IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -風力発電装置 図1
  • -風力発電装置 図2
  • -風力発電装置 図3
  • -風力発電装置 図4
  • -風力発電装置 図5
  • -風力発電装置 図6
  • -風力発電装置 図7
  • -風力発電装置 図8
  • -風力発電装置 図9
  • -風力発電装置 図10
  • -風力発電装置 図11
  • -風力発電装置 図12
  • -風力発電装置 図13
  • -風力発電装置 図14
  • -風力発電装置 図15
  • -風力発電装置 図16
  • -風力発電装置 図17
  • -風力発電装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20230217BHJP
   H02P 9/30 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
H02P9/00 F
H02P9/30 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019153719
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021035180
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田渕 朗子
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山根 敏則
(72)【発明者】
【氏名】安村 俊輝
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023421(JP,A)
【文献】特開2001-103796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02P 9/30
H02P 101/15
H02P 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの回転軸と機械的に連結された回転子に設けられた界磁巻線、固定子に設けられた電機子巻線、及び、前記電機子巻線と出力端子との間に接続された整流器を有する発電機と、
前記発電機が前記出力端子に出力した直流電力によって充電される蓄電素子と、
前記出力端子及び前記蓄電素子の間に接続されて、前記出力端子と電気的に接続された入力ノードの第1の直流電圧に対する、前記蓄電素子と電気的に接続された出力ノードの第2の直流電圧の昇圧比を制御する出力電圧制御回路と、
前記蓄電素子及び前記界磁巻線と電気的に接続されて、前記界磁巻線に供給する励磁電流を制御する励磁電流制御回路と、
前記出力電圧制御回路及び前記励磁電流制御回路の動作を制御する制御器とを備え、
前記制御器は、
前記回転軸の回転数を検出する回転数検出部と、
前記回転数検出部によって検出された回転数に応じて前記発電機の出力電圧指令値を決定するとともに、前記第1の直流電圧が前記出力電圧指令値と一致するよう前記出力電圧制御回路の前記昇圧比を制御する出力電圧制御部と、
前記回転数検出部によって検出された回転数に応じて励磁電流指令値を決定するとともに、前記励磁電流が前記励磁電流指令値と一致するよう前記励磁電流制御回路の動作を制御する励磁電流制御部とを含む、風力発電装置。
【請求項2】
前記出力電圧制御回路の前記出力ノード及び前記蓄電素子の間の経路に設けられた第1のスイッチと、
前記出力端子及び前記蓄電素子の間に形成される前記出力電圧制御回路のバイパス経路に設けられた第2のスイッチとを更に備え、
前記制御器は、
前記第1及び第2のスイッチを相補にオンオフするためのモード判定部を更に有し、
前記モード判定部は、前記第1の直流電圧を昇圧することなく前記蓄電素子を充電可能である前記発電機の運転状態において、前記第1のスイッチをオフするととともに、前記第2のスイッチをオンする、請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記励磁電流制御部は、前記回転数検出部によって検出された回転数に応じてトルク指令値を決定するとともに、前記発電機の前記出力端子からの出力電流の検出値及び前記励磁電流の検出値を用いて算出されたトルク演算値が前記トルク指令値と一致するように、前記励磁電流指令値を決定する、請求項1又は2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記励磁電流制御部は、予め求められた前記発電機の電機子電流及び前記励磁電流に対する相互インダクタンスの変化特性と、前記電機子電流と見做される前記出力電流の検出値及び前記励磁電流の検出値とから算出された前記相互インダクタンスの演算値を用いて、前記トルク演算値を算出する、請求項3記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記蓄電素子及び前記励磁電流制御回路の入力側との間に、前記蓄電素子から前記励磁電流制御回路への方向を順方向として接続される第1のダイオードと、
前記出力端子及び前記励磁電流制御回路の前記入力側との間に、前記出力端子から前記励磁電流制御回路への方向を順方向として接続される第2のダイオードとを更に備える、請求項1又は2に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記励磁電流制御回路は、当該励磁電流制御回路への第1の入力電流と前記界磁巻線に供給する励磁電流との電流比を制御するように構成され、
前記励磁電流制御部は、
前記第1の直流電圧を昇圧することなく前記蓄電素子を充電可能である期間において、前記蓄電素子への第2の入力電流の検出値と、前記励磁電流の検出値及び前記電流比の乗算値とを加算して、前記発電機の前記出力端子からの出力電流演算値を算出する電機子電流算出部を有し、
前記励磁電流制御部は、前記回転数検出部によって検出された回転数に応じてトルク指令値を決定するとともに、前記出力電流演算値及び前記励磁電流を用いて算出されたトルク演算値が前記トルク指令値と一致するように、前記励磁電流指令値を決定する、請求項5記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記励磁電流制御部は、予め求められた前記発電機の電機子電流及び前記励磁電流に対する相互インダクタンスの変化特性と、前記電機子電流と見做される前記出力電流演算値及び前記励磁電流の検出値とから算出された前記相互インダクタンスの演算値を用いて、前記トルク演算値を算出する、請求項6に記載の風力発電装置。
【請求項8】
前記励磁電流制御部は、予め求められた前記プロペラの回転数及びトルクの特性関係に基づいて、前記回転数検出部によって検出された回転数に応じた前記トルク指令値を決定する、請求項3、4、6、及び7のいずれか1項に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、翼軸と連結された回転子と、回転子に設けられる界磁巻線と、固定子に設けられる電機子巻線と、電機子巻線の出力電力を全波整流する整流器とを備える発電機が、風力発電装置に用いられている。このような構成の風力発電装置は小規模なものが多く、発電電力は整流器の出力に接続された蓄電池に蓄えられることが一般的である。
【0003】
このような風力発電装置では、出力電圧の調整のために、界磁巻線に流れる励磁電流(界磁電流)が制御される。特開2003-284393号公報(特許文献1)には、翼軸の回転数が第1の値以上になったときに界磁電流の供給を開始する一方で、それ以下の回転数では界磁電流の供給を行わない制御が記載される。この制御により、停止した翼にかかる負担を低減して、容易に回転を開始することが可能な風力発電装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-284393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたタイプの風力発電装置では、整流器の出力に蓄電池が接続されている。従って、発電機を発電状態とできるのは、蓄電池の電圧を超える電圧を整流器の出力に発生できる状態で発電機が動作している場面に限定される。このため、発電の機会が制限されることが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、整流器の出力に蓄電池の電圧を超える電圧を発生させなくても発電機を発電状態で運転することで、風力発電装置の設備利用率を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面では、風力発電装置は、発電機と、蓄電素子と、出力電圧制御回路と、励磁電流制御回路と、出力電圧制御回路及び励磁電流制御回路の動作を制御する制御器とを備える。発電機は、プロペラの回転軸と機械的に連結された回転子に設けられた界磁巻線と、固定子に設けられた電機子巻線と、電機子巻線及び出力端子の間に接続された整流器とを有する。蓄電素子は、発電機が出力端子に出力した直流電力によって充電される。出力電圧制御回路は、出力端子及び蓄電素子の間に接続される。出力電圧制御回路は、出力端子と電気的に接続された入力ノードの第1の直流電圧に対する、蓄電素子と電気的に接続された出力ノードの第2の直流電圧の昇圧比を制御するように構成される。励磁電流制御回路は、蓄電素子及び界磁巻線と電気的に接続されて、界磁巻線に供給する励磁電流を制御するように構成される。制御器は、回転数検出部と、出力電圧制御部と、励磁電流制御部とを含む。回転数検出部は、回転軸の回転数を検出する。出力電圧制御部は、回転数検出部によって検出された回転数に応じて発電機の出力電圧指令値を決定するとともに、第1の直流電圧が出力電圧指令値と一致するよう出力電圧制御回路の昇圧比を制御する。励磁電流制御部は、回転数検出部によって検出された回転数に応じて励磁電流指令値を決定するとともに、励磁電流が励磁電流指令値と一致するよう励磁電流制御回路の動作を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、整流器から出力端子に出力される直流電圧が蓄電素子の直流電圧より低い場合でも、出力電圧制御回路による昇圧によって、発電機からの直流電力で蓄電素子を充電することができる。この結果、発電機が発電可能となる運転領域の拡大によって風力発電装置の設備利用率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る風力発電装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示された風力発電装置の電気回路部分の構成を示す回路図である。
