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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】内視鏡及び内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20230217BHJP
   A61B 1/07 20060101ALI20230217BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230217BHJP
   A61B 1/05 20060101ALI20230217BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61B1/06 531
A61B1/07 733
A61B1/00 513
A61B1/05
A61B1/045 622
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019185359
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058468
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】新島 義之
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075562(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203626(WO,A1)
【文献】特開平05-297288(JP,A)
【文献】特開2016-202441(JP,A)
【文献】特開2006-034543(JP,A)
【文献】特開2001-258823(JP,A)
【文献】特開2005-073708(JP,A)
【文献】特開2011-024901(JP,A)
【文献】特開2009-219573(JP,A)
【文献】特開2019-130049(JP,A)
【文献】特開2004-321244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、
前記撮像部の外側に並設された複数の第1の発光素子と、
前記第1の発光素子の並設域の外側に並設された複数の第2の発光素子と、
前記観察窓の周囲に配設され、前記第1の発光素子及び第2の発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、
前記第1の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、
前記第2の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、
前記第1の照明光は、狭帯域光であり、
前記第2の照明光は、白色光である
内視鏡。
【請求項2】
挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、
前記撮像部の外側に並設されており、光源から入射端に入射した光を出射する複数の出射端を有するライトガイドファイバと、
前記出射端の並設域の外側に並設された複数の発光素子と、
前記観察窓の周囲に配設され、前記出射端及び発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、
前記ライトガイドファイバと前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記光源から前記入射端に入射した光により前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、
前記発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、
前記第1の照明光は、狭帯域光であり、
前記第2の照明光は、白色光である
内視鏡。
【請求項3】
前記第2光出力部による前記第2の照明光の角度範囲は、前記撮像部の視野角以上である請求項1または請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記撮像部は、180°以上の視野角を有する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の内視鏡。
【請求項5】
挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設された複数の第1の発光素子と、前記第1の発光素子の並設域の外側に並設された複数の第2の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記第1の発光素子及び第2の発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、前記第1の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記第2の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である内視鏡と、
前記第1光出力部又は第2光出力部による照明下での前記撮像部の撮像画像を周縁部をマスク処理して出力する画像処理部とを備える
内視鏡装置。
【請求項6】
挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設されており、光源から入射端に入射した光を出射する複数の出射端を有するライトガイドファイバと、前記出射端の並設域の外側に並設された複数の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記出射端及び発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、前記ライトガイドファイバと前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記光源から前記入射端に入射した光により前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である内視鏡と、
前記第1光出力部又は第2光出力部による照明下での前記撮像部の撮像画像を周縁部をマスク処理して出力する画像処理部とを備える
内視鏡装置。
【請求項7】
前記第1光出力部による照明下での撮像画像又は第2光出力部による照明下での撮像画
像を交互に取得し、並べて表示させる請求項5または請求項6に記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡及び内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、被検者の体腔内に挿入することで所望の箇所の観察、処置を可能とする医療用機器であり、体腔内に挿入される挿入管の先端部に組み込まれた撮像部と、該撮像部の撮像視野を照明する照明装置とを備えている。特許文献1には、180°以上の広い角度範囲での照明を実現する照明装置を備え、広視野角での観察を可能とした内視鏡が開示されている。
【0003】
また近年においては、白色光下での観察に加えて、狭帯域光(紫色光、緑色光等)による照明下で得られる画像強調観察を可能とした内視鏡も普及しており、特許文献2には、白色光及び狭帯域光を交互に照射して画像を取得する内視鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-16021号公報
【文献】特開2016-128024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された白色光及び狭帯域光による照明下での観察は、特許文献1に開示された広視野角の内視鏡においても可能である。しかしながら、狭帯域光のスペクトルは限定されており、白色光と同一条件下では視野全体への必要光量の確保が難しい。
【0006】
本開示の目的は、白色光及び狭帯域光の照明下での広視野角の観察を良好に行わせ得る内視鏡及び内視鏡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る内視鏡は、挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設された複数の第1の発光素子と、前記第1の発光素子の並設域の外側に並設された複数の第2の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記第1の発光素子及び第2の発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備える。
【0008】
また、前記第1の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記第2の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である。
【0009】
本開示に係る内視鏡は、挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設されており、光源から入射端に入射した光を出射する複数の出射端を有するライトガイドファイバと、前記出射端の並設域の外側に並設された複数の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記出射端及び発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、前記ライトガイドファイバと前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記光源から前記入射端に入射した光により前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である。
【0010】
また、前記第2光出力部による前記第2の照明光の角度範囲は、前記撮像部の視野角以上である。
【0011】
また、前記撮像部は、180°以上の視野角を有する。
【0013】
本開示に係る内視鏡装置は、挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設された複数の第1の発光素子と、前記第1の発光素子の並設域の外側に並設された複数の第2の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記第1の発光素子及び第2の発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、前記第1の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記第2の発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である内視鏡と、前記第1光出力部又は第2光出力部による照明下での前記撮像部撮像画像を周縁部をマスク処理して出力する画像処理部とを備える。
