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特許7229163質量分析におけるディスカバリイオン電流の生成およびその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】質量分析におけるディスカバリイオン電流の生成およびその利用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230217BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N27/62 E
H01J49/26
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019538507
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018013343
(87)【国際公開番号】W WO2018136297
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】15/408,146
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/689,361
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513099751
【氏名又は名称】アドヴィオン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Advion Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス クレチャ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312216(US,A1)
【文献】特表2008-542767(JP,A)
【文献】特表2014-513277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 30/00 - G01N 30/96
H01J 49/00 - H01J 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定期間にわたって複数の質量対電荷チャネルに対するイオン電流測定値を提供する質量分析計と、
前記質量分析計に結合されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
各質量対電荷間隔の平均イオン電流を特定し、前記質量対電荷間隔が少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含み、
電荷間隔の現在のイオン電流の測定値と電荷間隔の前記平均イオン電流との相対変化を計算し、
スキャン内の各電荷間隔の前記相対変化の合計を計算し、
前記スキャン内の各電荷間隔の合計相対変化をスキャンの時間に対してプロットする、ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記質量対電荷間隔が複数の質量対電荷チャネルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記平均イオン電流は、一定の時間における試料の1回以上のプリスキャンに基づいて決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記平均イオン電流は、前記現在のスキャンから一定の時間差での試料の1つ以上のプリスキャンに関する受信情報に基づいてローリング方式で決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラはさらに、質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記イオン電流測定値にアルゴリズム平滑化を適用するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラはさらに、質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記相対変化にアルゴリズム平滑化を適用するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラはさらに、前記相対変化の合計を閾値と比較する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記相対変化の合計が前記閾値を超えたという決定に応答して、前記コントローラは質量分析計のハードウェア変数を変更する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
一定期間にわたって複数の質量対電荷チャネルに対するイオン電流測定値を提供する質量分析計と、
前記質量分析計に結合されたコントローラと、
前記コントローラと前記質量分析計に結合されたリキッドハンドラと、
を備え、
前記コントローラは、
各質量対電荷間隔の平均イオン電流を特定し、前記質量対電荷間隔が少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含み、
電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の前記平均イオン電流との相対変化を計算し、スキャン内の各電荷間隔の前記相対変化の合計を計算し、
前記相対変化の合計をしきい値と比較し、
前記相対変化の合計が閾値を超えたという決定に応答して、前記リキッドハンドラを用いてフラクション収集を開始させる、
ように構成されている、システム。
【請求項10】
