、使用されることが意図される分析アッセイの過程で作製される粒子ではない。特に、分析物検出が行われるとき、そこで、またはその間に、その場所または時間または反応で作製されない。用語「その場で作製された(in-situ generated)」とは、本明細書において、このような物質または粒子の意図される使用の場所および/または時間で1種または複数の前駆体から作製される物質または粒子を指すものとする。さらに、本発明に従う予め製作された微粒子は、作製される時点では、分析物を含有する試料を包含するまたは含むまたは組み込むまたは巻き込むように製造される粒子ではない。むしろ、本発明に従う予め製作された微粒子は、まず作製され、必要に応じて、さらに処理され、例えば、洗浄され、乾燥され、再構成されるなどして、その作製後にのみ、本発明に従う予め製作された微粒子は、次いで、分析物を含有するか、または分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露される。
【0060】
用語「微粒子」とは、本明細書において、平均寸法がマイクロメートル範囲にある粒子を指すものとする。一実施形態では、本発明に従う微粒子は、およそ5μm~200μm、好ましくは、5μm~150μm、より好ましくは、10μm~100μmの平均サイズまたは平均寸法または平均径を有する。一実施形態では、本発明に従う微粒子は、球形または卵形または楕円形、好ましくは、球形であり、上記の寸法とは、このような球形、卵形または楕円形微粒子の平均径を指す。一実施形態では、微粒子は、(球形)液滴の形状を有する。別の実施形態では、本発明に従う微粒子は、球体または準球体である、すなわち球(またはそれにほぼ接近している)の形状を有し、このような球は、上記の寸法の平均径を有する。一実施形態では、本発明に従う微粒子は、多孔性である。さらなる実施形態では、本発明に従う微粒子、特に、多孔性微粒子は、捕捉剤が微粒子の表面上に主に位置するという点で、捕捉剤を収容するために利用可能である表面を有する。一実施形態では、規定の径を有する本発明に従う多孔性球形微粒子の表面は、同一径を有する非多孔性微粒子の表面のx倍であり、xは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100または少なくとも500から選択される。本発明に従うこのような多孔性球形微粒子では、微粒子あたりの捕捉剤の密度が大きく増強され、微粒子の表面での検出されるべき分析物の特に効率的な集中を可能にする。これは、微粒子の表面上の捕捉剤の密度も特に高いからである。
【0061】
本発明の実施形態に従う微粒子(単数または複数)はまた、作製される時点、または使用される時点で、それらは、生物学的細胞を組み込まない、または含まない、または包含しないという事実によって特徴付けられる。同様に、作製される時点、または使用される時点で、それらは、また、その内部に分析物を含まない、または組み込まない、または包含しない。むしろ、本発明に従う予め製作された微粒子によって検出されるべき任意の分析物は、予め製作された微粒子によってその表面で選択的かつ特異的に結合され、分析物は、予め製作された微粒子を取り囲む試料中に位置するか、またはそれから生じる。したがって、一実施形態では、本発明に従う微粒子は、微粒子を、微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、検出されるべき分析物と選択的かつ特異的に結合する捕捉剤を含み、捕捉剤は、微粒子を取り囲む試料に由来する分析物を結合する(粒子内に位置する試料に由来する分析物とは結合しない)。一実施形態では、微粒子は、主に微粒子の表面に位置する捕捉剤を含み、結果として、微粒子は、したがって、微粒子の外側に位置する分析物を濃縮し集中させることが可能である。用語「主に位置する」とは、微粒子の表面に位置する捕捉剤とともに使用される場合には、このような捕捉剤分子の大部分が、その内部というよりも微粒子の表面に位置するシナリオを指すものとする。本明細書において、用語「表面」は、微粒子の外側から到達可能である微粒子の部分を指すものとする。同様に、本明細書において、用語「微粒子の内部」とは、微粒子の外側から到達可能ではない微粒子の部分を指すものとする。本発明に従う一実施形態では、本発明に従う微粒子は、分析物または生物学的細胞または微生物、例えば、細菌を被包または包含しない、したがって、その内部にこのような分析物を含有しない。
【0062】
本発明の実施形態によれば、微粒子は、捕捉剤を含む、または収容する本質的に(制限された)能力を有する。したがって、微粒子の集合体の一実施形態では、好ましくは、個々の微粒子は、捕捉剤のほぼ同一密度、すなわち、微粒子の単位表面あたり同数の捕捉剤を有するであろう。これは、種々の濃度の分析物を有する種々の試料が使用される場合でさえ、微粒子が分析物をほぼ同一濃度に濃縮し集中させることを可能にする。したがって、本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子はまた、好ましくは、微粒子が分析物を含有する試料に対して曝露された後に、微粒子の表面に均一濃度の分析物を有する、複数の同一反応空間/容量の生成を可能にする。
【0063】
本明細書において、用語「デジタル検出」とは、本発明に従う微粒子とともに使用される場合、微粒子あたりの結合した単一分析物分子が最大であり、微粒子あたりの単一分析物分子の結合がポワソン分布に従うように分析物分子数に対する微粒子数の比が調整されるシナリオを指すものとする。あるいはまたはさらに、用語「デジタル検出」は、本発明に従う微粒子とともに使用される場合、各微粒子が、同一反応容量および反応条件を提供し、好ましくは、およそまたは正確に同数の分析物分子も含有するように、試料が本発明に従う微粒子の集合体によって分割されるシナリオを指すものとする。後者のシナリオでは、微粒子は、したがって、検出されるべき各分析物種のために複数の同様の反応空間(例えば、検出空間)を作出するように働き、反応空間では、好ましくは、分析物の個々の濃度は、種々の微粒子の間で同一(または許容誤差内でほぼ同一)である。したがって、微粒子は、本発明の実施形態によれば、各種の微粒子のために、好ましくは、同一またはほぼ同一の分析物濃度および/または反応条件が達成される複数の同一反応微小空間の生成を可能にする。後者のシナリオは、試料中の分析物の濃度が十分に高い場合の条件下で特に興味深い。前者のシナリオ(最大で、微粒子あたり1つの分析物が結合する)は、試料中の分析物の濃度がかなり低い場合に特に適用可能である。一実施形態では、本発明はまた、同一反応用量および同一反応条件を提供する、複数の同一またはほぼ同一の反応空間の提供のための、例えば、検出反応を実施するための、上記でさらに定義されるような予め製作された微粒子の使用に関する。
