(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】織物布地の仕上げのためのフッ素を含まない水性分散液
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20230217BHJP
C08F 214/04 20060101ALI20230217BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20230217BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20230217BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230217BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230217BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20230217BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20230217BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230217BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F214/04
C08L33/04
C08L91/06
C08K5/17
C08K5/10
D06M13/02
D06M15/263
D06M15/643
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2019514113
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2017072766
(87)【国際公開番号】W WO2018054712
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507324968
【氏名又は名称】ハンツマン・テキスタイル・エフェクツ(ジャーマニー)・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN TEXTILE EFFECTS(GERMANY)GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロブスト,ディエター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラター,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】フックス,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】レッテンバッヒャー,イザベラ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120895(JP,A)
【文献】国際公開第2016/000830(WO,A1)
【文献】米国特許第03248352(US,A)
【文献】国際公開第2015/191326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
C08L 1/00 - 101/14
D06M 13/00 - 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下のモノマー
a)ヘキサデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレートの混合物である工業用グレードのステアリルメタクリレートである、炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
b)オクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート及びドコシルメタクリレートの混合物である工業用グレードのベヘニルメタクリレートである、炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び、任意の
d)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3-クロロ-2-ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種のモノマー
の重合により得られる少なくとも1種のコポリマー、
(B)25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックス、
(C)少なくとも1種の界面活性剤、及び
(D)水
を含む、フッ素含有化学物質を含まない水性分散液であって、
コポリマー(A)のモノマーa)とb)とは異なるものであり、そして
該コポリマー(A)は、スチレン又はα-メチルスチレンの何れの重合ユニットも含まない、水性分散液。
【請求項2】
前記水性分散液における成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、
60乃至95質量%の成分(A)、及び
5乃至40質量%の、成分(B)としての25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックス
を含む請求項1記載の水性分散液。
【請求項3】
前記少なくとも1種のコポリマー(A)が、重合反応において使用されるモノマーa)、b)、c)及びd)の総質量に基づいて、
