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特許7229105プレス装置、プレス装置の搬送モーション設定方法及び搬送モーション設定プログラム
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  • 特許-プレス装置、プレス装置の搬送モーション設定方法及び搬送モーション設定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】プレス装置、プレス装置の搬送モーション設定方法及び搬送モーション設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B30B 13/00 20060101AFI20230217BHJP
   B21D 43/05 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B30B13/00 G
B21D43/05 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019108663
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020199532
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大西 城輝
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-91078(JP,A)
【文献】特開2006-122986(JP,A)
【文献】特開2006-102767(JP,A)
【文献】特開2010-75936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 13/00
B21D 43/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置であって、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定手段と、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定手段と、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定手段と、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定手段と、
を備える、
プレス装置。
【請求項2】
前記タイミング設定手段は、前記スライドが下死点を通過して前記搬送装置と干渉しない所定の位置まで上昇したタイミングを、前記同期タイミングとして設定する、
請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記基準動作設定手段は、前記スライドが下死点を通過して前記搬送装置と干渉しない所定の位置まで上昇したときに前記搬送装置が搬送動作を開始し、その後に前記スライドが前記搬送装置と干渉する位置まで下降する前に前記搬送装置が搬送動作を完了させるように、前記基準搬送モーションを設定する、
請求項1又は請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記プレス動作設定手段は、前記基準プレスモーションの時間の一部を延長させて、実運転のプレスモーションを設定する、
請求項3に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記プレス動作設定手段は、前記基準プレスモーションのうち、前記基準搬送モーションにおいて前記搬送装置が搬送動作を完了させた後から再び搬送動作を開始するまでの部分に対応する部分の時間を延長させて、前記プレスモーションを設定する、
請求項3に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記スライドは、当該スライドを往復動させる回転軸を介して連結されたサーボモータにより駆動される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項7】
成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置の搬送モーション設定方法であって、
前記プレス装置の制御手段が、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定工程と、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定工程と、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定工程と、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定工程と、
を実行する、
プレス装置の搬送モーション設定方法。
【請求項8】
成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置の搬送モーション設定プログラムであって、
