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特許7229102画像を用いた三次元計測装置、画像を用いた三次元計測方法および画像を用いた三次元計測用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】画像を用いた三次元計測装置、画像を用いた三次元計測方法および画像を用いた三次元計測用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/245 20060101AFI20230217BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20230217BHJP
【FI】
G01B11/245 H
G06T7/593
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019105107
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020197493
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「大規模画像からPEを計測する技術の開発およびPE値のモデル化」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】596175810
【氏名又は名称】公益財団法人かずさDNA研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】林 篤司
(72)【発明者】
【氏名】高地 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】七夕 高也
(72)【発明者】
【氏名】磯部 祥子
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-231371(JP,A)
【文献】特開2011-141710(JP,A)
【文献】特開2007-327938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得部と、
前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定部と、
前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択部と、
前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得部と、
前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定部と
を備え、
前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測装置。
【請求項2】
前記第2の補助視点が前記第2の視点の前記第1の視点から離れる側から選択される請求項1に記載の画像を用いた三次元計測装置。
【請求項3】
前記マスク領域は、
前記第1の補助視点と前記第1の補助視点から見た前記撮影対象の縁の部分とを結ぶ第1の方向線と、
第2の補助視点と前記第2の補助視点から見た前記第1の補助視点からは死角となる前記撮影対象の縁の部分とを結ぶ第2の方向線と
の交点の前記第1の視点から見た後方であって、前記第1の方向線と前記第2の方向線で囲まれる領域である請求項1または2に記載の画像を用いた三次元計測装置。
【請求項4】
前記マスク領域において、前記ステレオ画像における対応点の特定が禁止されている請求項1~3のいずれか一項に記載の画像を用いた三次元計測装置。
【請求項5】
異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得ステップと、
前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定ステップと、
前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択ステップと、
前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得ステップと、
前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定ステップと
を有し、
前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測方法。
【請求項6】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得ステップと、
前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定ステップと、
前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択ステップと、
前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得ステップと、
前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定ステップと
を実行させ、
前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いた三次元計測の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を用いて植物の三次元形状に係るデータを取得し、その成長過程を三次元的に把握する技術が知られている。例えば、特許文献1には、計測対象物である植物を回転させながら植物の写真撮影を行い、得られた複数の撮影画像から被写体(植物)の三次元モデルを得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-197685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物の茎のような立体物を対象とした場合、ステレオ画像のマッチング点の誤差が生じる問題がある。図1には、上記の問題が生じる原理が概念的に示されている。●点は、カメラ1とカメラ2から撮影したステレオ画像から求めた計測対象物上のマッチング点である。これは理想的な場合であるが、実際には、△点や□点でマッチングが取れてしまう場合がある。△点や□点は計測対象物の特徴点ではないので、△点や□点はステレオ画像上の特徴点の誤対応点となる。この誤対応点は、ノイズとなる。
