(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ロボット顕微手術アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20230217BHJP
A61B 46/10 20160101ALI20230217BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20230217BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230217BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61B34/37
A61B46/10
B25J3/00 Z
B25J13/00 Z
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2020505549
(86)(22)【出願日】2018-04-16
(86)【国際出願番号】 IB2018052626
(87)【国際公開番号】W WO2018189729
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】102017000042116
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519367692
【氏名又は名称】メディカル マイクロインスツルメンツ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ステファニーニ,チェーザレ
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0268249(US,A1)
【文献】特表2016-533816(JP,A)
【文献】米国特許第6676684(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/37
A61B 46/10
B25J 3/00
B25J 13/00
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術アセンブリ(1)であって、
スレーブマニピュレータ(3)を含み、前記スレーブマニピュレータ(3)は、
アクチュエータ(25)と、
前記アクチュエータ(25)に接続された少なくとも1つの押圧装置(53)と、
前記押圧装置(53)上の接触力を検出する少なくとも1つのセンサ(
71)と、
位置検知システム
(72)と、
無菌バリア(55)と、
前記センサに関する情報を受信して前記アクチュエータ(25)を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(4)と、
前記スレーブマニピュレータ(3)によって操作され、前記スレーブマニピュレータに取り外し可能に取り付けられ、前記無菌バリア(55)によって前記スレーブマニピュレータ(3)から分離された手術器具(70)と、
を含み、
前記手術器具(70)は、
フレーム(52)と、
前記フレーム(52)に対してジョイント(14;17)で関節接続するリンク(6;7;8;43)と、
前記リンク(6;7;8;43)に固定され、腱近位部(26)と腱遠位部(27)とを有し、前記アクチュエータ(25)に接続された腱(19)と、
前記腱(19)に牽引作用を及ぼすために、前記腱近位部(26)と接触する少なくとも1つの伝達装置(54)であって、前記フレーム(52)に対して1動作自由度を有するようにカップリング装置(93)によって拘束される少なくとも1つの伝達装置(54)と、
前
記フレーム(52)と前記伝達装置(54)との間に取り付けられた少なくとも1つの弾性装置(56)と、
をさらに含み、
前記手術器具(70)が前記スレーブマニピュレータに取り付けられるときはいつでも、
前記少なくとも1つの押圧装置(53)は、前記伝達装置(54)と離脱可能かつ選択的に接続し、前記無菌バリア(55)を介して前記伝達装置(54)に押圧作用
(75)を伝達し、
前記少なくとも1つのセンサ(
71)は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間の接触力を検出し、
前記少なくとも1つの弾性装置(
56)は、前記腱(19)に牽引作用を及ぼすように、前記少なくとも1つの伝達装置(54)を前記押圧装置(53)から離れるように付勢する、
ロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記スレーブマニピュレータ(3)は、
前記少なくとも1つの押圧装置(
53)
に拮抗するように作動する少なくとも1つの第2の押圧装置(153)と、
前記
第2の押圧装置(153)に接続された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(25)と、
前記少なくとも1つの伝達装置(
54)
に拮抗するように作動する少なくとも1つの第2の伝達装置(154)と、
第2の力センサ(
71)と、
を含み、
前記手術器具(70)は、
前記腱(
19)
に拮抗するように作動する少なくとも1つの第2の腱(20)と、
前記第2の伝達装置(154)に取り付けられた第2の弾性装置(156)と
、
を含み、
前記手術器具(70)が前記スレーブマニピュレータ(3)に取り付けられるときはいつでも、
前記
第2の押圧装置(153)は前記
第2の伝達装置(
154)と離脱可能かつ選択的に接続して、前記無菌バリア(55)を介して前記
第2の伝達装置(154)に押圧作用
(75)を伝達
し、
前記第2のセンサ(
71)は、前記
第2の押圧装置(153)と前記
第2の伝達装置(154)との間の接触力を検出
し、
前記
第2の弾性装置(156)は、前記
第2の腱(20)に牽引作用を及ぼすように、前記
第2の伝達装置(154)を前記
第2の押圧装置(153)から離れるように付勢
し、
前記腱(19)および前記
第2の腱(20)は、リンク(6;7;8;43)に反対の動作を提供する、
請求項1に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記押圧装置(53)は、少なくとも1つの伝達装置(54)と選択的に接続して、前記無菌バリアと前記伝達装置(54)との間の片側係合の装置によって前記押圧作用(75)を伝達する、
請求項1または2に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記無菌バリア(55)は、伸縮性無菌ドレープ(77)を含み、前記押圧装置(53)が前記伝達装置(54)に接続して、前記押圧作用(75)を伝達する場合、前記伸縮性無菌ドレープ(77)の一部は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間に閉じ込められる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記無菌バリア(55)は、伸縮性無菌ドレープ(77)と、前記ドレープ(77)に取り付けられた無菌ドレープインサート(73)とを含み、前記押圧装置(53)は、前記伝達装置(54)に接続して前記押圧作用(75)を伝達する際に、前記無菌ドレープインサート(73)は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間に閉じ込められる、
請求項1~4のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)に対して、1直線動作自由度を有するように前記伝達装置(54)のうちの1つを拘束し、および/または、
前記弾性装置(56)は、アキシャルスプーリングを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)に対して1旋回動作自由度を有するように前記伝達装置(54)を拘束する、および/または、
前記弾性装置(56)は、トーションスプーリングを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの伝達装置(54)は、
カム面、
ボールベアリング、
前記フレーム(52)に旋回可能に接続されたレバー(54)、
プランジャ(54)、
腱取付面、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記弾性装置(56)および/または前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)から前記伝達装置(54)まで延びる複数の屈曲要素(89)を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記伸縮性
無菌ドレープ(77)は、前記伸縮性
無菌ドレープ(77)の主面に実質的に直交する方向に10ミリメートル以下の所定の変位で、手術器具(70)の前記フレーム(52)に対して伸縮可能および/または移動可能である、
請求項
4または5に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記伝達装置(54)は、前記腱(19)
の中間部分
(28)に牽引作用を生じさせるように、前記腱近位部(26)を横方向に付勢する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記伝達装置(54)は、腱接触部分(87)を備え、前記腱接触部分(87)は、前記腱(19)の局所長手延在部を横断する方向に前記腱近位部(26)を押し、その結果、前記伝達装置(54)を介して前記押圧装置(53)により前記腱(19)に加えられるこのような横方向の作用が、前記腱(19)の少なくとも前記中間部分(28)に牽引作用を生じさせる、
請求項11に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記アクチュエータ(25)は、前記腱(19)のたるみまたは伸びに応じて全アクチュエータ位置補正を進め、その結果、前記押圧装置(53)が前記伝達装置(54)と接触するように、アクチュエータ位置増分コマンドがアクチュエータ位置から開始するよう常に実行される、
請求項1~12のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
【0002】
本発明の目的は、ロボット手術アセンブリである。
【0003】
本発明は、スレーブマニピュレータと手術器具とを備えるタイプのロボット顕微手術アセンブリに関する。
【0004】
本発明はまた、手術器具を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
【0006】
末端に手術器具を有する多ジョイントロボットアームを備える手術または顕微手術用のロボットアセンブリは、当分野で知られている。例えば、US-7155316は、磁気共鳴映像法(MRI)ガイダンスの下で脳顕微手術を実行するためのロボットアセンブリを開示しており、(例えば、前記US-7155316の
図7に示されるように)MRIベースの画像取得システムと、それぞれが直接重力負荷を避けるための鉛直軸を備えた3つの回転ジョイントを備えた2つの多ジョイントアームとを含み、各々は、把持のための運動の内部自由度を備えたそれぞれのエンドエフェクタに接続されている。
【0007】
また、組織の緊張や吻合縫合などの主要な手術プーリミティブの実行には、人間の手が手首と肘で接合されるのと同様の方法で、手術器具の先端を大きな空間円錐方向に向け、器具をその長手方向軸の周りに回転させ(ロール)、例えば、針保持器具の先端で組織を通して針を導く能力が必要である。
【0008】
例えば、US-6963792に記載され、より具体的にはUS-6385509およびUS-2014-0135794による顕微手術用途のために記載されているように、遠隔操作マスタースレーブシステムを含む手術または顕微手術用のロボットアセンブリは一般的に知られており、手術野を乱す連続運動連鎖内の複数のジョイントの調整を必要とする手術器具の先端を動かすための運動学的解決策が記載されている。そのような邪魔な効果は、器具の先端を関節接合するジョイントが先端自体からより遠くに離れるにつれてますます顕著になる。さらに、顕微手術システムは、皮膚表面からわずか10センチメートルの病変内部の手術部位にあるとき、器具先端の適切な動き、より具体的には適切な再方向付けを許可しない。
【0009】
