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特許7229138パターン検査方法、フォトマスクの検査装置、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】パターン検査方法、フォトマスクの検査装置、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20230217BHJP
   G03F 1/26 20120101ALI20230217BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/26
G01B11/02 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019176892
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056293
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太一
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-165216(JP,A)
【文献】特開平07-135244(JP,A)
【文献】特開2011-069873(JP,A)
【文献】特開平05-107741(JP,A)
【文献】特開2013-235036(JP,A)
【文献】特開2001-175857(JP,A)
【文献】特開2016-050794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0061349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 - 1/86
H01L 21/027
G01B 11/02
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に転写用パターンを有するフォトマスクの、前記転写用パターンを検査するパターン検査方法であって、
前記転写用パターンは、露光光に対して、透過率T1(%)をもつ第1透過制御部と、透過率T2(%)をもつ第2透過制御部と、透過率T3(%)をもつ第3透過制御部とが、隣接してこの順に配列する検査領域を含み、T1およびT3はそれぞれT2と異なり、T1はT3と同じまたは異なるとき、
前記検査領域に光を照射し、前記検査領域の透過光画像を取得する工程と、
取得した前記透過光画像から、前記検査領域の光強度分布データを得る工程と、
前記光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することにより、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部との境界部分である第1の境界、および、前記第2透過制御部と前記第3透過制御部との境界部分である第2の境界を含む領域における、光強度変化曲線を得る、微分処理工程と、
得られた前記光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングする、フィッティング工程と、
前記フィッティングの結果から、前記第2透過制御部の寸法を求める工程と、を有する、
パターン検査方法。
【請求項2】
T1>T2>T3である、請求項1に記載のパターン検査方法。
【請求項3】
前記第1透過制御部は、前記透明基板が露出してなる透光部を構成し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に半透光膜が形成されてなる半透光部を構成し、
前記第3透過制御部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光部を構成し、
露光光に対して、前記半透光部の透過率は、10~60%である、
請求項1または2に記載のパターン検査方法。
【請求項4】
前記第2透過制御部の幅W(μm)は、0.1≦W≦1.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載のパターン検査方法。
【請求項5】
前記転写用パターンは、ラインアンドスペースパターンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のパターン検査方法。
【請求項6】
前記モデル関数は、前記第1の境界に対応する第1モデル関数と、前記第2の境界に対応する第2モデル関数と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のパターン検査方法。
【請求項7】
前記フィッティング工程においては、前記第1モデル関数から得られる第1モデル曲線および前記第2モデル関数から得られる第2モデル曲線を合成した合成曲線と、前記光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、フィッティングを行う、請求項6に記載のパターン検査方法。
【請求項8】
前記第1モデル曲線および前記第2モデル曲線を、それぞれガウシアン曲線とする、請求項7に記載のパターン検査方法。
【請求項9】
前記第1モデル曲線のピーク位置と、前記第2モデル曲線のピーク位置とにより、前記第2透過制御部の寸法を求める、請求項7または8に記載のパターン検査方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のパターン検査方法を含む、フォトマスクの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法によるフォトマスクを、露光装置によって露光し、前記転写用パターンを被転写体上に転写することを含む、表示装置の製造方法。
【請求項12】
透明基板上に転写用パターンを有するフォトマスクの、前記転写用パターンを検査するフォトマスクの検査装置であって、
前記転写用パターンが、露光光に対して、透過率T1(%)をもつ第1透過制御部と、透過率T2(%)をもつ第2透過制御部と、透過率T3(%)をもつ第3透過制御部とが、隣接してこの順に配列する検査領域を含み、T1およびT3はそれぞれT2と異なり、T1はT3と同じまたは異なるとき、
前記フォトマスクの検査装置は、
前記転写用パターンの前記検査領域の画像を取得する撮像素子と、
取得した前記画像から、光強度分布データを求め、該光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することによって得られた光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングすることにより、前記検査領域に含まれる、前記第2透過制御部の寸法を算定する、演算手段と、
を有する、フォトマスクの検査装置。
【請求項13】
T1>T2>T3である、請求項12に記載のフォトマスクの検査装置。
【請求項14】
前記モデル関数は、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部との境界部分である第1の境界に対応する第1モデル関数と、前記第2透過制御部と前記第3透過制御部との境界部分である第2の境界に対応する第2モデル関数と、を含み、