【0005】
本発明は、写真を用いた三次元計測において、ステレオ画像上での計測対象物の縁の部分や背面における誤対応点の発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得部と、前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定部と、前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択部と、前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得部と、前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定部とを備え、前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測装置である。
【0007】
本発明において、前記第2の補助視点が前記第2の視点の前記第1の視点から離れる側から選択される態様が挙げられる。本発明において、前記マスク領域は、前記第1の補助視点と前記第1の補助視点から見た前記撮影対象の縁の部分とを結ぶ第1の方向線と、第2の補助視点と前記第2の補助視点から見た前記第1の補助視点からは死角となる前記撮影対象の縁の部分とを結ぶ第2の方向線との交点の前記第1の視点から見た後方であって、前記第1の方向線と前記第2の方向線で囲まれる領域である態様が挙げられる。本発明において、前記マスク領域において、前記ステレオ画像における対応点の特定が禁止されている態様が挙げられる。
【0008】
本発明は、異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得ステップと、前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定ステップと、前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択ステップと、前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得ステップと、前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定ステップとを有し、前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測方法としても把握できる。
【0009】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに異なる第1の視点および第2の視点から撮影対象を撮影したステレオ画像を得るステレオ画像取得ステップと、前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点特定ステップと、前記第1の視点の前記第2の視点から離れる側からの第1の補助視点の選択、および前記第1の視点の前記第2の視点の側からの第2の補助視点の選択を行う補助視点選択ステップと、前記第1の補助視点から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像と前記第2の補助視点から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像とを取得する補助画像取得ステップと、前記第1の補助視点から見て前記撮影対象の影となり、且つ、前記第2の補助視点から見て前記撮影対象の影とならない領域をマスク領域として設定するマスク領域設定ステップとを実行させ、前記対応する特徴点の特定が前記マスク領域において制限される画像を用いた三次元計測用プログラムとして把握することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、写真を用いた三次元計測において、ステレオ画像上での計測対象物の縁の部分における誤対応点の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】誤対応点が発生する原理を示す図である。
図2】発明の原理を示す図である。
図3】発明の原理を示す図である。
図4】発明の原理を示す図である。
図5】発明の原理を示す図である。
図6】実施形態の概念図である。
図7】実施形態のブロック図である。
図8】後方交会法の原理を示す図(A)と前方交会法の原理を示す図(B)である。
図9】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11】カメラ位置を求める原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.原理
(初めに)
図1の問題が発生するのは、以下の理由による。図1における●点は、カメラ2から見て計測対象物の縁の部分である。この縁の部分では、背面の画像情報の影響を受け、分離に誤差が生じる。この結果、奥行き方向の情報が紛れ込むことによる△点での誤マッチングや背面の□点での誤マッチングが生じる。
【0013】
図1の問題を抑制するために、図2に示すように、ステレオ画像におけるマッチングを制限する周辺マスク10を設定する。図2には、カメラ1とカメラ2で計測対象物30を撮影しステレオ画像を得、このステレオ画像からステレオ画像間で対応する特徴点(●印の点)をステレオマッチング点(対応点ともいう)として求める場合が示されている。
【0014】
周辺マスク10を設定することで、その領域でのマッチングが制限(この場合は禁止)される。これにより、背面20の存在の影響等により生じる△点や□点で示される誤マッチング点の発生が抑制される。
【0015】
(周辺マスクの設定の原理)
周辺マスク10は、以下のようにして設定される。まず、ステレオ画像を撮影するカメラ1とカメラ2の外側(両サイド)からカメラ3とカメラ4の1組のカメラを選択する。カメラ3とカメラ4は、周辺マスク10を設定するために選択される。
【0016】
ここで、カメラ1,カメラ2,カメラ3,カメラ4のそれぞれは、計測対象物30を視界に納め、各カメラの撮影画像には、計測対象物30が写っている(但し、見る角度が異なっている)。また、カメラ1,カメラ2,カメラ3およびカメラ4は、同一平面上に位置している。
