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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20230217BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
F25B1/10 R
F25B1/00 304P
F25B1/00 311C
F25B1/00 331E
F25B1/00 396D
F25B1/10 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019055738
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153651
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 彌
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-121246(JP,A)
【文献】特開2010-091135(JP,A)
【文献】特開2013-164250(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061233(WO,A1)
【文献】特開2004-286322(JP,A)
【文献】特開2015-148406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/10
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段側圧縮部及び高段側圧縮部を有する圧縮機、放熱器、低圧膨張弁、蒸発器が順に接続された主冷媒流路と、
前記主冷媒流路における前記放熱器と前記低圧膨張弁との間から分岐して前記高段側圧縮部の冷媒吸入側に接続される中圧冷媒流路と、
前記主冷媒流路における前記放熱器と前記低圧膨張弁との間を流通する冷媒と前記中圧冷媒流路を流通する冷媒とを熱交換する過冷却熱交換器と、
前記中圧冷媒流路における前記過冷却熱交換器よりも冷媒流通方向の上流側に設けられ、前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御する流量制御部と、
前記主冷媒流路における高圧側の圧力を検出する圧力検出部と、
前記放熱器の冷媒流出側の冷媒の温度を検出する放熱器出口温度検出部と、
前記圧力検出部の検出圧力及び前記放熱器出口温度検出部の検出温度に基づいて冷媒の状態を取得し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満において液冷媒でない場合または臨界圧力以上における所定の密度以下となる場合に前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流れを遮断し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満における液冷媒となる場合または臨界圧力以上における前記所定の密度よりも大きい場合に前記流量制御部により前記中圧冷媒流路における冷媒の流れを調節する中圧冷媒流路開閉制御部と、を備えた
冷却装置。
【請求項2】
前記主冷媒流路及び前記中圧冷媒流路を流通する冷媒は、二酸化炭素であり、
前記所定の密度は、300kg/m以上730kg/m以下の範囲内である
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記中圧冷媒流路開閉制御部は、前記中圧冷媒流路における冷媒の流れを許容する状態において、前記主冷媒流路における前記過冷却熱交換器の冷媒流出側の冷媒の過冷却度が目標として設定した目標過冷却度となるように前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御する
請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記高段側圧縮部の吐出側の冷媒の温度を検出する吐出温度検出部を備え、
前記中圧冷媒流路開閉制御部は、前記過冷却度が目標過冷却度となるように前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御している状態で、前記吐出温度検出部によって第1所定温度以上の温度が検出されると、前記中圧冷媒流路における前記過冷却熱交換器の冷媒流出側の冷媒の過熱度が目標として設定された目標過熱度となるように前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御する
請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記中圧冷媒流路開閉制御部は、前記過熱度が目標過熱度となるように前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御している状態で、前記吐出温度検出部によって第2所定温度未満の温度が検出されると、前記過冷却度が目標過冷却度となるように前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御する
請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記蒸発器の冷媒流出側における冷媒の過熱度を制御するために前記低圧膨張弁の弁開度を調整している状態で、前記圧力検出部によって第1所定圧力以上の圧力が検出されると、前記低圧膨張弁の弁開度を所定開度まで開放する低圧膨張弁開度制御部を備えた