前記演算手段は、前記第1モデル関数から得られる第1モデル曲線および前記第2モデル関数から得られる第2モデル曲線を合成した合成曲線と、前記光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、フィッティングを行う、請求項12または13に記載のフォトマスクの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査方法、フォトマスクの検査装置、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法に関する。特に、電子デバイスを製造するためのフォトマスクであって、特に表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイ)製造用に好適なフォトマスクが有する、転写用パターンの検査方法、フォトマスクの検査装置、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像のパターンを固体撮像素子により撮像し、読み取ったパターンの輪郭を検出する方法、および測長装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、試料に電子ビームを走査することによって得られる信号に基づいて、試料上に形成されたパターンの寸法を測定するパターン寸法測定装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、透明基板上に、透光部と、露光光の一部を透過する半透光膜が形成された半透光部と、遮光性の膜が形成された遮光部とを有する転写用パターンを備えたフォトマスクが記載されている。前記半透光膜は、前記転写用パターンの転写に用いる露光光の代表波長に対して、2~60%の透過率と、90°以下の位相シフト作用をもち、前記半透光部は、前記遮光部のエッジに隣接して、露光装置により解像されない幅に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-39603号公報
【文献】特開2012-002765号公報
【文献】特開2013-235036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトマスクの生産に際しては、該フォトマスクの用途に応じて定められた仕様を充足するか否かを確認する検査が行なわれる。転写用パターンの線幅測定もそうした検査のひとつである。
【0007】
特許文献1によると、従来の測長装置では、撮像カメラの撮像面に結像されるアナログの光学像は、撮像素子の画素単位でサンプリングされるため、この信号に基づいてパターンの寸法などを測定するような場合、撮像素子の画素ピッチ以下の測定精度を得ることができない問題があると記載されている。そこで、特許文献1は、画像のパターンを固体撮像素子で撮像してそのデータを多段の画像処理を介してパターンの輪郭を上記撮像素子の画素ピッチ以下の精度で自動的かつ精密に与える、特に測長に適合する方法を提供するとされている。
【0008】
ところで、撮像素子に結像する光学像は、撮像素子のほかに、用いる光学系の解像力により、その質(情報量)が変わるものであるが、表示装置製造用のフォトマスクのCD(Critical Dimension、以下線幅の意味で用いる)測定に用いる測定装置には、その性能に限界がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載されたパターン寸法測定装置は、光の代わりに電子ビームを用いて、SEM像を得る。
【0010】
このように、パターン線幅測定の手段として、電子線を用いたCD-SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)を用いることが知られている。CD-SEMは、走査型電子顕微鏡(SEM)を応用した測定装置であり、主として、半導体のウェハ上に形成されたパターンや、それを製造するためのフォトマスク(レチクル)の微細パターンの線幅測定に使用される。この装置は、サブミクロンオーダの微細パターンが精密に測定できる利点がある。しかしながら、以下のような理由により、CD-SEMを、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイ。以下、FPD)製造用のいわゆる大型フォトマスク(一般に、主表面が一辺300~2000mm程度の四角形であって、様々なサイズが混在する)の測定に適用することは、困難である。CD-SEMによりパターン線幅を測定する際には、測定対象のフォトマスクを載置したチャンバ(試料室)を真空または高真空にする。このため、CD-SEMを、表示装置製造用の大型フォトマスクの測定に適用する場合、大型のチャンバを用意した上で、このチャンバを真空または高真空にすることとなり、工程上の負荷が非常に大きくなるという不都合がある。この場合、装置構成上の大幅な変更も必要となり、コストの増大は避けられない。
【0011】
このため、表示装置用のフォトマスクの線幅測定には、光学系と撮像素子とを備え、転写用パターンの透過光によって線幅測定を行なう、光学式の線幅測定装置が適用される。
【0012】
ただし、表示装置用フォトマスクのパターンのCDは、従来、半導体製造用フォトマスクのCDほど微細ではなかったため、大きな問題は生じなかった。
【0013】
ところで、表示装置の技術分野では、携帯端末やモニターのユーザーからの、画質や省電力などに対する要求性能が益々高くなるに従い、これらを製造するための表示装置用フォトマスクのパターンの微細化の必要性が顕著になっている。このため、フォトマスクの製造上の難度が上がることに加え、形成した転写用パターンの線幅測定にも困難が生じはじめている。また、表示装置製造用に特化した、特徴あるパターンも必要とされている。
【0014】
特許文献3には、ラインアンドスペースパターンを転写用パターンとしてもつフォトマスク(透過補助マスク)が記載されている。これを図1に示す。ここで、ラインパターンは、遮光部31の両側エッジに隣接して第1および第2半透光部21A、21B(透過率20%、位相差45°の半透光膜による)を設けた構成である。ここで、遮光部31の幅は、1.5μm、両側エッジに隣接する、第1および第2半透光部21A、21Bの幅は、それぞれ1.0μmである。
【0015】
表示装置用フォトマスクとして、このような特徴のあるパターンを有するフォトマスクが望まれるようになり、また、そのCDも微細化傾向にある。FPDデバイスの設計によっては、1μmに満たない、さらに微細なパターンを形成したフォトマスクの検査を行う状況も生じ始めている。こうした微細なパターンの線幅を上記光学式の線幅測定装置で測定することには、大きな困難がある。
【0016】
そこで、本発明者は、微細幅パターンをもつ場合にあっても、表示装置用フォトマスクの転写用パターンに対する線幅測定に生じていた課題を解決すべく、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
透明基板上に転写用パターンを有するフォトマスクの、前記転写用パターンを検査するパターン検査方法であって、
前記転写用パターンは、露光光に対して、透過率T1(%)をもつ第1透過制御部と、透過率T2(%)をもつ第2透過制御部と、透過率T3(%)をもつ第3透過制御部とが、隣接してこの順に配列する検査領域を含み、T1およびT3はそれぞれT2と異なり、T1はT3と同じまたは異なるとき、
前記検査領域に光を照射し、前記検査領域の透過光画像を取得する工程と、
取得した前記透過光画像から、前記検査領域の光強度分布データを得る工程と、
前記光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することにより、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部との境界部分である第1の境界、および、前記第2透過制御部と前記第3透過制御部との境界部分である第2の境界を含む領域における、光強度変化曲線を得る、微分処理工程と、
