(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】核医学診断装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
G01T1/161 A
(21)【出願番号】P 2018211162
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/120791(WO,A1)
【文献】特開2010-204755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸周りに環状に並べられた、又は前記所定軸を中心に旋回可能である、放射線を検出する複数の検出部と、
前記検出部の検出結果に対し、PSF再構成法で画像再構成を行う画像再構成部と、
前記画像再構成部で画像再構成を行うときの条件を設定する設定部と、を備え、
前記検出部は、前記所定軸と直交する方向に沿って複数の検出素子を有し、
前記設定部は、前記所定軸と直交する方向における前記検出素子の長さの半分以下の長さに、ボクセルの長さを設定可能であ
り、
前記設定部は、PSFの半値幅を前記検出部による検出器の半値幅に設定可能である、核医学診断装置。
【請求項2】
情報を表示する表示部を更に備え、
前記表示部は、再構成条件を表示する、
請求項1に記載の核医学診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この核医学診断装置は、ポジトロン断層撮影(PET)を用いたPET-CT装置である。この装置は、PET画像の高分解能化を目指して、逐次近似画像再構成処理にPSF(点広がり関数:Point Spread Function)に組み込んで画像の再構成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなPSFを用いて画像を再構成する方法を用いた場合、分解能を向上させるために、繰り返し回数を増やした場合などに、画像のエッジ部分がオーバーシュートして、アーチファクトが生じてしまうという問題があった。
【0005】
従って、本発明は、PSF再構成法で画像再構成を行った場合であっても、画像のエッジ部分のオーバショートによるアーチファクトの発生を抑制できる核医学診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る核医学診断装置は、所定軸周りに環状に並べられた、又は所定軸を中心に旋回可能である、放射線を検出する複数の検出部と、検出部の検出結果に対し、PSF再構成法で画像再構成を行う画像再構成部と、画像再構成部で画像再構成を行うときの条件を設定する設定部と、を備え、検出部は、所定軸と直交する方向に沿って複数の検出素子を有し、設定部は、所定軸と直交する方向における検出素子の長さの半分以下の長さに、ボクセルの長さを設定可能である。
【0007】
核医学診断装置は、検出部の検出結果に対し、PSF再構成法で画像再構成を行う画像再構成部と、画像再構成部で画像再構成を行うときの条件を設定する設定部と、を備える。従って、PSF再構成法で画像再構成を行う際には、設定部が適切な条件を設定した上で、画像再構成を行うことができる。ここで、設定部は、所定軸と直交する方向における検出素子の長さの半分以下の長さに、ボクセルの長さを設定可能である。ボクセルの長さが、このような条件に設定された場合、PSF再構成法で画像再構成を行うことで得られた画像中において、エッジ部分がオーバーシュートすることで発生するアーチファクトを抑制することができる。以上により、PSF再構成法で画像再構成を行った場合であっても、画像のエッジ部分のオーバショートによるアーチファクトの発生を抑制できる。
【0008】
設定部は、PSFの半値幅を検出部による測定系の半値幅に設定可能であってよい。この場合、更にPSF再構成法での画像再構成の条件を最適なものとすることができ、PSF再構成法で画像再構成を行うことで得られた画像中において、エッジ部分がオーバーシュートすることで発生するアーチファクトを抑制することができる。
【0009】
核医学診断装置は、情報を表示する表示部を更に備え、表示部は、再構成条件を表示してよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PSF再構成法で画像再構成を行った場合であっても、画像のエッジ部分のオーバショートによるアーチファクトの発生を抑制できる核医学診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るPET装置の概略構成図である。