【0017】
まず、カメラ3が撮影した計測対象物30におけるステレオマッチング点(特定された対応点)●より外側(カメラ1から見てカメラ3の側)の縁と、カメラ3の位置(投影原点(視点))とを結ぶ方向線41を設定する。また、カメラ4が撮影した計測対象物30におけるステレオマッチング点●に最も近い縁と、カメラ4の位置(投影原点(視点))とを結ぶ方向線42を設定する。
【0018】
そして、方向線41と42が交差する点の後方(カメラ1およびカメラ2から見た遠方)で方向線41,42に囲まれる領域を周辺マスク10として設定する。周辺マスク10は、カメラ4から見て計測対象物30の影(背後)であり、且つ、カメラ3から見て計測対象物30の影(背後)でない領域である。
【0019】
以下、カメラ3,4の位置について説明する。まず、カメラ2から撮影した画像を利用して周辺マスク10を設定することは適切でない。なぜなら、カメラ2の画像では、計測対象物30の縁部分の分離が明確にできず、それ故に誤マッチング点である△点や□点が生じるが、この問題はカメラ2の画像を用いて周辺マスクを設定した場合も発生する。そのため、カメラ2の画像を利用した場合、誤マッチング点△や□を排除する周辺マスクは設定できない。
【0020】
図3には、図2のカメラ3はそのままに、カメラ4としてカメラ2の画像を利用して周辺マスク10を設定した場合が示されている。この場合、カメラ1から見て、マッチング点●の後方での周辺マスク10の設定ができず、△点や□点を排除するマスクは設定できない。この問題は、原理的にカメラ1より左側でカメラ4を選択した場合に発生する。よって、カメラ4をカメラ1より左側(カメラ2の側)から選択するのは適切でない。以上のことから、カメラ4は、カメラ2の右側(カメラ1と反対の側)から選択するのが適切となる。
【0021】
図4には、図2のカメラ4はそのままで、カメラ3をカメラ2の右側から選択した場合が示されている。この場合、カメラ2から見た●点の背後がカメラ3,4から見えず死角になるので、△点や□点を排除するマスクは設定できない。よって、カメラ3をカメラ2より右側(カメラ1と反対の側)から選択するのは適切でない。
【0022】
図5には、カメラ3をカメラ1とカメラ2の間から選択した場合が示されている。ステレオ画像の組の選択において、隣接するカメラ位置でなく、カメラ1とカメラ2の間にカメラがある場合は、カメラ4をカメラ1とカメラ2の間から選択することも可能である。図5には、この場合が示されている。
【0023】
ただし、オクル―ジョンを極力避け、またマッチング精度を高める場合、隣接するカメラ位置がステレオ画像を撮影した1組のカメラとして選択される。この場合、カメラ1とカメラ2の間にカメラはないので、図5の状況は実現できない。
【0024】
図5の場合、カメラ2から見て、●点の後方(背後)に周辺マスク10を設定できる。よって、カメラ3はカメラ2よりも左側(カメラ1の側)から選択すればよいことが結論される。
【0025】
以上まとめると、カメラ1とカメラ2から撮影したステレオ画像における対応点を求める場合、カメラ4をカメラ2のカメラ1と反対の側から選択し、カメラ3をカメラ2のカメラ1の側から選択することで、カメラ3とカメラ4の撮影画像を用いた周辺マスク10が作成できる。
【0026】
周辺マスクの使い方としては、
(1)周辺マスクからの対応点の特定を禁止する。
(2)対応点の特定は禁止しないが、周辺マスクでマスクされる領域における対応点の特定の優先度を下げる。
(3)対応点の特定の有無を判定する条件の一つとして、周辺マスクを利用する。
【0027】
また、3台以上のカメラを用いてステレオ画像を構成する場合は、基線上の両端のカメラに対して上記の条件を適用する。また、ここでは、左右にカメラが配列した場合を例に挙げ説明したが、ステレオカメラの配列方向は、上下や斜めであってもよい。
【0028】
また、本発明の原理は、下記両方の場合に適用できる。
(1)1台のカメラで回転する計測対象物を撮影し、計測対象物を異なる複数の視点から撮影した複数の画像を得る場合(勿論、複数のカメラで撮影してもよい)。
(2)カメラを移動させながら計測対象物を複数回撮影し、計測対象物を異なる複数の視点から撮影した複数の画像を得る場合(例えば、航空写真測量の場合)。
【0029】
また、車の衝突防止技術等でステレオ写真測量の原理を用いた対象物の三次元情報を取得する技術があるが、この技術に本発明を利用することもできる。
【0030】
2.全体の構成
図6には、植物120の三次元データを得るための三次元計測システム100が示されている。三次元計測システム100は、土台111、土台111上でモータ等の駆動手段により回転する回転台112を備えている。回転台112の上には、三次元計測の計測対象物である植物122が載せられている。
【0031】
土台111、回転台112および三次元計測システム100の背面は、植物120の色とは異なる色(この例では青)に着色されている。この色は、植物120と色彩が違うモノトーンの色が望ましい。例えば、植物120が緑系の色の場合、青、黄色、黒、白といった植物120と異なるモノトーンの色が選択される。物120は、鉢124に植えられており、鉢124には、識別用の2次元バーコード表示125が表示されている。
【0032】
土台111および回転台112の各部の寸法は予め既知のデータとして取得されている。回転台112の上面には、基準点となるターゲット113の表示が行なわれている。ターゲット113は、3箇所以上の複数が配置されている。ターゲット113は、2次元コードが付されたコード化ターゲットであり、それぞれが個別に識別可能とされている。また、各ターゲットの回転台112における位置は予め調べられ、既知となっている。
【0033】
回転台112の上面には、画像マッチング用の識別部材であるランダムドット柱121~123が固定されている。ランダムドット柱121~123は、長手形状を有する板状の部材であり、回転台112から鉛直上方に延在し、表面にランダムドットパターンが表示されている。ランダムドット柱121~123の表面には、ランダムドットパターンの他に、識別コードが表示されており、各識別コードは個別に識別できるようにされている。ランダムドット柱として、円柱や多角柱(例えば、四角柱や五角柱)を用いることもできる。
【0034】
ランダムドット柱の数を4本以上としてもよい。ただし、ランダムドット柱は、カメラ131~133と計測対象物である植物122との間に位置するので、その数が多すぎると、カメラ131~133による植物122の撮影に支障が生じる。