前記プレス装置の制御手段を、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定手段、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定手段、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定手段、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定手段、
として機能させる、
プレス装置の搬送モーション設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置、プレス装置の搬送モーション設定方法及び搬送モーション設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス装置として、ワークを搬送するトランスファフィーダ(以下、「TF」という)とプレス部とを、プレス動作を基準とするプレスマスタ方式で連動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。プレスマスタ方式は、TFの動作を基準とするTFマスタ方式に比べ、高速生産性を見込めるメリットがある。
また、例えばエキセン軸をサーボモータで直接駆動するような、いわゆるサーボプレスにプレスマスタ方式を適用した場合には、プレス連続運転によって上死点起動・停止時の加減速トルクが不要となるため、サーボモータの実効トルク低減を図れるといったメリットも得られる。
【0003】
ところで、プレスマスタ方式は、プレス速度(エキセン軸回転速度)が一定であることが前提とされる。そのため、図6(a)に示すように、1行程のプレスモーションに対応するTFモーション(TF各軸の動作)を一旦決定しておけば、図6(b)に示すように、プレス速度の変更(図の例では全体的な時間の延長)が生じた場合でも、TFモーションを変更する必要がなかった。
しかし、サーボプレスなどにおいては、プレス速度が1行程中で逐次変化する場合がありうる。この場合に、タイミングによってはTFの動作速度が急変し、安定した搬送が困難になるおそれがある。
【0004】
そこで、図7(a)に示すように、速度一定の仮想カムを共通のマスタとしてプレスモーションとTFモーションとを対応付ける手法が用いられている。この手法によれば、図7(b)に示すように、プレスモーションの一部を変更(図7の例では、下死点近傍で緩やかに加圧させる変更)した場合に、この変更部分に対応するTFモーション部分を変更・調整することで対応させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-215240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、プレスモーションの変更に応じて、TFモーションを適宜設定し直す必要が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、プレスモーションが変更された場合に、搬送装置の搬送モーションを簡便に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置であって、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定手段と、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定手段と、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定手段と、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定手段と、
を備えるように構成した。
【0009】
また、本発明は、成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置の搬送モーション設定方法であって、
前記プレス装置の制御手段が、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定工程と、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定工程と、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定工程と、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定工程と、
を実行するものとした。
【0010】
また、本発明は、成形材料をプレス成形する型を取り付け可能なスライドと、前記成形材料を搬送する搬送装置とが連動するプレス装置の搬送モーション設定プログラムであって、
前記プレス装置の制御手段を、
前記スライドの所定の基準プレスモーションに対応する前記搬送装置の基準搬送モーションを設定する基準動作設定手段、
前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションの同期タイミングを設定するタイミング設定手段、
前記基準プレスモーション時間を調整して、実運転のプレスモーションを設定するプレス動作設定手段、
前記プレスモーションに対し、同期タイミングを前記基準プレスモーションに対する前記基準搬送モーションのものと一致させつつ、当該同期タイミングからの動作パターンを前記基準搬送モーションと同一にして、前記プレスモーションに対応する実運転の搬送モーションを設定する搬送動作設定手段、
