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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】皮膜付金属材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/50 20060101AFI20230217BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C23C22/50
C23C26/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018144748
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019999
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100160945
【弁理士】
【氏名又は名称】菅家 博英
(72)【発明者】
【氏名】長峰 正樹
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/011950(WO,A1)
【文献】特開2014-148733(JP,A)
【文献】特開平3-260087(JP,A)
【文献】特開2006-348360(JP,A)
【文献】特開2018-168421(JP,A)
【文献】特開2006-183073(JP,A)
【文献】特表昭57-501532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料と、その表面に形成された化成皮膜と、を有する皮膜付金属材料であって、
前記化成皮膜は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物を含み、
前記化成皮膜の皮膜量が、亜鉛及び/又はアルミニウムの合計金属換算質量として1.0~10.0mg/mであり、
前記金属材料と前記化成皮膜との界面において、前記化成皮膜にアルミニウムのみが含まれる場合、界面の金属材料は、鉄、チタン、マンガン、銅、銀のいずれかを50質量%以上含み、前記化成皮膜に亜鉛のみ、又はアルミニウムと亜鉛を含む場合、界面の金属材料は、鉄、銅、銀、のいずれかを50質量%以上含む、皮膜付金属材料。
【請求項2】
金属材料に、少なくとも亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを含む酸性表面処理剤を接触させ、化成皮膜を形成する工程を含み、
前記酸性表面処理剤は、亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを、合計金属換算濃度として、10~50000ppmの範囲内で含む、請求項1に記載の皮膜付金属材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成皮膜付金属材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料に耐食性を付与するため、金属材料表面に化成皮膜を形成する技術が開発されている。
金属材料に耐食性を付与するための化成皮膜を形成し得る化成処理としては、例えば、特許文献1に記載のリン酸亜鉛化成処理、及び特許文献2に記載のジルコニウム化成処理などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-302477号公報
【文献】特開2000-199077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に記載のリン酸亜鉛化成処理、及び特許文献2に記載のジルコニウム化成処理とは異なる、耐食性に優れる新規化成皮膜が形成された皮膜付金属材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、耐食性に優れる新規化成皮膜が形成された皮膜付金属材料を提供するために鋭意研究を重ねた結果、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物を含む化成皮膜を、特定の酸化還元電位を有する金属材料表面に析出させることによって、耐食性に優れる新規化成皮膜が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]金属材料と、その表面に形成された化成皮膜と、を有する皮膜付金属材料であって、
前記化成皮膜は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物を含み、
前記金属材料と前記化成皮膜との界面において、前記金属材料は、前記化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属を含む、皮膜付金属材料;
[2]前記化成皮膜の皮膜量が、亜鉛及び/又はアルミニウムの合計金属換算質量として1.0~50.0mg/mである、[1]に記載の皮膜付金属材料;
[3]金属材料に、少なくとも亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを含む酸性表面処理剤を接触させ、化成皮膜を形成する工程、を含む皮膜付金属材料の製造方法であって、
前記金属材料の前記酸性表面処理剤との接触面は、前記化成皮膜に含まれる亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属を含む、皮膜付金属材料の製造方法;