ロボット技術の採用は大きな利点をもたらし、器具の高度な小型化と手術野での動きの大きさのスケーリングの両方を可能にし、それゆえ生理的振戦の影響を排除し、手作業を容易にし得る。例えば、顕微手術手順は、例えば、小径血管および神経を含む血管吻合の実行など、生体組織の再構築のいくつかの段階で実行される。このような手順は、外傷性病変または組織の外科的除去によって生じた病変の発生後に解剖学的構造を再構築し、手足の再付着および組織の血管再生を行うために実行され、すべては、表在性病変が存在することを前提に、開腹手術のセットアップで実行される。
【0010】
顕微手術技術のその他の応用例は、移植手術、脳神経外科手術または血管手術、ならびに眼の周囲および内部、および人工内耳の場合のような内耳における外科手術に見られる。また、心臓バイパスの著名な外科的処置は、冠状動脈の吻合の重要なステップを含む。器具の小型化の必要性はまた、他の手術技術、例えば、腹腔鏡検査および内視鏡検査など、生体組織に対する手術器具の侵襲性を制限することを目的とした最小侵襲手術でも感じられる。腹腔鏡検査に関して、当該技術分野で知られている技術的解決策は、単一切開腹腔鏡手術または単一ポート手術で使用される腹腔鏡器具の直径の十分な小型化を可能にしない。さらに、低侵襲手術(MIS)で典型的に使用される内視鏡は、直径が1~3,2ミリメートルの器具チャネルを有することに注目に値する。このような寸法は、内視鏡器具チャネルを介して利用可能な現在の外科器具の機能を制限し、これは現在のところ典型的には把持動作を可能にするだけである。
【0011】
したがって、ロボット手術のために手術器具を小型化する必要性が強く感じられる。
【0012】
US-6951535は、ロボットアセンブリに取り付けられるエンドエフェクタを含む医療器具を開示している(
図6)。運動は、押したり引いたりできるロッドによって器具のシャフトに沿ってエンドエフェクタに伝達され、単一のアクチュエータがアダプタを介してロッドと双方向に係合して、押圧力と引張力の両方をジョイントに伝達する。力センサは、アクチュエータによってロッドに伝達される力を検知する。
【0013】
ロッドは、腱に対して押圧力と引張力の両方を伝達し、張力要素を必要としないという利点を有するが、ロッドは、ケーブルに対してきつい屈曲部やきつく屈曲したジョイントを介して腱ができるようには配線できないという欠点を有するので、提案されているアプローチは、手首などの小型ジョイントサブアセンブリの作動には適していない。
【0014】
例えば、US-9173713は、引張ワイヤにより作動される医療器具、特にカテーテルを開示し、アクチュエータにより引張ワイヤに印加される力を制御する張力センサを含む。カテーテルの内腔に通された引張ワイヤは、張力要素を必要としない腱に対して利点を有する。一方、引張ワイヤは、きつい屈曲部やきつく屈曲したジョイントを介して腱ができるようには配線できないので、提案されたアプローチは手首などの小型ジョイントサブアセンブリの作動には適していない。
【0015】
さらに、US-5797900は、
図6および
図7に手術器具のケーブル駆動システムを開示している。それは、キャプスタンまたは駆動ホイールで構成される摩擦駆動装置によってケーブルに直接作用するアクチュエータを含む。ケーブルは、ケーブルに予張力を与える後部テンションプーリを通過する。摩擦駆動を介してケーブルに直接作用するアクチュエータは、アクチュエータからの器具の取り外しも、アクチュエータと器具間の無菌バリアの導入も許可しない。さらに、摩擦駆動には、アクチュエータとケーブルの間で常にある程度の滑りが生じるという欠点がある。滑りは、手術器具の遠位関節接合の位置を正確に制御する能力に悪影響を及ぼし、手術器具の直径が小さい場合、例えば5mm以下の場合は尚更である。
【0016】
US-6331181は、無菌ドレープおよび無菌アダプタを含むロボット手術器具、および腱によって作動される接合された遠位関節接合を含む手術器具を開示している。この文献は、
図4Bに腱張力装置を使用しない腱駆動システムを説明している。このアプローチには、器具内の腱がその予張力または予荷重を緩めるたびに現れるアクチュエータと遠位ジョイント間のロストモーションを排除できないという欠点がある。張力が失われることは、鋼製ケーブルでは顕著であり、例えばポリマーケーブルなどの張力下で時間とともに伸びたりクリープしたりする腱用の器具の寿命にわたって尚更顕著になる。この効果は、器具を組み立てるときに腱に大きな予張力をかけることで緩和できるが、大きな予張力は、今度は接合された遠位関節接合の摩擦を増加させ、特に器具の遠位関節接合の寸法が小さい場合に、その運動精度を損なう。結論として、開示されたアプローチは、直径が5ミリメートル未満の遠位関節接合を有するマイクロ器具またはポリマー腱を使用する器具を作動させるのに適していない。
【0017】
WO-2012-068156は、腱および可動プーリの装置による差動機構を含む医療器具用の腱駆動システムを開示している。提案された解決策は、腱のたるみを取るか、または腱に張力を与えるための装置がなく、器具内の腱がその予張力を緩和するたびに現れるアクチュエータと遠位ジョイント間のロストモーションを排除することはできない。
【0018】
US-2015-0209965は、接合された遠位関節接合を含む腱駆動医療器具を開示している。ロボットアセンブリは、アクチュエータパックを含む。機器は、アクチュエータパックに接続するカップリングユニットを含む。器具のカップリングユニットは、腱の張力を検知するセンサを含む。器具のカップリングユニットはまた、器具がロボットアセンブリに取り付けられたときにケーブルのたるみを吸収することができる、モータシャフトに取り付けられたスプールを含む。提案された解決策は、張力センサを器具カップリングユニット内部に配置するという不利な点を有しており、使い捨て可能な部品のコストが増加する。器具がアクチュエータから取り外されたとき、腱に予張力を与え、腱のたるみを取る装置は提供されない。そのような解決策は、例えば、負荷がかかってクリープや伸びが生じやすい腱の場合など、適切な機能のために腱のたるみを取る必要がある腱駆動システムでは採用できない。
【0019】
さらに、WO-2017-015599は、接合された遠位関節接合を含む腱駆動医療器具を開示している。この器具は、アクチュエータが単方向に係合する入力フィンガーを含む、アクチュエータから腱に力を伝達するように適合された伝達装置を提供する。提案された一方向の係合には、入力フィンガーを覆うベローズを備えた連続シートの形の単純な無菌バリアを可能にするという利点がある。他方、器具がアクチュエータから取り外されたときに、腱に予張力をかけ、腱のたるみを取る装置は記載されていない。このような解決策は、例えば、負荷がかかってクリープや伸びが生じやすい腱の場合など、適切な機能のために腱に最小限の予荷重を必要とする腱駆動システムに採用することはできない。
【0020】
US-2014-0128849は、摩擦により腱に力を伝達するキャプスタンからなる摩擦駆動装置を含む医療器具の様々な腱駆動システムを開示している。アクチュエータとキャプスタンの間の係合機構は、器具の取り外しを可能にし、無菌バリアを介してアクチュエータを無菌領域外に保つために説明されている。器具がアクチュエータに取り付けられていないときに腱に予張力を提供するいくつかの解決策はすべて、器具フレームと腱の間、または腱が通っている予張力プーリに接続されたバネ要素に基づいている。そこに示されている一実施形態では、腱巻き取りバネシステムが必要であり、したがって、伝達装置のコンプライアンスを高め、器具の運動精度を低下させる。いずれにせよ、摩擦駆動には、手術器具の遠位関節接合の位置を正確に制御する能力に悪影響を与えるアクチュエータとケーブル間の滑りを常に許容するという欠点がある。
【0021】
US-2012-0289974は、駆動要素の一部、腱またはロッドが、無菌バリアを横切ってマニピュレータによる直接運動にさらされる手術器具のための器具作動インターフェースを開示している。その単純さにもかかわらず、提案された解決策には、マニピュレータと腱の間に無菌バリア、例えばプラスチックシートを直接閉じ込めて、相対運動中に直接的な機械的相互作用の結果として無菌バリアと腱を摩耗または機械的破損にさらすという根本的な欠点がある。代替の実施形態では、ピニオンギア、ギアラック、または駆動摩擦ローラーまたは他のアダプタが無菌バリアに含まれて、アクチュエータから駆動要素に運動を伝達する。そのような解決策は、器具がアクチュエータに取り付けられていない場合、必要な予張力量を提供できないか、または腱型駆動装置を使用できないため、適切に機能するために腱に最小限の予荷重が必要な腱駆動システムに採用できない。
【0022】
さらに、US-2015-0150636は、人間によって一方向に作用されると、腱をその経路から偏向させることができる伝達装置を備えた医療器具を開示している。腱のたるみを取るための腱張力要素は、器具に備えられていない。反対の効果として、伝達装置が人間によって作用されていないときに伝達装置を腱から遠ざけるために、戻しバネが提供される。
【0023】
さらに、WO-2010-121117は、押圧手段としてのピストンと、伝達手段としてのプランジャと、弾性手段としてのバネとを含む手術器具用の駆動システムを開示している。開示された解決策では、バネは遠位の自由度の開口部を駆動し、通常の動作中は常にプランジャと接触を維持したまま、プランジャをピストンに向かって後方に動かす。したがって、プランジャが同じ自由度の閉鎖運動を作動させるために使用される間、バネは開放運動を作動させるために使用される。自由度の一方向に運動を作動させるためにバネを使用することは、方向の運動の制御の程度が制限されるという欠点があり、言い換えると、方向の運動はバネによってパッシブ制御され、押圧手段を駆動するアクチュエータによって制御されるようにアクティブ制御されない。結果として、方向の力と速度は、正確な手術ジェスチャーを実行するためにアクティブ制御することはできない。
【0024】
WO-2015-023730は、モータボックスと、遠位ジョイントに接続された遠位部分と遠位ジョイント用に双方向伝達手段として作用する駆動ディスクに接続された近位部分とを有する腱を含む手術器具とを含む外科装置を開示している。この文献は、モータ側に組み込まれた予荷重機構に基づいて、バックラッシュまたはロストモーションを発生させずに双方向に運動を伝達するために、駆動ディスクをモータパックに係合する方法の解決策を開示している。提案されている予圧機構は、腱の張力に影響を与えず、駆動ディスクとモータ間の接触のみを実行する。したがって、器具の腱の張力は、どの動作状態でも腱のたるみが無いことを保証するのに十分高い値に設定する必要があり、これにより、器具の摩擦が増加し、運動精度が低下する傾向がある。
【0025】
したがって、医療器具の一部である腱予張力要素を含む、遠位関節ジョイントサブアセンブリを含む医療器具用の腱駆動システムを提供する必要性が感じられる。
【0026】
医療器具がロボットアセンブリに取り付けられていない場合、遠位関節ジョイントサブアセンブリの任意の位置で腱は常に最小の正の張力(予圧)を有する必要性が感じられる。
【0027】
実際、腱のたるみは、腱がルーティング要素上で滑ることにも起因し得る。それから、腱のたるみは、予張力の器具の寿命にわたる印加から生じ得る。腱のたるみは、張力がかかっているときに、時間の経過とともに伸びたりクリープしたりする傾向がある腱から生じ得る。
【0028】
器具がアクチュエータから取り外されたとき、通常の操作中に腱に印加される張力よりも低い予張力を腱の寿命にとって有益な腱内のより低い予張力として腱に印加する遠位関節ジョイントサブアセンブリを含む医療器具用の腱駆動システムを提供する必要性が感じられる。
【0029】
腱に損傷を与えることなくスレーブマニピュレータのアクチュエータから腱に力を伝達するように適合された伝達装置を含む遠位関節ジョイントサブアセンブリを含む医療器具用の腱駆動システムを提供する必要性が感じられる。
【0030】
同時に、医療器具を駆動して、医療器具とスレーブマニピュレータの間に無菌バリアを提供し、その結果、医療器具を滅菌可能となり、スレーブマニピュレータが汚染を回避するマスタースレーブシステムの必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0031】
解決手段
【0032】
本明細書に記載される本発明の目的は、上記のような既知の解決策の限界を克服し、最新技術に関して言及された必要性に対する解決策を提供することである。
【0033】
