(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20230217BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230217BHJP
F16C 29/06 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
F16H25/20 F
F16H25/24 B
F16H25/24 H
F16H25/24 J
F16C29/06
(21)【出願番号】P 2021182530
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518435873
【氏名又は名称】東佑達自動化科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.55, Xinji 3rd Rd., Annan Dist., Tainan City, 70947 Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】曾 坤成
(72)【発明者】
【氏名】蘇 明淇
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138373(JP,A)
【文献】特開2016-008710(JP,A)
【文献】特開2002-310256(JP,A)
【文献】特開2019-039565(JP,A)
【文献】特開2019-215061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアアクチュエータであって、
長手方向と、前記長手方向と略直交する短手方向と、前記長手方向及び前記短手方向の両方と略直交すると共に通常の使用状態において上下方向となる厚さ方向とがあるように構成され、且つ一対のガイドレールと、ねじ軸と、移動ステージと、を備えており、
前記一対のガイドレールは、それぞれに前記長手方向に沿う直線状となって、互いに前記短手方向において間を隔てるように並列されていると共に、前記長手方向から見た断面が半円形状となっていて開口が向かい合っている第1のボール転走溝部が前記一対のガイドレールにそれぞれに形成されており、
前記ねじ軸は、前記一対のガイドレールの間に前記長手方向に沿って延伸するように配置されており、
前記移動ステージは、前記長手方向に沿ってスライド移動可能
に前記一対のガイドレールに設けられており、且つステージ本体部と、一対のレール部と、一対のボールリターン溝部と、4つのボール反転溝部と、2つのボールチェーンと、
一対の油注入経路と、を有しており、
前記ステージ本体部は、前記一対のガイドレールの間に位置されており、且つ、前記短手方向において離間している両側面と、前記長手方向に沿って延伸して前記ねじ軸が貫通している駆動孔とを有するように、第1の材料で構成されているものであり、
前記一対のレール部は、それぞれに前記長手方向に沿って延伸して前記ステージ本体部の前記両側面にはめ込まれており、且つ、前記長手方向に沿って延伸していると共に、前記長手方向から見た断面が半円形状となって、それぞれの開口が対応する前記第1のボール転走溝の開口と位置が合わせられていて、一対の前記第1のボール転走溝部と共に一対のボール転走経路を画成している一対の第2のボール転走溝部を有するように、前記第1の材料よりも硬さが高い第2の材料で構成されているものであり、
前記一対のボールリターン溝部は、
材質がプラスチックであると共に、前記ステージ本体部内に嵌入するように形成されたものであり、前記ステージ本体部の中に前記長手方向に沿って延伸していて前記ねじ軸が間に介在するようにそれぞれに設けられており、一対のボールリターン経路を画成しており、
且つ各前記ボールリターン溝部は、前記ねじ軸及び対応する前記レール部の間に介在しており、
また、前記一対のボールリターン溝部は、いずれも、管状となっている溝本体部と、前記溝本体部の上下両側と連続し、前記長手方向に沿って延伸して、前記第2のボール転走溝部における前記厚さ方向に沿って離間している上下開口縁に配置されている上ガイド部及び下ガイド部と、上側へ開口している油注入孔と、を備えており、
前記一対の油注入経路は、前記ステージ本体部の上面及び各前記ボールリターン溝部にある前記油注入孔とそれぞれに連通しており、
前記4つのボール反転溝部は、いずれも、前記厚さ方向から見るとU字形状に形成されており、当該U字形状の一端が、対応する前記ボールリターン溝部の端部と連続している一方、当該U字形状の他端が、対応する前記第2のボール転走溝部の端部と連続しており、且つ、前記ボール転走経路及び前記ボールリターン経路と連通している4つのボール反転経路を画成しており、