【0014】
本開示に係る内視鏡装置は、挿入管の先端部に組み込まれ、観察窓を通して観察箇所を撮像する撮像部と、前記撮像部の外側に並設されており、光源から入射端に入射した光を出射する複数の出射端を有するライトガイドファイバと、前記出射端の並設域の外側に並設された複数の発光素子と、前記観察窓の周囲に配設され、前記出射端及び発光素子の並設域を覆う配光レンズとを備え、前記ライトガイドファイバと前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記光源から前記入射端に入射した光により前記観察箇所を照明する第1の照明光を出力する第1光出力部を構成し、前記発光素子と前記配光レンズとは、前記観察窓の周囲に配設され、前記観察箇所を照明する第2の照明光を前記第1光出力部よりも大きい角度範囲に出力する第2光出力部を構成し、前記第1の照明光は、狭帯域光であり、前記第2の照明光は、白色光である内視鏡と、前記第1光出力部又は第2光出力部による照明下での前記撮像部撮像画像を周縁部をマスク処理して出力する画像処理部とを備える。
【0015】
また、前記第1光出力部による照明下での撮像画像又は第2光出力部による照明下での撮像画像を交互に取得し、並べて表示させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、白色光及び狭帯域光の照明下での広視野角の観察が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】内視鏡の外観図である。
図2】挿入管の先端部の拡大図である。
図3】第1のLED及び第2のLEDの配置例を示す平面図である。
図4】内視鏡装置のブロック図である。
図5】撮像処理の流れを示す説明図である。
図6】撮像処理の流れを示す説明図である。
図7】撮像処理の流れを示す説明図である。
図8】実施の形態2に係る内視鏡の挿入管の先端部の拡大図である。
図9】光ファイバ束及びLEDの配置例を示す平面図である。
図10】実施の形態3に係る内視鏡の挿入管の先端部の拡大図である。
図11】光源部の構成例を示す模式図である。
図12】実施の形態4に係る光源部の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、内視鏡の外観図である。図示の如く内視鏡1は、挿入管2、操作部3、ユニバーサルチューブ4及びコネクタ部5を備えている。挿入管2は、体腔内に挿入される部分であり、長尺の軟性部20と、該軟性部20の一端に湾曲部21を介して連結された先端部22とを備える。軟性部20の他端は、円筒形の連結部23を介して操作部3に連結されている。ユニバーサルチューブ4は、操作部3に一端を連結され挿入管2と異なる向きに延びており、コネクタ部5は、ユニバーサルチューブ4の他端に連設されている。
【0019】
操作部3は、使用者により把持されて各種の操作を行うために設けてあり、湾曲操作ノブ30、複数の操作ボタン31等を備えている。湾曲操作ノブ30は、連結部23及び軟性部20の内部に通したワイヤ(図示せず)により湾曲部21に連結されている。湾曲部21は、湾曲操作ノブ30の操作により軸断面内で互いに直交する2方向に湾曲し、体腔内に挿入された先端部22の向きが変化する。
【0020】
図2は、挿入管2の先端部22の拡大図であり、要部を破断して示してある。先端部22は、湾曲部21に一側を固定された筒形のハウジング24を備えている。ハウジング24の他側は、中央の観察窓25と、該観察窓25の周囲を囲う環状の配光レンズ26とによって覆われている。ハウジング24の内部には、観察窓25の内側に面して撮像部6が組み込まれ、配光レンズ26の内側に面して照明部7が組み込まれている。
【0021】
撮像部6は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )等の撮像素子と、該撮像素子の撮像面上に結像させるための光学系とを備え、観察窓25を通して体腔内を撮像する。観察窓25は、広角の対物レンズであり、撮像部6は、観察窓25を含む光学系の設定により、180°以上の視野角での撮像が可能となるように構成されている。図2中の2点鎖線は、撮像部6の撮像視野を示している。
【0022】
照明部7は、撮像部6の周囲を囲う環状の基板70と、配光レンズ26に対向する基板70の一面上に実装された第1のLED71及び第2のLED72とを備える。図3は、第1のLED71及び第2のLED72の配置例を示す平面図である。第1のLED71及び第2のLED72は、夫々複数(図においては8個)設けてあり、第1のLED71は、環状をなす基板70の内周側(撮像部6に近い側)に略等間隔で配置され、第2のLED72は、第1のLED71の並設域の外側に略等間隔で配置されている。図3中には、撮像部6及び観察窓25の位置が2点鎖線により示してある。
【0023】
図2の下半部は、第1のLED71の配設位置における断面を示し、図2の上半部は、第2のLED72の配設位置における断面を示している。配光レンズ26は、観察窓25の周縁部から外向きに広がり、湾曲部分を経てハウジング24の周壁に連続する形状を有する筒状レンズであり、第1のLED71又は第2のLED72の発光は、配光レンズ26を通して出射され、撮像部6の撮像視野を照明する。
【0024】
