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特許7228983BOG再凝縮装置およびそれを備えるLNG供給システム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】BOG再凝縮装置およびそれを備えるLNG供給システム。
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018189601
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2019095055
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2017223296
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338977(JP,A)
【文献】特開平01-320400(JP,A)
【文献】米国特許第06209350(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0080209(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGバッファ内のLNGから気化したボイルオフガス(BOG)を再凝縮するBOG再凝縮装置であって、
LNGバッファからBOGを導出するBOG導出配管と、
前記BOG導出配管から送られるBOGを第一の温度まで冷却させる第一の凝縮器と、
前記第一の凝縮器内のガスを第二の凝縮器へ供給する第一のガス供給部と、
前記第一の凝縮器から、前記第一の凝縮器内のLNGを前記LNGバッファに返送する第一の返送配管と、
前記第一のガス供給部から送られるBOGを、前記第一の温度よりも低い第二の温度まで冷却させる前記第二の凝縮器と、
前記第二の凝縮器から、前記第二の凝縮器内のLNGを前記LNGバッファに返送する二の返送配管と、
を備え、
前記BOG再凝縮装置は、さらに、前記第一の凝縮器へ送られる第一冷媒および/または前記第二の凝縮器へ送られる第二冷媒の送込量および/または温度を制御する冷媒制御手段を、備え、
前記第一の凝縮器は、第一の熱交換部を備え、
前記第二の凝縮器は、第二の熱交換部を備え、
前記第二の熱交換部から導出された冷媒の少なくとも一部は、前記第一の熱交換部に導入されることを特徴とするBOG再凝縮装置。
【請求項2】
前記冷媒制御手段は、
冷媒を貯留する冷媒バッファと、
前記冷媒バッファに供給される前記冷媒の導入量を制御するレベル指示調節計および第二の冷媒流量調整弁と、
前記冷媒バッファから冷媒を前記第二の凝縮器の第二の熱交換部を介して前記冷媒バッファに戻す循環経路と、
前記第二の熱交換部と前記冷媒バッファとの間の前記循環経路に配置される第一の冷媒流量調整弁と、
前記冷媒バッファから前記冷媒を前記第一の凝縮器の第一の熱交換部へ送る第一の冷媒返送経路と、
前記第二の凝縮器から排出される窒素ガスを含有する排出ガスの圧力を測定する圧力指示調整計と、
前記圧力指示調整計の測定値に基づいて前記第一の冷媒流量調整弁を制御する制御部と、
を備える請求項に記載のBOG再凝縮装置。
【請求項3】
前記冷媒は、液体窒素および/または液体空気であることを特徴とする請求項1または2に記載のBOG再凝縮装置。
【請求項4】
前記冷媒が窒素である場合において、前記第二の凝縮器内の圧力が、あらかじめ定めた下限界値以下となった時に、前記第一の冷媒送出流路内の窒素ガスを前記第二の凝縮器内に導入する圧力制御用窒素導入経路を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のBOG再凝縮装置。
【請求項5】
LNGバッファと、
請求項1~のいずれか1項に記載のBOG再凝縮装置と、を備える、LNG供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGのBOGを再凝縮するためのBOG再凝縮装置およびそれを備えるLNG供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)のような低温液体を貯蔵する場合に、外部からの自然入熱などにより気化したボイルオフガス(BOG)を再び液化・凝縮する、再凝縮装置(リコンデンサーともいう)が用いられることが一般的である。
