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特許7228924圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/045 20230101AFI20230217BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20230217BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20230217BHJP
【FI】
H01L41/257
G01N21/3563
H01L41/193
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021100491
(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公開番号】P2022013753
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】109122661
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512095381
【氏名又は名称】馗鼎奈米科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】李 志勇
(72)【発明者】
【氏名】陳 安祿
(72)【発明者】
【氏名】江 鴻展
(72)【発明者】
【氏名】蔡 柏帆
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-258216(JP,A)
【文献】特開2016-219687(JP,A)
【文献】特開2017-152494(JP,A)
【文献】特開2012-103071(JP,A)
【文献】特開2003-098073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0211878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/257
G01N 21/3563
H01L 41/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電フィルムの透過率初期値を取得するために、前記圧電フィルムにおいて工程前検出ステップを行うように検出装置を用いること、
透過率情報を取得するために、前記圧電フィルムの分極工程中に、非接触方式で前記圧電フィルムの前記検出装置を用いることにより、前記圧電フィルムにおいて検出ステップを行うこと、前記検出装置は、第1の波長赤外線検出器と、第2の波長赤外線検出器と、を備え、前記検出ステップを行うことは、前記圧電フィルムを同時に検出するために、前記第1の波長赤外線検出器と前記第2の波長赤外線検出器を用いることを含む、
前記圧電フィルムの分極程度を判定するために、前記透過率情報を用いて判定ステップを行うこと、前記判定ステップを行うことは、前記透過率情報に従って前記透過率初期値の変化傾向に基づき、前記圧電フィルムの前記分極程度を判定することを更に含む
圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法。
【請求項2】
前記検出装置は、複数の赤外線検出器を更に備え、前記検出ステップを行うことは、前記圧電フィルムの複数の領域の複数の透過率をそれぞれ検出するために、前記複数の赤外線検出器を用いることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧電フィルムは、有機圧電フィルムである請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、前記圧電フィルムの分極品質を判定するために、前記圧電フィルムの前記複数の領域の前記複数の透過率の間の差分を用いることを含む請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出ステップを行った後に、前記圧電フィルム前記透過率情報をコントロールセンタに送信することを更に含み、前記コントロールセンタは前記透過率情報に従って前記判定ステップを行う請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コントロールセンタは、前記圧電フィルムの前記分極程度に従って、前記分極工程の少なくとも1つの工程パラメータにおいて調整ステップを行う請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記調整ステップを行うことは、前記分極工程中に、前記分極工程の分極電圧を調整すること、及び/又は前記圧電フィルムの分極時間を調整することを含む請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電材料の分極技術に関し、特に、圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料におけるパワードメインの極性方向は、規則性がなく、互いに打ち消し合うことが多く、圧電材料全体に極性がなく、更に材料自体の圧電特性を呈することができないことを招きやすい。従って、通常、圧電材料のパワードメインの方向を一致させて圧電特性を呈するように、圧電材料に対して分極工程を行う必要がある。
【0003】
