(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/18 20060101AFI20230217BHJP
B29C 45/62 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B29C45/18
B29C45/62
(21)【出願番号】P 2019060493
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 美子
(72)【発明者】
【氏名】生田目 昂
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑貴
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036959(JP,A)
【文献】特開2002-018232(JP,A)
【文献】特開平08-336834(JP,A)
【文献】特開平07-205146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を溶融して射出する射出装置と、
前記成形材料を溶融させる際に揮発した成分を取り出す取出部と、
前記取出部から取り出された前記成分を前記取出部と異なる位置から前記溶融された成形材料に戻すリターン部と、
を備える射出成形機。
【請求項2】
前記射出装置は、シリンダと、スクリュと、成形材料を射出するノズル部とを有し、
前記リターン部は、前記シリンダ内の前記スクリュの配置箇所、前記シリンダ内の前記スクリュよりもノズル部側の箇所、金型のキャビティの少なくとも一つに通じる、
請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記リターン部から前記成分を戻す制御を行う制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記スクリュによる計量開始から成形材料の射出前までに前記リターン部から前記成分を戻す、
請求項2記載の射出成形機。
【請求項4】
取り出された前記成分から特定の成分を分離する分離部を更に備え、
前記分離部から前記リターン部へ分離された成分が送られる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項5】
取り出された前記成分から特定の成分を分離する分離部を更に備え、
前記分離部により分離された、一次酸化防止剤、リン系の二次酸化防止剤、金属不活性化材、充填剤、相溶化材、透明化剤及び導電材のいずれか一つ又は複数が、
前記シリンダ内の前記スクリュの配置箇所に通じる前記リターン部から戻される請求項2又は請求項3に記載の射出成形機。
【請求項6】
取り出された前記成分から特定の成分を分離する分離部を更に備え、
前記分離部により分離された、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤及び防黴剤のいずれか一つ又は複数が、
前記シリンダ内の前記スクリュよりもノズル部側の箇所、又は、前記キャビティに通じる前記リターン部から戻される請求項2又は請求項3に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、一般に、成形材料に、成形品に様々な特性及び機能を及ぼす添加剤が加えられ、その成形材料が溶融されて射出成形される。添加剤は樹脂である成形材料よりも低分子であり、低い温度で揮発する。添加剤は、通常、成形材料と一緒にペレット化され、成形材料とともにホッパーから投入される。
【0003】
特許文献1には、シリンダの高圧エリアに不活性ガスが注入され、低圧エリアにおいて不活性ガスが脱気されるように構成された射出成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリンダ内を成形材料とともにノズル側へ搬送される添加剤は、一部が揮発し、揮発した成分が高温にさらされることで、成分が変質してしまうという課題がある。また、揮発した成分がホッパー又は材料の供給口近傍で冷やされると、揮発成分が濃縮され、濃縮した成分が樹脂材料に付着するという課題が生じる。
【0006】
一方、特許文献1に示されるように不活性ガスを用いてシリンダ内で揮発した何らかの成分を脱気することができる。しかしながら、揮発成分には、添加剤の成分が含まれるため、揮発成分を脱気してしまうと、添加剤の作用が低減するという課題が生じる。
【0007】
本発明は、成形材料が溶融されて搬送される際に生じる揮発成分による悪影響を排除しつつ、添加剤の作用が低減することを抑制できる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