前記コントローラはさらに、前記スキャン内の各質量対電荷間隔の合計相対変化をスキャンの時間に対してプロットするように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記質量対電荷間隔が複数の質量対電荷チャネルを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記平均イオン電流は、一定の時間における試料の1回以上のプリスキャンに基づいて決定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記平均イオン電流は、前記現在のスキャンから一定の時間差での試料の1つ以上のプリスキャンに関する受信情報に基づいてローリング方式で決定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラはさらに、一定の時間、次のバイアルに移るためのローリング相対変化による指示、一定の相対変化、およびローリング相対変化のアルゴリズムにより決定された抽出イオン電流のうちの少なくとも1つに応答してフラクション収集を停止するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラはさらに、質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記イオン電流測定値にアルゴリズム平滑化を適用するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラはさらに、質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記相対変化にアルゴリズム平滑化を適用するように構成される、請求項9記載のシステム。
【請求項17】
質量分析計から一定期間にわたって複数の質量対電荷チャネルに対するイオン電流測定値を受信するステップと、
各質量対電荷間隔の平均イオン電流を特定するステップであり、前記質量対電荷間隔は少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含む、ステップと、
電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の前記平均イオン電流との相対変化を計算するステップと、
スキャン内の各電荷間隔の前記相対変化の合計を計算するステップと、スキャン内の各電荷間隔の前記相対変化の合計をスキャンの時間に対してプロットするステップと、
を備える、方法。
【請求項18】
前記質量対電荷間隔が複数の質量対電荷チャネルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記平均イオン電流は、一定の時間における試料の1回以上のプリスキャンに基づいて決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記平均イオン電流は、前記現在のスキャンから一定の時間差での試料の1つ以上のプリスキャンに関する受信情報に基づいてローリング方式で決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記イオン電流測定値にアルゴリズム平滑化を適用するステップを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
質量対電荷チャネルのスキャンにおいて前記相対変化にアルゴリズム平滑化を適用するステップを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記相対変化の合計を閾値と比較するステップを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
リキッドハンドラを制御する方法であって、
質量分析計から、ある期間にわたって複数の質量対電荷チャネルに対するイオン電流測定値を受信するステップと、
各質量対電荷間隔の平均イオン電流を特定するステップであり、前記質量対電荷間隔が少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含む、ステップと、
電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の前記平均イオン電流との相対変化を計算するステップと、
スキャンにおいて各電荷間隔の前記相対変化の合計を計算するステップと、
前記相対変化の合計をしきい値と比較するステップと、
前記相対変化が閾値を超えたという決定に応答して、前記リキッドハンドラを用いてフラクション収集を開始させるステップと、
を備える、方法。
【請求項25】
スキャンの各電荷間隔の合計相対変化をスキャンの時間に対してプロットするステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記質量対電荷間隔が複数の質量対電荷チャネルを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記平均イオン電流は、一定の時間における試料の1回以上のプリスキャンに基づいて決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記平均イオン電流は、前記現在のスキャンから一定の時間差での試料の1つ以上のプリスキャンに関する受信情報に基づいてローリング方式で決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
一定の時間、次のバイアルに移るためのローリング相対変化による指示、一定の相対変化、およびローリング相対変化のアルゴリズムにより決定された抽出イオン電流のうちの少なくとも1つに応答してフラクション収集の停止を決定するステップを更に備える、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
質量分析は、化学種をイオン化し、それらの質量電荷比に基づいてイオンを分類する分析技術である。質量分析法は、さまざまな分野で使用されており、純粋な試料や複合混合物に適用されている。
【0002】
一般に、質量スペクトルは、質量電荷比の関数としてのイオン信号強度のプロットである。これらのスペクトルは、試料の元素または同位体サイン、粒子および分子の質量を決定し、そしてペプチドおよび他の化合物のような分子の化学構造を解明するために使用される。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、概して質量分析計の分野に関し、より詳細には、質量分析計分析システムへの液体状、蒸気状、または気体状の未知化合物のフローを分析するシステムに関する。
【0004】
