(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】搬送ベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20230217BHJP
B65G 15/42 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B65G15/34
B65G15/42 Z
(21)【出願番号】P 2017252044
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 謙介
(72)【発明者】
【氏名】城尾 将史
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸貴
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-290601(JP,A)
【文献】実開昭60-170337(JP,U)
【文献】特開2013-133390(JP,A)
【文献】特開2017-137489(JP,A)
【文献】特開2000-351429(JP,A)
【文献】特開2002-068653(JP,A)
【文献】特開平04-209115(JP,A)
【文献】特開2000-016547(JP,A)
【文献】特開2014-088243(JP,A)
【文献】特開2000-247477(JP,A)
【文献】特開2001-153186(JP,A)
【文献】実開平07-031719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトであって、
伸縮性の編布と、
前記編布の上面に設けられた第1の熱可塑性材料からなる弾性層と、
前記弾性層の上面に設けられ、前記第1の熱可塑性材料より硬度の低い第2の熱可塑性材料からなり、凹凸のある搬送面を有する表面樹脂層とを備え、
前記搬送ベルトのJIS K6251に準拠して求められる引張強度が3.5~35MPaであり、前記搬送面の静止摩擦係数が0.6~1.0であ
り、
前記編布と前記弾性層とから構成される芯体層を含む前記搬送ベルト全体が、伸縮性と弾性とを備えたエラスティックベルトである
ことを特徴とする搬送ベルト。
【請求項2】
前記凹凸は、前記表面樹脂層の長手方向に沿った複数の縦溝であることを特徴とする請求項1記載の搬送ベルト。
【請求項3】
前記編布の下面に、熱可塑性材料からなる追加弾性層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の搬送ベルト。
【請求項4】
前記追加弾性層の下面に接して、伸縮性の追加編布がさらに設けられていることを特徴とする請求項3記載の搬送ベルト。
【請求項5】
両端が接合された無端状であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の搬送ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ベルトは、食品や金属部品、生活雑貨、精密機械等、様々な物品を搬送するために用いられている。平織の基部の両面に熱可塑性合成樹脂層を設け、表面を所定の状態とすることで、滑り性を高めたベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のベルトでは、熱可塑性合成樹脂中に球状物を混在させ、その一部を熱可塑性合成樹脂層の表面から突出させることで、滑り性を高めている。
【0003】
また、粘着性を高めた熱可塑性樹脂からなるカバー層を設けることで、食品、プラスチック容器等の各種搬送物を急傾斜で搬送することが可能なコンベヤベルトが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のベルトでは、ポリウレタン(PU)またはポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤を添加することで、カバー層の粘着性を高めて高摩擦力を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】登録実用新案第2506416号公報
【文献】実開平3-118913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