請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記低圧膨張弁開度制御部は、前記圧力検出部によって第2所定圧力以下の圧力が検出されると、前記蒸発器の冷媒流出側における冷媒の過熱度を制御するために前記低圧膨張弁の弁開度を調整する
請求項6に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷凍ショーケースに適用される冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置としては、低段側圧縮部及び高段側圧縮部を有する圧縮機、放熱器、低圧膨張弁、蒸発器が順に接続された主冷媒流路と、主冷媒流路における放熱器と低圧膨張弁との間から分岐して高段側圧縮部の冷媒吸入側に接続される中圧冷媒流路と、主冷媒流路における放熱器と低圧膨張弁との間を流通する冷媒と中圧冷媒流路を流通する冷媒とを熱交換する過冷却熱交換器と、中圧冷媒流路における過冷却熱交換器よりも冷媒流通方向上流側に設けられた中圧膨張弁と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記冷却装置は、高段側圧縮部から吐出される冷媒の温度の上昇を抑制するため、高段側圧縮部に吸入される冷媒の過熱度が目標として設定された目標過熱度となるように、中圧膨張弁の弁開度を制御している。また、前記冷却装置は、低段側圧縮部における液圧縮及び低段側圧縮部から吐出される冷媒の温度の上昇を抑制するため、低段側圧縮部に吸入される冷媒の過熱度が目標として設定された目標過熱度となるように、低圧膨張弁の弁開度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-192164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記冷却装置は、圧縮機を停止している状態から起動した後しばらくの間、冷媒回路における冷媒の温度や圧力等の冷媒の状態が不安定となる。冷媒回路における冷媒の状態が不安定な場合には、中圧膨張弁の弁開度及び低圧膨張弁の弁開度を同時に制御すると、主冷媒流路の低圧側及び中圧冷媒流路の一方の冷媒流量が多くなり、他方の冷媒流量が少なくなる状態が生じ得る。この場合に、冷却装置は、異常な状態での運転と判断して安全装置によって運転が停止される可能性がある。
【0006】
本発明の目的とするところは、圧縮機の起動時、外乱変動時または外気や負荷変動など外乱の影響下において冷凍サイクル及び冷凍能力の安定化を図ることのできる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却装置は、前記目的を達成するために、低段側圧縮部及び高段側圧縮部を有する圧縮機、放熱器、低圧膨張弁、蒸発器が順に接続された主冷媒流路と、前記主冷媒流路における前記放熱器と前記低圧膨張弁との間から分岐して前記高段側圧縮部の冷媒吸入側に接続される中圧冷媒流路と、前記主冷媒流路における前記放熱器と前記低圧膨張弁との間を流通する冷媒と前記中圧冷媒流路を流通する冷媒とを熱交換する過冷却熱交換器と、前記中圧冷媒流路における前記過冷却熱交換器よりも冷媒流通方向の上流側に設けられ、前記中圧冷媒流路における冷媒の流量を制御する流量制御部と、前記主冷媒流路における高圧側の圧力を検出する圧力検出部と、前記放熱器の冷媒流出側の冷媒の温度を検出する放熱器出口温度検出部と、前記圧力検出部の検出圧力及び前記放熱器出口温度検出部の検出温度に基づいて冷媒の状態を取得し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満において液冷媒でない場合または臨界圧力以上における所定の密度以下となる場合に前記流量制御部によって前記中圧冷媒流路における冷媒の流れを遮断し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満における液冷媒となる場合または臨界圧力以上における前記所定の密度よりも大きい場合に前記流量制御部により前記中圧冷媒流路における冷媒の流れを調節する中圧冷媒流路開閉制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷媒回路を流通する冷媒の状態が不安定な場合に、中圧冷媒流路への冷媒の流通を規制して主冷媒流路の低圧側に冷媒を流通させることによって、冷媒回路における冷媒の不安定な状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す冷却装置の概略構成図である。
図2】制御系を示すブロック図である。
図3】低圧膨張弁開度調整処理を示すフローチャートである。
図4】中圧冷媒流量調整処理を示すフローチャートである。
図5】電磁弁の開閉の条件を示すp-h線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0011】
本発明の冷却装置1は、例えば、コンビニエンスストアの店舗内に設置される冷凍ショーケースに適用されるものである。この冷却装置1は、図1に示すように、所謂二段圧縮一段膨張サイクルを構成する冷媒回路10を備え、後述する蒸発器によってショーケースの商品収納部を冷却するものである。
【0012】
冷媒回路10は、圧縮機11、放熱器12、過冷却熱交換器13、低圧膨張弁14、蒸発器15、流量制御部としての中圧膨張弁16、流量制御部としての電磁弁17をステンレス管や銅管によって接続することで構成されている。冷媒回路10を流通する冷媒としては、高圧側が超臨界状態となる冷媒が用いられる。本実施形態で用いられる冷媒は、例えば、二酸化炭素である。
【0013】
圧縮機11は、低段側圧縮部11a及び高段側圧縮部11bを有する二段圧縮機である。圧縮機11は、吸入した冷媒を低段側圧縮部11aにおいて圧縮して吐出し、低段側圧縮部11aから吐出された冷媒を高段側圧縮部11bにおいて圧縮して吐出する。