非接触式の分極技術では、圧電フィルムにおける分子を電界分布に沿って整然に配列させ、更に圧電フィルムに圧電特性を発現させるように、高電界で分極する。コロナ放電(corona discharge)が生成しやすく、且つ分極工程を行うために必要な高電界環境を提供できるため、現在、コロナ放電技術を利用して電子源を提供している。コロナ放電技術を採用した一部の分極デバイスにおいて、電子は、先にネガティブな高電圧グリッド(grid)を経てから分極される表面に到達する。
【0004】
圧電フィルムの分極効果を把握するために、圧電フィルムの分極品質を検知する。圧電フィルムの分極品質を検知する時、通常、圧電フィルムの分極工程が完了した後に、検知ヘッドにより圧電フィルムを押圧しながら、圧電フィルムが押圧された後に生じた電圧値を測定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような検知方法は、圧電フィルムの分極工程が完了した後にのみ行うことができ、分極工程中に圧電フィルムの分極品質をオンラインでリアルタイムに検知することができない。このようにして、分極工程中に圧電フィルムの分極程度をリアルタイムに把握することができないため、分極工程中に分極工程のパラメータをリアルタイムに調整することができず、更に圧電フィルムの分極品質を効果的に高めることができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、圧電フィルムの分極工程中に、非接触方式で圧電フィルムの静電情報又は透過率情報をオンラインでリアルタイムに検出することができる圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を提供することにある。オンライン操作者又はデバイスのコントローラは、静電情報又は透過率情報に基づいて圧電フィルムの分極程度を判定することができる。それにより、分極デバイスの効果及び分極される材料自体の不均一性又は欠陥を早期に把握して、可能な限りに早く改善することに寄与することができる。
【0007】
本発明の別の目的は、分極工程中に圧電フィルムの分極品質を判定することができ、それによって圧電フィルムの歩留まりを予測することができる圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を提供することにある。
【0008】
本発明の更に別の目的は、圧電フィルムの分極程度をオンラインでリアルタイムに判定することができる圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を提供することにある。従って、オンライン操作者又はデバイスのコントローラは、判定結果に基づいて分極工程のパラメータをリアルタイムに調整することができ、更に圧電フィルムの分極品質を高めることができる。
【0009】
本発明の上記目的に基づき、圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を提案する。この方法において、圧電フィルムの分極工程中に、検出装置により非接触方式で圧電フィルムに対して検出ステップを行うことにより、圧電フィルムの静電情報又は透過率情報を得て、圧電フィルムの分極程度を判定するように、静電情報又は透過率情報に基づいて判定ステップを行う。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記静電情報は、圧電フィルムの分極時間の変化に対応する静電値の変化を含み、判定ステップを行うことは、静電値の変化に基づいて圧電フィルムの分極程度を判定することを含む。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記検出装置は、複数の静電検出器を含み、検出ステップを行うことは、それぞれこれらの静電検出器により圧電フィルムの複数の領域の静電値を検出することを含む。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記圧電フィルムは、有機圧電フィルム又は無機圧電フィルムである。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記判定ステップは、圧電フィルムのこれらの領域の静電値の間の差分に基づき、圧電フィルムの分極品質を判定することを含む。
【0014】
本発明の一実施例によれば、圧電フィルムに対して検出ステップを行う前に、前記方法は、圧電フィルムの透過率初期値を取得するように、検出装置により工程前検出ステップを行うことを更に備える。また、判定ステップを行うことは、透過率情報の透過率初期値に対する変化傾向に基づき、圧電フィルムの分極程度を判定することを更に含む。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記検出装置は、第1の波長赤外線検出器と、第2の波長赤外線検出器と、を備え、検出ステップを行うことは、第1の波長赤外線検出器と第2の波長赤外線検出器により圧電フィルムを同時に検出することを含む。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記検出装置は、複数の赤外線検出器を備え、検出ステップを行うことは、それぞれこれらの赤外線検出器により圧電フィルムの複数の領域の透過率を検出することを含む。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記圧電フィルムは、有機圧電フィルムである。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記判定ステップは、圧電フィルムのこれらの領域の透過率の間の差分に基づき、圧電フィルムの分極品質を判定することを含む。