この目的および他の目的は、請求項1に記載のロボット手術アセンブリおよび請求項12に記載の方法によって達成される。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0035】
本発明の一態様によれば、ロボット手術アセンブリは、スレーブマニピュレータであって、アクチュエータと、アクチュエータに接続された少なくとも1つの押圧装置と、押圧装置の接触力を検出する少なくとも1つのセンサと、位置検知システムと、無菌バリアと、センサに関する情報を受信してアクチュエータを制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニットと、スレーブマニピュレータによって操作され、スレーブマニピュレータに取り外し可能に取り付けられ、無菌バリアによってスレーブマニピュレータから分離された手術器具とを含むスレーブマニピュレータを含む。
【0036】
本発明の一態様によれば、手術器具は、フレームと、フレームに対してジョイントで関節接続するリンクと、リンクに固定され、腱近位部及び腱遠位部を有する、アクチュエータに接続された腱と、腱に牽引作用を及ぼすために、腱近位部と接触している少なくとも1つの伝達装置であって、伝達装置は、フレームに対して1動作自由度を有するようにカップリング装置によって拘束される少なくとも1つの伝達装置と、伝達装置と器具フレームとの間に取り付けられた少なくとも1つの弾性装置とをさらに含む。
【0037】
好ましい一実施形態によれば、手術器具がスレーブマニピュレータに取り付けられるときはいつでも、少なくとも1つの押圧装置は、伝達装置と離脱可能かつ選択的に接続し、無菌バリアを介して伝達装置に押圧作用を伝達し、少なくとも1つのセンサは、押圧装置と伝達装置との間の接触力を検出し、少なくとも1つの弾性装置は、少なくとも1つの伝達装置を押圧装置から離れるように付勢し、腱に牽引作用を及ぼす。
【0038】
提案された解決策のおかげで、腱のたるみが回避される。
【0039】
好ましい一実施形態によれば、スレーブマニピュレータは、拮抗押圧装置として機能する少なくとも1つの第2の押圧装置と、拮抗押圧装置に接続された少なくとも1つの第2のアクチュエータと、拮抗伝達装置として機能する少なくとも1つの第2の伝達装置と、第2の力センサとを含み、手術器具は、拮抗腱として作用する少なくとも1つの第2の腱と、第2の伝達装置に取り付けられた第2の弾性装置とを含み、手術器具がスレーブマニピュレータに取り付けられるときはいつでも、拮抗押圧装置は、拮抗伝達装置と離脱可能かつ選択的に接続し、無菌バリアを介して拮抗伝達装置に押圧作用を伝達し、第2のセンサは、拮抗押圧装置と拮抗伝達装置との間の接触力を検出し、拮抗弾性装置は、拮抗伝達装置を拮抗押圧装置から離れるように付勢し、拮抗腱に牽引作用を及ぼし、腱および拮抗腱は、リンクに反対の動きを提供する。
【0040】
提案された解決策のおかげで、医療器具を駆動するためのマスタースレーブシステムにおいて、拮抗構成でジョイントに遠位に取り付けられた一対の腱の共通の腱張力をアクティブに制御できる。
【0041】
提案された解決策のおかげで、医療器具を駆動するためのマスタースレーブシステムにおいて、器具がマスタースレーブシステムに係合している間、腱アクチュエータを器具から切り離すことができ、その結果、腱張力は、腱のたるみを避けるために必要な最小値まで減少する。
【0042】
図面
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照する、例として与えられ、限定することを意図しない好ましい実施形態の以下に報告される説明から明らかになるであろう。
【0044】
【
図1】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリの斜視図であり、スケッチは患者と外科医を描いている。
【0045】
【
図2】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリの斜視図であり、スケッチは患者を描いている。
【0046】
【
図3A】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのスレーブアセンブリのブロック図である。
【0047】
【
図3B】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのブロック図である。
【0048】
【
図3C】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのブロック図である。
【0049】
【
図4】一実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの斜視図である。
【0050】
【
図5】一実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの平面図である。
【0051】
【
図6-7】いくつかの実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの分解斜視図である。
【0052】
【
図8】一実施形態に係る、無菌バリアの斜視図である。
【0053】
【
図9】
図8の矢印IX-IXで示された線に沿って切断した断面図である。
【0054】
【
図10-11】いくつかの実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの断面のスケッチである。
【0055】
【
図12-13】いくつかの実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの断面のスケッチである。
【0056】
【
図14-15】一実施形態に係る、非付勢位置および付勢位置における伝達装置の斜視図である。
【0057】
【0058】
【
図17-18】いくつかの実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの断面のスケッチである。
【0059】
【
図19-20】いくつかの実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの断面のスケッチである。
【0060】
【
図21】一実施形態に係る、手術器具の接合されたアセンブリの斜視図である。
【0061】
【
図22】一実施形態に係る、リンクの一部の斜視図である。
【0062】
【
図23】一実施形態に係る、手術器具およびスレーブマニピュレータの断面のスケッチである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
いくつかの好ましい実施形態の詳細な説明
【0064】
一般的な実施形態によれば、ロボット手術アセンブリ1が提供される。
【0065】
ロボット手術アセンブリ1は、スレーブマニピュレータ3を含む。
【0066】
スレーブマニピュレータ3は、アクチュエータ25と、アクチュエータ25に接続された少なくとも1つの押圧装置53と、少なくとも1つの押圧装置53の接触力を検出するセンサ71、72と、位置検知システム72と、無菌バリア55と、センサに関する情報を受信してアクチュエータ25を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット4と、手術器具70とを含む。
【0067】
好ましい一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3によって操作され、スレーブマニピュレータ3に取り外し可能に取り付けられ、無菌バリア55によってスレーブマニピュレータ3から分離される。
【0068】
手術器具70は、フレーム52と、フレーム52に対してジョイント14;17で関節接続するリンク6;7;8;43と、リンク6;7;8;43に固定され、腱近位部26及び腱遠位部27を有する、アクチュエータ25に接続された腱19とをさらに含む。
【0069】
手術器具70は、腱19に牽引作用を及ぼすために、腱近位部26と接触している少なくとも1つの伝達装置54をさらに含む。
【0070】
少なくとも1つの伝達装置54は、フレーム52に対して1動作自由度を有するように少なくとも1つのカップリング装置93によって拘束される。好ましくは、カップリング装置93は線形カップリング装置93である。例えば、カップリング装置93は、フレーム52の壁である。
【0071】
手術器具70は、少なくとも1つの伝達装置54に取り付けられた少なくとも1つの弾性装置56をさらに含む。
【0072】
好ましくは、押圧装置53は、伝達装置54と離脱可能かつ選択的に接続し、無菌バリア55を介して伝達装置54に押圧作用を伝達する。好ましい一実施形態によれば、手術器具70がスレーブマニピュレータに取り付けられるときはいつでも、押圧装置53は、伝達装置54に離脱可能かつ選択的に接続され、無菌バリア55を介して伝達装置54に押圧作用を伝達し、センサ71、72は、押圧装置53と伝達装置54との間の接触力を検出し、弾性装置53は、伝達装置54を押圧装置53から離れるように付勢し、その結果、腱19に牽引作用を及ぼす。好ましい一実施形態によれば、弾性装置53は、器具フレーム52と伝達装置54との間に取り付けられている。好ましい一実施形態によれば、弾性装置53は、器具フレーム52と伝達装置54との間のコンプライアンスとして作用する。好ましい一実施形態によれば、弾性装置53は、器具フレーム52と伝達装置54との間に付勢作用76を生成する。好ましい一実施形態によれば、付勢作用76は、伝達装置54を押圧装置53から離れるように付勢する。好ましい一実施形態によれば、付勢作用76は、腱19に牽引作用を及ぼす。
【0073】
好ましい一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54と選択的に接続され、無菌バリアおよび伝達装置54との片側係合により押圧作用75を伝達する。好ましい一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54と選択的に接続され、無菌バリアおよび伝達装置54との片側剛係合により押圧作用75を伝達する。好ましい一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54によっても無菌バリアによっても拘束されない。好ましい一実施形態によれば、押圧装置53は、弾性装置53と平行に、無菌バリアを介して伝達装置54に作用する。このようにして、弾性装置53は、押圧装置と腱19との間の押圧作用75の伝達において、押圧装置と直列にコンプライアンスを追加することを回避する。
【0074】
好ましい一実施形態によれば、無菌バリア55は伸縮性無菌ドレープ77を含み、押圧作用75を伝達するために押圧装置53が伝達装置54に接続すると、伸縮性無菌ドレープ77の一部は、押圧装置53と送信装置54との間に閉じ込められる。
【0075】
好ましい一実施形態によれば、無菌バリア55は、伸縮性無菌ドレープ77と、ドレープ77に取り付けられた無菌ドレープインサート73とを含み、押圧作用75を伝達するために押圧装置53が伝達装置54に接続すると、無菌ドレープインサート73は、押圧装置53と伝達装置54との間に閉じ込められる。一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は無菌バリアコネクタである。
【0076】
好ましい一実施形態によれば、カップリング装置93は、フレーム52に対して1直線動作自由度を有するように伝達装置54のうちの1つを拘束する。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つのカップリング装置93は、フレーム52に対して1直線動作自由度を有するように伝達装置54のうちの少なくとも1つを拘束する。
【0077】
好ましい一実施形態によれば、弾性装置56は、アキシャルスプーリングを含む。一実施形態によれば、アキシャルスプーリングは線形圧縮コイルバネである。一実施形態によれば、アキシャルスプーリングは線形牽引コイルバネである。
【0078】
好ましい一実施形態によれば、カップリング装置93は、フレーム52に対して1旋回動作自由度を有するように伝達装置54を拘束する。
【0079】
好ましい一実施形態によれば、弾性装置56はトーションスプーリングを含む。一実施形態によれば、トーションスプーリングはコイルバネである。一実施形態によれば、トーションスプーリングは回転バネである。一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56はアキシャルスプーリングである。一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56は、コイルアキシャル圧縮バネである。一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56は、コイルアキシャル引張バネである。