20質量%乃至50質量
%のモノマーa)、
20質量%乃至50質量
%のモノマーb)、
10質量%乃至40質量
%のモノマーc)、
0質量%乃至10質量
%のモノマーd)
を互いに重合することから得られる請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、脂肪族アミン又は脂肪族アルコールエトキシレート又は脂肪族アミンと脂肪族アルコールエトキシレートとの界面活性剤混合物である請求項1乃至3の何れか1項に記載の水性分散液。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の水性分散液を、織物布地に適用(塗布)することを含む、織物布地の処理方法。
【請求項6】
前記織物布地が、綿、ポリエステル又は綿-ポリエステル混紡布地である請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なる長鎖炭化水素(メタ)アクリル酸エステル、ワックス成分及び界面活性剤をベースとするコポリマーを含む水性分散液、該コポリマーの製造並びにコポリマーの前記水性分散液を使用する織物布地の処理方法に関する。本発明に従う水性分散液は、フッ素含有化学物質(fluorochemicals)を含まず、そして、天然及び合成の織物布地に撥水性を与える。
【背景技術】
【0002】
過去何年にもわたり、多くの国が天然資源を節約し、そして、気候に有害な物質の排出を減少することにより、環境の質を改善することに取り組んできた。これらの目標の達成において産業を支援するために、政府より資金が提供されている。消費者は、最高の生態学的基準に従って製造された、環境に優しい織物製品を求めている。ブランドや小売業者は、これらの要望を実際の必需品に伝達しており、織物製造業者は最新の機器に投資し、そして、環境に優しい化学物質を選択することにより、絶えずそれらの生産の最適化の向上を図っている。
【0003】
布地を特定の化学成分を含有する水性分散液で処理することにより、織布、編物又は不織布のような織物布地に特定の特性、例えば撥水性を付与することが知られている。そのような化学成分としてフッ素含有化学物質を使用することにより、織物における撥水性が達成される。しかしながら、フッ素含有化学物質は高価であり、それらの使用は化学物質のための規制の枠組みの発展に起因して制限されてきた。あるいは、パラフィンワックス及びアクリル系ポリマーを含む、織物に撥水性を付与するための水性系が提案されてきた。そのような系は、例えば欧州特許出願公開第1424433号明細書及び国際公開第2010115496号パンフレットに記載されている。国際公開第2010115496号パンフレットに記載された水性分散液は、パラフィンワックスと、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン又はα-メチルスチレンとから得られるコポリマーとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第1424433号明細書
【文献】国際公開第2010115496号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の組成物は、今日期待されている全ての要求、例えば、異なる布地、特に合成繊維から作られた布地における優れた撥水性を満足させるものではない。
【0006】
本発明の目的は、長期間の貯蔵後も高い安定性を有し、如何なるフッ素含有化学物質又はスチレンを含まず、ポリエステル含有布地を含む全ての織物布地に優れた撥水性を与える組成物を提供することである。本発明はまた、前記布地において優れた撥水性を得るための方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、
(A)以下のモノマー
a)炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
b)炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び、任意の
d)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種のモノマー
の重合により得られる少なくとも1種のコポリマー、
(B)55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックス及び25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスの群から選択される少なくとも1種のワックス、
(C)少なくとも1種の界面活性剤、及び
(D)水
を含む、フッ素含有化学物質を含まない水性分散液であって、
コポリマー(A)のモノマーa)とb)とは異なるものであり、そして
該コポリマー(A)は、スチレン又はα-メチルスチレンの何れの重合ユニットも含まない、水性分散液に関する。
【0008】
これに関連して用語「フッ素を含まない」は、各化合物がフルオロアルキル基を全く含まないことを意味する。
【0009】
本発明に従う水性分散液は、如何なるフッ素含有化学物質又はスチレンの何れも含まない。それらはまた、如何なるN-メチロール化合物も含まない。N-メチロール化合物は、望ましくない量のホルムアルデヒドを周囲の大気中に放出し得る。従って、本発明は更に、健康及び環境に対して潜在的に有害である、織物用途のための水性分散液の調製において使用される成分の数を制限する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