【0014】
放熱器12は、一対の冷媒流路が設けられた、例えば、フィンチューブ式の熱交換器である。放熱器12は、圧縮機11の低段側圧縮部11aから吐出された中圧冷媒が流通する中圧冷媒流路と、高段側圧縮部11bから吐出された高圧冷媒が流通する高圧冷媒流路と、を有している。また、放熱器12の近傍には、放熱器を流通する冷媒と熱交換する空気を流通させるための放熱器用送風機12aが設けられている。
【0015】
蒸発器15は、ショーケースの商品収納部に供給する空気が流通する空気流通路に設けられている。蒸発器15の近傍には、蒸発器15を流通する冷媒と熱交換する空気を流通させるための蒸発器用送風機15aが設けられている。
【0016】
冷媒回路10の回路構成を具体的に説明すると、圧縮機11の低段側圧縮部11aの冷媒吐出側には、放熱器12の中圧冷媒流路の冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路10aが形成されている。放熱器12の中圧冷媒流路の冷媒流出側には、圧縮機11の高段側圧縮部11bの冷媒吸入側を接続することにより冷媒流通路10bが接続されている。圧縮機11の高段側圧縮部11bの冷媒吐出側には、放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路10cが形成されている。放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒流出側には、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路10dが形成されている。過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側には、蒸発器15の冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路10eが形成されている。冷媒流通路10eには、低圧膨張弁14が設けられている。蒸発器15の冷媒流出側には、圧縮機11の低段側圧縮部11aの冷媒吸入側を接続することにより冷媒流通路10fが形成されている。冷媒回路10においては、冷媒流通路10a,10b,10c、10d,10e,10fによって、圧縮機11、放熱器12、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路、低圧膨張弁14及び蒸発器15を接続することによって主冷媒流路が構成される。
【0017】
また、放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒流出側には、冷媒流通路10dから分岐して過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路10gが形成されている。冷媒流通路10gには、冷媒流通路10d側から順に、中圧膨張弁16、流路開閉弁としての電磁弁17が向けられている。過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流出側には、圧縮機11の高段側圧縮部11bの冷媒吸入側を接続することにより冷媒流通路10hが形成されている。冷媒回路10においては、冷媒流通路10g,10hによって、中圧膨張弁16、電磁弁17、過冷却熱交換器13を接続することによって中圧冷媒流路が構成される。
【0018】
また、冷却装置1は、冷媒回路10の動作を制御するためのコントローラ20を備えている。
【0019】
コントローラ20は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ20は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0020】
コントローラ20の入力側には、図2に示すように、圧縮機11と、放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒吐出側の圧力を検出するための圧力検出部としての圧力センサ21と、高段側圧縮部11bの冷媒吐出側の冷媒温度を検出するための吐出温度検出部としての第1温度センサ22と、放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒吐出側の冷媒温度を検出するための放熱器出口温度検出部としての第2温度センサ23と、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒温度を検出するための第3温度センサ24と、蒸発器15の冷媒流入側の冷媒温度を検出するための第4温度センサ25と、蒸発器15の冷媒流出側の冷媒温度を検出するための第5温度センサ26と、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流入側の温度を検出するための第6温度センサ27と、高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の温度を検出するための第7温度センサ28と、が接続されている。
【0021】
また、コントローラ20の出力側には、圧縮機11、低圧膨張弁14、中圧膨張弁16及び電磁弁17が接続されている。
【0022】
以上のように構成された冷却装置1の冷媒回路10において、圧縮機11の低段側圧縮部11aから吐出された冷媒は、放熱器12の中圧冷媒流路、高段側圧縮部11b、放熱器12の高圧冷媒流路、の順に流通する。放熱器12の高圧冷媒流路から流出した冷媒の一部は、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路、低圧膨張弁14、蒸発器15、の順に流通して圧縮機11の低段側圧縮部11aに吸入される。また、放熱器12の高圧冷媒流路から流出したその他の冷媒は、中圧膨張弁16、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路、の順に流通して圧縮機11の高段側圧縮部11bに吸入される。