前記4つのボール反転経路と、前記一対のボール転走経路と、前記一対のボールリターン経路とにより、前記短手方向に沿って離間している一対のボール循環経路が構成されており、
各前記ボールチェーンは、閉ループ形状となっていて、対応する前記ボール循環経路内において循環転走することができるように配置構成されており、且つ、複数のボールと、各前記ボール同士の間にそれぞれに配置されている複数の間座部と、前記複数の間座部を連接していて前記複数のボールにより嵌合されている
と共に、対応する前記ボールリターン溝部における前記上ガイド部及び前記下ガイド部に移動可能にはめ込まれるように配置されている連接部と、を有しており、
また、各前記ボールチェーンにおける前記複数のボールは、対応する前記第1のボール転走溝部及び対応する前記第2のボール転走溝部の溝壁に当接して当該溝壁による反作用力を受けて、対応する前記ボール転走経路において転がり摺動することができるように構成されている、
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記リニアアクチュエータは、前記長手方向に沿って延伸しているベースを更に備えており、
前記ベースは、前記長手方向に沿う両端があるように構成されているベース本体部と、前記ベース本体部の両端にそれぞれに配置されている上に、前記ベース本体部と共に上方へ開口している収容空間を画成している2つのエンド部材と、を備えており、
また、前記一対のガイドレールと前記ねじ軸とは、いずれも、前記収容空間内にあって両端が前記2つのエンド部材にそれぞれに連接されていて、且つ前記一対のガイドレールは、いずれも前記ベース本体部に装着されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記移動ステージの前記ステージ本体部をカバーするためのカバー部材を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1の材料はアルミニウムであり、前記第2の材料は鋼で
ある、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記移動ステージは、各前記ボール反転溝部をそれぞれにカバーして前記ボール反転経路において転走している前記複数のボールの脱出を防止するための4つの溝カバー部材を更に有している、
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
各前記第2のボール転走溝部の前記長手方向に沿って離間している両端部が、面取り構造となっている、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
各前記第2のボール転走溝部の前記両端部には、対応する2つの前記ボール反転溝部と連続している2つの第1の面取り面が形成されており、
各前記ボール反転溝部には、対応する前記第2のボール転走溝部において対応する前記第1の面取り面と連続している第2の面取り面が形成されている、
ことを特徴とする請求項
6に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動生産設備に関し、より詳しくはリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアアクチュエータは、回転運動を直線運動に変換するための機械要素の1つとして、例えば搬送や切削や整列などの様々なプロセスを行なう自動生産ラインにおいて用いられるものである。
【0003】
従来のリニアアクチュエータとして、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載された従来のリニアアクチュエータは、互いに平行していると共に開口が向かい合っている一対のレール溝がそれぞれに凹設されている一対のガイドレールと、該一対のガイドレールの間に位置されているねじ軸と、該ねじ軸が貫通すると共に該一対のガイドレールに沿ってスライド移動可能に配置されているスライドユニットと、該スライドユニットの中に該ねじ軸が介在するようにそれぞれに配置されている一対のボールチェーンと、該スライドユニットと接続されてスライドユニットのスライド移動を駆動するための駆動モジュールと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】台湾特許第I610033号明細書 “Electrical Parameters of Precision, Coaxial, Air‐Dielectric Transmission Line,”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のリニアアクチュエータは、自動生産ラインにおいて適用されるが、自動生産ラインにおいては数多くのプロセスがあり、それに対応する数量のリニアアクチュエータを設置する必要がある場合、リニアアクチュエータの設置コストや耐用性が当該自動生産ラインを組み立てる業者にとって課題となる。このため、従来のリニアアクチュエータの構成に対して改善する余地がある。