図3】風車の回転数-トルクの特性図の一例である。
図4図3に示した特性を有する風車の回転数-機械出力の特性図である。
図5図1に示された発電機の固定子の電気的な等価回路図である。
図6図1に示された発電機制御部による制御構成例を説明するブロック図である。
図7図6に示された出力電圧制御部の構成例を説明するブロック図である。
図8】発電機の回転数及び出力電圧の指令値との関係の一例を示す概念図である。
図9図6に示された励磁電流制御部の構成例を説明するブロック図である。
図10】実施の形態2に係る風力発電装置で用いられるトルク演算部の構成例を説明するブロック図である。
図11】励磁電流及び出力電流に対する相互インダクタンスの特性の一例を示す概念図である。
図12】本発明の実施の形態3に係る風力発電装置の電気回路部分の構成を示す回路図である。
図13】実施の形態3に係る風力発電装置での発電機制御部の構成例を説明する機能ブロック図である。
図14図13に示されたモード判定部の構成例を説明する回路図である。
図15図13に示された出力電圧制御部の構成例を説明するブロック図である。
図16図13に示された励磁電流制御部の構成例を説明するブロック図である。
図17図16に示された電機子電流演算部の構成例を説明するブロック図である。
図18図16に示されたトルク演算部の構成例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る風力発電装置の構成を示す概略図である。
【0012】
図1を参照して、実施の形態1に係る風力発電装置10は、発電機20と、蓄電素子30と、出力電圧制御回路40と、励磁電流制御回路50と、発電機制御部60とを備える。
【0013】
発電機20は、端子21~25と、固定子(図示せず)に設けられた三相の電機子巻線27と、プロペラ5と機械的に連結された回転子(図示せず)に設けられた界磁巻線28と、整流器29とを含む。プロペラ5は、風を受けて回転するように配置される。
【0014】
発電機20は、例えば、自動車用のオルタネータによって構成することができる。端子21は、回転子の回転数に応じた周波数を有する交流電圧を出力するP端子に相当する。端子23は、アース用のE端子に相当し、端子22は、発電機20の発電によって得られた直流電圧が出力されるB端子に相当する。端子24及び25は、界磁巻線28の一端及び他端と接続される。端子22(B端子)は、発電機の「出力端子」の一実施例に対応する。
【0015】
整流器29は、三相の全波整流を行うダイオードブリッジによって構成される。三相の電機子巻線27の一端は、当該ダイオードブリッジの交流側(三相)とそれぞれ接続される。三相の電機子巻線27の他端同士は中性点で互いに接続される。三相の電機子巻線27のうちの一相の一端は、端子21(P端子)と更に接続される。
【0016】
整流器29を構成するダイオードブリッジの直流側は、端子22及び端子23と接続される。発電機20では、プロペラ5の回転に伴って電機子巻線27に生じた三相交流電圧が整流器29によって整流されて、直流電力(即ち、直流電圧及び直流電流)が端子22から出力される。
【0017】
出力電圧制御回路40の入力側は、端子22と接続される。出力電圧制御回路40の出力側は、蓄電素子30と電気的に接続される。蓄電素子30は、例えば、鉛蓄電池等の二次電池、又は、キャパシタ等によって構成することが可能である。
【0018】
励磁電流制御回路50の入力側は蓄電素子30と電気的に接続され、出力側は発電機20の端子24及び25と接続される。励磁電流制御回路50は、蓄電素子30の出力電圧を用いて、界磁巻線28に供給される励磁電流Ifを発生する。
【0019】
発電機制御部60は、蓄電素子30からの電力供給によって動作して、風力発電装置10の各要素を制御する。図1では、発電機制御部60は、当該制御機能の一部として、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の制御信号を生成する。
【0020】
発電機制御部60は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース、及び、内部電源回路を有するように構成することができる。内部電源回路は、蓄電素子30からの電力を用いて制御電源を生成する。メモリには、制御用プログラム、演算により得られたデータ、検出値、指令値等の各種データを記憶することができる。CPUは、所望の演算に必要なプログラム及びデータをメモリから読み出して、後述する制御演算を実行することができる。発電機制御部60は「制御器」の一実施例に対応する。
【0021】
蓄電素子30は、図示しない外部負荷、例えば、照明及びセンサの電源としても用いられる。即ち、蓄電素子30は、出力電圧制御回路40を介して発電機20による発電電力によって充電されるとともに、風力発電装置10自体の制御電源、界磁巻線28に流れる励磁電流Ifの電源、及び、上記外部負荷の電源としても機能する。このため、実際には、発電機20による発電電力から、上記電源としての消費電力を減算した電力によって、蓄電素子30は充電される。尚、図示は省略しているが、蓄電素子30に対して、電圧、電流、及び、温度の検出器、及び、保護回路、並びに、負荷への給電回路が設けられる。
【0022】
図2は、図1に示された風力発電装置10の電気回路部分の構成を示す回路図である。図2では、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の構成例が主に示される。
【0023】
図2を参照して、出力電圧制御回路40は、一般にチョッパと呼ばれる昇圧DC/DCコンバータによって構成することができる。例えば、出力電圧制御回路40は、平滑コンデンサ41及び42と、ダイオード43と、スイッチング素子44と、リアクトル45とを有する。スイッチング素子44は、MOSFET(Metal-Oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)に代表される、制御信号に従ってオンオフ制御可能な自己消弧型の半導体素子によって構成することができる。スイッチング素子44は、発電機制御部60からのゲート信号SGbに応じてオンオフされる。
【0024】
平滑コンデンサ41は、端子22と電気的に接続された入力ノードNinと、ノードNgとの間に接続される。ノードNgは、発電機20の端子23と同電位(例えば、接地電位)である。平滑コンデンサ42は、蓄電素子30と電気的に接続された出力ノードNoutと、ノードNgとの間に接続される。入力ノードNin及び出力ノードNoutは、出力電圧制御回路40の「入力ノード」及び「出力ノード」にそれぞれ相当する。
【0025】
スイッチング素子44は、ノードNm1及びノードNgの間に接続される。スイッチング素子44は、発電機制御部60からのゲート信号SGbに応じてオンオフする。ダイオード43は、ノードNm1及び出力ノードNoutの間に接続される。ダイオード43のアノードは、ノードNm1と接続され、カソードは出力ノードNoutと接続される。即ち、ダイオード43は、ノードNm1から出力ノードNoutへの電流を通過する一方で、出力ノードNoutからノードNm1への電流を遮断する。リアクトル45は、入力ノードNin及びノードNm1の間に接続される。
【0026】
出力電圧制御回路40では、入力ノードNinの直流電圧Vbが入力電圧、入力ノードNinに入力される直流電流Ibが入力電流、出力ノードNoutの直流電圧Voutが出力電圧と定義される。図示は省略しているが、直流電流Ib、直流電圧Vb、及び、出力電圧Voutの検出器が配置される。これらの検出器による検出値は、発電機制御部60へ入力される。
【0027】
図2の構成例では、端子22が入力ノードNinと直接接続されるので、直流電圧Vb及び直流電流Ibは、発電機20の出力電圧及び出力電流にそれぞれ相当する。発電機20の出力電流は、発電機20の電機子巻線27を流れる電機子電流に相当する。従って、出力電圧制御回路40で直流電圧Vb及び直流電流Ibを検出することで、発電機20の出力電圧及び出力電流を検出することが可能である。このため、以下では、直流電圧Vb及び直流電流Ibを、発電機20の出力電圧及び出力電流としても取り扱う。即ち、直流電圧Vb及び直流電流Ibの積は、発電機20から出力された発電電力に相当する。
【0028】
出力電圧制御回路40(昇圧DC/DCコンバータ)では、スイッチング素子44のオン状態では、入力ノードNinからリアクトル45に流れる電流によって、リアクトル45にエネルギが蓄積される。スイッチング素子44をオフすると、リアクトル45に蓄積されたエネルギが、ダイオード43を介して出力ノードNoutへ放出される。これにより、入力ノードNinよりも高い電圧を出力ノードNoutに発生することができる(Vout≧Vb)。
【0029】
昇圧チョッパでは、単位時間中でのスイッチング素子44のオン時間の割合で定義されるデューティ比Dbを用いると、直流電圧(入力電圧)Vb及び直流電圧(出力電圧)Voutの間には、Db=1-(Vb/Vout)の関係が成立することが知られている。従って、スイッチング素子44のオンオフ制御により、式(1)に示される電圧比の制御が可能である。
【0030】
1-Db=(Vb/Vout)…(1)