【0035】
ランダムドット柱121~123の回転台112に対する位置関係は既知であり、またランダムドット柱121~123の寸法(幅、長さ、厚さ)も既知である。ランダムドット柱121~123の寸法は既知であるので、ランダムドット柱121~123はスケールとしても利用される。回転台112上に定規を配置する方法や回転台112上にスケールを表示する形態も可能である。なお、計測対象物である植物120の上端より上方にランダムドット柱121~123の先端が位置するように、ランダムドット柱121~123の長手方向の寸法が(鉛直方向の寸法)が設定されている。また、上方から見て、ランダムドット柱121~123により計測対象物(植物120)が囲まれるように、ランダムドット柱121~123が配置されている。これは、ランダムドット柱の数を増やした場合も同様である。
【0036】
ランダムドットパターンは、丸形状のドットが規則性なくランダムに分布しているドットパターンである。ランダムドットパターンに関する技術は、例えば、特開平11-39505号公報、特開平10-97641号公報、電子情報通信学会研究報告.COMP,コンビュテーション112(24),51-58,2012-05-07等に記載されている。ランダムドットパターンの色は、モノトーンであってもよいし、多色であってもよい。この例では、白の下地に黒のランダムドットパターンを表示している。
【0037】
回転台112の周囲には、カメラ131~133が配置されている。カメラ131~133は、土台111に対して固定されており、回転する回転台112およびその上の植物120を特定の時間間隔で繰り返し撮影する。カメラの数は、少なくとも1台あればよいが、複数を配置し、植物120に対してなるべく死角が生じないようにその数と位置を設定することが望ましい。カメラ131~133は、デジタルカメラであり、撮影した画像のデータ(画像データ)は、三次元計測装置200に送られる。
【0038】
回転台112を回転させながら、土台111に固定されたカメラ131~133から、植物120を連続して撮影する。これにより、植物120を周囲の多数のカメラ位置(視点)から撮影した多数の画像が得られる。この際、隣接するカメラ位置からの画像で撮影範囲が一部重複するようにする。
【0039】
上記の撮影を行った場合、計測対象物である植物120を周囲から撮影した複数の撮影画像が得られる。ここで、隣接する視点(カメラ位置)から撮影した画像が一部重複するようにする。例えば、回転台112が1回転する間に植物120に向けた1台のカメラから72枚の撮影を行う場合を考える。この場合、回転台112に固定された座標系で考えると、回転台112の回転中心を中心とする円周上で、360°/72=5°刻みに視点の位置(カメラ位置)を少しずつずらして撮影した72枚の画像が得られる。
【0040】
3.三次元計測装置
計測対象物である植物120の三次元モデルの作成は、公知の三次元写真測量の原理に基づき行われる。三次元計測装置200は、汎用のPC(パーソナルコンピュータ)を利用して構成されている。三次元計測装置200は、カメラ131~133が撮影した画像のデータに基づき、植物120の三次元モデルを作成する。また、三次元計測装置200は、モータ駆動装置140に制御信号を送り、回転台112の回転制御を行う。また、三次元計測装置200は、カメラ131~133の撮影タイミングの制御を行う。
【0041】
三次元計測装置200は、CPU、メモリデバイス、各種のインターフェースを備えたコンピュータであり、汎用あるいは専用のハードウェアによって構成することができる。三次元計測装置200を構成する汎用のハードウェアとしては、PC以外にWS(ワークステーション)が挙げられる。これらコンピュータに三次元計測装置200の機能を実現する動作プログラムをインストールし、後述する各機能部の機能をソフトウェア的に実現する。
【0042】
なお、三次元計測装置200の一部または全部を専用の演算回路によって構成してもよい。また、ソフトウェア的に構成された機能部と、専用の演算回路によって構成された機能部を組み合わせてもよい。
【0043】
例えば、図示する各機能部は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)に代表されるPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路やプロセッサにより構成される。また、一部の機能を専用のハードウェアで構成し、他の一部を汎用のマイコンにより構成することも可能である。
【0044】
また、三次元計測装置200の機能をサーバで実行し、該サーバにインターネットを介して接続したPC、タブレット、スマートフォン等を操作インターフェース端末として利用する形態も可能である。
【0045】
三次元計測装置200は、画像データ受付部210、カメラ位置選択部220、ステレオ画像選択部221、ターゲット検出部240、外部標定要素算出部245、背面除去部247、特徴点抽出部250、周辺マスク作成用カメラ位置選択部251、周辺マスク作成用ステレオ画像取得部252、周辺マスク作成部253、対応点特定部260、三次元座標算出部270、三次元モデル作成部280、記憶部290、回転制御部295、撮影タイミング制御部296、バンドル調整計算部297を備える。また、三次元計測装置200は、外部の機器との間でデータのやり取りを行うインターフェース機能、操作者による操作を受け付けるユーザインターフェース機能を有する。これらは、利用するPCのインターフェースを用いている。
【0046】
画像データ受付部210は、カメラ131~133が撮影した画像のデータ(画像データ)を受け付け、それを三次元計測装置100の内部に取り込む。
【0047】
カメラ位置選択部220は、交会法により計算されるカメラ位置の候補を選択する。カメラ位置の選択時は、交会法によるカメラ位置の計算前の状態であり、正確なカメラ位置の座標は不明である。しかしながら、回転台112の回転制御とカメラ131~133の撮影タイミングの制御の内容から、回転台112に対するカメラ131~133の大凡の位置が特定でき、またそこで撮影された画像は選択できる。この処理がカメラ位置選択部220で行われる。
【0048】