図2中の破線は、第1のLED71及び第2のLED72の配光範囲を示している。内側に位置する第1のLED71の発光は、配光レンズ26の広がり部分に入射し、撮像部6の撮像視野の中央部分に集中して配光される。一方、外側に位置する第2のLED72の発光は、配光レンズ26の広がり部分から湾曲部分までの広範囲に入射して大きく広がり、撮像部6の撮像視野の全域に配光される。なお、配光レンズ26の内面には、湾曲部分の近傍に凹部が設けられている。この凹部の作用により、第2のLED72の配光は、第1のLED71の配光に比べて広範囲に照射されるようになる。換言すれば、第2のLED72による光の照射範囲は、第1のLED71による光の照射範囲に比べて広くなっている。
【0025】
第1のLED71は、紫色、緑色の波長域を含む狭帯域光を発光する。例えば、8個の第1のLED71のうち一つ置きに位置する4個は、緑色光を発光する緑色LEDチップであり、残りの4個は、紫外光を発光する紫色LEDチップであって、これら8個の第1のLED71と配光レンズ26とにより狭帯域光を出力する第1光出力部が構成されている。
【0026】
第2のLED72は、白色の光を発光する白色LEDであり、例えば、青色光を発光する青色LEDチップの発光面を黄色蛍光体により覆って構成される。このような第2のLED72と配光レンズ26とにより白色光を出力する第2光出力部が構成されている。なお第1、第2のLED71、72は、LD等の他の発光素子であってもよい。
【0027】
撮像部6による撮像は、第1光出力部から出力される狭帯域光、又は第2光出力部から出力される白色光による照明下にて実施される。白色光の配光角度は、狭帯域光の配光角度よりも大きく、望ましくは撮像部6の視野角とほぼ等しく、より望ましくは撮像部6の視野角以上としてあり、視野全体で十分な光量下での撮像が可能である。狭帯域光のスペクトルは限定されるが、狭帯域光の配光角度は白色光の配光角度よりも小さいから、配光範囲内では白色光と同等の光量下での撮像が可能である。
【0028】
図4は、内視鏡装置のブロック図である。内視鏡1は、コネクタ部5を介してプロセッサ装置10に接続し内視鏡装置として用いられる。プロセッサ装置10は、制御部11、信号処理回路12、付加処理回路13等を備えている。制御部11は、CPU、ROM、RAMを備え、ROMに記憶された制御プログラムに従うCPUの動作により内視鏡装置を統合制御する。
【0029】
内視鏡1は、撮像部6を駆動する撮像駆動部60及び照明部7を駆動する照明駆動部76を備えている。撮像駆動部60は、制御部11から与えられる制御指令に従ってローリングシャッタ方式で撮像部6を駆動する。撮像駆動部60の出力信号は、受信回路61を経て1フレーム単位でゲイン回路62に与えられ、ホワイトバランス処理等の所定の前処理を行ってプロセッサ装置10の信号処理回路12に画像信号が出力される。ゲイン回路62の前処理には、撮像駆動部60から与えられるゲイン値が用いられる。
【0030】
照明駆動部76は、制御部11から与えられる制御指令に従って照明部7を駆動し、第1のLED71及び第2のLED72を選択的に、又は交互に発光させる。撮像部6の撮像動作は、照明部7の駆動に同期して実行され、信号処理回路12には、第1のLED71による狭帯域光の照明下、又は第2のLED72による白色光の照射下で得られる画像出力が連続的に、又は交互に入力される。照明部7の動作態様は、操作部3に設けられた操作ボタン31の操作により選択することができる。
【0031】
信号処理回路12は、入力画像に対し、ガンマ補正、補間処理等の画像処理を行って付加処理回路13に出力する。付加処理回路13は、周縁部のマスク処理を行い、また狭帯域光下での画像に対してはズーム処理を行い、更に、各種文字及び画像の重畳処理等により所定の規格に準拠した画像に変換して外部のモニタ14に出力する。なお、狭帯域光下での画像は、ズーム処理を行わすにマスク処理する領域を広げてもよい。モニタ14は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示機器であり、プロセッサ装置10から出力される画像信号に基づいて撮像部6による撮像画像を表示する。内視鏡1の使用者は、モニタ14の表示により体腔内の所望箇所を狭帯域光又は白色光の照明下で観察することができる。
【0032】
図5図7は、撮像処理の流れを示す説明図であり、図5は、白色光による単独照明の環境下での流れを、図6は狭帯域光による単独照明の環境下での流れを、図7は、白色光と狭帯域光とによる交互照明の環境下での流れを夫々示している。
【0033】
図5及び図6に示すように、白色光又は狭帯域光の単独照明下においては、撮像部6のCMOSの露光により、1フレーム単位で画像出力がプロセッサ装置10に与えられ、前述した処理を経てモニタ14に出力される。白色光は、撮像部6の視野角よりも大きい角度範囲を照明するから、白色光下では、全面に亘って十分な光量での画像が得られ、この画像は、マスク処理により周縁部(黒塗り部分)がマスクされた画像としてモニタ14に表示される。
【0034】
一方、狭帯域光の照明範囲は、撮像部6の視野角よりも小さいから、狭帯域光下の画像出力は、破線で囲った中央部分をズーム処理により拡大し、更にマスク処理により周縁部(黒塗り部分)がマスクされた画像としてモニタ14に表示される。なお、撮像部6が光学的なズーム機能を有している場合には、この機能を利用することでズーム処理を省略することができる。
【0035】