【0019】
本発明の一実施例によれば、検出ステップを行った後に、前記方法は、圧電フィルムの静電情報又は透過率情報をコントロールセンタに送信することを更に含み、コントロールセンタは、静電情報又は透過率情報に基づいて判定ステップを行う。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記コントロールセンタは、圧電フィルムの分極程度に基づき、分極工程の少なくとも1つの工程パラメータに対して調整ステップを行う。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記調整ステップを行うことは、分極工程中に、分極工程の分極電圧を調整すること、及び/又は圧電フィルムの分極時間を調整することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより明らかで分かりやすくするために添付された図面について、以下の通りに説明する。
図1】本発明の一実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第1の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
図4】本発明の第2の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
図6】本発明の第3の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
図8】本発明の第4の実施形態による圧電フィルムの透過率スペクトルを示す曲線グラフである。
図9】本発明の第5の実施形態による圧電フィルムの透過率と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
図10】本発明の第6の実施形態による圧電フィルムを赤外線波長λで検出した場合の透過率と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
図11】本発明の第6の実施形態による圧電フィルムを赤外線波長λで検出した場合の透過率と分極時間との関係を示す曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2を参照されたく、図1及び図2は、それぞれ本発明の一実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法を示すフローチャート、及び本発明の第1の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。本実施形態において、圧電フィルムの分極品質をモニタリングする際に、圧電フィルム200の分極工程中に、検出装置210により非接触方式で圧電フィルム200に対して検出ステップを行うことで、圧電フィルム200の物理的特性情報を得るように、先にステップ100を行ってよい。一例として、検出装置210は、圧電フィルム200の表面202の静電情報を検出可能な静電検出器であってよい。圧電フィルム200は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの高分子圧電材料の有機圧電フィルムであってもよいし、又はジルコニウム酸チタン酸鉛(PZT)などの圧電セラミック材料の無機圧電フィルムであってもよい。
【0024】
いくつかの実施例において、プラズマ220を利用して圧電フィルム200に対して分極工程を行ってよい。図2に示すように、分極工程を行う際に、圧電フィルム200は導電性基材230の表面232に設けられ、1つ又は複数の電極240は圧電フィルム200の上方に設けられている。導電性基材230は接地する。給電電源250の第1極252は電極240に電気的に接続され、給電電源250の第2極254は接地する。検出装置210は、圧電フィルム200の表面202を走査可能な箇所に設けられている。一例として、検出装置210は、検出装置210と圧電フィルム200の表面202との間が電極240によって遮蔽されないように、電極240の間に設けられてよい。
【0025】
本実施形態において、プラズマ220で圧電フィルム200に対して分極工程を繰り返して行う時に、検出装置210は、非接触方式で圧電フィルム200の表面202の静電情報をオンラインでリアルタイムに走査して測定することができる。いくつかの例において、圧電フィルム200がまだ分極されていない場合、圧電フィルム200の表面202の静電値が低く、例えば0であってよい。分極工程の進行につれて、圧電フィルム200の表面202の静電値が変わる。従って、分極進行中に、検出装置210により圧電フィルム200の表面202の静電値をリアルタイムに測定して記録する。
【0026】
図3を参照されたく、図3は本発明の第1の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。図3から分かるように、圧電フィルム200の表面202の静電値は、分極時間の増加につれて上昇する。透過圧電フィルム200の表面202の分極工程中における静電値の変化を検出することで、圧電フィルム200を破壊することなく、圧電フィルム200の分極程度を推測して工程品質を鑑定することができる。