として機能させるものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プレスモーションが変更された場合に、搬送装置の搬送モーションを簡便に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るプレス装置を示す図である。
図2】本実施形態のトランスファフィーダの構造を説明するための平面図である。
図3】本実施形態のトランスファフィーダの送り桿の移動軌跡を示した動作説明図である。
図4】本実施形態のトランスファフィーダモーション設定方法の流れを示すフローチャートである。
図5】本実施形態のプレスモーション及びTFモーションを示す動作線図であって、(a)が各々の基準モーションを示し、(b)が基準モーションの変更例を示す。
図6】従来のプレスモーション及びTFモーションの一例を示す動作線図である。
図7】従来のプレスモーション及びTFモーションの他の例を示す動作線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[プレス装置の構成]
図1は、本実施形態に係るプレス装置1を示す図であり、図2は、プレス装置1が備えるトランスファフィーダ40の構造を説明するための平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るプレス装置1は、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10、制御装置50、トランスファフィーダ40を備える。
【0015】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、プレス装置1のフレーム部を構成する。これらベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、その内部にタイロッド25aが挿入され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。
【0016】
ボルスタ24は、ベッド23上に固定され、その上部には複数の下金型4が固定される。
スライド18は、複数のアップライト22の各々に設けられたガイド19により、上下方向に進退可能に支持される。スライド18の下部には複数の上金型3が固定される。複数の上金型3と複数の下金型4とは、互いに対応して組をなすととともに、それぞれ左右方向に沿って配列されており、それぞれ組をなすものと上下に対向している。スライド18が下降することで、上金型3と下金型4とが近接し、これらの間で成形材料Wが鍛造成形される。なお、スライド18が進退する方向は特に制限されないが、本実施形態では、上下方向に進退するものとして説明する。
【0017】
駆動部10は、サーボモータ11、伝動軸12、減速機13、エキセン軸14及びコネクティングロッド15を備える。駆動部10は、クラウン21などのフレーム部に支持される。エキセン軸14は左右方向に沿って延在するように配置される。サーボモータ11が駆動されると、その回転運動が伝動軸12、減速機13、エキセン軸14の順に伝達され、エキセン軸14の回転運動がコネクティングロッド15を介してスライド18の並進運動に変換される。これにより、スライド18が上下方向に進退する。
サーボモータ11は、一回転中で任意に回転速度を変化させる制御や任意の回転角度で停止させる制御が可能である。したがって、サーボモータ11の駆動制御により、スライド18の上下の昇降動作の移動速度を1ストローク中で変化させたり、任意の位置で停止させたりすることできる。
【0018】
制御装置50は、プレス装置1の動作制御を行うものである。具体的に、制御装置50は、ユーザ操作や所定のプログラムに基づいて、サーボモータ11やトランスファフィーダ40の動作を制御し、スライド18によるプレス動作とトランスファフィーダ40による搬送動作とを連動させる。また、制御装置50は、プレス装置1の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに作業メモリ領域としても機能する記憶部51を備える。
【0019】
トランスファフィーダ40は、成形材料Wを搬送する搬送装置であり、上金型3と下金型4の近傍に設けられている。このトランスファフィーダ40は、図2に示すように、上金型3と下金型4とが離間したときに、搬入装置6により搬入された新たな成形材料Wを最上流側の上金型3及び下金型4に供給したり、左右方向に配列された複数組の上金型3と下金型4に対して、成形材料Wを順次搬送したりする。
【0020】
具体的に、トランスファフィーダ40は、互いに平行に配置された2本の送り桿41を備えている。各送り桿41は、一列に配置された複数の下金型4の両側で、その並び方向に沿って延在するように配置されている。
各送り桿41には、下金型4よりも1つ多い数量の複数のつかみ爪42が、当該送り桿41の延在方向に沿って並設されている。複数のつまみ爪42は、2本の送り桿41に設けられたもの同士で互いに組をなして向き合うように、各送り桿41から延出している。また、複数のつかみ爪42の並び方向の間隔は、複数の下金型4の間隔と一致している。
【0021】
図3は、トランスファフィーダ40の送り桿41の移動軌跡を示した動作説明図である。