[4]前記酸性表面処理剤は、亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを、合計金属換算濃度として、10~50000ppmの範囲内で含む、[3]に記載の皮膜付金属材料の製造方法;
などを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐食性に優れる新規化成皮膜が形成された皮膜付金属材料を提供することができる。また、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態は、金属材料と、その表面に形成された化成皮膜と、を有する皮膜付金属材料である。そして、化成皮膜は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物を含み、前記金属材料と前記化成皮膜との界面において、前記金属材料は、前記化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属を主成分として含むものである。
【0009】
(1)金属材料
本実施形態で用いられる金属材料は、耐食性が要求され得る金属材料であれば特に限定されない。典型的には鉄鋼材料(例えば、冷間圧延鋼板及び鋼帯、熱間圧延鋼板及び鋼帯、酸洗材、合金鋼等)が挙げられる。
【0010】
金属材料は、単層構造であってよく、異なる材料から構成される複層構造、例えば単層構造の金属表面に別の金属コーティングがされている材料など、であってよいが、金属材料と化成皮膜との界面において、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属を主成分として含むことが好ましい。この点については、後述する。なお、「主成分」とは、最も多く含む成分を意味し、例えば50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。また、前記金属材料は、前記貴な金属成分を主成分ではない量で含む場合であっても、金属材料の表面に偏析したもの、又は表面の一部に濃化したものであってもよい。
【0011】
(2)化成皮膜
化成皮膜は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上の化合物を含む。2以上の化合物を含む場合の組み合わせとしては酸化亜鉛と酸化アルミニウム、水酸化亜鉛と水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と水酸化亜鉛、酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と水酸化亜鉛と水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と水酸化亜鉛と酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛と酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム、酸化亜鉛と水酸化亜鉛と酸化アルミニウムと水酸化アルミニウム、が挙げられる。2以上の化合物を含む場合、これらの構成比率は特段限定されるものではない。
また、上記化合物以外に、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、中和に用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン類やアンモニアなどの塩基性窒素化合物、シリカやシランカップリング剤などの珪素化合物、リン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、鉄化合物、有機防錆剤などの防錆効果が期待される化合物の他、金属材料表面に形成される酸化物、水酸化物などが挙げられる。但し、更にマグネシウム化合物を化成皮膜に含む場合には、皮膜中の亜鉛及び/又はアルミニウム成分の含有量が減少する場合があるため、化成皮膜中に含まないことが好ましい場合もある。
【0012】
上記化合物を含む化成皮膜は、上記金属材料に、酸性表面処理剤を接触させることで形成され得る。酸性表面処理剤は、亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを含む酸性表面処理剤である。
酸性表面処理剤に含有される亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンの供給源は特に限定されず、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、酸化
アルミニウム;酸化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性表面処理剤中の亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンの含有量としては、金属換算濃度で通常10ppm以上であり、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。また通常50000ppm以下であり、好ましくは30000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下である。
【0013】