【0007】
よって、本発明は上記問題点に鑑みて、より低いコストや優れた耐用性を有するリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段として、本発明はリニアアクチュエータを提供する。当該リニアアクチュエータは、長手方向と、前記長手方向と略直交する短手方向と、前記長手方向及び前記短手方向の両方と略直交すると共に通常の使用状態において上下方向となる厚さ方向とがあるように構成され、且つ一対のガイドレールと、ねじ軸と、移動ステージと、を備えており、
前記一対のガイドレールは、それぞれに前記長手方向に沿う直線状となって、互いに前記短手方向において間を隔てるように並列されていると共に、前記長手方向から見た断面が半円形状となっていて開口が向かい合っている第1のボール転走溝部が前記一対のガイドレールにそれぞれに形成されており、
前記ねじ軸は、前記一対のガイドレールの間に前記長手方向に沿って延伸するように配置されており、
前記移動ステージは、前記長手方向に沿ってスライド移動可能に前記一対のガイドレールに設けられており、且つステージ本体部と、一対のレール部と、一対のボールリターン溝部と、4つのボール反転溝部と、2つのボールチェーンと、を有しており、
前記ステージ本体部は、前記一対のガイドレールの間に位置されており、且つ、前記短手方向において離間している両側面と、前記長手方向に沿って延伸して前記ねじ軸が貫通している駆動孔とを有するように、第1の材料で構成されているものであり、
前記一対のレール部は、それぞれに前記長手方向に沿って延伸して前記ステージ本体部の前記両側面にはめ込まれており、且つ、前記長手方向に沿って延伸していると共に、前記長手方向から見た断面が半円形状となって、それぞれの開口が対応する前記第1のボール転走溝部の開口と位置が合わせられていて、一対の前記第1のボール転走溝部と共に一対のボール転走経路を画成している一対の第2のボール転走溝部を有するように、前記第1の材料よりも硬さが高い第2の材料で構成されているものであり、
前記一対のボールリターン溝は、前記ステージ本体部の中に前記長手方向に沿って延伸していて前記ねじ軸が間に介在するようにそれぞれに設けられており、一対のボールリターン経路を画成しており、
前記4つのボール反転溝部は、いずれも、前記厚さ方向から見るとU字形状に形成されており、当該U字形状の一端が、対応する前記ボールリターン溝部の端部と連続している一方、当該U字形状の他端が、対応する前記第2のボール転走溝部の端部と連続しており、且つ、前記ボール転走経路及び前記ボールリターン経路と連通している4つのボール反転経路を画成しており、
前記4つのボール反転経路と、前記一対のボール転走経路と前記一対のボールリターン経路とにより、前記短手方向に沿って離間している一対のボール循環経路が構成されており、
各前記ボールチェーンは、閉ループ形状となっていて、対応する前記ボール循環経路内において循環転走することができるように配置構成されており、且つ、複数のボールと、各前記ボール同士の間にそれぞれに配置されている複数の間座部と、前記複数の間座部を連接していて前記複数のボールにより嵌合されている連接部と、を有しており、
また、各前記ボールチェーンにおける前記複数のボールは、対応する前記第1のボール転走溝部及び対応する前記第2のボール転走溝部の溝壁に当接して当該溝壁による反作用力を受けて、対応する前記ボール転走経路において転がり摺動することができるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、本発明に係るリニアアクチュエータは、移動ステージのステージ本体部と一対のレール部とが異なる材料により構成できるので、ステージ本体部の作成材料とする第1の材料を比較的安価な材料に選定すれば、製造コストを低く抑えることができる。それに加え、一対のレール部の作成材料とする第2の材料として硬さが該第1の材料の硬さよりも高いものを用いれば、装置の使用寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータの構成が示される斜視図
【
図2】該実施形態に係るリニアアクチュエータの構成が示される分解斜視図
【
図3】該実施形態に係るリニアアクチュエータのカバー部材を取り外した後の構成が示される部分上面図
【
図4】
図3におけるIV-IV線に沿った断面が示される断面図
【
図5】該実施形態の一対のガイドレール、ねじ軸、移動ステージの構成が示される正面図
【
図6】
図5におけるVI-VI線に沿った断面が示される断面図
【
図7】該実施形態のボールチェーンの構成が示される部分側面図
