(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】自動車試験システム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/013 20060101AFI20230217BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20230217BHJP
【FI】
G01M17/013
G01M13/04
(21)【出願番号】P 2019176709
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】越後 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 康平
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101958(JP,A)
【文献】実開昭60-127179(JP,U)
【文献】特開平05-026773(JP,A)
【文献】特開2018-059894(JP,A)
【文献】特開2011-179911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0022587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
G01M 13/00- 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の試験に用いられる自動車試験システムであって、
試験対象自動車の駆動輪に対して設けられた計測システムと、
トルク算定手段とを有し、
前記計測システムは、
前記駆動輪のドライブシャフトに装着された、当該ドライブシャフトが伝達するトルクを検出する第1のトルクセンサと、
ダイナモメータと、
第2のトルクセンサと、
模擬車輪とを有し、
前記模擬車輪は、
前記駆動輪のハブベアリングのハブに連結された模擬ハブシャフトと、
前記模擬ハブシャフトと共に回転するハブを備えた模擬車輪用ハブベアリングと、
軸方向に見た形状が中央孔を有する円環形状であると共に、前記中央孔内に前記模擬車輪用ハブベアリングを同軸状に支持するハブベアリング支持体とを有し、
前記模擬車輪用ハブベアリングのハブは、少なくとも前記第2のトルクセンサを介して前記ダイナモメータのシャフトに連結されており、
前記第2のトルクセンサは、前記模擬車輪用ハブベアリングのハブと前記ダイナモメータのシャフト間で伝達されるトルクを検出し、
前記トルク算定手段は、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差に基づいて、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクを算定することを特徴とする自動車試験システム。
【請求項2】
請求項1記載の自動車試験システムであって、
前記模擬車輪用ハブベアリングは、試験対象自動車の駆動輪のハブベアリングと少なくとも同径であり、
前記トルク算定手段は、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差の半分の値を、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクとして算定することを特徴とする自動車試験システム。
【請求項3】
請求項2記載の自動車試験システムであって、
前記模擬車輪用ハブベアリングと、試験対象自動車の駆動輪のハブベアリングとは仕様が同一のハブベアリングであることを特徴とする自動車試験システム。
【請求項4】
請求項1記載の自動車試験システムであって、
前記トルク算定手段は、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差から、予め設定された前記模擬車輪用ハブベアリングの損失トルクの特性に従い定まる模擬車輪用ハブベアリングの損失トルクを差し引いた値を、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクとして算定することを特徴とする自動車試験システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の自動車試験システムであって、
前記ハブベアリング支持体は、軸方向に見た形状が前記中央孔を有する円環形状であると共に外周部に軸方向に延びたリムが設けられたタイヤ支持体と、前記リムの外周に装着されたタイヤとを有することを特徴とする自動車試験システム。
【請求項6】
請求項5記載の自動車試験システムであって、
前記タイヤ支持体は、
軸方向に見た形状が前記中央孔を有する円環形状であるアダプタディスク部と、
軸方向に見た形状が、前記アダプタディスク部の中央孔よりも径の大きな孔を中央に有する円環形状であると共に、外周に前記リムが設けられたホイール部とよりなり、
