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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/08 20060101AFI20230217BHJP
   F16J 15/34 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
F16L27/08 Z
F16J15/34 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019093548
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186804
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石島 政直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理
(72)【発明者】
【氏名】奥西 泰之
(72)【発明者】
【氏名】松居 修平
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-097761(JP,A)
【文献】特開2002-005380(JP,A)
【文献】実開平02-074691(JP,U)
【文献】特開昭55-010116(JP,A)
【文献】特開昭59-231269(JP,A)
【文献】特開平05-322050(JP,A)
【文献】実開平01-168090(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/08
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被密封流体が流れる複数の外側流路が内周側で開口して形成された筒形のケース体と、
前記ケース体内に相対回転可能として設けられ、被密封流体が流れる複数の内側流路が外周側で開口して形成された軸体と、
前記ケース体と前記軸体との間に形成される環状空間において軸方向に並べて配置された複数のメカニカルシール装置と、を備え、
前記各メカニカルシール装置は、
前記ケース体に取り付けられた第一ケース側密封環と、
前記軸体において前記第一ケース側密封環の軸方向一方側に隣接して取り付けられ、前記第一ケース側密封環に対して相対的に摺動する第一軸側密封環と、
前記軸体において前記第一軸側密封環の前記軸方向一方側に隣接して取り付けられた第二軸側密封環と、
前記ケース体において前記第二軸側密封環の前記軸方向一方側に隣接して取り付けられ、前記第二軸側密封環に対して相対的に摺動する第二ケース側密封環と、を有し、
前記第一軸側密封環及び前記第二軸側密封環は、互いに軸方向に対向して接触する接触面を有し、
前記第一軸側密封環及び前記第二軸側密封環の両接触面のうち少なくとも一方の接触面には、一の前記外側流路と一の前記内側流路とを繋ぐ連通流路を構成するための溝が形成されている、ロータリジョイント。
【請求項2】
前記溝は、前記両接触面にそれぞれ形成されている、請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記被密封流体が気体であり、
前記両接触面にそれぞれ形成された溝同士は、互いに対向しない位置に配置されている、請求項2に記載のロータリジョイント。
【請求項4】
前記被密封流体が液体であり、
前記両接触面にそれぞれ形成された前記溝同士は、互いに対向する位置に配置されている、請求項2に記載のロータリジョイント。
【請求項5】
前記接触面には、内周側で前記一の内側流路と連通するとともに外周側で前記溝と連通し、前記連通流路を構成するための円周溝が形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータリジョイント。
【請求項6】
前記溝が、前記接触面の周方向に複数形成されており、
前記円周溝の外周側が、複数の前記溝と連通している、請求項5に記載のロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリジョイントは、固定側部材の流路と回転側部材の流路とを接続するために用いられている。例えば、半導体ウエハの表面研磨処理を行うために用いられるCMP装置(Chemical Mechanical Polishing装置)では、回転側部材(ターンテーブル又はトップリング)と、これを支持する固定側部材(CMP装置本体)との間を、研磨液、加圧用空気、洗浄水、純水、エアーブロー用空気、研磨残渣液等が被密封流体として流れる。このような被密封流体が混ざることなく前記回転側部材と前記固定側部材との間を流れるために、これらの部材間を接続するジョイント部には、独立した流体通路を複数設けることが必要である。そこで、このようなジョイント部として、例えば特許文献1に開示されている多ポート式のロータリジョイントが用いられる。
【0003】
特許文献1のロータリジョイントは、筒形のケース体と、ケース体内に回転可能に設けられた回転体と、ケース体と回転体との間の環状空間において軸方向に並べて設けられた複数のメカニカルシールとを備えている。ケース体には、径方向に貫通する複数のケース体側通路が形成されている。回転体には、ケース体側通路と同数の回転体側通路が、回転体の外周側で開口するように形成されている。
【0004】
