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特許7229164グラフェン型基板上に成長させたナノワイヤをベースとしたレーザ又はLED
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】グラフェン型基板上に成長させたナノワイヤをベースとしたレーザ又はLED
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20230217BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20230217BHJP
   H01S 5/20 20060101ALI20230217BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20230217BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20230217BHJP
   H01L 33/10 20100101ALI20230217BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
H01S5/20
H01S5/343 610
H01L33/08
H01L33/10
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2019542140
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018052836
(87)【国際公開番号】W WO2018141974
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】1701829.2
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512101187
【氏名又は名称】ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フィムランド、ビョルン オヴェ マイキング
(72)【発明者】
【氏名】ヴェマン、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】レン、ディンディン
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/009394(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128540(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0098705(US,A1)
【文献】特表2009-542560(JP,A)
【文献】特表2013-532621(JP,A)
【文献】特開2012-222001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H01L 33/00-33/64
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ前記グラファイト基板の前記ナノワイヤとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と、
を含み、
前記ナノワイヤが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、任意に該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項2】
前記領域のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーが、前記グラファイト基板の反対側の面と接触している、請求項1及び2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記n型ドープ領域又はp型ドープ領域が、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記真性領域が存在し、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは少なくとも1つの量子ヘテロ構造を含み、
任意に、前記領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記グラファイト基板の反対側の面に対して実質的に平行で且つ接触している透明スペーサ層と、
前記透明スペーサ層に対して実質的に平行で且つ接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と
を含み、
前記ナノワイヤが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、任意に該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項7】
前記領域のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、好ましくは、前記真性領域が、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
グラフェンガラスが、前記グラファイト基板と前記透明スペーサ層とを形成する、請求項6又は7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ヘテロ構造が、量子ヘテロ構造である、請求項2、4、5又は7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ヘテロ構造が、量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される、請求項2、4、5又は7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ナノワイヤが、p型GaN/真性InGaN/n型GaNのナノワイヤ構造を含む、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ナノワイヤが、p型Al(Ga)N/真性(Al)(In)GaN/n型Al(Ga)Nのナノワイヤ構造を含む、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ前記グラファイト基板の前記ナノワイヤとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と
を含み、
前記ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項14】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記グラファイト基板の反対側の面に対して実質的に平行で且つ接触している透明スペーサ層と、
前記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ前記グラファイト基板の前記ナノワイヤとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と
を含み、
前記ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項15】
グラフェンガラスが、前記グラファイト基板と前記透明スペーサ層とを形成する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と
を含み、
前記ナノワイヤが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、任意に該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項17】
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは前記グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体ナノワイヤと、
前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡と
を含み、
前記ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイス。
【請求項18】
前記ナノワイヤの成長方向と実質的に平行で且つ同一の方向に光が放出される(レーザ発光される)か、又は、前記ナノワイヤの成長方向と実質的に平行で且つ反対の方向に光が放出される(レーザ発光される)、請求項1~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記分布ブラッグ反射鏡が、異なるIII-V族半導体の交互に重なる層を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記分布ブラッグ反射鏡が、誘電材料の交互に重なる層を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ナノワイヤが、Ga、In又はAlを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ナノワイヤが、As、Sb、P又はNを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ナノワイヤが、Ga及び/又はIn及び/又はAlをAs及び/又はSb及び/又はPと共に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記ナノワイヤが、Ga及び/又はIn及び/又はAlをNと共に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つのヘテロ構造が、量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される、請求項13、14及び17のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記真性領域が、Alイオン及び/又はGaイオン及び/又はInイオンとSbイオン及び/又はAsイオン及び/又はNイオンとから成るヘテロ構造を含む、請求項1、6、および16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記ナノワイヤが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