成形材料を溶融して射出する射出装置と、
前記射出装置により溶融された前記成形材料の揮発成分を取り出す取出部と、
前記取出部から取り出された前記揮発成分を前記取出部と異なる位置から前記溶融された成形材料に戻すリターン部と、
を備える射出成形機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形材料が溶融されて搬送される際に生じる揮発成分による悪影響を排除しつつ、添加剤の作用が低減することを抑制できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る射出成形機を示す図である。
【
図2】
図1のシリンダの部分を詳細に示す図である。
【
図3】実施形態の変形例に係る射出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る射出成形機を示す図である。本実施形態の射出成形機1は、成形材料(樹脂)を溶融して射出する射出装置10と、射出装置10を搬送する可塑化移動装置20と、成形材料が充填される金型43を動かす型締装置30と、固化した成形品を金型43から押し出すエジェクタ装置50と、各部を駆動制御する制御部70とを備える。
【0013】
射出装置10は、成形材料が投入されるホッパー12と、成形材料が溶融されて搬送されるシリンダ13と、シリンダ13内で回転及び進退移動するスクリュ14と、スクリュ14を回転駆動する計量用モータ16と、スクリュ14を進退駆動する射出用モータ17とを備える。シリンダ13は、先端にノズル部13nを有する。ホッパー12はシリンダ13に固定されている。さらに、射出装置10は、シリンダ13を支持するブラケット11Aと、計量用モータ16を支持するフレーム11Bと、射出用モータ17を支持する図示しないフレームと、計量用モータ16の動力をスクリュ14に伝達するタイミングベルト15と、射出用モータ17の動力をフレーム11Bに伝達するタイミングベルト18及びネジナット機構(ボールネジ19a及びナット19b)とを備える。射出用モータ17を支持するフレームは、シリンダ13を支持するブラケット11Aと相対位置が固定されるように連結されている。計量用モータ16を支持するフレーム11Bと、シリンダ13を支持するブラケット11Aとは、ガイド25に沿って移動可能に、かつ、互いの距離が可変に支持されている。スクリュ14の後端は、フレーム11Bに回転自在に支持されている。
【0014】
このような構成において、計量用モータ16が回転駆動すると、その回転運動がタイミングベルト15を介してスクリュ14に伝達され、スクリュ14が回転する。射出用モータ17が回転駆動すると、その回転運動がタイミングベルト18、ボールネジ19a及びナット19bを介して直線運動に変換され、フレーム11Bがガイド25に沿って移動する。その結果、スクリュ14がシリンダ13内で進退する。さらに、計量用モータ16及びフレーム11Bが、スクリュ14の進退に追従して、ブラケット11Aに対して相対移動する。
【0015】
可塑化移動装置20は、可塑化移動用モータ21と、ネジナット機構(ボールネジ22a及びナット22b)と、射出装置10のブラケット11A及びフレーム11Bを並進移動可能に支持するガイド25とを備える。ガイド25及び可塑化移動用モータ21は、射出装置フレーム24を介して成形機フレーム101に支持されている。ボールネジ22aは、射出装置フレーム24に回転自在に支持されている。ナット22bはスプリング23を介してブラケット11Aに接続されている。可塑化移動用モータ21の駆動によりボールネジ22aが回転すると、ナット22b及びナット22bに連結されたブラケット11Aが、ボールネジ22aの軸方向に移動する。これにより、ブラケット11Aがガイド25に沿って移動し、射出装置10(シリンダ13、スクリュ14、フレーム11B、計量用モータ16、射出用モータ17)が、スクリュ14の軸方向に移動する。この移動により、シリンダ13のノズル部13nを、金型43に圧接又は離間させることができる。
【0016】
金型43は、可動金型43aと、固定金型43bとを有し、これらの間に成形材料が射出されるキャビティを備える。固定金型43bには、シリンダ13のノズル部13nが接続され、ノズル部13nからキャビティに成形材料を流す通路43rが設けられている。
【0017】
エジェクタ装置50は、成形品を押し出すための図示略のエジェクトピンと、エジェクトピンを駆動するエジェクト用モータ51とを備え、可動プラテン34に取り付けられている。エジェクト用モータ51が駆動することで、可動金型43aのキャビティにエジェクトピンが前進し、可動金型43aから成形品が押し出される。