【
図2】半導体検出部の構成を示す斜視図であり、ガンマ線の略入射側から半導体検出部を見た図である。
【
図4】(a)は検出器対の概念図であり、(b)はPSFの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る核医学診断装置は、ポジトロン断層撮影(PET)を用いたPET装置10である。PET装置10を用いた診断方法は、まず、ポジトロン核種で標識された検査用薬剤を、注射や吸入等により被検体の内部に導入する。被検体内に導入された検査用薬剤は、検査用薬剤に応じた機能を有する特定の部位に蓄積される。例えば、糖類の検査用薬剤を用いた場合、ガン細胞等の新陳代謝の盛んな部位に選択的に蓄積される。このとき、検査用薬剤のポジトロン核種から陽電子が放出され、放出された陽電子と周囲の電子とが結合して消滅する際に2つのガンマ線(いわゆる消滅ガンマ線)が互いに約180度の方向に放出される。そこで、この2つのガンマ線を被検体の周りに配置した放射線検出器により検出し、コンピュータ等で画像を再構成することにより被検体における放射性同位元素の分布画像データを取得する。以下、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るPET装置10の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、PET装置10は、被検体Sの周囲に配置され、ガンマ線を検出する放射線検出器11(検出部)と、放射線検出器11からの検出データを処理し、得られた被検体Sの体内のポジトロン核種RIの位置の画像データを再構成する情報処理部12と、画像データを表示等する表示部13と、被検体Sや放射線検出器11の移動等の制御を行う制御部14と、情報処理部12や制御部14に指示を送る端末や画像データを出力するプリンタ等からなる入出力部15等から構成される。
【0015】
放射線検出器11は半導体検出部20と検出回路30からなる。半導体検出部20は、ガンマ線γa,γbの入射面が被検体Sに面するように配置されている。なお、予め被検体Sにはポジトロン核種RIで標識化された検査用薬剤が導入されている。
【0016】
ポジトロン核種RIからの陽電子の消滅の際に、同時に発生する2つのガンマ線γa、γbを検出する。2つのガンマ線γa、γbは、互いに略180度をなして放出されるので、被検体Sを挟んで対向する放射線検出器11の半導体検出部20に入射する。ガンマ線γa、γbが入射した2つの半導体検出部20の各々は、ガンマ線γa、γbの入射により生じる電気信号(検出信号)を検出回路30に送出する。
【0017】
検出回路30は、検出信号から、ガンマ線γa、γbが検出素子に入射した時刻(入射時刻)と入射位置を決定し、これらの情報(検出データ)を情報処理部12に送出する。検出回路30は、例えば、アナログ信号である検出信号から入射時刻を算出するためのアナログASICと、入射時刻および入射位置をデジタルデータとして情報処理部に送出するデジタルASIC等から構成される。
【0018】
情報処理部12では、検出データに基づいて画像再構成を行う。画像再構成の詳細については後述する。表示部13は、入出力部15の要求に応じて再構成された画像データを表示する。
【0019】
以上の構成および動作により、PET装置10は、被検体Sの体内に選択的に位置するポジトロン核種RIからのガンマ線を検出し、ポジトロン核種RIの分布状態の画像データを再構成する。なお、本実施の形態に係るPET装置10は、放射線検出器11に主な特徴がある。以下、放射線検出器11を詳しく説明する。
【0020】
PET装置10の放射線検出器11
1~11
8は、被検体Sの周囲に360度に亘って配置される。各々の放射線検出器11
1~11
8には、被検体S側に半導体検出部20が設けられている。ここで、被検体Sの体軸方向をZ軸方向(Zおよび-Z方向)とする。放射線検出器11は、被検体Sに対して相対的にZ軸方向に移動可能としてもよい。なお、
図1において8個の放射線検出器11
1~11
8が示されているがこれらの数は一例過ぎず、放射線検出器の数11
1~11
8は適宜選択される。
【0021】
図2は、半導体検出部の構成を示す斜視図であり、ガンマ線の略入射側から半導体検出部を見た図である。