グラファイト基板であって、該グラファイト基板の一方の面に該グラファイト基板と実質的に平行な第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを有するグラファイト基板を用意する工程と、
前記グラファイト基板の前記分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーとは反対側に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と、を含む、
共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【請求項29】
前記ナノワイヤが、真性領域によって隔てられたn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む請求項28に記載の作製プロセス。
【請求項30】
前記領域のうちの少なくとも1つ、前記真性領域などが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記3つのナノワイヤ領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項28又は29に記載の作製プロセス。
【請求項31】
グラファイト基板であって、該グラファイト基板の一方の面に該グラファイト基板と実質的に平行な第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを有するグラファイト基板を用意する工程と、
前記グラファイト基板の前記分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーとは反対側に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と、を含む、
共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【請求項32】
前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーが、前記グラファイト基板と実質的に平行であり、且つ接触している、請求項28から31のうちのいずれか一項に記載の作製プロセス。
【請求項33】
第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、グラファイト基板と接触している透明スペーサ層と接触させて設ける工程と、
前記グラファイト基板の前記スペーサ層とは反対側に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と、を含む、
請求項6に記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【請求項34】
前記真性領域が、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、前記3つのナノワイヤ領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、請求項33に記載の作製プロセス。
【請求項35】
第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、グラファイト基板と接触している透明スペーサ層と接触させて設ける工程と、
前記グラファイト基板の前記スペーサ層とは反対側に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と、を含む、
請求項14に記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【請求項36】
前記グラファイト基板と前記透明スペーサ層とがグラフェンガラスによって形成される、請求項33から35のうちのいずれか一項に記載の作製プロセス。
【請求項37】
請求項16に記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセスであって、
それぞれ、グラファイト基板又はグラフェンガラスを用意する工程と、
前記グラファイト基板上に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と
を含む、作製プロセス。
【請求項38】
請求項17に記載の記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセスであって、
それぞれ、グラファイト基板又はグラフェンガラスを用意する工程と、
前記グラファイト基板上に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、前記ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、
第2の光反射鏡であって、前記ナノワイヤが、前記第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、前記第2の光反射鏡との間に配置され、光共振器を画定するような第2の光反射鏡を設ける工程と
を含む、作製プロセス。
【請求項39】
前記グラファイト基板上に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、任意に、該3つのナノワイヤ領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
任意に、分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、
前記グラファイト基板を、分布ブラッグ反射鏡若しくは金属ミラー又は分布ブラッグ反射鏡上の透明スペーサ層若しくは金属ミラー上の透明スペーサ層に転写する工程と、を含む、
請求項1から12及び16から27のうちのいずれか一項に記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【請求項40】
前記ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含む、請求項39に記載の作製プロセス。
【請求項41】
前記グラファイト基板上に、好ましくは前記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体ナノワイヤをエピタキシャル成長させる工程であって、該ナノワイヤが、少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該ナノワイヤのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、前記ナノワイヤの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、
前記グラファイト基板を、分布ブラッグ反射鏡若しくは金属ミラー又は分布ブラッグ反射鏡上の透明スペーサ層若しくは金属ミラー上の透明スペーサ層に転写する工程と、を含む、
請求項13又は14に記載の共振器型発光ダイオード(RCLED)デバイスまたはレーザデバイスの作製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)又は共振器型発光ダイオード(RCLED)などのデバイスに形成することのできるナノワイヤ(NW)の成長用透明基板としての薄いグラファイト層の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、適切なドーピングを含み、且つ、VCSEL又はRCLEDの形成を可能にするために2つの分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーの間に配置された量子井戸、量子ドット又は超格子のような量子ヘテロ構造を含み得るグラファイト基板上III-V族半導体NWの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
近年、ナノテクノロジーが重要な工学分野となるにつれ、半導体ナノ結晶(NWなど)への関心が高まっている。NWは、著者によっては、ナノウィスカー、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム等ともよばれ、センサー、太陽電池及び発光ダイオード(LED)などの様々な電気デバイスにおいて重要な用途を見出している。
【0004】
本発明は、グラファイト基板上に成長させたNWをベースとしたVCSEL、又は、同じ技術に基づくものであるが、レーザ発振閾値未満で動作するRCLEDに関する。
【0005】
レーザは、電磁放射の誘導放出に基づく光増幅のプロセスによって光を放出するデバイスである。「レーザ(laser)」という用語は、「放射の誘導放出による光増幅(light amplification by stimulated emission of radiation)」の頭文字をとったものである。レーザは、コヒーレントな光を放出する点で、他の光源とは異なる。空間的コヒーレンスによってレーザを非常に小さいスポットに集光させることができ、レーザ切断やリソグラフィーなどの応用が可能である。また、空間的コヒーレンスによってレーザビームを長距離にわたって細く保つことができ(平行化)、レーザポインタなどの応用が可能である。レーザは、時間的コヒーレンスも高く、そのことにより、スペクトル幅の非常に狭い光を放出することができる。すなわち、レーザは単色光を放出することが可能である。
【0006】