例えば、回転台112の回転位置は、ロータリーエンコーダ―等により検出されるので、時間軸上における回転台112の回転位置を知ることができる。この情報と撮影時刻のデータとから、撮影時の回転台112に対するカメラ位置を知ることができる。例えば、図11に例示するように計測対象物(回転台)を囲む4箇所のカメラ位置(1),(9),(17),(25)を選択する。ただし、このカメラ位置は概略の位置であり、その精度は三次元写真測量に利用できるレベルにはない。
【0049】
ステレオ画像選択部221は、異なる視点から重複する場所を撮影した2枚以上の画像をステレオ画像として選択する。例えば、図11(B)の(1)と(5)の位置から回転台112および計測対象物である植物120を撮影した画像がステレオ画像として選択される。ステレオ画像は、基本2枚一組であるが、3枚以上を1組としてステレオ画像を構成することもできる。なお、画像には、少なくとも回転台112、計測対象物である植物120およびランダムドット柱121~123の少なくとも1本が写っている必要がある。
【0050】
ターゲット検出部240は、カメラ131~133が撮影した画像に写ったターゲット113を検出する。予めターゲット113の画像は取得されており、それをリファレンスとして撮影画像中からターゲット113の抽出が行なわれる。ターゲット113は識別でき、また回転台112における位置は既知なので、ターゲット検出部240により、複数あるターゲット113それぞれの位置が検出される。
【0051】
外部標定要素算出部245は、撮影画像中の特徴点(特徴点抽出部250が抽出した特徴点)を利用して、図6のカメラ131~133の外部標定要素(位置と姿勢)を後方交会法により算出する。図8(A)には、後方交会法の原理が示されている。後方交会法とは、未知点から3つ以上の既知点へ向かう方向を観測して、それらの方向線の交点として未知点の位置を定める方法である。後方交会法としては、単写真標定、DLT法(Direct Liner Transformation Method)が挙げられる。交会法については、基礎測量学(電気書院:2010/4発行)p 182,p184に記載されている。また、特開2013-186816号公報には交会法に関して具体的な計算方法の例が示されている。
【0052】
以下、具体的な計算の一例を説明する。ここでは、回転台112を回転させ、90°回転する前と後の異なる2つのタイミングでカメラ132による回転台112の撮影を行うとする。90°の回転の制御は、回転制御部295で行われ、撮影タイミングの制御は、撮影タイミング制御部296で行われる。なお、この例では、定速で回転を継続し、上方から見て90°異なる角度位置で撮影が行われるように、回転台112の回転とカメラ132の撮影のタイミングが制御される。
【0053】
この場合、回転台112に固定した座標系で考えると、図11の位置(1)と(9)から撮影した撮影画像が得られる。この2枚の撮影画像をステレオ画像とし、そこからの特徴点の抽出、抽出した特徴点の当該ステレオ画像間でのマッチング(対応関係の特定)を行う。特徴点の抽出は、特徴点抽出部250で行われ、対応点の特定は対応点特定部260で行われる。
【0054】
ステレオ画像間での特徴点の対応関係を特定したら、図8(A)の後方交会法を用いて当該ステレオ画像を撮影したカメラ位置を算出する。ここでカメラ位置は、回転台112の回転中心を原点とし、回転台112に固定されたローカル座標系で記述される。
【0055】
例えば、以下のような方法により、図11のカメラ位置(1)と(9)におけるカメラの外部標定要素(姿勢と位置)が求められる。まず、回転台112の上面は平面であり、そこから取得される特徴点は当該平面上に位置している。また、ランダムドット柱121~123表面のランダムドットは鉛直面上に分布している。この拘束条件から、相互標定により、相対三次元モデルにおけるカメラ位置(1)と(9)における位置と姿勢が求まる。
【0056】
例えば、ステレオ画像で対応するランダムドット柱121~123のドットから得た特徴点の中から、図8(A)のP,P,Pを選択する。ここで、P,P,Pは鉛直面上に分布するという拘束条件が課せられる。そして、P,P,Pの画面中における位置をp,p,pとした場合に、Pとp、Pとp、Pとpを結ぶ3つの方向線を設定する。この場合、この3本の方向線の交点Oが当該画像を撮影したカメラ132の位置(投影中心)となる。また、点Oと画面の中心を結ぶ方向線の延長方向がカメラ132の光軸方向となり、カメラ132の向き(姿勢)が求まる。
【0057】
この段階でP,P,Pの絶対位置関係は未知なので、この場合における図8(A)の三次元モデルは相対三次元モデルとなる。この相対三次元モデルを得る処理が相互標定である。
【0058】
ここで、PとPがランダムドット柱121の上辺の端点であれば、回転台112に固定されたローカル座標系におけるそれら端点の座標は既知であるので、上記相対三次元モデルにスケールが与えられる。こうして絶対標定が行なわれ、当該座標系におけるカメラの外部標定要素が判明する。この方法において、複数あるターゲット113の位置情報を併用することもできる。
【0059】
また、3つ以上のターゲット113の位置情報から各カメラ位置におけるカメラの外部標定要素を求めることもできる。例えば、図11の(1)位置から3つのターゲット113が見えているとする。この場合、P,P,Pをこれら3つのターゲット113の位置とすると、P,P,Pの位置は既知なので、点Oの座標が求まる。また、点Oと画面の中心を結ぶ方向からカメラの姿勢が判明する。こうして、3つのターゲット113が見えている(1)の位置におけるカメラの外部標定要素が判る。
【0060】
また、カメラ位置が判れば、図8(B)の前方交会法により、多数存在する位置が既知でない特徴点の当該座標系(回転台112に固定されたローカル座標系)における位置も計算できる。そして、多数の特徴点の位置が判れば、それらの位置に基づく図8(A)の後方交会法によるカメラ位置の算出も行われる。
【0061】
実際には、上述した一連の方法によるカメラ131~133の外部標定要素の算出のための数式は、多数の特徴点の座標も含めた多数の行列要素を有した計算式となる。この計算式において、未知数が収束するまで繰り返し計算が行なわれることで、カメラ131~133の外部標定要素が求められる。また、適切なタイミングでバンドル調整計算部297によるバンドル調整計算が行なわれ、誤差の最小化が行なわれる。
【0062】