【0064】
一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子の集合体では、すべての微粒子は同一のサイズのものであり、したがって、このような予め製作された微粒子の各々が、同一反応容量を提供し、規定し、このような反応容量は、例えば、検出反応の反応空間として働く。一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子の集合体では、すべての微粒子は、同一の種類のものであり、1種の分析物の検出に特異的である。別の実施形態では、このような本発明に従う予め製作された微粒子の集合体では、種々の種類の微粒子があり、各種類は、異なる分析物の検出に特異的である。本発明に従う後者の微粒子の集合体は、1種またはいくつかの試料中の複数の(異なる)分析物の検出のために特に有用である。本明細書において、用語「予め製作された微粒子」は、用語「デジタル増幅ビーズ」(「DAB」とも略される)と本明細書において互換的に使用されることもある。一実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子の集合体では、このような予め製作された微粒子は、互いに空間的に完全に分離している実体として存在する。一実施形態では、このような本発明に従う予め製作された微粒子の集合体では、このような集合体は、したがって、単分散である。必要に応じて、このような単分散の予め製作された微粒子の集合体は、予め製作された微粒子が基材上に位置するか、または基材と関連している状態で提供されてもよい。例えば、このような基材は、1ウェルあたり単一の予め製作された微粒子を収容するのにちょうど十分な空間を提供する個々のウェルを有する篩であり得る。あるいは、このような基材は、予め製作された微粒子を各々収容するための規則的に配置された陥凹またはチャネルまたは溝を有する基材であり得る。一実施形態では、このような基材は、フィルターであり得る。一実施形態では、水溶液を含有し、非水相中に分散/懸濁されている予め製作された微粒子を、1つまたはいくつかの洗浄ステップに付してもよい。この程度まで、上記の種類の基材上に維持され得る。あるいはおよび/またはさらに、本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子は、その後、分析物を含有するか、または分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露されてもよい。予め製作された微粒子上に存在する適した捕捉剤により、微粒子を取り囲む試料から生じる分析物が、微粒子に結合することができ、その後、検出され得る。捕捉剤の目的は、微粒子の外側の分析物を局所的に集中させることおよび濃縮することである。検出剤の目的は、分析物または捕捉剤および分析物間の複合体と結合すること、したがってこのような分析物を単独でまたは捕捉剤との複合体で検出可能にすることである。一実施形態では、このような検出は、分析物に、または捕捉剤および分析物間の複合体に結合した検出剤を検出することによって生じる。別の実施形態では、分析物は、増幅反応によって増幅され、このように増幅された産物は、検出剤によって検出され、これは、分析物が核酸であり、増幅反応が核酸増幅反応である場合には特に好ましい。このような核酸増幅反応の例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写媒介性増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ループ媒介性等温増幅(LAMP)、自家持続配列複製(3SR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)およびニッキング酵素増幅反応(NEAR)がある。当業者は、これらの増幅反応のいずれもよく承知しており、必要に応じてこれらを実施可能である。さらなる実施形態では、分析物の検出は、まずシグナル増幅反応を実施すること、続いて、このように増幅されたシグナルを検出することによって起こり得る。後者の実施形態では、シグナルは、最初にシグナルがある場合にのみ増幅される、すなわち、シグナルは、検出されるべき分析物がある場合にのみ生じ、シグナル増幅反応は、例えば、核酸が検出剤であるか、またはその一部を形成する場合に核酸増幅であり得る。あるいは、シグナル増幅反応は、酵素が検出剤であるか、またはその一部を形成する場合にシグナルの酵素ベースの増幅であり得る。
【0065】
試料中の分析物のデジタル検出を実施する方法の好ましい実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子の集合体は、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露され、このような曝露のステップでは、試料中の微粒子数および分析物分子数は、微粒子あたりの単一分析物分子の結合が、好ましくは、ポワソン分布に従うように、必要に応じて維持され、調整される。この方法の好ましい実施形態では、平均して、微粒子あたり1つ以下の分析物分子が結合する。これによって、微粒子あたり単一の分析物分子の検出が可能になる。別の実施形態では、微粒子あたりの分析物分子数は、平均して、各微粒子中に、微粒子あたり結合した同一数の分析物分子があるように必要に応じて維持され、調整される。この後者の実施形態では、微粒子は、したがって、検出反応を行うための複数の同様の検出空間を作出するように働く。