一実施態様では、システムは質量分析計を含み、該質量分析計は一定期間にわたってイオン電流測定値を複数の質量対電荷チャネルに提供する。このシステムは、質量分析計に結合されたコントローラを含む。このシステムはまた、コントローラおよび質量分析計に結合されたリキッドハンドラを含む。コントローラは、各質量対電荷間隔の基本平均イオン電流を特定するように構成され、質量対電荷間隔は少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含む。コントローラはまた、電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の基本平均との相対変化を計算するように構成される。コントローラはまた、相対変化をしきい値と比較するように構成される。システムはまた、相対変化が閾値を超えたという決定に応答して、コントローラがリキッドハンドラに制御信号を送信するように構成される。
【0005】
別の実施形態では、システムは質量分析計を含み、該質量分析計は一定期間にわたってイオン電流測定値を複数の質量対電荷チャネルに提供する。このシステムは、質量分析計に結合されたコントローラを含む。このシステムはまた、コントローラおよび質量分析計に結合されたリキッドハンドラを含む。コントローラは、各質量対電荷間隔の基本平均イオン電流を識別するように構成され、該質量対電荷間隔は少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含む。コントローラはまた、電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の基本平均との相対変化を計算するように構成される。コントローラはまた、スキャン内の各電荷間隔に対する前記相対変化の合計を計算するように構成される。コントローラはまた、相対変化の合計をしきい値と比較するように構成される。コントローラはまた、相対変化の合計が閾値を超えたというと決定に応答して、コントローラがリキッドハンドラに制御信号を送信するように構成される。
【0006】
システムはまた、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独でまたは組み合わせて含んでよい。コントローラはさらに、スキャンの各電荷間隔に対する相対変化の合計をスキャンの時間に対してプロットするように構成してよい。コントローラは、各質量対電荷間隔の基本平均イオン電流を特定し、該質量対電荷間隔は少なくとも1つの質量対電荷チャネルを含み、該電荷間隔の現在のイオン電流測定値と該電荷間隔の基本平均との相対変化を計算し、スキャン内の各電荷間隔の相対変化の合計を計算し、相対変化の合計をしきい値と比較し、相対変化の合計が閾値を超えるという決定に応答して、フラクションコレクタを用いてフラクション収集を開始するように構成してよい。コントローラは、質量対電荷チャネルのスキャンにおいてイオン電流測定値にアルゴリズム平滑化を適用するように構成してもよい。コントローラは、質量対電荷チャネルのスキャンにおける相対変化にアルゴリズム平滑化を適用するように構成してもよい。リキッドハンドラはフラクションコレクタであってよい。制御信号は、フラクションコレクタにフラクション収集を開始させるものとしてよい
【0007】
本明細書に記載の主題の特定の実施形態は以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するように実施することができる。フラクション物質の収集を改善することができ、未知の試料の質量分析に基づいて制御信号を生成することができ、そしてデータ分析/可視化を改善することができる。
【0008】
本明細書に記載の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。主題の他の特徴、態様、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
様々な図面中の同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、質量分析法に基づいて制御信号を生成することができる例示的な環境を示す。
図2図2は、質量分析を用いて下流プロセスを制御するためにシステムを示す。
図3図3A-Cは、溶媒フロー中の安息香酸のフローインジェクション分析のグラフである。
図4図4A-Bは、溶媒フロー中のエタノール 7- [1-(4-フルオロフェニル)-4-イソプロピル-2-フェニル-1H-イミダゾール-5-イル] -5-ヒドロキシ-3-オキソ - トランス-6-ヘプテン酸エチルのフローインジェクション分析である。
図5図5は、800秒間にわたる10%有機分から100%有機分への勾配溶媒流を用いた還元ヒト抗体のRP- HPLC - MS分析のグラフである。
図6A】制御信号を生成するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図6B】制御信号を生成するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図6C】制御信号を生成するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、未知の試料の質量分析に基づいて制御信号を生成することができる例示的な環境を示す。サンプル(エレクトロスプレープローブ102によって表される)は、加熱キャピラリインレット104を通して気化領域および/またはイオン化領域に供給される。気化領域および/またはイオン化領域は、試料を気化させ、気化された試料の粒子をイオン化させる。イオン化された元素および分子は、イオンビームとしてイオンガイド(例えば四重極、六重極、八重極など)領域108を通過することができる。一般に、六重極領域(またはブリッジ)は、イオンビームを集束させるために使用することができ、その結果、元素および分子は細いビームとして六重極領域を離れる。
【0012】
四重極アナライザ110内において、イオン化されたサンプルは電界にさらされ、異なる経路に沿って偏向され得る。
【0013】
イオン化されたサンプルが偏向される程度はイオンの質量およびイオンの電荷の関数である。適切な質量対電荷比を有するイオンのみが検出器114に到達し、検出される。電界を変化させると、どの質量対電荷比が所望のまたは安定な軌道になるか変化し、異なるイオンが検出器114に到達することが可能になる。一般に、質量分析計は異なる質量対電荷チャネルを循環する。