酸性表面処理剤のpHは酸性であればよく、通常1~7であり、2~5であることが好ましい。ここで、本明細書でのpHは、pHメーターを用い、25℃で測定した値である。酸性表面処理剤のpHを前記範囲にするために、pH調整剤を用いてもよい。pHを上昇させたい場合に使用可能なpH調整剤は、特に制限されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液、水酸化カリウムの水溶液、アンモニア水等が好ましい。一方、pHを下げたい場合に使用可能なpH調整剤は、特に制限されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、硝酸、乳酸、メタンスルホン酸等が好ましい。なお、これらのpH調整剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0014】
酸性表面処理剤の製造方法については、特に制限されるものではないが、例えば、酸成分に亜鉛及び/又はアルミニウムを溶解する方法、亜鉛及び/又はアルミニウムの、硫酸塩や硝酸塩などの酸塩を溶媒に溶解させる方法、があげられる。酸成分の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、無機酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、有機酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。また、この酸性表面処理剤には亜鉛またはアルミニウムの他にリンを含んでいてもよい。
【0015】
溶媒としては、亜鉛及び/又はアルミニウムの酸塩を溶解できる溶媒であれば特段限定されないが、水性溶媒であることが好ましい。水性溶媒としては、全溶媒の質量を基準とした際、水を50質量%以上含有するものであれば特に制限されるものではない。水性溶媒に含まれる水以外の溶剤としては、例えば、ヘキサン、ペンタン等のアルカン系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、1-ブタノール、エチルセロソルブ等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド系溶剤;等を挙げることができる。これらの水以外の溶剤は、1種を混合してもよいが、2種以上を組み合わせて混合してもよい。なお、環境上及び経済上の観点から、水を用いることが好ましい。
【0016】
(3)皮膜付金属材料
本実施形態に係る皮膜付金属材料は、基体となる金属材料と化成皮膜との界面(以下、単に界面とも称する)において、金属材料が、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属を含むものである。すなわち、化成皮膜と化成皮膜が直接覆う金属材料表面との界面において、このような酸化還元電位の関係を有することで、耐食性に優れた化成皮膜付金属材料を提供できる。
【0017】
ここで金属材料と化成皮膜との界面において、金属材料が化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより貴な金属であるとは、金属材料が単層構造である場合には、金属材料を構成する金属の主成分と、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムと、を比較して、金属材料の主成分である金属が貴であることをいう。一方、金属材料が複層構造である場合、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムとの間で比較すべき酸化還元電位は、化成皮膜が直接覆う部分に存在する層に主成分として含む金属の酸化還元電位であり、化成皮膜が直接覆う部分に存在する金属材料の主成分と、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムと、を比較して、金属材料の主成分である金属が貴であるこ
とをいう。
ここで、化成皮膜に含まれる亜鉛及び/又はアルミニウムは、皮膜中では酸化物及び/水酸化物であり、電位により化学状態が変化しないため、金属材料との間で比較すべき、特定のpHにおける金属元素の化学状態が金属から金属イオンへの酸化還元反応の平衡状態である電位を示す酸化還元電位は、亜鉛及びアルミニウムの金属としての酸化還元電位である。また、酸化還元電位の測定、比較は電気化学的方法により行われるが、浸漬法により測定、比較を行ってもよい。
【0018】
本実施形態に係る皮膜付金属材料の、化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムと金属材料との組み合わせは、化成皮膜にアルミニウムのみが含まれる場合、界面の金属材料は、例えば鉄鋼材料であってよく、チタン材料であってよく、マンガン材料であってよく、銅材料であってよく、銀材料であってよく、マグネシウム合金材料であってよい。
この場合、化成皮膜を形成する酸性表面処理剤と金属材料との組み合わせとしては;
酸性表面処理剤中に硝酸アルミニウムを含み、金属材料が冷間圧延鋼板及び鋼帯である場合;
酸性表面処理剤中に硫酸アルミニウムを含み、金属材料がマグネシウム-アルミニウム合金材である場合;
酸性表面処理剤中に硝酸アルミニウム、及びフッ化アルミニウムを含み、金属材料が炭素鋼である場合;
酸性表面処理剤中に硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、及び酸化アルミニウムから選択される1種以上を含み、金属材料が銀材料である場合;
酸性表面処理剤中に酸化アルミニウムを含み、金属材料が溶融亜鉛めっき材である場合;が例示される。
【0019】