LNGを貯蔵する貯槽から発生したBOGを、液体窒素や液体空気のような極低温冷媒との熱交換により再凝縮した後、LNGバッファへと返送する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002―295799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体窒素を冷媒とするBOGの再凝縮装置においては、液体窒素とLNGバッファから発生したBOGとの熱交換が単一の再凝縮器内で行われることが通常である。このため、再凝縮器内では、比較的温度の高いBOGと極低温の液体窒素との間で急激な熱交換が行われ、BOG内の主成分であるメタンや不純物が凝固して配管を閉塞させるという問題があった。
【0005】
また、再凝縮器内のBOGを過度に冷却すると再凝縮器内が負圧となり、再凝縮器が変形したり故障したりするおそれがある。変形や故障を低減するためには、強度が高い耐圧構造としなければならないが、このような設計は部材の選定、構造の複雑さの観点から容易ではない。
【0006】
上記実情に鑑みて、本発明では、主成分であるメタンや不純物による再凝縮装置内における配管の閉塞を低減したLNG再凝縮装置およびLNG再凝縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明1)
本発明に係るBOG再凝縮装置は、LNGバッファ内のLNGから気化したボイルオフガス(BOG)を再凝縮するBOG再凝縮装置であって、
LNGバッファからBOGを導出するBOG導出配管と、
前記BOG導出配管から送られるBOGを第一の温度まで冷却させる第一の凝縮器と、
前記第一の凝縮器から、前記第一の凝縮器内のガスを導出する第一のガス供給部と、
前記第一の凝縮器から、前記第一の凝縮器内のLNGを前記LNGバッファに返送する第一の返送配管と、
前記第一のガス供給部から送られるBOGを、前記第一の温度よりも低い第二の温度まで冷却させる第二の凝縮器と、
前記第二の凝縮器から、前記第二の凝縮器内のLNGを前記LNGバッファに返送する第二の返送配管と、を備え、
前記BOG再凝縮装置は、さらに、
前記第一の凝縮器へ送られる第一冷媒および/または前記第二の凝縮器へ送られる第二冷媒の送込量および/または温度を制御する冷媒制御手段を、備える。
【0008】
LNGのBOGは成分として主にメタンと窒素を含むが、メタンの凝縮のためには、例えば液体窒素や液体空気のような低温冷媒が必要となる。しかしながら、これらの冷媒はメタンの固化点より低い温度になり得るため、直接、液体窒素や液体空気を冷媒とする第二の凝縮器にBOGを導入することは、メタンの固化を招く可能性がある。
この第二の凝縮器中のメタンの固化を緩和するため、本発明では、第一の凝縮器においてBOG中のメタンの一部を凝縮し、第二の凝縮器に導入されるBOG中の窒素濃度を上昇させる。これにより効果的にメタンの凝固点を降下させることができ、結果的に第二の凝縮器におけるメタン固化を防ぐことが容易になる。つまり、第二の凝縮器において、第二の温度までBOGが冷却されてもメタンが固化することはない。
また、本発明によれば、BOGは、第一の凝縮器でにおいて第一の温度まで冷却される。第一の温度は、第二の温度よりも高い温度であるため、第一の凝縮機内でメタンが固化する恐れはない。
以上により、本発明によれば、第一の凝縮器および第二の凝縮器のいずれにおいてもメタンが固化することなく、BOGを再凝縮させることが可能となる。
【0009】
(発明2)
本発明に係るBOG再凝縮装置はまた、前記第一の凝縮器は第一の熱交換部を備え、前記第二の凝縮器は第二の熱交換部を備え、前記第二の熱交換部から導出された冷媒の少なくとも一部は、前記第一の熱交換部に導入されることができる。
【0010】