前記アダプタディスク部は、前記中央孔内に前記模擬車輪用ハブベアリングを同軸状に支持すると共に、前記ホイール部に同軸状に取り外し可能に装着されることを特徴とする自動車試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を試験する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を試験する技術としては、模擬ホイールと、模擬ホイールに装着したタイヤと、模擬ホイールのセンター部に設けた軸受によって回動可能に軸支された連結シャフトとを備えた模擬車輪を用いた試験装置を用いて自動車の試験を行う技術が知られている。この技術では、模擬車輪の連結シャフトの一端を自動車のハブベアリングに連結し、連結シャフトの他端をトルクセンサを介してダイナモメータに接続されたシャフトに連結する、または、模擬車輪の連結シャフトの一端をトルクセンサを介して自動車のハブベアリングに連結し、連結シャフトの他端をダイナモメータに接続されたシャフトに連結することにより、自動車を同じ場所に留めた状態で、ダイナモメータから自動車のドライブシャフトに負荷を加えながらトルクセンサでドライブシャフトから出力されるトルクを計測する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、トルクを計測する技術としては、二つのフランジ間に働くトルクを検出するフランジ型トルクセンサの技術(たとえば、特許文献2)や、回転軸に圧接させた歪みゲージを用いて回転軸のトルクを検出する摩擦型トルクセンサの技術(たとえば、特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-101958号公報
【文献】特開2019- 39708号公報
【文献】特開2010- 71657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した模擬車輪を用いた試験装置によって計測されるトルクは、ドライブシャフトと車輪とを連結する軸受であるハブベアリングの抵抗によるトルクの損失が反映されたトルクとなるため、この試験装置によっては、ハブベアリングの損失トルクを含まない純粋なドライブシャフトの出力トルクや、ハブベアリングの損失トルクを計測できない。
【0006】
一方で、省エネルギー性能の検証等のために自動車のハブベアリングの損失トルクを計測することは重要である。
そこで、本発明は、自動車のハブベアリングの損失トルクを計測できる試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車の試験に用いられる自動車試験システムに、試験対象自動車の駆動輪に対して設けられた計測システムと、トルク算定手段とを備えたものである。前記計測システムは、前記駆動輪のドライブシャフトに装着された、当該ドライブシャフトが伝達するトルクを検出する第1のトルクセンサと、ダイナモメータと、第2のトルクセンサと、模擬車輪とを有する。前記模擬車輪は、前記駆動輪のハブベアリングのハブに連結された模擬ハブシャフトと、前記模擬ハブシャフトと共に回転するハブを備えた模擬車輪用ハブベアリングと、軸方向に見た形状が中央孔を有する円環形状であると共に、前記中央孔内に前記模擬車輪用ハブベアリングを同軸状に支持するハブベアリング支持体とを有する。前記模擬車輪用ハブベアリングのハブは、少なくとも前記第2のトルクセンサを介して前記ダイナモメータのシャフトに連結されている。前記第2のトルクセンサは、前記模擬車輪用ハブベアリングのハブと前記ダイナモメータのシャフト間で伝達されるトルクを検出する。前記トルク算定手段は、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差に基づいて、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクを算定する。
【0008】
この自動車試験システムにおいて、前記模擬車輪用ハブベアリングを、試験対象自動車の駆動輪のハブベアリングと少なくとも同径とし、前記トルク算定手段において、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差の半分の値を、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクとして算定してもよい。
【0009】
また、この場合、前記模擬車輪用ハブベアリングと、試験対象自動車の駆動輪のハブベアリングとは仕様が同一のハブベアリングとしてよい。
または、この自動車試験システムは、前記トルク算定手段において、前記第1のトルクセンサが検出したトルクと前記第2のトルクセンサが検出したトルクの差から、予め設定された前記模擬車輪用ハブベアリングの損失トルクの特性に従い定まる模擬車輪用ハブベアリングの損失トルクを差し引いた値を、前記試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクとして算定してもよい。
【0010】
以上の自動車試験システムによれば、第1のトルクセンサと第2のトルクセンサによって試験対象自動車のハブベアリングの両側においてトルクを検出するので、両トルクセンサが検出したトルクの差より、試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクを算定できる。
【0011】