各メカニカルシールは、ケース体に取り付けられている静止密封環と、回転体と一体回転する回転密封環とを有し、回転密封環が静止密封環に対して摺動するようになっている。軸方向に隣り合う回転密封環同士の間には、スリーブが回転体に外嵌して固定されており、このスリーブには、一のケース体側通路と一の回転体側通路とを繋ぐ連通流路を構成するための貫通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-97761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記ロータリジョイントでは、軸方向に隣り合う回転密封環同士の間に、連通流路を構成するための貫通孔が形成されたスリーブを配置する必要がある。このため、連通流路の個数(ポート数)が増加すると、ロータリジョイントの軸方向の全長が長くなり、CMP装置によってはロータリジョイントを搭載することができないという問題があった。
【0007】
前記問題を解決するために、スリーブを取り除いて一方の回転密封環に貫通孔を加工することが考えられる。しかし、この場合、回転密封環に貫通孔をあける加工が必要になるため、回転密封環の材質が炭化ケイ素(SiC)などの難加工材の場合、貫通孔の加工精度にばらつきが生じ易くなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ポート数が増加しても軸方向の全長が長くなるのを抑制することができ、かつポートの加工精度にばらつきが生じるのを抑制することができるロータリジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のロータリジョイントは、被密封流体が流れる複数の外側流路が内周側で開口して形成された筒形のケース体と、前記ケース体内に相対回転可能として設けられ、被密封流体が流れる複数の内側流路が外周側で開口して形成された軸体と、前記ケース体と前記軸体との間に形成される環状空間において軸方向に並べて配置された複数のメカニカルシール装置と、を備え、前記各メカニカルシール装置は、前記ケース体に取り付けられた第一ケース側密封環と、前記軸体において前記第一ケース側密封環の軸方向一方側に隣接して取り付けられ、前記第一ケース側密封環に対して相対的に摺動する第一軸側密封環と、前記軸体において前記第一軸側密封環の前記軸方向一方側に隣接して取り付けられた第二軸側密封環と、前記ケース体において前記第二軸側密封環の前記軸方向一方側に隣接して取り付けられ、前記第二軸側密封環に対して相対的に摺動する第二ケース側密封環と、を有し、前記第一軸側密封環及び前記第二軸側密封環は、互いに軸方向に対向して接触する接触面を有し、前記第一軸側密封環及び前記第二軸側密封環の両接触面のうち少なくとも一方の接触面には、一の前記外側流路と一の前記内側流路とを繋ぐ連通流路を構成するための溝が形成されている。
【0010】
上記のように構成されたロータリジョイントでは、各メカニカルシール装置の第一軸側密封環及び第二軸側密封環は、互いに軸方向に対向して接触する接触面を有し、これらの接触面のうち少なくとも一方に、一の外側流路と一の内側流路とを繋ぐ連通流路を構成するための溝が形成されている。これにより、従来のように貫通孔が形成されたスリーブを第一軸側密封環と第二軸側密封環との間に設ける必要がないので、連通流路の個数(ポート数)が増加しても軸方向の全長が長くなるのを抑制することができる。また、前記溝が形成される接触面を有する軸側密封環を金型で成型加工することができるため、前記溝の加工精度のばらつきを抑えることができる。
【0011】
(2)前記溝は、前記両接触面にそれぞれ形成されているのが好ましい。
この場合、両接触面にそれぞれ形成された溝同士を互いに対向する位置に配置することで1つの流路を形成したり、前記溝同士を互いに対向しない位置に配置することで溝毎に流路を形成したりすることができる。したがって、連通流路を構成する自由度を高めることできる。
【0012】
(3)前記被密封流体が気体である場合、前記両接触面にそれぞれ形成された溝同士は、互いに対向しない位置に配置されているのが好ましい。
被密封流体が気体の場合、第一軸側密封環と第一ケース側密封環との摺動、及び第二軸側密封環と第二ケース側密封環との摺動がドライ摺動となり、これらの摺動部分が発熱し易くなる。これに対して上記(3)では、両接触面にそれぞれ形成された溝同士が互いに対向しない位置に配置されることで、溝毎に流路が形成されるので、溝同士が互いに対向する位置に配置される場合よりも多くの流路を形成することができる。これにより、溝毎に形成された流路を通過する気体(被密封流体)によって、第一軸側密封環及び第二軸側密封環を効果的に冷却することができるので、前記摺動部分の発熱を効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)前記被密封流体が液体である場合、前記両接触面にそれぞれ形成された前記溝同士は、互いに対向する位置に配置されているのが好ましい。
被密封流体が液体の場合、連通流路を流れる液体の圧力損失が大きくなる。これに対して上記(4)では、両接触面にそれぞれ形成された溝同士が互いに対向する位置に配置されることで、これらの溝同士によって1つの大きな流路が形成されるので、その流路の接液面の面積を大きくすることができる。これにより、連通流路を流れる液体の圧力損失を抑制することができる。
【0014】
(5)前記接触面には、内周側で前記一の内側流路と連通するとともに外周側で前記溝と連通し、前記連通流路を構成するための円周溝が形成されているのが好ましい。