【0027】
続いて、検出した圧電フィルム200の静電情報に基づいて圧電フィルム200の分極程度を判定するように、ステップ110を行ってよい。いくつかの例において、圧電フィルム200の静電情報は、圧電フィルム200の表面202の分極時間の変化に対応する静電値の変化を含む。この静電値の変化に基づいて圧電フィルム200の分極程度を判定することができる。
【0028】
いくつかの例示的な例において、検出装置210は、測定した圧電フィルム200の静電情報をコントロールセンタ260に有線又は無線伝送方式で送信することができる。コントロールセンタ260は、受信した静電情報に基づいて曲線グラフ又はデータベースを更新することができる。コントロールセンタ260は、過去記録されたデータに基づき、又は推定により、図3の横点線DLのような合格閾値を定めることができ、それにより、コントロールセンタ260のコントロールシステム又は操作者が、予定の分極工程の終点になる時に圧電フィルム200の分極品質が所望の要求に達したか否かを判定することに役立つことができる。
【0029】
圧電フィルム200の分極品質がまだ所望の要求を満たしていない場合、コントロールセンタ260は、判定した圧電フィルム200の分極程度に基づき、分極工程の1つ又は複数の工程パラメータを調整するように、ステップ120を行ってよい。一例として、コントロールセンタ260は、圧電フィルム200の分極工程中に分極工程の分極電圧を調整することで、分極パワーを調整し、及び/又は圧電フィルム200の分極時間を調整することができる。いくつかの例示的な例において、圧電フィルム200の分極時間を調整することは、ロールツーロール(RTR)分極工程又は連続(in-line)型分極工程のインライン速度を調整することで、又はバッチ式の分極工程の分極処理時間を調整することで実現することができる。
【0030】
大面積の圧電フィルムの分極工程について、圧電フィルムの分極程度及び均一度は、分極品質のキーポイントである。図4を参照されたく、図4は本発明の第2の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。本実施形態において、同様にプラズマを利用して圧電フィルム300に対して分極工程を行う。圧電フィルム300は、有機圧電フィルム又は無機圧電フィルムであってよい。圧電フィルム300は導電性基材310の表面312に設けられている。いくつかの例において、圧電フィルム300は、大面積のフィルムであるため、圧電フィルム300の表面302の上方に複数の電極320が設けられている。これらの電極320は、例えば一定の間隔で配列されてよい。複数の検出装置330は、圧電フィルム300の表面302を走査可能な箇所に設けられている。一例として、2つの隣り合う電極320の間に1つ又は複数の検出装置330が設けられてよい。検出装置330は、同様に、圧電フィルム300の表面302の静電情報を検出可能な静電検出器であってよい。導電性基材310は接地する。給電電源340の第1極342は電極320に電気的に接続され、給電電源340の第2極344は接地する。
【0031】
圧電フィルム300の分極品質をモニタリングする際に、圧電フィルム300の分極工程中に、これらの検出装置330によりそれぞれ圧電フィルム300の複数の領域に対して検出ステップを行うことで、圧電フィルム300の表面302の複数の領域の静電値などの静電情報、又は分極時間の変化に対応する静電値の変化を得ることができる。複数の検出装置330を設けることにより、検出面積を増やすことができ、圧電フィルム330の異なる領域の静電分布を把握することに寄与する。これらの検出装置330は、その測定範囲内の静電値を独立して検出して記録することができる。
【0032】
図5を参照されたく、図5は本発明の第2の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。図5から分かるように、これらの検出装置330により測定した圧電フィルム300の表面302の複数の領域の静電値は、いずれも分極時間の増加につれて上昇する。図5における各曲線は、異なる上昇速度又は飽和値を有してよく、これらの曲線の間の差分を観察することで、分極デバイスの効果及び/又は分極される圧電材料自体の均一性又は欠陥を把握することに寄与でき、これに基づいて圧電フィルム300の製品歩留まりを予測することもできる。一例として、圧電フィルム300のこれらの領域の静電値の間の差分に基づき、圧電フィルム300の分極均一度などの分極品質を判定することができる。従って、圧電フィルム300の表面302の複数の領域の分極工程中における静電値の変化を検出することにより、圧電フィルム300の分極程度を推測して工程品質を鑑定することができる。
【0033】
いくつかの例示的な例において、これらの検出装置300は、測定した圧電フィルム300の複数の領域の静電情報をコントロールセンタ350に有線又は無線伝送方式で送信することができる。コントロールセンタ350は、受信した静電情報に基づいて曲線グラフ又はデータベースを更新することができる。コントロールセンタ350のコントロールシステム又は操作者は、これらの静電情報に基づき、予定の分極工程の終点になる時に圧電フィルム300の複数の領域の分極品質が所望の要求に達したか否かを判定することができる。
【0034】