また、前記模擬車輪用ハブベアリングとして、試験対象自動車の駆動輪のハブベアリングと同径のハブベアリングや、前記模擬車輪用ハブベアリングと仕様が同一のハブベアリングを用いることにより、模擬車輪用ハブベアリングの損失トルクの特性が未知であっても、第1のトルクセンサと第2のトルクセンサで検出したトルクの差の半分の値として、試験対象自動車のハブベアリングの損失トルクを算定できる。
【0012】
次に、自動車試験システムは、前記ハブベアリング支持体を、軸方向に見た形状が前記中央孔を有する円環形状であると共に外周部に軸方向に延びたリムが設けられたタイヤ支持体と、前記リムの外周に装着されたタイヤとを有するものとしてよい。
【0013】
また、この場合には、前記タイヤ支持体を、軸方向に見た形状が前記中央孔を有する円環形状であるアダプタディスク部と、軸方向に見た形状が、前記アダプタディスク部の中央孔よりも径の大きな孔を中央に有する円環形状であると共に、外周に前記リムが設けられたホイール部とより構成してよい。前記アダプタディスク部は、前記中央孔内に前記模擬車輪用ハブベアリングを同軸状に支持すると共に、前記ホイール部に同軸状に取り外し可能に装着される。
【0014】
このように模擬車輪を構成することにより、試験対象自動車のハブベアリングに応じて、模擬車輪の模擬車輪用ハブベアリングを交換できる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、自動車のハブベアリングの損失トルクを計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車試験システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る模擬車輪の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る模擬車輪の自動車のハブベアリングへの連結の手順を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る模擬車輪の自動車のハブベアリングへの連結の他の手順を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る計測システムの連結関係を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る模擬車輪用ハブベアリングの交換のようすを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るハブアダプタを用いた模擬車輪の自動車のハブベアリングへの連結の他の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係る自動車試験システムの構成を示す。
図示するように、自動車試験システムは、自動車の駆動輪(図では前輪)毎に対応して設けられ計測システム1と、センサ2と、計測装置3とを有する。
計測システム1は、
図1a、bに示すように、駆動輪のドライブシャフトに装着された摩擦型トルクセンサ11と、駆動輪のハブベアリングに連結された模擬車輪12とを備えている。また、計測システム1は、摩擦型トルクセンサ11が無線送信する検出トルクを受信する受信装置13と、ダイナモメータ14と、模擬車輪12に連結されたカップリング部材15、カップリング部材15に一端が連結された等速ジョイント16と、等速ジョイント16の他端とダイナモメータ14のシャフトとの間に両者を連結するように設けられたフランジ型トルクセンサ17とを備えている。
【0018】
センサ2は、エンジンの回転速度やギヤシフト状態やアクセル開度などの自動車の各種状態と、自動車の周囲の温度などの環境の各種状態を検出する。
図2に、模擬車輪12の構成を示す。
模擬車輪12の自動車のハブベアリングに連結される側を模擬車輪12の内側とし、内側の反対側を模擬車輪12の外側として、
図2aは模擬車輪12の内側を表し、
図2bは径方向に見た模擬車輪12を表し、
図2cは模擬車輪12の外側を表し、
図2dは模擬車輪12の
図2aの断面線A-Aによる断面端部を表している。
【0019】
図示するように、模擬車輪12は、自動車の車輪状の概形を有しており、模擬車輪用ハブベアリング121と、アダプタディスク122と、ホイール123と、タイヤ124と、模擬ハブシャフト125を備えている。
【0020】
模擬車輪用ハブベアリング121としては、試験対象の自動車の駆動輪のハブベアリングと同径の自動車の駆動輪用のハブベアリングを用いる。また、好ましくは、試験対象の自動車の駆動輪のハブベアリングと同じ仕様のハブベアリング(たとえば型番が同じ製品)を用いる。
【0021】
図2eに示すように、模擬車輪用ハブベアリング121は、外周に本来は自動車の車体取付け用に設けられているフランジを備えた外輪部1211、ボール1212、外輪部1211の中央孔に挿入された形態でボール1212を介して外輪部1211に回転可能に支持されたハブ1213を備えている。また、ハブ1213の外側端には本来は自動車の車輪取付け用に設けられているフランジを備えており、このフランジには外側に起立したハブボルト1214が固定されている。
【0022】
そして、模擬車輪12において、模擬ハブシャフト125は、模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213の中央孔を貫通させた先端をナット止めすることにより、模擬車輪用ハブベアリング121に連結されており、模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213と一体として回転する。