得られた前記光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングする、フィッティング工程と、
前記フィッティングの結果から、前記第2透過制御部の寸法を求める工程と、を有する、
パターン検査方法である。
【0018】
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
T1>T2>T3である、上記第1の態様に記載のパターン検査方法である。
【0019】
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記第1透過制御部は、前記透明基板が露出してなる透光部を構成し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に半透光膜が形成されてなる半透光部を構成し、
前記第3透過制御部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなる遮光部を構成し、
露光光に対して、前記半透光部の透過率は、10~60%である、上記第1または第2の態様に記載のパターン検査方法である。
【0020】
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記第2透過制御部の幅W(μm)は、0.1≦W≦1.5である、上記第1~第3のいずれか1態様に記載のパターン検査方法である。
【0021】
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記転写用パターンは、ラインアンドスペースパターンを含む、上記第1~第4のいずれか1態様に記載のパターン検査方法である。
【0022】
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記モデル関数は、前記第1の境界に対応する第1モデル関数と、前記第2の境界に対応する第2モデル関数と、を含む、上記第1~第5のいずれか1態様に記載のパターン検査方法である。
【0023】
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記フィッティング工程においては、前記第1モデル関数から得られる第1モデル曲線および前記第2モデル関数から得られる第2モデル曲線を合成した合成曲線と、前記光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、フィッティングを行う、上記第6の態様に記載のパターン検査方法である。
【0024】
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記第1モデル曲線および前記第2モデル曲線を、それぞれガウシアン曲線とする、上記第7の態様に記載のパターン検査方法である。
【0025】
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
前記第1モデル曲線のピーク位置と、前記第2モデル曲線のピーク位置とにより、前記第2透過制御部の寸法を求める、上記第7または第8の態様に記載のパターン検査方法である。
【0026】
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
第1~第9のいずれか1態様に記載のパターン検査方法を含む、フォトマスクの製造方法である。
【0027】
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
第10の態様に記載の製造方法によるフォトマスクを、露光装置によって露光し、前記転写用パターンを被転写体上に転写することを含む、表示装置の製造方法である。
【0028】
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
透明基板上に転写用パターンを有するフォトマスクの、前記転写用パターンを検査するフォトマスクの検査装置であって、
前記転写用パターンが、露光光に対して、透過率T1(%)をもつ第1透過制御部と、透過率T2(%)をもつ第2透過制御部と、透過率T3(%)をもつ第3透過制御部とが、隣接してこの順に配列する検査領域を含み、T1およびT3はそれぞれT2と異なり、T1はT3と同じまたは異なるとき、
前記フォトマスクの検査装置は、
前記転写用パターンの前記検査領域の画像を取得する撮像素子と、
取得した前記画像から、光強度分布データを求め、該光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することによって得られた光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングすることにより、前記検査領域に含まれる、前記第2透過制御部の寸法を算定する、演算手段と、
を有する、フォトマスクの検査装置である。
【0029】
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
T1>T2>T3である、上記第12の態様に記載のフォトマスクの検査装置である。
【0030】
(第14の態様)
本発明の第14の態様は、
前記モデル関数は、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部との境界部分である第1の境界に対応する第1モデル関数と、前記第2透過制御部と前記第3透過制御部との境界部分である第2の境界に対応する第2モデル関数と、を含み、
前記演算手段は、前記第1モデル関数から得られる第1モデル曲線および前記第2モデル関数から得られる第2モデル曲線を合成した合成曲線と、前記光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、フィッティングを行う、上記第12または第13の態様に記載のフォトマスクの検査装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、微細幅パターンにおいても、線幅測定が安定して高精度に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、特許文献3に記載された、ラインアンドスペースパターンを転写用パターンとしてもつフォトマスク(透過補助マスク)の概略平面図である。
図2図2は、光学式の線幅測定装置によって取得した、図1に記載のフォトマスクの透過光画像を示す図である。
図3図3は、図2と同じ転写用パターンの検査領域を、FIB(Focused Ion Beam)修正装置による二次電子画像として得たものを示す図である。
図4図4は、本発明にかかるフォトマスクのパターン検査方法の概要を示す一例を示す図である。
図5図5は、転写用パターンに含まれる検査領域の第2透過制御部(半透光部)の線幅(寸法)を求めるフローを示す図である。
図6図6は、基準マスクの転写用パターンの参照領域を含む領域に対し、光源としてハロゲンランプをもつ光学式線幅測定装置によって光を照射し、撮像素子をCCDとした顕微鏡を用いて得られた透過光画像を示す図である。
図7図7は、5種類の基準マスクを用いて得られた透過光画像から得た参照領域の光強度分布データを曲線で表わした光強度分布曲線を示す図である。
図8図8は、透光部と半透光部との境界についての光強度変化曲線1を示す図である。
図9図9は、半透光部と遮光部との境界についての光強度変化曲線2を示す図である。
図10図10は、横軸を半透光部の透過率T2、縦軸を振幅Aまたは幅σとして、表1のデータをプロットした図である。
図11図11は、一次関数から得られるモデル関数を示す図である。