【
図8】該実施形態のボールリターン溝部及びボール反転溝部の構成が示される斜視図
【
図9】
図8に示された構成が他の角度から示される斜視図
【
図10】該実施形態のボールリターン溝部、ボール反転溝部、第2のボール転走溝部、ステージ本体部の構成が示される部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るリニアアクチュエータは、例えば自動化生産ラインにおいて、加工用工具または加工対象物を搬送対象物として載せて、載せた搬送対象物を搬送することができるものである。
【0012】
以下、本発明に係るリニアアクチュエータについて図面を参照して説明する。
【0013】
図1~
図10を参照してリニアアクチュエータの構成を説明する。ここで、
図1は本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータの構成が示される斜視図であり、
図2は該実施形態に係るリニアアクチュエータの構成が示される分解斜視図であり、
図3は該実施形態に係るリニアアクチュエータのカバー部材を取り外した後の構成が示される部分上面図であり、
図4は
図3におけるIV-IV線に沿った断面が示される断面図であり、
図5は該実施形態の一対のガイドレール2、ねじ軸3、移動ステージ4の構成が示される正面図であり、
図6は
図5におけるVI-VI線に沿った断面が示される断面図であり、
図7は該実施形態のボールチェーン44の構成が示される部分側面図である。
【0014】
また、
図8は該実施形態のボールリターン溝部43及びボール反転溝部47の構成が示される斜視図であり、
図9は
図8に示された構成が他の角度から示される斜視図であり、
図10は該実施形態のボールリターン溝部43、ボール反転溝部47、第2のボール転走溝部421、ステージ本体部41の構成が示される部分斜視図である。
【0015】
本発明に係るリニアアクチュエータは、
図1及び
図2に示されるように、長手方向Xと、長手方向Xと略直交する短手方向Yと、長手方向X及び短手方向Yの両方と略直交すると共に通常の使用状態において上下方向となる厚さ方向Zとがあるように構成され、且つ、ベース1と、一対のガイドレール2と、ねじ軸3と、移動ステージ4と、カバー部材5と、モータ(図示せず)と、を備えている。
【0016】
ベース1は、
図1及び
図2に示されるように、長手方向Xに沿う両端があるように構成されているベース本体部12と、ベース本体部12の両端にそれぞれに配置されている上に、ベース本体部12と共に上方へ開口する収容空間13を画成している2つのエンド部材11と、を備えている。
【0017】
一対のガイドレール2は、
図2及び
図4に示されるように、それぞれに長手方向Xに沿う直線状となって、互いに短手方向Yにおいて間を隔てるように並列されていると共に、長手方向Xから見た断面が半円形状となっていて開口が向かい合っている第1のボール転走溝部21をそれぞれに有する。
【0018】
ねじ軸3は、
図1と
図2図3と
図6に示されるように、一対のガイドレール2の間に長手方向Xに沿って延伸するように配置されている。
【0019】
また、該一対のガイドレール2と該ねじ軸3とは、
図1及び
図2に示されるように、いずれも、収容空間13内にあって両端が2つのエンド部材11にそれぞれに連接されている。更に、該一対のガイドレール2は、いずれもベース本体部12に装着されている。
【0020】
移動ステージ4は、
図1及び
図2に示されるように、長手方向Xに沿ってスライド移動可能
に一対のガイドレール2に設けられており、且つ、
図2~
図6に示されるように、ステージ本体部41と、一対のレール部42と、一対のボールリターン溝部43と、4つのボール反転溝部47と、2つのボールチェーン44と、4つの溝カバー部材45と、一対の油注入経路48と、4つのカバープレート46とを有している。
【0021】
ステージ本体部41は、一対のガイドレール2の間に位置されており、且つ、
図4及び
図5に示されるように、短手方向Yにおいて離間している両側面410と、長手方向Xに沿って延伸してねじ軸3が貫通している駆動孔411とを有するように、第1の材料で構成されているものである。
【0022】
一対のレール部42は、長手方向Xに沿って延伸してステージ本体部41の両側面410にそれぞれにはめ込まれており、且つ、
図4及び
図5に示されるように、長手方向Xに沿って延伸していると共に、長手方向Xから見た断面が半円形状となって、それぞれの開口が対応する第1のボール転走溝部21の開口と位置が合わせられていて、一対の第1のボール転走溝部21と共に一対のボール転走経路を画成している一対の第2のボール転走溝421部を有するように、第1の材料よりも硬さが高い第2の材料で構成されているものである。
【0023】