編布による伸縮性と弾性層による弾性とを備えたベルト(エラスティックベルト)は、十分な強度を有しており、テンション機構を用いずに無端ベルトとして用いることができる。ベルトの搬送面と搬送物との間の摩擦係数が大きいほど、傾斜搬送の際にも搬送物を確実に搬送することが可能となる。ベルトの搬送面の摩擦係数を高めようとすると、弾性層の硬度が低下するので、ベルトの強度の低下につながる。
【0006】
そこで本発明は、十分な伸縮性および弾性を備えて十分な強度を有するとともに、傾斜搬送の際にも搬送物を確実に搬送できる搬送ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送ベルトは、伸縮性の編布と、前記編布の上面に設けられた第1の熱可塑性材料からなる弾性層と、前記弾性層の上面に設けられ、前記第1の熱可塑性材料より硬度の低い第2の熱可塑性材料からなり、凹凸のある搬送面を有する表面樹脂層とを備え、引張強度が3.5~35MPaであり、前記搬送面の静止摩擦係数が0.5~1.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の搬送ベルトは、伸縮性の編布上に積層された熱可塑性材料からなる弾性層を備えていることにより、引張強度が3.5~35MPaであり、十分な強度を有している。弾性層の上面に設けられた表面樹脂層は、弾性層より硬度の低い熱可塑性材料からなり、凹凸のある搬送面を有している。これによって、搬送面の静止摩擦係数が0.5~1に規定されるので、本発明の搬送ベルトは、傾斜搬送の際にも搬送物を確実に搬送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る搬送ベルトの幅方向の断面図である。
【
図2】変形例Aの搬送ベルトの幅方向の断面図である。
【
図3】変形例Bの搬送ベルトの幅方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
1.全体構成
図1に示す搬送ベルト10は、芯体層12と、芯体層12の一表面に設けられた表面樹脂層20とを備える。芯体層12は、伸縮性の編布15と、編布15上に設けられた第1の熱可塑性材料からなる弾性層14との積層構造である。表面樹脂層20は、第1の熱可塑性材料より硬度が低い第2の熱可塑性材料からなり、複数の縦溝22からなる凹凸のある搬送面21を有している。
【0012】
<編布>
編布15は、搬送ベルト10に伸縮性を付与する。編布15は、繊維を編んで得られたものであれば特に限定されない。エラスティックベルトに一般的に用いられている編布を、搬送ベルト10における編布15として用いることができる。編布15の編み方は、経編および緯編のいずれでもよい。編布15を形成する繊維は、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、および綿糸などから選択することができる。編布15に用いられる繊維は、単独でも、異なる2種以上であってもよい。
【0013】
編布15を形成する繊維の太さは特に限定されず、例えば20~280T(デシテックス)程度である。編布15の厚さは、0.3~0.8mm程度が好ましく、0.4~0.6mm程度がより好ましい。
【0014】
<弾性層>
弾性層14は、第1の熱可塑性材料から形成され、搬送ベルト10に柔軟性および強度を付与する。第1の熱可塑性材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなる熱可塑性エラストマーが挙げられる。加工性に優れるとともに強度が高い点で、ポリウレタンエラストマーが特に好ましい。弾性層14の厚さは、0.2~1.5mm程度が好ましく、0.3~0.8mm程度がより好ましい。
【0015】
<表面樹脂層>
表面樹脂層20は、第1の熱可塑性材料より硬度の低い第2の熱可塑性材料から構成される。しかも、表面樹脂層20は、搬送面21に凹凸を有している。熱可塑性材料から構成されるので、表面樹脂層20は、耐摩耗性に優れている。第2の熱可塑性材料は、例えば、第1の熱可塑性材料と後述する添加剤との混合物でもよい。表面樹脂層20の厚さは、0.2~1.5mm程度が好ましく、0.3~0.8mm程度がより好ましい。表面樹脂層20の厚さは、凹凸の凸部における最大厚さを指す。
【0016】
本実施形態における搬送面21の凹凸は、表面樹脂層20の長手方向に沿った複数の縦溝22から構成される。縦溝22は、幅wが0.5~3.0mm程度であり、深さdが0.2~1.0mm程度である。縦溝22は、表面樹脂層20の幅方向で、搬送面21の全域に設けられているので、凹凸は搬送面21全域に存在する。