図12図12は、検査対象マスクの転写用パターンの検査領域を含む領域に対し、光源としてハロゲンランプをもつ光学式線幅測定装置によって光を照射し、撮像素子をCCDとした顕微鏡を用いて得られた透過光画像を示す図である。
図13図13は、検査対象マスクの光強度分布曲線を示す図である。
図14図14は、光強分布度曲線(あるいは、光強度分布データ)に対して、一次微分処理を行い、その絶対値につき、それぞれの境界部分における光強度変化曲線を示す図である。
図15図15は、合成曲線を得る様子を示す図である。
図16図16は、合成曲線から半透光部の線幅を算出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかるフォトマスク、フォトマスクの製造方法および表示装置の製造方法の実施の形態について説明する。
【0034】
表示装置用フォトマスクは、表示装置の高精細化に伴い、微細パターンの導入が益々進む動向にある。
【0035】
表示装置の配線パターンの微細化は、画面の明るさおよび反応速度といった画像品質の向上のみならず、省エネルギーの観点からも有利である。このため、近年、表示装置の配線パターンのさらなる微細化が要望され、これに伴い、表示装置用フォトマスクにも、微細な線幅精度が期待される傾向にある。
【0036】
特許文献3によると、遮光部と透光部とからなるラインアンドスペースパターンをもつバイナリマスクにおいて、ピッチを次第に小さくして微細化すると、これを露光して被転写体上のレジスト膜に対して、正確なラインアンドスペースパターンが転写されなくなることが記載されている。これは、透光部からなるスペースパターンの線幅が微細になることにともない、レジスト膜に到達する光強度が低下するためとされている。
【0037】
そこで、特許文献3では、透明基板上に、透光部と、露光光の一部を透過する半透光膜が形成された半透光部と、遮光性の膜が形成された遮光部とを有する転写用パターンを備えたフォトマスクであって、前記半透光部は、前記遮光部のエッジに隣接して、露光装置により解像されない幅に形成されたもの(透過補助マスク)を提案している。このような構成にすることで、被転写体上に、微細パターンを確実に精緻に転写することが可能となったと記載されている。
【0038】
図1(特許文献3の図10(a)に対応)に示すように、特許文献3のフォトマスクの半透光部は、一定幅を有し、遮光部の対向するエッジにそれぞれ隣接して設けられている。ここで、遮光部のエッジに隣接して形成された半透光部の幅は、好ましくは1μm以下(好ましい範囲は0.1~1μm)とされている。
【0039】
ところで、フォトマスクの製造工程においては、出荷に先立ち、数種の検査を行い、マスクユーザの求める仕様が充足されていることを確認する。この検査のひとつに、CD(線幅)検査がある。このCD検査においては、転写用パターンに含まれる、重要部分の線幅を測定し、得られた線幅の数値を仕様と比較する。
【0040】
線幅測定のためには、測定対象のパターンの輪郭を検知することが有用である。例えば、いわゆるバイナリマスクにおいては、透光部に形成された、遮光部からなるラインパターンの線幅を測定する場合、透光部と遮光部の境界、すなわち透光部と隣接する遮光部のエッジを、撮像画像にて検出する。ところが、特許文献3のフォトマスクは、微細な転写用パターンを含み、さらに、第1、第2半透光部は、隣接する透光部との間、または遮光部との間の、検査光に対する透過率差が小さい。このような転写用パターンを含むフォトマスクにおいては、測定対象のパターンの輪郭(エッジ)の検出が困難であり、線幅測定が容易でないことが、本発明者により見出された。
【0041】
図2には、光学式の線幅測定装置によって取得した、図1に記載のパターンのようなラインパターンを有するフォトマスクの透過光画像を示す(参考例1)。このフォトマスクのラインパターンのうち、図1において一点鎖線にて囲んだ(A)に相当する部分を、検査領域とし、ハロゲンランプを用いて、この領域に検査光(波長λ=400~550nm)を照射したときの透過光による透過光画像を示す。このラインパターンは、幅3.0μmの遮光部の両側に幅0.5μmの半透光部を配置したものであり、該半透光部は、露光光の透過率が30%である。
【0042】
図2から明らかなとおり、この透過光画像では、遮光部の両側のエッジに隣接する所定幅の半透光部を明確に識別することが容易ではない。したがって、この画像から半透光部の線幅測定を行なうことは困難である。
【0043】
なお、図3は、同じ転写用パターンの検査領域を、FIB(Focused Ion Beam)修正装置による二次電子画像として得たものである(参考例2)。FIB修正装置は、ガリウム等のイオン源から得られたイオンビームを集束して、試料上を走査し、発生した二次電子を検出するものである。図3から明らかなとおり、この画像によれば、遮光膜のエッジに隣接して形成された所定幅の半透光部が明確に識別される。したがって、半透光部の線幅測定も可能と考えられる。しかしながら、FIB修正装置で線幅測定を行なうと、転写用パターンにダメージを与えるリスクがある。
【0044】
一方、表示装置の大サイズ化や、生産コスト低減のため、表示装置用フォトマスクは相対的に大サイズ化しており、また、多種なサイズが存在する。このため、上記したCD-SEMを適用することは困難である。
【0045】
このような状況下、微細なパターンの線幅(CD)を、優れた測定装置によって、フォトマスクにダメージを生じさせることなく、高精度に測定することにより、プロセスの管理の精度を高くし、歩留まりや生産効率の向上が望まれている。そこで、本発明者は、このようなニーズに応えるべく、発明を完成した。
【0046】
<パターン検査方法>
図4は、本発明にかかるフォトマスクのパターン検査方法の概要を示す一例である。
【0047】
図1において一点鎖線にて囲んだ(A)の部分のような転写用パターンを有するフォトマスクの場合、透光部と半透光部との境界、および、半透光部と遮光部との境界において、光強度が大きく変わると考えられるため、図1における(A)の部分の透過光画像から得られる光強度分布は、理論的には、図4(a)の点線で示すような分布をなすと考えられる。なお、図4(a)の横軸が位置(図1における横方向の位置であって、撮像面のピクセル位置に対応)を示し、縦軸が、光強度を示す。
【0048】
この図4(a)の点線で示すような光強度分布においては、光強度が急激に変化している箇所が明確である。この光強度が急激に変化している箇所が、透光部と半透光部との境界、あるいは、半透光部と遮光部との境界であるため、この図4(a)に示すような光強度分布が得られれば、半透光部の線幅を容易に求めることができる。
【0049】
ところが、半透光部の線幅が小さい場合の実際の光強度分布は、図4(a)の実線で示すような緩やかな曲線をなす。図4(a)の実線で示す曲線では、透光部と半透光部との境界、および、半透光部と遮光部との境界が不明瞭であり、半透光部の線幅を求めることが容易ではない。
【0050】
しかしながら、本発明者の検討によれば、光強度分布曲線が緩やかであっても、各境界における光強度の変化量、すなわち、光強度分布曲線の傾きの変化は、他の箇所に比べて大きくなるはずである。そこで、本発明者は、光強度分布曲線を微分処理すれば、各境界に対応する位置にピークを有する曲線が得られることに着目した。
【0051】
図4(b)が、図4(a)の実線で示した曲線を微分処理したものの絶対値をプロットすることにより得られる曲線(光強度変化曲線)の概念図であり、縦軸が光強度変化量、横軸が位置を示す。図4(b)においては、各境界に対応する位置に、鋭いピークを見ることができる。
【0052】
したがって、透光部と半透光部との境界に対応するピーク、および、半透光部と遮光部との境界に対応するピーク間の距離を求めることにより、半透光部の線幅を求めることができる。