化成皮膜に亜鉛のみ、又はアルミニウムと亜鉛が含まれる場合、界面の金属材料は、例えば鉄鋼材料であってよく、銅材料であってよく、銀材料であってよい。
この場合、化成皮膜を形成する酸性表面処理剤と金属材料との組み合わせとしては;
酸性表面処理剤中に酸化亜鉛を含み、金属材料が冷間圧延鋼板及び鋼帯である場合;
酸性表面処理剤中に硝酸亜鉛を含み、金属材料が熱間圧延鋼板及び鋼帯である場合;
酸性表面処理剤中に硫酸亜鉛を含み、金属材料が酸洗材である場合;酸性表面処理剤中に塩化亜鉛を含み、金属材料が合金鋼である場合;
上記の酸性表面処理剤中に、更に硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、及び酸化アルミニウムから選択される1種以上を含む場合;
が例示される。
【0020】
金属材料と化成皮膜との界面において、金属材料が化成皮膜を構成する亜鉛及び/又はアルミニウムより卑な金属である場合、例えば金属材料がアルミニウムであり、金属アルミニウム上に亜鉛イオンを含む化成処理剤を接触させた場合、亜鉛イオンがアルミニウム金属と置換する、いわゆる置換亜鉛めっきが生じ、本実施形態に係る化成皮膜が形成されない。
なお、金属材料として、亜鉛系めっきを表面に有するものは、本発明の効果が十分に発揮できない場合もある。
【0021】
皮膜付金属材料の化成皮膜量は、皮膜中の亜鉛及び/又はアルミニウムの、合計金属換算皮膜量として1.0~50.0mg/mが好ましいが、この範囲に制限されるものではない。
合計金属換算皮膜量の算出方法に関しては、化成皮膜付金属材料を1リットルあたり0.1モルとする硝酸に2分間浸漬し、該化成皮膜を剥離し、その後該剥離溶液を適宜希釈し、ICP分析により得られた金属溶解濃度から、基準面積あたりの化成皮膜付着量を算出できる。
【0022】
(4)皮膜付金属材料の製造方法
上記皮膜付金属材料を製造する方法は、金属材料に、少なくとも亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオンを含む酸性表面処理剤、すなわち上記酸性表面処理剤を接触させ、化成皮膜を形成する工程、を含む。
酸性表面処理剤の金属材料への接触は、典型的には浸漬処理法が用いられるが、この方法に制限されるものではなく、スプレー処理法、流しかけ処理法、又はこれらの組み合わせ等を用いてもよい。
【0023】
酸性表面処理剤の金属材料への接触は、所定の温度範囲で一定時間行うことが好ましい。接触温度は、20℃以上60℃以下の範囲内であることが好ましく、25℃以上50℃以下の範囲内であることがより好ましく、35℃以上45℃以下の範囲内であることが更に好ましい。また接触時間は、酸性表面処理剤の濃度によって適宜調整すればよく、通常10秒以上600秒以下の範囲内であり、好ましくは30秒以上180秒以下の範囲内である。
【0024】
なお、酸性表面処理剤を金属材料へ接触させる前に、脱脂と称される金属材料の表面上の油分及び付着物の除去を行う脱脂処理工程を行ってもよいし、行わなくてもよい。また、化成皮膜形成後に水洗、又は水洗及び乾燥を行ってもよいし、行わなくてもよい。これらを行う場合の方法は既知の方法が適用され、特段限定されない。
更に、酸性表面処理剤を金属材料へ接触させ、化成皮膜を金属材料に形成した後、更に別の化成処理工程、例えばリン酸亜鉛化成処理工程やジルコニウム化成処理工程、を行ってもよく、金属材料に塗膜を形成する塗装処理工程、を行ってもよい。これらを行う場合の方法は既知の方法が適用され、特段限定されない。
【実施例
【0025】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲が制限されるものではない。
【0026】
[酸性表面処理剤の調製]
亜鉛イオン及び/又はアルミニウムイオン源を所定の金属濃度となるように水に配合した後、必要に応じて硝酸又は水酸化ナトリウムを用いて所定のpHに調整し、表1に示す酸性表面処理剤1~10を調製した。
なお、酸性表面処理剤の調製に用いた金属イオン源は以下のとおり。
硝酸亜鉛六水和物:純正科学株式会社製、試薬、規格1級
硝酸アルミニウム九水和物:純正科学株式会社製、試薬、規格1級
【0027】
【表1】
【0028】
[試験片の作製]
金属材料として、JIS G3141(2011)で規格された冷間圧延鋼板(SPCC:厚さ0.8mm)を縦70mm×横150mmのサイズに切断し、使用した。
上記金属材料を、脱脂剤(商品名:ファインクリーナーE2093、日本パーカライジング株式会社製)の24g/L水溶液に45℃で2分間浸漬し、金属材料に付着した油分や汚れを取り除いた。その後、金属材料の表面を脱イオン交換水で水洗した。
【0029】
[化成皮膜付金属材料の製造]
水洗後の各試験片を表1に記載の酸性表面処理剤に浸漬させ、その後水洗処理・乾燥処理を適宜行うことによって化成皮膜付金属材料を製造した。用いた酸性表面処理剤の種類、水洗処理及び乾燥処理の有無・乾燥温度、並びに形成された化成皮膜の皮膜量を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
[化成皮膜付金属材料の評価]
実施例1~21及び比較例1で得られた化成皮膜付金属材料を40℃、湿度98%RHの環境下で放置した。60秒後に各化成皮膜付金属材料の表面を観察し、以下の評価基準に従って耐食性を評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
A:発錆が全く確認されなかった
B:試験片面積の0%超50%以下に発錆が確認された
C:試験片面積の50%超に発錆が確認された
なお、本発明の効果はB以上を有効とした。
【0032】
【表3】