【0080】
一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56はトーションスプーリングである。
【0081】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達装置54は、カム面、ボールベアリング、フレーム52に旋回可能に接続されたレバー54、プランジャ54、腱取り付け面のうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
好ましい一実施形態によれば、弾性装置56および/またはカップリング装置は、フレーム52から伝達装置54まで延在する複数の屈曲要素89を含む。
【0083】
好ましい一実施形態によれば、ロボット手術アセンブリ1は、手動コマンドを検出するのに適した少なくとも1つのマスターツール2と、少なくとも1つのスレーブマニピュレータ3と、1つのスレーブマニピュレータ3によって操作される少なくとも1つの手術器具70と、手動コマンドに関する情報を含む少なくとも1つの第1のコマンド信号59を受信し、第2のコマンド信号60を少なくとも1つのアクチュエータ25に送信して、スレーブマニピュレータ3を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット4とを含む。
【0084】
一実施形態によれば、制御ユニット4は、第2のコマンド信号を少なくとも1つのアクチュエータ25に送信するのに適したアクチュエータ駆動ユニット58に接続されている。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4はCPUを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4は、少なくとも1つのプロセッサユニットを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4は、少なくとも1つのアクチュエータ25の動作、例えば、少なくとも1つのアクチュエータ25によってもたらされる変位および/または少なくとも1つのアクチュエータ25によって加えられる力を検出するのに適した検出システムによって取得された情報に基づいてフィードバック制御回路を提供する。一実施形態によれば、マスターツール2は、外科医30によって取り扱われるように設計されている。一実施形態によれば、手術器具70の少なくとも一部は、患者29の解剖学的構造上で操作するように設計されている。
【0085】
一実施形態によれば、手術器具70は、フレーム52と、フレーム52に運動学的に接続された少なくとも1つのジョイントサブアセンブリ5とを含む。
【0086】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、複数の自由度を画定するジョイント14、17によって接続されたリンク6、7、8、43を含む。一実施形態によれば、シャフト51は、フレーム52に近位で接続され、ジョイントサブアセンブリ5のリンクに遠位で接続され、管状要素接続部61を形成する。一実施形態によれば、シャフト51は、シャフト51の長手延在軸に実質的に一致する長手シャフト軸r-rを画定する。一実施形態によれば、シャフト51は、長手シャフト軸r-rの周りを回転して、ジョイントサブアセンブリにロール運動を提供するのに適している。
【0087】
一実施形態によれば、手術器具70は、少なくとも1つのアクチュエータ25に直接的または間接的に接続された、作動ケーブルとして機能するのに適した少なくとも1つの腱19を含む。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの腱19は、腱近位部26と、リンク6、7、8、43のうちの1つに固定された腱遠位部27とを有する。好ましくは、少なくとも1つの腱19は、腱近位部26と腱遠位部27との間に延在する腱中間部28を含む。好ましい一実施形態によれば、腱19は、フレーム52に固定された腱近位終端部74を含む。好ましい一実施形態によれば、腱近位終端部74は、フレーム52に接着される。
【0088】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、少なくとも1つのアクチュエータ25に接続された押圧装置53を含む。好ましくは、押圧装置53は、少なくとも1つの押圧要素53を含む。一実施形態によれば、押圧装置53または少なくとも1つの押圧要素53は、少なくとも1つのアクチュエータ25に接続される。
【0089】
一実施形態によれば、手術器具70は、腱19に牽引作用を及ぼすために、腱近位部26と接触する伝達装置54を含む。好ましくは、伝達装置54は、少なくとも1つの伝達要素54を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達要素54または伝達装置54は、腱近位部26と接触する腱接触部87を含む。好ましい一実施形態によれば、腱近位終端部74は、伝達装置54に固定される。
【0090】
一実施形態によれば、使用中、少なくとも1つの押圧要素53は、少なくとも1つの伝達要素54と選択的に接続され、押圧作用75を伝達要素54に伝達する。好ましくは、少なくとも1つの押圧要素53は、少なくとも1つの伝達要素54と離脱可能かつ選択的に接続される。一実施形態によれば、少なくとも1つの押圧要素53は、伝達要素54に離脱可能に載置される。
【0091】
一実施形態によれば、使用中の所定の瞬間に、少なくとも1つの押圧要素53は、少なくとも1つの伝達要素54と接続または接続解除することができる。
【0092】
一実施形態によれば、使用中、少なくとも1つの押圧要素53または押圧装置53は、少なくとも1つの伝達装置54と選択的に直接的または間接的に接触し、押圧作用を伝達装置54に伝達する。
【0093】
一実施形態によれば、ロボット手術アセンブリ1は無菌バリア55を含み、無菌バリア55の少なくとも一部は、少なくとも1つの押圧要素53と少なくとも1つの伝達要素54との間に配置される。このようにして、無菌バリア55が押圧装置53と伝達装置54との間に配置されるため、押圧装置53と伝達装置54との間の選択的接触は間接的である。無菌バリア55のおかげで、無菌バリア55を横切る相互の細菌汚染を回避することが可能であり、したがって、無菌手術器具70および非無菌スレーブマニピュレータ3を画定する。
【0094】
一実施形態によれば、伝達装置54は、カップリング装置の装置によってフレーム53に接続され、カップリング装置は、フレーム52に対して1動作自由度を有するように伝達装置54を拘束する。一実施形態によれば、手術器具70がスレーブマニピュレータ3に着脱可能に取り付けられて使用されるとき、押圧装置53は、伝達装置54と選択的に接触し、無菌バリア55を介して伝達装置54に押圧作用を伝達する。
【0095】
一実施形態によれば、少なくとも1つの押圧要素53は少なくとも1つの出力部83を含み、少なくとも1つの伝達要素54は少なくとも1つの入力部84を含み、出力部83は、直接的または間接的に無菌バリア55を介して押圧作用75を入力部84へ伝達する。
【0096】
一実施形態によれば、手術器具70は、伝達装置54を押圧装置53から離れるように付勢して、腱19に牽引作用を及ぼす、伝達装置54に接続された弾性装置56を含む。好ましくは、弾性装置56は、バネなどのような少なくとも1つの弾性要素を含む。
【0097】
一実施形態によれば、腱に対する牽引作用は、腱に対する弾性牽引作用である。このように、
【0098】
好ましい一実施形態によれば、弾性装置56は、少なくともバネ56を含む。好ましい一実施形態によれば、弾性装置56は、少なくともコイルバネ56を含む。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性手段56は、少なくとも板バネ56を含む。
【0099】
一実施形態によれば、弾性装置56は、伝達装置54に付勢作用76を及ぼして、腱19に牽引作用を及ぼす。好ましくは、付勢作用76は、弾性付勢作用76である。
【0100】
好ましい一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、押圧装置53と伝達装置54との間の接触力を検出する少なくとも1つのセンサ71、72を含む。一実施形態によれば、押圧装置53の押圧作用75と、弾性装置56によって提供される付勢作用76とは、同じ線内で同じ方向に作用する。
【0101】
好ましい一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、アクチュエータ位置を検出可能で、且つ、押圧装置53のストロークを検出可能な位置検知システム72を少なくとも含む。
【0102】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71はロードセルである。一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71は圧電デバイスを含む。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71は圧力センサである。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71は、抵抗薄膜圧力センサである。
【0103】
一実施形態によれば、少なくとも1つの位置検知システム72は、エンコーダを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの位置検知システム72は、リニアエンコーダを含む。一実施形態によれば、少なくとも、少なくとも1つの位置検知システム72は、回転エンコーダを含む。一実施形態によれば、少なくとも、少なくとも1つの位置検知システム72は、リミットスイッチを含む。一実施形態によれば、少なくとも、少なくとも1つの位置検知システム72は、インクリメンタルアクチュエータ位置コマンドを蓄積するプロセッサメモリレジスタを含む。好ましい一実施形態によれば、少なくとも、少なくとも1つの位置検知システム72は、絶対位置エンコーダを含む。
【0104】
一実施形態によれば、少なくとも1つの位置検知システム72は、少なくとも押圧装置53と少なくとも1つの伝達装置54との間のギャップ値を検出する。
【0105】
一実施形態によれば、押圧装置53と伝達装置54との間の接触力が所定の接触力閾値以上である場合、少なくとも1つのセンサ71は制御ユニット4にセンサ信号を送信する。このようにして、検出ノイズがアクチュエータ25をトリガーすることが回避される。
【0106】
一実施形態によれば、少なくとも押圧装置53と少なくとも1つの伝達装置54との間のギャップ値が所定の間隔値以下である場合、少なくとも1つの位置検知システム72は位置検知システム信号を制御ユニット4に送信する。このようにして、アクチュエータ25をフィードバック制御することが可能である。
【0107】
一実施形態によれば、センサ71および位置検知システム72は協働して、押圧装置53、すなわちアクチュエータ25の基準位置に関する押圧装置53の自由ストロークの範囲を決定する。一実施形態によれば、自由ストロークは、押圧装置53が、伝達装置54とは接続されていない、押圧装置53のストロークの一部である。
【0108】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71、72はLVDTである。一実施形態によれば、LVDTは、押圧装置53と伝達装置54との間のギャップ値を検出する押圧装置53に配置される。一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ71、72は渦電流近接センサである。
【0109】
一実施形態によれば、弾性装置56は、伝達装置54を弾性的に付勢して、腱19に牽引作用を及ぼす。
【0110】
一実施形態によれば、弾性装置56は、伝達装置54を弾性的に付勢して、腱19に予荷重を与える。一実施形態によれば、弾性装置56は、伝達装置54を弾性的に付勢して、腱中間部28に予荷重を与える。このようにして、少なくとも1つの腱19、好ましくは腱19の腱中間部28は、使用時に予荷重が掛けられている。好ましくは、少なくとも1つの腱19、好ましくは腱19の腱中間部28は、使用時に常にわずかに予荷重が掛けられている。このようにして、押圧装置53によって伝達装置54に加えられる最小の押圧作用は、腱19、好ましくは腱近位部26に対する牽引作用を決定する。