第一の熱交換部と、第二の熱交換部とでは異なる冷媒を用いることもできるが、第二の熱交換部で熱交換をした冷媒を第一の熱交換部に導入してさらに熱交換をさせてもよい。かかる構成によれば、第二の熱交換部経由後の冷媒は、第二の凝縮器内のBOGとの熱交換により所定の温度まで温度が上昇している。該冷媒は、第一の熱交換部に導入され、第一の凝縮器内のBOGとさらに熱交換をすることにより、さらに温度が上昇する。
以上により、第一の熱交換部の温度は、第二の熱交換部よりも必然的に高くなるため、温度制御が容易である。また、冷媒の冷熱をより有効に使用することが可能となる。
【0011】
(発明3)
前記冷媒制御手段は、
冷媒を貯留する冷媒バッファと、
前記冷媒バッファに供給される前記冷媒の導入量を制御するレベル指示調節計および第二の冷媒流量調整弁と、
前記冷媒バッファから冷媒を前記第二の凝縮器の第二の熱交換部を介して前記冷媒バッファに戻す循環経路と、
前記第二の熱交換部と前記冷媒バッファとの間の前記循環経路に配置される第一の冷媒流量調整弁と、
前記冷媒バッファから前記冷媒を前記第一の凝縮器の第一の熱交換部へ送る第一の冷媒返送経路と、
前記第二の凝縮器から排出される窒素ガスを含有する排出ガスの圧力を測定する第二の圧力指示調整計と、
前記第二の圧力指示調整計の測定値に基づいて前記冷媒流量調整弁を制御する制御部と、を備えてもよい。
前記冷媒制御手段は、前記第一の冷媒返送流路に配置される第一の冷媒圧力調整弁をさらに備えてもよい。
前記冷媒圧力調整弁は、一定圧力(または一定範囲の圧力、所定の圧力)で冷媒が送り込まれるように弁開度を制御してもよい。弁開度は、第一の冷媒返送流路に配置された第一の圧力指示調整計により測定された圧力の測定値に基づいて制御される。
前記第二凝縮器の第二熱交換器へ送られる冷媒は、前記冷媒バッファ内の前記冷媒の液相部から送られる。
前記第一凝縮器の第一熱交換器へ送られる冷媒は、前記冷媒バッファ内の前記冷媒の気相部の少なくとも一部から送られる。
【0012】
第二の熱交換部において、BOGが冷媒と熱交換を行うにあたり、第二の凝縮器に導入されるBOGの量が急激に減少したり、第二の熱交換部に過剰の冷媒が供給されたりした場合、第二の凝縮器内の圧力が大気圧以下にまで低下する(負圧となる)ことが考えられる。圧力の低下は、液体窒素や液体空気等、BOGとの温度差が大きい冷媒が使用された場合に特に顕著である。第二の凝縮器内の圧力が大気圧以下になると、外部から空気が混入してBOGおよび/またはLNGと爆発的に反応したり、凝縮器自体が変形し、装置が故障する原因になるおそれがある。
【0013】
本発明では、第二の熱交換部の内の圧力に応じて、第二の熱交換部に導入される冷媒量を調製し、第二の凝縮器内が負圧となる現象を抑制することができる。すなわち、第二の排気配管に配置した第二の圧力指示調整計で測定した圧力が、あらかじめ定めた第一圧力閾値(P1とする)よりも低い場合には、第二の冷媒流量調整弁の開度を減少させ、第二の熱交換部の圧力が第二温度閾値(P2とする。P2はP1よりも高い圧力である)よりも高い場合には第二の冷媒流量調整弁の開度を増加させるように調整することができる。
【0014】
第二冷媒流量調整弁を閉じるまたは弁の開度を減少させることにより、第二の熱交換部内の冷媒の圧力が上昇する。その結果、第二の熱交換部内の冷媒は、第二の冷媒送出流路内を、第二の熱交換部から冷媒バッファの方向へと逆流する。これにより、冷媒と第二の熱交換部内のBOGとの伝熱面積を減少させ、熱交換を抑制することが可能となる。この制御により、第二の凝縮器における負圧の発生を防止することが可能となる。
【0015】
以上のように、本発明によれば第二の冷媒流量調整弁の開度を調製することにより、第二の凝縮器内が負圧になる現象を抑制し、外部からの空気等の混入に起因する爆発や、凝縮器の変形を抑制することができる。さらに外気の混入防止により、混入した外気が凝縮されてLNG中の不純物が増加する現象も抑制することができる。
【0016】
(発明4)
本発明に係るBOG再凝縮装置において、前記冷媒は液体窒素および/または液体空気であることができる。
【0017】
冷媒はBOG凝縮温度よりも低い液化温度を有することが望ましい。BOG凝縮温度よりも低い液化温度を有する流体として液体窒素および液体空気が挙げられる。液体窒素は不活性であり不燃性であるため、可燃性であるLNGを扱う設備に使用する上では安全上特に好適である。液体窒素は、空気から窒素を分離する必要があるのに対し、液体空気は分離操作が不要であるためエネルギー的に有利である。このため、液体窒素ではなく液体空気を冷媒として使用してもよい。