【0017】
表面樹脂層20は、引張強度が3.5~8MPaである。表面樹脂層20の引張強度が3.5MPa以上であれば、一般的な搬送用途に、何ら支障なく問題なく用いることができる。ベルトの高伸縮性という特性を考慮して、搬送ベルト10の引張強度は3.5~35MPaに規定される。搬送ベルト10は、上述したような伸縮性の編布15と、熱可塑性材料からなる弾性層14とを備えているので、所定範囲の引張強度が確保された。搬送ベルト10の引張強度は、10MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましい。
【0018】
さらに、搬送ベルト10は、表面樹脂層20の搬送面21の静止摩擦係数が0.5~1.0である。表面樹脂層20が所定の第2の熱可塑性材料から構成されること、および搬送面21に凹凸が設けられていることによって、所定範囲の静止摩擦係数が確保された。搬送面21の静止摩擦係数が0.5以上であれば、搬送ベルト10が傾斜して設置された場合でも、搬送物を確実に搬送できる。搬送ベルト10は、物体搬送のための高摩擦係数という特性を考慮して、静止摩擦係数の上限は1.0に規定される。静止摩擦係数は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。引張強度および静止摩擦係数の求め方については、追って詳細に説明する。
【0019】
2.製造方法
搬送ベルト10は、編布15と弾性層14とが固着するととともに、弾性層14と表面樹脂層20とが固着して剥離しないような方法であれば、任意の方法により製造することができる。
【0020】
まず、所定の熱可塑性エラストマーを用いて、弾性層14となる熱可塑性のシートをカレンダー装置又は押し出し装置により作製する。シートの大きさは、伸縮性の編布15の大きさに合わせておく。シートは、ゴム糊を用いて編布15と固着させることができる。
【0021】
伸縮性の編布15には、予めゴム糊を含浸する。ゴム糊は、コーターや刷毛などの塗布手段を用いて編布15に含浸させることができる。あるいは、ゴム糊に編布15を浸漬して、編布15にゴム糊を含浸させてもよい。
【0022】
ゴム糊を含浸した編布15上に弾性層14を載置し、加熱加圧条件下で両者を固着する。こうして、伸縮性の編布15上に第1の熱可塑性材料からなる弾性層14が積層された芯体層12が得られる。芯体層12は、搬送ベルト10の引張強度に寄与する。芯体層12における弾性層14と編布15との割合を調整することで、引張強度を3.5~35MPaの間で変更することができる。例えば、弾性層14の割合が多いほど、引張強度は上昇する傾向となる。
【0023】
一方、所定の原料組成物を用いて、第2の熱可塑性材料からなる表面樹脂層20を作製する。原料組成物は、例えば、第1の熱可塑性材料であるエーテル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、エーテル系TPUと称する)と、添加剤として水添スチレン系熱可塑性エラストマー(以下、スチレン系TPEと称する)と、相溶化剤およびワックスとを混合して調製することができる。こうした原料組成物を用いることで、第1の熱可塑性材料より硬度の低い第2の熱可塑性材料が得られる。
【0024】
原料組成物における各成分の割合は、例えば以下のとおりとすることができる。
エーテル系TPU:50~60質量%
スチレン系TPE:10~30質量%
相溶化剤:0~10質量%
ワックス:5~15質量%
炭酸カルシウム:0~25質量%
必要に応じて、さらに任意成分を配合して原料組成物を調製してもよい。
【0025】
エーテル系TPUとしては、例えば、日本工業規格JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメーターで測定した硬度が80相当のエーテル系熱可塑性ウレタン樹脂を用いることができる。相溶化剤としては水添スチレン系エラストマーと熱可塑性ウレタン樹脂の混合物を用いることができる。ワックスとしては、市販の固形パラフィンオイルを用いることができる。
【0026】