レーザは、その多くの応用例の中でも、光ディスクドライブ、レーザプリンタ及びバーコードスキャナ;DNAシーケンシング用機器、光ファイバー通信及び自由空間光通信;レーザ手術及びスキントリートメント;材料の切断及び溶接;標的をマークし距離及び速度を計測するための軍及び警察用デバイス(military and law enforcement devices);ならびにエンターテイメントにおけるレーザショーに用いられている。
【0007】
本発明は、とりわけナノレーザ及びナノLEDに関する。ナノレーザ及びナノLEDは、局所的レーザ冷却、ディスプレイ、エネルギー効率のよい固体照明、ウェアラブル・光エレクトロニクス、医療用デバイス及びレーザプリンタなどの新しい科学技術の発展を可能にする。しかしながら、ナノレーザを他の高度な光エレクトロニクスプラットフォームに集積化するための柔軟性の欠如が、ナノフォトニクス/光エレクトロニクス、物性物理学及びその他の応用的分野などにおけるナノレーザに基づいた研究及び応用の更なる発展を妨げている。
【0008】
通常、NWの幅は、数百ナノメートル以下程度(例えば、500nm~50nm)であり、アスペクト比(幅に対する長さの比)は10以上である。このような通常寸法から、NWは1次元(1D)異方性形状を有していると考えられることが多い。
【0009】
また、NWの寸法により、光が横方向の2次元でNW内に閉じ込められ得る。これは、ナノワイヤの直径が対称性を有するためである。この光閉じ込めは、NWの幅と、NWとその周囲の物質(例えば、空気又はフィラー)との間の屈折率の違いとによって起こる。光閉じ込めによって、光をNWの長さに沿って導くことが可能である。
【0010】
本発明者らは、1次元(1D)異方性形状を有することにより、NW構造自体が、(i)ファブリ・ペロー光キャビティ(optical cavity)(例えば、レーザ/RCLED光が内部で循環し得る)としても、(ii)レーザ/RCLED光の増幅に適し、キャリアの閉じ込め及び光の閉じ込めが強く且つ電子状態密度が高い利得媒質としても、働き得ることを理解している。これらの特性により、発明者らは、NW構造を用いてナノレーザ及びナノLEDを形成し得ることを見出した。このような、NW構造をベースとしたナノレーザ及びナノLEDは、それぞれ、NWレーザ及びNW LEDと広義に称される場合もある。そして、他のレーザ源よりも、性能の効率がよく、はるかに寸法が小さいことが期待されている。NW内の材料の構造及び/又は組成、NWの長さ及び幅(例えば、直径)を変えることにより、NWキャビティ内部でサポートされる光学モードを柔軟に調整し得る。
【0011】
特に、最近は、直接遷移型III-V族半導体NWレーザが、大変注目されている。これは、材料自体が、赤外(例えば、GaSb、InAs、GaAs)、可視(例えば、GaAsP、InGaN)から紫外(例えば、AlGaN、AlN)に及ぶ材料を含み、高性能なレーザを実現するのに最も有望であるからである。III-V族材料は空気との屈折率の差が大きく、そのことが、光を確実にNWキャビティ内部に有効に閉じ込めることを可能にし、室温でのレーザ発振挙動を安定させる。低いバンドギャップの材料で構成されたゼロ次元(0D)量子ドット(QD)構造をNW内部に組み込むこと、例えば、GaN NWにInGaN QDを組み込むことは、電子と正孔とをデルタ関数的な状態密度に制限する効率的な方法であり、低いレーザ発振閾値と高い温度安定性及びQ値(quality factor)とが得られる。
【0012】
従って、当然のことながら、NWレーザ及びNW LEDは多くの望ましい特性を実現し得る。しかしながら、現在までのところ、このようなNWレーザ及びNW LED、特にNW VCSEL及びNW RCLEDを作ることは、依然として難しく、いくつかの重大な科学的問題及び実際的問題が未解決のままである。これらの問題のうちのいくつかを以下に列挙するが、特にNW VCSEL/RCLEDのアレイを作製する(発光NWフォトニック結晶(PC)アレイを作るための隣接するNW VCSEL/RCLED間の光学的結合を誘起するのに望ましい)ためには、これらの問題に対処する必要がある。
【0013】
1.モノリシック集積化の難しさ。垂直III-V族NWレーザを分布ブラッグ反射鏡(DBR)又は金属ミラー上にエピタキシャル成長させることは難題である。例えば、GaAs系NWを[111]方向にエピタキシャル成長させるが、これは、GaAs(100)上に成長させた2次元(2D)GaAs/AlAs DBRとは合わない。
【0014】
2.電気励起レーザを作ることが難しい。これは、ミラーとして好適な多くのDBR材料が、低導電性であるか、又は絶縁性でさえあるためである。
【0015】
3.吸収する電気コンタクト。例えば、従来の透明ITOコンタクトによってUV光が多く吸収され、そのことにより、レーザ性能が著しく低下してしまう。
【0016】
本発明者らは、グラフェンなどのグラファイト基板上にNWを成長させることを含むNW VCSEL又はNW RCLEDを提案している。特に、本発明者らは、GaAs、GaN、AlN、InGaN、AlGaN及びAlInGaNのNWなどのIII-V族NWをグラフェン上に成長させることを検討している。本発明者らは、このようにして、グラフェンを、基板としてだけでなく、NW VCSEL/RCLEDに対する透明且つ導電性のコンタクトとして有利に使用する。また、本発明者らは、グラフェンが対象の電磁光波長全てにわたって透明であることから、グラフェンを、NWをベースとする発光デバイスのボトム支持体として、NWからグラフェンの下に置かれ得る構造までの光路を遮ることなく(例えば、下層にあるDBRまでの光路を遮ることなく)使用することができることも見出した。
【0017】
グラフェン上でNWを成長させることは、それ自体は新しいことではない。WO2012/080252号では、分子線エピタキシー(MBE)を用いてグラフェン基板上で半導体NWを成長させることについて検討されている。WO2013/104723号は、グラフェン上に成長させたNW上にグラフェントップコンタクトを使用する‘252号の開示事項の改良に関するものである。しかしながら、これらの先行文献は、レーザやLEDに関するものではない。より最近になって、本発明者らは、グラフェン上に成長させたコアシェルNWについて記載している(WO2013/190128号)。
【0018】
US2011/0254034号では、可視領域において発光するナノ構造LEDが記載されている。このデバイスは、基板から突出する一群のNWを有するナノ構造LEDを備えている。これらのNWは、pin接合を有し、各NWのトップ部は、電極としても機能し得る光反射コンタクト層で覆われている。電極と光反射コンタクト層との間に電圧を印加すると、NW内で光が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2012/080252号パンフレット
【文献】国際公開第2013/104723号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2011/0254034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、グラフェン型基板上に成長させたNWをベースにしたレーザやLED(すなわち、NWレーザ/LED)は、これまで誰も検討していない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
従って、本発明は、一態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含んでいてもよい、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0022】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含んでいてもよく、
上記領域のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、上記領域のうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0023】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記グラファイト基板の反対側の面に対して実質的に平行で且つ接触している透明スペーサ層と、
上記透明スペーサ層に対して実質的に平行で且つ接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含んでいてもよい、レーザデバイスなどのデバイスを提供する。
【0024】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、上記NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0025】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記グラファイト基板の反対側の面に対して実質的に平行で且つ接触している透明スペーサ層と、
上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、上記NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0026】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、該n型及びp型ドープ領域間に真性領域を含んでいてもよい、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0027】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のIII-V族半導体NWと、
上記NWの少なくとも一部のトップと接触している第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、少なくとも1つのヘテロ構造を含み、
任意に、上記NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、例えばレーザデバイスといった発光デバイスなどのデバイスを提供する。
【0028】
上記真性領域(活性領域)が存在することが好ましく、該真性領域は、量子井戸、量子ドット、又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含むことが好ましい。