【0111】
一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性装置56は、柔らかいバネで形成されている。
【0112】
一実施形態によれば、押圧装置53と伝達装置54との間の接触力は、弾性装置56によって提供される付勢作用76に加わる。一実施形態によれば、押圧装置53から伝達装置54に伝達される押圧作用75は、張力要素56によって提供される付勢作用76に加わる。
【0113】
一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56は、1つの伝達装置54と平行に接続される。
【0114】
一実施形態によれば、少なくとも1つの引張要素56は、伝達装置54を押圧装置53から離れるように付勢する。
【0115】
一実施形態によれば、無菌バリア55は、伸縮性無菌ドレープ77を含む。
【0116】
一実施形態によれば、無菌バリア55は、無菌ドレープインサート73を含む。
【0117】
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、押圧装置53によって及ぼされる押圧作用76を伝達装置54に伝達する。
【0118】
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は伝達装置として機能する。
【0119】
一実施形態によれば、無菌ドレープは伸縮可能であり、無菌ドレープインサート73は剛体である。このようにして、押圧作用76を減衰したり、又は弱めることを回避して、押圧作用76を伝達することが可能である。
【0120】
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、ドレープ77と接続するための少なくとも1つのドレープ取り付け装置を含む。一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、ドレープ77の一部を挟む。
【0121】
好ましい一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3に取り外し可能に接続されている。一実施形態によれば、手術器具70は、少なくとも1つの無菌バリア55を介してスレーブマニピュレータ3に取り外し可能に接続されている。一実施形態によれば、手術器具70は、少なくとも1つの無菌ドレープインサート73に取り外し可能に接続されている。一実施形態によれば、少なくとも1つの無菌ドレープインサート73は、スレーブマニピュレータ3に取り外し可能に接続されている。
【0122】
一実施形態によれば、伝達装置54の腱接触部87は、腱近位部26を選択的に撓ませる。一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達装置54の腱接触部87は、伝達装置54が押圧作用75を伝達装置54に伝達するとき、腱近位部26を撓ませる。
【0123】
一実施形態によれば、伝達装置54は、腱の中間部に牽引作用を生成するように、腱近位部26を横断方向に付勢する。一実施形態によれば、伝達装置54の腱接触部87は、腱19の局所長手延在部を横断する方向に、腱近位部26を押圧し、その結果、押圧装置により伝達装置54を介して腱に印加される横断方向の作用が、腱の少なくとも中間部に牽引作用を生じさせる。
【0124】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達装置54の腱接触部87は、腱近位部26と接触しているプーリを含む。好ましくは、プーリは、伝達装置54と旋回可能に接続されている。
【0125】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達要素54は単一部品である。好ましい一実施形態によれば、用語「単一部品」は、伝達要素54内で任意の自由度が回避されることを示す。
【0126】
一実施形態によれば、伝達装置54は少なくとも1つのプランジャ54を含む。好ましくは、カップリング装置は、フレーム52に対して1直線動作自由度を有するように、プランジャ54を拘束する。
【0127】
一実施形態によれば、伝達装置54は、フレーム52に旋回可能に接続された少なくとも1つのレバー54を含む。このようにして、レバーは、フレーム52に対して1動作自由度を有するように伝達装置54またはレバー54を拘束するカップリング装置93として機能する。
【0128】
好ましくは、レバー54は、支点ジョイント90でフレーム52に旋回可能に接続される。一実施形態によれば、支点ジョイント90は、第1のレバーアーム91および第2のレバーアーム92を画定する。一実施形態によれば、第1のレバーアーム91は、入力部84を含む。一実施形態によれば、第2のレバーアーム92は、腱接触部87を含む。
【0129】
一実施形態によれば、少なくとも押圧装置53は少なくとも1つの出力部83を含み、少なくとも1つの伝達装置54は少なくとも1つの入力部84を含み、出力部83は無菌ドレープインサート73を介して直接的または間接的に押圧作用75を入力部84へ伝達する。
【0130】
一実施形態によれば、押圧装置53の出力部83は、押圧作用75を伝達装置54の入力部84に直接伝達する。好ましくは、押圧装置53の出力部83は、伝達面85を含み、伝達装置54の入力部84は、伝達対向面86を含み、伝達面85は、送信対向面86に選択的に載置され、押圧作用75を伝達対向面86に伝達する。
【0131】
一実施形態によれば、押圧装置53の出力部83は、無菌バリア55を介して、好ましくは無菌ドレープインサート73を介して、押圧作用75を伝達装置54の入力部84に間接的に伝達する。好ましくは、押圧装置53の出力部83は伝達面85を含み、無菌ドレープインサート73は伝達対向面86を含み、伝達面85は伝達対向面86に選択的に載置され、押圧作用75を無菌ドレープインサート73の伝達対向面86に伝達する。好ましくは、無菌ドレープインサート73は、別の伝達面85を含み、伝達装置54は、別の伝達対向面86を含み、別の伝達面85は、別の伝達対向面86に選択的に載置され、押圧作用75を伝達装置54の入力部84の別の伝達対向面86に伝達する。
【0132】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達面85と少なくとも1つの伝達対向面86のうちの少なくとも一方はカムである。好ましくは、少なくとも1つの伝達面85と少なくとも1つの伝達対向面86のうちの他方は、押圧作用75を伝達するためにカムと協働する従動子である。
【0133】
一実施形態によれば、少なくとも1つの別の伝達面85と少なくとも1つの別の伝達対向面86のうちの少なくとも一方はカムである。好ましくは、少なくとも1つの別の伝達面85と少なくとも1つの別の伝達対向面86のうちの他方は、押圧作用75を伝達するためにカムと協働する従動子である。
【0134】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達面85と少なくとも1つの伝達対向面86のうちの少なくとも一方は、低摩擦材料製、好ましくはテフロン(登録商標)製の動作面を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達面85と少なくとも1つの伝達対向面86のうちの少なくとも一方は、金属製、好ましくは摩擦を減らすために研磨された金属製の動作面を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの別の伝達面85と少なくとも1つの別の伝達対向面86のうちの少なくとも一方は、低摩擦材料製、好ましくはテフロン(登録商標)製の動作面を含む。低摩擦材料のおかげで、伝達面85は、伝達対向面86上で摩耗することなく滑ることができる。
【0135】
一実施形態によれば、前記無菌バリアは、無菌ドレープインサートを含む。一実施形態によれば、前記無菌ドレープインサート73は、ポリマー材料製、好ましくはテフロン(登録商標)製である。
【0136】
一実施形態によれば、少なくとも弾性装置56は、フレーム52および伝達装置54とともに屈曲機構を形成する複数の弾性ブリッジ89を含む。このようにして、弾性装置56は、フレーム52に対して1動作自由度を有するように、伝達装置54を拘束するカップリング装置93として作用する。
【0137】
一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性装置56は、互いに平行に走る一対の弾性ブリッジ89を含み、弾性ブリッジ89はフレーム52および伝達装置54とともに屈曲機構を形成する。好ましくは、屈曲機構は曲げ平行四辺形である。このようにして、少なくとも1つの弾性装置56は、フレーム52に対して1直線動作自由度を有するように、伝達装置54を拘束するカップリング装置として作用する。好ましくは、一対の弾性ブリッジ89の弾性ブリッジ89は、実質的に同じ長さを有する。好ましくは、弾性ブリッジ89の長さを調整することにより、1直線動作自由度を修正することができる。
【0138】
好ましくは、弾性ブリッジ89は、伝達装置54に付勢作用76を及ぼすように撓む。
【0139】
好ましくは、弾性ブリッジ89のそれぞれは、板バネである。好ましくは、弾性ブリッジ89のそれぞれは、バネ鋼で製造される。
【0140】
一実施形態によれば、カップリング装置93は、フレーム52に対して1旋回動作自由度を有するように、伝達装置54を拘束する。好ましくは、旋回動作は、回転軸Z-Zを画定する。好ましくは、旋回動作は、回転軸Z-Zの周りで生じる。好ましくは、回転軸Z-Zは、伝達装置54の長手延在方向と平行または一致する。
【0141】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達装置54の腱接触部87は、腱近位部26を腱接触部87の周りに選択的に巻き付けるキャプスタン装置88を含む。好ましくは、腱接触部87は、キャプスタン装置88と一体形成されている。一実施形態によれば、キャプスタン装置88は、腱近位部26と接触しているカム部を含む。好ましくは、腱終端部74は、キャプスタン装置88に固定される。
【0142】
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、手術器具70の一部、好ましくは手術器具70のフレーム52の一部に接続するためのフレーム取り付け装置を含む。
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、少なくとも押圧装置53と接続するための少なくとも1つの第1の回転カップリング装置79を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の回転カップリング装置79は、押圧装置53の回転カップリング部80を受領するための少なくとも1つのカップリング座78を含む。
一実施形態によれば、無菌ドレープインサート73は、少なくとも1つの伝達要素54と接続し、押圧作用75を伝達装置54に伝達するための少なくとも1つの第2の回転カップリング装置81を含む。
【0143】
一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54と選択的に接続され、伝達装置54と一方向に係合して、押圧作用75を伝達する。
【0144】
好ましい一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54と選択的に接続され、無菌バリア55と伝達装置54との間の片側係合の装置によって押圧作用75を伝達する。言い換えれば、伝達装置54は、押圧装置53に対する引張作用の伝達を回避する。
【0145】
一実施形態によれば、押圧装置53は、伝達装置54と選択的かつ片側に接続される。このようにして、両側伝達が回避される。
【0146】
伝達装置54に片側接続された押圧装置53を設けることにより、押圧装置53のストローク、及び押圧装置53と伝達装置54との間の接触力を正確に制御することができる。
【0147】
一実施形態によれば、押圧装置53は、無菌バリア55を介して直接的または間接的に、伝達装置54に離脱可能に載置される。一実施形態によれば、押圧装置53は、無菌バリア55を介して直接的または間接的に、伝達装置54から選択的に分離できるように伝達装置54に接続される。このようにして、弾性装置56の付勢作用のおかげで、押圧装置53が伝達要素54から選択的に離脱する間、腱19への予荷重が維持される。