この場合、前記一の内側流路と前記溝とが互いに周方向にずれて配置されていても、円周溝により前記一の内側流路と前記溝とを確実に連通させることができる。
【0015】
(6)前記溝が、前記接触面の周方向に複数形成されており、前記円周溝の外周側が、複数の前記溝と連通しているのが好ましい。
この場合、接触面の周方向に形成された複数の前記溝を、円周溝を介して前記一の内側流路に連通させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロータリジョイントによれば、ポート数が増加しても軸方向の全長が長くなるのを抑制することができ、かつポートの加工精度にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。
図2】ロータリジョイントの下側を示す拡大断面図である。
図3】軸側密封環を接触面側から見た正面図である。
図4図3の軸側密封環の接触面同士を接触させた状態を示す平面図である。
図5】溝流路の変形例を備えた軸側密封環の正面図である。
図6図5の軸側密封環の接触面同士を接触させた状態を示す平面図である。
図7】溝流路の他の変形例を備えた軸側密封環の正面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るロータリジョイントの下側を示す拡大断面図である。
図9図8の軸側密封環の接触面同士を接触させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。このロータリジョイント1(以下、ジョイント1ともいう。)は、回転機器の固定側部材(例えば、CMP装置本体)に取り付けられる筒形のケース体2と、この回転機器の回転側部材(例えば、CMP装置のターンテーブル)に取り付けられる軸体5とを備えている。本実施形態のケース体2及び軸体5は、軸方向が上下方向として配置されている。
【0019】
なお、本発明において、「軸方向」とは、ジョイント1の中心線に沿った方向(この中心線に平行な方向も含む)である。ケース体2、軸体5、及び後述するメカニカルシール装置7それぞれの中心線は、ジョイント1の中心線と一致するようにして構成されている。また、本発明において、「径方向」とは、ジョイント1の中心線に対して直交する方向であり、「周方向」とは、ジョイント1の中心線回りの方向である。また、ジョイント1の姿勢は、図1に示す姿勢以外であってもよいが、説明の便宜上、本実施形態では、図1に示す上側をジョイント1の「上」とし、下側をジョイント1の「下」とする。
【0020】
<ケース体>
ケース体2は、下部フランジ21と、複数(図例では4個)の流路フランジ22と、上部フランジ23とを、下からこの順に積み重ねて構成されている。各フランジ21~23は、いずれも円環状に形成されており、複数本のボルト25(図1では1本のみ図示)によって全てのフランジ21~23が連結固定されている。これにより、ケース体2は、全体として筒形の構造体となっている。
【0021】
隣接する下部フランジ21と流路フランジ22との間、隣接する流路フランジ22同士の間、及び隣接する流路フランジ22と上部フランジ23との間には、それぞれOリング26が設けられている。
【0022】
各フランジ21,22,23は、径方向内側へ突出する環状の突出部211,221,231を有している。複数の流路フランジ22それぞれの突出部221には、被密封流体が流れる第一外側流路31が径方向に貫通して形成されている。また、複数の流路フランジ22それぞれの突出部221を除く部分には、被密封流体が流れる第二外側流路32が径方向に貫通して形成されている。本実施形態の被密封流体としては、例えば、加圧用空気、窒素等の不活性ガス、エアーブロー用空気等の気体が用いられる。
【0023】
各外側流路31,32は、流路フランジ22の内周側と外周側とで開口している。流路フランジ22の外周側の開口部は、前記固定側部材の複数の配管それぞれが接続される接続ポートとされている。
以上より、ケース体2には、被密封流体が流れる複数の第一外側流路31及び複数の第二外側流路32が、軸方向に沿って所定間隔毎に交互に形成されている。
【0024】
<軸体>
軸体5は、ケース体2の内周側に配置されている。軸体5には、複数(図例では4個)のスリーブ52が嵌合されている。また、軸体5には、後述する第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72も嵌合されている。なお、本実施形態においては、第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72を、単に軸側密封環71,72ともいう。軸側密封環71,72は、上下に配置されたスリーブ52同士の間に配置されている。最下部に配置されたスリーブ52の下側には、後述する第三軸側密封環81が配置されている。なお、本実施形態においては、第三軸側密封環81を、単に軸側密封環81ともいう。軸側密封環81は軸体5に嵌合されている。
【0025】
軸体5の上方には、押し付け部材54がボルト55によって固定されている。また、軸体5の下端部には、他の部分よりも直径が大きい大径部5aが形成されている。この大径部5aは、軸体5に嵌合されたスリーブ52及び軸側密封環71,72,81が下側へ移動するのを規制している。
【0026】
軸体5とスリーブ52と軸側密封環71(72,81)との間、及び軸体5と押し付け部材54の下端部と軸側密封環71との間には、それぞれOリング56が設けられている。Oリング56は、後述する第一内側流路61及び第二内側流路62を流れる被密封流体が他の流路へ浸入したり外部へ漏れたりするのを防止している。