【0023】
また、模擬ハブシャフト125の内側端には、自動車のハブベアリングのハブ取付け用のフランジが設けられており、このハブ取付け用のフランジには、自動車のハブベアリングのハブボルトを用いて、模擬ハブシャフト125を自動車のハブベアリングのハブに固定するためのボルト孔1251が設けられている。
【0024】
アダプタディスク122は、軸方向(模擬車輪12の内外方向)に見た形状がおおよそ中央孔のある円環形状を有する板状の部材であり、模擬車輪用ハブベアリング121をアダプタディスク122の中央孔に挿入し、アダプタディスク122の内周側に設けたボルト孔に内側から通したボルトを、模擬車輪用ハブベアリング121の外輪部1211の車体取付け用のフランジに設けられているネジ孔にネジ止めすることにより、模擬車輪用ハブベアリング121はアダプタディスク122に固定される。
【0025】
ホイール123は、軸方向(模擬車輪12の内外方向)に見た形状がおおよそ中央孔のある円環形状を有する板状の部分の外周側端に軸方向に拡がったリムを設けた部材であり、このリム上にタイヤ124が装着される
ホイール123の中央孔の径は、アダプタディスク122の中央孔の径より大きくアダプタディスク122の径より小さい。そして、模擬車輪用ハブベアリング121を固定したアダプタディスク122を、模擬車輪用ハブベアリング121がホイール123の中央孔を貫通するように配置し、アダプタディスク122の外周側に設けたネジ孔に、ホイール123に設けたボルト孔に外側から通したボルトを、ネジ止めすることにより、アダプタディスク122はホイール123に固定される。
【0026】
ここで、模擬車輪12の
図2に示した構成への組み付けは、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結の際に完成する。
模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結作業は、
図2に示した模擬車輪12の構成においてアダプタディスク122のホイール123への固定を解除して得られる、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122と模擬ハブシャフト125のセットと、タイヤ124を装着したホイール123とに、模擬車輪12が分離している状態で開始する。
【0027】
まず、
図3a、bに示すように、模擬ハブシャフト125のハブ取付け用のフランジのボルト孔1251に、自動車のハブベアリング101のハブボルトを内側から通してナット止めすることにより、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122と模擬ハブシャフト125のセットを自動車のハブベアリング101のハブに固定する。
【0028】
そして、
図3c、dに示すように、自動車のハブベアリング101のハブに模擬車輪用ハブベアリング121を介して固定されたアダプタディスク122のネジ孔1221に、ホイール123に設けたボルト孔に外側から通したボルトをネジ止めすることにより、アダプタディスク122に、タイヤ124を装着したホイール123を固定し、模擬車輪12の
図2に示した構成への組み付けと、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結を完了する。
【0029】
図2に示した模擬車輪12の構成の組み付けと、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結作業は、次の手順により行うようにしてもよい。
この手順では、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへ連結作業は、
図2に示した模擬車輪12の構成において、模擬ハブシャフト125の模擬車輪用ハブベアリング121への連結と、アダプタディスク122のホイール123への固定とを解除して得られる、模擬ハブシャフト125と、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122のセットと、タイヤ124を装着したホイール123とに、模擬車輪12が分離している状態で開始する。
【0030】
そして、まず、
図4a、bに示すように、模擬ハブシャフト125のハブ取付け用のフランジのボルト孔1251に、自動車のハブベアリング101のハブボルトを内側から通してナット止めすることにより、模擬ハブシャフト125を自動車のハブベアリング101のハブに固定する。
【0031】
次に、
図4c、dに示すように、自動車のハブベアリング101のハブに固定した模擬ハブシャフト125が、模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213の中央孔を貫通するように、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122のセットを配置して模擬ハブシャフト125の先端をナット止めすることにより、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122のセットを模擬ハブシャフト125を介して自動車のハブベアリング101のハブに固定する。