【0023】
これにより、放熱器12の高圧冷媒流路から流出した冷媒の一部は、過冷却熱交換器13において放熱し、低圧膨張弁14において減圧されて蒸発器15において吸熱する。また、放熱器12の高圧冷媒流路から流出したその他の冷媒は、中圧膨張弁16において減圧されて過冷却熱交換器13において吸熱する。
【0024】
また、蒸発器15では、冷媒が吸熱することによって、空気が冷媒と熱交換して冷却される。ショーケースの商品収納部内は、蒸発器15において冷却された空気によって冷却される。
【0025】
さらに、冷媒回路10では、低圧膨張弁14の弁開度を調整することによって、圧縮機11の低段側圧縮部11aに吸入される冷媒の過熱度を制御することで、圧縮機11の低段側圧縮部11aにおける液圧縮や低段側圧縮部11aから吐出される冷媒の温度の異常な温度の上昇を抑制している。
【0026】
また、冷媒回路10では、中圧膨張弁16の弁開度を調整することによって、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路から流出する冷媒の過冷却度を制御し、冷却装置1の成績係数の向上を図っている。さらに、冷媒回路10では、中圧膨張弁16の弁開度を調整することによって、圧縮機11の高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の過熱度を制御し、高段側圧縮部11bにおける液圧縮や高段側圧縮部11bから吐出される冷媒の温度の異常な温度の上昇を抑制している。
【0027】
コントローラ20は、低圧膨張弁開度制御部として、低段側圧縮部11aに吸入される冷媒の過熱度を制御するとともに、高段側圧縮部11bから吐出される冷媒の異常な温度の上昇を抑制するために、低圧膨張弁14の弁開度を調整する低圧膨張弁開度調整処理を行う。このときのコントローラ20の動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0028】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、圧縮機11が起動されたか否かを判定する。圧縮機11が起動されたと判定した場合にはステップS2に処理を移し、圧縮機11が起動されたと判定しなかった場合にはステップS1の処理を繰り返す。
【0029】
(ステップS2)
ステップS1において圧縮機11が起動されたと判定した場合に、ステップS2においてCPUは、圧縮機11の低段側圧縮部11aに吸入される冷媒の過熱度を制御する低段側過熱度制御を実行し、ステップS3に処理を移す。
【0030】
ここで、低段側過熱度制御は、第4温度センサ25の検出温度T4及び第5温度センサ26の検出温度T5に基づいて低圧膨張弁14の弁開度を調整する。具体的には、第4温度センサ25の検出温度T4と第5温度センサ26の検出温度T5との温度差(T5-T4)が所定温度差となるように、低圧膨張弁14の弁開度を調整する。
【0031】
(ステップS3)
ステップS3においてCPUは、圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps1以上か否かを判定する。圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps1以上と判定した場合にはステップS4に処理を移し、圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps1以上と判定しなかった場合にはステップS2に処理を移す。
【0032】
(ステップS4)
ステップS4においてCPUは、低圧膨張弁14の弁開度を所定開度開いて固定し、ステップS5に処理を移す。
【0033】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、低圧膨張弁14の弁開度を維持し、ステップS6に処理を移す。
【0034】
(ステップS6)
ステップS5において低圧膨張弁14の弁開度を維持した後、ステップS6においてCPUは、圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps2(Ps2<Ps1)以下か否かを判定する。圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps2以下と判定した場合にはステップS2に処理を移し、圧力センサ21の検出圧力PsHが所定の圧力Ps2以下と判定しなかった場合にはステップS5に処理を移す。
【0035】
また、コントローラ20は、中圧冷媒流路開閉制御部及び中圧膨張弁開度制御部として、圧縮機11の起動時における冷媒の不安定さを回避するために中圧冷媒流路の開閉を切り替える制御、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒吐出側の冷媒の過冷却度の制御、及び、圧縮機11の高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の過熱度の制御、を切り替えて実行する中圧冷媒流量調整処理を行う。このときのコントローラ20の動作を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、圧縮機11が起動されたか否かを判定する。圧縮機11が起動されたと判定した場合にはステップS12に処理を移し、圧縮機11が起動されたと判定しなかった場合にはステップS11の処理を繰り返す。
【0037】
(ステップS12)