背面除去部247は、撮影した画像中から被計測対象となる背面を除去する。この背面の除去は、色の差を利用して行われる。この技術については、特開2018-197685号公報に記載されている。
【0063】
特徴点抽出部250は、カメラ131~133が撮影した画像の中から特徴点を抽出する。特徴点は、周囲から区別できる点であり、例えば、エッジ部分、更には周囲と色彩や明度が異なっている部分等が特徴点として抽出される。特徴点の抽出は、ソフトウェア処理により行われる。特徴点の抽出には、ソーベル、ラプラシアン、プリューウィット、ロバーツなどの微分フィルタが用いられる。
【0064】
周辺マスク作成用カメラ位置選択部251は、周辺マスクの作成に必要なカメラ視点(カメラ位置)を選択する。例えば、図2のカメラ3とカメラ4のカメラ位置の選択が周辺マスク作成用カメラ位置選択部251で行われる。周辺マスク作成用ステレオ画像取得部252は、周辺マスクの作成に必要なステレオ画像を取得する。例えば、図2のカメラ3が計測対象物30を撮影した画像とカメラ4が計測対象物30を撮影した画像の取得が周辺マスク作成用ステレオ画像取得部252で行われる。
【0065】
周辺マスク作成部253は、図2図5に関連して説明した方法により、周辺マスクを作成する。対応点特定部260は、異なる視点から撮影した2枚以上の画像中でそれぞれ個別に抽出された特徴点の対応関係を特定する。すなわち、一方の画像中で抽出された特徴点と同じ特徴点を他方の画像中で特定する。この特徴点の対応関係を特定する処理は、例えば、Feature-Based(特徴抽出)法としてのSIFTやSURF、Kaze、……や、Area‐Based(面積相関)法としてのテンプレートマッチングを用いて行われる。テンプレートマッチングとしては、残差逐次検定法(SSDA:Sequential Similarity Detection Algorithm)、相互相関係数法などが挙げられる。対応点の特定は、基本2枚の画像や2つの点群位置データを対象に行われるが、3枚以上の画像や3つ以上の点群位置データを対象として行うこともできる。
【0066】
複数の画像間の対応関係を求める技術については、例えば特開2013-178656号公報や特開2014-35702号公報に記載されている技術を利用することができる。なお、特開2013-178656号公報や特開2014-35702号公報には、特徴点の抽出に係る技術、特徴点の三次元位置を求める技術についても記載されており、これらの技術は、本願明細書中で説明する技術に利用できる。
【0067】
三次元座標算出部270は、特徴点抽出部150が画像中から抽出した特徴点の三次元位置を前方交会法により算出する。対象物を構成する多数の特徴点の三次元位置を算出することで、当該対象物を三次元座標が特定された点の集合として把握可能な点群位置データが得られる。更には、この点群位置データに基づき三次元モデルを作成することができる。
【0068】
図8(B)には、前方交会法の原理が示されている。前方交会法では、異なる複数点(図8(B)の場合は、OとOの2点)から未知点Pへ向かう方向を観測して、それらの方向線の交点として未知点Pの位置を求める。
【0069】
図8(B)には、異なるカメラ位置OとOから外部標定要素が既知のカメラを用いて重複する領域を撮影した場合が示されている。ここで、一方の画像における未知点Pの画面座標がpであり、他方の画像における未知点Pの画面座標がpである。カメラ位置OとOは既知であり、またそれらの位置におけるカメラの姿勢も既知であるので、Oとpを結ぶ方向線とOとpを結ぶ方向線の交点Pの座標が計算できる。
【0070】
三次元モデル作成部280は、多数の撮影画像を解析することで得られた三次元点群位置データに基づいて三次元モデルを作成する。例えば、得られた多数の特徴点の三次元座標からなる三次元点群位置データを用いてtin(不整三角形網)を作成し、撮影対象物の三次元モデルの作成が行われる。点群位置データに基づいて三次元モデルを作成する技術に関しては、例えば、WO2011/070927号公報、特開2012-230594号公報、特開2014―35702号公報に記載されている。利用する三次元座標系としては、例えば回転台112に固定され、回転台112の回転中心の位置を原点としたローカル座標が用いられる。
【0071】
記憶部290は、三次元計測装置200で利用される各種のデータ、動作プログラム、動作の結果得られた各種のデータ等を記憶する。記憶部290の他に外部の記憶装置(外付けハードディスク装置やデータ記憶用サーバ等)を用いることも可能である。
【0072】
回転制御部295は、回転台112を回転させるモータ(図示せず)を駆動するモータ駆動装置140(図6参照)に制御信号を送り、モータの動作制御を行う。回転制御部295の機能により、回転台112の回転のタイミングや回転速度の設定が行われる。回転台112の回転は、ロータリーエンコーダにより検出され、この検出値に基づき回転制御部295は回転台112の回転を制御する。
【0073】
撮影タイミング制御部296は、カメラ131,132,133に撮影タイミングを決める制御信号を送り、撮影動作の制御を行う。カメラ131,132,133は、撮影タイミング制御部296に制御されて、回転する回転台112およびその上に配置された植物120の撮影を行う。例えば、回転台112を5~10回転/分の回転速度で回転させ、その際にカメラ131,132,133のそれぞれは、0.1~0.5秒間隔で繰り返し静止画像の撮影を行う。
【0074】
4.処理の一例
以下、回転台112上の植物120の点群位置データを得、更にこの点群位置データに基づき植物120の三次元モデルを作成する処理の一例を説明する。以下の処理は、三次元計測システム100を用いて行われる。以下に説明する処理を実行するプログラムは、記憶部290に記憶され、三次元計測装置200によって実行される。当該プログラムは、適当な記憶媒体や記憶サーバ等に記憶され、そこから提供される形態も可能である。
【0075】
(撮影)
まず、回転台112とランダムドット柱121~123が写るようにカメラ131~133の位置と姿勢を設定する。その上で撮影を行う。撮影は、計測対象の植物120を載せた回転台112を等速で回転させながら、特定の時間間隔でカメラ131~133により行う。
【0076】