式(1)において、0<(1-Db)≦1であるから、(Vb/Vout)≦1、即ち、Vout≧Vbの範囲で、出力電圧制御回路40は動作することができる。従って、スイッチング素子44のオフ時間の比率に相当する(1-Db)を変化させることで、入力電圧Vbに対する出力電圧Voutの昇圧比(Vout/Vb)を制御できることが理解される。
【0031】
励磁電流制御回路50は、発電機20の界磁巻線28をリアクトルとして用いる降圧DC/DCコンバータ(降圧チョッパ)によって構成することができる。例えば、励磁電流制御回路50は、平滑コンデンサ46と、ダイオード47と、スイッチング素子48を有する。スイッチング素子48は、スイッチング素子44と同様に、自己消弧型の半導体素子によって構成される。
【0032】
平滑コンデンサ46は、端子24と接続されたノードNfと、ノードNgとの間に接続される。平滑コンデンサ46は、蓄電素子30の出力電圧によって充電される。スイッチング素子48は、端子25と接続されたノードNm2及びノードNgの間に接続される。スイッチング素子44は、発電機制御部60からのゲート信号SGfに応じてオンオフされる。ダイオード47は、ノードNm2及びノードNfの間に接続される。ダイオード47のアノードは、ノードNm2と電気的に接続され、カソードはノードNfと接続される。即ち、ダイオード47は、ノードNm2(端子25)からノードNfへの電流を通過する一方で、ノードNfからノードNm2への電流を遮断する。
【0033】
界磁巻線28は、発電機20の内部で端子24及び端子25の間に電気的に接続される。励磁電流制御回路50は、平滑コンデンサ46の直流電圧を入力電圧とし、励磁電流Ifによって界磁巻線28に生じる電圧を出力電圧とする降圧チョッパとして動作する。平滑コンデンサ46は蓄電素子30によって充電されるので、平滑コンデンサ46の電圧は、平滑コンデンサ42の電圧(出力電圧Vout)と同等である。尚、図示は省略しているが、励磁電流Ifの検出器が配置されており、励磁電流Ifの検出値も、発電機制御部60へ入力される。
【0034】
スイッチング素子48のオン期間には、平滑コンデンサ46の入力電圧を用いて、ノードNfから、端子24、界磁巻線28、端子25(ノードNm2)、及び、スイッチング素子48を経由して、ノードNgに至る経路により、界磁巻線28へのエネルギ蓄積を伴って、励磁電流Ifが供給される。
【0035】
一方で、スイッチング素子48のオフ期間では、平滑コンデンサ46の入力電圧は供給されず、ノードNf、端子24、界磁巻線28、端子25(ノードNm2)、ダイオード47、及び、ノードNfの還流経路により、界磁巻線28に蓄積されたエネルギにより、励磁電流Ifが流れ続ける。
【0036】
従って、単位時間中でのスイッチング素子48のオン時間の割合で定義されるデューティ比Dfを用いると、平滑コンデンサ46の電圧(Vout)、界磁巻線28に生じる直流電圧Vf、及び、デューティ比Dfの間には、Vf=Vout・Dfの関係が成立する。界磁巻線28の電気抵抗値Rfを用いると、Vf=Rf・Ifであるので、励磁電流Ifは、式(2)で示される。
【0037】
If=(Vout/Rf)・Df …(2)
即ち、励磁電流制御回路50は、スイッチング素子48のデューティ比Dfによって、励磁電流Ifを制御することができる。
【0038】
蓄電素子30(ノードNb)と、発電機制御部60との間には、ダイオード51が更に接続されてもよい。ダイオード51は、ノードNbと接続されたアノード、及び、発電機制御部60と接続されたカソードを有する。これにより、発電機制御部60から蓄電素子30への電流は遮断される。
【0039】
同様に、励磁電流制御回路50(ノードNf)と、蓄電素子30(ノードNb)との間には、ダイオード52が更に接続されてもよい。ダイオード52は、ノードNbと接続されたアノード、及び、ノードNfと接続されたカソードを有する。これにより、励磁電流制御回路50から蓄電素子30への電流は遮断される。
【0040】
又、出力電圧制御回路40(出力ノードNout)と、蓄電素子30(ノードNb)との間には、ダイオード53が更に接続されてもよい。ダイオード53は、出力ノードNoutと接続されたアノード、及び、ノードNbと接続されたカソードを有する。これにより、蓄電素子30から出力電圧制御回路40への電流は遮断される。
【0041】
ダイオード51~53を配置することにより、蓄電素子30、出力電圧制御回路40、励磁電流制御回路50、及び、発電機制御部60のそれぞれとの間の電流方向を固定することが可能である。尚、ダイオード51~53の配置は省略することも可能である。又、発電機20の端子22及び出力電圧制御回路40の間に、出力電圧制御回路40から端子22への電流を遮断する方向に、ダイオードを更に接続することも可能である。
【0042】
次に、図3及び図4を用いて、風力発電機の特性について説明する。
【0043】
図3は、風車の回転数-トルクの特性図の一例である。
【0044】
図3の横軸には風車の回転数N[r/min]が示され、縦軸には、風車に発生するトルクT[N・m]が示される。図1の風力発電装置10では、プロペラ5の回転数及びトルクが、図3の横軸及び縦軸にそれぞれ相当する。
【0045】
風車は、一定風速下では、回転数が決まると発生トルクが決定される。図3には、風速毎に、回転数及びトルク間の関係を示す曲線が記載される。
【0046】
図3から、風速が一定の下では、風車の回転数Nが増加するのに従ってトルクTも増加するが、極大点(最大トルク点)を超えて回転数Nが更に増加すると、トルクTは、回転数Nの増加に従って減少する。
【0047】
各風速での最大トルク点での風車の発生トルク(最大トルク)は、風速が大きくなるのに従って増加し、最大トルクが生じる回転数Nについても、風速が大きくなるのに従って上昇する。
【0048】
基準となる風速Voにおいて、回転数NoのときにトルクToが発生する特性を風車が有するとき、任意の風速Vにおける当該風車の回転数N及びトルクTは、下記の式(3)及び式(4)にそれぞれ表すことができる。
【0049】
N=No・(V/Vo) …(3)
T=To・(V/Vo)^2 …(4)
式(3)より、回転数Nは風速に比例し、式(4)より、トルクTは風速の2乗に比例することがわかる。式(3)及び式(2)から、回転数N及びトルクTの関係を導くと、式(5)を得ることができる、式(5)から、トルクTは、回転数Nの2乗に比例することが確認できる。
【0050】
T=To・(N/No)^2 …(5)
図4は、図3に示した回転数-トルク特性を有する風車の回転数-機械出力の特性図である。図4の横軸には、図3と同様の回転数N[r/min]が示され、縦軸には、機械出力P[W]が示される。機械出力Pは、機械角速度ωとトルクTの積で示される。回転数Nに対する角速度ωは、ω=(N/60)・2・πで示されるので、機械出力P[W]は、下記の式(6)で表すことができる。
【0051】
P=(N/60)・2・π・T …(6)
更に、基準となる風速Voにおける機械出力Poと、任意の風速Vにおける機械出力Pとの関係は、下記の式(7)で表すことができる。式(7)より、式(5)から、機械出力Pは、風速の3乗に比例することが確認できる。
【0052】
P=Po・(V/Vo)^3 …(7)
式(3)及び式(7)から回転数N及び機械出力Pの関係を導くと、式(8)を得ることができる。式(8)から機械出力は、回転数Nの3乗に比例することが確認できる。
【0053】
P=Po・(N/No)^3 …(8)
図4においても、風速が一定の下では、風車の回転数Nが増加するのに従って機械出力Pも増加するが、極大点(最大出力点)を超えて回転数Nが更に増加すると、機械出力Pは、回転数Nの増加に従って減少する。
【0054】
各風速での最大出力点での風車の機械出力(最大出力)は、風速が大きくなるのに従って増加し、最大出力が生じる回転数Nについても、風速が大きくなるのに従って上昇する。図4中には、各風速での最大出力点の集合に相当する最大出力線210が更に示されている。最大出力線210は、各風速での、機械出力が最大となる回転数の集合である。
【0055】
最大出力線210は、式(8)に対して、機械出力Pが最大となる動作点に対応させた回転数No及び機械出力Poを代入したときの関数式に相当する。このときの回転数No及びトルクToを式(7)に代入すると、図3上にも最大出力線210を引くことができる。
【0056】
従って、図3に示すような、風車の回転数-トルク特性が把握できていれば、最大出力線210上の動作点(回転数N及び発生トルクTの組み合わせ)で発電機20を運転することにより、風速を知ることができなくても、風速に応じて機械出力Pを最大限取り出すことが可能である。
【0057】
次に、発電機20が所望のトルクを発生するように、発電機20の運転を制御する手法について説明する。
【0058】
一般に、巻線界磁の同期電動機は、電機子巻線に流れる無効電流成分を調整することで出力を制御することができる。本実施の形態では、発電機20は、図1で示したとおり、電機子巻線27及び界磁巻線28を有しており、巻線界磁の同期発電機を含んで構成されているが、その出力端子には整流器29が接続されている。従って、発電機20では、電機子巻線に無効電流の基本波成分が流れることはない。このため、同期発電機の出力側に整流器29が接続された図1の発電機20は、他励式の直流発電機とみなすことができる。
【0059】
一般的に、他励式の直流発電機では、電機子電流Ia、界磁巻線の励磁電流If、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLaf(以下、単に「相互インダクタンスLaf」とも称する)、及び、機械角速度ωに対して、内部誘起電圧Eaは式(9)で示され、発生トルクTeは式(10)で示される。
【0060】
Ea=Laf・If・ω …(9)
Te=Laf・If・Ia …(10)