図3は、半導体検出部の模式的平面図である。
【0022】
図2及び
図3を参照するに、半導体検出部20は、配線基板21と、配線基板21上に配置された2つの検出素子アレイ22a,22bと、半導体検出部20の出力を検出回路(
図1に示す検出回路30)に送出するためのコネクタ29等からなる。検出素子アレイ22a,22bは、各々、略平板状の半導体結晶体24のZ軸方向に垂直な2つの面に、第1電極25および第2電極26が設けられてなる。検出素子アレイ22a,22bは、各々、第2電極26側の面にY軸方向に沿って形成された溝部24bによって半導体結晶体24がX軸方向に互いに区切られてなる検出素子23
1~23
6と、検出素子23
1~23
6の配列方向の両側(X軸方向外側)に設けられたガード部材28a,28b等からなる。半導体結晶体24とガード部材28a,28bとは同一材料からなり一体化されている。なお、
図2および
図3では、隣接する検出素子23
1~23
6間に、破線あるいは実線で区切り位置を示しているが、区切り位置は溝部のX軸方向の中央を通り、かつY軸方向に沿って延びている。検出素子23
1~23
6の間隔は、隣接する区切り位置間の距離に相当する。
【0023】
なお、
図2では、検出素子23
1~23
6が配列されている方向を配列方向(X軸方向)、2つの検出素子アレイ22a,22bが配列される方向を奥行き方向(Y軸方向)、配線基板21と検出素子アレイ22a,22bとが積層される方向を積層方向(Z軸方向)と称する。また、ここでは、検出素子アレイ22a,22bの各々の検出素子23
1~23
6の数を6個としているが、2個以上であればその数に特に制限はない。
【0024】
各々の検出素子231~236は、それぞれ、半導体結晶体24と、半導体結晶体24の上面に形成された第1電極25と下面に形成された第2電極26からなる。
【0025】
半導体結晶体24は、その材料としては、例えば、エネルギーが511keVのガンマ線に有感なテルル化カドミウム(CdTe)、Cd1-xZnxTe(CZT)、臭化タリウム(TlBr)、シリコンなどが挙げられる。また、これらの材料には導電性等を制御するためのドーパントが含まれていてもよい。シリコンはCdTeよりも機械的強度が高いので加工中に結晶欠陥が生じ難い点で好ましい。半導体結晶体24には、通常、その導電性を制御するためにドーパントが含まれている。例えば、半導体結晶体24がCdTeの場合はp型ドーパントが導入されている。
【0026】
また、半導体結晶体24は、検出素子231~236のいずれのものも、幅、奥行き、および幅がそれぞれ同等に設定されている。半導体結晶体24は、例えば、幅(X軸方向)が1.2mm、奥行き(Y軸方向)が5mm、厚さが約1mmの寸法を有する。なお、半導体結晶体24は、半導体の結晶成長法であるブリッジマン法や、移動加熱法を用いて半導体結晶を形成し、所定の結晶方位に切出される。
【0027】
第1電極25は、半導体結晶体24の上面を略覆う導電膜である。第1電極25には負のバイアス電圧Vbが印加され、カソードとなっている。半導体結晶体24がCdTeからなる場合は第1電極25には例えばPtが用いられる。バイアス電圧Vbは、直流電圧で例えば-60V~-1000Vに設定される。なお、第1電極25は、6つの半導体結晶体24の上面全体に亘って連続して形成されている。但し、第1電極25は、ガード部材28a,28bの上面を覆っているが、これは必須ではない。なお、バイアス電圧は、配線基板21の外部から配線パターン36およびワイヤ配線35を介して供給される。
【0028】
第2電極26は、半導体結晶体24の溝部24bと溝部24bとの間の下面を略覆う導電膜からなる。第2電極26はアノードとして機能する。なお、第2電極26側の半導体結晶体24中にはIn(インジウム)が注入されている。半導体結晶体24がCdTeからなる場合は、第2電極26に例えばAuが用いられる。第2電極26は検出素子231~236のそれぞれに設けられており、互いに隣接する第2電極26同士は電気的に絶縁されている。第2電極26は、導電性接着層27およびパッド電極32を介して配線基板21に設けられた配線パターン(不図示)を介してコネクタ29と電気的に接続される。
【0029】