BOGと液体窒素とを熱交換させ、さらに液体窒素は液体空気と熱交換することにより冷却、再液化させて再利用することもできる。
液体窒素と液体空気の混合物を冷媒とすることもできる。
【0018】
(発明5)
本発明に係るBOG再凝縮装置の冷媒が窒素である場合において、前記第二の凝縮器内の圧力が、あらかじめ定めた下限界値以下となった時に、前記第一の冷媒送出流路内の窒素ガスを前記第二の凝縮器内に導入する圧力制御用窒素導入経路を有することができる。
【0019】
かかる発明によれば、第二の凝縮器内の圧力があらかじめ定めた下限値(PTHとする。例えば1.03barである)以下となった場合に、冷媒として使用された窒素ガスを第二の凝縮器内に導入し、第二の凝縮器内が負圧になることを防止することができる。かかる負圧防止対応策を単独で備えることもできるが、前記発明3に示した負圧防止対策を備えたうえで、発明3にかかる対応でもなお前記下限値を下回る圧力となった場合の予備的対策として備えることもできる。この場合、発明3における第一圧力閾値P1よりも前記下限値PTHの方が低い圧力値となる。
【0020】
(発明7)
本発明に係るLNG貯蔵システムは、発明1ないし発明6のいずれかに記載のBOG再凝縮装置と、LNGを貯蔵するLNGタンクと、前記LNGタンク内のBOGを前記LNGバッファに導入するLNGタンクBOG排出配管と、前記LNGバッファ内のLNGの液相の少なくとも一部を前記LNGタンク内に返送するLNGバッファLNG排出配管と、を備える。
【0021】
LNG船等から、LNGを受け入れたLNGタンクに直接LNGを再凝縮させるための凝縮器を取り付け、再凝縮BOGを直接LNGタンクに返送することも可能である。一方、再凝縮BOGを一度LNGバッファに受け入れ、その後にLNGバッファからポンプ等を使用してLNGタンクに返送することもできる。LNGバッファはポンプのNPSH(Net Positive Suction Head、正味吸込ヘッド)を確保する機能を有する。また、該LNGバッファから再凝縮BOGがLNGタンクへ返送されるときに、LNGタンク内の気相部分をLNGバッファに受け入れることにより、LNGタンクの圧力上昇を低減させる機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1のBOG再凝縮装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態2のBOG再凝縮装置の構成例を示す図である。
図3】実施形態3のBOG再凝縮装置の構成例を示す図である。
図4】実施形態4のLNG貯蔵システムの構成例を示す図である。
図5】実施例1のBOG再凝縮装置の構成およびデータ測定箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1のBOG再凝縮装置について、図1を参照し説明する。
BOG再凝縮装置1は、LNGバッファ12と、第一の凝縮器111と、第二の凝縮器211とを有する。第一の凝縮器111は、第一の熱交換部112を有する。第二の凝縮器211は、第二の熱交換部212を有する。
【0025】
LNGバッファ12は、LNGを貯蔵することができる構造を有するものであればよく、LNG船等から直接LNGを受け入れてもよいが、LNG船からLNGを受け入れたLNGタンク(図示せず)から発生したBOGを再凝縮させた再凝縮BOGを一時的に保持するバッファであってもよい。
LNGバッファ12内で発生したBOGは、BOG導出配管11から第一の凝縮器111へ導入される。第一の凝縮器111へ導入されたBOGの少なくとも一部は第一の熱交換部112内での冷媒との熱交換により、第一の温度(例えば-152℃)まで冷却され、再凝縮される。前記第一の温度は、BOGの一部が再凝縮する温度であって、メタンの急激な固化が発生しない温度であればよく、例えば-162℃から-150℃の範囲であればよい。
【0026】