撮影は、例えば、回転台112が等速で1回転する間に等時間間隔で72枚の静止画像が撮影される条件、すなわち5°異なる角度から72回撮影する条件で行う。この場合、3台のカメラ131~133から72枚×3=216枚の画像が撮影される。この画像データは、三次元計測装置200に送られ、画像データ受付部210で受け付けられる。画像データ受付部210で受け付けられた画像データは、記憶部290に記憶される。回転速度やシャッター間隔は、植物の種類や取得したい点群密度に対応させて任意に設定できる。
【0077】
植物120を撮影した画像データを得たら、各撮影画像から背面を除去する処理を行う。この処理は、図7の背面除去部247で行われる。
【0078】
こうして、鉛直上方から見て、周囲360°を等間隔に72分割した方向からの3組(72×3=216枚)の撮影画像が得られる。以下、この216枚の画像を基に処理を行う。この216枚の画像は、計測対象物である植物120を囲む円周上の等角な72カ所の位置(カメラ位置)(上下3段で計216枚)から植物120を撮影した画像となる。
【0079】
(カメラ位置の特定)
まず、計測対象物を囲むカメラ位置を求める。カメラ位置の特定に係る処理は、カメラ131~133のそれぞれにおいて行われる。まず、図11に示す手法を用いて等角な角度位置にある複数箇所のカメラ位置を算出する。例えば、図11には等角な4箇所のカメラ位置の選択を2回に別けて行う場合が示されている。
【0080】
図11に示す処理の手順の一例を示す。まず、図11に示すような上方見て角度位置が90°異なる4箇所のカメラ位置(1),(9),(17),(25)を選択する(ステップS101)。この段階でのカメラ位置の選択は、回転台112の回転位置とカメラ131~133の撮影タイミングに基づき行われる。この処理は、図7のカメラ位置選択部220で行われる。なお、きりの良い位置にカメラ位置がない場合は、最も近い位置のカメラ位置が選択される。
【0081】
次に、ステップS101で選択された位置から撮影した画像の中からステレオ画像を選択する(ステップS102)。この場合、カメラ位置で考えて、(1)と(9)、(9)と(17)、(17)と(25)というように、隣接するカメラ位置がステレオ画像のカメラ位置として選択される。この処理は、図7のステレオ画像選択部221で行われる。なお、この段階で背面の除去を行ってもよい。
【0082】
次に、選択されたステレオ画像からの特徴点の抽出(ステップS103)を行う。この処理は、特徴点抽出部250で行われる。ここで抽出される特徴点には、植物120、回転台112およびランダムドット柱121~123の特徴点が含まれる。次に、ステレオ画像間における特徴点の対応関係の特定(ステレオマッチング)を行う(ステップS104)。また、ステレオ画像間における共通に写っているターゲット113の検出を行う(ステップS105)。
【0083】
次に、対応関係を特定した特徴点を用いた後方交会法により、ステップS101で選択したカメラと特徴点の相対位置関係を算出する相互標定を行う(S106)。またこの際、同時にステレオ画像に写った対応点とカメラ位置の相対位置関係が前方交会法を用いて特定される。
【0084】
次に、ステップS106で求められた相対位置関係に特徴点から得られるスケールやターゲット113の位置から実寸法が与えられ、絶対標定が行なわれる(ステップS107)。この処理により、カメラの外部標定要素(位置と姿勢)とステップS104で対応関係が特定された特徴点の位置が求まる。最後にバンドル調整計算を行ない誤差の最小化を行う(ステップS108)。
【0085】
S106~S108の処理は、図7の外部標定要素算出部245、三次元座標算出部270およびバンドル調整計算部297で行なわれる。以上の処理により、図11(A)のカメラ位置(1),(9),(17),(25)が算出される。以上の処理は、カメラ131~133のそれぞれにおいて行われる。
【0086】
以上の処理を繰り返すことで、徐々にカメラ位置を増やしながらのカメラ位置の算出が全ての画像を対象として行われる。例えば、図11(A)に係るS101~S106の処理が行なった後、図11(B)に示すように、新たな4箇所のカメラ位置に関してS101~106の処理を繰り返す。この場合、新たに求めるカメラ位置が図11(B)に示す(5),(13),(21),(29)である。
【0087】
この場合、図11(A)に示す(1),(9),(17),(25)のカメラ位置を初期値として、新たなカメラ位置(5),(13),(21),(29)が計算される。この際、初期値として扱われるカメラ位置(1),(9),(17),(25)は再計算される。
【0088】
上記の処理では、既に求められているカメラ位置を初期値として、その時点で対象となっている全てのカメラ位置の計算を行う。この計算は、カメラ位置を増やしながら最終的に全ての画像が対象となるように、繰り返し行われる。こうして、全ての画像におけるカメラ位置を算出する。
【0089】
(計測対象物の三次元計測)
全ての画像における回転台112に対するカメラ位置を求めたら、今度は隣接するカメラ位置でステレオ画像を構成し、当該ステレオ画像から抽出される特徴点の三次元座標位置を算出する。この際、図11の処理で求めた粗な点群の位置データも利用される。図10は、この処理のフローチャートの一例である。
【0090】
処理が開始されると、隣接または近接する視点位置(カメラ位置)から植物120を撮影した2枚の画像をステレオ画像として選択する(ステップS201)。選択の候補となる画像は、カメラ131~133が撮影した合計216枚の画像である。この処理は、ステレオ画像選択部221で行われる。選択する2枚の画像は、異なるカメラが撮影したものであってもよい。なお、重複した対象を撮影した3枚状以上の画像をステレオ画像として選択することもできる。
【0091】
次に、ステップS201で選択したステレオ画像において、背面を除去する処理を行う(ステップS202)この処理は、図7の背面除去部247で行われる(ステップS202)。次に、背面を除去したステレオ画像からの特徴点の抽出を行う(ステップS203)。この処理は、図7の特徴点抽出部250で行われる。
【0092】
次に、周辺マスクの作成に利用する画像を取得するためのカメラの位置を選択する(ステップS204)。この処理では、ステップS201で選択したステレオ画像を得たカメラ位置の両側から一組のカメラ位置を選択する。例えば、図2のカメラ1とカメラ2の画像がステップS201で選択された場合、その両サイドのカメラ3とカメラ4の位置がステップS204で選択される。
【0093】