この図に示すように、トランスファフィーダ40は、2本の送り桿41を、待機位置(ホームポジション)Hで待機した状態から、(1)クランプ→(2)リフト→(3)アドバンス→(4)ダウン→(5)アンクランプ→(6)リターンの順で動作させる。これにより、トランスファフィーダ40は、スライド18のプレス動作に連動させて、成形材料Wを複数の下金型4に順送りする。なお、以下の説明では、クランプ及びアンクランプの動作方向をクランプ方向、リフト及びダウンの動作方向をリフト方向、アドバンス及びリターンの動作方向をアドバンス方向という。
【0022】
[トランスファフィーダモーション設定方法]
続いて、プレスモーションに対応させてトランスファフィーダモーション(以下、「TFモーション」という。)を設定する方法について説明する。ここで、「プレスモーション」とは、スライド18によるプレス動作パターンをいう。また、「TFモーション」とは、トランスファフィーダ40の搬送動作パターンであって、後述のクランプ方向動作量、リフト方向動作量及びアドバンス方向動作量で表されるものをいう。本実施形態のTFモーション設定方法は、前記制御装置50において、記憶部51に格納された所定のプログラムが読み出されて展開されることにより、実行される。
図4は、TFモーション設定方法の流れを示すフローチャートである。図5は、本実施形態におけるプレスモーション及びTFモーションを示す動作線図であって、(a)が各々の基準モーションを示し、(b)が基準モーションの変更例を示す。同図において、プレスモーションは、上死点から下死点を通過して再び上死点に戻るまでのスライド18の進退移動1ストロークにおける当該スライド18の位置で示される。TFモーションは、後述のとおり、トランスファフィーダ40(送り桿41)の各方向(クランプ、リフト、アドバンス)の動作量で示される。また、図5の横軸は、スライド18が1ストロークするときに等角速度で1回転する(360deg回る)と仮定した仮想カムの回転角度(仮想カム角度)と、これに対応する時間である。
【0023】
図4に示すように、本実施形態のTFモーション設定方法では、まず制御装置50は、プレスモーションの基準となる基準プレスモーションPsを設定する(ステップS1)。
基準プレスモーションPsは、プレス装置1の設備仕様において想定される最短サイクルタイムのプレスモーションである。本実施形態の基準プレスモーションPsは、図5(a)に示すように、成形材料Wを加圧する下死点の手前側近傍では緩やかに移動し、その前後ではサーボモータ11の性能等に応じた一定の速度で速やかに移動するものとなっている。また、本実施形態の基準プレスモーションPsは、例えば1ストローク(サイクル)に3秒を要するものとなっている。
制御装置50は、プレス装置1の機械的な諸元やサイクルタイム等のプレス条件に基づいて基準プレスモーションPsを設定し、記憶部51に記憶させる。なお、この基準プレスモーションPsは、予め設定され、記憶部51に記憶されていてもよい。
【0024】
次に、制御装置50は、設定された基準プレスモーションPsに対応した基準TFモーションFsを設定する(ステップS2)。
基準TFモーションFsは、トランスファフィーダ40のクランプ方向動作量Fs1、リフト方向動作量Fs2及びアドバンス方向動作量Fs3から構成される。この基準TFモーションFsは、基準プレスモーションPsに対応したTFモーションであって、この基準プレスモーションPsのプレス動作(スライド18)と干渉することなくトランスファフィーダ40が好適に成形材料Wを搬送できるように設定される。つまり、基準TFモーションFsは、スライド18が下死点通過後にトランスファフィーダ40と干渉しない所定の位置hまで上昇したときに搬送動作が((1)クランプから)開始され、その後にスライド18がトランスファフィーダ40と干渉する位置まで下降してくる前に搬送動作((5)アンクランプまで)が完了するように設定される。
制御装置50は、基準プレスモーションPsに基づいて基準TFモーションFsを設定し、記憶部51に記憶させる。なお、基準TFモーションFsにおけるトランスファフィーダ40の動作速度等の詳細は、トランスファフィーダ40その他の機械的な装置諸元や、サイクルタイム等に基づいて適宜設定される。また、この基準TFモーションFsは、基準プレスモーションPsとともに、予め設定され、記憶部51に記憶されていてもよい。
【0025】
次に、制御装置50は、基準プレスモーションPsに対する基準TFモーションFsの同期タイミング(同期点)STを設定する(ステップS3)。同期タイミングとは、プレスモーションの変更に依らず、プレスモーションに対して同期させるべきTFモーションのポイントである。
このステップでは、制御装置50は、トランスファフィーダ40がクランプ動作を開始する点、すなわち、スライド18が下死点通過後にトランスファフィーダ40と干渉しない位置hまで上昇したタイミングを、同期タイミングSTとして設定し、記憶部51に記憶させる。
そして、制御装置50は、同期タイミングSTを始点(ゼロ)としてトランスファフィーダ40の動作が1サイクルするときに等角速度で1回転する(360deg回る)と仮定した、トランスファフィーダ40用の仮想カムの回転角度(TF仮想カム角度)を設定する。
【0026】
次に、制御装置50は、ユーザ(オペレータ)操作に基づいて、基準プレスモーションPsを変更・調整して、実運転のプレスモーションPを設定する(ステップS4)。