ステップS12においてCPUは、電磁弁17を閉鎖し、ステップS13に処理を移す。
【0038】
(ステップS13)
ステップS13においてCPUは、電磁弁17を開放するための条件が成立したか否かを判定する。電磁弁17を開放するための条件が成立したと判定した場合にはステップS14に処理を移し、電磁弁17を開放するための条件が成立したと判定しなかった場合にはステップS12に処理を移す。
【0039】
ここで、電磁弁17を開放するための条件とは、圧力センサ21の検出圧力PsH及び第2温度センサ23の検出温度T2から取得される放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒吐出側における冷媒の状態が、所定の状態となって所定時間継続した場合である。具体的に説明すると、コントローラ20は、図5に示すように、記憶領域に二酸化炭素のp-h線図(圧力-比エンタルピ線図)に関するテーブルを備えており、入力された圧力及び温度のデータに対応する冷媒の状態に関するデータを出力する。図5のp-h線図における符号aは、等温線を示す。また、図5のp-h線図における符号bは、それぞれ、等密度線であり、右側から順に、300kg/m、400kg/m、480kg/m、730kg/mの等密度線を示す。電磁弁17を開放するための条件の一つである冷媒の所定の状態とは、臨界圧力未満における液冷媒となる場合または臨界圧力以上における所定の密度よりも大きい場合である(図5における線Lよりも左側)。ここで、所定の密度は、300kg/m以上730kg/m以下の範囲内であることが好ましく、400kg/m以上480kg/m以下の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
(ステップS14)
ステップS13において電磁弁17を開放するための条件が成立したと判定した場合に、ステップS14においてCPUは、電磁弁17を開放してステップS15に処理を移す。
【0041】
(ステップS15)
ステップS15においてCPUは、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒吐出側の冷媒の過冷却度を制御する過冷却度制御を実行し、ステップS16に処理を移す。
【0042】
ここで、過冷却度制御は、第2温度センサ23の検出温度T2及び第3温度センサ24の検出温度T3に基づいて中圧膨張弁16の弁開度を制御する。具体的には、第2温度センサ23の検出温度T2と第3温度センサの検出温度T3との温度差(T3-T2)が目標として設定された温度差となるように、中圧膨張弁16の弁開度を調整する。
【0043】
(ステップS16)
ステップS16においてCPUは、電磁弁17を閉鎖するための条件が成立したか否かを判定する。電磁弁17を閉鎖するための条件が成立したと判定した場合にはステップS12に処理を移し、電磁弁17を開放するための条件が成立したと判定しなかった場合にはステップS17に処理を移す。
【0044】
ここで、電磁弁17を閉鎖するための条件とは、圧力センサ21の検出圧力PsH及び第2温度センサ23の検出温度T2から取得される放熱器12の高圧冷媒流路の冷媒吐出側における冷媒の状態が、所定の状態となって所定時間継続した場合である。電磁弁17を閉鎖するための条件の一つである冷媒の所定の状態とは、臨界圧力未満において液冷媒でない場合または臨界圧力以上における所定の密度(300kg/m以上730kg/m以下の範囲内、より好ましくは、400kg/m以上480kg/m以下の範囲内)以下となる場合である(図5における線Lを含む右側)。
【0045】
(ステップS17)
ステップS16において電磁弁17を開放するための条件が成立したと判定しなかった場合に、ステップS17においてCPUは、第1温度センサ22の検出温度T1が第1所定温度Ts1以上であるか否かを判定する。第1温度センサ22の検出温度T1が第1所定温度Ts1以上であると判定した場合にはステップS18に処理を移し、第1温度センサ22の検出温度T1が第1所定温度Ts1以上であると判定しなかった場合にはステップS15に処理を移す。
【0046】
ここで、第1温度センサ22の検出温度T1が第1所定温度Ts1以上である状態は、ステップS15において過冷却度制御を行った結果、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路を流通する冷媒の吸熱量が増加し、高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の過熱度が高くなった状態である。
【0047】
(ステップS18)
ステップS18においてCPUは、圧縮機11の高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の過熱度を制御する高段側過熱度制御を実行し、ステップS19に処理を移す。
【0048】
ここで、高段側過熱度制御は、第6温度センサ27の検出温度T6及び第7温度センサ28の検出温度T7に基づいて中圧膨張弁16の弁開度を調整する。具体的には、第6温度センサ27の検出温度T6と第7温度センサ28の検出温度T7との温度差(T6-T7)が目標として設定された温度差となるように、中圧膨張弁16の弁開度を調整する。
【0049】
(ステップS19)
ステップS19においてCPUは、第1温度センサ22の検出温度T1が第2所定温度Ts2(Ts2<Ts1)未満であるか否かを判定する。第1温度センサ22の検出温度T1が第2所定温度Ts2未満であると判定した場合にはステップS15に処理を移し、第1温度センサ22の検出温度T1が第2所定温度Ts2未満であると判定しなかった場合にはステップS18に処理を移す。
【0050】