【0029】
デバイスが光を放出する場合、光は、NWの成長方向と実質的に平行であり且つ同一の方向に放出される(レーザ発光される)ことが好ましい。分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーは、グラファイト基板と平行であることが好ましい。
【0030】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板の一方の面に、好ましくは該グラファイト基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、成長させた複数のNWと、
上記グラファイト基板と実質的に平行に配置され、且つ上記グラファイト基板の上記NWとは反対側の面に配置された第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、
任意に、上記NWの少なくとも一部のトップと電気的に接触している第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーと、を含み、
上記NWが、量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される複数の量子ヘテロ構造を含む真性領域(活性領域)によって隔てられたn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含み、
任意に、上記領域のうちの少なくとも1つが電子ブロック層を含む、レーザデバイスを提供する。
【0031】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板であって、該グラファイト基板の一方の面に該グラファイト基板と実質的に平行な第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを有するグラファイト基板を用意する工程と、
上記グラファイト基板の上記DBR又は金属ミラーとは反対側に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
任意に、第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、上記に記載のデバイスの作製プロセスを提供する。
【0032】
上記真性領域が存在することが好ましい。
【0033】
本発明は、別の態様において、
グラファイト基板であって、該グラファイト基板の一方の面に該グラファイト基板と実質的に平行な第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを有するグラファイト基板を用意する工程と、
上記グラファイト基板の上記DBR又は金属ミラーとは反対側に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
任意に、第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、デバイスの作製プロセスを提供する。
【0034】
本発明は、別の態様において、
第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、グラファイト基板と接触している透明スペーサ層と接触させて設ける工程と、
上記グラファイト基板の上記スペーサ層とは反対側に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
任意に、第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、デバイスの作製プロセスプロセスを提供する。
【0035】
本発明は、別の態様において、
第1の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、グラファイト基板と接触している透明スペーサ層と接触させて設ける工程と、
上記グラファイト基板の上記スペーサ層とは反対側に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
任意に、第2の分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、デバイスの作製プロセスを提供する。
【0036】
本発明は、別の態様において、
デバイスの作製プロセスであって、
それぞれ、グラファイト基板又はグラフェンガラスを用意する工程と、
上記グラファイト基板上に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、真性領域(活性領域)によって隔てられていてもよいn型ドープ領域とp型ドープ領域とを含む、工程と、
分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0037】
本発明は、別の態様において、
請求項17又は18に記載のデバイスの作製プロセスであって、
それぞれ、グラファイト基板又はグラフェンガラスを用意する工程と、
上記グラファイト基板上に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、上記NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0038】
本発明は、別の態様において、
上記グラファイト基板上に、好ましくは上記グラファイト基板上の孔パターンマスクの孔を通して、複数のIII-V族半導体NWをエピタキシャル成長させる工程であって、該NWが、好ましくは量子井戸、量子ドット又は超格子から選択される少なくとも1つのヘテロ構造を含み、任意に、該NWのうちの少なくとも1つが、電子ブロック層又は正孔ブロック層を含む、工程と、
任意に、分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラーを、上記NWの少なくとも一部のトップと接触させて設ける工程と、
上記グラファイト基板を、DBR若しくは金属ミラー又はDBR上の透明スペーサ層若しくは金属ミラー上の透明スペーサ層に転写する工程と、を含む、請求項13又は14に記載のデバイスの作製プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、集積NW/グラフェン/DBRレーザ又はRCLEDデバイスの製造プロセスの概要を示す。DBRとNWと反射率の高いNWトップミラーとのコヒーレント結合により、低閾値電流と高発光効率とを達成することを究極の目的とする、NWをベースとした垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)が示される。
図2】電気励起NWレーザ及び光励起NWレーザのいずれも、レーザ発振のための利得を高めるために、よりバンドギャップの低い材料とよりバンドギャップの高い材料とから成る軸方向のヘテロ構造(図2(a)及び図2(b))又は径方向のヘテロ構造(図2(c))を有するように設計される。
図3a】単一のGaAsSb/GaAsヘテロ構造化NWレーザの構造及びレーザスペクトルを示す。
図3b】単一のGaAsSb/GaAsヘテロ構造化NWレーザの構造及びレーザスペクトルを示す。
図3c】単一のGaAsSb/GaAsヘテロ構造化NWレーザの構造及びレーザスペクトルを示す。
図4a図4(a)では、ボトムDBR又は金属ミラーが、シリカ層などの透明中間層を備え、その上にグラフェン層が位置している。
図4b図4(b)では、DBRがNWのトップに位置しており、透明シリカ、例えば溶融シリカから成る支持体などの透明支持体がグラフェン層を担持するために用いられている。
図4c図4(c)は、図4(a)に示した構造の代替として選択できる構造を示し、グラフェンと透明中間層との代わりに、NWの成長時に支持体となることも可能なグラフェンガラスが用いられている。
図4d図4(d)では、ガラスがDBRを支持している。
図5a図5(a)は、成長したNW/グラフェン/DBR構造の概略を示す。
図5b図5(b)の光学画像に示されているように、剥離したグラフェンフレークをDBR反射鏡の上に配置した。
図5c図5(c)は、図5(b)中に赤丸で囲み「C」と印をつけたごく小さいグラフェンフレーク上に垂直にエピタキシャル成長させた長さ7μmのGaAsSb系超格子NWの30°傾斜SEM像である。
図5d】GaAs/AlAsのDBR構造について測定された正規化反射率を、図5(d)に青色曲線として示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[定義]
III-V族化合物半導体とは、III族から少なくとも1つの元素とV族から少なくとも1つの元素とを含むものを意味する。各族から2つ以上の元素が含まれていてもよく、例えば、AlGaN(すなわち、三元化合物)、AlInGaN(すなわち、四元化合物)などが挙げられる。Al(In)GaNという表示は、AlGaN又はAlInGaNのいずれかを意味する、すなわち、Inの存在は任意であることを意味する。括弧で囲まれた元素は、含まれていても含まれていなくてもよい。
【0041】
本明細書において使用するナノワイヤ(NW)という用語は、ナノメートル寸法の固体のワイヤー様構造を指す。NWは、好ましくは、NWの大部分、例えば、その長さの少なくとも75%にわたって均一な直径を有する。NWという用語は、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム又はナノウィスカーの使用を包含するものであり、それらのいくつかは、テーパー状末端構造を有する場合もある。NWは、本質的に、その幅又は直径がナノメートル寸法であり且つその長さが通常数百nm~数μmの範囲内である1次元形態であるといえる。理想的には、NWの直径は、50~500nmである。当然のことながら、普通は、NWがある一定の光学モードを閉じ込めて導波路として機能するには、ある特定の直径を有する。この特定の直径は、NWの有効屈折率と発光波長とによって決まる。
【0042】
理想的には、NWのベース及びNWのトップの直径は、ほぼ同一(例えば、互いの20%以内)であるべきである。
【0043】