【0148】
一実施形態によれば、押圧装置53は、無菌バリア55と選択的に接続され、無菌バリア55と一方向に係合して、押圧作用75を伝達する。言い換えれば、無菌バリア55は、押圧装置53への引張作用の伝達を回避する。
【0149】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は複数の押圧要素53を含み、手術器具70は複数の伝達要素54を含む。好ましくは、複数の押圧要素53のうちの1つの押圧要素53は、複数の伝達要素54のうちの1つの伝達要素54に選択的に接続される。
【0150】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は複数の押圧要素53を含み、手術器具70は複数の伝達要素54を含み、複数の押圧要素53の各押圧装置53は、押圧作用75を少なくとも1つのそれぞれの伝達要素54に独立して及ぼす。言い換えれば、複数の押圧要素53の各押圧要素53は、複数の押圧要素53の他の押圧要素53から独立して移動可能である。
【0151】
好ましい一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、拮抗押圧装置153として機能する少なくとも1つの第2の押圧装置153を含む。好ましくは、第2の押圧装置または拮抗押圧装置153は、押圧装置53に対して反対に作動する。
【0152】
好ましい一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、拮抗押圧装置153に接続された少なくとも1つの第2のアクチュエータ25をさらに含む。好ましくは、スレーブマニピュレータ3は、拮抗伝達装置154として機能する第2の伝達装置154を少なくともさらに含む。好ましくは、第2の伝達装置154は、伝達装置54に対して反対に作動する。好ましくは、スレーブマニピュレータは、第2の力センサをさらに含む。一実施形態によれば、第2のセンサは、少なくとも1つの拮抗押圧装置153に対する接触力を検出する。一実施形態によれば、第2のセンサは位置検知システム72として機能する。
【0153】
好ましい一実施形態によれば、手術器具70は、拮抗腱20として機能する少なくとも1つの第2の腱20と、第2の伝達装置154に取り付けられた第2の弾性装置156とを含み、手術器具70がスレーブマニピュレータ3に取り付けられるときはいつでも、拮抗押圧装置153は、拮抗伝達装置153と離脱可能かつ選択的に接続して、無菌バリア55を介して拮抗伝達装置154に押圧作用を伝達する。好ましくは、第2の腱20は、腱19に対して反対に作動する。
【0154】
好ましくは、第2のセンサ72は、拮抗押圧装置153と拮抗伝達装置154との間の接触力を検出する。好ましくは、拮抗弾性装置156は、拮抗腱20に牽引作用を及ぼすように、拮抗伝達装置154を拮抗押圧装置153から離れるように付勢する。一実施形態によれば、腱19および拮抗腱20は、リンク6;7;8;43に反対の動作を提供する。
【0155】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、拮抗押圧装置53、153として機能する少なくとも一対の押圧装置53、153を含む。一実施形態によれば、手術器具70は、拮抗伝達装置54、154として機能する少なくとも一対の伝達装置54、154を含む。一実施形態によれば、手術器具70は、拮抗腱19、20として機能する少なくとも一対の腱19、20を含み、リンク6、7、8、43に反対の動作を提供する。好ましくは、一対の拮抗押圧装置53、153の各押圧装置53または153は、一対の拮抗腱19、20のうちのそれぞれの腱19または20に牽引作用を及ぼして、リンク6、7、8、43に反対の動作を提供するために、一対の拮抗伝達装置54、154のうちのそれぞれの伝達装置54または154に選択的に接続され、押圧作用75をそれぞれの伝達装置54または154に伝達する。
【0156】
一実施形態によれば、一対の拮抗押圧装置53、153は、一対の拮抗伝達装置54、154に独立して離脱可能に接続されるが、一対の拮抗腱19、20は機械的平衡にあり、予荷重が掛けられている。
【0157】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、複数の押圧装置53を含む。好ましくは、複数の押圧装置は、正確な数の6つの押圧装置53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6である。好ましくは、複数の押圧装置は、少なくとも1つの伝達装置54、好ましくは数が6つのそれぞれの伝達要素に押圧作用を及ぼすように指定された正確な数の6つの押圧要素53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6である。
【0158】
好ましくは、各押圧装置53は、押圧軸p-pに沿って作用する。
【0159】
好ましくは、押圧軸p-pは直線である。
【0160】
例えば
図6に示される一実施形態によれば、複数の押圧装置は、各々がそれぞれの無菌ドレープインサート73を介してそれぞれの伝達要素54に押圧軸p-pに沿って押圧作用を及ぼすように設計された正確な数の6つの押圧要素53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6である。
【0161】
一実施形態によれば、押圧軸p-pは、医療器具のシャフトのシャフトr-rの長手方向に平行である。
【0162】
一実施形態によれば、複数の押圧要素53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6は、長手軸z-zまたはモータボックス軸z-zの周りに対称的に配置される。
【0163】
一実施形態によれば、複数の押圧要素53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6は、長手軸z-zまたはモータボックス軸z-zの周りに配置され、モータボックス軸z-zに直交する円周方向に沿って互いに等間隔に配置される。
【0164】
一実施形態によれば、モータボックス69は、モータボックス69の長手延在軸、またはモータボックス軸z-zを画定する。
【0165】
好ましくは、モータボックス軸z-zは、ロール軸として作用する。言い換えれば、医療器具70は、モータボックス軸z-zの周りを回転するように設計されている。
【0166】
好ましい一実施形態によれば、各押圧軸p-pは、モータボックス軸z-zに平行である。好ましくは、すべての押圧軸p-pは、モータボックス軸z-zから等間隔に配置される。
【0167】
一実施形態によれば、シャフトの長手軸r-rは、モータボックス軸z-zの延長部と一致し、逆もまた同様である。
【0168】
一実施形態によれば、無菌バリア55は、複数の無菌ドレープインサート73を含む。
【0169】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ25は、押圧軸p-pに沿った線形ナットネジを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ25は回転モータを含む。
【0170】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ25は、手術器具70のフレーム52に接続するスレーブマニピュレータ3のアクチュエータコンパートメント69部分に配置される。
【0171】
一実施形態によれば、第1のリンク6および第2のリンク7は、第1のリンク6と第2のリンク7との間に自由度を提供する第1のジョイント14に接続される。
【0172】
一実施形態によれば、第2のリンク7および第3のリンク8は、第2のリンク7と第3のリンク8との間に自由度を提供する第2のジョイント17に接続される。
【0173】
一実施形態によれば、手術器具70は、自由度を動かすための少なくとも1つの腱19を含む。
【0174】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱19は、少なくとも第2のリンク7に対して第3のリンク8を動かすのに適している。一実施形態によれば、手術器具70は、自由度を動かすための少なくとも一対の腱19、20を含む。一実施形態によれば、一対の腱19、20は、少なくとも第2のリンク7に対して第3のリンク8を動かすのに適している。
【0175】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、第2のジョイント17の少なくとも第2のリンク8に接続された別の第3のリンク43を含む。
【0176】
好ましい一実施形態によれば、腱19は、ジョイントサブアセンブリ5に配置されていない少なくとも1つのアクチュエータ25に接続されるのに適した腱近位部26と、第3のリンク8に固定された腱遠位部27と、腱近位部26と腱遠位部27との間に延在する腱中間部28とを含む。
【0177】
一実施形態によれば、一対の腱は、1つの腱として機能するように、同じリンクに固定されたそれらの腱遠位部27を有する。言い換えると、一対の腱は、単一の腱として平行に機能するように、同じリンクに固定されている。一実施形態によれば、一対の腱は、単一の腱として平行にするように、それらの腱遠位部27を共有する。一実施形態によれば、単一の腱として機能する一対の腱は、一体形成されている。一実施形態によれば、腱19、20、21、22は、単一の腱として機能するのに適した第1の一対の腱19、20を含む。一実施形態によれば、腱19、20、21、22は、単一の腱として機能するのに適した第2の一対の腱21、22を含む。
【0178】
一実施形態によれば、伸縮性ドレープ77は、手術器具70のフレーム52に対して、伸縮性ドレープ77の主面に実質的に直交する方向に、10ミリメートル以下の所定の変位で移動可能である。好ましくは、伸縮性ドレープ77の主面は、伸縮性ドレープ77にわたる細菌汚染を防止するのに適している。
【0179】
一実施形態によれば、伸縮性ドレープ77は、10ミリメートル以下の所定の変位で伸縮可能である。一実施形態によれば、伸縮性ドレープ77は、使用時に、所定の変位のために引き伸ばされるのに適している。好ましくは、伸縮性ドレープ77の主面は、伸縮性ドレープ77にわたる細菌汚染を防止するのに適している。
【0180】
一実施形態によれば、伸縮性ドレープ77は、伸縮性ドレープ77の主面に実質的に直交する方向に10ミリメートル以下の所定の変位で手術器具70のフレーム52に対して伸縮可能および/または移動可能である。
【0181】
一実施形態によれば、伸縮性ドレープ77は、使用時に、所定の変位のために引き伸ばされるのに適している。好ましくは、伸縮性ドレープ77は、使用時に、弾性的に伸ばされるのに適しており、永久変形、例えば塑性変形を回避する。
【0182】
一実施形態によれば、伝達装置54が押圧装置5の近くにあるとき、手術器具70のフレーム52に対する伝達装置54のストロークまたは変位は10ミリメートル以下である。
【0183】
一実施形態によれば、伝達装置54が押圧装置53の近くにあるとき、手術器具70のフレーム52に対する伝達装置54の腱接触部87の直線ストロークまたは直線変位は、10ミリメートル以下である。
【0184】
一実施形態によれば、伝達装置54が押圧装置53の近くにあるとき、手術器具70のフレーム52に対する伝達装置54の腱接触部87の旋回ストロークまたは旋回変位は、10ミリメートル以下である。好ましくは、伝達装置54の腱接触部87は、伝達出力部として作用する。
【0185】
一実施形態によれば、伝達装置54は、腱19の所定の引き出された長さを選択的に引き出す。好ましくは、所定の引き出された長さは、10ミリメートル以下である。一実施形態によれば、伝達装置54は、腱19の所定のリリースされた長さを選択的にリリースする。好ましくは、所定のリリースされた長さは、10ミリメートル以下である。
【0186】
一実施形態によれば、付勢作用76は、0.1ニュートン~5ニュートンに含まれる値を有する。好ましくは、付勢作用76は、0.1ニュートン~5.0ニュートンの範囲に含まれる値を有する。
【0187】
一実施形態によれば、付勢作用76は、腱の破壊荷重の10%以下の値を有する。好ましくは、付勢作用76は、腱近位部26の破壊荷重の10%以下の値を有する。付勢作用76は、腱中間部28の破壊荷重の10%以下の値を有する。