【0053】
続いて、フォトマスクのパターンの検査方法について、より具体的に説明する。
【0054】
検査対象は、透明基板上に転写用パターン有するフォトマスクの、該転写用パターンである。この転写用パターンは、露光光に対して、透過率T1(%)をもつ第1透過制御部、透過率T2(%)をもつ第2透過制御部、および透過率T3(%)をもつ第3透過制御部がこの順に配列する検査領域を含む。すなわち、第2透過制御部は、第1透過制御部と第3透過制御部の間に介在する。第2透過制御部の一方のエッジは、第1透過制御部に隣接し、第2透過制御部の他方のエッジは、第3透過制御部に隣接する。T1およびT3は、それぞれT2と異なり、T1は、T3と同じまたは異なる。
【0055】
上記露光光は、この転写用パターンをもつフォトマスクを露光する際に用いる露光光であり、この露光光の波長λ(nm)は、250<λ<400とすることができる。例えば、露光光は、i線、h線およびg線の少なくともひとつを含むものとすることができる。また、i線、h線およびg線を含むブロード波長域の光を、露光光とすることもできる。複数波長の光が露光光に含まれる場合は、i線~g線の領域に含まれるいずれかの波長を代表波長とすることができ、この代表波長(例えばg線)に対する透過率として、T1、T2、T3を表現することができる。
【0056】
本実施形態では、T1>T2>T3であり、かつ、第1透過制御部が透光部、第2透過制御部が半透光部、第3透過制御部が遮光部である場合を一例として、説明する。したがって、本実施形態では、透光部における光の透過率T1を100%としたときの、第2透過制御部である半透光部の光の透過率をT2とし、第3透過制御部である遮光部の光の透過率をT3とする。但し、本実施形態の遮光部の光の透過率T3は実質的にゼロ(例えば、光学濃度OD≧3)である。そして、本実施形態では、第2透過制御部である半透光部の寸法(線幅)を求める。
【0057】
透光部は、透明基板が露出してなるものであることができる。遮光部は、透明基板上に少なくとも1つの遮光膜が形成されてなるものであることができる。遮光部においては、遮光膜上、あるいは、透明基板と遮光膜との間に、遮光膜とは異なる膜(例えば、後述の半透光膜)が形成されていてもよい。
【0058】
遮光膜の素材に特に制限はないが、好ましくは、以下のものが使用できる。例えば、遮光膜の素材としては、CrまたはCr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)の他、Ta、Mo、Wおよびそれらの化合物(例えば、TaSi、MoSi、WSiまたはそれらの窒化物、酸化窒化物などの金属シリサイド化合物)などを好ましく使用することができる。また、これらの材料は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
遮光膜は、その表面側(透明基板と反対側)の表層に、反射防止層などの機能層を有することができる。反射防止層は、レジスト膜における描画光の反射を抑えることで描画精度を高めることができる。反射防止層は、例えば遮光膜がCrを含むときは、Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物のいずれか少なくとも一種を含む層として設けることができる。
【0060】
反射防止層は、反射防止層を含む遮光膜の膜厚方向の組成変化により形成することができる。この組成変化は、遮光膜の厚さ方向に連続的または段階的であってもよいし、遮光膜の反射防止層と反射防止層以外の層との間に明確な境界があってもよい。
【0061】
半透光部は、透明基板上に、半透光膜が形成されてなるものであることができる。本実施形態においては、半透光部は、透光部の透過光量の補助する機能を有する。半透光膜の透過率T2(%)は、過度に小さいと、透光部の透過光量の補助機能を十分に発揮できず、透過率が大きすぎると、半透光膜の膜厚制御等、マスク製造の難度が高くなる。この点を考慮すると、半透光部の透過率T2(%)は、例えば、2≦T2≦60であることができる。半透光部の透過率T2(%)は、好ましくは、10≦T2≦60、より好ましくは10≦T2≦35、さらに好ましくは15≦T2≦30である。
【0062】
半透光部の線幅(寸法)W(μm)は、好ましくは0.1≦W≦1.5、さらに好ましくは0.3≦W≦1.0である。半透光部の線幅が大きすぎると、このフォトマスクを用いて、パターン転写を行ったとき、被転写体上においてレジストパターンの側面形状が傾斜する可能性がある一方、半透光部の線幅が小さすぎると、透光部における透過光量を補助する機能が不十分となる。半透光部の線幅が上記範囲内にあれば、レジストパターンの側面形状の傾斜を抑制でき、良好な形状のレジストパターンを形成することができるとともに、透光部における透過光量を十分に補助することができる。
【0063】
また、半透光部は、上記露光光の代表波長に対して、位相シフト量φ(度)が、φ≦90である。半透光部の位相シフト量φは、好ましくは、0<φ≦90であり、より好ましくは、5≦φ≦60、さらに好ましくは、5≦φ≦45である。半透光部の位相シフト量φが上記範囲内にあることにより、半透光部と透光部との境界における光強度の相殺が抑えられ、透光部における透過光量を補助することができる。このため、パターン寸法が微細化しても、フォトマスクを露光する際に、透光部の光強度ピーク位置の低下が抑止され、良好な形状のレジストパターンを形成することができる。
【0064】
半透光膜の素材としては、例えば、Cr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)、Si化合物(SiO、SOG)、金属シリサイド化合物(TaSi、MoSi、WSiまたはそれらの窒化物、酸化窒化物など)、およびTiONなどのTi化合物を使用することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本実施形態にかかるフォトマスクのパターン検査方法は、
転写用パターンに光を照射し、検査領域の透過光画像を取得する工程と、
取得した前記透過光画像から、前記検査領域の光強度分布データを得る工程と、
前記光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することにより、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部との境界部分である第1の境界、および、前記第2透過制御部と前記第3透過制御部との境界部分である第2の境界を含む領域における、光強度変化曲線を得る、微分工程と、
得られた前記光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングする、フィッティング工程と、
前記フィッティングの結果から、前記第2透過制御部の寸法を求める工程と、
を有する。
【0066】
図5は、転写用パターンに含まれる検査領域の第2透過制御部(半透光部)の線幅(寸法)を求めるフローを示す。図5図16を参照し、各工程について、具体的に説明する。
【0067】
まず、半透光部の線幅を求める際に用いるモデル関数を作成する。
【0068】