各成分を所定の割合で配合して調製された原料組成物を用いて、表面樹脂層20となる樹脂シートをカレンダー装置により作製する。すなわち、溶融状態の原料組成物を、所定の間隔で配置された二本のロール間に連続して流し込みながら、二本のロールを同じ方向に回転させて帯状の樹脂シートを得る。このとき、一方のロールを表面が平滑なロールとし、他方のロールを、縦溝に対応する凸部を有するロールとすることにより、縦溝を有する樹脂シートが得られる。樹脂シートの大きさは、伸縮性の編布15の大きさに合わせておく。
【0027】
得られた樹脂シートを、予め作製した芯体層12における弾性層14上に配置して、積層体を得る。この積層体を押し出し時に積層するか、もしくはシート成型後に加熱圧着して、所定の厚さに加工する。加熱圧着後の積層体の厚さは、例えば1.0~3.0mm程度とすることができる。加熱圧着を行うことによって、芯体層12における弾性層14と表面樹脂層20とが固着される。
【0028】
こうして、伸縮性の編布15と弾性層14とを有する芯体層12上に表面樹脂層20が積層された本実施形態の搬送ベルト10が得られる。搬送ベルト10は、両端部をフィンガー継手により継ぎ合せて無端状に加工して、傾斜コンベア等に適用することができる。
【0029】
表面樹脂層20の搬送面21の静止摩擦係数は、表面樹脂層20を構成している第2の熱可塑性材料の硬度に依存する。原料組成物における各成分の配合割合を調節することで、搬送面21の静止摩擦係数を0.5~1.0の間で変更することができる。例えば、原料組成物において、エーテル系TPUに対するスチレン系TPEの割合が多いほど、静止摩擦係数は大きくなる。
【0030】
あるいは、表面樹脂層20の搬送面21に設ける縦溝22の寸法(幅wおよび深さd)を調節することによって、搬送面21の静止摩擦係数を変更することもできる。例えば、縦溝22の幅wや深さdが大きいほど、搬送面21の表面に埃やゴミがたまりにくいので、静止摩擦係数は大きくなる。
【0031】
3.作用及び効果
本実施形態に係る搬送ベルト10は、伸縮性の編布15と、この編布15上に設けられた熱可塑性材料からなる弾性層14とを備えている。搬送ベルト10は、伸縮性を有しているので、テンション機構を用いずに無端ベルトとして用いることができる。しかも、搬送ベルト10は、編布15および弾性層14を備えることで十分な強度を有し、引張強度が3.5~35MPaである。
【0032】
弾性層14の上に設けられた表面樹脂層20は、弾性層14より硬度の低い熱可塑性材料から構成され凹凸を有する搬送面21を有している。一般に知られているように、熱可塑性材料は、硬度が低くなると摩擦係数が大きくなるので、表面樹脂層20の搬送面21は、弾性層14の表面より大きな静止摩擦係数を有する。搬送面21は、静止摩擦係数が0.5~1.0の範囲となる。本実施形態に係る搬送ベルト10は、傾斜搬送の際にも搬送物を確実に搬送することができ、十分な耐摩耗性も備えている。
【0033】
搬送ベルト10は、傾斜コンベアやギャップ調整コンベアに好適に用いることができる。この場合には、搬送物を横方向に移動させつつ、上下方向にも移動させることができるので、設置場所や作業領域の省スペース化に繋がる。また、ローラコンベアにおけるローラを覆うように、搬送ベルト10を設けた場合には、安定に搬送するのが難しかった搬送物(例えば小型の搬送物など)を、安定的に搬送することが可能となる。
【0034】
4.実施例
以下、具体例を挙げて本発明の搬送ベルトを詳細に説明するが、本発明は以下の具体例のみに限定されるものではない。
【0035】
<実施例>
まず、エーテル系TPUを用いて、押し出し装置によりウレタンゴム製シート(厚さ0.3mm)を作製した。ウレタンゴム製シートは、搬送ベルトの弾性層となる。
【0036】
伸縮性の編布には、ゴム糊を塗布した(塗布量5g/m2)。ゴム糊が塗布された編布とエーテル系TPUを押し出し成型の際に圧着し両者を固着させて芯体層を得た。
【0037】
以下の処方で各成分を配合して、表面樹脂層の原料組成物を調製した。
エーテル系TPU(硬度80°):65質量%(433部)
スチレン系TPE(硬度55°):15質量%(100部)
相溶化剤:5質量%(5部)
ワックス(固形パラフィンオイル):15質量%(100部)
【0038】
得られた原料組成物を用いて、上述したような押し出し装置により、樹脂シート(幅1000mm、厚さ0.3mm)を作製した。樹脂シートの一表面には、長手方向に沿った複数の縦溝(幅0.5mm、深さ0.4mm)が形成された。樹脂シートは、搬送ベルトの表面樹脂層となる。
【0039】
各層を押し出し成型する際に圧着し、実施例の搬送ベルトが得られた。搬送ベルトの厚さは、2.3mmである。