ここで、図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子の模式図を示す図である。パネルAは、いくつかの捕捉剤分子(小さい中黒丸)が固定化されている予め製作された微粒子(大きな灰色の丸)の外観図を示す。予め製作された微粒子は、本発明に従う予め製作された微粒子が使用される予定である任意の反応のための反応試薬を含む水溶液を取り込むことが可能であるマトリックスを有する。パネルBは、細孔を有する予め製作された微粒子の実施形態を示す。パネルBは、本発明に従う予め製作された微粒子が、一部が外側から到達でき、一部が到達できないいくつかの細孔を有する多孔性である実施形態を示す。やはり、捕捉剤分子は、小さい中黒丸として示されている。捕捉剤分子は、主に微粒子の表面に位置し、このような表面は、微粒子の外側から到達できる微粒子の部分を指す。本発明の実施形態によれば、このような用語「到達できる」とは、検出されるべき分析物によるか、またはそれの到達性を指すものとする。本発明に従う予め製作された微粒子は、検出または定量反応、例えば、デジタル検出反応において使用してもよい。
【0067】
【
図2】
図2は、本発明に従う検出反応の概略フロー図を示す図である。本発明に従う予め製作された微粒子を含有する容器に(このような予め製作された微粒子は、反応容器の底に白色丸として図において模式的に示されている)、分析物を含む試料液体を添加する。本発明に従う予め製作された微粒子(本明細書において、デジタル増幅ビーズ、「DAB」と呼ばれることもある)を、(必要に応じて、標識された)分析物に対して曝露された後、捕捉剤によって分析物を結合した後、新規反応容器に移す。本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子は、目的の分析物、本例では、目的のビオチン化分析物と結合可能である、適した捕捉剤、例えば、ストレプトアビジンを含む。本発明に従う予め製作された微粒子を、反応容器の頂部上の篩またはフィルター上に配置し、適当な洗浄バッファーを用いて洗浄して、結合していない分析物を除去する。本発明に従う予め製作された微粒子は、したがって、水溶液を含有し、本発明に従う予め製作された微粒子の捕捉剤が、分析物を結合した場合には、表面上の対応する分析物も含有する。その後、篩またはフィルター上に残存する本発明に従う予め製作された微粒子を、油相、例えば、浸漬油中に浸漬する。その後、篩またはフィルターを上下逆さまにし、分析物を含む水相を含有する予め製作された微粒子を、さらなる浸漬油で洗浄して、油相、この場合には、篩またはフィルターからの予め製作された微粒子の洗浄のために使用される浸漬油中の予め製作された微粒子(分析物を含む水溶液を含有する)の懸濁液を製造する。本発明の実施形態に従う微粒子はまた、その後の検出反応における分析物の検出を可能にする検出剤も含有する。次いで、このようなその後の検出反応を、実施し、その結果として、ある特定の微粒子は、分析物の存在を示すが、その他のものは示さない。分析物の存在を示す微粒子は、暗い中黒丸として図中に示されているが、陰性結果を示す微粒子は、白色丸として示されている。
【0068】
【
図3】
図3は、
図2に示される反応に対して同様であるが、個々の微粒子のレベルでの反応を示す図である。左側に、本発明の実施形態に従う予め製作された微粒子が示されており、このような微粒子は、白色丸として示されている。主に微粒子の表面上および微粒子を取り囲む外側上に位置する捕捉剤分子があり、核酸(曲がりくねった線)があり、その一部は、適した作用剤、例えば、ビオチン(四角)を用いて標識されている。捕捉剤分子は、別の相補的作用剤、この実施形態では、例えば、ストレプトアビジン(微粒子の表面上に装飾される「真珠」の捕捉剤上に示される四角の陰型)を含み、ビオチン(四角)を用いて標識された核酸は、それぞれの捕捉剤と結合する。ビオチンおよびストレプトアビジンはまた交換されてもよい、すなわち、ビオチンが捕捉剤によって含まれ、ストレプトアビジンが、核酸に付着されることは明確である。非標識核酸は、結合せず、その後の洗浄ステップにおいて洗浄除去することができる(
図2を参照のこと)。溶液を含有するそれぞれの微粒子を、次いで、油と混合し、粒子中に埋め込まれない任意の水性溶体を、油相から除去する。このようにして、非水性マトリックス(四角の枠として図中に示されている)中の粒子の懸濁液が残る。この実施形態では、本発明に従う予め製作された微粒子を製造する材料はまた、液化することができ、このような液化が生じる場合には(図の右の四角の枠を参照のこと)、微粒子を適当な油相中に入れた後に、これは、検出されるべき分析物を含む水溶液および油相内の検出反応を含有する微小反応空間を生成する(
図3中の右側の四角の枠)。
【0069】
【
図4】
図4は、異なる色素を用いて印が付けられている異なる色で色分けされた/標識された予め製作された微粒子(またはデジタル増幅ビーズ、「DAB」)を示す図である。このような異なる標識は、異なる予め製作された微粒子について、異なる色素の種類または異なる色素濃度のいずれかを選択することによって達成してもよい。右側のパネル(B)に、異なる量の色素を有し、異なる分析物に特異的である本発明に従う異なる微粒子を示すことによって、これは模式的に示されている。このような「コード化」は、個々の微粒子の捕捉剤の特異性または検出剤の特異性と関連し得る。
【0070】
【
図5】
図5は、本発明に従う予め製作された微粒子の例を示す図である。パネルAは、油相中の水相を含有する予め製作された微粒子の5×拡大された透過像を示す。パネルBは、リン酸バッファー生理食塩水溶液(PBS)中の水相を含有する予め製作された微粒子の5×拡大された透過像を示す。両パネルにおいて、予め製作された微粒子は、サイズが均一であり、検出反応を行うための複数の同一反応容量/反応空間を提供することが見られる。