【0014】
コントローラ116は、検出器114から(または検出器114から情報を取得する質量分析計から)情報を受信し、電界に関する情報と合わせて、試料の特性について決定を行い、これらの決定に応答して制御信号118を送信することができる。
【0015】
一般に、制御信号118は、質量分析計分析システム(例えば、フローインジェクション分析(FIA)質量分析、揮発性大気圧化学イオン化(vAPCI)質量分析、またはクロマトグラフィ、例えば逆相高速液体クロマトグラフィ(RP - HPLC)、フラッシュクロマトグラフィ質量分析またはイオンクロマトグラフィ質量分析)への液体状、蒸気状、または気体状の未知化合物のフローのいずれかから決定することができる。これらの各システムは、時間領域での分析物とマトリクスの分離によって特徴付けられ、分離されていない、部分的に分離されている、またはベースライン分離されれている分析時間にわたって質量分析システムのイオン源への化合物のシーケンシャル供給をもたらす。
【0016】
制御信号118は、リキッドハンドラ(例えばフラクションコレクタ、フラグメンテーション装置)などの下流のハードウェアコンポーネントを制御し、分析実行中に質量分析計の設定を変更し(例えばフラグメンテーションをもたらす)、またはデータ出力の変更に使用できる。
【0017】
コントローラ116はまた、ポストアクイジションデータ処理に使用することができ、データ分析を自動データマーキングおよびラベリングに導いて質量分析データの視覚化を向上させることができる。
【0018】
図2は下流プロセスを制御するために質量分析を使用するシステムを示す。質量分析計204は、分析物含有試料を質量分析計204のイオン発生源に輸送するために、フローデリバリシステム202と結合することができる。イオン化後に、質量分析計アナライザが生成されたイオンをそれらの質量対電荷比により分離し、質量分析検出器がm/z(質量対電荷)比によって決まるイオン電流信号を供給する。その後、データ処理によって試料から関心のある分析物を同定し、特性化し、そして定量することができる。
【0019】
フローデリバリシステム202は、気相または蒸気相中の分析物が質量分析計に一括供給されることを特徴とする揮発性大気圧化学イオン化法(vAPCI)、分析物がMSシステムのイオン源に向け一括供給されるが溶媒流またはワークフロー中にクロマトグラフィ分離物質をさらに含むことを特徴とするフローインジェクション分析法(FIA)、例えば逆相HPLC、フラッシュクロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィなど、の方法を含むことができ、それらはすべてさらに時間領域における分析物およびマトリックスの分離(または部分分離)ならびにMSシステムのイオン源への連続供給を特徴とする。
【0020】
多くのワークフローにおいて、質量分析計204はフローストリームからの流出物の一部を分析するのみで、フローの大部分または小部分は更に下流処理部(例えば追加の検出器システム)のためにまたはフローの別々のフラクションの物理的収集(ダウンストリームハードウェアコンポーネント)のために使用される。これらの設定において、質量分析検出信号は、試料中の未知の分析物の自動収集および処理のために、コントローラ206によって下流のフラクションコレクタ208を制御するのに使用することができる。
【0021】
以下でさらに論じるように、コントローラ206は、質量分析計204から信号を受け取り、その信号に基づいて下流プロセスをトリガすることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ206は、質量分析計204または(リキッドハンドラ208などの)下流の構成要素と統合してもよい。いくつかの実装形態では、コントローラは、独立型ハードウェア構成要素、または質量分析計204および下流構成要素に結合されたコンピュータとしてもよい。いくつかの実装形態では、試料は、フローデリバリシステム202から直接下流構成要素に向けられる。下流構成要素は、試料に対して行われた作用を示すためにコントローラから信号を受け取る。フローデリバリシステム202は、質量分析計/コントローラと下流構成要素との間のフローを、下流構成要素に送信される制御信号がフローデリバリシステムから下流構成要素へのフローと一致するように調整することができる。
【0022】
質量分析計204は多数のチャネルのイオン電流データを提供し、関心分析物の質量対電荷比(チャネル)は通常分析前に知られていないので、下流の外部装置、例えばリキッドハンドラ208をトリガすることは困難である。さらに、検出される分析物の質量対電荷イオン電流信号は、通常、他の背景または汚染イオン電流信号(例えば、溶媒、周囲空気または他の汚染物質からの)と比較して小さく、経時的なイオン電流信号挙動は、例えばブロック、ガウス、ガウステーリング、ガウスフロンティングなどの様々な形態をとり得る。
【0023】
図3A-Cは0.1%酢酸を含む200μL/分のアセトニトリルの溶媒流中の安息香酸のフローインジェクション分析のグラフである。アセトニトリルに溶解した10ng/μLの5μL注入を90秒の時間枠内で3回注入し、質量分析計を500msのスキャン時間中に陰イオンモードでm/z10-2000をスキャンするように設定した。
【0024】
本明細書で使用されるように、スキャンは、すべての質量対電荷間隔にわたる質量分析計測定のサイクル(例えば、10~2000m/zのスキャン)を指す。質量分析計は、試料に対して1回以上のスキャンを実行し得る。
【0025】
図3Aは、結果として得られるトータルイオン電流(TIC)を示すグラフ302である。全てのチャンネルの全ての信号強度の現在値が合計され、時間に対してプロットされる。グラフ302は、質量分析に基づいて下流システムを制御することに対する1つの課題を例示する。分析物に対する比較的高い電流信号でさえも、異なるチャネルにおける、および異なるm/z値における背景イオン電流の強度、数量、およびランダムな変動によって消されてしまう可能性がある。その結果、(グラフに示されているように)有用な信号対雑音比を有する識別可能なピークは見えなくなるか、またはトリガ決定を行うために利用することができなくなる。