当然のことながら、基板は、複数のNWを担持することが好ましい。これは、NWのアレイと呼ばれることがある。しかしながら、一実施形態において、レーザデバイスなどの発光デバイスを単一のNWを用いて開発することができると考えられる。
【0044】
基板用のグラファイト層は、単層又は複数層のグラフェン若しくはその誘導体から成る膜である。グラフェンという用語は、ハニカム結晶構造のsp2結合炭素原子の平面シートを指す。グラフェンの誘導体は、表面修飾されたものである。例えば、水素原子はグラフェン表面に結合してグラフェイン(graphane)を形成することができる。炭素原子及び水素原子と共に酸素原子が表面に結合したグラフェンは、酸化グラフェンと呼ばれる。表面修飾は、化学ドーピング又は酸素/水素若しくは窒素プラズマ処理によっても可能であり得る。
【0045】
エピタキシーという用語は、「上方に(above)」を意味するギリシャ語起源のepiと、「規則正しい状態に(in ordered manner)」を意味するtaxisに由来する。NWの原子配列は、基板の結晶構造に基づく。これは当技術分野でよく使用される用語である。本明細書において、エピタキシャル成長とは、基板の配向を模倣するNWの基板上での成長を意味する。NWはエピタキシャル成長させるのが好ましい。
【0046】
NWは、金属触媒支援気相-液相-固相(VLS)法又は無触媒法を用いてボトムアップ的にグラファイト基板上にランダムに成長させることができる。これらの方法では、NWの長さ及び直径が大きく変動する。ナノ孔パターンを有するマスクを基板上に用いて、位置決めされたNWを成長させることによって、より均一なNWを得ることができる。NWは、基板上のパターン化されたマスクの孔内で核生成する。これにより、NWは、均一なサイズで、所定の位置に得られる。選択領域成長(SAG)は、位置決めされた無触媒NWを成長させる非常に有望な方法である。この方法は、金属触媒がNWの成長のための核生成サイトとして機能する金属触媒支援VLS法とは異なる。
【0047】
マスクという用語は、グラファイト層上に直接堆積させたマスク材を指す。理想的には、マスク材は、放出光(赤外、可視、UV-A、UV-B又はUV-Cであり得る)を吸収しない。マスクはまた、電気的に非導電性でなければならない。マスクは、Al23、SiO2、Si34、TiO2、W23などを含む1つ又は2つ以上の材料を含み得る。その後、マスク材における孔パターンを、電子線リソグラフィー又はナノインプリントリソグラフィー及びドライエッチング又はウェットエッチングを用いて作製することができる。
【0048】
分子線エピタキシー(MBE)は、結晶基板上に堆積物を形成する方法である。MBEプロセスは、真空中で結晶基板を加熱して、基板の格子構造を活性化させることにより行われる。その後、原子ビーム又は分子量ビームを基板表面に照射する。上記で用いた元素という用語は、その元素の原子、分子又はイオンの適用を包含するものとする。照射された原子又は分子が基板の表面に到達すると、照射された原子又は分子は、以下に詳細に説明するように、基板の活性化された格子構造にぶつかる。時間の経過と共に、また、適切な成長パラメーターを用いることにより、入射原子がNWを形成する。
【0049】
有機金属気相成長法(MOCVD)とも呼ばれる有機金属気相エピタキシー法(MOVPE)は、結晶基板上に堆積物を形成するためのMBEの代替方法である。MOVPEの場合、堆積材料は有機金属前駆体の形態で供給され、高温の基板に到達すると分解し、基板表面に原子が残る。さらに、この方法は、基板表面全体にわたって堆積材料(原子/分子)を運ぶためにキャリアガス(通常、H2及び/又はN2)を必要とする。他の原子と反応するこれらの原子は、基板表面上にエピタキシャル層を形成する。堆積パラメーターを注意深く選択することにより、NWが形成される。
【0050】
当然のことながら、本発明のデバイスに使用されるNWは発光領域を含む。発光領域は真性領域を含み得る。発光領域内の注入/励起されたキャリアは、好ましくは、再結合して発光する。好ましくは、発光領域は、量子井戸、量子ドット、超格子、多重量子井戸又は多重量子ドットのようなヘテロ構造を1つ又は複数含む。好ましくは、量子井戸及び量子ドットは、それぞれ、直接遷移型量子井戸及び直接遷移型量子ドットである。理想的には、発光領域の真性領域は、1つ又は複数の量子ヘテロ構造を含み得る。発光領域の真性領域は、2つのクラッド領域に挟まれ得る。クラッド領域の一方はp型ドープ領域であり得る。他方のクラッド領域はn型ドープ領域であり得る。当然のことながら、真性領域がn型領域とp型領域とに挟まれることにより、NW内にpin接合が形成される。
【0051】
NWは、電子ブロック層若しくは正孔ブロック層、ヘテロ接合(例えばGaN/AlNヘテロ接合又は短周期超格子を含み得る。正孔ブロック層及び/又は短周期超格子はNWのn型領域内にあり得、別個の電子ブロック層及び/又は短周期超格子はNWのp型領域内にあり得る。いわゆる(バンドギャップ)「グレーディング層」としての短周期超格子は、発光領域へのキャリア輸送、ひいてはレーザ性能を向上させるために必要とされ得る。
【0052】
接合の方向は重要ではない(例えば、接合はn-i-pでもp-i-nでもよい)。ほとんどの場合、まずn型ドープ領域を成長させ、続いて、p型ドープ領域を成長させるか又は真性領域とp型ドープ領域とを成長させるのが好ましい。
【0053】
ヘテロ構造(例えば、量子井戸、量子ドット、超格子又は多重QW/QD)の性質は、NW自体の性質によって決まるが、当業者によれば容易に決定されよう。
【0054】
QWは、2つのよりバンドギャップの高い材料の領域に挟まれた低いバンドギャップの材料の領域を含む。よりバンドギャップの低い領域の幅は、ドブロイ波長程度のサイズであり、2つのよりバンドギャップの高い材料の領域の間に延びる。よりバンドギャップの低い材料は、よりバンドギャップの高い材料と接する2つのヘテロ接合部においてポテンシャルエネルギーの不連続な部分を形成する。ポテンシャルエネルギーの不連続な部分は、QWバンド構造の伝導帯及び/又は価電子帯に、キャリアをよりバンドギャップの低い材料に閉じ込めるための1次元ポテンシャル井戸を画定する。このポテンシャル井戸により、1つ又は複数の離散的エネルギー準位が形成されることになる。よりバンドギャップの低い領域内のキャリアは、ポテンシャル井戸に閉じ込められると、ある1つの離散的エネルギー準位を取る。
【0055】
QDは、よりバンドギャップの高い材料の領域によって実質的に取り囲まれた、低いバンドギャップの材料の領域を含む。よりバンドギャップの低い領域の寸法は、ドブロイ波長程度のサイズである。よりバンドギャップの低い領域は、よりバンドギャップの高い材料と接するヘテロ接合部においてポテンシャルエネルギーの不連続な部分を形成する。これらのポテンシャルエネルギーの不連続な部分は、QDバンド構造の伝導帯及び/又は価電子帯に3次元ポテンシャル井戸を画定する。この3次元ポテンシャル井戸は、3次元のすべての次元において、よりバンドギャップの低い領域にキャリアを閉じ込め得、1つ又は複数の離散的エネルギー準位が形成され得る。よりバンドギャップの低い領域内のキャリアは、ポテンシャル井戸に閉じ込められると、ある1つの離散的エネルギー準位を取り得る。
【0056】
分布ブラッグ反射鏡(DBR)は、ある周波数域内でほぼ全反射を実現するために用いられ得る、交互に重なる誘電体層又は半導体層から成る周期構造である。それは、屈折率の異なる材料が交互に重なる複数の層で形成される構造、又は、誘電体導波路の何らかの特性(高さなど)を周期的に変化させ、その結果として該導波路の有効屈折率が周期的に変化することによって形成される構造である。本発明のDBRは、誘電体であってもよく(その場合、グラファイト基板が電荷注入器となる)、半導体であってもよい。DBRは、グラファイト層と電気的に接触していてもよく、透明スペーサ層によってグラファイト層から隔てられていてもよい。透明という用語は、デバイスによって放出される光に対して透明であることを意味する。
【0057】
金属ミラーは、Al層などの、光を反射する金属の層である。共振キャビティ又は光キャビティという用語は、2つのDBR又は金属ミラーの間の領域として定義され、従って、通常はNWである。
【0058】
[発明の詳細な説明]
本発明は、グラファイト基板上に成長させたNWをベースとしたレーザ又はLEDなどの発光デバイスの作製に関する。本発明のNWレーザは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、すなわち、NW VCSELであることが好ましい。以下に、NW VCSELの構造をより詳細に説明する。本発明のNW LEDは、共振器型発光ダイオード(RCLED)、すなわち、NW RCLEDであることが好ましい。NW RCLEDの構造は、NW VCSELと同じであってもよいが、動作時には、NW RCLEDは、レーザ発振閾値以上ではなく、レーザ発振閾値未満で動作するように構成される。このため、当然のことながら、以下のNW VCSELについての説明は、NW RCLEDの構造も説明している。また、当然のことながら、レーザ閾値未満での動作時には、NW VCSELを、NW RCLEDであるとみなし得る。NW RCLEDはレーザ閾値未満で動作するため、NW RCLEDから出力される光は自然放出を主に含む。レーザ発振閾値以上での動作時にNW VCSELから出力される光は、誘導放出を主に含む。
【0059】
VCSELは、モノリシックレーザ共振器を備えた半導体レーザ、より具体的にはレーザダイオードであり、放出光は、基板表面に垂直な方向、すなわち、グラファイト表面に垂直な方向に、デバイスから出ていく。共振器(キャビティ)は、通常、2つの半導体若しくは誘電体分布ブラッグ反射鏡(又は金属ミラー)によって画定される。本発明の場合、トップの(第2の)DBR又は金属ミラーは任意であるが、第2のDBR又は金属ミラーが用いられるのが好ましい。
【0060】
それらのDBR又は金属ミラーの間に、発光領域を含むNWが存在する。発光領域は、本明細書中、活性領域又は利得媒質と称される場合もある。NWは、通常、p型ドープ領域及びn型ドープ領域と、例えば電気励起NWの場合、理想的には真性領域と、を含むように成長させる。NWの真性領域は、該NWの発光領域の一部を形成していてもよく、該NWの発光領域であってもよい。