従って、発電機20の特性試験により、励磁電流If、電機子電流Ia、及び、発生トルクTeを測定することで、式(10)から相互インダクタンスLafを算出することができる。実施の形態1では、図2の回路構成から理解されるように、発電機20の電機子電流Iaは、端子22から出力電圧制御回路40へ入力される直流電流Ibに相当する。このため、発電機20の運転時には、特性試験で予め算出した相互インダクタンスLafと、励磁電流If及び入力電流Ibの検出値とを用いて、式(10)に従って発生トルクを演算することができる。
【0061】
図5には、電機子巻線27及び整流器29が搭載された発電機20の固定子の電気的な等価回路が示される。
【0062】
図5を参照して、固定子の等価回路は、三相交流回路を直流回路に換算した形で記載される。従って、図5中では、電機子巻線27のインダクタンスLa、及び、電機子巻線抵抗Raも直流換算されている。又、図5中のVdは、整流器29のダイオードで生じる順電圧降下を示しており、端子22の電圧は、図1で説明した、出力電圧制御回路40の直流電圧Vbと同等である。
【0063】
この等価回路では、内部誘起電圧Eaについて、下記の式(11)が成立する。
【0064】
Ea=La・dIb/dt+Ra・Ib+2・Vd+Vb …(11)
整流器29中のダイオードの作用により、式(11)において、Ea-2・Vd-Vb>0の場合には、Ib>0となる一方で、Ea-2・Vd-Vb≦0の場合には、Ib=0となる。又、直流電流Ibは、Ea及びVbの電圧差に応じて変化する。式(9)~式(11)を利用すれば、機械角速度ωに応じて直流電圧Vb及び励磁電流Ifを制御することによって、直流電流Ib及び発生トルクTeが所望の値になるように、発電機20を運転することができる。
【0065】
ここで、式(9)~式(11)では、発電機20は直流発電機として扱われているが、実際には、発電機20は、極対数がpの同期発電機である。このため、三相交流を直流に全波整流する際に生じるリプル電圧が、発電機20からの実際の出力電圧(即ち、直流電圧Vb)には含まれる。当該リプル電圧の周波数feは、下記の式(12)で表すことができる。
【0066】
fe=ω/(2・π)・p=N/60・p …(12)
本実施の形態では、発電機20が所望の直流電流Ib(電機子電流Ia相当)及び発生トルクTeで運転されるように、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50によって、直流電圧Vb及び励磁電流Ifが制御される。これらの直流電圧Vb及び励磁電流Ifの制御、並びに、直流電流Ib及び発生トルクTeの所望の値の決定の手法は限定されるものではないが、例えば、以下のような制御を適用することができる。尚、本実施の形態では、プロペラ5及び発電機20の回転子が直結されており、両者の回転数が同一値であるものとして説明を進める。
【0067】
風車の発生トルクTeの所望の値(例えば、図3の最大出力線210上の動作点とするための値)が、回転数N1においてTe=T1であるとすると、発電機20を回転数N1及びトルクT1の動作点で運転する際には、発電電力Vb・Ibが大きく、かつ、励磁電流Ifによる損失が小さい程、蓄電素子30への充電量が大きくなる。このため、直流電圧Vb、直流電流Ib、及び励磁電流Ifの間には相関があるため簡単に決定することはできないが、一般的には、直流電圧Vbがより大きく、励磁電流If及び直流電流Ibがより小さい条件での動作が効率上有利である。
【0068】
式(5)で示したように、風車は、回転数の2乗に比例するトルクで運転することが望ましい。このため、回転数Nが小さい領域では、励磁電流If及び出力電流Ibを小さくして、発生トルクTeを低減する。又、式(9)から理解されるように、内部誘起電圧Eaは、機械角速度ω(即ち、回転数N)に比例する。回転数Nが小さい領域では、上記の様に励磁電流Ifを小さくすることからも、内部誘起電圧Eaは低くなる。この下で発電電力を得るためには、出力電圧制御回路40によって、直流電圧Vbを低く制御することが必要である。
【0069】
従って、本実施の形態では、発電機20からの出力電圧(即ち、出力電圧制御回路40の入力側の直流電圧Vb)を、上述した、発電電力を得るための適正値に制御するように、出力電圧制御回路40が動作する。更に、この状態下で、発電機20の発生トルクTe(実際には、発生トルクTeの演算値Teh)が、上記の所望の値T1になるように(Teh=T1)、励磁電流制御回路50が励磁電流Ifを制御する。
【0070】
図6は、発電機制御部60による制御構成例を説明するブロック図である。尚、図6を始めとするブロック図中に記載された各ブロックの機能は、例えば、発電機制御部60に含まれるCPUが、予め格納されたプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって実現することができる。或いは、各機能の少なくとも一部については、電子回路等のハードウェアによって実現することも可能である。
【0071】
図6を参照して、発電機制御部60は、回転数検出値生成部62、出力電圧制御部64、及び、励磁電流制御部66を有する。
【0072】
回転数検出値生成部62には、端子21(P端子)から出力される交流電圧Vpが入力される。交流電圧Vpから、発電機20の回転子の電気角周波数が求められ、当該電気角周波数及び発電機20の極対数pから、プロペラ5及び発電機20の回転数Nを演算することができる。以下では、回転数検出値生成部62によって生成された回転数検出値についても、回転数Nと表記する。上述したように、本実施の形態では、回転数Nは、発電機20及びプロペラ5(風車)の両方の回転数を示している。
【0073】
出力電圧制御部64は、プロペラ5の回転数N及び直流電圧Vbの検出値に基づき、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44のゲート信号SGbを生成する。
【0074】
図7は、出力電圧制御部64の構成例を説明するブロック図である。
【0075】
図7を参照して、出力電圧制御部64は、出力電圧指令値生成部71、減算器72、電圧制御器73、比較器74、及び、NOTゲート75を有する。
【0076】
出力電圧指令値生成部71は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに基づき、発電機20の出力電圧に相当する直流電圧Vbの指令値である出力電圧指令値Vbrefを生成する。
【0077】
図8は、回転数Nと、出力電圧指令値Vbrefとの関係の一例を示す概念図である。
【0078】
図8を参照して、基本的には、出力電圧指令値Vbrefは、回転数Nの増加に応じて上昇するように設定される。但し、回転数Nが小さい領域では、直流電圧Vbが小さくなり過ぎないように、出力電圧指令値Vbrefは、一定値とすることが好ましい。又、出力電圧指令値Vbrefは、当該時点での出力電圧制御回路40の出力電圧Vout(検出値)を上限値として設定される。
【0079】
出力電圧指令値生成部71は、図8に示された、回転数Nと出力電圧指令値Vbrefとの関係に従って、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nを入力とし、出力電圧指令値Vbrefを出力とする、演算式、又は、ルックアップテーブルによって構成することができる。
【0080】
尚、式(10)から理解されるように、発生トルクTeに直接関係するのは発電機20の電機子電流に相当する直流電流Ibである。このため、出力電圧指令値生成部71は、発電機20の動作点(N,Te)が決まると、当該動作点において望ましい直流電流Ibを発電機20が出力できるような値に、出力電圧指令値Vbrefを決定することも可能である。つまり、出力電圧指令値Vbrefは、式(11)に従って決定されることに限定されず、動作点に応じた出力特性を予め測定することで決定することが可能である。或いは、式(11)以外の演算式に従って、出力電圧指令値Vbrefを決定することも可能である。
【0081】
再び図7を参照して、減算器72は、出力電圧指令値Vbrefから、直流電圧Vb(検出値)を減算して電圧偏差ΔVbを算出する。電圧偏差ΔVbは、電圧制御器73に入力される。
【0082】
電圧制御器73は、例えば、比例積分制御器で構成されて、直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致するための、出力電圧制御回路40中のスイッチング素子44のデューティ比を演算する。比例積分制御での、積分項の初期値は、例えば、Vb/Voutとすることができる。ここで、「直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致する」とは、両者が厳密に一致する場合に限定されず、直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに近づく(追従する)場合も含むものとする。以下、本明細書での制御に関する「一致する」との記載についても同様であるものする。
【0083】
電圧制御器73は、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44のオフ期間のデューティ比を示す制御量(1-Db)を、0<(1-Db)≦1.0の範囲内で出力する。式(1)に示されるように、出力電圧制御回路40には、1-Db=Vb/Voutの関係があるので、電圧比(Vb/Vout)を上昇又は低下させることで直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致するように、制御量(1-Db)を設定することができる。
【0084】
比較器74は、電圧制御器73からの制御量(1-Db)と、搬送波CWとを比較する。搬送波CWは、例えば、0≦CW≦1.0の範囲内で周期的に上昇及び低下を繰り返す三角波によって構成される。搬送波(三角波)CWの周波数は、スイッチング素子44のスイッチング周波数に相当する。
【0085】