【0026】
図3Bは、(M-H)脱プロトン化分子について121.1のm/zを有する既知の分析物安息香酸の抽出イオン電流(XIC)のグラフ304である。線312は、下流構成要素に対する潜在的なトリガ基準をシミュレートする。溶媒流への3回の注入によるMSシグナルはここでは(ピーク306、308、および310として)はっきりと見える。抽出されたイオン電流は、試料のより良いグラフィック表示を提供し、さらなる事象(例えば、ピーク306、308、310)をトリガするための閾値レベルの決定を可能にする。しかしながら、抽出イオン電流は特定のm/z間隔に対してのみ測定可能である。したがって、抽出イオン電流は、関心のある分析物のm/z間隔の予備知識およびMS設定のイオン化条件下での当該分析物のイオン化プレファレンスについての知識(例えば、分析物の知識、その塩化合物の形成、形成されたイオンの荷電状態、極性など)を必要とする。従って、抽出イオン電流は実用的に使用が限定される。
【0027】
図3Cは、m/z比の予備知識なしに下流システムをトリガすることを可能にするディスカバリイオン電流(DIC)のグラフ320である。ディスカバリイオン電流(DIC)は、分析物の予備知識の必要なしに、大幅に向上した信号対雑音比を有する、XICまたはTICと同様の電流信号を提供する。
【0028】
DICは、m/zスキャン全体にわたる、任意のm/zチャネルのコントリビュータ(塩化合物または複数の荷電種による複数のコントリビュータを含む)による、最高のイオン信号レートの変化を示す。 DICは、閾定義(線322によって表される)が下流構成要素(例えば、ピーク314、316、および318)をトリガすること、または現在のMSパラメータを変更すること、またはさらにm/zコントリビュータを視覚化することを可能にする。
【0029】
後処理において、DICは、ユーザーガイダンスがデータを分析の特定の時点で他の時点と比較してさらに分析することを可能にする。
【0030】
DICは、固定小数点相対変化合計またはローリング相対変化合計のいずれかを使用して計算することができる。固定小数点相対変化合計は、分析ラン全体の各スキャンにおいてほぼ一定の背景信号を特徴とする分析(例えば、MSに向けられたフローの一部を使用するFIA-MS、vAPCI-MS、Flash-MS)と共に最もよく機能する。ローリング相対変化DICは、例えば、分析時間にわたって流速、溶媒フローの組成または温度の変化に起因する背景イオン電流信号の緩やかな変化を特徴とする分析方法(例えば、RP-HPLC-MS、GC-MSまたはイオンクロマトグラフィ質量分析)に使用することができる。
【0031】
合計の定点変化は、例えば、分析実行の開始前または分析の開始時にいくつかの数(1~x)の質量分析スキャンを使用して決定することができる。一般に、1回の質量分析スキャンは、選択された質量対電荷比(例えば、 1スキャン当たり500ms、10~2000m/z範囲、1チャネル当たり0.05m/zは39,800チャネルをもたらし、それぞれイオン電流信号を有する)をカバーするために、設定された時間枠(スキャン時間)内での設定された数のm/z間隔(ビンまたはチャネル)のイオン電流測定値を含む。これらのスキャンは、陽イオンのm/z範囲、陰イオンのm/z範囲、またはその両方を同時にスウィープすることができる。
【0032】
コントローラは、選択されたスキャン数(1~x)内で、各m/zチャネル(またはm/z間隔と呼ばれる処理/メモリ負荷を軽減するためのm/zチャネルのビンのより大きいグループ)の平均イオン電流を決定することができる。
【0033】
分析ランのその後のスキャンごとに、コントローラは、実際のスキャン対各m/z間隔、ビン、またはチャネルに対する初期平均の相対的な変化(パーセント変化、パーセント差、または1次導関数)を計算できる(いくつかの実施形態では、ランダムノイズスパイクの影響を低減するために、計算前または計算後にフィルタリングオプション、例えば、n=3のスキャンメジアン、ボックスフィルタ、またはその他のアルゴリズムフィルタリングを使用することができる)。
【0034】
コントローラは、スキャン内のすべての相対変化値を合計するか、または特定のしきい値を超える値を単に合計する(たとえば、スキャン前の平均から2倍以上増加するm/zチャネルまたはビンだけを合計する)ことができる。
【0035】
コントローラは、ディスカバリイオン電流を生成するために、各スキャンに対する合計をスキャンの時間に対してプロットすることができる。
【0036】
単一チャンネルからの、またはすべての値の合計に対する、または連続するx回のスキャンにおける相対的な変化値が選択された閾値を上回るまたは下回る場合、トリガ信号を用いて下流のハードウェアコンポーネントを制御する、または質量分析システムのソフトウェアまたはハードウェア動作パラメータを変更する、または表示されたデータのグラフィック出力を変更する(たとえば、タイムスケールにフラグマークを付ける、またはしきい値を超えたまたは下回った実際のm/z値を表示する)ことができる。
【0037】
図4A-Bは、90/10アセトニトリル/0.5%ギ酸を含む水の500μL/minの溶媒フロー中の7-[1-(4-フルオロフェニル)-4-イソプロピル-2-フェニル-1H-イミダゾール-5-イル]-5-ヒドロキシ-3-オキソ-トランス-6-ヘプテン酸エチルのフローインジェクション分析である。アセトニトリルに溶解した20ng/μLの5μLを80秒の時間枠内で1回注入し、質量分析計を、500msのスキャン時間でm/z10-2000をポジティブおよびネガティブモードの両モードでスキャンするように設定した。
【0038】
図4Aは、その結果のトータルイオン電流を示すグラフ402である。全てのチャンネルにおける全ての信号強度のプロットは合計され時間に対してプロットされ、小さな信号変化404(<1e1)が14~20秒の時間範囲に見える。
【0039】
図4Bは、14~20秒の時間枠内で有意なイオン信号速度変化(>1e6)408を有するディスカバリイオン電流(DIC)を示すグラフ406である。このプロットの信号対雑音比は分析物の溶出時間を簡単に識別することを可能にし、トリガ決定を容易にする。この場合も、分析物のm/zまたは極性についての予備知識は必要とされない。