【0018】
型締装置30は、固定金型43bを支持する固定プラテン35と、可動金型43aを支持する可動プラテン34と、クロスヘッド33と、可動プラテン34に動力を伝達するトグル機構37と、型締用モータ31と、トグル機構37に型締用モータ31の回転動力を並進動力に変換して伝達するネジナット機構(ボールネジ32a及びナット32b)と、トグル機構37及びボールネジ32aを支持するトグルサポート38とを備える。可動プラテン34は、金型43の開閉方向に進退可能にガイドされている。トグルサポート38は、タイロッド36を介して固定プラテン35と連結されている。ナット32bはクロスヘッド33に固定されている。
【0019】
型締用モータ31が回転駆動すると、この回転運動がネジナット機構(ボールネジ32a及びナット32b)により直線運動に変換されてクロスヘッド33へ伝達される。直線運動の方向は、金型43の開閉方向と一致する。クロスヘッド33が移動すると、トグル機構37が動作して可動プラテン34が進退し、金型43を開閉する。
【0020】
制御部70は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)と、メモリなどの記憶媒体と、入力インターフェースと、出力インターフェースとを有する。制御部70は、記憶媒体に記憶されたプログラムをCPUに実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御部は、入力インターフェースで外部からの信号を受信し、出力インターフェースで外部に信号を送信する。
【0021】
<成形サイクル>
制御部70は、各部を駆動制御して、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程及び突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、基本的には、計量工程の開始から突き出し工程の完了までの動作を成形サイクルと呼ぶ。ただし、成形サイクル時間の短縮を目的として、計量工程が、前回の冷却工程中に行われる場合、あるいは、型締工程の間に行われる場合などには、型閉工程の開始から突き出し工程の完了までの動作を成形サイクルと呼んでもよい。
【0022】
計量工程は、スクリュ14の回転により、成形材料を溶融させながらシリンダ13の前部(ノズル部13n側)へ送る工程である。計量工程では、成形材料がシリンダ13の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ14が後退される。スクリュ14が計量完了位置まで後退し、スクリュ14の先端とノズル部13nとの間に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。型閉工程は、可動プラテン34を前進させ、可動金型43aを固定金型43bにタッチさせる工程である。昇圧工程は、型締用モータ31をさらに駆動してクロスヘッド33を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させる工程である。昇圧工程により、金型43に型締力が加えられる。型締工程は、型締用モータ31を駆動して、クロスヘッド33の位置を型締位置に維持する工程である。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。
【0023】
充填工程は、スクリュ14を設定移動速度で前進させ、シリンダ13の前部に蓄積された液状の成形材料を金型43のキャビティに充填させる工程である。保圧工程は、射出用モータ17を駆動してスクリュ14を前方に押し、シリンダ13内に残る成形材料に圧力を加えることで、スクリュ14の先端部における成形材料の圧力(「保持圧力」とも呼ばれる)を設定圧に保つ工程である。保圧工程において、金型43のキャビティ内に射出された成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティの入口が固化した成形材料で塞がれる。冷却工程では、金型43のキャビティ内の成形材料の固化が行われる。冷却工程中に計量工程が行われてもよい。脱圧工程は、クロスヘッド33を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン34を後退させ、金型43の型締力を減少させる工程である。型開工程は、クロスヘッド33を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン34を後退させ、可動金型43aを固定金型43bから離間させる工程である。突き出し工程は、エジェクタピンを設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、成形品を可動金型43aから突き出し、その後、エジェクタピンを設定移動速度で後退させ、元の待機位置まで後退させる工程である。