【0071】
【
図6】
図6は、5×拡大された蛍光像を(490nmの励起波長および510nmの発光波長を用いて)示す図であり、これでは、PCR増幅反応が実施された後の油相中の予め製作された微粒子が示されている。予め製作された微粒子は、本明細書の実施例の実施形態2に記載されるように製造された。明確にわかるように、明るい蛍光シグナルを有する予め製作された微粒子があり、低流量蛍光シグナルを示すその他の予め製作された微粒子がある。明るい蛍光シグナルを有する微粒子では、この核酸の場合には、分析物の増幅の成功が起こっており、これは、明るい蛍光シグナルによって示される。その他の微粒子では、増幅反応は起こっておらず、これは、蛍光がないこと、またはここで使用されていたプローブ(例えば、TaqManプローブ)のバックグラウンド蛍光から生じる比較的低い(より低い)蛍光シグナルによって示される。
【実施例】
【0072】
さらに、ここで、本発明を制限するものではなく、例示するために与えられる以下の具体例を参照する。
【0073】
実施形態1:単分散デジタル増幅ビーズ(DAB)の作製
DABミックスの作製
構成成分1:
脱イオン水、ヌクレアーゼ不含
超低ゲル化アガロース(Sigma-Aldrich、番号A5030)、ビオチン標識された2%(w/v)
【0074】
ビオチン標識アガロースを調製するために、超低ゲル化温度アガロースをまず活性化し、次いで、EZ-Link(商標)アミン-PEG11ビオチンにカップリングした。あるいは、活性化は、臭素シアン修飾、軽度酸化(アルデヒド基の作製)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジ-もしくはトリクロロトリアジン化合物によって、またはその他の公知の方法によって実施してもよい。あるいは、例えば、ビオチン-モノクロロトリアジンなどの反応性ビオチン化合物を、アガロースに直接カップリングしてもよい。アガロースのマトリックス特性(融解およびゲル形成挙動、低非特異的結合)を維持しながらストレプトアビジン結合能を最大化するために、予備試験における滴定によって最適ビオチン被覆率を決定する。
【0075】
構成成分1の成分を一緒にピペットでとり、ボルテックスミキサーで短時間振盪し、遠心分離する。その後、超低ゲル化アガロースを融解し、均一なアガロース増幅混合物を得るために、混合物を、サーモシェーカー中で65℃、1500rpmでインキュベートする。その後、構成成分1混合物を、35℃に冷却し、同一温度で維持された等容量の構成成分2と混合する。
【0076】
構成成分2は、2×Platinum(商標)Hot Start PCRマスターミックス(Invitrogen、番号13000012からなる。次いで、DAB混合物を、さらなる使用まで35℃で維持する。
【0077】
Dolomite μEncapsulatorシステムでの単分散DABの作製
5mLの、Novec7500油(Dolomite Microfluidics)中のエマルジョン試薬PicoSurf(商標)5%を、0.2μmのフィルターを通して濾過し、清潔な20mlのガラスチューブ(Fisher Scientific、番号12353317)に移し、油相のフローを制御するポンプ(油相ポンプ)のリザーバー中に入れる。アガロース相のフローを制御する2つのその他のポンプ(DABミックスポンプ)に不活性「駆動液体」HFE-7500(Dolomite Microfluidics、番号3200425)を用いて充填する。
【0078】
「試薬Droplet Chip」(50μm、フルオロフィリック(fluorophilic)Dolomite Microfluidics、番号3200445)および「試料リザーバーチップ」(Dolomite Microfluidics、番号3200444)を、μEncapsulator 1システムに入れる。温度制御ユニット(TCU)の設定温度は35℃に設定する。100μlの容量のDABミックスを、試料リザーバーチップの各リザーバーに添加する。両DABミックスポンプについて、およそ2μl/分の、および油相ポンプについて、およそ50μl/分の流速を用いて液滴を生成する。パラメーターをDolomite Flow Control Advancedソフトウェアを用いてモニタリングする。作製されたDABは、およそ65plの容量を有する。材料を、氷上でエッペンドルフチューブ中に集め、次いで、2~8℃で保存する。
【0079】
DABの水相への移行および非伸展性(non-compliant)粒子の排除
篩構造を通して遠心分離によって油相からDABを抽出する。したがって、異常なサイズのビーズが除去される。この目的のために、DABエマルジョンをまず、SEFAR PETEX(登録商標)ファブリックw=44μm)を備えたチューブに付与し、300×gで遠心分離する。より大きなDABは、SEFARファブリック上に残りながら、油相および過小サイズDABを篩を通して移動させる。油相を完全に除去するために、DABを洗浄バッファーに再懸濁し、SEFAR篩を通して再度濾過する。使用される洗浄バッファーは、1×Taq DNAポリメラーゼPCRバッファー[20mM Tris HCl(pH8.4)、50mM KCl](Invitrogen、番号18067017)および1% TritonX100(Sigma-Aldrich、番号X100)からなる。この洗浄ステップを、油相が完全に除去されるまで5回反復する。界面活性剤を伴わない1×Taq DNAポリメラーゼバッファーを用いて2回のさらなる洗浄ステップを実施する。適した遠心チューブ中に反対の配向でフィルターユニットを適用することによってDABを回収する。洗浄バッファーをフィルターの裏側(粒子に背を向ける側)に頂部から付与する。濾過ユニットを1.000×gで1分間遠心分離する。すべての粒子を回収するために、このステップを数回反復する。全容量を、SEFAR PETEX(登録商標)ティシュー、メッシュ幅w=59μm(SEFAR AG、07-59/33)を備えたフィルター上にピペットでのせることによって、過大サイズのDABを濾過して除去する。ユニットを300×gで短時間遠心分離する。フィルターを通過した材料を集め、所望のサイズのDABを含有する。