モデル関数を作成するために、複数の基準マスクを用意する。この基準マスクは、透光部(第1透過制御部)と半透光部(第2透過制御部)とが隣接する部分を含む転写用パターンを有するフォトマスク、および、半透光部(第2透過制御部)と遮光部(第3透過制御部)とが隣接する部分を含む転写用パターンを有するフォトマスクを含むことができる。本実施形態では、基準マスクとして、透光部(第1透過制御部)と半透光部(第2透過制御部)とが隣接する部分、および、半透光部(第2透過制御部)と遮光部(第3透過制御部)とが隣接する部分のいずれをも含む転写用パターンを有するフォトマスクを用いる。透光部(第1透過制御部)および遮光部(第3透過制御部)は、必ずしも同じ半透光部(第2透過制御部)に隣接していなくてもよく、異なる半透光部(第2透過制御部)に隣接していてもよい。本実施形態では、この転写用パターンにおいて、透光部(第1透過制御部)、半透光部(第2透過制御部)、および遮光部(第3透過制御部)がこの順に配列する領域を、参照領域とする。この参照領域における半透光部の線幅は、十分に大きいことが好ましい。十分に大きいとは、後述のモデル関数の算出に支障のない程度であることを意味する。なお、透光部(第1透過制御部)と半透光部(第2透過制御部)とが隣接する部分、および、半透光部(第2透過制御部)と遮光部(第3透過制御部)とが隣接する部分は、必ずしも1つの参照領域に含まれていなくてもよい。この場合、透光部(第1透過制御部)と半透光部(第2透過制御部)とが隣接する部分を含む領域を第1参照領域、半透光部(第2透過制御部)と遮光部(第3透過制御部)とが隣接する部分を含む領域を第2参照領域とし、これら2つの参照領域それぞれに対して、後述の透過光画像を取得し、光強度分布曲線を作成すればよい。
【0069】
(1)基準マスクの透過光画像取得
複数の基準マスクに対し、その転写用パターンの画像を取得する。なお、本実施形態では、画像の一例として、透過光画像を用いるが、これに限定されない。本発明の効果・作用を妨げない限り、透過光画像とは異なる画像(例えば、反射光画像)を用いてもよい。
【0070】
本実施形態では、基準マスクの転写用パターンの参照領域を含む領域に対し、光源としてハロゲンランプをもつ光学式線幅測定装置によって光を照射し、撮像素子をCCDとした顕微鏡を用いて、透過光画像を得る(図6)。このときの光(検査光)の波長は、好ましくは、400~550nmとすることができ、例えば、525nmである。
【0071】
なお、モデル関数を求める目的で、ここでは、半透光部の透過率が異なる、複数の基準マスクを用意し、これらの基準マスクの転写用パターンの透過光画像(図示せず)をそれぞれ取得する。本実施形態では、g線の光に対する複数の基準マスクの半透光部の透過率、すなわちT2は、透光部の透過率T1を100%としたとき、それぞれ28、38、50、67、および79%とした。遮光部の透過率T3は実質的にゼロである。
【0072】
図6において、透光部と半透光部との境界、および、半透光部と遮光部との境界を含む領域(図6の点線で囲まれた領域)を、参照領域とする。
【0073】
(2)基準マスクの光強度分布曲線作成
上記5種類の基準マスクを用いて得られた透過光画像から、参照領域の光強度分布データを得る(図示せず)。さらに、この光強度分布データを曲線で表わした光強度分布曲線(図7)を得る。
【0074】
例えば、上記(1)で得た透過光画像の参照領域内に、透光部と半透光部との境界線に垂直な直線、あるいは、半透光部と遮光部との境界線に垂直な直線(例えば、図6の矢印部分)を引き、公知の画像処理ソフトウエアを用いて、この直線上の光強度を256階調に数値化する。これにより、図7のような光強度分布曲線を作成することができる。光強度を得るための該直線は、測定したい寸法の方向と平行となるように、参照領域内の任意の位置に、設定することができる。なお、図7においては、縦軸は、256階調に数値化した光強度を示し、横軸は、透過光画像におけるピクセル位置を示す。
【0075】
(3)透光部-半透光部境界、および半透光部-遮光部境界の光強度変化曲線作成
(2)で得た光強度分布曲線(あるいは、光強度分布データ)に対して、一次微分処理を行ない、光強度変化曲線(光強度変化データ)を得る(微分処理工程)。透光部と半透光部との境界についての光強度変化曲線1を図8に、半透光部と遮光部との境界についての光強度変化曲線2を図9に、それぞれ示す。なお、図8および図9においては、縦軸が光強度変化を示し、横軸は、図7と同様に、ピクセル位置を示す(但し、縦軸は光強度変化の絶対値とし、正の値にしている)。
【0076】
(4)ガウシアン関数にてフィッティング(最小二乗法)
(3)で得た光強度変化曲線を、それぞれ既知の関数により近似する。ここでは、下記に示すガウシアン関数(式(1))により、最小二乗法を用いてフィッティングし、それぞれの光強度変化曲線に対応するガウシアン関数の係数Aとσを求める。
【数1】
【0077】
ここで、y:光強度変化、A:ガウシアン関数の振幅、σ:ガウシアン関数の標準偏差、x:ピクセル位置、p:ガウシアン関数のx方向におけるピーク位置とする。なお、標準偏差σはガウシアン関数の幅を表す指標として用いることができ、本明細書では、幅σとして記載する。
【0078】
フィッティングの結果は以下のとおりであった。
【表1】
【0079】
(5)モデル関数作成
横軸を半透光部の透過率T2、縦軸を振幅Aまたは幅σとして、表1のデータをプロットしたものを、図10に示す。透光部と半透光部との境界および遮光部と半透光部との境界に対して得られた上記のデータを、それぞれ一次関数に近似し、この一次関数の傾きaと、切片bを求める。すなわち、振幅Aについては、A=a・T2+b、幅σについては、σ=a・T2+bとなるように近似する。これにより、それぞれの振幅Aおよび幅σに対して、傾きaおよび切片bを求める。
【0080】
図10では、左側の縦軸が振幅A、右側の縦軸が幅σを示し、直線が近似により得られた一次関数を示す。なお、図10の凡例においては、Qz-HTが透光部と半透光部との境界部分、HT-Crが半透光部と遮光部との境界部分を表している。
【0081】
以下に、近似により得られた傾きaおよび切片bを示す。
【表2】
【0082】
得られた一次関数から、半透光部の透過率T2に応じて、ガウシアン関数の係数Aとσとを得ることができる。すなわち、透光部と半透光部との境界部分、および、半透光部と遮光部との境界部分における、半透光部の透過率T2に応じたモデル関数としての、ガウシアン関数をそれぞれ得ることができる。
【0083】
例えば、半透光部の透過率T2が、10、20、30、40、50、60%である場合、上記の一次関数から得られるモデル関数は、図11のような曲線を示す。同様に、寸法測定が必要な半透光部の透過率T2がわかれば、この透過率T2と上記の一次関数とから、半透光部の線幅算出に適したモデル関数を得ることができる。図11においては、縦軸が光強度変化を示し、横軸が、図7と同様に、ピクセル位置を示す。
【0084】
(6)検査対象マスクの透過光画像取得
検査対象マスクの転写用パターンの検査領域を含む領域に対し、光源としてハロゲンランプをもつ光学式線幅測定装置によって光を照射し、撮像素子をCCDとした顕微鏡を用いて、透過光画像を得る(図12)。なお、本実施形態では、検査精度の低下を抑制するために、検査対象マスクの透過光画像を得る際の撮像条件(光学系、検査光の波長など)は、基準マスクの透過光画像を取得するときの撮像条件と同様とした。
【0085】
図12において、透光部と半透光部との境界、および、半透光部と遮光部との境界を含む領域(図12の点線で囲まれた領域)を、検査領域とする。なお、本実施形態では、検査対象マスクの検査領域は、透光部と半透光部との境界(第1の境界)、および、半透光部と遮光部との境界(第2の境界)をそれぞれ2つ有する場合を、一例として説明する。すなわち、本実施形態にかかる検査対象マスクの転写用パターンは、遮光部の第1のエッジに隣接する第1半透光部と、遮光部の第2のエッジに隣接する第2半透光部と、を含む。この第1半透光部と第2半透光部とは、それぞれ透光部のエッジにも隣接している。すなわち、第1半透光部および第2半透光部は、それぞれ透光部と半透光部との間に介在する。