具体的には、図5(b)に示すように、基準プレスモーションPsに対し、成形材料Wを加圧する時間を延ばす(本実施形態では、サイクルタイム:3秒→4秒)ようにして、プレスモーションPが設定される。このとき、延長された時間で1回転する(360deg回る)と仮定した新たな仮想カム角度が割り当てられる。
なお、このプレスモーションPは、基準プレスモーションPsにおいて成形材料Wがアンクランプされてから再びクランプされるまでの下死点近傍の動作時間を延長するものであればよく、その変更・調整の具体内容は特に限定されない。例えば、図5(b)ではスライド18が下死点近傍において一定速度で降下(加圧)する例を示したが、加圧途中で速度が変化したり一旦上昇したりしてもよい。さらに言えば、このプレスモーションPは、基準プレスモーションPsのうちの一部の時間を延長させたものであればよい。
【0027】
次に、制御装置50は、プレスモーションPに対して同期タイミングSTを合わせつつ、当該同期タイミングSTからの動作パターンを基準TFモーションTsと同一にして、プレスモーションPに対応する実運転のTFモーションFを設定する(ステップS5)。TFモーションFは、トランスファフィーダ40のクランプ方向動作量F1、リフト方向動作量F2及びアドバンス方向動作量F3から構成される。
つまり、TFモーションFは、時間が延長されたプレスモーションPに対し、同期タイミングSTを基準プレスモーションPsに対する基準TFモーションFsのものと一致させつつ、時間が延長されていない基準TFモーションTsを元のTF仮想カム角度のまま実行するようにして設定される。したがって、TFモーションFを構成するクランプ方向動作量F1、リフト方向動作量F2及びアドバンス方向動作量F3は、同期タイミングSTからの動作パターンが基準TFモーションTsのものと一致する。そして、TFモーションFにおけるリターン終了から次のクランプ開始(すなわち同期タイミングST)までの間は、トランスファフィーダ40が動作しない待機状態となる。
こうして、設定されたプレスモーションPに応じて、TFモーションFが自動的に設定される。制御装置50は、設定したTFモーションFを記憶部51に記憶させる。
【0028】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、スライド18の基準プレスモーションPsに対応する基準TFモーションFsが設定され、基準プレスモーションPsに対する基準TFモーションの同期タイミングSTが設定される。そして、基準プレスモーションPsの一部の時間を延長させて実運転のプレスモーションPが設定されたときに、このプレスモーションPに対し、同期タイミングSTを基準プレスモーションPsに対するものと一致させつつ、当該同期タイミングSTからの動作パターンを基準TFモーションFsと同一にして、プレスモーションPに対応する実運転のTFモーションFが設定される。
そのため、プレスモーションが基準プレスモーションPsからどのように変更された場合であっても、TFモーション(のうちの動作部分)は基準TFモーションFsのままとなり、特段の変更・調整を必要としない。したがって、プレスモーションが変更された場合に、トランスファフィーダ40のTFモーションを簡便に設定することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、基準プレスモーションPsのうち、トランスファフィーダ40が搬送動作(アンクランプまで)を完了させた後から再び搬送動作(クランプから)を開始するまでに対応する部分を時間延長して、実運転のプレスモーションPが設定される。
これにより、当該部分に相当する下死点近傍での加圧動作を所望のものに変更して、プレスモーションPを設定することができる。
【0030】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、プレスモーションに基づいてTFモーションを設定する場合について説明したが、実際にこのTFモーションでプレス装置1を運転する場合には、制御装置50が、同期タイミングSTを検知したらトランスファフィーダ40に搬送開始指令を出力し、当該トランスファフィーダ40に基準TFモーションFsと同じ動作パターンで搬送動作を行わせればよい。同期タイミングSTの検知は、例えばスライド18の進退位置を検出する検出器を設け、同期タイミングSTに対応するスライド位置を検知できるようにすればよい。
【0031】
また、本発明に係るプレス装置は、スライドと連動するトランスファフィーダを備えるものであれば、その構造等は特に限定されない。ただし、本発明は、例えばスライドがサーボモータで駆動されるような、いわゆるサーボプレスに対し、より好適に適用することができる。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 プレス装置
3 上金型
4 金型
11 サーボモータ
12 伝動軸
14 エキセン軸
18 スライド
40 トランスファフィーダ
41 送り桿
50 制御装置
51 記憶部
F TFモーション
F1 クランプ方向動作量
F2 リフト方向動作量
F3 アドバンス方向動作量
Fs 基準TFモーション
Fs1 クランプ方向動作量
Fs2 リフト方向動作量
Fs3 アドバンス方向動作量
h 位置
P プレスモーション
Ps 基準プレスモーション
Ts 基準TFモーション
ST 同期タイミング
W 成形材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7