なお、第2電極25は、ガード部材28a,28bの下面にも形成されており、導電性接着層27およびパッド電極32を介して接地されている。このようにすることで、ガード部材28a,28bに入射したガンマ線により生じた電子正孔対を接地電位に流すことで、検出信号に雑音として混入することを回避できる。なお。このガード部材28a,28bの下面の構造は必須ではなく、ガード部材を半導体結晶体以外の材料を用いた場合は設けなくともよい。
【0030】
導電性接着層27は、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選択される金属粉やカーボンフィラーと、樹脂からなる導電性接着剤からなり、例えば、導電性ペーストや異方性接着剤を用いることができる。
【0031】
2つの検出素子アレイ22a,22bは、いずれも上述した構造を有しているが、
図3に示すように配線基板21上の配置が異なっている。以下、ガンマ線γが入射する側に配置された検出素子アレイを第1検出素子アレイ22a、奥側に配置された検出素子アレイを第2検出素子アレイ22bと呼ぶ。但し両者の区別が不要な場合は単に検出素子アレイ22a,22bと呼ぶ。
【0032】
第1検出素子アレイ22aおよび第2検出素子アレイ22bは、互いの検出素子の位置関係に特徴がある。第1検出素子アレイ22aおよび第2検出素子アレイ22bのいずれも配列方向(X軸方向)にそれぞれ所定の間隔PTで配置されている。さらに、第1検出素子アレイ22aの検出素子231の紙面左側面231aは、基準線Xa-Xaから間隔PTだけ離隔した位置に配置されている。他方、第2検出素子アレイ22aの検出素子231の紙面左側面231bは、基準線Xa-Xaから間隔PT/2だけ離隔した位置に配置されている。このようにして、第1検出素子アレイ22aの検出素子231~236の各々と、第2検出素子アレイ22bの検出素子231~236の各々とは、互いに配列方向にPT/2だけ変位して配置される。
【0033】
このように、第1検出素子アレイ22aおよび第2検出素子アレイ22bは、検出素子231~236の間隔PTの1/2だけ配列方向にずらして、かつ奥行き方向に配列されることにより、半導体検出部20は、その視野中央(すなわち、半導体検出部20の略正面から入射するガンマ線)の空間分解能が、検出素子アレイを一つだけ設けた場合の視野中央の空間分解能よりも向上する。その向上の程度は、半導体検出部20の視野中央の空間分解能は、検出素子の幅を1/2に設定したときの視野中央の空間分解能に略同等となる。
【0034】
上述のように、PET装置10は、体軸CL(所定軸)周りに環状に並べられた複数の放射線検出器11を備えている。
図1では、体軸CL上にポジトロン各種RIが配置されている。
図4(a)に示すように、放射線検出器11は、体軸CLに沿って、すなわちZ軸方向に複数の検出素子23を有する。このようなPET装置10の情報処理部12での処理について詳細に説明する。
図1に示すように、情報処理部12は、画像再構成部101と、設定部102と、を備える。
【0035】
画像再構成部101は、放射線検出器11の検出結果に対し、PSF再構成法で画像再構成を行う。ここで、PSF(点広がり関数:Point Spread Function)再構成法とは、放射線検出器11のPSFを逐次近似画像再構成処理に組み込むことで画像再構成を行うものである。前述のように、PET装置10では、放射線検出器11が環状に配置されるため、有効視野の辺縁であるほど画像が不鮮明になる。そこで、あらかじめ点線源を用いての測定、または、計算機上でのシミュレーションにより算出したPSFを画像再構成のプロセスに組み込み、計算により求めた検出データの精度を上げる事により、空間分解能やノイズ特性を改善することができる。なお、逐次近似画像再構成処理とは、確率論から画像再構成を行う方法であり、実際に検出したデータと計算により求めたデータとの比較・修正を行うことで、再構成画像を得る方法である。
【0036】
図4(a)に示すように、有効視野に対して三次元のボクセルVLを設定する。ボクセルVLの大きさ、すなわちボクセルサイズは、再構成を行う前に予め設定される。ボクセルサイズは、PSFによる補正を行う際のサンプリング間隔と言うこともできる。このボクセルVLから発生したガンマ線は、互いに対向する二つの検出素子23によって、ある確率で検出される。このような確率はPSFに基づいて求められる。
図4(b)は、PSFの一例を示す。体軸CLに沿った方向、すなわちZ軸方向において、PSFは、中央位置でピークを有するような分布を有する。PSFの広がりを示すパラメータとして半値幅(FWHM)という値がある。これは、PSFのピークから1/2の値となるときの幅を示す値である。PSFのFWHMは、再構成を行う前に予め設定することもできる。なお、PSF自体の幅を示すPSFサイズは、