狭帯域光は、紫色又は緑色の波長域を含む光であり、狭帯域光下では、体腔内の組織表層の毛細血管及び微細構造模様が強調された画像が得られる。図6においては、図5において破線で示した毛細血管を実線で示してある。狭帯域光は、紫色又は緑色の波長域を含む光に限らず、他の波長域の光、更には、複数種の波長域の光の組み合わせであってもよい。
【0036】
内視鏡1の使用者は、例えば、白色光下での広角の表示画像により体腔内を大まかに観察し、病変部等の所望箇所で狭帯域光下での表示画像に切り換えることにより詳細な観察を行わせることができる。表示画像の切り換えは、前述の如く、操作部3に設けられた操作ボタン31の操作により照明部7の動作態様を選択することで実現し得る。
【0037】
白色光と狭帯域光とによる交互照明の環境下においては、図7に示すように、撮像部6のCMOSの露光時間を2フレーム分に延ばし、白色光及び狭帯域光を露光時間内の1フレーム長で交互に発光させる。これにより、白色光下での画像出力及び狭帯域光下での画像出力が交互に得られ、前者は、マスク処理を経て、後者は、ズーム処理及びマスク処理を経てモニタ14に順次出力される。モニタ14においては、白色光下及び狭帯域光下での画像が個々の出力順に並べて表示される。
【0038】
内視鏡1の使用者は、白色光下での撮像画像と狭帯域光下での撮像画像を併せて観察することができる。白色光及び狭帯域光の交互照明は、操作部3に設けられた操作ボタン31の操作により照明部7の動作態様を選択することで実現し得る。
【0039】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係る内視鏡の挿入管の先端部の拡大図であり、実施の形態1における図2に相当する。実施の形態2は、照明部7の構成以外は実施の形態1と同様であり、対応する構成要素に図2と同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0040】
照明部7は、配光レンズ26の内側に面してハウジング24内に組み込まれており、撮像部6の周囲を囲うように配設された光ファイバ束73とLED74とを備える。図9は、光ファイバ束73及びLED74の配置例を示す平面図である。図9中には、撮像部6及び観察窓25が2点鎖線により示してある。光ファイバ束73は、夫々の先端(出射端)を配光レンズ26の内側に臨ませ、撮像部6の外側の同心円周上に略等間隔で並べて配置してある、LED74は、光ファイバ束73の並設域の外側に配した環状の基板70上に実装され、略等間隔で並べて配置されている。図9中の光ファイバ束73及びLED74の並設数は夫々8つとしてあるが、これに限るものではない。
【0041】
光ファイバ束73は、多数本の光ファイバを束ねて構成されたライトガイドファイバ75の先端から複数本単位で引き出して構成されている。ライトガイドファイバ75は、挿入管2、操作部3及びユニバーサルチューブ4の内部を通してコネクタ部5に延設されており、ライトガイドファイバ75の末端(入射端)は、プロセッサ装置10の内部において狭帯域光の光源(図示せず)に臨ませてある。光源は、例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の白色光を発光する高輝度ランプとフィルタとの組み合わせにより構成することができる。また光源は、LED等の発光素子であってもよい。
【0042】
以上の構成により光ファイバ束73の先端からは、狭帯域光が出射され、配光レンズ26の広がり部分に入射して撮像部6の撮像視野の中央部分に集中して配光される。図8の下半部には、狭帯域光の狭帯域光の配光範囲が破線で示されている。
【0043】
光ファイバ束73の外側に並設されたLED74は、白色光を発光する。この発光は、配光レンズ26の広がり部分から湾曲部分までの広範囲に入射して大きく広がり、撮像部6の撮像視野の全域に配光される。図8の下半部には、白色光の配光範囲が破線で示されている。
【0044】
実施の形態2においては、光ファイバ束73と配光レンズ26とにより狭帯域光を出力する第1光出力部が構成され、LED74と配光レンズ26とにより白色光を出力する第2光出力部が構成されており、狭帯域光下での撮像と白色光下での撮像とを実施の形態1と同様に実施することができる。狭帯域光は、光ファイバ束73の先端から小さい広がり角で出射されるから、配光レンズ26を通した狭帯域光の配光範囲は実施の形態1よりも小さくなり、配光範囲内で十分な光量を確保することができる。なおLED74は、LD等の他の発光素子であってもよい。
【0045】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係る内視鏡の挿入管の先端部の拡大図であり、実施の形態1における図2及び実施の形態2における図8に相当する。
【0046】
実施の形態3において、先端部22のハウジング24の他側には、中央に観察窓25が設けられ、この観察窓25の外側に2つの配光レンズ26、26が設けられている。配光レンズ26は、外向きに傾斜した光軸を有する凹レンズである。ハウジング24の内部には、撮像部6が、観察窓25の内側に面して撮像部6が組み込まれ、照明部7を構成するライトガイドファイバ75が、夫々の先端(出射端)を夫々の配光レンズ26の内側に臨ませて組み込まれている。
【0047】
ライトガイドファイバ75は、多数本の光ファイバを束ねて構成され、挿入管2、操作部3及びユニバーサルチューブ4の内部を通してコネクタ部5に延設されており、ライトガイドファイバ75の末端(入射端)は、コネクタ部5が接続されるプロセッサ装置10の内部において後述する光源部8に臨ませてある。
【0048】