【0024】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程及び突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程及び冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてもよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。
【0025】
<添加剤のリターン構成>
さらに、本実施形態の射出成形機1は、
図2に示すように、成形材料をシリンダ13で溶融する際に生じた揮発成分を取り出す取出部71と、取出部71に揮発成分を誘導するために不活性ガスを注入する注入部72a、72bと、不活性ガスを供給するガス供給部73とを有する。さらに、本実施形態の射出成形機1は、取出部71から取り出された揮発成分から添加剤の成分を分離する分離部75と、分離された添加剤の成分を溶融された成形材料に戻す第1リターン部76及び第2リターン部77と、分離された添加剤の成分を第1リターン部76及び第2リターン部77を介して戻す制御を行う制御部79と備える。制御部79は、成形プロセスを実行する制御部70と兼用されてもよい。
【0026】
射出装置10においては、ホッパー12から固形の成形材料及び固形又は液体の添加剤が投入され、シリンダ13内においてスクリュ14が回転することで、これらがノズル部13n側へ搬送される。搬送の際、シリンダ13から熱が加えられることで成形材料及び添加剤の溶融が進められ、例えばシリンダ13内のホッパー12に近い範囲W1で揮発成分が発生する。
【0027】
一方の注入部72aは、範囲W1よりもノズル部13n側に設けられ、もう一方の注入部72bは、範囲W1よりもホッパー12側に設けられている。注入部72aからは溶融された成形材料の温度に合わせた高い温度の不活性ガスが注入され、注入部72bからはそれよりも低い温度の不活性ガスが注入される。注入された不活性ガスは、成形材料の揮発成分及び添加剤の揮発成分を伴ってシリンダ13のホッパー12側へ抜け、取出部71から吸入される。ホッパー12には、シャッターSが設けられ、成形材料の投入後にシャッターが閉められることで、ホッパー12側へ抜けた揮発成分が取出部71に多く吸入されるように構成されてもよい。
【0028】
シリンダ13内においては、注入部72a、72bよりもノズル部13n側に溶融された成形材料が密に占め、ホッパー12側に溶融前の成形材料が多く含まれ、これらの間に隙間が設けられる。このため、スクリュ14の回転により成形材料がノズル部13n側に送られても、不活性ガスをホッパー12側に抜くことができる。
【0029】
分離部75は、例えば、揮発成分の沸点の違いを利用し、揮発成分を所定の温度で冷却及び液化させることで、特定の添加剤の成分を分離する。その他、分離部75としては、カラムを用いて添加剤の成分を分離する構成など、様々な方式が採用されてもよい。
【0030】
分離部75は、揮発成分から、一次酸化防止剤、リン系の二次酸化防止剤、金属不活性化材、充填剤、相溶化材、透明化剤、導電材、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤及び防黴剤のいずれか一つ又は複数の添加剤の成分を分離する。
【0031】
第1リターン部76は、分離部75により分離された添加剤の成分をシリンダ13の内部でスクリュ14の配置箇所へ戻す。第1リターン部76は、具体的には、シリンダ13の外部から、シリンダ13のスクリュ14が配置される箇所の内面に通じる管である。第1リターン部76には、溶融された成形材料の逆流を防止する弁が設けられていてもよい。第1リターン部76は、不活性ガスの注入部72a、72bよりもノズル部13n側に配置される。
【0032】
第1リターン部76へは、分離部75により分離された成分のうち、成形材料の加熱時に機能する添加剤(例えば酸化防止機能又は成形材料の熱分解を軽減する機能を有する添加剤)の成分、並びに、成形材料の全体への作用が要求される添加剤の成分が戻される。具体的には、一次酸化防止剤、リン系の二次酸化防止剤、金属不活性化材、充填剤、相溶化材、透明化剤及び導電材のいずれか一つ又は複数である。
【0033】