【0188】
好ましい一実施形態によれば、腱19は、腱案内要素94または腱戻り要素94上に配置される。好ましい一実施形態によれば、腱案内要素94は、滑り面である。好ましい一実施形態によれば、腱案内要素94は、アイドルプーリである。好ましい一実施形態によれば、腱案内要素94は、ボールベアリングである。好ましくは、腱案内要素94は、フレーム52に取り付けられ、片持ち状に突出して腱に接触する。
【0189】
好ましい一実施形態によれば、伝達対向面86は平坦面である。好ましくは、伝達対向面86は、押圧装置54の伝達面85に対して平坦面を向けている。
【0190】
好ましい一実施形態によれば、腱19は、伝達装置54に固定される。例えば、腱近位部は、伝達装置54の腱接触部87、例えば、伝達装置54のプランジャに接着される。好ましくは、各腱近位部は、伝達装置54の各プランジャに固定される。好ましい一実施形態によれば、腱近位部26は、伝達装置54に固定される。
【0191】
好ましい一実施形態によれば、腱接触部87は、動作中の腱の摩耗および伝達装置54に対する摩擦を回避するための突出面95である。一実施形態によれば、突出面95は、腱に接触するためにフレーム52から突出している。
【0192】
好ましい一実施形態によれば、カップリング装置93は、フレーム52に対して1直線動作自由度を有するように、伝達装置54を拘束する。
【0193】
好ましい一実施形態によれば、カップリング装置93は、ブッシュまたはリニアベアリングである。好ましい一実施形態によれば、リニアベアリングは、軸の直線動作における低い摩擦を保証しながら、軸外力によって生じるねじりモーメントを保持することができる。
【0194】
一実施形態によれば、伝達装置54の腱接触部87は、腱近位部26の一部と接触する、好ましくはドーム形の、少なくとも1つの突出部95を含む。好ましくは、腱近位部26は、突出部95の湾曲面、例えば弾性装置に向かって突出する湾曲面の周りに戻される。好ましくは、腱近位部26は、腱接触部87に強固に取り付けられる。好ましくは、弾性装置56は、腱近位部を戻す弾性装置に向かって突出する湾曲面から離れて腱接触部87を付勢する。
【0195】
一般的な一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれか1つに記載の手術器具70が提供される。
【0196】
一般的な一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのスレーブマニピュレータ3と、前述の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの手術器具70とを含むスレーブアセンブリが提供される。
【0197】
手術器具70を制御する方法は以下に記載される。
【0198】
一般的な一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3に取り付けられた手術器具70を制御する方法は、以下のステップを含む。
【0199】
a:アクチュエータ位置増分コマンドを計算または受信する。
【0200】
b:センサ71、72から押圧装置53の接触力値を読み取るまたは検出する。
【0201】
c:上記接触力値を力閾値と比較して、押圧装置53と伝達装置54との間の接触を検出する。
【0202】
d:力値が第1の力閾値以上である場合、
【0203】
アクチュエータ位置増分コマンドを進めるようにアクチュエータ25に命令する。
【0204】
e:力値が第1の力閾値を下回っている場合、
【0205】
力値が第1の力閾値を超えるまで、または最大アクチュエータ位置増分に到達するまでアクチュエータに前進するように命令し、アクチュエータ位置補正の合計を保存する。
【0206】
好ましい一操作方法によれば、段階dおよびeは交互に実行される。
【0207】
好ましい一動作モードによれば、本方法は、アクチュエータの位置に関するフィードバックによりアクチュエータの動作を制御することを可能にする。
【0208】
好ましい一動作モードによれば、本方法は、所定の第1の閾値に対してセンサ71、72によって検出された接触力値を評価し、次のステップのいずれかを実行する:検出された力値が第1の力閾値以上である場合、アクチュエータ位置増分コマンドを進めるようにアクチュエータ25に命令する;または、力値が第1の力閾値を下回る場合、力値が第1の力閾値を上回るまで、または最大アクチュエータ位置増分に達するまで前進するようにアクチュエータに命令し、アクチュエータ位置補正の合計を保存する。
【0209】
可能な動作モードによれば、aからcまでのステップは、上記の順序に従って連続して実行される。可能な動作モードによれば、cからdまでのステップは、上記の順序に従って連続して実行される。可能な動作モードによれば、cからeまでのステップは、上記の順序に従って連続して実行される。
【0210】
一動作モードによれば、手術器具70を制御するための方法は、以下のさらなるステップのうちの少なくとも1つを含むが、またすべてを含む。
【0211】
f:アクチュエータ25に、引込ホームポジションに移動するように命令する。
【0212】
g:初期アクチュエータ位置を保存する。
【0213】
h:手術器具70をスレーブマニピュレータ3に取り付ける。
【0214】
i:センサ71、72から押圧装置53の力値を読み取る。
【0215】
j:補助力値が、押圧装置と伝達装置との間の接触が確立されたことを示す第1の力閾値未満である間、アクチュエータ25に前進するように命令する。
【0216】
k:最終アクチュエータ位置を保存する。
【0217】
l:最終アクチュエータ位置と初期アクチュエータ位置との間の差を含む器具のホームポジションを計算する。
【0218】
好ましい一動作モードによれば、fからlまでのステップはすべて、ステップaの前に実行される。
【0219】
好ましい一動作モードによれば、fからlまでのステップの少なくとも1つは、ステップaの前に実行される。
【0220】
可能な一動作モードによれば、手術器具70がスレーブマニピュレータ3に取り付けられた後、スレーブマニピュレータのアクチュエータは、力閾値よりも大きな力を伝達要素54へ印加する準備ができるように、手術器具70の伝達要素と接触して配置される。前記方法によれば、手術器具がスレーブマニピュレータに取り付けられた後、アクチュエータは、伝達要素54の位置とは無関係に、伝達要素54と接触して配置される。
【0221】
前記方法と弾性装置56との協働により、前記方法によれば、アクチュエータ25が腱19に牽引力を与える準備ができるように、伝達要素54と接触して配置されることが保証される。
【0222】
一動作モードによれば、手術器具70を制御するための方法は、前述の実施形態のいずれか1つに係るロボット手術アセンブリ1を提供するステップを含む。
【0223】
可能な一動作モードによれば、アクチュエータ25は、腱19のたるみまたは伸びに応じて全アクチュエータ位置補正を進めるので、アクチュエータ位置増分コマンドは常に、押圧装置53が伝達装置54と接触するように、アクチュエータ位置から開始して実行される。
【0224】
前記方法のおかげで、アクチュエータ位置増分コマンドは、腱のたるみまたは伸びによるいかなる動作損失なしに、接続されたジョイント動作をもたらす。
【0225】
一動作モードによれば、前記方法は、接触力が検出されたとき、押圧装置53の位置に関する情報を保存するステップを含む。好ましくは、ステップは、センサ72または位置検知システム72によって実行される。
【0226】
一動作モードによれば、前記方法は、接触力が検出されたときに、所定の基準位置に対する押圧装置53の位置を決定するステップを含む。好ましくは、前記ステップは、制御ユニット4によって実行される。
【0227】
一動作モードによれば、前記方法は、押圧装置53の自由ストロークの長さを決定するステップを含む。
【0228】
一動作モードによれば、前記方法は、接触力が検出されたときに、所定の基準位置に対する伝達装置54の位置を決定するステップを含む。好ましくは、前記ステップは、制御ユニット4によって実行される。
【0229】
個別にまたは組み合わせて提供される上記の構成により、適用可能な場合、特定の実施形態では、上記で開示された時には対照的なニーズを満たし、前述の利点を得ることが可能であり、特に:
【0230】
手術器具の小型化が提供される。
【0231】
器具がマスタースレーブシステムから取り外されたとき、器具の腱は正の張力を維持し、腱が遠位に接続されている遠位関節サブアセンブリ部材の再配置によって腱のたるみが生じる可能性があるため、予張力部材は腱のたるみを取る。
【0232】
腱をガイド部材上の所定の位置に保つためにケーブルに予張力を与えることにより、腱のたるみを回避し、腱を捕捉しないガイド部材上に腱を配置することを可能にする、腱駆動システムが提供される。
【0233】
腱のたるみを回避し、したがって、プーリ、ピン、リンク部材などの機械的伝動装置上に腱を配置して安定した腱経路を維持できる腱駆動システムが提供される。
【0234】
腱のたるみを回避し、したがって追加の摩擦を導入するボーデン(Bowden)ケーブルなどのシース内の腱の誘導を回避できる腱駆動システムが提供される。
【0235】
腱のたるみを回避し、したがってポリマー腱などの、負荷張力下でクリープまたは伸びる傾向のある腱を使用することができる腱駆動システムが提供される。
【0236】
腱のたるみを回避し、したがって腱のたるみを取るための中間動作を必要とせずに、遠位関節接合アセンブリに動作を即座に伝達することを可能にする腱駆動システムが提供される。
【0237】
医療器具とマスタースレーブシステムとの間に無菌バリアを提供するように適合された医療器具を駆動するためのマスタースレーブシステムが提供され、無菌バリアは、無菌バリアを通る汚染をより良好に防ぐための穴のない連続シートである。
【0238】
マスタースレーブシステムのアクチュエータから腱に力を伝達するように適合された伝達装置を備える遠位関節ジョイントサブアセンブリを含む医療器具用の腱駆動システムが提供され、伝達装置は無菌バリアを介してアクチュエータに接続するようにさらに適合される。
【0239】
マスタースレーブシステムのアクチュエータから腱へ力を伝達するように適合された伝達装置と機械的に平行な腱張力要素、例えば弾性要素を備える遠位関節ジョイントサブアセンブリを含む医療器具の腱駆動システムが提供される。
【0240】
アクチュエータが腱に作用していないときにのみ腱に張力を与え、アクチュエータが腱に作用しているときにはアクチュエータから腱への力伝達経路から除外される張力要素が提供される。
【0241】
アクチュエータから腱への力伝達経路から除外される張力要素を提供することにより、アクチュエータが腱に作用し、アクチュエータから腱への力伝達経路の剛性は、張力要素の介入するコンプライアンスの結果として低下しない。
【0242】
アクチュエータから腱への力伝達経路の剛性の低下を回避することにより、より硬い駆動トレインを備えた遠位関節ジョイントサブアセンブリの摩擦効果を克服することにより、遠位関節ジョイントサブアセンブリの動作精度を向上させることができる。
【0243】
医療器具を駆動するためのマスタースレーブシステムにおいて、アクチュエータと一方向に係合するように適合された伝達装置が提供される。
【0244】
有利なことに、アクチュエータと器具伝達装置間のこのような一方向接続には、アクチュエータと伝達装置の間に閉じ込められたルースドレープのような単純な連続無菌バリアを使用できるという利点があり、孔および可動部品を有する無菌バリアの使用を回避する。
【0245】
有利なことに、アクチュエータと器具伝達装置との間の一方向接続と、伝達装置と平行な張力要素との協調は、アクチュエータから即時の動作を必要とせずに張力要素によって腱のたるみを取ることができるという顕著な利点を有し、したがってアクチュエータの制御とそのアクチュエータ応答時間の要件を簡素化する。
【0246】
さらに、アクチュエータと、アクチュエータと両方向には接続されていない伝達装置である機器伝達装置との間の一方向接続;言い換えると、アクチュエータは、伝達装置と接触しながら第1の方向に移動する際に伝達装置に力作用を印加し、補助伝達装置と接触しながら第1の方向とは反対の第2の方向に移動する際に伝達装置への力を解放する。
【0247】
第2の反対方向に移動することにより、アクチュエータが伝達装置との接触を完全に解除することができる両方向接続装置の欠如。
【0248】