なお、本実施形態では、各レール部42は、嫌気性接着剤(特に高強度且つ中粘度の緑色にものを採用)によりステージ本体部41の両側面410にはめ込まれて固定されているが、ここでそれに限定されず、他の実施形態において他の接着剤を採用してもよい。
【0024】
一対のボールリターン溝部43は、管状となったものであり、且つ、
図4及び
図6に示されるように、ステージ本体部41の中に長手方向Xに沿って延伸していてねじ軸3が間に介在するようにそれぞれに設けられており、一対のボールリターン経路を画成している。
且つ各ボールリターン溝部43は、ねじ軸3及び対応するレール部42の間に介在している。
【0025】
また、
図4と
図8と
図9に示されるように、該一対のボールリターン溝部43は、いずれも、上側へ開口している油注入孔431と、管状となっている溝本体部434と、当該溝本体部434の上下両側と連続し、長手方向Xに沿って延伸して、第2のボール転走溝部421における厚さ方向Zに沿って離間している上下開口縁に
配置されていると共に、対応するボールチェーン44の後述する連接部443が移動可能にはめ込まれるように配置されている上ガイド部432及び下ガイド部433と、を有している。なお、本実施形態では、該ステージ本体部41の構成材料である第1の材料はアルミニウムであり、該一対のレール部42の構成材料である第2の材料は鋼である。また、該ステージ本体部41は、アルミニウム押出成形により作成されたものである。
【0026】
具体的に、アルミニウムは、重量においてまた価格においても同一体積の鋼よりも低いので、アルミニウムを採用して体積が比較的に大きなステージ本体部41を作成すれば、リニアアクチュエータの全体的な重量を低減するだけではなく、製造コストも抑えることができる。また、耐磨耗性については、鋼がアルミニウムよりも高いので、該実施形態のリニアアクチュエータを長期に使用しても装置の変形が発生しにくい。このため、上記したような材料を選定することによっても、製造コストの削減、装置の軽量化、良好な耐用性といった効果を得ることができる。
【0027】
また、各ボールリターン溝部43は、プラスチックを材料としてオーバーモールド成型によりステージ本体部41内に嵌入するように形成されたものである。ここで、後述するように、ボールリターン溝部43は、ボールチェーン44の移動を案内するものでありその構造が複雑であるため、プラスチックを採用してオーバーモールド成形により作成すれば、製造コストや材料コストを削減することができる。
【0028】
4つのボール反転溝部47は、
図6に示されるように、いずれも、厚さ方向Zから見るとU字形状に形成されており、当該U字形状の一端が、対応するボールリターン溝部43の端部と連続している一方、当該U字形状の他端が、対応する第2のボール転走溝部421の端部と連続しており、且つ、第1のボール転走溝部21と第2のボール転走溝部421とにより画成されるボール転走経路、及びボールリターン溝部43により画成されるボールリターン経路と連通する4つのボール反転経路を画成している。
【0029】
具体的には、
図6に示されるように、該4つのボール反転経路は、該一対のボール転走経路と該一対のボールリターン経路と共に短手方向Yに沿って離間している一対のボール循環経路を構成している。
【0030】
2つのボールチェーン44は、
図6に示されるように、いずれも、閉ループ形状となっていて、対応するボール循環経路内において循環転走することができるように配置構成されており、且つ、
図6及び
図7に示されるように、複数のボール441と、各ボール441同士の間にそれぞれに配置されている複数の間座部442と、複数の間座部442を連接していて複数のボール441により嵌合されている連接部443と、を有している。
【0031】
また、各ボールチェーン44における複数のボール441は、対応する第1のボール転走溝21部及び対応する第2のボール転走溝部421の溝壁に当接して当該溝壁による反作用力を受けて、対応するボール転走経路において転がり摺動することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、各ボールチェーン44は、
図4に示されるように、連接部443が対応するボールリターン溝部43の上ガイド部432及び下ガイド部433にそれぞれにはめ込まれている状態で、対応するボール転走経路内を移動することができるように構成されたものである。これにより、ボールチェーン44がボール転走経路内を移動している際にその角度を維持することができるので、ボール441の転がり摺動に対して影響を与えない。
【0033】
また、ボールリターン溝部43にも、上記のようなボールチェーン44の連接部443がはめ込まれる構成が備わっている。よって、上記した効果は、すべてのボール循環経路内において得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、