第2リターン部77は、分離部75により分離された添加剤の成分をシリンダ13の内部でスクリュ14よりもノズル部13n側の箇所へ戻す。第2リターン部77は、具体的には、シリンダ13の外部から、スクリュ14により射出前の成形材料が溜められるシリンダ13のノズル部13n側の内面に通じる管である。第2リターン部77には、溶融された成形材料の逆流を防止する弁が設けられていてもよい。
【0034】
第2リターン部77へは、分離部75により分離された成分のうち、成形品の表面部で機能することが要求される添加剤の成分が戻される。具体的には、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤及び防黴剤のいずれか一つ又は複数である。
【0035】
制御部79は、添加剤の成分を第1リターン部76と第2リターン部77とを介して戻すタイミングを制御する。これらの制御は、例えば、添加剤の成分を第1リターン部76に圧送するポンプpの駆動制御により行ってもよいし、弁の開閉制御により行ってもよい。制御部79は、スクリュ14の計量中、すなわち計量工程の開始から完了までの期間に、第1リターン部76を介して添加剤の成分を戻す。この期間に第1リターン部76を介して添加剤の成分を戻すことで、成形材料に添加剤をよく混ぜ込むことが可能となる。さらに、制御部79は、スクリュによる計量開始から成形材料の射出前の期間、すなわち計量工程の開始から充填工程の開始までの期間に、第2リターン部77を介して添加剤の成分を戻す。この期間では、第2リターン部77の成形材料に比較的に高い圧力が加わっていないので、この期間により、容易に第2リターン部77を介して添加剤の成分を戻すことができる。
【0036】
スクリュ14の動作には、成形材料の溶融を進めながら回転することで成形材料をホッパー12側からノズル部13n側へ搬送する計量動作と、並進によりスクリュ14とノズル部13nとの間に溜まった成形材料をノズル部13nから押し出す射出動作とが含まれる。スクリュ14の動作サイクルは、計量(回転)開始、計量中、計量(回転)終了、待機、射出(並進)開始、射出中、射出(並進)終了、保圧と、順に続く。計量中には、スクリュ14が退く方向に並進する動作が含まれていてもよい。制御部79は、上述のように、これらのスクリュ14の動作タイミングと同期させて、添加剤の成分を戻す制御を行う。
【0037】
なお、第2リターン部77の替わりに、あるいは、第2リターン部77と併用して金型43のキャビティ内へ添加剤の成分を戻す第2リターン部78が設けられてもよい。第2リターン部78へ戻す添加剤の成分の種類及びタイミングは、第2リターン部77へ戻す添加剤の成分の種類及びタイミングと同様である。
【0038】
<動作説明>
上記のように構成された射出成形機1によれば、ホッパー12からシリンダ13に投入された成形材料及び添加剤は、シリンダ13内で加熱されることで溶融し、かつ、スクリュ14が回転することでノズル部13n側へ搬送される。溶融の際、成形材料の不要成分(樹脂合成時におけるモノマー又は副生成物など)、並びに、添加剤の一部が揮発する。成形材料の搬送中、注入部72a、72bからは不活性ガスが注入されており、揮発成分は不活性ガスに伴ってホッパー12側へ送られ、取出部71から分離部75へ送られる。
【0039】
分離部75では、揮発成分から特定の添加剤の成分が分離され、例えば液化された添加剤の成分が、上述した添加剤の種類に応じて、第1リターン部76又は第2リターン部77へ振り分けられる。制御部79は、これらをスクリュ14の動作タイミングに同期させて、第1リターン部76と第2リターン部77とから溶融された成形材料へ戻す。第1リターン部76を介して戻された添加剤の成分は、スクリュ14により成形材料に混合され、ノズル部13n側へ送られる。第2リターン部77を介して戻された添加剤の成分は、その後に、成形材料に伴ってノズル部13nから射出され、金型43のキャビティに成形材料が充填される際に、成形材料の表面部に多く浸透する。
【0040】
成形材料が金型43へ射出され、その後、固化されたら、型締装置30により金型43が開かれ、エジェクタ装置50により成形品が金型43から外され、成形品が搬出口へ搬送される。そして、1サイクルの成形処理が完了する。
【0041】
以上のように、本実施形態の射出成形機1によれば、成形材料が溶融する際に生じる揮発成分が取り出される取出部71と、取り出された成分が溶融された成形材料に戻される第1リターン部76及び第2リターン部77とを備える。これにより、揮発した成分が、高温に長く晒されることで変質したり、その一部がホッパー12側に戻されて濃縮され、濃縮された成分が成形材料に付着したりするといった不都合を、抑制することができる。また、揮発した成分には添加剤の成分が含まれるが、これらの成分は、再度、溶融された成形材料に戻されるので、添加剤による成形品の作用が低減することを抑制できる。