【0027】
軸体5の大径部5aと下部フランジ21との間には転がり軸受8が設けられ、押し付け部材54と上部フランジ23との間には転がり軸受9が設けられている。これにより、軸体5は、押し付け部材54及び軸側密封環71,72,81と共に、ケース体2に対して回転可能に支持されている。
【0028】
軸体5内には、複数(図例では4個)の流路孔61a、及び複数(図例では4個)の流路孔62aが形成されている。複数の流路孔61a,62aそれぞれの上端側は、軸体5の外周面において軸方向(上下方向)の異なる位置で開口している。複数の流路孔61a,62aそれぞれの下端側は、軸体5の端面(下端面)で開口しており、この端面の開口に対して、前記回転側部材の複数の配管それぞれが接続される。
【0029】
軸体5内の各流路孔61aは、被密封流体が流れる第一内側流路61を構成している。軸体5内の各流路孔62aは、被密封流体が流れる第二内側流路62を構成している。以上より、軸体5の外周側には、複数(4個)の第一内側流路61及び複数(4個)の第二内側流路62が、軸方向の異なる位置で開口して形成されている。
【0030】
<メカニカルシール装置>
ケース体2と軸体5との間には環状空間Aが形成されており、この環状空間Aには複数(図例では4個)のメカニカルシール装置7が軸方向に並べて配置されている。これにより、本実施形態のジョイント1は、環状空間Aの軸方向に複数のメカニカルシール装置7を配置してなる多流路ロータリジョイントとされている。
【0031】
図2は、ジョイント1の下側を示す拡大断面図である。図2において、各メカニカルシール装置7は、軸体5に取り付けられた第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72と、ケース体2に取り付けられた第一ケース側密封環73及び第二ケース側密封環74と、押圧部材としての第一コイルスプリング75及び第二コイルスプリング76とを有している。
【0032】
各軸側密封環71,72は、例えば、耐摩耗性及びシール性能に優れた炭化ケイ素(SiC)により金型で成型加工された環状の部材からなる。各軸側密封環71,72は、前記のとおり、軸体5に一体回転可能に設けられており、回転密封環として機能する。第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72の互いに軸方向に対向する端面は、これらの端面同士が接触する接触面71b,72bとされている。第一軸側密封環71の上側の端面(接触面71bと反対側の端面)には、環状のシール面71aが形成されている。第二軸側密封環72の下側の端面(接触面72bと反対側の端面)には、環状のシール面72aが形成されている。
【0033】
各ケース側密封環73,74は、環状の部材からなる。第一ケース側密封環73は、第一軸側密封環71の上側に隣接して配置されている。第二ケース側密封環74は、第二軸側密封環72の下側に隣接して配置されている。
【0034】
各ケース側密封環73,74の径方向外端部は、流路フランジ22の突出部221において軸方向(上下方向)に突出して固定されたピン27に当接している。これにより、各ケース側密封環73,74は、ケース体2に回り止めされ、静止密封環として機能する。
【0035】
第一ケース側密封環73の下側の端面には、第一軸側密封環71のシール面71aに接触する環状のシール面73aが形成されている。第二ケース側密封環74の上側の端面には、第二軸側密封環72のシール面72aに接触する環状のシール面74aが形成されている。
【0036】
第一コイルスプリング75は、対応する流路フランジ22の突出部221において、周方向に複数(図中には1つのみ図示)形成された挿通穴222に圧縮された状態で挿入されている。第一コイルスプリング75の一端部は、第一ケース側密封環73に当接している。これにより、第一ケース側密封環73は、第一コイルスプリング75の弾性復元力によって、第一軸側密封環71側へ向かって下側に押圧され、両シール面71a,73a間には軸方向の押し付け力が作用している。なお、第一コイルスプリング75以外に他の押圧部材を用いてもよい。
【0037】
第二コイルスプリング76は、対応する流路フランジ22の突出部221において、周方向に複数(図中には1つのみ図示)形成された挿通穴223に圧縮された状態で挿入されている。第二コイルスプリング76の一端部は、第二ケース側密封環74に当接している。これにより、第二ケース側密封環74は、第二コイルスプリング76の弾性復元力によって、第二軸側密封環72側へ向かって上側に押圧され、両シール面72a,74a間には軸方向の押し付け力が作用している。なお、第二コイルスプリング76以外に他の押圧部材を用いてもよい。
【0038】
以上より、ケース体2に対して軸体5が回転することで、第一軸側密封環71と第一ケース側密封環73のシール面71a,73a同士は、軸方向に押し付けあった状態で摺動する。シール面71a,73a同士の摺動により、これら両シール面71a,73aの間から被密封流体が漏れるのを防止するシール機能が発揮される。
【0039】
同様に、ケース体2に対して軸体5が回転することで、第二軸側密封環72と第二ケース側密封環74のシール面72a,74a同士は、軸方向に押し付けあった状態で摺動する。シール面72a,74a同士の摺動により、これら両シール面72a,74aの間から被密封流体が漏れるのを防止するシール機能が発揮される。
【0040】