図4(b)において「PL」で示される。
【0037】
画像再構成部101が逐次近似画像再構成処理を行うときには、記憶部16に放射線検出器11によって検出された測定データ、及びPSFのデータが格納されている。画像再構成部101は、以下の式(1)を用いて逐次近似画像再構成処理を行う。画素値は、設定されたあるボクセルVLに対応する箇所での画素値を示す。以下の式では、「λ
b
n+1」を計算するときに前回の計算結果である「λ
b
n」が用いられる。このように、計算結果を逐次用いて演算を行うことで、画像再構成が行われる。また、以下の式には、検出確率である「p
bd」が用いられており、PSFが逐次近似画像再構成処理に組み込まれている。なお、「d」は特定の検出素子23の検出器対のインデックスを示しており、「d=1~D」について演算することで、あるボクセルVLに対して、PET装置10中の検出素子23の検出器対全部について演算を行う。 画像再構成部101は、上述の演算によって得られた画素値を、対応するボクセルごろに並べることで、再構成画像を得る事ができる。
【数1】
b:画素(ボクセル)のインデックス(1~B個の画素がある)
d:検出器対(測定データ)のインデックス(1~D個の検出器対がある)
n:繰り返し計算の回数
λ
b:b番目の画素の画素値
p
bd:画素bのガンマ線が検出器対(測定データ)dに検出される確率
y
d:検出器対の測定値
【0038】
設定部102は、画像再構成部101で画像再構成を行うときの条件を設定する。設定部102は、PSFの半値幅を特定の値に設定可能である。本実施形態では、設定部102は、PSFの半値幅を放射線検出器11による検出器の半値幅(装置の分解能)に設定可能である。例えば、計算で使用するPSFの半値幅が検出器の半値幅よりも大きい傾向になると、画像のエッジ部分がぼやける傾向にある。一方、計算で使用するPSFの半値幅が検出器の半値幅よりも小さい傾向になると、エッジ部分がオーバーシュートして、アーチファクトが発生し易くなる傾向にある。従って、設定部102は、PSFの半値幅を放射線検出器11による測定系の半値幅と等しい値に設定することで、画像のエッジ部のぼやけ及びオーバーシュートを抑制できる。なお、従来の方法では、オーバーシュート抑制のために、わざとPSFのサイズを広げている。
【0039】
設定部102は、体軸CLに直交する方向、すなわちX軸方向における検出素子23の長さの半分以下の長さに、ボクセルVLの長さを設定可能である。
図5(a)に示すように、X軸方向及びY軸方向(以降断層面方向とする)における検出素子23の長さは「L1」で示される。ボクセルVLの長さは「L2」で示される。このとき、「L2<1/2 × L1」に設定される。なお、X軸方向及びY軸方向におけるボクセルVLの長さの下限は、例えば、
18Fの陽電子飛程のFWHMである0.2mmのような長さに設定してよい。なお、Z軸方向におけるボクセルVLの長さについては、特に限定されるものではない。
【0040】
なお、
図5(b)に示すように、ボクセルサイズを大きくした場合、一つあたりのボクセルから発生するガンマ線が増えるため、当該ボクセル内での統計的なバラツキは低減する。
図5(b)では、ボクセルサイズである「L3」は、検出素子23の長さ「L1」よりも大きい。ボクセルサイズを小さくした場合、一つあたりのボクセルから発生するガンマ線が減ることで、当該ボクセル内での統計的なバラツキが増加する。従って、従来、ボクセルサイズを検出素子23の長さより小さくすることは行われていなかった。この点、本願発明者らは、鋭意研究の結果、体軸CLと直交する方向における検出素子23の長さの半分以下の長さに、ボクセルVLの長さを設定することで、オーバーシュートによるアーチファクトを抑制できることを見出したため、本条件を採用するに至った。
【0041】
上記条件の効果について、
図6及び
図7を参照して説明する。本実験では、小動物用半導体PET装置(MIP-100、住友重機械工業製)を用い、テルル化カドミウム半導体検出器を用いた。使用核種として「F-18(FDG)」を用いた。測定対象を「画質評価用ファントム」とした。再構成法として「3DOSEM(PSF再構成)」を用いた。繰り返し回数を「20iteration,32subset」とした。検出素子の体軸に沿った長さは、1.2mmであった。