少なくとも1種のコポリマー(A)のモノマーa)は、少なくとも1種、例えば、1種、2種又は3種の直鎖又は分岐鎖の炭素原子数16乃至18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。そのような直鎖又は分岐鎖の炭素原子数16乃至18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート及びオクタデシルアクリレート、又は炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸エステルの混合物、例えば、工業用グレードのステアリルメタクリレート(CAS:90551-83-0)として市販で入手可能である、ヘキサデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレートの混合物が考慮される。
【0011】
少なくとも1種のコポリマー(A)のモノマーb)は、少なくとも1種、例えば、1種、2種又は3種の直鎖又は分岐鎖の炭素原子数18乃至22のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。そのような直鎖又は分岐鎖の炭素原子数18乃至22のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、オクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、ドコシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、ドコシルアクリレート、
又は炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸エステルの混合物、例えば、工業用グレードのベヘニルメタクリレート(CAS:90551-86-3)として市販で入手可能である、オクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート及びドコシルメタクリレートの混合物が考慮される。
【0012】
コポリマー(A)のモノマーa)及びb)は異なっており、即ち、モノマーa)及びモノマーb)はアルコールの鎖長に関して同一ではなく、例えば、モノマーa)及びモノマ
ーb)はそれぞれ同じ炭素原子数18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルではあり得ない。しかしながら、モノマーa)又はモノマーb)或いはモノマーa)及びb)が、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの混合物である場合、モノマーa)及びb)の各々は、同じアルコール、例えば、炭素原子数18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを含むことができるが、ここで、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの1種のみが、同じアルコール、例えば、炭素原子数18のアルコールのエステルである。従って、モノマーa)はヘキサデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレートの混合物であり得、そしてモノマーb)はオクタデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート及びドコシルメタクリレートの混合物であり得る。
【0013】
モノマーa)又はモノマーb)の各々は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、或いは、例えば1:1、1.5:1又は1:1.5のモル比における、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの混合物である。
【0014】
コポリマー(A)のモノマーa)及びモノマーb)は市販で入手可能であるか、又は一般的に既知の方法により調製され得る。
【0015】
一態様において、少なくとも1種のコポリマー(A)を調製するために使用される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルa)及びb)は、飽和アルコールを含有し、即ち、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルa)及びb)は、炭素-炭素多重結合を有する不飽和アルコールを含まない。
【0016】
塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマーc)は市販で入手可能である。
【0017】
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種のモノマーd)は、少なくとも1種のコポリマー(A)の製造において厳密には必要とされないが、合成織物布地における効果のレベルを改善するために使用され得る。
【0018】
少なくとも1種のコポリマー(A)は、a)少なくとも1種の炭素原子数16乃至18のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、b)少なくとも1種の炭素原子数18乃至22のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び、任意の、d)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種のモノマーの重合により得られる。モノマーa)、b)、c)及び任意のd)以外に、本発明により達成される有利な効果を損なわせない限り、他の適切なモノマーが重合反応において使用され得る。驚くべきことに、スチレン又はα-メチルスチレンは、有利な効果を達成するために、少なくとも1種のコポリマー(A)の製造のために必要ではなく、従って除外されている。