【0040】
いくつかの実施態様では、システムは、イオン極性の予備知識なしに、負イオン極性または正イオン極性のいずれかも分析することができる
【0041】
DICは、ローリングポイント相対変化合計を使用して計算することもできる。この場合には、生成されるDICは、MS検出器を通過する(例えば、クロマトグラフ分離から溶出する)各新分析物に対するスパイク(ピーク)を示す。例えば、図5は、800秒間にわたる10%有機分から100%有機分への勾配溶媒フローを用いた還元型ヒト抗体のRP-HPLC-MS分析のグラフ500である。この急勾配ラン中に、抗体の軽鎖は抗体の重鎖よりもわずかに早く溶出する。 TIC線502は結果として得られるトータルイオン電流(TIC)を示し、全てのチャネルの全ての信号強度を合計し時間に対してプロットしたものである。約480秒(504ポイント)と520秒(506ポイント)に2つの非常に強い信号が少なくとも480秒の有意な立下りを伴って見えるが、クロマトグラフィ分離が部分的にすぎないのでどこで2番目の信号が開始するかは不明である。ローリング変化線508は、RP-HPLCシステムから溶出する2つのピーク(点510および512)のそれぞれの左側面に2つの強い信号を有するディスカバリイオン電流(DIC)を示す。ここで、ローリングDICは2番目のピークの溶出の開始を示し、外部プロセスを起動するか、オンラインのMSハードウェア設定または収集後のデータ分析を案内することができる。この場合も、試料の少なくとも2つの主成分を示すために試料組成に関する予備知識は必要とされない。
【0042】
ローリングポイントDICを使用すると、先に収集された分析物1の純度を向上させるともに、分析物1がすでに検出されているかどうかにかかわらず、第2の収集バイアルに収集された成分2の総量を増やすために、下流のハードウェアコンポーネントをトリガし、成分1に対する現在のフラクション収集の停止をトリガし、新しいフラクション収集を強制するための閾値決定を行うのに十分なイオン電流信号が得られる。
【0043】
いくつかの実施形態では、停止トリガは、一定の時間、ローリング相対変化DICによる次のバイアルに移る指示、一定の相対変化DIC、ローリング相対変化DICのアルゴリズムにより決定されるXIC、または分析ランの終了によって設定され得る。
【0044】
ローリング相対変化DICは、分離不良のピークに対して分離媒体から溶出する新たな分析物の開始を示すことができ、さらに案内されるデータ分析に対するオンライン処理でも後処理でも同様である。
【0045】
図6A図6Cは、制御信号を生成する例示的なプロセスのフローチャート600である。このプロセスは、質量分析計と、質量分析計からの信号を処理するコントローラとを含むシステムによって実行することができる。この例では、システムはフラクションコレクタの形態のリキッドハンドラを含む。フラクション収集に関して説明されるが、このプロセスは他の環境で使用されてもよく、他の下流構成要素に信号を提供してもよいことが理解される。
【0046】
プロセスはイオン電流を測定する(602)。イオン電流値は、要求されたスキャン範囲内ですべてのm/zチャネルについて測定することができる。
【0047】
プロセスは、受信されたm/zチャネルの数がしきい最大間隔数よりも大きいかどうかを決定する(604)。
【0048】
受信されたm/zチャネルの数が閾最大間隔数よりも大きい場合、プロセスは、m/zチャネルデータをビンに均等に分配する(606)。m/zチャネルデータは各ビンにわたって平均される。
【0049】
プロセスは、十分な数のプリスキャンが記録されたかどうかを決定する(606)。十分な数のプリスキャンは、しきいスキャン数に基づいて決定されてもよい。所定数のプレスキャンが記録されていない場合、プロセスはイオン電流測定に戻る(602)。
【0050】
所定数のプレスキャンが記録された場合、プロセスは、データのフィルタリングおよび/または平滑化が要求されているかどうかを決定する(608)。フィルタリングおよび/または平滑化が要求されている場合、プロセスは、近位のm/z間隔にわたってデータをフィルタリングおよび/または平滑化する(610)。
【0051】
プロセスは、図6Aの点612aが図6Bの点612bにつながり継続する。
【0052】
プロセスは、要求されたスキャン範囲内のすべてのm/z間隔にわたってイオン電流値を測定する(614)。
【0053】
プロセスは、受信したm/zチャネルの数がしきい最大間隔数よりも大きいかどうかを判断する(615)。
【0054】
受信したm/zチャネルの数がしきい最大間隔数よりも大きい場合、プロセスはm/zチャネルデータをビンに均等に分配する(617)。 m/zチャネルデータは各ビンにわたって平均される。
【0055】
プロセスは、データのフィルタリングおよび/または平滑化が要求されているかどうかを決定する(616)。フィルタリングおよび/または平滑化が要求されている場合、プロセスは、隣接するm/z間隔にわたってデータをフィルタリングおよび/または平滑化する(618)。
【0056】
プロセスは、その間隔のプリスキャン平均から各間隔の相対変化を計算する(620)。いくつかの実装形態では、平均は、ローリング方式で(たとえば、最後の5つの現在値から)決定してよい。
【0057】
プロセスは、しきい値を超える個々の間隔があるかどうかを判断する(個々のビンしきい値が設定されている場合)(622)。もしそうであれば、プロセスは、フラクションの収集を開始するための信号を送信する(624)。
【0058】
プロセスは図6Bの点626aが図6Cの点626bにつながり継続する。 6C。
【0059】
プロセスは、最小および/または最大しきい間隔値を合計に含めるかどうかを決定する(628)。そうである場合、プロセスは、基準を満たさない間隔値を0に設定する、および/またはそれらの間隔を合計から除外する(630)。
【0060】
プロセスは、スキャン中のすべてのビンの値の相対変化を合計する(632)。
【0061】
いくつかの実装形態では、プロセスは、相対シムデータポイントをユーザインタフェース上のDIC対時間のグラフにプロットする(634)。
【0062】
プロセスは、合計閾値セットに相対変化があるかどうかを決定し、そうであれば、現在の合計がその閾値を超えるかどうかを決定する(636)。