図5の曲線グラフのような静電情報に基づき、いくつかの曲線又は全ての曲線がまだ所望の品質要求に達していないと発見した場合、圧電フィルム300の分極程度及び/又は分極均一度がまだ品質要求を満たしていないことを示す。この時、コントロールセンタ350は、判定した圧電フィルム300の分極程度及び分極均一程度に基づき、分極工程の1つ又は複数の工程パラメータを調整することができる。一例として、コントロールセンタ350は、圧電フィルム300の分極工程中に分極工程の分極電圧を調整することで、分極パワーを調整し、及び/又は圧電フィルム300の分極時間を調整することができる。
【0035】
図6を参照されたく、図6は本発明の第3の実施形態による圧電フィルムの分極品質のモニタリング装置を示す模式図である。この実施形態の装置は、多点検出の圧電フィルム400のロールツーロール分極工程又は連続型分極工程における応用である。本実施形態において、プラズマを利用して圧電フィルム400に対して分極工程を行う。圧電フィルム400は、有機圧電フィルム又は無機圧電フィルムであってよい。圧電フィルム400は、連続フィルムであり、ロールツーロールの手法で圧電フィルム400に対して分極工程を行う。
【0036】
分極装置は、第1のローラ410と、第2のローラ420と、を含む。第1のローラ410は、圧電フィルム400を巻いて載せることができ、且つ、第1のローラ410は、方向RDに沿って転動することができる。方向RDは、時計回り方向であってもよいし、又は反時計回り方向であってもよい。第1のローラ410は、転動しながら圧電フィルム400を連動させることができる。この実施形態において、第1のローラ410は、導電性材質で製造され、且つ、この第1のローラ410は接地してよい。第2のローラ420は、第1のローラ410からの連続的な圧電フィルム400を巻き取ることができる。第2のローラ420は、同様に方向RDに沿って転動することができる。第2のローラ420は、転動しながら第1のローラ410からの圧電フィルム400を巻き取ることができ、ロールツーロールの連続型分極工程が達成される。
【0037】
複数の電極430は、第1のローラ410と第2のローラ420との間に設けられている。これらの電極430は、プラズマを形成して、通る圧電フィルム400に対して分極処理を行うように、圧電フィルム400が第1のローラ410と第2のローラ420との間で移動する経路の上方に位置する。これらの電極430は、例えば一定の間隔で配列されてよい。給電電源450の第1極452は電極430に電気的に接続され、給電電源450の第2極454は接地する。
【0038】
複数の検出装置440a、440b及び440cは、第1のローラ410と第2のローラ420との間に設けられ、且つ圧電フィルム400の表面402を走査可能な箇所に位置する。一例として、圧電フィルム400の移動方向MDに沿って、各電極430の後に検出装置440a、440b及び440cが順に設けられてよい。検出装置440a、440b及び440cは、同様に、圧電フィルム400の表面402の静電情報を検出可能な静電検出器であってよい。
【0039】
圧電フィルム400の分極品質をモニタリングする際に、圧電フィルム400の分極工程中に、これらの検出装置440a、440b及び440cにより圧電フィルム400の順に通る部分に対して検出ステップを行うことで、圧電フィルム400の表面402に異なる分極時間の分極処理を行った後の静電値のような静電情報、又は分極時間の変化に対応する静電値の変化を得ることができる。
【0040】
分極される圧電フィルム400は、ロールツーロールの連続的な状態で持続的に運転するため、分極時間及び圧電フィルム400の前進速度が最も肝心な観察要因ではない。従って、検出装置440a、440b及び440cを圧電フィルム400の前進経路における異なる位置に設けることで、それぞれ圧電フィルム400が異なる程度の分極を経た後にその表面402の静電値を検出する。検出装置440aは、最も上流の箇所にあり、セグメントS1を通る圧電フィルム400の分極程度が最も低いと検出することができる。検出装置440bは、中間にあり、セグメントS2を通る圧電フィルム400の分極程度がセグメントS1よりも高いと検出することができる。検出装置440cは、最も下流の箇所にあり、セグメントS3を通る圧電フィルム400の分極程度が最も高いと検出することができる。
【0041】
図7を参照されたく、図7は本発明の第3の実施形態による圧電フィルムの表面の静電値と分極時間との関係を示す曲線グラフである。図7の曲線SL1、SL2及びSL3から分かるように、検出装置440a、440b及び440cにより測定した圧電フィルム400の表面402の静電値は、分極程度の増加につれて上昇する。即ち、セグメントS1、S2及びS3を通る圧電フィルム400の分極程度が順に増加するため、検出装置440a、440b及び440cによりセグメントS1、S2及びS3に対応する箇所でそれぞれ測定した静電値も順に増加する。
【0042】
図7の各曲線SL1、SL2及びSL3の変化を観察することで、圧電フィルム400の分極工程の安定性を判定することができる。一例として、これらの検出装置440a、440b及び440cが圧電フィルム400の前進経路における異なる位置に設けられているため、検出装置440a、440b及び440cによりセグメントS1、S2及びS3に対応する箇所でそれぞれ測定した静電値は、時間につれて増加することなく、安定して合格範囲内にあるはずである。しなしながら、図7では、曲線SL1の時間帯S1で、電極故障、圧電フィルム400の材料欠陥又は不均一などの工程における様々な不安定な要因によって、静電値が正常な範囲よりも低い可能性がある。他の例において、分極工程における不安定な要因によって、測定した静電値が正常な範囲よりも高い可能性もある。