ここで、第1温度センサ22の検出温度T1が第2所定温度Ts2未満である状態は、高段側過熱度制御によって、高段側圧縮部11bに吸入される冷媒の過熱度が適正な過熱度となった状態である。
【0051】
このように、本実施形態の冷却装置1によれば、コントローラ20は、圧力センサ21の検出圧力PsH及び第2温度センサ23の検出温度T2に基づいて冷媒の状態を取得し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満において液冷媒でない場合または臨界圧力以上における所定の密度以下となる場合に電磁弁17を閉鎖して中圧冷媒流路における冷媒の流通を遮断し、取得した冷媒の状態が臨界圧力未満における液冷媒となる場合または臨界圧力以上における所定の密度よりも大きい場合に電磁弁17を開放して中圧冷媒流路における冷媒の流通を調節する。
【0052】
これにより、冷媒回路10を流通する冷媒の状態が不安定な場合に、中圧冷媒流路への冷媒の流通を規制して主冷媒流路の低圧側に冷媒を流通させることによって、冷媒回路10における冷媒の不安定な状態を解消することができる。よって、冷凍サイクルの冷凍能力が急激に低下するような状態を解消することができる。
【0053】
また、冷媒回路10を流通する冷媒は、二酸化炭素であり、臨界圧力以上における所定の密度は、300kg/m以上730kg/m3以下の範囲内、より好ましくは、400kg/m3以上480kg/m3以下の範囲内である。
【0054】
これにより、臨界圧力以上における300kg/m以上730kg/m3以下の範囲内、より好ましくは、400kg/m3以上480kg/m3以下の範囲内の冷媒の密度を基準として電磁弁17の開閉を切り替えることによって、冷媒回路10を流通する冷媒の状態が不安定となる状態を確実に抑制することが可能となる。
【0055】
また、コントローラ20は、電磁弁17を開放した状態において、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過冷却度が目標として設定した目標過冷却度となるように前記中圧膨張弁16の弁開度を制御する。
【0056】
これにより、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過冷却度を目標過冷却度とすることによって、成績係数(COP)の高い運転を行って運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0057】
また、コントローラ20は、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように中圧膨張弁16の弁開度を制御している状態で、第1温度センサ22によって第1所定温度Ts1以上の温度が検出されると、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過熱度が目標として設定された目標過熱度となるように中圧膨張弁16の弁開度を制御する。
【0058】
これにより、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過熱度を目標過熱度とすることによって、圧縮機11の高段側圧縮部11bから吐出される冷媒の温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0059】
また、コントローラ20は、過冷却熱交換器13の中圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過熱度が目標過熱度となるように前記中圧膨張弁の弁開度を制御している状態で、第1温度センサ22によって第2所定温度Ts2未満の温度が検出されると、過冷却熱交換器13の高圧冷媒流路の冷媒流出側の冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように中圧膨張弁16の弁開度を制御する。
【0060】
これにより、圧縮機11の高段側圧縮部11bから吐出される冷媒の温度の上昇を抑制することによって圧縮機11における異常な温度上昇を回避しながら、高効率な運転を継続することが可能となる。
【0061】
また、コントローラ20は、圧力センサ21によって所定より大きい圧力Ps1が検出されると、低圧膨張弁14の弁開度を全開とする。
【0062】
これにより、圧縮機11の低段側圧縮部11aに吸入される冷媒の過熱度を低下させることが可能となり、圧縮機11における異常な温度上昇を回避することが可能となる。
【0063】
尚、前記実施形態では、冷却装置1としてショーケースの商品収納部を冷却するものを示したが、これに限られるものではない。本発明の冷却装置は、ショーケース以外の冷凍庫や冷蔵庫に適用可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、電磁弁17の開閉によって中圧冷媒流路の開閉を切り替えるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、全閉と全開との間で開度の調整が可能なパイロット電磁弁を中圧膨張弁として用いることによって、電磁弁17を用いることなく中圧冷媒流路の開閉を切り替えることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1…冷却装置、10…冷媒回路、11…圧縮機、11a…低段側圧縮部、11b…高段側圧縮部、12…放熱器、13…過冷却熱交換器、14…低圧膨張弁、15…蒸発器、16…中圧膨張弁、17…電磁弁、20…コントローラ、21…圧力センサ、22…第1温度センサ、23…第2温度センサ、24…第3温度センサ、25…第4温度センサ、26…第5温度センサ、27…第6温度センサ、28…第7温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5