次に、ステップS204で選択したカメラ位置から撮影した画像を周辺マスク作成用ステレオ画像として取得する(ステップS205)。例えば、図2のカメラ3とカメラ4が撮影した計測対象物30の画像がステップS205で取得される。
【0094】
次に、図2図5に示す原理を利用して周辺マスクを作成する(ステップS206)。この際、背面の除去を行うことで得られる計測対象物の画像のエッジ部分の情報を利用して、図2図5に示す原理を利用した周辺マスクの作成を行う。例えば、図2には、周辺マスク10が設定される例が示されている。
【0095】
次に、ステップS203で抽出した特徴点のステレオ画像間での対応関係の特定を行う(ステップS207)。この処理は、図7の対応点特定部260で行われる。この処理では、ステップS206で作成した周辺マスクでマスクされる領域では対応点の特定が禁止される。つまり、ステップS206で作成した周辺マスクの領域では、対応点の特定は行わない。
【0096】
例えば、図2には、周辺マスク10が設定され、そこからのカメラ1とカメラ2のステレオ画像からの対応点の特定が禁止された例が示されている。この例によれば、周辺マスク10を利用することで、図1の△点や□点で示される誤対応点の検出が防止される。
【0097】
また、ステレオ画像中からのターゲット113の検出を行う(ステップS208)。この処理はターゲット検出部240で行われる。ターゲットの検出はステップS202~S208の間で行えばよい。
【0098】
次に、ステップS207でステレオ画像間での対応関係が特定された特徴点の三次元位置の算出を行う(ステップS209)。この際、図11の処理で位置を特定した特徴点を初期値として用いる。この処理は、三次元座標算出部270で行われる。特徴点の三次元位置は、回転台112に固定された座標系での座標として算出される。この位置が特定された特徴点が三次元点群となり、植物120の点群位置データが得られる。
【0099】
次に、ステップS201の前段階に戻り、ステップS201以下の処理が繰り返される。例えば、カメラN、カメラN+1、カメラN+2、カメラN+3・・・・と並んでいる場合に、カメラNとカメラN+1の撮影画像をステレオ画像とした図10の処理、カメラN+1とカメラN+2の撮影画像をステレオ画像とした図10の処理、カメラN+2とカメラN+3の撮影画像をステレオ画像とした図10の処理、・・・を全ての画像を対象に順次行う。
【0100】
新たな組み合わせのステレオ画像が選択されると、その段階で未知の対応点(ステレオ画像を構成する画像の中で対応する未知な特徴点)が抽出され、その位置が算出される。この処理を繰り返すことで、利用する全ての画像から順次選択されたステレオ画像中で共通する特徴点の三次元位置の算出が行われる。こうして、三次元計測の対象である植物120を、三次元座標が判明した点の集合として捉えた点群位置データが得られる。
【0101】
植物120の点群位置データ得たら、それに基づき植物120の三次元モデルを作成する。この処理は、既知の処理であるので説明は省略する。三次元モデルの作成については、例えば、国際公開番号WO2011/070927号公報、特開2012-230594号公報、特開2014-35702号公報等に記載されている。
【0102】
(むすび)
以上述べた実施形態では、異なる第1の視点(図2のカメラ2)および第2の視点(図2のカメラ1)から重複する撮影対象(図2の計測対象物30)を撮影したステレオ画像を得る画像データ受付部210(図7参照)と、前記ステレオ画像において対応する特徴点を特定する対応点検出部260(図7参照)と、前記第1の視点(図2のカメラ2)の前記第2の視点(図2のカメラ1)から離れる側からの第1の補助視点(図2のカメラ4)の選択、および前記第1の視点(図2のカメラ2)の前記第2の視点(図2のカメラ1)の側からの第2の補助視点(図2のカメラ3)の選択を行う補助視点選択部(周辺マスク作成用カメラ位置選択部251)と、前記第1の補助視点(図2のカメラ4)から前記撮影対象を撮影した第1の補助画像(図2のカメラ4が撮影した画像)と前記第2の補助視点(図2のカメラ3)から前記撮影対象を撮影した第2の補助画像(図2のカメラ3が撮影した画像)とを取得する補助画像取得部(周辺マスク作成用ステレオ画像取得部252)と、前記第1の補助視点(図2のカメラ4)から見て前記撮影対象(計測対象物30)の影となり、且つ、前記第2の補助視点(図2のカメラ3)から見て前記撮影対象(計測対象物30)の影とならない領域をマスクする周辺マスク10を作成する周辺マスク作成部253とを備え、前記周辺マスク10でマスクされる領域における前記対応する特徴点の特定が制限される三次元計測装置200が示されている。
【0103】
三次元計測装置200では、周辺マスクを用いることで、図2の△点や□点といったカメラ1とカメラ2の撮影画像から得られるステレオ画像間での誤対応点の検出が防止される。
【0104】
(その他)
回転台112の回転を精密に制御し、撮影時に回転を停止し、静止させた状態とする態様も可能である。例えば撮影時に長い露光時間が必要な場合や、対象が振動により生じた揺れが収束するまでに、この手法を利用することができる。また、計測の対象は植物に限定されない。
【0105】
計測対象を回転させずに固定し、計測対象に向けたカメラを円周上で移動させつつ撮影を行ってもよい。この場合、カメラが移動する円周の中心を基準にカメラの角度位置が把握される。また、計測対象とカメラの位置関係を相対的に固定してもよい。この場合、計測対象を中心とした円周上に多数のカメラを配置した状態とし、各カメラ位置からの撮影を行う。この場合、カメラが配置された円周の中心を基準に角度位置が把握される。
【0106】
本発明は、図6の形態に限定されず、ステレオ画像を用いた三次元計測の技術に広く適用できる。
【符号の説明】
【0107】
10…周辺マスク、20…背面、30…計測対象物、41…方向線、42…方向線、100…3D計測システム、111…土台、112…回転台、113…ターゲット、120…測定対象物である植物、121~123…ランダムドット柱、124…鉢、125…2次元バーコード表示、131~133…カメラ、200…PCを利用した3D計測処理装置。
図1
図2
図3
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図5
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