【0080】
ストレプトアビジンを用いるDABのコーティング
ストレプトアビジンを用いるDABのコーティングを、以前に使用された洗浄バッファー中で達成する。ストレプトアビジンの濃度は、到達可能なビオチンがDABの表面に残らないように選択する。いずれの場合にも、DABの架橋結合を避けるために、ストレプトアビジンを過剰に付与する。最適ストレプトアビジン濃度は、プラトー表面被覆率を決定することによって標識されたストレプトアビジンを用いる予備試験において決定されている。ストレプトアビジンとのカップリング後、DABを、44μmのSEFAR PETEX遠心分離ユニット上で、ストレプトアビジンを伴わない洗浄バッファーを用いて数回洗浄する。その後、DHC-N01(Neubauer Improved)カウントチャンバー(INCYTO)中で顕微鏡下でカウントすることによって、またはCytoFlexフローサイトメーター(Beckman Coulter)でサイトメトリー的にDABの濃度を決定する。
【0081】
DABを、およそ100,000個のビーズを含有する単位で等分し、100mMのトレハロースと混合する。過剰のバッファー容量を除去した後、DABを凍結乾燥する。
【0082】
実施形態2:デジタルPCRを実施するための単分散増幅ビーズ(DAB)の適用
DABでのHIV1(サブタイプO)標的の濃縮およびそれらのビーズの増幅ミックスとともに行うインキュベーション
逆転写によってビオチンを用いて標識された精製HIV-1 RNA(サブタイプO)を、ストレプトアビジン修飾デジタル増幅ビーズ上で濃縮する。逆転写反応の全容量を規定量の凍結乾燥DABに添加する。DABは、付与された液体の一部を吸収し、膨潤する。ビーズを注意深く再懸濁する。凝集を避けるために、超音波を使用してもよい。その後、懸濁液を、SEFAR PETEX(登録商標)ティシュー(w=44μm)を備えた遠心分離チューブに付与する。300×gでのカラムの遠心分離によって上清を除去する。洗浄のために、これまでに使用された洗浄バッファーを、界面活性剤は伴わずにカラムに添加し、同様に300×gで遠心分離する。洗浄を数回反復し、DABは、最終的に構成成分3に取り込まれる。この実施形態では、DABは、拡散によってPCRに必要なすべての構成成分を取り込む。
構成成分3は、以下の試薬からなる(最終濃度):
○1×Platinum(商標)Hot Start PCRマスターミックス(Invitrogen、番号13000012)
○0.2μMのセンスプライマー:GCAGTGGCGCCCGAACAGG(Metabion international AG)
○0.2μMのアンチセンスプライマー1:ACTGACGCTCTCGCACCCATCT(Metabion international AG)
○0.2μMのアンチセンスプライマー2:TGACGCTCTCGCACCCATCTCTC(Metabion international AG)
○1×SYBR(登録商標)Green I核酸ゲル染料(Sigma-Aldrich、番号S9430)または1×EvaGreen(登録商標)Fluorescent DNA染料(Jena Bioscience、番号PCR-352)
【0083】
油中にDABを分散させることによる区分け
フルオロカーボン油、例えば、Novec7500油(Dolomite Microfluidics、番号3200214に分散されたPicoSurf(商標)5%中にDABを分散させることによって規定の容量を有する微小区画を作出する。重質フルオロカーボン油の代わりに、乳化剤を有する軽鉱油、例えば、5%(w/w)Span80(Sigma Aldrich、番号85548)を有する鉱油(Sigma-Aldrich、番号M5904 Sigma)を付与してもよい。
【0084】
エッペンドルフチューブ中で、完全水相を過剰の油と接触させる。超音波を1分間印加する。HIV-1サブタイプO標的を負荷したDABおよび構成成分3の上清の両方が、油相中に分散され、乳化される。構成成分3の上清およびDABの生成された水性液滴は、その容量が大幅に異なり、液滴は、かなり少ない容量を有する。生成されたエマルジョンを、44μmのメッシュ幅を有するSEFAR PETEX(登録商標)ティシュー上にピペットでのせる。DABを含有しない可能性があるより小さい液滴ならびにより大きな液滴を軽度の遠心分離によって除去する。同一の油を用いる反復洗浄によって、すべての液体液滴を除去する。適した遠心チューブ中に反対の配向でフィルターユニットを導入することによって、篩から集中されたDABが抽出される。DABを有する油を、およそ2cm2の面積およびおよそ1mmの層厚を有する検出チャンバーに移す。チャンバーの両面は、透明な疎水性材料でできている。フルオロカーボン油が使用される場合には、DABは、ビーズと油間の密度の相違により疎水性の上面上に単層(密充填)として集合する。鉱油を付与する場合には、DABは、下面に蓄積する。したがって、DABは、その後のデジタルPCRのための微小反応容器を提供する。
【0085】
DAB微小区画における増幅反応
油中に懸濁されたDABを、PELTIERエレメント30×30×4.7mm、19.3W(Quick-Ohm、Kupper&Co.GmbH、番号QC-71-1.4-3.7M)で同一チャンバー中で温度サイクルに付す。捕捉されたcDNAは、アガロースの融解およびDABの液体液滴への変換の際に内在化される。個々のcDNA分子の増幅は、得られた微小反応区画中で起こる。
印加される熱条件は以下である:
【0086】