従って、第一軸側密封環71のシール面71aと第一ケース側密封環73のシール面73aとの相対回転に伴う摺動作用、及び第二軸側密封環72のシール面72aと第二ケース側密封環74のシール面74aとの相対回転に伴う摺動作用により、メカニカルシール装置7のシール機能が発揮される。以下、シール面71a,73a同士の摺動部分を第一摺動部分77といい、シール面72a,74a同士の摺動部分を第二摺動部分78という。
【0041】
<第一連通流路>
軸方向の上下に隣り合うメカニカルシール装置7のうち、下側に配置されたメカニカルシール装置7の第一ケース側密封環73と、上側に配置されたメカニカルシール装置7の第二ケース側密封環74とは、スリーブ52の外周面との間に隙間を有して設けられている。これにより、軸方向に隣接するケース側密封環73,74とスリーブ52との間には、被密封流体が流れる円筒状の隙間流路41aが形成されている。また、軸方向に隣接するケース側密封環73,74同士の間には、被密封流体が流れる環状流路41bが形成されている。
【0042】
環状流路41bは、径方向内側の隙間流路41aと、径方向外側の第一外側流路31とを繋いでいる。軸方向に隣接するケース側密封環73,74の外周面と、流路フランジ22の突出部221の内周面との間には、Oリング79が設けられている。なお、各ケース側密封環73,74は、Oリング79を介して突出部221に対して軸方向に移動可能な状態で嵌合されている。
【0043】
スリーブ52は、軸体5の各流路孔61aの開口に対応する位置に配置されている。また、スリーブ52は、その内周側において軸体5の外周面との間に形成された環状の隙間41cと、周方向に間隔をあけて複数(図中には1つのみ図示)形成された貫通孔41dとを有している。各スリーブ52の隙間41cは、内周側において対応する流路孔61aと連通し、外周側において前記複数の貫通孔41dと連通している。各貫通孔41dは、外周側において前記隙間流路41aと連通している。
【0044】
以上より、軸方向の上下に隣り合うメカニカルシール装置7の間における、隙間流路41a、環状流路41b、隙間41c、及び貫通孔41dは、第一外側流路31(最下部の第一外側流路31を除く)と、第一内側流路61(最下部の第一内側流路61を除く)とを繋ぐ第一連通流路41を構成している。第一連通流路41内の被密封流体は、軸方向の上下に隣り合うメカニカルシール装置7の第一及び第二摺動部分77,78のシール機能、及びOリング56,79のシール機能によって外部へ漏れることはない。これにより、第一外側流路31、第一連通流路41、及び第一内側流路61は、被密封流体が流れる1つの独立した第一流体通路11を構成している。
【0045】
<第二連通流路>
各メカニカルシール装置7において、第一ケース側密封環73が嵌合された流路フランジ22の突出部221と、第二ケース側密封環74が嵌合された流路フランジ22の突出部221との間には、被密封流体が流れる環状流路422が、環状空間Aを区画して形成されている。環状流路422は、径方向外側の第二外側流路32と連通している。
【0046】
各メカニカルシール装置7の第一軸側密封環71と第二軸側密封環72との間には、被密封流体が流れる溝流路421が形成されている。溝流路421は、内周側において軸体5の対応する第二内側流路62と連通し、外周側において環状流路422と連通している。溝流路421は、軸側密封環71,72の接触面71b,72bの内周側にそれぞれ形成された環状の円周溝421a,421bと、接触面71b,72bにおける円周溝421a,421bよりも外周側に形成された溝421c,421dとを有している。
【0047】
各円周溝421a(421b)は、図2に示す断面視において、接触面71b(72b)から軸方向に離れるにしたがって縮径するようにテーパ状に形成されている。なお、各円周溝421a(421b)は、断面視において段差状等の他の形状に形成されていてもよい。
【0048】
図3は、軸側密封環71(72)を接触面71b(72b)側から見た正面図である。図3において、軸側密封環71(72)の溝421c(421d)は、接触面71b(72b)の周方向に間隔をあけて複数(図例では5個)形成されている。各溝421c(421d)は径方向に延びて形成されている。
【0049】
各溝421c(421d)の径方向内端は、接触面71b(72b)の内周端付近まで延びており、円周溝421a(421b)と連通している。各溝421c(421d)の径方向外端は、接触面71b(72b)の外周端まで延びており、環状流路422と連通している。
【0050】
図4は、図3の軸側密封環71,72の接触面71b,72b同士を接触させた状態を示す平面図である。各溝421c(421d)は、例えば、平面視において円弧状に形成されている。なお、各溝421c(421d)は、平面視においてV字状等の他の形状に形成されていてもよい。
【0051】
図2に示すように、両接触面71b,72bにそれぞれ形成された円周溝421a,421b同士は、互いに対向する位置に配置されている。図2及び図4に示すように、両接触面71b,72bにそれぞれ形成された溝421c,421d同士は、互いに対向しない位置に配置されている。具体的には、第一軸側密封環71の周方向に隣り合う溝421c同士の間の中間に、第二軸側密封環72の各溝421dが配置されている。
【0052】
これにより、本実施形態の溝流路421は、互いに対向する円周溝421a,421b同士で形成された1つの流路と、5個の溝421c及び5個の溝421dのそれぞれによって独立して形成された合計10個の流路とによって構成されている。
【0053】