【0063】
現在の合計が設定された閾値を超える場合、プロセスは、収集を開始または継続するようにフラクションコレクタに信号を送信する(638)。
【0064】
プロセスが、追加のスキャンが必要とされるかどうかを決定する(640)。もしそうであれば、プロセスは図6の点612cが図6Cの点612bにつながり継続する。そうでなければ642で終了する。
【0065】
本明細書に記載された主題の実施形態および動作は、本明細書に開示された構造およびそれらの構造上の均等物を含むデジタル電子回路、あるいはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェア、あるいはそれらの1つ以上の組み合わせで実施できる。本明細書に記載の主題の実施形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム(すなわち、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュール)として実装できる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリアレイまたは装置、あるいはそれらの1つまたは複数の組み合わせとしても、それらに含めてもよい。コンピュータ記憶媒体は、1つまたは複数の別々の物理的構成要素または媒体(たとえば、複数のCD、ディスク、または他の記憶装置)としても、またはそれらに含めてもよい。コンピュータ記憶媒体は、非トランジトリなものとしてよい。
【0066】
本明細書で説明されている動作は、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶装置に記憶された、または他のソースから受信されたデータに基づいてデータ処理装置によって実行される動作として実装することができる。
【0067】
「データ処理装置」という用語は、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、および機械、例えばプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、チップ上のシステム、または上記の複数のもの、あるいはそれらの組み合わせを包含する。この装置は、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路))を含むことができる。この装置は、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムの実行環境を作成するコード(例えば、プロセッサフファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、またはそれらの1つ以上の組み合わせを構成するコード)も含むことができる。この装置および実行環境は、ウェブサービス、分散コンピューティングおよびグリッドコンピューティングインフラストラクチャなどの様々な異なるコンピューティングモデルインフラストラクチャを実現することができる。
【0068】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイル言語またはインタープリター言語、宣言型または手続き型またはオブジェクト指向または関数型言語など、任意の形式のプログラミング言語で記述でき、且つスタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、サービス、オブジェクト、あるいはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど、あらゆる形式で展開することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもそうである必要はないが、ファイルシステム内のファイルに相当するものとしてよい。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語文書に格納された1つまたは複数のスクリプト)に、問題のプログラム専用の単一ファイルに、または複数の協調ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納してよい。コンピュータプログラムは、1つのサイトに配置されるかまたは複数のサイトに分散され、通信ネットワークによって相互接続される1つのコンピュータまたは複数のコンピュータ上で実行されるように展開してよい。
【0069】
本明細書に記載のプロセスおよび論理フローは、入力データを操作して出力を生成することによって動作を実行するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実行することができる。プロセスおよび論理フローは、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路))によって実行することもでき、また装置として実装することもできる。
【0070】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用および専用マイクロプロセッサ、および任意の種類のデジタル、アナログまたは量子コンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、またはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令に従って動作を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを格納するための1つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータはまた、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶装置(例えば、電子、磁気、光磁気ディスク、または光ディスク)からデータを受信する、またはそこにデータを転送するように動作可能に結合される。しかしながら、コンピュータはそのような装置を有する必要はない。