図11は、光源部8の構成例を示す模式図である。本図に示す光源部8は、第1光源80及び第2光源81を備える。第2光源81は、白色光を発光する光源であり、ライトガイドファイバ75の入射端に同一の光軸上で正対させてある。第2光源81とライトガイドファイバ75との間の光軸上には、コリメートレンズ83、ハーフミラー85及び集光レンズ84が、この順に並べて配してある。図11Aには、第2光源81が発光する白色光の光路を2点鎖線により示してある。白色光は、コリメートレンズ83を通して平行光となり、ハーフミラー85を透過して集光レンズ84により集光され、ライトガイドファイバ75の入射端の全体に入射される。
【0049】
第1光源80は、狭帯域光を発光する光源であり、第2光源81とライトガイドファイバ75と直交する光軸を有し、コリメートレンズ82を介してハーフミラー85に対向して配置されている。図11Bには、第1光源80が発光する狭帯域光の光路を2点鎖線により示してある。ハーフミラー85は、第1光源80の光軸に対して45°の傾斜角を有する反射面を有しており、狭帯域光は、コリメートレンズ82を通して平行光となり、ハーフミラー85により反射されて集光レンズ84に達し、ライトガイドファイバ75の入射端の中央部に入射される。
【0050】
以上の如き入射光は、ライトガイドファイバ75に導光されて出射端に達し、配光レンズ26を経て出射される。白色光は、出射端の全面から出射されるから、配光レンズ26を経て大きい広がり角で出力されるのに対し、狭帯域光は、出射端の中央部から出射されるから、白色光よりも小さい広がり角で出力される。図10の上半部には、白色光の配光範囲が、図10の下半部には、狭帯域光の配光範囲が夫々破線で示されている。
【0051】
実施の形態3においては、第1光源80、ライトガイドファイバ75及び配光レンズ26により第1光出力部が構成され、第2光源81、ライトガイドファイバ75及び配光レンズ26により第2光出力部が構成されており。狭帯域光下での撮像と白色光下での撮像とを実施の形態1、2と同様に実施することができる。第1光源80、第2光源81は、LED等の発光素子、又は、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプである。第1光源80は、異なる波長の光を発光する複数種の光源の組み合わせであってもよく、この場合、夫々の光源に対応するハーフミラー85を配置すればよい。
【0052】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態3と光源部8の構成が相違する。図12は、実施の形態4に係る光源部8の構成例を示す模式図である。本図に示す光源部8は、単一の光源86を備える。光源86は、ライトガイドファイバ75の入射端に同一の光軸上で正対させてあり、白色光を発光する。光源88とライトガイドファイバ75との間の光軸上には、実施の形態3と同様、コリメートレンズ83及び集光レンズ84が、この順に並べて配してある。
【0053】
光源部8は、更に、集光フィルタ87を備えている。集光フィルタ87は、所定波長の光(紫色光、緑色光等)を透過させるフィルタとレンズとの組み合わせであり、コリメートレンズ83と集光レンズ84との間の光軸上に出し入れ可能に配置してある。
【0054】
図12Aには、集光フィルタ87が配置されていない場合の光路を2点鎖線により示してある。この場合、光源86が発光する白色光は、コリメートレンズ83を通して平行光となって集光レンズ84に直接的に到達し、該集光レンズ84により集光されてライトガイドファイバ75の入射端の全体に入射される。
【0055】
図12Bには、集光フィルタ87が配置されている場合の光路を2点鎖線により示してある。この場合、光源86が発光する白色光は、コリメートレンズ83を通して平行光となり、更に集光フィルタ87を通して光束が絞られた狭帯域光となって集光レンズ84に到達し、該集光レンズ84により集光されてライトガイドファイバ75の入射端の中央部に入射される。
【0056】
この入射光は、実施の形態3と同様、ライトガイドファイバ75により導光されて出射端に達し、配光レンズ26を経て出射される。白色光は、出射端の全面から出射されるから、配光レンズ26を経て大きい広がり角で出力されるのに対し、狭帯域光は、出射端の中央部から出射されるから、白色光よりも小さい広がり角で出力される。
【0057】
実施の形態4においては、光源86、集光フィルタ87、ライトガイドファイバ75及び配光レンズ26により第1光出力部が構成され、光源86、ライトガイドファイバ75及び配光レンズ26により第2光出力部が構成されており、狭帯域光下での撮像と白色光下での撮像とを実施の形態3と同様に実施することができる。光源86は、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプであってもよく、白色LED等の発光素子であってもよい。集光フィルタ87の出し入れは、適宜のアクチュエータにより実現することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 内視鏡
2 挿入管
6 撮像部
7 照明部
8 光源部
22 先端部
25 観察窓
26 配光レンズ
71 第1のLED(第1の発光素子)
72 第2のLED(第2の発光素子)
73 光ファイバ束
74 LED(発光素子)
75 ライトガイドファイバ
80 第1光源
81 第2光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12