95℃で2分間の最初の変性と、それに続く、95℃で15秒間の変性、65℃で15秒間のアニーリングおよび72℃で30秒間の伸長の45サイクル。熱プロトコールの完了時に、チャンバーの内容物を、透過白色光ならびに励起λexc=470nmおよび>496nmのロングパス発光を用いる蛍光様式で21℃で画像化する。DABの総数および規定の強度閾値を超える蛍光シグナルを有するものの数を決定する。閾値は、これまでに実施された鋳型を用いない増幅反応から導く。決定された数の正および負の液滴をポワソン統計に適用することによって反応中の鋳型の数を決定する。
【0087】
実施形態3:デジタルELISAの確立
ここで、本発明者らは、ヒトcTnIの検出のためにデジタルイムノアッセイを確立するプロセスを説明する。アッセイは、デジタル形式の免疫PCRを使用する:DNA標識された検出抗体およびストレプトアビジン標識された捕捉抗体は、溶液中の抗原とサンドイッチ複合体を形成する。この複合体は、PCR増幅を実施するための試薬が包埋された、ビオチンコーティングされたアガロース粒子上で捉えられる。適当な洗浄ステップによって、結合していない検出抗体、したがって、DNA標識を除去する。アガロース粒子を油中に懸濁し、その結果、別個の反応区画が形成される。その後の液滴PCRにおいて、結合したDNA標識が検出される。
【0088】
検出抗体
cTnI検出抗体(クローン3H9、SDIX)を、Thunder-Link(登録商標)PLUSオリゴコンジュゲーションシステム(Innova Bioscience)を製造業者のプロトコールに従って使用して標識し、次いで、精製する。以下の配列が抗体にカップリングされる:
5’GCGTCAGACCCCGTAGAAAAGATCAAAGGATCTTCTTGAGATCCTTTTTTTCTGCGCGTAATCTGCTGCTTGCAAACAAAAAAACCACCGCTACCAGCGGTGGTTTGTTTGCCGGATCAAGAGCT3‘
【0089】
捕捉抗体:
クローンTPC-110(SDIX)を捕捉抗体として使用する。これに、製造業者のプロトコールに従ってLightning linkストレプトアビジン(Innova Bioscience)によって印を付けた。
【0090】
DABの調製
DABの調製は、実施例1に記載される方法に従い、以下の修飾を用いて実施した。例示的実施形態においてビオチン標識アガロース粒子を水相に移し、適していない粒子サイズを排除した後、粒子を1×PCRバッファー中に集める。粒子の濃度を約4.000/μlに調整する。粒子を25μlの単位で等分する。
【0091】
免疫複合体の形成およびその捕捉:
反応ミックス:
ヒト血漿 80μl
TBS(K)pH8.4(20mM Tris、50mM KCl pH8.4)、0.5% TritonX-100、10mg/ml BS 10μl
HBR-Plus(Scantibodies) 10μl
DNA標識された検出抗体 xμl
ストレプトアビジン標識された捕捉抗体 yμl
【0092】
抗体濃度の最適化:
検出および捕捉抗体の最適濃度を、従来の免疫PCRによって決定する。2種の抗体の濃度を、系統的に変え、トロポニン不含血漿(陰性対照)および規定量の添加されたトロポニンIを含むトロポニン不含血漿を使用して免疫複合体を作製した。これらを粒子上に捕捉し、洗浄し、従来のPCRに付した。それぞれの抗体の最適濃度は、検出の下限および最も広いダイナミック測定レンジによって示されている。
【0093】
免疫複合体の作製および捕捉:
2種の抗体のこれまでに決定された最適濃度を用いて、25μlの反応混合物(上記を参照のこと)を調製する。反応混合物を、エッペンドルフサーモミキサーで800rpm、37℃で10分間インキュベートする。その後、混合物を、DAB粒子のアリコート(25μlの1×Taqポリメラーゼバッファー中、100,000個粒子)と混合する。
【0094】
混合物を、サーモミキサーで800rpm、25℃で5分間インキュベートする。この時間の間に、免疫複合体を含むストレプトアビジン標識された捕捉抗体のDABとの結合が達成される。液体を、SEFAR PETEX(登録商標)ティシュー(w=44μm)を有するフィルターに付与し、300×gで遠心分離する。500μlのTBS(K)pH8.4(20mM Tris、50mM KCl pH8.4)、0.05% TritonX-100、1mg/ml BSAを用いて5回の洗浄ステップを実施する。その後、1×Taq DNAポリメラーゼPCRバッファー[20mM Tris HCl(pH8.4)、50mM KCl]を用いる2回のさらなる洗浄ステップを実施する。
【0095】
以下の組成を有するPCR反応混合物(容量25μl)を調製する:
500nM fw-プライマー(5’AGCTCTTGATCCGGCAAACA3’)
500nM rev-プライマー(5’GCGTCAGACCCCGTAGAAAA3’)
SYBR(登録商標)Green I核酸ゲル染料(Sigma-Aldrich、番号S9430)1:25000
12,5μl 2×PCR-マスターミックス
PCR等級水
【0096】
チューブ中に反対の配向でフィルターを入れることによってDABを篩から回収する。PCR反応ミックスをフィルターに付与する。その後、ユニットを1000×gで1分間遠心分離する。DABを遠心チューブの底に集め、次いで、サーモミキサーで800rpm、25℃で、PCR反応混合物中で10分間インキュベートする。
【0097】
PCR反応の実施
実施形態2に記載されるように、DABを油相に移す。PCR増幅を以下のパラメーターを用いて40サイクルにわたって実施する:
サイクル1:
5分95℃
30秒65℃
30秒72℃
サイクル2~40:
30秒94℃
30秒65℃
30秒72℃
【0098】
増幅を完了した後、蛍光顕微鏡検査によって個々の粒子のSYBR緑色シグナルを検出する。データ解析は、デジタルPCRの確立されたアルゴリズムに従って実施する。
【0099】
最適ダイナミック測定レンジの決定
DNA標識された検出抗体の、DAB非特異的結合は、デジタル免疫PCRの適用性を制限する重大なパラメーターに相当する。非特異的に結合した標識は、増幅後に偽陽性DABをもたらす。したがって、デジタル免疫PCRでは、分析物の定量は、陽性試料と陰性対照間の差を決定することによって達成される。