図1に示すように第一の凝縮器111と、第二の凝縮器211とが、LNGバッファ12の上部に並列して設置されてもよい。この場合、第一のガス供給部114は、第一の凝縮器111から導出されるガスを第二の凝縮器211へと導入するガス供給配管であってもよい。
本発明においてはまた、第一の凝縮器111と、第二の凝縮器211とが、LNGバッファ12の上部に直列に配置されてもよい(不図示)。この場合、第一のガス供給部114は、第一の凝縮器111と第二の凝縮器211の中間部に位置する。
本発明において、LNGバッファ12はLNGを供給、貯蔵する貯槽であれば特に限定されず、LNGの一次貯蔵をする貯槽であってもよく、LNGの一次貯蔵をする貯槽に、第一の凝縮器および/または第二の凝縮器において凝縮されたBOGを返送するために一時的に貯蔵するバッファであってもよい。
【0027】
第一の凝縮器111内で再凝縮したBOGは第一の返送配管113を経由してLNGバッファ12へと返送される。第一の凝縮器111に導入されたBOGのうち、第一の凝縮器111内で凝縮されなかった部分は第一のガス供給部114から第二の凝縮器211へ導入される。第二の凝縮器211へ導入されるBOGは、第一の凝縮器111を経由することにより、LNGバッファ12内のBOGよりも窒素成分を多く含有する。
第二の凝縮器211へ導入されたBOGの少なくとも一部は第二の熱交換部212で冷媒と熱交換することにより、第二の温度(例えば-185℃)まで冷却され、再凝縮される。第二の温度は、前記第一の温度よりも低く、充分にBOGを再凝縮しうる温度であればよく、例えば-190℃から-182℃の範囲であればよい。第二の熱交換部212内のBOGは窒素成分を多く含有することから、LNGの凝固点降下の効果により純粋なLNGの凝固点である-182℃よりも低い温度であっても凝固しない。再凝縮したBOGは第二の返送配管213を経由してLNGバッファ12へと返送される。
【0028】
第二の熱交換部212において使用される冷媒は、第二冷媒バッファ501から第二の熱交換部212に導入され、第二の凝縮器211内のBOGと熱交換を行った後に第二の冷媒送出流路216を経由して第一の熱交換部112へ導入される。第一の熱交換部112へ導入された冷媒はさらに第一の凝縮器111内のBOGと熱交換を行う。冷媒の温度は第二の熱交換部212において前記第二の温度でBOGと熱交換を行った後に、前記第二の温度よりも高い前記第一の温度にまで上昇する。第一の温度を有する冷媒は、第一の凝縮器111内の第一の熱交換部112においてBOGと熱交換を行う。
【0029】
冷媒は、第一の温度および第二の温度において液体状態または気体状態であればよく、例えば窒素、空気、窒素と空気の混合体を使用することができる。冷媒として窒素を使用する場合、冷媒の窒素は液体状態で第二の熱交換部212へ導入される。液体窒素は第二の熱交換部212においてBOGと熱交換を行った後に、第二の冷媒送出流路216を経由して、第一の熱交換部112へ導入される。冷媒は、液体状態で第一の熱交換部112へ導入されてもよいが、冷媒の一部または全部が気化した状態で第一の熱交換部112へ導入されてもよい。第一の熱交換部111において熱交換した後は、冷媒の一部または全部が気化した状態となる。この冷媒は廃棄されてもよいが、再度冷却して液化し、再利用してもよい。
【0030】
(実施形態2)
実施形態2のBOG再凝縮装置2について、図2を参照し、説明する。実施形態1のBOG再凝縮装置1と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
図2に示すように第一の熱交換部112で使用する冷媒と、第二の熱交換部212で使用する冷媒とは異なっていてもよい。この場合、第一の熱交換部112内を流通する第一冷媒の温度は前記第一の温度に制御され、第二の熱交換部212内を流通する第二冷媒の温度は前記第二の温度に制御される。
第一冷媒は、第一冷媒バッファ503から第一冷媒流路504を経由して、第一の凝縮器111における第一の熱交換部112に送られる。第一冷媒は第一冷媒バッファ503に設けられた温度調整機構(不図示)により所定の温度に制御されても良い。第一熱交換部112内が第一の温度になるように、第一冷媒流路504に設けられた流量計(不図示)により第一冷媒の流量が制御されても良い。