以上より、各メカニカルシール装置7に形成された溝流路421及び環状流路422は、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二連通流路42を構成している。第二連通流路42内の被密封流体は、第一摺動部分77のシール機能、第一摺動部分77の上側に配置されたOリング56,79のシール機能、第二摺動部分78のシール機能、第二摺動部分78の下側に配置されたOリング56,79のシール機能、及び環状流路422の径方向外側に配置されたOリング26のシール機能によって外部へ漏れることはない。これにより、第二外側流路32、第二連通流路42、及び第二内側流路62は、被密封流体が流れる1つの独立した第二流体通路12を構成している。
【0054】
<溝流路の変形例>
図5は、溝流路421の変形例を備えた軸側密封環71(72)を接触面71b(72b)側から見た正面図である。図6は、図5の軸側密封環71,72の接触面71b,72b同士を接触させた状態を示す平面図である。図5及び図6において、本変形例の溝流路421では、溝421c(421d)の周方向の溝幅が、上記実施形態(図3参照)の溝421c(421d)の周方向の溝幅よりも広く形成されている。但し、本変形例の溝421c(421d)の軸方向(図6の上下方向)の溝深さは、上記実施形態(図4参照)の溝421c(421d)の軸方向の溝深さと同じ深さに形成されている。
【0055】
本変形例の溝421c(421d)によれば、溝幅を広くして各溝421c,421dによって形成される流路を大きくしても、溝深さは深くならないので、各軸側密封環71,72の軸方向の厚みを確保することができる。その結果、各軸側密封環71,72のシール面71a,72aにうねりが生じるのを抑えることができるので、第二摺動部分78のシール性能が低下するのを抑制することができる。
【0056】
なお、溝421c(421d)の溝幅は、図6に示す溝幅よりも広くしてもよい。この場合、溝421c(421d)の溝幅は、接触面71b(72b)における溝421c(421d)が占める面積と、接触面71b(72b)における溝421c(421d)以外の平坦面が占める面積との比率が1:1になるまで広げることができる。
【0057】
図7は、溝流路421の他の変形例を備えた軸側密封環71(72)を接触面71b(72b)側から見た正面図である。図7において、本変形例の溝流路421では、溝421c(421d)が、接触面71b(72b)の内周端付近から外周端に向かって円弧状に延びて形成されている。
【0058】
<第三連通流路>
図2において、軸方向の最下部に配置されたメカニカルシール装置7は、第二ケース側密封環74よりも下側においてケース体2に取り付けられた第三ケース側密封環82と、第三ケース側密封環82の下側に隣接して軸体5に取り付けられた第三軸側密封環81と、押圧部材としての第三コイルスプリング83とをさらに有している。
【0059】
第三軸側密封環81は、第一及び第二軸側密封環71,72と同様に、環状の部材からなる。第三軸側密封環81は、軸体5に一体回転可能に取り付けられており、回転密封環として機能する。第三軸側密封環81の下側の端面は、軸体5の大径部5aの端面に接触している(図1参照)。第三軸側密封環81の上側の端面には、環状のシール面81aが形成されている。
【0060】
第三ケース側密封環82は、第一及び第二ケース側密封環73,74と同様に、環状の部材からなる。第三ケース側密封環82の径方向外端部は、流路フランジ22の突出部221において軸方向(上下方向)に突出して固定されたピン27に当接している。これにより、第三ケース側密封環82は、ケース体2に回り止めされ、静止密封環として機能する。第三ケース側密封環82の下側の端面には、第三軸側密封環81のシール面81aに接触する環状のシール面82aが形成されている。
【0061】
第三コイルスプリング83は、流路フランジ22の突出部221において、周方向に複数(図中には1つのみ図示)形成された挿通穴222に圧縮された状態で挿入されている。第三コイルスプリング83の一端部は、第三ケース側密封環82に当接している。これにより、第三ケース側密封環82は、第三コイルスプリング83の弾性復元力によって、第三軸側密封環81側へ向かって下側に押圧され、両シール面81a,82a間には軸方向の押し付け力が作用している。なお、第三コイルスプリング83以外に他の押圧部材を用いてもよい。
【0062】
以上より、ケース体2に対して軸体5が回転することで、第三軸側密封環81と第三ケース側密封環82のシール面81a,82a同士は、軸方向に押し付けあった状態で摺動する。シール面81a,82a同士の摺動により、これら両シール面81a,82aの間から被密封流体が漏れるのを防止するシール機能が発揮される。
【0063】
従って、第三軸側密封環81のシール面81aと第三ケース側密封環82のシール面82aとの相対回転に伴う摺動作用により、最下部に配置されたメカニカルシール装置7のシール機能が発揮される。以下、シール面81a,82a同士の摺動部分を第三摺動部分84という。
【0064】
第三ケース側密封環82と、その上側に配置された第二ケース側密封環74とは、スリーブ52との間に隙間を有して設けられている。これにより、軸方向に隣接するケース側密封環74,82とスリーブ52との間には、被密封流体が流れる円筒状の隙間流路43aが形成されている。隙間流路43aは、第三軸側密封環81の上側に隣接するスリーブ52の各貫通孔41dと連通している。
【0065】