【0061】
各NWの発光領域は、量子井戸、量子ドット又は超格子から選択されることが好ましい量子ヘテロ構造などの少なくとも1つのヘテロ構造、好ましくは複数の量子井戸、量子ドット又は超格子を含むことが好ましい。好ましくは、各NWの発光領域は、複数の量子ヘテロ構造を含む。理想的には、発光領域は真性領域を含み、量子ヘテロ構造などのヘテロ構造が真性領域内に含まれる。
【0062】
NW内のp型ドープ領域は、電子ブロック層を含むことが好ましい。当該電子ブロック層は、NWの性質とNW内のヘテロ構造とによって決まるが、好適な電子ブロック層としては、例えば、p型GaN領域に含まれたp型AlGaN層が挙げられる。
【0063】
一般に、p型領域の電子ブロック層は、伝導帯に障壁を形成し、好ましくは価電子帯には障壁を形成しない。逆に、n型領域の電子ブロック層(「正孔ブロック層」ともいう)は、価電子帯に障壁を形成し、好ましくは伝導帯には障壁を形成しない。一般に、電子ブロック層は、よりバンドギャップの低い材料の間に挟まれる。
【0064】
NWには1~100の量子井戸/量子ドットが存在し得る。量子井戸/量子ドットは、よりバンドギャップの高い領域の間に配置された低いバンドギャップの領域を含む。よりバンドギャップの高い領域は、キャリアを低いバンドギャップの領域に閉じ込めるためのポテンシャルエネルギー障壁となるため、NW内の障壁層であると考えられる。当該障壁層は、対象のIII V族材料によって決まる。
【0065】
理想的には、レーザデバイス全体の合計厚さは、数マイクロメートル、例えば1~10マイクロメートルである。使用時には、活性領域が、数十~数百kA/cm2の電流で電気励起され、数kW/cm2~数十kW/cm2の範囲の出力を発生させる。電流は2つの電極を介して印加される。一実施形態においては、グラファイト基板が、電流をNWに供給することができる一方の電極として機能する。別の実施形態においては、半導体DBR/金属ミラーが、一方又は両方の電極として機能する。必要に応じて、デバイスに外部電極を設けることも可能である。
【0066】
従って、本発明のレーザデバイスは、グラファイト表面に平行な2つの分布ブラッグ反射鏡(DBR)又は金属ミラーを含むことが好ましい。これらのミラーは、光を発生させる、例えばレーザ光やLED光を発生させるための量子井戸/量子ドット又は超格子を含むことが好ましい1つまたは複数のNWを含む光キャビティ(又は共振キャビティ)を画定する。NWは、理想的には、pin接合を含み、量子井戸/量子ドット又は超格子は、理想的には、真性領域内に存在する。
【0067】
以下に詳細に説明するように、平面DBRミラーは、より高い屈折率とより低い屈折率とが交互に重なる層を含む。特に、DBR内のブラッグ反射層は、通常、材料中のレーザ波長の1/4とほぼ等しい(又はその何倍か、例えば5/4の)厚さを有し、99%という高い強度反射率をもたらす。VCSELにおいては、利得領域の短い軸長を埋め合わせるために、反射率の高いミラーが必要とされる。
【0068】
半導体DBRの場合、上下のDBRがp型材料及びn型材料(又はその逆)としてドーピングされ、ダイオード接合に寄与するのが好ましい。グラファイト基板が電流注入器として用いられるのであれば、グラファイト層に最も近いDBRは導電性を有していなくてもよい。従って、本発明は誘電体DBRの使用を想定している。
【0069】
本発明のNW VCSELは、200nm~1600nmの波長を有する光を発生させる発光領域を含むことが好ましい。赤外波長領域の場合には、これは、ガリウムヒ素アンチモン(GaAsSb)を含む発光領域をGaAs及びアルミニウムガリウムヒ素(AlxGa1-xAs)(但し、xは通常0.25~1.00である)から成るDBRと共に用いることによって実現可能である。このため、例えば、発光領域は、低いバンドギャップの領域にGaAsSbを有し、高いバンドギャップの領域にGaAs又はAlGaAsを有する量子ヘテロ構造(例えば、量子井戸/ドット)を含み得る。
【0070】
AlAsも通常用いられる。これは、GaAs/AlAs DBRに必要なブラッグ対が少ないためである。GaAs-Al(Ga)As系は、VCSELにDBRを作製するのに好まれる。これは、組成を変更しても材料の格子定数が大きく変化しないからである。しかしながら、AlGaAsの屈折率は、Al部分を増加させるにつれて比較的大きく変化するので、その他の候補となる材料系と比較して、効率的なDBRを形成するために必要とされる層数が最小限に抑えられる。
【0071】
200~400nmなどのより低い光の波長の場合には、誘電体DBR又は金属ミラーが好ましく用いられる。可視光波長の場合には、Al(Ga)N/GaN DBR、誘電体DBR又は金属ミラーが好ましい選択肢である。
【0072】
UV域の光を提供するために、NWの発光領域は、AlGaNを含み、好ましくはAl(Ga)N/AlGaN DBR、誘電体DBR又は金属ミラーと共に含む。
【0073】
従って、本発明にかかるデバイスは、グラファイト基板上にエピタキシャル成長させた複数のNWを含むことが好ましい。各NWは、グラファイト基板から突出し、発光領域を含む。理想的には、発光領域は、真性領域を含み、pドープ領域とnドープ領域との間に配置されてpin接合を形成する。好ましくは、発光領域は、1つ又は複数の量子ヘテロ構造(例えば、1つ又は複数の量子井戸あるいは1つ又は複数の量子ドット)を含み、該量子ヘテロ構造は理想的には真性領域内に配置される。
【0074】
NWレーザをその長さが基板の平面から延出するように配向し、且つ、NWの長さに沿って光を循環させるための手段を設ける(例えば、NWの両端にミラーを設ける)ことにより、NWは、NW VCSELを形成し得る。同様に、NW LEDをその長さが基板の平面から延出するように配向し、且つ、NW LEDの長さに沿って光を循環させるための手段を設ける(例えば、NW LEDの両端にミラーを設ける)ことにより、NW LEDは、NW RCLEDを形成し得る。
【0075】
好ましくは、NW VCSEL及びNW RCLEDは、それぞれが配置された基板の水平面から実質的に垂直な方向に長さを有する。このため、当然のことながら、一般に、NW VCSEL及びNW RCLEDは、基板の平面と実質的に平行な方向に光を放出するのではなく、基板の水平面に対して傾斜した方向に光を放出する。
【0076】
完全性を期すために、何らかの理由により、NWは、ヘテロ構造を含まない場合もある。本発明は、全てのNWが必要なヘテロ構造を有するものとするデバイスに関するものであるが、NWがこのようなヘテロ構造を含まないデバイスを包含するものとする。理想的には、すべてのNWが、必要なヘテロ構造を含む。
【0077】
NWをエピタキシャル成長させることにより、形成された材料に均質性が付与され、例えば、機械的特性、光学的特性又は電気的特性など、様々な最終特性を向上させ得る。
【0078】
エピタキシャルNWは、固体、気体又は液体の前駆体から成長させてもよい。基板は、種結晶としての機能を果たすため、堆積したNWは、基板と同様の格子構造及び/又は配向になり得る。これは、多結晶膜又は非晶質膜を単結晶基板上にさえ堆積する、他の薄膜堆積法とは異なる。
【0079】
III-V族化合物半導体NWは、p型ドープ領域とn型ドープ領域とを含み得る。p型ドープ領域は、n型ドープ領域と直接接触していてもよい。しかしながら、好ましくは、p型ドープ領域は、発光領域によってn型ドープ領域から隔てられる。当然のことながら、p型ドープ領域、発光領域及びn型ドープ領域の配置は、二重ヘテロ構造又は多重ヘテロ構造を形成し得る。p型ドープ領域及びn型ドープ領域は、キャリアを発光領域に注入するように配置され得る。キャリア注入は、p型ドープ領域及びn型ドープ領域に電界及び/又は電流が印加されると起こり得る。当然のことながら、p型ドープ領域及び/又はn型ドープ領域に電流を供給するためにグラファイト基板が用いられてもよい。
【0080】
発光領域が真性領域を含む実施形態において、p型ドープ領域、真性領域及びn型ドープ領域の配置は、いわゆるpin構造を形成し得る。
【0081】
また、当然のことながら、発光領域は、NWレーザ/LEDの活性領域(すなわち、利得媒質)を形成するように配置され得る。
【0082】
III-V族化合物半導体NWは、更に、又はあるいは、1つ又は複数の電子正孔ブロック層を含み得る。電子ブロック層は、発光領域と隣接して配置され得る。好ましくは、1つ又は複数の電子ブロック層がp型ドープ領域に配置され得る。更に、又はあるいは、1つ又は複数の電子ブロック層がn型ドープ領域に配置され得る。好ましくは、p型領域の電子ブロック層は、発光領域からの電子の漏れを実質的に阻止するように配置される。例えば、p型領域の電子ブロック層が、発光領域の伝導帯からの電子の漏れを阻止し、n型領域の電子ブロック層が、発光領域の価電子帯からの正孔の漏れを阻止し得る。
【0083】
デバイスは、任意に、III-V族化合物半導体NWの上に配置された第2の光反射手段を有し得る。第2の光反射手段は、DBR又は金属層であり得る。任意に、第2の光反射手段は、上記第1の光反射手段と同じであってもよい。しかしながら、好ましくは、第2の光反射手段は、第1の光反射手段よりも低い反射率を有し得る。好ましくは、第2の光放出手段は、NWから出射する光をNWに帰還させるように配置される。
【0084】
当然のことながら、第1の光反射手段と第2の光反射手段との間にNWを配置することにより、光共振器(すなわち、光を循環させるための光キャビティ)が画定される。好ましくは、第1の光反射手段と第2の光反射手段とは、NW内、好ましくは発光領域内への光帰還を実現するように配置される。例えば、第1の光反射手段は、NWからの入射光を反射してNW内に戻すように配置され得る。第2の光反射手段は、NWからの入射光を反射してNW内に戻すように配置され得る。第1の光反射手段からの反射光は第2の光反射手段に向かって伝搬し得、第2の光反射手段からの反射光も第1の光反射手段に向かって伝搬し得る。これにより、第1の光放出手段及び第2の光放出手段は、NWから出射する光を循環させられるように、NWに光を帰還させるように配置され得る。好ましくは、第1の光放出手段及び第2の光放出手段は、発光領域から出射する光を循環させられるように、発光領域に光を帰還させる。