【0032】
そして、
図3c、dに示したように、自動車のハブベアリング101のハブに模擬車輪用ハブベアリング121を介して固定されたアダプタディスク122のネジ孔1221に、ホイール123に設けたボルト孔に外側から通したボルトをネジ止めすることにより、アダプタディスク122に、タイヤ124を装着したホイール123を固定し、模擬車輪12の
図2に示した構成への組み付けと、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結を完了する。
【0033】
次に、
図5に、計測システム1と自動車の連結関係を示す。
自動車は、ドライブシャフト102を有し、ドライブシャフト102には摩擦型トルクセンサ11が装着される。
また、ドライブシャフト102は、自動車の車体に連結支持された自動車のハブベアリング101のハブに、ハブと一体として回転するように挿入されている。
上述のように、模擬ハブシャフト125は、自動車のハブベアリング101のハブに固定されており、自動車のハブベアリング101のハブと一体として回転する。
模擬ハブシャフト125と一体として回転する模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213には、等速ジョイント16の一端が連結したカップリング部材15が連結される。模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213とカップリング部材15の連結は、カップリング部材15に設けたボルト孔に模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213のハブボルト1214を通してナット止めすることにより行う。
【0034】
このような計測システム1の自動車との連結により、摩擦型トルクセンサ11はドライブシャフト102の捻れとして表れるドライブシャフト102の伝達トルクを検出し、受信装置13を介して計測装置3に出力する。
【0035】
また、フランジ型トルクセンサ17は、等速ジョイント16とダイナモメータ14のシャフトとの間で伝達されるトルクを検出し、計測装置3に出力する。
次に、自動車の試験において、計測装置3は、予め作成したスケジュールに従ったトルク、または、センサ2で検出した各種状態に従ったトルクにダイナモメータ14の出力トルクを制御しながら、摩擦型トルクセンサ11が検出したトルクとフランジ型トルクセンサ17が検出したトルクを収集する。また、計測装置3は、摩擦型トルクセンサ11とフランジ型トルクセンサ17から収集したトルクから、センサ2で検出した各状態における自動車のハブベアリング101の損失トルクや、自動車のハブベアリング101のハブ1213の出力トルクや、自動車のハブベアリング101の損失トルクを含まない純粋なドライブシャフト102の出力トルクなどを算定する。
【0036】
自動車のハブベアリング101の損失トルクと模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121の損失トルクの和が、フランジ型トルクセンサ17が検出したトルクと摩擦型トルクセンサ11が検出したトルクの差となる。また、自動車のハブベアリング101と模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121とは仕様が同じ、または、同径のハブベアリングであるので、自動車のハブベアリング101の損失トルクと模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121の損失トルクは、ほぼ等しくなる。
【0037】
そこで、フランジ型トルクセンサ17が検出したトルクをT0、摩擦型トルクセンサ11が検出したトルクをT1として、計測装置3は、T1を、自動車のハブベアリング101の損失トルクを含まない純粋なドライブシャフト102の出力トルクとして算定し、(T1-T0)/2を、自動車のハブベアリング101の損失トルクとして算定し、T0+{(T1-T0)/2}を自動車のハブベアリング101のハブ1213の出力トルクとして算定する。
【0038】
さて、本実施形態に係る模擬車輪12は、模擬車輪用ハブベアリング121を交換可能に構成されている。
模擬車輪用ハブベアリング121の交換は、
図6a1、b1に示すように、自動車のハブベアリング101のサイズに合わせ、同径もしくは仕様が同じ模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122と模擬ハブシャフト125のセットを用意し、タイヤ124を装着したホイール123に連結するセットを交換することにより行う。
【0039】
各セットの、アダプタディスク122は、そのセットの模擬車輪用ハブベアリング121とホイール123に整合する形状を有し、ホイール123に対して模擬車輪用ハブベアリング121の形状の違いを吸収する。
【0040】
図6a1に示す模擬車輪用ハブベアリング121を用いる場合には、
図6a2、a3に示すように、
図6a1のセットを自動車のハブに固定した上で、そのセットのアダプタディスク122に、タイヤ124を装着したホイール123を連結する。