図10に示されるように、各第2のボール転走溝部421の長手方向Xに沿って離間している両端部が、面取り構造となっている。具体的には、各第2のボール転走溝部421の両端部には、対応する2つのボール反転溝部47と連続している2つの第1の面取り面424が形成されている。そして、各ボール反転溝部47には、対応する第2のボール転走溝部421における対応する第1の面取り面424と連続している第2の面取り面471が形成されている。
【0035】
ここで、第1の面取り面424及び第2の面取り面471により、第2のボール転走溝部421とボール反転溝部47との接続箇所において滑らかな曲面となって、ボールチェーン44のボール441がこの接続箇所を転走する際に引っかかることなく、より順調に通過することができる。
【0036】
4つの溝カバー部材45は、
図6に示されるように、それぞれに各ボール反転溝部47をカバーして当該ボール反転溝部47が画成するボール反転経路において転走している前記複数のボール441の脱出を防止するためのものである。
【0037】
一対の油注入経路48は、
図2~
図4に示されるように、ステージ本体部41の上面及び各ボールリターン溝部43にある油注入孔431とそれぞれに連通している。
【0038】
したがって、ステージ本体部41の上面から潤滑油を注入して、当該潤滑油が油注入経路48および油注入孔431を通ってボールリターン経路へ流入し、そしてボールチェーン44の転走によりボール反転経路そしてボール転走経路にまで流入するようになる。
【0039】
要するに、各ボールチェーン44における複数のボール441は、対応するボール転走経路において転走している際には、対応する第1のボール転走溝部21及び対応する第2のボール転走溝部421の溝壁による反作用力で互いに比較的に接近するようになる一方、対応するボール転走経路及び対応するボールリターン経路において転走している際には、互いに比較的に離れるようになる。よって、油注入経路48を通して潤滑油をボールリターン経路へ注入すれば、ボールチェーン44の転走によりボール循環経路における潤滑油分布をより均一化することができるので、より優れた潤滑効果を得ることができる。
【0040】
このような構成によって、潤滑油を添加する際に移動ステージ4をベース1から取り外す必要がないので、リニアアクチュエータの長期の使用による潤滑性低下とそれに伴う移動ステージ4の移動抵抗を解決するためのメンテナンスが容易に実行できるようになる。
【0041】
4つのカバープレート46は、
図2と
図3と
図5に示されるように、該4つの溝カバー部材45にそれぞれに設けられている。
【0042】
カバー部材5は、
図1及び
図2に示されるように、移動ステージ4のステージ本体部41をカバーして、例えば自動生産ラインにおいて加工用工具又は加工対象物を搬送対象物として載せることができるものである。
【0043】
駆動モーターは、ねじ軸3の回転運動を駆動し、そして当該回転運動を移動ステージ4の直線運動に変換するためのものである。ここで、該駆動モーターは、本発明の特徴ではないので、更なる詳細な記載がなくても、同業者であれば、本発明の内容に基づいて利用できると考えられる。
【0044】
総括すると、本発明に係るリニアアクチュエータは、移動ステージ4のステージ本体部41と一対のレール部42とが異なる材料により構成できるので、ステージ本体部41の作成材料とする第1の材料を比較的安価な材料に選定すれば 、製造コストを低く抑えることができることに加え、一対のレール部42の作成材料とする第2の材料として硬さが該第1の材料の硬さよりも高いものを用いれば、装置の使用寿命を向上させることができる。
【0045】
上記においては、本発明の全体的な理解を促すべく、多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るリニアアクチュエータによれば、製造コストを低く抑えることに加え、装置の使用寿命を向上させる利点がある。そのため、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0048】
1 ベース
11 エンド部材
12 ベース本体部
13 収容空間
2 ガイドレール
21 第1のボール転走溝部
3 ねじ軸
4 移動ステージ
41 ステージ本体部
410 両側面
411 駆動孔
42 レール部
421 第2のボール転走溝部
424 第1の面取り面
43 ボールリターン溝部
431 油注入孔
432 上ガイド部
433 下ガイド部
434 溝本体部
44 ボールチェーン
441 ボール
442 間座部
443 連接部
45 溝カバー部材
46 カバープレート
47 ボール反転溝部
471 第2の面取り面
48 油注入経路
5 カバー部材
X 長手方向
Y 短手方向
Z 厚さ方向