【0085】
ここで、本発明のデバイスの各部をより詳細に説明する。
【0086】
提案するNW/グラフェン・ハイブリッドレーザ/LED構造の利点は下記の通りである。
【0087】
1.柔軟な機能性。量子ヘテロ構造(すなわち、量子井戸/ドットなどの低次元構造)は、2次元(2D)異方性形状(例えば、リッジ/リブ型レーザ)を有すると考えられるデバイスと比較すると、はるかに良好に制御可能であり、径方向及び軸方向のいずれにおいてもNWに組み込むことが可能である。このようにして、量子ヘテロ構造を有するNWは、それぞれの利得媒質(すなわち、発光領域)における利得を増大させることができる。
【0088】
2.コンパクトな設計。各NWは、それ自体が、利得媒質が一体化されたレーザキャビティである。
【0089】
3.フォトニック結晶(PC)効果の創出。例えば、NWは、NWからの発光波長程度のピッチのアレイに配置され得る。アレイのパラメーター(例えば、ピッチ)を特定の回折条件を満たすように調整することによって、NWアレイは、レーザ発振性能の向上のためのPCとして働くことが可能になる。
【0090】
4.エピタキシャル基板及び電流注入器。グラフェンは、電気伝導性および熱伝導性が高いことにより、NWを成長させるためのエピタキシャル基板としても効率の良い電流注入器としても使用できる。
【0091】
5.本発明によれば、NW(例えば、NWアレイ)をいかなるDBR(ガラス上に作られた絶縁性酸化物DBRであっても)又は金属ミラー上にも配置する(例えば、作製する)ことが可能である。
【0092】
6.透明コンタクト。グラフェンは全波長に対して透明であるため、グラフェンは、IRからディープUVの全域で高い光透過性を可能にすることができ、それによって基板側のミラーからの吸収損失を最小限に抑えられる。
【0093】
[ナノワイヤの成長用基板]
NWを成長させるために使用される基板は、グラファイト基板であり、特にグラフェンである。
【0094】
本明細書で使用するグラフェンという用語は、ハニカム(六方晶)結晶格子に高密度に充填されたsp2結合炭素原子の平面シートのことを指す。このグラファイト基板は、好ましくは厚さ20nm以下とする。理想的には、10層以下、好ましくは5層以下のグラフェン又はその誘導体(これは、数層グラフェンと呼ばれる)を含むものとする。特に好ましくは、グラフェンの1原子厚の平面シートである。
【0095】
結晶又は「フレーク」形態のグラファイトは、積層された多くのグラフェンシート(すなわち、11シート以上)から成る。よって、グラファイト基板とは、1枚又は複数枚のグラフェンシートから形成されたものである。
【0096】
基板の厚さは一般に、20nm以下であるのが好ましい。グラフェンシートを積層し、面間隔が0.335nmのグラファイトを形成する。好ましいグラファイト基板は、そのような層をほんの数層有するのみであり、理想的には厚さが10nm未満であってもよい。更により好ましくは、グラファイト基板の厚さは5nm以下であってもよい。一般に、基板の面積は制限されない。この面積は、0.5mm2以上、例えば、5mm2以下又はそれ以上、例えば10cm2以下と大きくてもよい。よって、基板の面積は、実用性によってのみ制限される。
【0097】
あるいは、グラファイト基板は、化学蒸着(CVD)法を用いてNi膜又はCu箔上に成長させることもできる。この基板は、例えば、Cu、Ni若しくはPtから成る金属膜又は金属箔上でCVD成長させたグラフェン基板であってもよい。
【0098】
これらのCVD成長させたグラファイト層は、エッチングにより又は電気化学的剥離法によりNi又はCu膜等の金属箔から化学的に剥離することができる。次いで、剥離後のグラファイト層を、NW成長用の支持キャリアに転写し堆積させる。剥離及び転写中、電子ビームレジスト又はフォトレジストを用いて、薄いグラフェン層を支持してもよい。これらの支持材料は堆積後にアセトンにより容易に除去することができる。
【0099】
場合によっては、基板(及び透明スペーサ層)としてグラフェンガラスが好ましいこともある。グラフェンガラスは、CVDを用いてガラス基板の上にグラフェンを直接形成することによって作製される。グラフェンガラスの使用により、面倒で破壊的な転写手順を行わずに済む。グラフェンをガラス上に直接成長させることによって、グラフェンを金属箔上に成長させた後でガラス上に転写するという手順を回避する。
【0100】
グラファイト基板は、改質することなく使用するのが好ましいが、グラファイト基板の表面を改質してもよい。例えば、水素、酸素、窒素、NO2又はそれらの組み合わせのプラズマで基板を処理することができる。基板の酸化により、NWの核生成が促進される場合もある。基板を前処理し、例えば、NW成長前に純度を確保することが好ましい場合もある。HF又はBOEなどの強酸を用いた処理は、任意である。基板は、イソプロパノール、アセトン又はn-メチル-2-ピロリドンで洗浄し、表面不純物を除去してもよい。
【0101】
清浄化したグラファイト表面は、ドーピングにより更に改質することができる。ドーパント原子又はドーパント分子は、NWを成長させるためのシードとしての役割を果たし得る。FeCl3、AuCl3又はGaCl3の溶液を、ドーピング工程に使用することができる。
【0102】
グラファイト層、より好ましくは、グラフェンは、それらの優れた光学的特性、電気的特性、熱的特性及び機械的特性で周知となっている。それらは非常に薄いが非常に強く、軽く、フレキシブルであり、不浸透性である。本発明において最も重要なことは、それらが電気的及び熱的に伝導性が高く、透明であることである。現在商業ベースで使用されているITO、ZnO/Ag/ZnO、AlドープZnO及びTiO2/Ag/TiO2等の他の透明導電体と比べて、グラフェンは、はるかに高い透明性(例えば、200~400nmのUVスペクトル範囲で透過率92%超にもなる)及び導電性(1nm厚でシート抵抗1000オーム(Ohm-1)未満)を有することが実証されている。
【0103】
[グラファイト基板用支持体]
グラファイト基板は、その上にNWを成長させるために、支持されることが必要な場合もある。デバイス内で発生した光(例えば、レーザ光)を反射するために、デバイスが少なくとも1つのDBR又は金属ミラーを含むことも重要である。よって、使用時には、グラファイト基板に対して通常隣接し且つ平行である1つのブラッグ反射鏡又は金属ミラーが、成長するNWとは反対側の表面に存在しなければならない。グラファイト層が高い透明性を有するため、上記DBR又は金属ミラーは、ほとんど反射損失なく依然としてその機能を果たすことができる。
【0104】
デバイスのベースにおいてグラファイト層に隣接するDBR又は金属ミラーは、通常、光を完全に反射するように設計され、例えば本質的に100%の光反射鏡である。
【0105】
デバイスのトップにおいても、DBR又は金属ミラーが、グラフェン層と平行であるがNWによってグラフェン層から隔てられた状態で、用いられることが好ましい。いくらかの光がデバイスのトップからレーザの形態で放出されるため、この反射鏡は100%の反射鏡ではあり得ない。当然のことながら、DBR又は金属ミラーは、光がどちらの方向にも(但し、NWと平行に)放出されるように切り替え可能である。
【0106】
従って、DBR又は金属ミラーは、NWの成長条件に耐えられる場合は、好都合なことに、成長時のグラファイト基板用の支持体として機能し得る。あるいは、支持されたグラフェン上でNWを最初に成長させた後、該グラフェン/NWを支持体から剥離し、DBR/金属ミラー上に載置する。
【0107】
別の実施形態においては、透明スペーサ層(例えば、ガラス又は溶融シリカ)が、キャビティ長又はグラファイト層/スペーサ層/DBR積層体の反射率のいずれかを調整するために、DBRとグラファイト基板との間に設けられるかもしれない。よって、この透明スペーサ層がグラフェン用の支持体として機能し得る。透明スペーサ層が存在する場合、DBRとグラファイト層とは電気的に接触しない。その場合は、誘電体DBRを採用し、グラファイト層を電流注入器として用いるのが通例である。
【0108】
好ましいスペーサ層の例としては、溶融シリカ、溶融石英、溶融アルミナ、サファイア、Si、SiC、GaAs、GaN又はAlNの透明層が挙げられる。当業者には、スペーサ層の選択及びその厚さが、デバイスが発光する光の波長とスペーサ層の機能とに応じて変わり得ることが理解されよう。光の1つの波長に対して、透明な層もあれば、そうでない層もある。例えば、GaAsは、IRレーザ光に対して透明である。グラフェンガラスの使用が好ましく、その場合、グラフェンガラスは、グラファイト基板及びスペーサ層の両方となる。
【0109】
しかしながら、支持体はDBRも含むことが好ましい。透明な支持体を使用することの別の利点は、キャビティのサイズが大きくなることである。このようにしてキャビティのサイズを大きくすることを用いてキャビティ内部の縦モード間隔を変更し得る。支持体が反射層を含まない場合、例えば反射層、支持層及びグラファイト層から成る三層ベース構造を形成するために、支持体に反射層を設けることができる。この実施形態では、支持層は不活性且つ透明でなければならない。支持体は、支持体/ミラー/グラファイト層という順序でもよく、その場合、支持体は透明でなくてもよい。
【0110】
本明細書において使用される透明という用語は、支持体が、光、特にレーザ光を透過させることを意味する。
【0111】
理論的には、NWが成長した後、支持体を(例えば、エッチングによって)除去してもよく、或いはNWを担持するグラファイト基板を支持体から剥離することができる。従って、支持されたグラファイト層上でNWを成長させ、グラファイト基板をNWと共に剥離することによって支持体を除去し、本発明のデバイスを作製するためにブラッグ反射鏡又は金属ミラー上に配置することは、本発明の範囲内である。
【0112】
[ナノワイヤ]
商業的に重要なNWを製造するためには、これらが基板上にエピタキシャル成長することが好ましい。また、基板に垂直に、よって、理想的には[0001](六方晶構造の場合)方向又は[111]方向(立方晶構造の場合)に成長することも理想的である。
【0113】