比較器74は、(1-Db)の方が搬送波CWよりも大きいときには、論理ハイレベル(以下、単に「Hレベル」とも称する)を出力し、反対に、(1-Db)の方が搬送波CWよりも小さいときには、論理ローレベル(以下、単に「Lレベル」とも称する)を出力する。これにより、比較器74からは、制御量(1-Db)及び搬送波CWの比較結果を示すパルス信号が出力される。
【0086】
NOTゲート75は、比較器74からのパルス信号の反転信号を、ゲート信号SGbとして出力する。ゲート信号SGbは、スイッチング素子44に伝送される。ゲート信号SGbのHレベル期間において、スイッチング素子44はオン状態に制御され、ゲート信号SGbのLレベル期間において、スイッチング素子44はオフ状態に制御される。
【0087】
尚、比較器74に対して、制御量(1-Db)から求められたデューティ比Dbを入力することも可能である。この場合には、NOTゲート75を配置することなく、比較器74の出力(パルス信号)を、そのままゲート信号SGbとして用いることができる。
【0088】
再び図6を参照して、励磁電流制御部66は、回転数N、励磁電流If、及び、直流電流Ibの検出値に基づき、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のゲート信号SGfを生成する。
【0089】
図9は、励磁電流制御部66の構成例を説明するブロック図である。
【0090】
図9を参照して、励磁電流制御部66は、トルク指令値生成部81、トルク演算部82、減算器83,85、トルク制御器84、電流制御器86,及び、比較器87を有する。
【0091】
トルク指令値生成部81は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに基づき、発電機20のトルク指令値Terefを生成する。例えば、図3に示された最大出力線210上の動作点を選択するように、回転数Nからトルク指令値Terefが求められる。即ち、トルク指令値生成部81は、図3の最大出力線210に相当する回転数-トルク特性に従って、回転数Nを入力とし、トルク指令値Terefを出力とする、演算式、又は、ルックアップテーブルによって構成することができる。
【0092】
尚、低風速時の失速を防ぐために、低回転数領域でのトルク指令値Terefを、最大出力線210上の値よりも小さく設定することも可能である。同様に、高風速時における過回転防止のために、高回転数領域でのトルク指令値Terefを、最大出力線210上の値よりも大きく設定することも可能である。
【0093】
トルク演算部82には、励磁電流制御回路50から出力される励磁電流Ifの検出値、及び、出力電圧制御回路40の直流電流Ib(発電機20の出力電流相当)の検出値が入力される。トルク演算部82は、上述の式(10)を用いて、特性試験で予め算出した相互インダクタンスLafと、励磁電流If及び入力電流Ibの検出値との積に従って、トルク演算値Tehを出力する。
【0094】
減算器83は、トルク指令値Terefからトルク演算値Tehを減算してトルク偏差ΔTeを算出する。トルク偏差ΔTeは、トルク制御器84に入力される。
【0095】
トルク制御器84は、例えば、比例積分制御器で構成されて、トルク偏差ΔTeがゼロになる、即ち、トルク演算値Tehがトルク指令値Terefに一致するように制御するための励磁電流指令値Ifrefを出力する。
【0096】
減算器85は、励磁電流指令値Ifrefから励磁電流If(検出値)を減算して、電流偏差ΔIfを算出する。電流偏差ΔIfは、電流制御器86に入力される。
【0097】
電流制御器86は、例えば比例積分制御器で構成されて、励磁電流Ifが励磁電流指令値Ifrefに一致するための、励磁電流制御回路50中のスイッチング素子48のデューティ比を演算する。
【0098】
電流制御器86は、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のオン期間のデューティ比Dfを、0≦Df≦1.0の範囲内で出力する。式(2)に示されるように、励磁電流制御回路50には、Df=If/(Vout/Rf)の関係があるので、ΔIf>0に対してはデューティ比Dfを上昇させる一方で、ΔIf<0に対してはデューティ比Dfを低下させるように、デューティ比Dfを調節することができる。
【0099】
比較器87は、電流制御器86からのデューティ比Dfと、比較器74と同様の搬送波CWとを比較して、ゲート信号SGfを出力する。ゲート信号SGfは、スイッチング素子48に伝送される。従って、Dfの方が搬送波CWよりも大きい期間において、スイッチング素子48はオン状態に制御される一方で、反対に、Dfの方が搬送波CWよりも小さいとき期間では、スイッチング素子48はオフ状態に制御される。尚、搬送波CWの周波数は、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の間で独立に決定することができる。
【0100】
尚、図9の例では、トルク制御器84によって励磁電流指令値Ifrefを設定したが、トルク制御を考慮することなく、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに応じて、直接、励磁電流指令値Ifrefが設定されてもよい。これは、風車(プロペラ5)及び発電機20の特性を踏まえた上で、回転数Nに対する出力電圧指令値Vbrefが決定されていると、ある回転数Nに対して、トルク指令値Terefを発生させる励磁電流指令値Ifrefを一意に決定することが可能であるからである。
【0101】
又、図6では、交流電圧Vpから回転数検出値を演算する例を説明したが、発電機20の回転子の機械角又は回転数を直接的に検出するセンサを配置することも可能である。この場合には、回転数検出値生成部62は、当該センサの出力信号を用いて、回転数検出値を出力することができる。又、直流電圧Vb、直流電流Ib、及び、励磁電流Ifについても、図2中に矢印で表記した点の電圧又は電流を検出するようにセンサを配置する他、同等の検出値が得られる別の個所にセンサを配置することも可能である。或いは、これらの電圧又は電流を直接検出するのではなく、他の検出値及び演算値を利用して、演算によって求めることも可能である。更に、各センサ(検出器)の出力については、ローパスフィルタに入力して高調波成分やノイズを除去した上で制御に用いることも可能である。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態1に係る風力発電装置では、界磁巻線28及び整流器29を有する発電機20が、発電機制御部60によって制御される出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50により、直流電圧Vb及び励磁電流Ifを出力電圧指令値Vbref及び励磁電流指令値Ifrefに従って制御しながら、運転される。
【0103】
本実施の形態1に係る風力発電装置では、出力電圧制御回路40を配置することにより、発電機20からの出力電圧(直流電圧Vb)を昇圧して蓄電素子30を充電することができる。これにより、プロペラ5の回転数が低く、発電機20の出力電圧が蓄電素子30の電圧より低い領域でも、発電機20を発電状態で運転することが可能である。この結果、風力発電装置の設備利用率を向上することができる。
【0104】
更に、励磁電流指令値Ifrefについては、風車(プロペラ5)の回転数-トルク特性に応じて設定された動作点で発電機20が動作するように、回転数Nに対応して決定されたトルク指令値Terefに従うトルク制御が実現されるように、設定することができる。同様に、出力電圧指令値Vbrefは、回転数Nに対応したトルク指令値Terefに従ったトルクを発電機20が出力する際に、蓄電素子30への充電電力が大きくなるように設定することができる。このため、実施の形態1に係る風力発電装置は、特に、発電機20の低回転-低トルクでの運転に有利である。
【0105】
又、実施の形態1に係る風力発電装置では、発電機20の回転数Nに対応させて出力電圧指令値Vbref及びトルク指令値Teref(又は、励磁電流指令値Ifref)を設定することで、発電機20の発生トルクを制御することができる。この結果、風速を検出しなくても、実際の風速に応じて風車の機械出力が大きくなる動作点(例えば、図3及び図4の最大出力線210上の動作点)で発電機20を動作させて、高効率で発電することができる。
【0106】
加えて、励磁電流Ifを変化させることで、界磁巻線28の発生磁束を調節できるため、励磁電流If及び直流電流Ib(発電機20の出力電流に相当)の積に比例するトルク指令値Terefを設定する際に、励磁電流If及び直流電流Ibの組み合わせの自由度が高くなる。この結果、損失が少なくなるように、励磁電流If及び直流電流Ibの組み合わせを制御するこができる。
【0107】
又、励磁電流If及び直流電流Ib(発電機20の出力電流)を広範囲で変化させることができるので、発電機20の特性が、連結される風車専用に設計されていなくても、発電可能な領域を広く確保することが可能となる。例えば、通常高回転で使用される自動車用オルタネータ等の機器を発電機20に適用して、実施の形態1に係る風力発電装置を構成した場合に、当該発電機20を低回転で運転する場合にも、高効率で発電することが可能である。
【0108】
更に、発電機20を直流発電機とみなし、予め発電機20の特性試験で得られた電機子電流Ia(直流電流Ib相当)、励磁電流If、及び、発生トルクTeから求められた、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLafを用いると、励磁電流If及び直流電流Ibの検出値からトルク演算値Tehを求めることができる。即ち、トルク検出器を設けることなく、トルク制御が可能である。
【0109】
このように、実施の形態1に係る風力発電装置は、風車及び発電機20の特性に応じて、広い風速範囲において効率よく発電して、蓄電素子30を充電することができる。
【0110】
実施の形態2.