【0043】
いくつかの例示的な例において、これらの検出装置440a、440b及び440cは、測定した圧電フィルム400の静電情報をコントロールセンタ460に有線又は無線伝送方式で送信することができる。コントロールセンタ460は、受信した静電情報に基づいて曲線グラフ又はデータベースを更新することができる。コントロールセンタ460のコントロールシステム又は操作者は、これらの静電情報に基づき、圧電フィルム400の分極工程の安定性を判定することができる。
【0044】
図7の曲線グラフのような静電情報に基づき、曲線SL1、SL2及びSL3が変化したと発見した場合、分極工程に不安定な状況が発生したことを示す。一例として、曲線SL1の時間帯S1における圧電フィルム400の静電値は、正常な範囲よりも低く、この時、コントロールセンタ460は、分極工程の不安定な現象を減らすように、次の電極430、即ち検出装置440aと440bとの間の電極430を調整してよい。調整したところ、曲線SL2の時間帯S2における圧電フィルム400の静電値が既に上昇し、工程の不安定性が大幅に改善されたことを示す。コントロールセンタ460は、圧電フィルム400のロール材がセグメントS3に到達する時に分極程度が完全に改善され、検出した静電値が安定して合格範囲内にあるように、更に次の電極430、即ち検出装置440bと440cとの間の電極430に調整措置を施してよい。
【0045】
分極によって有機圧電材料フィルムの結晶相を変えることができるため、赤外線で有機圧電材料フィルムの分極工程を分析して検出することができる。そのため、本発明の他の実施形態においては、上記実施形態において採用された静電検出器の代わりに、赤外線検出器を用いてもよい。一実施形態において、再び図2を参照されたく、検出装置210は、赤外線検出器であってもよい。赤外線検出器を検出装置210として用い、圧電フィルム200の分極工程中に、非接触方式で圧電フィルム200を検出し、圧電フィルム200の透過率情報を得ることができる。この実施形態において、圧電フィルム200は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子圧電材料の有機圧電フィルムであってよい。
【0046】
本実施形態において、プラズマ220で圧電フィルム200に分極工程を繰り返して行う時に、検出装置210は、圧電フィルム200の透過率情報をオンラインでリアルタイムに走査して測定することができる。圧電フィルム200が分極されていない場合の透過率曲線に対して、分極後の透過率曲線は変化した。従って、分極進行中に、検出装置210により圧電フィルム200の透過率をリアルタイムに測定して記録する。検出装置210は、測定した圧電フィルム200の透過率情報をコントロールセンタ260に有線又は無線伝送方式で送信することができる。コントロールセンタ260は、受信した静電情報に基づいて曲線グラフ又はデータベースを更新することができる。
【0047】
図8を参照されたく、図8は本発明の第4の実施形態による圧電フィルムの透過率スペクトルを示す曲線グラフであり、横軸が赤外線波長であり、縦軸が圧電フィルムの透過率である。図8から分かるように、圧電フィルム200の分極されていない場合の透過率スペクトル曲線510及び圧電フィルム200の分極後の透過率スペクトル曲線500は、赤外光波長がλとλである時に変化した。本実施形態において、圧電フィルム200の分極されていない場合及び分極後の透過率スペクトル曲線510及び500の変化幅は、圧電フィルム200の分極程度を推測して工程品質を鑑定するように、定量分析のデータとすることができる。
【0048】
いくつかの例において、圧電フィルム200に対して検出ステップを行う前に、圧電フィルム200の透過率初期値を取得するように、赤外線の検出装置210により工程前検出ステップを行ってよい。圧電フィルム200の透過率初期値は、例えば圧電フィルム200の分極されていない場合の透過率とされてよい。コントロールセンタ260は、圧電フィルム200の分極程度を判定する際に、分極工程中に検出装置210により検出した透過率情報の透過率初期値に対する変化傾向に基づき、この圧電フィルム200の分極程度を判定することができる。
【0049】
図8に示す例において、赤外線波長がλである場合、圧電フィルム200の分極後の透過度は、分極前よりも小さい。赤外線波長がλである場合、圧電フィルム200の分極後の透過度は、分極前よりも高い。従って、本実施形態において、圧電フィルム200の分極品質を検出する際に、1つの波長の赤外線検出器又は2つ以上の波長の複数の赤外線検出器により、圧電フィルム200の分極程度、均一度や安定度などの圧電フィルム200の分極工程の品質を同時に観察してよい。
【0050】