さらに、両方向接続の欠如、および伝達装置と平行な張力要素の協働、伝達装置がアクチュエータとの接触を解除して、腱のたるみ、例えば、腱が遠位方向に接続される遠位関節ジョイントサブアセンブリ部材の再配置から生じるたるみを取る装置。
【0249】
アクチュエータと医療器具内の伝達装置との間で交換される力を、無菌バリアを越えて検知し、アクチュエータの動作を制御するマスタースレーブシステム内のプロセッサに腱の張力に関連する力情報を送信できる検知システムが提供される。
【0250】
腱の張力に直接関連する情報を収集する力検知システムとアクチュエータの動作を制御するプロセッサとの連携により、プロセッサはアクチュエータに即時の動作を命令して、腱のたるみ、例えば、腱が遠位に接続される遠位関節ジョイントサブアセンブリ要素の再配置から生じるたるみを捕らえることができる。
【0251】
当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、付随するニーズを満たすために、上記の実施形態に対して多くの変更および適応を行ってもよく、または要素を機能的に均等な要素に置き換えてもよい。
(発明の開示)
(項目1)
ロボット手術アセンブリ(1)であって、
スレーブマニピュレータ(3)を含み、前記スレーブマニピュレータ(3)は、
アクチュエータ(25)と、
前記アクチュエータ(25)に接続された少なくとも1つの押圧装置(53)と、
前記押圧装置(53)上の接触力を検出する少なくとも1つのセンサ(71、72)と、
位置検知システムと、
無菌バリア(55)と、
前記センサに関する情報を受信して前記アクチュエータ(25)を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット(4)と、
前記スレーブマニピュレータ(3)によって操作され、前記スレーブマニピュレータに取り外し可能に取り付けられ、前記無菌バリア(55)によって前記スレーブマニピュレータ(3)から分離された手術器具(70)と、
を含み、
前記手術器具(70)は、
フレーム(52)と、
前記フレーム(52)に対してジョイント(14;17)で関節接続するリンク(6;7;8;43)と、
前記リンク(6;7;8;43)に固定され、腱近位部(26)と腱遠位部(27)とを有し、前記アクチュエータ(25)に接続された腱(19)と、
前記腱(19)に牽引作用を及ぼすために、前記腱近位部(26)と接触する少なくとも1つの伝達装置(54)であって、前記フレーム(52)に対して1動作自由度を有するようにカップリング装置(93)によって拘束される少なくとも1つの伝達装置(54)と、
前記器具フレーム(52)と前記伝達装置(54)との間に取り付けられた少なくとも1つの弾性装置(56)と、
をさらに含み、
前記手術器具(70)が前記スレーブマニピュレータに取り付けられるときはいつでも、
前記少なくとも1つの押圧装置(53)は、前記伝達装置(54)と離脱可能かつ選択的に接続し、前記無菌バリア(55)を介して前記伝達装置(54)に押圧作用を伝達し、
前記少なくとも1つのセンサ(71、72)は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間の接触力を検出し、
前記少なくとも1つの弾性装置(53)は、前記腱(19)に牽引作用を及ぼすように、前記少なくとも1つの伝達装置(54)を前記押圧装置(53)から離れるように付勢する、
ロボット手術アセンブリ(1)。
(項目2)
前記スレーブマニピュレータ(3)は、
拮抗押圧装置(153)として機能する少なくとも1つの第2の押圧装置(153)と、
前記拮抗押圧装置(153)に接続された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(25)と、
拮抗伝達装置(154)として機能する少なくとも1つの第2の伝達装置(154)と、
第2の力センサ(72)と、
を含み、
前記手術器具(70)は、拮抗腱(20)として作用する少なくとも1つの第2の腱(20)と、前記第2の伝達装置(154)に取り付けられた第2の弾性装置(156)とを含み、前記手術器具(70)が前記スレーブマニピュレータ(3)に取り付けられるときはいつでも、前記拮抗押圧装置(153)は前記拮抗伝達装置(153)と離脱可能かつ選択的に接続して、前記無菌バリア(55)を介して前記拮抗伝達装置(154)に押圧作用を伝達する、および/または、
前記第2のセンサ(72)は、前記拮抗押圧装置(153)と前記拮抗伝達装置(154)との間の接触力を検出する、および/または、
前記拮抗弾性装置(156)は、前記拮抗腱(20)に牽引作用を及ぼすように、前記拮抗伝達装置(154)を前記拮抗押圧装置(153)から離れるように付勢する、および/または、
前記腱(19)および前記拮抗腱(20)は、リンク(6;7;8;43)に反対の動作を提供する、
項目1に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目3)
前記押圧装置(53)は、少なくとも1つの伝達装置(54)と選択的に接続して、前記無菌バリアと前記伝達装置(54)との間の片側係合の装置によって前記押圧作用(75)を伝達する、
項目1または2に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目4)
前記無菌バリア(55)は、伸縮性無菌ドレープ(77)を含み、前記押圧装置(53)が前記伝達装置(54)に接続して、前記押圧作用(75)を伝達する場合、前記伸縮性無菌ドレープ(77)の一部は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間に閉じ込められる、
項目1~3のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目5)
前記無菌バリア(55)は、伸縮性無菌ドレープ(77)と、前記ドレープ(77)に取り付けられた無菌ドレープインサート(73)とを含み、前記押圧装置(53)は、前記伝達装置(54)に接続して前記押圧作用(75)を伝達する際に、前記無菌ドレープインサート(73)は、前記押圧装置(53)と前記伝達装置(54)との間に閉じ込められる、
項目1~4のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目6)
前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)に対して、1直線動作自由度を有するように前記伝達装置(54)のうちの1つを拘束し、および/または、
前記弾性装置(56)は、アキシャルスプーリングを含む、
項目1~5のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目7)
前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)に対して1旋回動作自由度を有するように前記伝達装置(54)を拘束する、および/または、
前記弾性装置(56)は、トーションスプーリングを含む、
項目1~6のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目8)
前記少なくとも1つの伝達装置(54)は、
カム面、
ボールベアリング、
前記フレーム(52)に旋回可能に接続されたレバー(54)、
プランジャ(54)、
腱取付面、
のうちの少なくとも1つを含む、
項目1~7のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目9)
前記弾性装置(56)および/または前記カップリング装置(93)は、前記フレーム(52)から前記伝達装置(54)まで延びる複数の屈曲要素(89)を含む、
項目1~8のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目10)
前記伸縮性ドレープ(77)は、前記伸縮性ドレープ(77)の主面に実質的に直交する方向に10ミリメートル以下の所定の変位で、手術器具(70)の前記フレーム(52)に対して伸縮可能および/または移動可能である、
項目1~9のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目11)
前記伝達装置(54)は、前記腱(19)の前記中間部分に牽引作用を生じさせるように、前記腱近位部(26)を横方向に付勢する、および/または、
前記伝達装置(54)の前記腱接触部分(87)は、前記腱(19)の局所長手延在部を横断する方向に前記腱近位部(26)を押し、その結果、前記伝達装置(54)を介して前記押圧装置により前記腱に加えられるこのような横方向の作用が、前記腱(19)の少なくとも前記中間部分(28)に牽引作用を生じさせる、および/または、
前記アクチュエータは、前記腱(19)のたるみまたは伸びに応じて全アクチュエータ位置補正を進め、その結果、前記押圧装置(53)が前記伝達装置(54)と接触するように、アクチュエータ位置増分コマンドがアクチュエータ位置から開始するよう常に実行される、
項目1~10のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目12)
スレーブマニピュレータ(3)に取り付けられた手術器具(70)を制御する方法であって、
a アクチュエータ位置増分コマンドを計算または受信するステップと、
b 前記センサ(71、72)から前記押圧装置(53)の接触力値を読み取るステップと、
c 前記接触力値を力閾値と比較して、前記押圧装置と前記伝達装置との間の接触を検出するステップとを含み、
力値が前記第1の力閾値以上である場合、
次に、前記アクチュエータ位置増分コマンドを進めるように前記アクチュエータ(25)に命令するステップ、
前記力値が第1の力閾値を下回る場合、
次に、前記力値が前記第1の力閾値を超えるまで、または最大アクチュエータ位置増分に到達するまで進めるようにアクチュエータに命令し、合計アクチュエータ位置補正を保存するステップ、
を含む方法。
(項目13)
前記ステップaの前に、
引込ホームポジションに移動するようにアクチュエータ(25)に命令するステップと、
初期アクチュエータ位置を保存するステップと、
手術器具(70)をスレーブマニピュレータ(3)に取り付けるステップと、
前記センサ(71、72)から前記押圧装置(53)の力値を読み取るステップと、
補助力の値が、前記押圧装置と前記伝達装置との間の接触が確立されたことを示す第1の力閾値を下回っている間に、前記アクチュエータ(25)に前進するように命令するステップと、
最終アクチュエータ位置を保存するステップと、
前記最終アクチュエータ位置と前記初期アクチュエータ位置との間の差を含む器具のホームポジションを計算するステップをさらに含む、
項目12に記載の方法。
【符号の説明】
【0252】
1 ロボット顕微手術アセンブリ
2 マスターツール
3 スレーブまたはスレーブマニピュレータ
4 制御ユニット
5 ジョイントサブアセンブリ
6 第1のリンク
7 第2のリンク
8 第3のリンク
14 第1のジョイント
17 第2のジョイント
19 腱
20 拮抗腱
21,22 第2の対の腱
25 アクチュエータ
26 腱近位部
27 腱遠位部
28 腱中間部
29 患者
30 外科医
43 別の第3のリンク
51 シャフト
52 フレーム
53 押圧装置
53.1、53.2、53.3、53.4、53.5、53.6 押圧装置の押圧要素
54 伝達装置
55 無菌バリア
56 弾性装置または弾性デバイス
58 アクチュエータ駆動ユニット
59 第1のコマンド信号
60 第2のコマンド信号
61 管状要素接続部
69 モータボックスまたはモータコンパートメント
70 医療器具または手術器具または器具
71 センサ
72 位置検出システム
73 無菌ドレープインサート
74 腱終端部
75 押圧作用
76 付勢作用
77 無菌バリアの伸縮性ドレープ
78 回転カップリング座
79 第1の回転カップリング装置
80 回転カップリング部
81 第2の回転カップリング部
83 押圧装置の出力部
84 伝達装置の入力部
85 伝達面
86 伝達対向面
87 腱接触部
88 キャプスタン部
89 弾性装置の曲げ要素または弾性ブリッジ
90 支点ジョイント
91 第1のレバーアーム
92 第2のレバーアーム
93 カップリング装置
94 腱戻り要素または腱誘導要素
95 突出面
153 拮抗押圧装置
154 拮抗伝達装置
156 拮抗弾性装置
p-p 押圧方向または押圧軸
z-z モータボックス軸またはモータボックスの長手延在軸
Z-Z 回転軸
r-r シャフトの長手方向