好ましくは、少なくとも1種のコポリマー(A)は、如何なる他のモノマーを使用することなく、モノマーa)、b)、c)及び任意のd)の重合によって得られ、即ち、少なくとも1種のコポリマー(A)は、有利には、モノマーa)、b)、c)及び任意のd)からなる。
【0019】
少なくとも1種のコポリマー(A)は、本技術分野において一般的に既知の以下の方法により、モノマーa)、b)、c)及び任意のd)から調製され得る。共重合は、典型的には、フリーラジカル重合開始剤を用いることによるフリーラジカル重合として行われる。本発明の目的のためのフリーラジカル重合開始剤として有用なものは、アゾ化合物、例えば、それぞれ、DuPont又はWAKO Pure Chemical Indus
triesからのVazo 56又はWako V-50(CAS:2997-92-4)を含む。フリーラジカル重合開始剤は、慣用の既知量、例えばモノマーa)、b)、c)及び任意のd)の総質量に基づいて2.5質量%乃至5質量%の範囲内で適用される。
【0020】
少なくとも1種のコポリマー(A)は、
重合反応において使用されるモノマーa)、b)、c)及びd)の総質量に基づいて、
20質量%乃至50質量%、好ましくは、30質量%乃至40質量%のモノマーa)、
20質量%乃至50質量%、好ましくは、30質量%乃至40質量%のモノマーb)、
10質量%乃至40質量%、好ましくは、20質量%乃至30質量%のモノマーc)、
0質量%乃至10質量%、好ましくは、0質量%乃至5質量%のモノマーd)
を互いに重合することから得られるが、重合反応において使用されるモノマーa)、b)、c)及びd)の合計は、100質量%である。
【0021】
コポリマー(A)は新規である。従って、本発明はまた、
a)炭素原子数16乃至18のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
b)炭素原子数18乃至22のアルコールの少なくとも1種のフッ素原子を含まない(メタ)アクリル酸エステル
c)塩化ビニル及び塩化ビニリデンの群から選択される少なくとも1種のモノマー、及び、任意の
d)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種のモノマー
の互いの重合から得られるコポリマー(A)にも関するが、ここで、上記で与えられた意味及び好ましいものが適用される。
【0022】
少なくとも1種のワックス成分(B)は、55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックス及び25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスの群から選択される。これらの限定から外れる融解範囲を有するパラフィン及びシリコンワックスは、本発明に従う分散液にはあまり適していない。上記よりも低い融解範囲を有するパラフィン及びシリコンワックスは、水性分散液で処理された織物の撥水性に関して望ましい効果レベルを提供しない。それらはまた、処理された織物の部分において低下した洗濯耐久性も導く。上記で示されたものより高い融解範囲を有するパラフィン及びシリコンワックスは、織物に対して許容可能な撥水性及び洗濯耐久性を導き得るが、これらの水性分散液を増加した粘度を有するものとし、そのため、これらの分散液の加工性は不十分になる。更に、該分散液は、その後、より高価で且つ製造するのに不便なものとなる。適切なパラフィンワックスは既知であり、例えば、「Rompp Chemie-Lexikon、第9版、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgart-New York、「Paraffin」及び「Wachse」の見出しの章において記載されている。適切なシリコンワックスは、例えば、アルキル側鎖を含むポリシロキサンである。本発明の分散液のために有用な少なくとも1種のワックス(B)は、例えば、適切なパラフィンワックスとしてのSasol Wax GmbHのSasolwax 7040、及び適切なシリコンワックスとしてのSiltech CorporationのSilwax D222が市販で入手可能である。
【0023】
少なくとも1種の成分(B)としてパラフィンワックスが使用される場合、本発明に従う水性分散液は、適切には、例えば、
水性分散液中の成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、
20乃至60質量%、好ましくは、30乃至50質量%、特には、35乃至45質量%の成分(A)、及び
40乃至80質量%、好ましくは、50乃至70質量%、特には、55乃至65質量%の
、成分(B)としての55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックスを含むが、成分(A)及び(B)の合計は、100質量%である。
【0024】
少なくとも1種の成分(B)としてシリコンワックスが使用される場合、本発明に従う水性分散液は、適切には、例えば、
水性分散液中の成分(A)及び成分(B)の総質量に基づいて、
60乃至95質量%、好ましくは、70乃至90質量%、特には、75乃至85質量%の成分(A)、及び
5乃至40質量%、好ましくは、10乃至30質量%、特には、15乃至25質量%の、成分(B)としての25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスを含むが、成分(A)及び(B)の合計は、100質量%である。