実施の形態1では、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLafを一定値としてトルク制御を実行した。一方で、自動車用オルタネータ等を発電機20として用いる場合には、低回転数領域を含む広い回転数領域で発電すると、動作点の変化に対して、相互インダクタンスLafが大きく変化することが懸念される。
【0111】
従って、実施の形態2では、実施の形態1におけるトルク演算部の変形例を説明する。
【0112】
図10は、実施の形態2に係る風力発電装置で用いられるトルク演算部82の構成例を説明するブロック図である。実施の形態2に係る風力発電装置では、図9の励磁電流制御部66中のトルク演算部82が、図10に従って構成される。
【0113】
図10を参照して、実施の形態2に係るトルク演算部82は、相互インダクタンス演算部88、及び、乗算器89,90を有する。
【0114】
相互インダクタンス演算部88は、励磁電流If及び直流電流Ibの検出値に基づき、相互インダクタンス演算値Lafhを生成する。
【0115】
図11は、励磁電流If及び直流電流Ib(電機子電流Iaに相当)に対する相互インダクタンスLafの特性の一例を示す概念図である。図11に示される相互インダクタンスLafの特性についても、発電機20の特性試験によって求めることができる。
【0116】
図11に示された特性例では、励磁電流Ifが一定の下では、直流電流Ibが増加するのに従って相互インダクタンスLafは低下している。又、直流電流Ibが小さい領域及び大きい領域では、直流電流Ibの変化に対して相互インダクタンスLafが変化する傾き(dLaf/dIb)が大きく、その中間領域では、当該傾きは小さい。
【0117】
又、励磁電流Ifが異なると、直流電流Ibに対する相互インダクタンスLafの変化特性が大きく変化する。特に、励磁電流Ifが大きくなると、直流電流Ibが小さい領域での相互インダクタンスLafの傾き(dLaf/dIb)が大きくなることが理解される。
【0118】
相互インダクタンス演算部88は、図11に示された、相互インダクタンスLafの特性に従って、直流電流Ib及び励磁電流Ifの検出値を入力とし、相互インダクタンス演算値Lafhを出力とする、演算式、又は、ルックアップテーブルによって構成することができる。
【0119】
再び、図10を参照して、乗算器89は、相互インダクタンス演算部88による相互インダクタンス演算値Lafhと、励磁電流If(検出値)との乗算値を出力する。当該乗算値は、界磁巻線28が発生する磁束に相当する。
【0120】
更に、乗算器90は、乗算器89が出力した乗算値(Lafh・If)と、電機子電流Iaに相当する直流電流Ibとの乗算値を、トルク演算値Tehとして出力する。従って、実施の形態2においても、相互インダクタンス演算値Lafhを用いて、実施の形態1と同様の式(10)に従って、トルク演算値Tehが算出される。
【0121】
実施の形態2に係る風力発電装置のトルク演算部82以外の部分の構成は、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。従って、励磁電流Ifの制御(励磁電流制御部66)に関して、トルク演算値Tehが図9の減算器83へ入力された後の制御演算は、実施の形態1と同様である。又、直流電圧Vbの制御(出力電圧制御部64)は、実施の形態1と同様である。
【0122】
このように、実施の形態2に係る風力発電装置では、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLafが一定値ではなく、励磁電流If及び出力電流Ibに応じて変化する場合にも、トルク演算精度を確保することが可能である。
【0123】
この結果、実施の形態1で説明した効果に加えて、発電機20が磁気飽和を無視できない特性を有している場合にも、トルク検出器を設けることなく、トルク制御を実行することができるという効果が生じる。特に、自動車用オルタネータのような、一定励磁下で電機子電流に比例してトルクが増加しない発電機を使用する際にも、トルク検出器を設けることなく、トルク制御を実行することが可能となる。
【0124】
実施の形態3.
図12は、本実施の形態3に係る風力発電装置10の電気回路部分の構成を示す回路図である。
【0125】
図12を参照して、実施の形態3に係る構成では、実施の形態1(図2)と比較して、ダイオード53に代えてスイッチ54が配置される点、及び、ダイオード56~58が追加配置される点が異なる。図12のその他の部分の構成は実施の形態1と同様であるので、これらの共通部分について詳細な説明は繰り返さない。
【0126】
ダイオード56は、発電機20の端子22と、出力電圧制御回路40との間に接続される。ダイオード56のアノードは端子22と接続され、カソードは出力電圧制御回路40の入力ノードNinと接続される。これにより、発電機20の出力電流Ibが負方向となること、即ち、出力電圧制御回路40から端子22(発電機20)へ電流が流入することが確実に防止できる。
【0127】
尚、ダイオード56が配置されることにより、出力電圧制御回路(昇圧チョッパ)40の入力電圧は、厳密には、端子22の電圧からダイオード56での電圧降下量を減算した値となる。このため、実施の形態3では、出力電圧制御回路(昇圧チョッパ)40の入力電圧を実施の形態1と同様に直流電圧Vbと表記する一方で、端子22の電圧(即ち、発電機20の出力電圧)については、Vb*とも表記する。
【0128】
ダイオード58は、発電機20の端子22と、励磁電流制御回路50の入力ノードに相当するノードNfとの間に接続される。ダイオード58は、端子22と接続されたアノード、及び、ノードNfと接続されたカソードを有するので、発電機20の端子22から励磁電流制御回路50への方向を順方向として接続されている。ダイオード58は「第2のダイオード」の一実施例に対応する。又、実施の形態1と同様に、蓄電素子30(ノードNb)及びノードNfの間に、蓄電素子30から励磁電流制御回路50への方向を順方向として接続されるダイオード52が「第1のダイオード」の一実施例に対応する。
【0129】
ダイオード57及びスイッチ55は、出力電圧制御回路40のバイパス経路を形成するために、発電機20の端子22と、蓄電素子30と接続されたノードNbとの間に直列接続される。スイッチ54は、出力電圧制御回路40の出力ノードNout及びノードNbの間の経路に接続される。ダイオード57は、端子22からノードNbへの方向を順方向として接続される。
【0130】
図12の例では、スイッチ54及び55は、スイッチング素子44,48と同様にMOSFETで構成されているが、オン及びオフを制御可能であれば、他の半導体素子、又は、リレー等によってスイッチ54及び55を構成することも可能である。スイッチ54及び55は、発電機制御部60からの制御信号によってオンオフされる。スイッチ54は「第1のスイッチ」の一実施例に対応し、スイッチ55は「第2のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0131】
実施の形態3の構成では、図示は省略しているが、ノードNbの直流電圧VBAT、及び、ノードNbへの入力電流IBATの検出器が更に配置される。これらの検出器による検出値は、発電機制御部60へ入力される。入力電流IBATの検出器は、ダイオード51又は52を経由してノードNbから流出する電流を検出しないように、スイッチ54及び55と、ノードNbとの間に配置される。
【0132】
実施の形態1で説明したように、出力電圧制御回路40の配置により、発電機20の回転数が低く誘起電圧も低い場合にも、発電機20の出力電圧を昇圧して、蓄電素子30を充電することが可能となる。一方で、発電機20の回転数が上昇して誘起電圧が十分高くなると、発電機20の出力電圧の上昇により、出力電圧制御回路40での昇圧が不要となる。この場合には、出力電圧制御部64(図7)によりデューティ比Db=0に制御されて、スイッチング素子44はオフ状態に固定される。しかしながら、昇圧不要時にも、発電機20の出力電流Ibが、リアクトル45及びダイオード43を流れて、蓄電素子30を充電することになるので、リアクトル45及びダイオード43での電力損失の発生が懸念される。
【0133】
従って、実施の形態3の構成では、昇圧不要時、即ち、発電機20の出力電圧(Vb*)が、ノードNbの直流電圧(VBAT)よりも高い場合には、スイッチ54をオフ状態とするとともに、スイッチ55をオン状態とする。これにより、出力電圧制御回路40をバイパスして、発電機20の出力電流によって蓄電素子30を充電することが可能となる。この結果、リアクトル45及びダイオード43を経由する場合と比較して、電力損失が低減できる。
【0134】