【0086】
(7)検査対象マスクの光強度分布曲線作成
上記(2)の基準マスクの光強度分布曲線の作成と同様に、取得した検査対象マスクの透過光画像において、検査領域内の任意の位置に半透光部の幅方向と平行な直線(図12の実線矢印)を引き、該直線上の光強度を256階調に数値化する。これにより、検査領域の光強度分布データ(図示せず)を得る。これにより、図13のような光強度分布曲線を得る。
【0087】
図13においては、縦軸は、光強度を示し、横軸は、ピクセル位置(図12における横方向の位置)を示す。
【0088】
(8)検査領域の光強度変化曲線作成
上記(3)と同様に、上記(7)で作成した光強分布度曲線(あるいは、光強度分布データ)に対して、一次微分処理を行い、その絶対値につき、それぞれの境界部分における、光強度変化曲線(図14)として作成する。図14においては、縦軸が光強度変化を示し、横軸は、図13と同様に、ピクセル位置を示す。後述の図15および図16も同様である。
【0089】
(9)モデル関数にてフィッティング(合成曲線作成)
予め測定した検査対象マスクの半透光部の透過率T2に応じて、上記(5)で求めた透光部と半透光部との境界におけるモデル関数(透光部-半透光部のモデル関数)、および、半透光部および遮光部との境界におけるモデル関数(半透光部-遮光部のモデル関数)を、上記で求めたモデル関数から選択する。あるいは、一次関数を予め保持しておき、この一次関数と半透光部の透過率T2とから、対応するモデル関数を算出してもよい。
【0090】
そして、図15に示すように、透光部-半透光部のモデル関数(第1モデル関数)が表す曲線(第1モデル曲線)および半透光部-遮光部のモデル関数(第2モデル関数)が表す曲線(第2モデル曲線)のそれぞれの光強度変化を足し合わせた合成曲線と、上記(8)で取得した検査対象マスクの光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、最小二乗法によって、2つのモデル関数(モデル曲線)を合成してフィッティングする。すなわち、上述の合成曲線と検査対象マスクの光強度変化曲線との差分が最も小さくなるように、第1モデル曲線および第2モデル曲線の横軸方向の相対位置を決定する。なお、モデル曲線(第1モデル曲線および第2モデル曲線)は、ガウシアン曲線である。
【0091】
本実施形態における検査対象マスクの検査領域は、図12に示すように、2つの半透光部(第1半透光部および第2半透光部)を含むが、これら2つの半透光部の線幅の算出方法は同様であるため、図15および後述の図16では、第1半透光部(図12における左側の半透光部、すなわち、図13および14において点線で囲まれた部分)についてのみ示し、第2半透光部については省略している。
【0092】
(10)半透光部の線幅算出
図16に示すように、上記(9)において合成された2つのモデル関数のピークが、透光部と半透光部との境界、および、半透光部と遮光部との境界に相当する。したがって、この2つのモデル関数のピークの位置を求める。そして、この2つのピーク間の距離を求めることにより、半透光部の線幅(寸法)を得ることができる。
【0093】
そこで、まず、上記2つのピークに対応するピクセル位置を、それぞれ求める。このピクセル位置から、2つのモデル関数のピーク間のピクセル数を算出する(下記の式(2))。
(ピーク間のピクセル数)=|(透光部-半透光部のモデル関数のピーク位置)-(半透光部-遮光部のモデル関数のピーク位置)| ・・・式(2)
【0094】
1ピクセルあたりの幅(ピクセルサイズ)は、あらかじめ求めておくことができる。例えば、基準マスクの光強度分布を撮像した撮像装置のピクセルサイズを求めておき、検査対象マスクに対して同撮像条件を採用すれば、検査対象マスクの画像に対して該ピクセルサイズをそのまま採用できる。このピクセルサイズに、得られたピーク間のピクセル数をかけることにより(下記の式(3))、検査領域内における半透光部の線幅を求めることができる。例えば、ピーク間のピクセル数が8.0pixel、ピクセルサイズが0.03μm/pixelの場合、ピーク間距離、すなわち、半透光部の線幅は、0.24μmとなる。
(線幅[μm])=(ピーク間距離[pixel])・(ピクセルサイズ[μm/pixel]) ・・・式(3)
【0095】
以上により、検査対象パターンである第2透過制御部としての半透光部の線幅を求めることができる。
【0096】
<フォトマスクの検査装置>
上記のパターン検査方法は、以下のフォトマスクの検査装置を用いて行うことができる。すなわち、本発明のフォトマスクの検査装置は、転写用パターンが、透光部(第1透過制御部)、半透光部(第2透過制御部)、および遮光部(第3透過制御部)が隣接してこの順に配列する検査領域を含むとき、検査領域の画像を取得する撮像素子と、撮像素子によって取得した検査領域の画像から、光強度分布データを求め、該光強度分布データから求めた光強度分布曲線を微分処理することによって得られた光強度変化曲線を、モデル関数にフィッティングすることにより、検査領域に含まれる、半透光部(第2透過制御部)の寸法を算定する、演算手段と、を有する。
【0097】
上記のフォトマスクの検査装置は、検査光に対する第2透過制御部の透過率とモデル関数とを対応付けて保持するモデル関数保持手段を含むことができる。あるいは、検査装置は、上記の一次関数を保持する一次関数保持手段を含んでもよい。
【0098】
モデル関数保持手段および一次関数保持手段は、必ずしも検査装置内に設けられる必要はなく、検査装置とは別に設けられてもよい。例えば、外部のコンピュータを、モデル関数保持手段および/または一次関数保持手段として用いてもよい。検査装置は、取得したモデル関数または一次関数を演算手段に入力する関数入力手段を含むことができる。
【0099】
演算手段は、入力された一次関数と、第2透過制御部の検査光に対する透過率とにもとづいて、第2透過制御部に対応するモデル関数(第1モデル関数および第2モデル関数)を算出してもよい。そして、演算手段は、第1モデル曲線のピーク位置および第2モデル関数のピーク位置を求め、これらのピーク位置から、半透光部(第2透光制御部)の寸法を算出することができる。
【0100】
本発明にかかるパターン検査方法およびフォトマスクの検査装置は、フォトマスクにダメージを与えることなく、安定して高精度に線幅を測定することができる。また、大サイズのフォトマスクの微細な転写用パターンの線幅測定が行なえる利点がある。すなわち、本発明によれば、転写用パターンの測定によって生じる工程への負荷およびコストを低減しつつ、安定して高精度に転写用パターンの線幅を測定することが可能である。
本発明は、パターン幅が小さく、例えば、寸法(線幅)W(μm)が、0.1≦W≦1.5(特には、0.3≦W≦1.0μm)である場合であって、光学式の線幅測定装置では測定が困難な場合においても、安定して高精度に測定することができる。
又は光の透過率の異なる隣接する2つの領域間での光の透過率差が相対的に小さく、光強度曲線を得ても、その境界が明確に認識できない場合にあっても、転写用パターンの線幅測定を精緻に行うことができる。
例えば、第1透過制御部と第2透過制御部との光の透過率差(T1(%)-T2(%)の絶対値)が、0<|T1(%)-T2(%)|≦80(ポイント)を満たす場合、および/または、第2透過制御部と第3透過制御部との光の透過率差(T2(%)-T3(%)の絶対値)が、0<|T2(%)-T3(%)|≦30(ポイント)を満たす場合に、本発明の効果が顕著である。
【0101】
<フォトマスクの製造方法>
本発明は、上述のパターン検査方法により検査されたフォトマスクの製造方法を含む。すなわち、本発明のフォトマスクの製造方法は、上述のパターン検査方法を含むことができる。