【0025】
少なくとも1種の界面活性剤(C)は、分散液の安定性を確実にするための分散剤又は分散剤の混合物である。有用な分散剤は、ノニオン性エトキシル化化合物、例えばエトキシル化アルコール又はエトキシル化カルボン酸、四級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤、又は脂肪族アミンのような既知の市販で入手可能な界面活性化合物を含む。適切には、脂肪アミンは適切な酸、例えば酢酸のような有機酸と組み合わせて適用される。
【0026】
好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤(C)は、脂肪アミン、又は脂肪アルコールエトキシレート、又は脂肪アミンと脂肪アルコールエトキシレートの界面活性剤混合物である。適切な脂肪アミンは、例えば、ラウリルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、ジメチルココナッツアミン、オクタデシルジメチルアミン、ドコシルジメチルアミン、特に、オクタデシルジメチルアミンのような炭素原子数12乃至22のアルキルジメチルアミンである。適切な脂肪アミンは市販で入手可能である。適切な脂肪アルコールエトキシレートは、分枝状又は非分枝状である。適切な分岐状の第二級アルコールエトキシレートは、例えば、DowのTergitol TMN-10のような、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルである。
【0027】
本発明の分散液は、分散液の総質量に基づいて、0.5質量%乃至3質量%の少なくとも1種の界面活性剤(C)を含有する。好ましくは、脂肪アミンは、分散液の総質量に基づいて0.5質量%乃至2質量%の量で適用される。本発明の水性分散液は非常に高い安定性を有する。
【0028】
本発明に従う水性分散液は、一段階法又は二段階法で調製し得る。
【0029】
本発明の一態様において、ワックス(B)がパラフィンワックスである場合、二段階法が適用される。従って、パラフィンワックス(B)の水性分散液は、ワックスを容器中でその融点より約20℃高い温度に加熱することにより調製される。適切には、少量の適切な溶媒、例えば、ジプロピレングリコールを添加する。少なくとも1種の界面活性剤(C)の熱水性混合物を別々に調製し、そしてTurraxを用いる撹拌下で融解したワックスに添加し、続いて、例えば、250バール及び85乃至90℃で高圧分散させる。別の容器中で、少なくとも1種の界面活性剤(C)、モノマーa)、b)及び任意のd)並びに温水を混合することによりコポリマー(A)の水性分散液が調製される。分散液は、混合物を、例えば、250バール及び50乃至60℃で高圧分散することにより得られる。分散液は室温に冷却され、重合開始剤及びモノマーc)が添加され、そして、重合は、例えば、55乃至65℃の温度での数時間で達成される。パラフィンワックス(B)の水性分散液とコポリマー(A)の水性分散液は一緒にされて、安定な水性分散液を生じる。
【0030】
本発明の別の態様において、ワックス(B)がシリコンワックスである場合、一段階法
が適用される。従って、水性分散液は、容器に、少なくとも1種の界面活性剤(C)、適切には少量の適切な溶媒、例えば、ジプロピレングリコール、シリコンワックス(B)、モノマーa)、b)及び任意のd)並びに温水を、Turraxを用いる撹拌下で添加することによって調製される。分散液は、混合物を、例えば、250バール及び50乃至60℃で高圧分散することにより得られる。分散液は室温に冷却され、重合開始剤及びモノマーc)が添加され、そして、重合は、例えば、55乃至65℃の温度で数時間行われて、安定な水性分散液が得られる。
【0031】
望むならば、織物処理組成物の構成成分として有用であることが既知である更なる成分を、結果として生じた本発明の水性分散液に添加し得る。
【0032】
織物布地の処理は、以下の一般に慣用の方法、例えば、パディング、その後の乾燥及び適切な場合には、例えば、90乃至190℃、好ましくは100乃至180℃の温度での硬化により行われ得る。特定の態様において、低温硬化は100℃で行われる。別の態様において、硬化は150℃で行われる。本発明に従う水性分散液で処理される織物布地は、例えば、綿、ポリエステル又は綿-ポリエステル混紡である。通常、そのような布地は織布、編物又は不織布である。
【0033】
本発明に従う分散液は、天然及び合成の織物布地に撥水性を付与するために特に有用である。驚くべきことに、所望の撥水効果レベルは、ポリエステル布地又は綿とポリエステルの混合布地のような合成織物布地においてさえも達成される。効果レベルは、本発明の水性分散液との組み合わせにおいて、撥油及び撥水製品のための増量剤、例えば、PHOBOL(登録商標)XAN extender(Huntsman Corp)を使用することにより増強し得る。本発明に従う水性分散液で処理された織物布地は、特に上着に適している。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は本発明を説明するのに役立つ。特段の指示がない限り、温度は摂氏度であり、部は質量部であり、そして、パーセントは質量パーセントに関する。質量部は、リットルに対するキログラムの比率において体積部に関連する。
【0035】
化学物質:
・オクタデシルジメチルアミン(CAS:124-28-7)
・Tergitol TMN-10:>87% ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(CAS:60828-78-6)