一方で、昇圧が必要な場合、即ち、発電機20の出力電圧(Vb*)が直流電圧VBAT(ノードNb)よりも低い期間では、スイッチ54をオン状態とすることで、実施の形態1と同様に、出力電圧制御回路40によって昇圧された出力電圧Voutによって、蓄電素子30を充電することができる。
【0135】
更に、ダイオード58の配置により、端子22の電圧(発電機20の出力電圧)が、ノードNfの電圧よりも高い場合には、端子22から励磁電流制御回路50への直接の給電経路が、ダイオード58により形成される。
【0136】
ノードNfの電圧は、ノードNbの電圧、即ち、蓄電素子30の直流電圧VBAT以下である。従って、発電機20の出力電圧(Vb*)が、直流電圧VBATよりも高いときには、ダイオード58がオンすることにより、蓄電素子30を経由せずに、端子22からの直接の給電によって、励磁電流Ifを発生することができる。
【0137】
一方で、蓄電素子30の直流電圧VBATと同等であるノードNfの電圧が、発電機20の出力電圧(端子22の直流電圧)よりも高い場合には、ダイオード58がオフされる。この場合には、実施の形態1と同様に、ダイオード52を経由した蓄電素子30からの給電によって、励磁電流Ifは発生される。
【0138】
図13は、実施の形態3に係る風力発電装置での発電機制御部の構成例を説明するブロック図である。
【0139】
図13を参照して、実施の形態3に係る風力発電装置では、発電機制御部60は、図6(実施の形態1)と同様の回転数検出値生成部62と、実施の形態3に係る、モード判定部67、出力電圧制御部68、及び、励磁電流制御部69とを有する。
【0140】
モード判定部67は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに基づき、モード信号MDH及びMDLを生成する。
【0141】
図14には、モード判定部67の構成例が示される。
【0142】
図14を参照して、モード判定部67は、ヒステリシスコンパレータ91及びNOTゲート92を有する。ヒステリシスコンパレータ91の正側には、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nが入力される。一方で、ヒステリシスコンパレータ91の負側には、モード判定の閾値Nthが入力される。
【0143】
閾値Nthは、出力電圧制御回路40による昇圧の要否、即ち、発電機20の出力電圧によって蓄電素子30を直接充電できるか否かについての判定値である。閾値Nthは、予め定められた固定値とすることも可能であるが、蓄電素子30の直流電圧VBATに連動させて可変に設定することが好ましい。具体的には、直流電圧VBATが上昇すると閾値Nthも高く設定し、直流電圧VBATが低下すると閾値Nthも低く設定することが好ましい。
【0144】
ヒステリシスコンパレータ91の出力信号は、基本的には、N>NthのときはHレベルとなる一方で、N<NthのときにはLレベルとされる。公知のように、ヒステリシスコンパレータ91の出力信号が、HレベルからLレベルへ変化するときには、回転数Nは閾値Nthよりも低い値と比較される。同様に、ヒステリシスコンパレータ91の出力信号が、LレベルからHレベルへ変化するときには、回転数Nは閾値Nthよりも高い値と比較される。
【0145】
NOTゲート92は、ヒステリシスコンパレータ91の出力信号を反転して、モード信号MDLを出力する。一方で、ヒステリシスコンパレータ91の出力信号は、モード信号MDHとして、モード判定部67から出力される。従って、回転数Nが閾値Nthよりも高い領域では、モード信号MDHがHレベルに設定される一方で、モード信号MDLはLレベルに設定される。反対に、回転数Nが閾値Nthよりも低い領域では、モード信号MDLがHレベルに設定される一方で、モード信号MDHはLレベルに設定される。
【0146】
モード信号MDLは、スイッチ54のオンオフ制御信号として用いられ、モード信号MDHは、スイッチ55のオンオフ制御信号として用いられる。即ち、N>Nthの領域では、スイッチ55がオンする一方で、スイッチ54はオフされる。反対に、N<Nthの領域では、スイッチ54がオンする一方で、スイッチ55はオフされる。
【0147】
尚、スイッチ54及び55のオンオフを入れ替える際には、スイッチ54及び55の両方がオフすることによる断路を防止するために、両者のオン期間の重なりを設けることが好ましい。
【0148】
再び図13を参照して、出力電圧制御部68は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nと、出力電圧制御回路の入力電圧(直流電圧Vb)の検出値と、モード信号MDHとに基づき、スイッチング素子44(出力電圧制御回路40)のゲート信号SGbを生成する。
【0149】
図15は、出力電圧制御部68の構成例を説明するブロック図である。
【0150】
図15を参照して、出力電圧制御部68は、図7に示された出力電圧制御部64の構成に加えて、ANDゲート76を更に有する。更に、図7での電圧制御器73に代えて、モード信号MDLが更に入力される電圧制御器77が配置される。上述のように、モード信号MDLは、昇圧が必要な低回転時(N<Nth)でHレベルに設定される一方で、昇圧が不要な高回転時(N<Nth)ではLレベルに設定される。
【0151】
電圧制御器77は、図7の電圧制御器73の機能に加えて、モード信号MDLに連動した積分演算の停止機能及びリセット機能を有する。具体的には、モード信号MDLのHレベル期間(即ち、昇圧必要時)には、電圧制御器77は、図7の電圧制御器73と同様に動作する。
【0152】
一方で、電圧制御器77は、モード信号MDLがHレベルからLレベルに変化すると、積分項の値を1にリセットする。電圧制御器77は、電圧制御器73と同様に、制御量(1-Db)を出力するので、上記のリセット値は、デューティ比Db=0に対応するものである。又、電圧制御器77は、モード信号MDLのLレベル期間では積分動作を停止するとともに、モード信号MDLがLレベルからHレベルに変化すると、上記リセット値を初期値として、積分動作を再開する。
【0153】
ANDゲート76は、NOTゲート75の出力信号と、モード信号MDLとのAND(論理積)演算結果を、スイッチング素子44のゲート信号SGbとして出力する。従って、モード信号MDLのHレベル期間、即ち、昇圧が必要な低回転時(N<Nth)には、ゲート信号SGbは、実施の形態1と同様に設定される。
【0154】
これに対して、モード信号MDLのLレベル期間、即ち、昇圧が不要な高回転時(N>Nth)には、ゲート信号SGbはLレベルに固定される。これにより、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44はオフ状態に固定される。
【0155】
以上より、昇圧が必要な低回転時には、実施の形態1と同様に、出力電圧制御回路40が発電機20の出力電圧を昇圧した直流電圧Voutによって、蓄電素子30が充電される。一方で、昇圧が不要な高回転時には、スイッチ54及びスイッチング素子44をオフし、かつ、スイッチ55をオンして出力電圧制御回路40のバイパス経路を形成することで、電力損失を抑制した上で、発電機20の出力電圧によって蓄電素子30を直接充電することができる。
【0156】
再び図13を参照して、励磁電流制御部69は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nと、励磁電流If、直流電流Ib、及び、ノードNbへの入力電流IBATの検出値と、モード信号MDL,MDHとを受けて、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のゲート信号SGfを生成する。
【0157】
図16には、励磁電流制御部69の構成例を示すブロック図が示される。
【0158】
図16を参照して、励磁電流制御部69は、図9に示された励磁電流制御部66と比較して、電機子電流演算部93を更に有する点で異なる。
【0159】
実施の形態3(図12)の回路構成では、ダイオード57,58による電流経路が発生するため、実施の形態1(図2)の構成のように、出力電圧制御回路40の入力ノードNinの直流電流Ibを、式(10)中の電機子電流Iaと見做すことができなくなる。従って、式(10)によるトルク演算を実行するために、実施の形態3では、電機子電流演算部93での推定演算によって、電機子電流Iaが求められる。
【0160】
電機子電流演算部93は、出力電圧制御回路40の直流電流Ib、励磁電流If、及び、ノードNbへの入力電流IBATの検出値と、モード信号MDL,MDHと、電流制御器86によって演算されたデューティ比Df(スイッチング素子48)とを受けて、電機子電流演算値Iahを出力する。
【0161】