【0040】
<比較例>
前述の実施例で作製した芯体層のみを用いて、比較例の搬送ベルトとした。
【0041】
実施例、比較例の搬送ベルトについて、引張強度および静止摩擦係数を測定した。試験方法を以下に示す。
【0042】
<引張強度>
引張強度は、JIS K6301(新JIS K6251)に準拠して求める。実施例、比較例の搬送ベルトは、ダンベル状試験片(3号)とし、引張試験機(島津製作所製)を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下、500mm/minで破断するまで引っ張る。試験片を破断させるのに要した最大の引張り力から、引張強度を算出する。
【0043】
<静止摩擦係数>
静止摩擦係数は、表面性測定器(新東科学製)により測定する。実施例、比較例の搬送ベルトは、20mm×30mmの試験片として用い、ボール紙を対象物とする。ボール紙の上に試験片を載置し、0.8kPaの荷重を印加しつつ、5mm/minの速度で試験片を移動させて、静止摩擦係数を求める。
【0044】
引張強度は、実施例の搬送ベルトについては4.6MPaであり、比較例の搬送ベルトについては4.8MPaであった。芯体層(比較例の搬送ベルト)の一表面に表面樹脂層を設けても、芯体層の引張強度は損なわれることなく、95%以上維持されている。実施例の搬送ベルトは、十分な引張強度を有することがわかる。
【0045】
静止摩擦係数は、実施例の搬送ベルトについては0.95であり、比較例の搬送ベルトについては0.45であった。実施例のベルトは、表面の静止摩擦係数が比較例のベルトの2倍以上である。
【0046】
5.変形例
本発明は、ここに記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0047】
上記実施形態においては、表面樹脂層20の幅方向の全域に、複数の縦溝22からなる凹凸を設けたが、これに限定されない。凹凸は、表面樹脂層20の幅方向で、搬送面21の少なくとも50%に設けられていれば、静止摩擦係数を高めることができる。
【0048】
複数の縦溝22は、表面樹脂層20を作製する際に設けてもよい。例えば、原料組成物を用いて離型紙上にシート状の材料を作製し、シート状の材料の上には、縦溝に対応した表面形状を有する押圧部材を配置する。離型紙と押圧部材とに挟まれたシート状の材料は、一般的な方法により固化させる。
【0049】
離型紙を除去して、予め作製した芯体層12における弾性層14上に配置し、積層体を得る。積層体の上表面は押圧部材となり、下表面は伸縮性の編布15となる。この積層体を加熱圧着して、所定の厚さに加工する。加熱圧着後の積層体の厚さは、例えば1~3mm程度とすることができる。加熱圧着を行うことによって、芯体層12における弾性層14と表面樹脂層20とが固着されて、実施形態の搬送ベルトが得られる。
【0050】
搬送面21の凹凸は、凹部と凸部とを縦横交互に設けることもできる。縦横に設けられた凹凸のピッチは、例えば0.5~3.0mm程度、凹凸における凸部の高さは、例えば0.2~1.0mm程度とすることができる。こうした凹凸を設けるには、表面樹脂層20を作製する際に、所定の凹凸を有する目付け加工用帆布を用いればよい。
【0051】
上記実施形態においては、芯体層12は、伸縮性の編布15と弾性層14との積層構造としたが、これに限定されない。例えば、
図2の搬送ベルト10Aにおける芯体層12Aのように、編布15の下面に、熱可塑性材料からなる追加弾性層16を設けることができる(変形例A)。追加弾性層16に用いる熱可塑性材料は、弾性層14に用いる熱可塑性材料と同一でも異なっていてもよい。
【0052】
図3の搬送ベルト10Bにおける芯体層12Bのように、追加弾性層16の下面に伸縮性の追加編布17を設けることもできる(変形例B)。追加編布17における繊維および追加編布17の編み方は、編布15と同一でも異なっていてもよい。
【0053】
第2の熱可塑性材料は、第1の熱可塑性材料と添加剤との混合物である場合に限らず、第1の熱可塑性材料とは異なる熱可塑性材料と添加剤の混合物でもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,10A,10B 搬送ベルト
12,12A,12B 芯体層
14 弾性層
15 編布
16 追加弾性層
17 追加編布
20 表面樹脂層
21 搬送面
22 縦溝