図6(a)は、PSFの再構成を行わずに取得した画像である。
図6(b)は、ボクセルサイズを「1.2×1.2×1.6mm」として、PSFの再構成を行って取得した画像である。すなわち、断層面方向のボクセルの長さが、検出素子の長さと同じである。
図6(c)は、ボクセルサイズを「0.6×0.6×0.85mm」として、PSFの再構成を行って取得した画像である。すなわち、断層面方向のボクセルの長さが、検出素子の長さの半分である。
図6(d)は、ボクセルサイズを「0.3×0.3×0.85mm」として、PSFの再構成を行って取得した画像である。すなわち、断層面方向のボクセルの長さが、検出素子の長さの1/4である。
【0042】
図6(b)に示すように、断層面方向のボクセルの長さが検出素子の長さと同じ場合、オーバーシュートによってアーチファクト(画像中、矢印で示す箇所)が強く出ていた。
図7は、画像中の距離(横方向の位置)と、色の濃度の関係を示すグラフである。「A」は
図6(a)のPSFの再構成を行わなかった場合の測定結果を示し、「B」は
図6(b)の測定結果を示す。
図7の「A」と「B」を比較するに、「A」ではピークが立ち上がった箇所の全体的に確認できるのに対し、「B」では、グラフが立ち上がった箇所の両縁部にピークPが形成されていることが確認できる。
【0043】
それに対し、
図6(c)及び
図6(d)では、
図6(b)に比して、外縁のアーチファクトが目立っていないことが確認できる。このことより、体軸CLと直交する方向における検出素子23の長さの半分以下の長さに、ボクセルVLの長さを設定することで、オーバーシュートによるアーチファクトを抑制できることが理解される。
【0044】
なお、表示部13には、設定部102が条件を設定する際に、及び条件が設定された後に、ユーザーに対して各種情報が表示されてよい。例えば、設定部102が設定した上記条件に関わる情報として、再構成条件(繰り返し回数、サブセット数、PSF再構成のOn/Off、ボクセルサイズなど)を表示してよい。また、表示部13は、測定データ可視化を行ってもよく、測定条件(核種、測定対象―患者名、部位、日時、測定時間など)を表示してもよく、再構成画像を表示してもよい。
【0045】
次に、本実施形態に係るPET装置10の作用・効果について説明する。
【0046】
PET装置10は、放射線検出器11の検出結果に対し、PSF再構成法で画像再構成を行う画像再構成部101と、画像再構成部101で画像再構成を行うときの条件を設定する設定部102と、を備える。従って、PSF再構成法で画像再構成を行う際には、設定部102が適切な条件を設定した上で、画像再構成を行うことができる。ここで、設定部102は、体軸CLと直交する方向における検出素子23の長さの半分以下の長さに、ボクセルの長さを設定可能である。ボクセルの長さが、このような条件に設定された場合、PSF再構成法で画像再構成を行うことで得られた画像中において、エッジ部分がオーバーシュートすることで発生するアーチファクトを抑制することができる。以上により、PSF再構成法で画像再構成を行った場合であっても、画像のエッジ部分のオーバショートによるアーチファクトの発生を抑制できる。
【0047】
設定部102は、PSFの半値幅を検出部による測定系の半値幅に設定可能であってよい。この場合、更にPSF再構成法での画像再構成の条件を最適なものとすることができ、PSF再構成法で画像再構成を行うことで得られた画像中において、エッジ部分がオーバーシュートすることで発生するアーチファクトを抑制することができる。
【0048】
核医学診断装置は、情報を表示する表示部を更に備え、表示部は、再構成条件(繰り返し回数、サブセット数、PSF再構成のOn/Off、ボクセルサイズなど)を表示してよい。
【0049】
上述の実施形態では、核医学診断装置としてPET装置を例示したが、SPECT、ガンマカメラ、コンプトンカメラなどを採用してもよい。なお、
図1に示すように、検出部は、上述の実施形態のように、所定軸周りに環状に並べられたもののみならず、所定軸を中心に旋回可能であるものであってもよい。この場合、検出部は、所定軸に沿った方向、及び当該方向に直交する方向に複数の検出素子を有する。
【符号の説明】
【0050】
10…PET装置(核医学診断装置)、11…放射線検出器(検出部)、13…表示部、23…検出素子、101…画像再構成部、102…設定部。