実施の形態3(図12)の回路構成では、発電機20の端子22の電圧(Vb*)が、直流電圧VBATよりも低く、ダイオード57,58がオンしない場合には、実施の形態1と同様に、発電機20の電機子電流Iaは、端子22から出力されて、全量が、出力電圧制御回路40の入力ノードNinでの直流電流Ibとなる。従って、モード信号MDLがHレベルに設定される期間では、電機子電流演算値Iah=Ib(検出値)とすることができる。
【0162】
一方で、端子22の電圧(Vb*)が直流電圧VBATよりも高くなると、ダイオード57,58による電流経路が形成される。従って、モード信号MDHがHレベルに設定される期間では、端子22から出力される電機子電流Iaは、出力電圧制御回路40をバイパスしてダイオード57を経由した電流と、ダイオード58を経由して励磁電流制御回路50に入力された電流との和で示される。
【0163】
スイッチ55のオン時にダイオード57を経由する電流は、ノードNbへの入力電流IBATとして検出することができる。一方で、降圧チョッパに相当する励磁電流制御回路50の出力電流が励磁電流Ifであるため、励磁電流制御回路50の入力電流Iinは、スイッチング素子48のデューティ比Df及び励磁電流Ifの積に相当する。
【0164】
従って、モード信号MDHのHレベル期間では、下記の式(13)に従って、電機子電流演算値Iahを求めることができる。即ち、ノードNfでの励磁電流制御回路50への入力電流Iinが「第1の入力電流」に対応する一方で、入力電流IBATは「第2の入力電流」に対応する。
【0165】
Iah=If・Df+IBAT …(13)
図17は、電機子電流演算部93の構成例を示すブロック図である。
【0166】
図17を参照して、電機子電流演算部93は、乗算器94,96,98と、加算器95,97とを有する。又、図17において、モード信号MDL,MDHの各々は、Lレベル期間には「0」とされ、Hレベル期間には「1」とされる。
【0167】
乗算器94は、モード信号MDL及び入力電流Ib(検出値)の乗算値Iaoを出力する。乗算器96は、励磁電流If(検出値)及びデューティ比Dfの乗算値を出力する。加算器97は、入力電流IBAT(検出値)と、乗算器96の出力値との加算値を出力する。乗算器98は、加算器97の出力値と、モード信号MDHとの乗算値Iagを出力する。
【0168】
モード信号MDLのHレベル期間(即ち、モード信号MDHのLレベル期間)では、Iao=Ibである一方で、Iag=0である。一方で、モード信号MDHのHレベル期間(即ち、モード信号MDLのLレベル期間)では、Iao=0である一方で、Iag=IBAT+If・Dfである。
【0169】
加算器95は、乗算器94の出力値Iaoと、乗算器98の出力値Iagとの加算値を、電機子電流演算値Iahとして出力する。従って、ダイオード57,58がオンされる期間(即ち、モード信号MDHのHレベル期間)では、上述の式(13)に従って、電機子電流演算値Iahを生成することができる。更に、ダイオード57,58がオフされる期間(モード信号MDLのHレベル期間)では、実施の形態1と同様に、出力電圧制御回路40での直流電流Ibを電機子電流Iaと見做して、電機子電流演算値Iahを生成することができる(Iah=Ib)。
【0170】
再び図16を参照して、電機子電流演算部93による電機子電流演算値Iahは、励磁電流If(検出値)とともに、トルク演算部82に入力される。
【0171】
図18には、図16のトルク演算部82の構成例が示される。
【0172】
図18を参照して、トルク演算部82は、図10と同様の、相互インダクタンス演算部88、及び、乗算器89,90を有する。実施の形態3では、相互インダクタンス演算部88に対して、励磁電流Ifの検出値と、電機子電流演算部93による電機子電流演算値Iahとが入力される。
【0173】
相互インダクタンス演算部88は、図11の特性図の横軸の値を、実施の形態1での入力電流Ibから、電機子電流演算値Iahに読み替えて、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンス演算値Lafhを生成する。更に、乗算器89,90により、Teh=Lafh・If・Iahとして、トルク演算値Tehを算出することができる。
【0174】
或いは、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLafが一定値と出来る場合には、図9(実施の形態1)の構成において、トルク演算部82に対して、入力電流Ibに代えて、電機子電流演算値Iahを入力することで、式(10)において、Ia=Iahとして、トルク演算値Tehを算出することが可能である。
【0175】
図16の制御構成において、トルク演算以外の制御内容は、実施の形態1と同様である。従って、実施の形態3においても、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48は、実施の形態1と同様に制御される。
【0176】
以上説明したように、実施の形態3に係る風力発電装置では、スイッチ55のオンにより、出力電圧制御回路(昇圧チョッパ)40のバイパス経路を形成することができる。従って、風速が十分大きくなり回転数が高い状態で発電機20を運転できるため、発電機20の出力電圧を昇圧することなく蓄電素子30を充電可能な場合には、出力電圧制御回路40をバイパスして電力損失を低減することで、蓄電素子30への充電量を増加することができる。
【0177】
又、ダイオード58及び52の配置により、発電機20の出力電圧が蓄電素子30の出力電圧より高い場合には、発電機20の出力電圧を、直接、励磁電流制御回路50に供給して励磁電流Ifを発生することにより、励磁に要する消費電力を低減することができる。
【0178】
又、実施の形態3においても、電機子電流演算部93(図16)を設けることで、発電機20からの出力電流の検出器を新たに設けることなく、電機子電流を算出することができる。これにより、トルク検出器を設けることなく、発電機20の発生トルクを制御することが可能である。
【0179】
更に、出力電圧制御回路40による昇圧時、及び、出力電圧制御回路40のバイパス時のいずれにおいても、共通の励磁電流制御部69(図16)を用いて、励磁電流制御回路50を制御することができる。
【0180】
尚、本実施の形態では、プロペラ5及び発電機20の回転数が同一値である例を説明したが、増速機等の設置によって、プロペラ5(風車)の回転数と、発電機20(回転子)の回転数との間に、既知の比(K)が存在する場合にも、同様の出力電圧制御及び励磁電流制御を、風力発電装置に適用することが可能である。具体的には、回転数検出値生成部62(図6及び図13)によって生成された、発電機20の回転数検出値をK倍することでプロペラ5(風車)の回転数を算出することが可能である。又、プロペラ5(風車)の所望のトルク値を(1/K)倍することで、発電機20のトルク指令値Teref(図9及び図16)を算出することができる。
【0181】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0182】
5 プロペラ、10 風力発電装置、20 発電機、21~25 端子(発電機)、27 電機子巻線、28 界磁巻線、29 整流器、30 蓄電素子、40 出力電圧制御回路、41,42,46 平滑コンデンサ、43,47,51~53,56~58 ダイオード、44,48 スイッチング素子、45 リアクトル、50 励磁電流制御回路、54,55 スイッチ、60 発電機制御部、62 回転数検出値生成部、64,68 出力電圧制御部、66,69 励磁電流制御部、67 モード判定部、71 出力電圧指令値生成部、72,83,85 減算器、73,77 電圧制御器、74,87 比較器、81 トルク指令値生成部、82 トルク演算部、84 トルク制御器、86 電流制御器、88 相互インダクタンス演算部、89,90,94,96,98 乗算器、91 ヒステリシスコンパレータ、93 電機子電流演算部、95,97 加算器、210 最大出力線、CW 搬送波、Db,Df デューティ比、Iah 電機子電流演算値、Ib 出力電流、Ib 直流電流、If 励磁電流、Ifref 励磁電流指令値、Laf 相互インダクタンス、Lafh 相互インダクタンス演算値、MDH,MDL モード信号、Nth 閾値、Nin 入力ノード(出力電圧制御回路)、Nf 入力ノード(励磁電流制御回路)、Nout 出力ノード(出力電圧制御回路)、Ra 電機子巻線抵抗、Rf 電気抵抗値、SGb,SGf ゲート信号、Teh トルク演算値、Teref トルク指令値、VBAT 直流電圧、Vb 入力電圧(出力電圧制御回路)、Vbref 出力電圧指令値、Vout 出力電圧(出力電圧制御回路)、Vp 交流電圧(端子21)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18