【0041】
同様に、
図6b1に示す模擬車輪用ハブベアリング121を用いる場合には、
図6b2、ba3に示すように、
図6b1のセットを自動車のハブに固定した上で、そのセットのアダプタディスク122に、タイヤ124を装着したホイール123を連結する。
【0042】
このように、模擬車輪12を模擬車輪用ハブベアリング121を交換可能に構成することにより、異なるハブベアリングを用いた自動車の、当該自動車のハブベアリング101と同径もしくは仕様が同じハブベアリングを模擬車輪用ハブベアリング121として用いた試験を、同じホイール123とタイヤ124のセットを共用して行うことができる。
【0043】
次に、模擬車輪12の自動車のハブベアリング101への連結は、自動車のハブベアリング101のハブボルトの径方向の位置を変換するハブアダプタを用いて行うようにしてもよい。
【0044】
図7に、ハブアダプタ126を用いた模擬車輪12の自動車のハブベアリング101への連結作業の手順を示す。この連結作業は、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122と模擬ハブシャフト125のセットと、タイヤ124を装着したホイール123とに、模擬車輪12が分離している状態で開始する。
【0045】
まず、
図7a、bに示すように、自動車のハブベアリング101のハブボルトよりも外周側に配置されたハブボルト1261を備えたハブアダプタ126に設けたボルト孔に、自動車のハブベアリング101のハブボルトを内側から通してナット止めすることにより、ハブアダプタ126を自動車のハブベアリング101のハブに固定する。
【0046】
次に、
図7b、cに示すように模擬ハブシャフト125のハブ取付け用のフランジにハブアダプタ126のハブボルト1261の位置と整合する配置となるように設けたボルト孔1251に、ハブアダプタ126のハブボルト1261を内側から通してナット止めすることにより、模擬車輪用ハブベアリング121とアダプタディスク122と模擬ハブシャフト125のセットを、ハブアダプタ126を介して自動車のハブベアリング101のハブに固定する。
【0047】
そして、
図7c、dに示すように、アダプタディスク122のネジ孔1221に、ホイール123に設けたボルト孔の外側から通したボルトでネジ止めすることにより、アダプタディスク122に、タイヤ124を装着したホイール123を固定し、模擬車輪12の
図2に示した構成への組み付けと、模擬車輪12の自動車のハブベアリングへの連結を完了する。
【0048】
このようなハブアダプタ126のハブボルト1261の位置を、
図7に示すように軸方向に見て模擬車輪用ハブベアリング121に遮られない位置とすることにより、模擬ハブシャフト125の連結の作業が容易化される。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態では、模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121として、自動車のハブベアリング101と同径もしくは仕様が同じハブベアリングを用いたが、模擬車輪12の模擬車輪用ハブベアリング121としては、損失トルク特性が既知のハブベアリングであれば、自動車のハブベアリング101と径が異なるハブベアリングなどの任意のハブベアリングを用いることができる。ただし、この場合には、計測装置3に、予め模擬車輪用ハブベアリング121の損失トルク特性を設定する。そして、計測装置3は、フランジ型トルクセンサ17が検出したトルクをT0、摩擦型トルクセンサ11が検出したトルクをT1、設定されている損失トルク特性より求まる現状態における模擬車輪用ハブベアリング121の損失トルクをT3として、T1を、自動車のハブベアリング101の損失トルクを含まない純粋なドライブシャフト102の出力トルクとして算定し、T1-T0-T3を、自動車のハブベアリング101の損失トルクとして算定し、T0-T3を自動車のハブベアリング101のハブ1213の出力トルクとして算定する。
【0050】
また、以上の実施形態では、フランジ型トルクセンサ17を等速ジョイント16とダイナモメータ14のシャフトの間に設けたが、フランジ型トルクセンサ17は、模擬車輪用ハブベアリング121のハブ1213とダイナモメータ14のシャフトの間の任意の位置に設けるようにしてもよい。たとえば、カップリング部材15と等速ジョイント16の間にフランジ型トルクセンサ17を設け、カップリング部材15と等速ジョイント16の間で伝達されるトルクを検出するようにしてよい。
【0051】
また、フランジ型トルクセンサ17に代えて摩擦型トルクセンサ11などの他の種類のトルクセンサを用いるようにしてよい。
【符号の説明】
【0052】
1…計測システム、2…センサ、3…計測装置、11…摩擦型トルクセンサ、12…模擬車輪、13…受信装置、14…ダイナモメータ、15…カップリング部材、16…等速ジョイント、17…フランジ型トルクセンサ、101…ハブベアリング、102…ドライブシャフト、121…模擬車輪用ハブベアリング、122…アダプタディスク、123…ホイール、124…タイヤ、125…模擬ハブシャフト、126…ハブアダプタ、外輪部…1211、1212…ボール、1213…ハブ、1214…ハブボルト1221…ネジ孔。