【0100】
1つの極端なシナリオでは、検出抗体の非特異的結合が、分析物を有さない対照反応における偽陽性シグナルを有するDABの大部分につながり得る。これは、アッセイ中の検出抗体の濃度を段階的に低減すること、またはDNA標識を有さない同一抗体を用いるDNA標識された検出抗体の希釈を増大することによって抗体濃度を維持することのいずれかによって、検出抗体の有効濃度を低減することによって軽減される。
【0101】
好ましい実施形態のさらなる改変が、特許請求の範囲によってもっぱら定義される本発明の範囲から離れることなくあり得る。
【0102】
本明細書、特許請求の範囲、および/または添付の図面に開示される本発明の特徴は、別個に、およびそれらの任意の組合せの両方で、そのさまざまな形態で本発明を実現させるための材料であり得る。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
試料中の分析物の検出、好ましくは、デジタル検出を実施する方法であって、
a)表面を有し、水溶液を受け取るための空隙容量を含む予め製作された微粒子を提供するステップであって、前記微粒子は、非水性媒体に分散性であり、非水性媒体に分散すると、このような非水性媒体において規定される反応空間を提供し、規定される反応空間において、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応を実施でき、前記予め製作された微粒子は、前記微粒子を、前記予め製作された微粒子を取り囲み、分析物を含有する試料に対して曝露すると、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合し、前記分析物の捕捉剤との結合の際に、前記捕捉剤と前記分析物の間に複合体を形成する捕捉剤を含み、前記捕捉剤は、前記予め製作された微粒子を取り囲む試料に由来する分析物と結合し、前記予め製作された微粒子は、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に特異的であり、前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体と結合する検出剤をさらに含む、ステップと、
b)前記予め製作された微粒子を、検出されるべき分析物を含有すると疑われる水性試料に対して曝露し、したがって、存在する場合には、前記捕捉剤が、検出されるべき前記分析物と選択的かつ特異的に結合することを可能にするステップと、
c)前記予め製作された微粒子を非水相、例えば、油相に入れ、前記予め製作された微粒子の空隙容量を、分析物の存在を示す化学的または生化学的反応が、
d1)前記分析物または前記捕捉剤と前記分析物との間の前記複合体に結合した検出剤を検出すること、
あるいは
d2)存在する場合には、前記分析物を増幅反応によって増幅し、前記検出剤によってこのように増幅された産物を検出することであって、前記分析物が核酸であり、前記増幅反応が、例えば、PCR、TMA、NASBA、LAMP、3SR、SDA、RCA、LCR、RPA、NEARなどの核酸増幅であること
あるいは
d3)シグナル増幅反応、例えば、核酸が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には核酸増幅、または、例えば、酵素が前記検出剤の一部である、もしくはそれを形成する場合には、例えば、色素もしくはフルオロフォアなどの標識の形態のシグナルの酵素ベースの増幅を実施し、このように増幅されたシグナルを検出すること
のいずれかによって実施される、規定される反応空間として使用するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記予め製作された微粒子が、乾燥した、好ましくは、凍結乾燥した予め製作された微粒子として提供される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記予め製作された微粒子が、その場で作製された微粒子ではなく、好ましくは、分析物検出が行われるとき、またはその間に、その場所で、またはその反応中でその場で作製された微粒子ではない、項目1から2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記捕捉剤が、前記予め製作された微粒子の前記表面上に主に位置し、その結果、前記予め製作された微粒子が、前記微粒子の外側に位置する分析物を濃縮し集中させることが可能である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記予め製作された微粒子が、好ましくは、ステップa)またはステップb)のいずれかの間に、水溶液中で再構成され、再構成の際に、その空隙容量中にこのような水溶液を受け取る、項目2から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記検出剤が、予め製作するプロセスの間に前記予め製作された微粒子中に含まれるか、または項目5に記載の前記水溶液中に含まれ、したがって、再構成の際に前記予め製作された微粒子の一部となる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記予め製作された微粒子が、ゲル形成剤でできており、このようなゲル形成剤が、好ましくは、熱もしくは光の印加の際に、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化の際に、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化可能である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記ゲル形成剤が、前記微粒子の前記表面および前記空隙容量を規定するマトリックスを形成する、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記ゲル形成剤が、