同様に、第二冷媒は、第二冷媒バッファ501から第二冷媒流路502を経由して、第二の凝縮器211における第二の熱交換部212に送られる。第二冷媒は第二冷媒バッファ501に設けられた温度調整機構(不図示)により所定の温度に制御されても良い。第二熱交換部212内が第二の温度になるように、第二冷媒流路502に設けられた流量計(不図示)により第二冷媒の流量が制御されても良い。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3のBOG再凝縮装置3について、図3を参照し、説明する。実施形態1のBOG再凝縮装置1、実施形態2のBOG再凝縮装置2と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
第二の熱交換部212から第一の熱交換部112へ冷媒を直接導入してもよいが、図3に示すように、冷媒バッファ13を介して導入することもできる。
第二の熱交換部212から導出された冷媒は、第二の冷媒送出流路216から冷媒バッファ13に導入される。冷媒バッファ13に導入された冷媒のうち、液相部分は冷媒バッファ13の下方に貯留され、第二の冷媒返送流路215から再度第二の熱交換部212へ送られる。冷媒バッファ13に導入された冷媒のうち、気相部分は冷媒バッファ13の上方に貯留され、第一の冷媒返送流路115から第一の熱交換部112へ送られる。
冷媒は、冷媒バッファ13内で冷却され、一部が液化されてもよい。冷媒の冷却には、例えば液体空気や液体窒素を使用してもよい。冷媒として液体窒素を使用し、液体窒素の冷却にも液体窒素を使用することもできるが、液体空気を使用してもよい。
冷媒は冷媒バッファ13に一度導入され、循環する冷媒と混合されて第二の熱交換部212に供給される。系内の冷媒量はレベル指示計301によって指示され、冷媒量が減少すると第二の冷媒流調整弁22を開いて冷媒を追加する。
【0032】
熱交換部212内でBOGと熱交換することにより、冷媒の一部が気化すると、冷媒の気相部分は第二の冷媒送出流路216から冷媒バッファ13中の気相部の圧力が上昇し、冷媒バッファ13の下方から冷媒の液相部分が押し出される。押し出された冷媒は第二の冷媒返送流路215から第二の熱交換部212へ導入される。よって、冷媒バッファ13と第二の熱交換部212との間の冷媒の移動はポンプ等の動力を使用することなく実施することができる。
【0033】
第二の冷媒送出流路216には第一の冷媒流量調整弁21が配置されている。第一の冷媒流量調整弁21は通常時は全開状態で運用される。
第二の熱交換部212でBOGが凝縮され過ぎること等によって第二の熱交換部212内のBOG圧力が低下すると、第二の熱交換部212内の圧力が大気圧に対して負圧になる。これにより起こりうる第二の熱交換部212内のBOGへの大気混入による汚染、または第二の熱交換部212の損壊が起こりうる。
この問題を解決するために、第一の圧力指示調整計304で第二の熱交換部212内のBOG圧力を検知し、演算部303で検知されたBOG側圧力が閾値を下回ったと判断される場合に第一の冷媒流量調整弁21を閉じる制御を行う。
ここで、第一の圧力指示調整計304は第二の排気配管214上に配置されているが、第二の排気配管214の圧力は第二の熱交換部212内部の圧力と同等の圧力となっているため、第一の圧力指示調整計304により第二の熱交換部212内の圧力を検出することが可能となる。
第一の冷媒流量調整弁21を閉じる制御により、第二の熱交換部212内では熱交換によって発生した蒸発ガスが第二の熱交換部212の上部に蓄積して、その圧力で液冷媒を冷媒バッファ13に押し戻す。すると第二の熱交換部212における熱交換を停止することができ、結果的にBOGの更なる凝縮を止めて第二の熱交換部212内のBOG圧力が負圧になることを防止できる。第二の熱交換部212内の冷媒の液相部分は、第二の冷媒返送流路215から冷媒バッファ13へ逆流すると、第二の熱交換部212内の冷媒の液面が低下する。その結果、第二の熱交換部212内におけるBOGと液相の冷媒との伝熱面積が減少し、BOGが過度に冷却される現象を抑制することができるのである。第二の熱交換部212内の温度が上昇した場合に第一の冷媒流量調整弁21の開度を上昇させて、第二の熱交換部212内の冷媒の液面を上昇させ、BOG温度を低下させることができる。