さらに、コンピュータは、他の装置、ほんの数例を挙げると、(例えば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、モバイルオーディオまたはビデオプレーヤ、ゲーム機、GPS受信機、またはポータブル記憶装置(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)に内蔵してよい。コンピュータプログラムの命令およびデータを格納するのに適した装置は、例として半導体メモリ装置(例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置)、磁気ディスク(例えば、内部ハードディスクまたはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD-ROMディスクなどのあらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体およびメモリ装置などを含む。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路で補完しても、またはそれに内蔵してもよい。
【0071】
ユーザとの対話を提供するために、本明細書に記載の主題の実施形態は、ユーザに情報を表示するための表示装置(例えば、CRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタ)とユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボードおよびポインティングデバイス(たとえば、マウスまたはトラックボール)を有するコンピュータに実装することができる。ユーザとの対話を提供するために他の種類の装置を使用することもでき、例えば、ユーザへのフィードバックは任意の形態の感覚フィードバック(例えば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、または触覚的フィードバック)としてよく、ユーザからの入力は、音響、音声、または触覚入力などの任意の形態で受信されるものとしてよい。さらに、コンピュータは、ユーザが使用する装置と文書を送受信することによって(例えば、ユーザから受信した要求に応答してウェブページをユーザ装置のウェブブラウザに送信することによって)対話することができる。
【0072】
本明細書に記載の主題の実施形態は、バックエンドコンポーネント(たとえばデータサーバとして)、ミドルウェアコンポーネント(たとえばアプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(たとえば、ユーザが本明細書に記載の主題の実施形態と対話することができるグラフィカルユーザインタフェースまたはウェブブラウザを有するユーザコンピュータ)、あるいは1以上のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムにより実施することができる。システムの構成要素は、任意の形態または媒体のデジタルまたは光データ通信(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えばインターネット)、およびピアツーピアネットワーク(例えばアドホックピアツーピアネットワーク)を含む。
【0073】
コンピューティングシステムはユーザおよびサーバを含み得る。ユーザとサーバは一般に互いに離れており、通常は通信ネットワークを介して対話する。ユーザとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行される互いにユーザ- サーバ関係にあるコンピュータプログラムによって生じる。いくつかの実施形態では、サーバはデータ(例えばHTMLページ)をユーザ装置に送信する(例えばユーザ装置と対話するユーザにデータを表示し、ユーザからユーザ入力を受け取るために)。ユーザ装置で生成されたデータ(例えば、ユーザとの対話の結果)はユーザ装置からサーバで受信することができる。
【0074】
本明細書は多くの具体的な実施詳細を含むが、これらはいかなる発明の範囲または請求の範囲を限定するものではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。本明細書において別々の実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴はまた、複数の実施形態において別々にまたは任意の適切な部分的に組み合わせて実装することもできる。さらに、様々な特徴が特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明されているかもしれないが、当初はそのように請求されていたとしても、場合によっては、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴をその組み合わせから削除し、その組み合わせを部分的組み合わせにまたは部分組み合わせの変形として請求することができる。
【0075】
同様に、動作は特定の順序で図に示されているが、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続的な順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることが必要であると理解すべきでない。特定の環境では、マルチタスキングおよび並列処理が有利な場合がある。さらに、上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムは一般的に単一のソフトウェア製品に統合する、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化することができると理解すべきである。
【0076】
このように、主題の特定の実施形態が説明されている。他の実施形態は後記の特許請求の範囲内に含まれる。場合によっては、請求項に記載されている動作は異なる順序で実行することができ、それでも望ましい結果を達成することができる。さらに、添付の図面に示されたプロセスは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序または連続的な順序を必ずしも必要としない。特定の実装形態では、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6A
図6B
図6C