・ジプロピレングリコール(CAS:25265-71-8)
・酢酸(CAS:64-19-7)
・Paraffin2222又はSasolwax 7040 約70℃で融解(CAS:8002-74-2; 64742-51-4)
・Silwax D222、34乃至42℃の融解範囲(CAS:73891-93-7)
・ベヘニルメタクリレート 1822(BEMA 1822)(CAS:90551-86-3)
・ステアリルメタクリレート(MA 16-18)(CAS:90551-83-0)
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(CAS:868-77-9)
・塩化ビニリデン(CAS:75-35-4)
・Wako V 50:2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(CAS:2997-92-4)
・撥油及び撥水製品のためのPHOBOL(登録商標)XAN extender
【0036】
実施例1
a)容器に2.2部のオクタデシルジメチルアミン、1.1部のTergitol TMN-10、6.6部のジプロピレングリコール及び2.0部の酢酸(60%)を充填する。この混合物に、15.0部のベヘニルメタクリレート、15.0部のステアリルメタクリレート及び0.7部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、そして、最後に110部の温水を添加する。混合物を約1分間、Turraxを用いて撹拌し、続いて250barの圧力及び50乃至60℃の温度で高圧分散させて安定なエマルジョンを得る。得られたエマルジョンを約20℃の温度に冷却する。4.6部の水中の0.4部のWako V
50及び12.0部の塩化ビニリデンを添加した後、重合を窒素雰囲気中65℃で約8時間行う。152部の水性コポリマー分散液が得られる(120℃で90分間乾燥した後、40.6部の生成物)。
【0037】
b)容器中で、60.0部のParaffin 2222又はSasolwax 7040を約90℃の温度で融解する。得られたパラフィンワックスのホットメルトに10.0部のジプロピレングリコールを添加する。別の容器に攪拌しながら3.4部のオクタデシルジメチルアミン、1.6部のTergitol TMN-10及び4.0部の酢酸(60%)、そして、最後に200部の温水を充填する。得られた混合物を撹拌しながら融解したワックスに添加する。続いて、結果として生じた混合物を約1分間Turraxを用いて撹拌し、続いて250barの圧力及び85乃至90℃の温度で高圧分散させて、265部の安定な分散液を得る。
【0038】
本発明に従う水性分散液は、工程a)により得られた56.3部の分散液と、工程b)により得られた155.8部の分散液とを混合することにより得られる。
【0039】
実施例2
容器に2.2部のオクタデシルジメチルアミン、1.1部のTergitol TMN-10、6.6部のジプロピレングリコール及び2.0部の酢酸(60%)を充填する。この混合物に、8.5部のシリコンワックス、15.0部のベヘニルメタクリレート、15.0部のステアリルメタクリレート及び0.7部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、そして、最後に110部の温水を添加する。混合物を約1分間、Turraxを用いて撹拌し、続いて250barの圧力及び50乃至60℃の温度で高圧分散させて安定なエマルジョンを得る。得られたエマルジョンを約20℃の温度に冷却する。4.5部の水中の0.5部のWako V 50及び12.0部の塩化ビニリデンを添加した後、重合を窒素雰囲気中65℃で約8時間行う。本発明に従う155部の水性分散液が得られる(120℃で90分間乾燥した後、47.3部の生成物)。
【0040】
以下の実施例は、実施例1及び実施例2に従って調製された分散液を用いた異なる織物布地の処理を記載する。
【0041】
適用例(仕上げ):
ポリエステル:100%ポリエステルの織布は、1g/Lの60%酢酸、5g/Lの湿潤剤(INVADINE(登録商標)PBN)及び40g/L(80g/L)の、実施例1の分散液又は実施例2の分散液の何れかを含むリカーでパディングされる(リカーピックアップ(liquor pick-up)59%)。
綿-ポリエステル混紡:織布を1g/Lの60%酢酸、5g/Lの湿潤剤(INVADINE(登録商標)PBN)及び40g/L(80g/L)の、実施例1の分散液又は実施例2の分散液の何れかを含有するリカーで、パッド-マングル(pad-mangle)中で処理する(リカーピックアップ(liquor pick-up)51%)。
綿:綿の織布(100%)を1g/Lの60%酢酸、5g/Lの湿潤剤(INVADINE(登録商標)PBN)及び40g/L(80g/L)の、実施例1の分散液又は実施例2の分散液の何れかを含有するリカーで、パッド-マングル(pad-mangle)中で処理する(リカーピックアップ(liquor pick-up)69%)。
上記の適用例は、上記の成分に加えて、5g/L(10g/L)のPHOBOL(登録商標)XAN extenderを含有する水性処理組成物を使用することにより繰り返される。
パディング後、布地(綿、ポリエステル及び木綿-ポリエステル混紡)を110℃で10分間乾燥させ、次いで150℃で5分間硬化させる。
【0042】
適用例により得られた仕上げを施された布地は、以下の試験に付される:
(I)AATCC 22-2005、ISO 4920(EN 24 920)に準拠したスプレーテスト
(II)DIN EN 29865、ISO 9865に準拠したブンデスマン(Bundesmann)試験
【0043】
【0044】
【0045】