第二の熱交換部212の温度は、第二の熱交換部212の壁面の温度や、内部の冷媒温度を検出することにより測定してもよく、第二の熱交換部212から排出される廃棄窒素ガスの温度を検出することにより取得してもよい。
冷媒は、第二の熱交換部212でBOGが固化しないような温度で運用する必要があり、その温度制御には冷媒の気液平衡を考慮した圧力制御が好適である。そのために第二の熱交換部212の運転圧力を制御するように、第一の冷媒供給流路115の圧力を測定し調整する第一の圧力指示調整計302によって、冷媒圧力調整弁25は開閉される。
【0034】
第二の熱交換部212内のBOG圧力を制御するように、第三の圧力指示調整計305によって排気圧力調整弁23は開閉される。
以上の通り、第二の冷媒流量調整弁21を制御することにより、BOGの熱量変動が大きい場合においても迅速に温度調節を行い、効果的にBOGを再凝縮させることができる。
【0035】
第二の冷媒送出流路216には第二の冷媒流量調節弁21が配置されている。第二の熱交換部212の温度が予め定めた所定の温度T1(本実施形態においては-182℃)よりも低下した場合、または、第二の熱交換部212内の圧力があらかじめ定めた所定の圧力P1(本実施形態においては1.06bar)よりも低下した場合には第二の冷媒流量調節弁21を閉じるか、または開度を減少させて第二の熱交換部212内の冷媒の気相部の圧力を上昇させることができる。これにより第二の熱交換部212内の冷媒の液相部分は、第二の冷媒返送流路215から冷媒バッファ13へ逆流し、第二の熱交換部212内の冷媒の液面が低下する。その結果、第二の熱交換部212内におけるBOGと液相の冷媒との伝熱面積が減少し、BOGが過度に冷却される現象を抑制することができる。第二の熱交換部212内の温度が上昇した場合には、第二の冷媒流量調整弁21の開度を上昇させて、第二の熱交換部212内の冷媒の液面を上昇させ、BOG温度を低下させることができる。
前記所定の圧力P1は、大気圧以上であればよく、第二の凝縮器211内の圧力が大気圧以下に低下し、凝縮器の変形や故障が発生することを抑制しうる。
第二の熱交換部212の温度は、第二の熱交換部212の壁面の温度や、内部の冷媒温度を検出することにより測定してもよく、第二の熱交換部212から排出される廃棄窒素ガスの温度を検出することにより取得してもよい。
【0036】
第二の凝縮器211内の圧力があらかじめ定めた所定の圧力P1よりもさらに低下し下限値に到達した場合(下限値PTHとする。下限値PTHはP1よりも低い圧力である)に、第一の熱交換部112より排出される冷媒(本実施形態においては窒素ガス)を第二の凝縮器212に導入する。PTHはP1よりも低く、かつ、大気圧よりも高い値とすればよく、本実施形態では1.03barである。第二の凝縮器211内の圧力を、第二の排気配管214に配置した圧力計により検出し、検出した圧力がPTHよりも低くなった場合に第四の冷媒流量調整弁24を開けて第一の冷媒送出流路116内の窒素ガスを、第二の排気配管214を経由させて、第二の凝縮器211内に導入する。これにより、第二の凝縮器211がさらなる負圧にさらされることを防ぐことができる。
【0037】
(実施形態4)
実施形態4のLNG貯蔵システム4について、図4を参照し説明する。実施形態1~3のBOG再凝縮装置1~3と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0038】
実施形態4のLNG貯蔵システム4は、移送されたLNGを受け入れるLNGタンク33と、LNGタンク内のBOGを受け入れるLNGバッファ12とを有する。LNGタンク33内のBOGは、一次的にLNGバッファ12に貯留され、その後実施形態1のBOG凝縮装置1により再凝縮される。再凝縮されてLNGバッファ12内の貯留した再凝縮BOGは、ポンプ401によりLNGタンク33へ返送される。LNGバッファ12から再凝縮BOGを受け入れると、LNGタンク33内の液相(LNG)の容積が増加し、気相(BOG)部分の圧力は上昇する。LNGタンク33に、LNGタンク内の圧力を測定する圧力計(不図示)を設け、所定の閾値(例えば1.1bar)よりもLNGタンク33内の圧力が高くなった場合には、LNGタンク33内のBOGをLNGバッファ12内に受け入れる制御としてもよい。