【0102】
フォトマスクの製造方法の一例について、以下に説明する。ここでの、フォトマスクは、上述の検査方法において検査対象としたフォトマスクと同様の構成を有することができる。
【0103】
まず、フォトマスクブランクを準備する。ここでは、透明基板上に、半透光膜と遮光膜とをこの順に形成し、さらに遮光膜上にフォトレジスト膜を形成したものとする。ここでのフォトマスクブランクは、遮光膜および/または半透光膜の一部が、すでにパターニングされたフォトマスク中間体であってもよい。なお、フォトマスクブランクの遮光膜上には、フォトレジスト膜が形成されていなくてもよい。この場合、後述の描画工程の前に、フォトレジスト膜を塗布する工程を追加すればよい。
【0104】
描画機を用い、半透光部を形成するためのパターンをフォトレジスト膜に描画する。例えば、レーザ描画機を用いることができる。
【0105】
次に、上記の描画工程を経たフォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する。
【0106】
そして、上記レジストパターンをマスクにして、遮光膜用エッチャントで遮光膜をエッチングする。さらに、半透光膜用エッチャントで半透光膜をエッチングする。遮光膜および半透光膜のエッチングには、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれを用いてもよいが、表示装置用のフォトマスクは大型であるため、ウエットエッチングが好適である。
【0107】
次に、上記レジストパターンをマスクにして、遮光膜に対して2回目のエッチングを行う。すなわち、遮光膜用ウエットエッチャントで遮光膜をサイドエッチングする。ここで、所定幅の遮光部が形成される。さらに、サイドエッチングにより遮光部のエッジが後退するため、一部の半透光膜が露出する。これにより、所定幅の半透光部が、遮光部に隣接して、形成される。
【0108】
その後、レジストパターンを剥離し、検査前のフォトマスクが作成される。
【0109】
次に、この検査前のフォトマスクを、上述の検査方法により、検査する。例えば、このフォトマスクの転写用パターンの所望の位置における半透光部の線幅を測定する。そして、この半透光部の線幅が仕様を満たすフォトマスクを完成品とすることができる。
【0110】
上述したフォトマスクの製造方法の場合には、半透光膜と遮光膜とは、互いにエッチング選択性のある材料を用いる。また、2回目の遮光膜のエッチング工程においては、等方性エッチングによるサイドエッチングを利用するため、ウエットエッチングを適用することが好ましい。
【0111】
本発明のフォトマスクの製造方法により製造されたフォトマスクの転写用パターンは、透光部と、半透光部と、遮光部と、を有することができる。この転写用パターンは、半透光部として、第1透光部と、第2半透光部と、を有してもよい。
【0112】
上述の第1半透光部および第2半透光部は、遮光部を中心に対称に、対向して形成される。また、第1半透光部および第2半透光部は、露光装置によって解像されない一定幅であって、互いに等しい幅を有することが好ましい。ここで、互いに等しい幅とは、好ましくは、第1半透光部の線幅と第2半透光部の線幅との相違が0.1μm以内であり、より好ましくは、0.05μm以内である。このようにすることで、透光部に与える透過光量の補助作用が対称になり、被転写体に形成されるパターンの線幅精度を精緻に制御することができる。
【0113】
上記のようなフォトマスクは、例えば、被転写体上にライン幅および/またはスペース幅が3μm未満のラインアンドスペースパターンを形成することに用いることができる。ここで、ラインパターンとは、遮光部と、半透光部(第1半透光部、第2半透光部)とからなる構成であることができ、スペースパターンは、透光部からなる構成であることができる。ラインアンドスペースパターンのピッチP(μm)は、0<P≦10、より具体的には、4<P≦6とすることができる。あるいは、このフォトマスクの転写用パターンは、ホールパターンを含むことができ、このホールパターンを用いて、被転写体上に3μm未満の径を有するホールを形成することができる。
【0114】
上記のようなフォトマスクの用途には特に制約がない。本発明の製造方法によるフォトマスクは、表示装置製造用のフォトマスクとして、特に有利に用いることができる。例えば、本発明の製造方法によるフォトマスクは、表示装置に用いる各レイヤ(例えば、画素レイヤや、カラーフィルタのフォトスペーサレイヤ)、および、所定のレイヤの端部近傍に設けられる引き出し配線部などの形成に、有利に用いられることができる。すなわち、CDが1.5μm以下の微細部分を含む転写用パターンを有するフォトマスク、或いは、該微細部分が半透光部であるような、転写用パターンを有するフォトマスクなどに、本発明の手法は好適に用いることができる。
【0115】
本発明は、上述の本発明の製造方法により製造したフォトマスクを用いた表示装置の製造方法を含む。例えば、本発明の表示装置の製造方法は、上述の実施形態のパターン検査方法を含む製造方法により製造したフォトマスクを用意する工程と、露光装置を用いて、前記フォトマスクを露光し、前記転写用パターンを、被転写体に転写する工程とを有することができる。この製造方法によって製造される表示装置とは、表示装置を構成する各種デバイスも含む。
【0116】
本発明のフォトマスクの製造方法により製造されるフォトマスクが備える転写用パターンを、被転写体に転写する際に用いる露光機としては、いわゆるLCD(Liquid Crystal Display)用あるいはFPD用など表示装置用露光装置とされる、等倍のプロジェクション露光装置、または、プロキシミティ露光装置とすることができる。表示装置には、上記の他に、フォルダブルディスプレイおよびローラブルディスプレイを含んでもよい。
【0117】
上記露光装置の光学系としては、プロジェクション露光装置の場合、NA(開口数)が0.08~0.15、コヒレンシファクタ(σ)の値が、0.5~0.9の範囲のものを好適に使用することができる。
【0118】
<変形例>
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0119】
上述の実施形態で採用したT1>T2>T3の場合、第1透過制御部、第2透過制御部、第3透過制御部により構成される転写用パターンには3種の透過率が存在する。その一方、T1=T3の場合、第1透過制御部と第3透過制御部との透過率は等しくなる。つまり、第2透過制御部は、互いに等しい第1透過制御部と第3透過制御部の間に介在する。その結果、転写用パターンに含まれる第1透過制御部、第2透過制御部、第3透過制御部により構成される転写用パターンには2種の透過率が存在する。2種の透過率が存在する場合であっても、本発明の技術的思想を適用可能である。
【0120】
具体的に説明すると、第2透過制御部と第3透過制御部との境界部分である第2の境界における光強度変化曲線は、第1透過制御部と第2透過制御部との境界部分である第1の境界における光強度変化曲線と同様となる。
【0121】
上述の実施形態では、検査対象マスクの透過光画像を得る際の撮像条件(光学系、検査光の波長など)は、基準マスクの透過光画像を取得するときの撮像条件と同様としたが、本発明はそれに限定されない。基準マスクの光強度分布曲線と検査対象マスクの光強度分布曲線とが紐づけされていれば本発明の技術的思想を適用可能である。例えば、検査対象マスクと基準マスクとで撮像条件が異なったとしても、その撮像条件の相違を補正した後のモデル関数を使用してもよい。
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