軸方向に隣接するケース側密封環74,82同士の間には、被密封流体が流れる環状流路43bが形成されている。環状流路43bは、径方向内側の隙間流路43aと、径方向外側の第一外側流路31とを繋いでいる。第三ケース側密封環82の外周面と、流路フランジ22の突出部221の内周面との間には、Oリング79が設けられている。なお、第三ケース側密封環82は、Oリング79を介して突出部221に対して軸方向に移動可能な状態で嵌合されている。
【0066】
以上より、最下部のメカニカルシール装置7の第二ケース側密封環74と第三ケース側密封環82との間における、隙間流路43a、環状流路43b、隙間41c、及び貫通孔41dは、最下部の第一外側流路31と最下部の第一内側流路61とを繋ぐ第三連通流路43を構成している。第三連通流路43内の被密封流体は、最下部のメカニカルシール装置7の第二及び第三摺動部分78,84のシール機能、及びOリング56,79のシール機能によって、外部へ漏れることはない。これにより、最下部の第一外側流路31、第三連通流路43、及び最下部の第一内側流路61は、被密封流体が流れる1つの独立した第一流体通路11を構成している。
【0067】
<効果>
以上、本実施形態のロータリジョイント1によれば、各メカニカルシール装置7の第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72は、互いに軸方向に対向して接触する接触面71b,72bを有し、これらの接触面71b,72bに、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二連通流路42を構成するための溝421c,421dが形成されている。これにより、従来のように貫通孔が形成されたスリーブを第一軸側密封環71と第二軸側密封環72との間に設ける必要がないので、第二連通流路42の個数(ポート数)が増加しても軸方向の全長が長くなるのを抑制することができる。また、溝421c,421dが形成される接触面71b,72bを有する軸側密封環71,72を、それぞれ金型で成型加工することができるため、溝421c,421dの加工精度のばらつきを抑えることができる。
【0068】
また、溝421c,421dが、両接触面71b,72bにそれぞれ形成されているので、両接触面71b,72bにそれぞれ形成された溝421c,421d同士を互いに対向する位置に配置することで1つの流路を形成したり、溝421c,421d同士を互いに対向しない位置に配置することで溝421c,421d毎に流路を形成したりすることができる。したがって、連通流路42を構成する自由度を高めることできる。
【0069】
また、被密封流体が気体の場合、第一軸側密封環71と第一ケース側密封環73との第一摺動部分77、及び第二軸側密封環72と第二ケース側密封環74との第二摺動部分78がドライ摺動となり、これらの摺動部分77,78が発熱し易くなる。これに対して本実施形態では、両接触面71b,72bにそれぞれ形成された溝421c,421d同士は、互いに対向しない位置に配置され、溝421c,421d毎に流路が形成されるので、溝421c,421d同士が互いに対向する位置に配置される場合よりも多くの流路を形成することができる。これにより、溝421c,421d毎に形成された流路を通過する気体(被密封流体)によって、第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72を効果的に冷却することができるので、摺動部分77,78の発熱を効果的に抑制することができる。
【0070】
また、接触面71b,72bには、内周側で第二内側流路62と連通するとともに外周側で溝421c,421dと連通する円周溝421a,421bが形成されているので、第二内側流路62と溝421c,421dとが互いに周方向にずれて配置されていても、円周溝421a,421bにより第二内側流路62と溝421c,421dとを確実に連通させることができる。
【0071】
また、溝421c,421dが、接触面71b,72bの周方向に複数形成されており、円周溝421a,421bの外周側が、複数の溝421c,421dと連通しているので、これら複数の溝421c,421dを、円周溝421a,421bを介して第二内側流路62に連通させることができる。
【0072】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るロータリジョイントの下側を示す拡大断面図である。第2実施形態のロータリジョイント1は、被密封流体として用いる流体が異なる点、及び第二連通流路42の溝流路421の構成が異なる点で、第1実施形態と相違する。
本実施形態では、被密封流体として、例えば、研磨液、洗浄水、純水、研磨残渣液等の液体が用いられる。
【0073】
図9は、図8の軸側密封環71,72の接触面71b,72b同士を接触させた状態を示す平面図である。図8及び図9に示すように、本実施形態の第二連通流路42の溝流路421では、軸側密封環71,72の両接触面71b,72bにそれぞれ形成された溝421c,421d同士は、互いに対向する位置に配置されている。なお、本実施形態の溝421c,421dは、例えば第1実施形態と同様に5個ずつ形成されている。
【0074】
これにより、本実施形態の溝流路421は、互いに対向する円周溝421a,421b同士で形成された1つの流路と、互いに対向する溝421c,421d同士で形成された合計5個の流路とによって構成されている。
【0075】