【0042】
さらに、揮発成分を取り出す処理のみを行った場合、揮発した添加剤が成形材料から取り除かれてしまうことから、その分、予め添加剤を多く投入する必要が生じる。しかし、本実施形態の射出成形機1によれば、取出部71から取り出された成分は、再度、第1リターン部76又は第2リターン部77から戻されるので、添加剤の投入量の適正化を図ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、取出部71から取り出された成分を戻すリターン部として、シリンダ13内のスクリュ14の配置箇所に通じる第1リターン部76を有する。そして、第1リターン部76から、添加剤の成分を戻すことで、これを成形材料によく混ぜ込むことが可能となる。したがって、添加剤の成分が、成形材料の加熱時に機能する成分である場合、又は、成形品の全体へ作用するよう要求される成分である場合に、その機能を十分に発揮させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、制御部79は、第1リターン部76から成分を戻す場合に、スクリュ14による成形材料の計量中に成分が戻るように制御する。したがって、第1リターン部76から戻す成分を、成形材料によく混ぜ込むことが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、取出部71から取り出された成分を戻すリターン部として、シリンダ13内の射出動作前のスクリュ14の先端よりもノズル部13n側の箇所に通じる第2リターン部77を有する。あるいは、金型43のキャビティ内に通じる第2リターン部78を有する。そして、第2リターン部77、78から添加剤の成分を戻すことで、添加剤を成形品の内部よりも表面部に多く浸透させることができる。したがって、添加剤の成分が、成形品の表面部で作用するよう要求される成分である場合に、その機能を十分に発揮させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、制御部79は、第2リターン部77、78からの成分の戻しが、スクリュ14による成形材料の計量開始から射出前までの期間に行われるように制御する。このような同期制御により、第2リターン部77、78の圧力が低い段階で容易に成分を溶融された成形材料へ戻すことが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、取出部71から取り出された揮発成分から、添加剤の成分を分離させる分離部75を備え、分離された添加剤の成分が第1リターン部76と第2リターン部77、78とに送られる。このような構成により、不要な揮発成分が成形材料に戻されることを省いて、成形不良の発生をより抑制することができ、さらに、揮発成分に含まれる添加剤の成分を、その種類に応じて適した期間及び適した箇所へ戻すことが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、第1リターン部76からは、添加剤の成分として、一次酸化防止剤、リン系の二次酸化防止剤、金属不活性化材、充填剤、相溶化材、透明化剤及び導電材のいずれか一つ又は複数が戻される。したがって、これらの成分が、成形材料の高温時に成形材料によく混ぜ込まれるので、添加剤の機能を十分に発揮させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の射出成形機1によれば、第2リターン部77、78からは、添加剤の成分として、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、防曇剤、抗菌剤及び防黴剤のいずれか一つ又は複数が戻される。したがって、これらの成分が、成形材料の成形時に成形材料の表面部に多く浸透されるので、添加剤の機能を十分に発揮させることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、取り出した揮発成分から添加剤の成分を分離して戻す構成を示したが、分離を行わずに取り出した揮発成分を戻すようにしてもよい。この場合でも、揮発成分が長く高温に晒されてしまうことを抑制し、揮発成分が濃縮されて成形材料に付着してしまうことを抑制できる。また、上記実施形態では、不活性ガスを注入することで、溶融した成形材料の揮発成分を取り出す構成を示したが、例えば真空引きによる揮発成分の取出しなど、様々な手法を用いて揮発成分の取出しを行ってもよい。また、上記実施形態では、第1リターン部76と第2リターン部77、78の両方を有する構成を示したが、これらはいずれか一方のみを有する構成としてもよい。また、取出部の位置、リターン部の位置は、図に示した位置に限られず、例えば、リターン部が取出部よりも上流側に設けられていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、成形材料の計量と射出とを1つのシリンダ及び1つのスクリュにより行うインライン式の射出装置に本発明を適用した例を示したが、本発明は、