バッチ式の分極デバイスに対して、コントロールセンタ260のコントロールシステム又は操作者は、過去の実験データに基づき、所定の波長の赤外線での圧電フィルム200の分極合格標準を定めることができる。図9を参照されたく、図9は本発明の第5の実施形態による圧電フィルムの透過率と分極時間との関係を示す曲線グラフである。図9に示すように、圧電フィルムの分極合格標準として、赤外線波長がλである場合、圧電フィルムの透過率をTA,1とし、赤外線波長がλである場合、圧電フィルムの透過率をTB,1とするように定めることができる。圧電フィルムに対して、分極工程前に、赤外線波長がλである場合に測定した圧電フィルムの赤外線透過度はTA,0とされ、赤外線波長がλである場合に測定した圧電フィルムの赤外線透過度はTB,0とされる。圧電フィルムの分極工程の進行中に、赤外線検出器により圧電フィルムに波長がλとλの赤外線を照射した場合の透過率を持続的に検知する。圧電フィルムが、時間がtendである時に赤外線波長λで検出する場合に圧電フィルムの透過率がTA,1であることと、赤外線波長λで検出する場合に圧電フィルムの透過率がTB,1であることとの2つの合格標準を満たしていれば、圧電フィルムの分極工程を停止してよい。
【0051】
再び図4を参照されたく、検出装置330は、圧電フィルムの複数の領域の透過率を同時に検出するように、赤外線検出器であってよい。それにより、コントロールセンタ350は、圧電フィルム300のこれらの領域の透過率の間の差分に基づき、圧電フィルム300の分極均一度などの分極品質を判定することができる。このようにすれば、圧電フィルム300の複数の領域の分極工程中における透過率の変化を検出することで、圧電フィルム300の分極程度を推測して工程品質を鑑定することができる。
【0052】
再び図6を参照されたく、検出装置440a、440b及び440cは赤外線検出器であってもよい。検出装置440a、440b及び440cを圧電フィルム400の前進経路における異なる位置に設けることで、それぞれ圧電フィルム400が異なる程度の分極を経た後の透過率を検出することができる。
【0053】
図10及び図11を参照されたく、図10及び図11は、それぞれ本発明の第6の実施形態による圧電フィルムを赤外線波長λ及びλで検出した場合の透過率と分極時間との関係を示す曲線グラフである。図10及び図11に示すように、圧電フィルムの分極工程中に、赤外線波長がλ及びλである赤外線検出器により圧電フィルムの透過率を検出する場合、時点t1の時に、圧電フィルムの透過率はいずれも変化し始める。一例として、赤外線波長がλである赤外線検出器により検出した圧電フィルムの透過率は、時点t1の時に高まり始めるが、赤外線波長がλである赤外線検出器により検出した圧電フィルムの透過率は、時点t1の時に低下し始める。この時、コントロールセンタは、赤外線検出器から送信された圧電フィルムの透過率情報を受信した場合、圧電フィルムの透過率の変化に基づき、分極工程を判定し、更に、分極工程の品質を改善するように、分極工程の工程パラメータを調整することができる。分極工程の工程パラメータを調整した後、時点t2の時に、赤外線波長がλである赤外線検出器により検出した圧電フィルムの透過率、及び赤外線波長がλである赤外線検出器により検出した圧電フィルムの透過率は、いずれも安定した合格範囲内に戻った。
【0054】
上記の実施形態から分かるように、本発明の1つのメリットとしては、本発明の圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法が、圧電フィルムの分極工程中に、非接触方式で圧電フィルムの静電情報又は透過率情報をオンラインでリアルタイムに検出することができるため、オンライン操作者又はデバイスのコントローラは、静電情報又は透過率情報に基づいて圧電フィルムの分極程度を判定することができ、それにより、分極デバイスの効果及び分極される材料自体の不均一性又は欠陥を早期に把握して、可能な限りに早く改善することに寄与することができる。
【0055】
上記の実施形態から分かるように、本発明の別のメリットとしては、本発明の圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法により分極工程中に圧電フィルムの分極品質を判定することができるため、圧電フィルムの歩留まりを予測することができる。
【0056】
上記の実施形態から分かるように、本発明の更に別のメリットとしては、本発明の圧電フィルムの分極品質のモニタリング方法により圧電フィルムの分極程度をオンラインでリアルタイムに判定することができるため、オンライン操作者又はデバイスのコントローラは、判定結果に基づいて分極工程のパラメータをリアルタイムに調整することができ、更に圧電フィルムの分極品質を高めることができる。
【0057】
本発明は、実施例により前述の通りに開示されたが、実施例が本開示内容を限定するものではなく、当業者であれば、本開示内容の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本開示内容の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0058】
100、110、120 ステップ
200、300、400 圧電フィルム
202、232、302、312、402 表面
210、330、440a~440c 検出装置
220 プラズマ
230、310 導電性基材
240、320、430 電極
250、340、450 給電電源
252、342、452 第1極
254、344、454 第2極
260、350、460 コントロールセンタ
410 第1のローラ
420 第2のローラ
500、510 透過率スペクトル曲線
DL 横点線
MD 移動方向
RD 方向
S1~S3 セグメント
S1、S2 時間帯
SL1~SL3 曲線
t1、t2 時点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11