a)メチルアクリレートおよびアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、環状ラクタム、スチレンベースのモノマーなどのその対応するモノマーから調製された合成ポリマー、
b)シリコンベースのポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびそのコポリマー、
c)多糖、例えば、アガロース、キチン、キトサン、アルギネート、カラゲナン、セルロース、フコイダン、ラミナラン;キサンタンガム、アラビアガム、ガッティガム(ghatti gum)、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびイヌリンから選択されるガム;ポリペプチド、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ポリヌクレオチドならびにそれらの組合せから選択される天然に存在するポリマー
を含む群から選択される、項目7から8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記捕捉剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー(Spiegelmer);受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの分析物または分析物複合体と特異的に結合可能な非抗体タンパク質から選択される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記検出剤が、抗体または抗体断片、アプタマーを含む核酸、スピーゲルマー;受容体、受容体断片、親和性タンパク質、例えば、ストレプトアビジンなどの非抗体タンパク質から選択され、その各々が、必要に応じて、適したレポーター分子、例えば、色素、酵素、化学触媒または検出されるべき前記分析物の存在を示す光学的にもしくは別の形で検出可能なシグナルをもたらす化学反応を開始可能である試薬の混合物を用いて標識される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記予め製作された微粒子が、特異的に標識される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
予め製作された微粒子の集合体を使用して実施され、前記予め製作された微粒子が、前記項目のいずれかに定義される通りである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記予め製作された微粒子の集合体において、前記予め製作された微粒子が、検出されるべき異なる分析物に特異的であるという点で互いに異なり、各予め製作された微粒子が、異なる予め製作された微粒子およびその対応する検出される分析物が、前記予め製作された微粒子の特異的標識によって区別され得るように特異的に標識される、項目13に記載の方法。
(項目15)
試料中の分析物もしくは複数の分析物のデジタル検出を実施するための、または複数の規定される容量中の複数の分析物を濃縮し集中させるための、好ましくは、前記複数の規定される容量中の前記規定される容量のすべてが同等である、前記項目のいずれかに記載の予め製作された微粒子の、または予め製作された微粒子の集合体の使用を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記曝露するステップb)の後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
ステップa)において、前記予め製作された微粒子が乾燥した形態で提供され、ステップb)において、前記予め製作された微粒子が水溶液中で再構成され、次いで、検出されるべき分析物を含有すると疑われる試料に対して曝露され、必要に応じて、前記再構成のステップ後に、1つまたはいくつかの洗浄ステップがある、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
ステップb)において、予め製作された微粒子数および前記試料中の分析物分子数が、予め製作された微粒子あたりの単一分析物分子の結合が、ポワソン分布に従うように、好ましくは、平均して、微粒子あたり1つ以下の分析物分子が結合し、したがって、予め製作された微粒子あたり単一の分析物分子の検出が可能になるように、必要に応じて維持され、調整される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
ステップc)の間に、存在する場合には、前記予め製作された微粒子または前記予め製作された微粒子の集合体が、前記非水相に懸濁されるか、そして/または予め製作された微粒子をそれぞれその他の予め製作された微粒子から隔離する固体基材上に位置し、好ましくは、前記固体基材がフィルター、篩、ウェル、陥凹、溝、チャネル、塹壕、クレーター、孔、柱または前述の任意の組合せのパターンを有する基材である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
ステップc)の間またはステップc)の後に、前記ゲル形成剤が、好ましくは、熱もしくは光の印加を通じて、またはpH、酸化還元電位、イオン強度、温度、磁場もしくは電磁放射の変化によって、または酵素に対する、もしくは、前記ゲル形成剤自体が酵素を含む場合には、このような酵素の基質に対する曝露の際に、または前述の任意の組合せで液化され、非水相中の水性液滴をもたらす、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
分析物の存在を示す前記化学的または生化学的反応が実施される前記反応空間が、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量によって規定され、前記予め製作された微粒子の前記空隙容量よりも実質的に大きくない、前記項目のいずれかに記載の方法。
【配列表】