図3に示すように、成形材料を溶融して搬送する可塑化シリンダ81と、溶融された成形材料を金型のキャビティに射出する射出シリンダ85とを、別に備えるプリプラ式の射出装置80に適用してもよい。
図3は、実施形態の変形例に係る射出装置の構成を示す図である。プリプラ式の射出装置80は、例えば、可塑化シリンダ81及びこの中で回転及び進退可能なスクリュ82と、射出シリンダ85及びこの中で進退可能なプランジャ86と、金型に成形材料を射出する射出ノズル89と、成形材料の通路を切り替える切替部88とを備える。スクリュ82が回転することで(回転しながらスクリュ82が後退してもよい)、成形材料が溶融されながらスクリュ82のフィン間の溝82aに沿って送られ、成形材料が可塑化シリンダ81の先端部に溜められる。切替部88は、内部の流路部88aが回転駆動可能に構成され、第1の回転角度(
図3の角度)で可塑化シリンダ81のノズル部81hと射出シリンダ85のノズル部85hとの通路を連通させる。可塑化シリンダ81の先端部に設定量の成形材料が溜められたら、流路部88aが第1回転角度の状態で、スクリュ82が前進する。これにより、溶融された成形材料が可塑化シリンダ81から射出シリンダ85へ送られ、射出シリンダ85の先端部に溶融された成形材料が溜められる(プランジャ86が後退されながら成形材料が溜められてもよい)。射出シリンダ85の先端部に成形材料が溜められたら、流路部88aが第2の回転角度(
図3の矢印方向に90°回転した角度)に回転駆動され、これにより射出シリンダ85のノズル部85hと射出ノズル89との通路が連通する。そして、この状態で、射出シリンダ85のプランジャ86が前進することで、射出シリンダ85の先端部に溜められた成形材料が射出ノズル89から金型のキャビティに射出される。このようなプリプラ式の射出装置80の場合、可塑化シリンダ81のスクリュ82が配置される位置に、実施形態の第1リターン部76に相当するリターン部91を設けてもよい。さらに、可塑化シリンダ81の成形材料を溜める先端部に通じるリターン部92、可塑化シリンダ81と切替部88との間に介在する通路に通じるリターン部93、切替部88の流路部88aの通路に通じるリターン部94、射出シリンダ85において成形材料が溜められる先端部に通じるリターン部95、射出ノズル89の通路に通じるリターン部96を、実施形態の第2リターン部77に相当するリターン部として設けてもよい。リターン部94は、流路部88aが第1の回転角度に回転したときと、第2の回転角度に回転したときとの両方で、成形材料の通路に連通するように設けられている。
【0052】
なお、可塑化シリンダ81から切替部88までの成形材料の流路から取り出した揮発成分(又は揮発成分に含まれる添加剤の成分)は、リターン部を介して戻してもよいが、切替部88よりも以降の成形材料の流路から取り出した揮発成分(又は揮発成分に含まれる添加剤の成分)は、リターン部を介して戻さない方がよい。切替部88よりも以降の成形材料の流路で放出された揮発成分は、熱により劣化している可能性が高いからである。切替部88よりも以降の成形材料の流路とは、切替部88から射出シリンダ85の成形材料の流路、並びに、切替部88から射出ノズル89への成形材料の流路が含まれる。切替部88よりも以降の成形材料の流路で揮発成分を取り出す場合、この揮発成分を成形材料に戻さない分、当初に投入される添加剤の量を多めにしてもよい。このような構成によれば、揮発成分の取り出しにより、熱で劣化した揮発成分を除去することができ、加えて、当初の添加剤の投入量を多めにすることで、添加剤の不足を補うことができる。ホッパー12から当初に投入される添加剤の量は、途中での揮発成分の取出しと、添加剤の成分のリターンとのバランスを考慮して決定すればよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 射出成形機
10射出装置
12 ホッパー
13 シリンダ
13n ノズル部
14 スクリュ
43 金型
71 取出部
72a、72b 注入部
73 ガス供給部
75 分離部
76 第1リターン部
77、78 第2リターン部
79 制御部