【0039】
(実施例1)
実施形態3にかかるBOG再凝縮装置3を用いて、原料としてメタン80重量%と窒素20重量%を含有するLNGを貯蔵した場合の、各部における圧力(barA)、温度(℃)、流量(kg/h)、メタン濃度(重量%)および窒素濃度(重量%)をシミュレーションにより実証した。冷媒には液体窒素を使用した。
【0040】
(結果)
LNGタンクからLNGバッファ12に、LNGのBOG(-150℃、1.2barA)が11,740kg/hの流量で供給されると、図5中の各部A~F、a~eの圧力(barA)、温度(℃)、流量(kg/h)、メタン濃度(重量%)および窒素濃度(重量%)は表1に示される結果が得られた。
【0041】
図5中の各部A~FはBOGの温度等を測定する箇所であり、図5中の各部a~eは冷媒である窒素の温度等を測定する箇所である。図5中の各部A~F、a~eの位置は次のとおりである。
Aの位置は、LNGタンク(不図示)からのBOGがLNGバッファ12に導入される直前である。Aの位置における測定結果は、BOG導出配管11における箇所(図5中の(A)で示す)の測定結果と同等となる。
Bの位置は、第一のガス供給部114にあり、第一の凝縮器111と第二の凝縮器211との間である。
Cの位置は、第一の返送配管113にあり、第一の凝縮器111とLNGバッファ12の間である。
Dの位置は、第二の排気配管214にあり、第二の凝縮器211の上部出口部分である。
Eの位置は、第二の返送配管213にあり、第二の凝縮器211とLNGバッファ12の間である。
Fの位置は、LNGバッファ12の底部出口部分であり、LNGバッファ12とLNGタンク(不図示)の間である。
aの位置は、冷媒である液体窒素を冷媒バッファ13に導入する直前であり、冷媒バッファ13の前段に配置された圧力調整器22と、冷媒バッファ13の間である。
bの位置は、第二の冷媒返送流路215にあり、冷媒バッファ13と第二の熱交換部212の間である。
cの位置は、第二の冷媒送出流路216にあり、第二の熱交換部212と第一の冷媒流量調整弁21の間である。
dの位置は、第一の冷媒返送流路115にあり、冷媒バッファ13と第一の熱交換部112の間である。
eの位置は、第一の熱交換部112の出口部分である。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1の結果により、第一の凝縮器111および第二の凝縮器211のいずれにおいてもメタンを凝固させることなく、LNGのBOGを再凝縮することができた。LNG中の窒素濃度は、LNGタンクからLNGバッファ12に導入されたときに20.0重量%であったのに対し、第二の凝縮器211からLNGバッファ12に返送されたときには、窒素濃度が20.6重量%であった(図5中のE)。このため、メタンの凝固点は窒素を含まない場合に-182℃であるのに対して、窒素を20.6重量%含む場合は―186℃まで低下している。したがって、-182℃まで冷却されてもメタンが凝固することなく、液体状態でLNGバッファ12に返送することができたのである。
【符号の説明】
【0044】
1 BOG再凝縮装置
11 BOG導出配管
12 LNGバッファ
13 冷媒バッファ
21 第一の冷媒流量調整弁
22 第二の冷媒流量調整弁
23 排気圧力調整弁
25 冷媒圧力調整弁
33 LNGタンク
111 第一の凝縮器
112 第一の熱交換部
113 第一の返送配管
114 第一のガス供給部
115 第一の冷媒返送流路
116 第一の冷媒送出流路
211 第二の凝縮器
212 第二の熱交換部
213 第二の返送配管
214 第二の排気配管
215 第二の冷媒返送流路
216 第二の冷媒送出流路
301 レベル指示調整計
302 第一の圧力指示調整計
303 演算部
304 第二の圧力指示調整計
305 第三の圧力指示調整計
401 ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5