上記のように構成されたロータリジョイント1において、ケース体2とスリーブ52が合成樹脂製の場合、ケース体2及びスリーブ52は変形しやすくなる。このため、スリーブ52に形成される貫通孔41dと、軸側密封環71,72の互いに対向する円周溝421a,421b同士で形成される流路とを、互いに周方向に一致させて配置すると、第一摺動部分77及び第二摺動部分78の周方向において面圧に偏りが生じ、シール性能が低下するおそれがある。このため、ケース体2とスリーブ52が合成樹脂製の場合、第一摺動部分77及び第二摺動部分78の周方向の面圧を分散させるために、貫通孔41dと前記流路とを周方向にずらして配置するのが好ましい。
【0076】
なお、本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、第2実施形態の溝流路421の溝421c,421dは、図5又は図7の変形例に示す形状に形成されていてもよい。
【0077】
以上、本実施形態のロータリジョイント1においても、各メカニカルシール装置7の第一軸側密封環71及び第二軸側密封環72は、互いに軸方向に対向して接触する接触面71b,72bに、第二外側流路32と第二内側流路62とを繋ぐ第二連通流路42を構成するための溝421c,421dが形成されている。これにより、従来のように貫通孔が形成されたスリーブを第一軸側密封環71と第二軸側密封環72との間に設ける必要がないので、第二連通流路42の個数(ポート数)が増加しても軸方向の全長が長くなるのを抑制することができる。また、溝421c,421dが形成される接触面71b,72bを有する軸側密封環71,72を、それぞれ金型で成型加工することができるため、溝421c,421dの加工精度のばらつきを抑えることができる。
【0078】
また、被密封流体が液体の場合、第二連通流路42を流れる液体の圧力損失が大きくなる。これに対して本実施形態では、両接触面71b,72bにそれぞれ形成された溝421c,421d同士が互いに対向する位置に配置され、溝421c,421d同士によって1つの大きな流路が形成されるので、その流路の接液面の面積を大きくすることができる。これにより、第二連通流路42を流れる液体の圧力損失を抑えることができる。
【0079】
[その他]
上記各実施形態におけるロータリジョイント1は、軸方向において上下逆に配置されていてもよいし、軸方向が水平方向となるように配置されていてもよい。また、ロータリジョイント1は、CMP装置以外に、スパッタリング装置やエッチング装置等の他の装置にも適用することができる。また、ロータリジョイント1は、半導体分野での使用に限定されるものではない。
【0080】
上記各実施形態では、ケース体2を固定側部材に取り付け、軸体5を回転側部材に取り付けているが、ケース体2を回転側部材に取り付け、軸体5を固定側部材に取り付けてもよい。
最下部に配置されたメカニカルシール装置7は、第三軸側密封環81及び第三ケース側密封82を必ずしも備える必要はない。
【0081】
上記第1実施形態では、軸側密封環71,72の両接触面71b,72bに形成された溝421c,421d同士を、互いに対向しない位置に配置しているが、第2実施形態のように互いに対向する位置に配置してもよい。
上記第2実施形態では、軸側密封環71,72の両接触面71b,72bに形成された溝421c,421d同士を、互いに対向する位置に配置しているが、第1実施形態のように互いに対向しない位置に配置してもよい。
【0082】
上記各実施形態では、軸側密封環71,72の両接触面71b,72bにそれぞれ溝421c,421dを形成しているが、一方の接触面71bのみに溝421cを形成してもよいし,他方の接触面72bのみに溝421dを形成してもよい。
また、溝421c,421dの個数は、1個以上あればよい。但し、各軸側密封環71,72のシール面71a,72aに生じるうねりを抑えるという観点では、溝421c,421dは2個以上あるのが好ましい。
【0083】
上記各実施形態では、軸側密封環71,72の接触面71b,72bに円周溝421a,421bを形成しているが、軸体5の外周面と軸側密封環71,72との間に被密封流体が流れる隙間があれば、円周溝421a,421bを形成する必要はない。但し、第2実施形態において、液体(被密封流体)の圧力損失を抑えるという観点では、前記隙間があっても円周溝421a,421bを形成したほうがよい。
【0084】
上記各実施形態では、軸側密封環71,72の両接触面71b,72bにそれぞれ円周溝421a,421bを形成しているが、一方の接触面71bのみに円周溝421aを形成してもよいし,他方の接触面72bのみに円周溝421bを形成してもよい。その際、溝が形成されていない接触面に円周溝を形成してもよい。例えば、一方の接触面71bのみに溝421cを形成している場合、他方の接触面72bのみに円周溝421bを形成してもよい。この場合、両接触面71b,72b同士を接触させた状態で、溝421cと円周溝421bとが連通するようになっていればよい。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 ロータリジョイント
2 ケース体
5 軸体
7 メカニカルシール装置
32 第二外側流路(外側流路)
42 第二連通流路(連通流路)
62 第二内側流路(内側流路)
71 第一軸側密封環
71b 接触面
72 第二軸側密封環
72b 接触面
73 第一ケース側密封環
74 第二ケース側密封環
421a 円周溝
421b 円周溝
421c 溝
421d 溝
A 環状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9