本発明者らは、半導体NW内の原子とグラフェンシート内の炭素原子との可能な格子整合を確定することにより、グラファイト基板上でのエピタキシャル成長が可能であることを見出した。
【0114】
グラフェン層における炭素-炭素結合長は、約0.142nmである。グラファイトは六方晶構造を有する。本発明者らは、成長するNW材料とグラファイト基板との間の格子不整合が非常に低くなり得るため、グラファイトが半導体NWを成長させる基板となり得ることに以前気づいた。
【0115】
本発明者らは、グラファイト基板の六方対称性と、立方晶構造を有する[111]方向に成長するナノワイヤの(111)面内(又は六方晶構造を有する[0001]方向に成長するナノワイヤの(0001)面内)の半導体原子の六方対称性とにより、成長するナノワイヤと基板との間で格子整合を得ることができることに気づいた。これに関する科学の包括的な説明は、WO2013/104723号に見られる。
【0116】
理論によって制限されることを望むものではないが、グラファイト層内の炭素原子の六方対称性と、立方晶構造を有する[111]方向に成長するNWの(111)面内(又は六方晶構造を有する[0001]結晶方向に成長するNWの(0001)面内)の原子の六方対称性とにより、半導体原子がグラファイト基板の炭素原子よりも上方に、理想的には六方パターンに配置された場合、グラファイト基板と半導体との間に緊密な格子整合が得られる。これは新規かつ驚くべき発見であり、グラファイト基板上でのNWのエピタキシャル成長を可能にし得る。
【0117】
WO2013/104723号に記載されているような半導体原子の異なる六方配列は、このような材料の半導体NWを鉛直に成長させ、薄い炭素系グラファイト材の上に自立NWを形成することを可能にし得る。
【0118】
成長するNWと基板との間に格子不整合がないことが理想的であるが、NWは、例えば、薄膜よりもはるかに大きな格子不整合に対応できる。本発明のNWは、基板との格子不整合が最高約10%であってもよく、エピタキシャル成長は依然として可能である。理想的には、格子不整合は、7.5%以下であるべきで、例えば、5%以下などである。
【0119】
六方晶GaN(a=3.189Å)、六方晶AlN(a=3.111Å)のように、半導体によっては、格子不整合が非常に小さい(<約2%)ため、これらの半導体NWの優れた成長が期待できる。
【0120】
NWの成長は、フラックス比により制御することができる。本発明において成長させるNWの長さは、250nm~数マイクロメートル、例えば、最高10マイクロメートルであってもよい。好ましくは、NWの長さは少なくとも1マイクロメートルである。複数のNWを成長させる場合、それらが全てこれらの寸法要件を満たすのが好ましい。基板上に成長させるNWの少なくとも90%は、長さが1マイクロメートル以上であるのが理想的である。実質的に全てのNWの長さが、少なくとも1マイクロメートルであるのが好ましい。
【0121】
NWの長さは重要である。理想的には、レーザデバイスによって放出される光のNW内部での波長の半整数倍と等しい長さになるようにNWを成長させる。各NWの光キャビティの長さがNWによって放出される光の波長の倍数と等しくなるようにNWを成長させてもよい。設けられ得るスペーサ層の厚さは、所望の長さの光キャビティが得られるように考慮され得る。
【0122】
さらに、成長させたNWが同じ寸法、例えば、互いの10%以内の寸法を有することが好ましい。よって、基板上のNWの少なくとも90%(好ましくは、実質的に全て)が、同一の直径及び/又は同一の長さ(すなわち、互いの直径/長さの10%以内)であるのが好ましい。従って、本質的に、当業者は、均質性と、寸法が実質的に同一であるNWとを求めている。
【0123】
NWの長さは、成長プロセスが実行される時間の長さによって制御されることが多い。プロセスの時間が長い程、通常、NWは(かなり)長くなる。
【0124】
NWは、通常、六角形の断面形状を有する。NWの断面直径(すなわち、その厚さ)は、25nm~数百nm、例えば300nmであり得る。上述の如く、直径は、理想的には、NWの大部分にわたって一定である。NWの直径は、下記に更に説明するように、NWの作製に使用される原子の割合を操作することにより制御することができる。
【0125】
さらに、NWの長さ及び直径は、それらが形成される温度に影響され得る。高い温度は、高いアスペクト比(すなわち、より長い及び/又はより薄いNW)をもたらす。直径は、マスク層のナノ孔開口サイズを操作することによっても制御することができる。当業者は、成長プロセスを操作し、所望の寸法のNWを設計することができる。
【0126】
本発明のNWは、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体から形成される。好ましくは、NWは、後述するように各NW内に発光領域を生成するように成長させたIII-V族化合物から成る。好ましくは、上記発光領域はそれぞれヘテロ構造を含む。複数の異なるIII-V族化合物が存在することになるが、存在する全ての化合物が、III-V族化合物であることが好ましい。
【0127】
III族元素の選択肢は、B、Al、Ga、In及びTlである。好ましい選択肢は、Ga、Al及びInである。
【0128】
V族の選択肢は、N、P、As、Sbである。全てが好ましく、特にNが好ましい。
【0129】
勿論、III族から2つ以上の元素及び/又はV族から2つ以上の元素を使用することも可能である。NW製造用の好ましい化合物としては、AlAs、GaSb、GaP、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、AlGaInN、GaAs、GaAsSb、InP、InN、InGaAs、InSb、InAs又はAlGaAsが挙げられる。Nと組み合わせたAl、Ga及びInをベースとする化合物が最も好ましい。GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN又はAlNの使用が非常に好ましい。
【0130】
NWは、(後述の任意のドーピング原子と共に)Ga、Al、In及びNから成るのが最も好ましい。
【0131】
二元材料の使用が可能である一方で、本発明においては、AlGaNのような、1つのV族アニオンと共に2つのIII族カチオンが存在する三元NWの使用が好ましい。従って、この三元化合物は、式XYZ(但し、XはIII族元素であり、YはXとは異なるIII族であり、ZはV族元素である)のものであってもよい。XYZにおけるXのYに対するモル比は、好ましくは0.1~0.9であり、すなわち、上記式は、好ましくはXx1-xZ(但し、添字xは0.1~0.9である)である。
【0132】
四元系も使用することが可能であり、式Ax1-xy1-y(但し、A及びBは異なるIII族元素であり、C及びDは異なるV族元素である)で表すことができる。ここでも、添字x及びyは、通常、0.1~0.9である。他の選択肢は、当業者には明らかであろう。
【0133】
GaAs、InGaN、AlGaN及びAlInGaNのNWの成長が、特に好ましい。これらのNWを含むデバイスによって放出される光の波長は、Al、In及びGaの含有量を操作することにより調整することができる。また、NWのピッチ及び/又は直径を変化させ、放出される光の性質を変えることができる。
【0134】
[ドーピング]
本発明のNWは、発光領域(すなわち、利得媒質)を含む。各利得媒質は、光を発生させるために用いることができる。NWをアレイ状に配置すると、NWは光学的に結合されて発光し得る。そのため、NWは、理想的には、少なくとも1つのよりバンドギャップの低い部分/インサート、量子井戸、量子ドット又は超格子などの少なくとも1つのヘテロ構造を含むことが必要である。pin接合の真性領域が少なくとも1つの量子井戸、量子ドット又は超格子を含んでいるのが非常に好ましい。従って、本発明のデバイスは、p型半導体領域とn型半導体領域との間に非ドープ真性半導体領域を備えていることが好ましい。
【0135】
NWは、発光領域内にキャリアを励起/注入するために、光励起または電気励起され得る。
【0136】
光励起デバイスでは、真性領域が、ヘテロ構造化された活性利得媒質を含み得る。多くの場合、利得媒質は、10以上の周期分、例えば20以上の周期分などのヘテロ構造化された活性利得媒質を含み得、活性利得媒質の各部分の厚さは例えば100nmである。活性利得媒質の成長後、発光の向上を目的として、発光領域及び/又は各ヘテロ構造の表面をパッシベーションするためにパッシベーション層(例えば、シェル層)を追加してもよい。
【0137】
当然のことながら、光励起デバイスは、ドーピングを含まなくてよい、つまり、例えば、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを含まなくてよい。
【0138】
電気励起デバイスでは、n型ドープ領域とp型ドープ領域とを設けることによって、キャリア(すなわち、電子及び/又は正孔)をより効率よく発光領域(例えば、量子ヘテロ構造を含み得る真性領域)に注入することが可能になる。前述のように、発光領域内の注入キャリア、及び/又は励起キャリアは、再結合(例えば、1つの電子-正孔対が再結合)して発光し得る。量子ヘテロ構造において見られる量子キャリア閉じ込め効果により、量子ヘテロ構造は、バルク真性材料などのバルク材料よりも効率のよいキャリア再結合を示す。バルク材料は、通常、連続したエネルギー準位を有すると考えられる。これに対して、量子ヘテロ構造は、通常、少なくとも1つの離散的なエネルギー状態を有する。
【0139】
ドーピングは、通常、例えば、MBE又はMOVPEによる成長中に、NWに不純物イオンを導入することを必要とする。ドーピングレベルは、約1015/cm3~1020/cm3に制御することができる。NWは、必要に応じてp型ドープ領域及び/又はn型ドープ領域を設けるためにドープすることができる。ドープされた半導体は、外因性導体(extrinsic conductor)である。
【0140】
真性半導体にドナー(アクセプタ)不純物をドープすることにより、n(p)型半導体/領域は、正孔(電子)濃度よりも高い電子(正孔)濃度を有する。III-V族化合物用の好適なドナー(アクセプタ)は、Si(Mg、Be又はZn)であり得る。ドーパントは、成長プロセスの間に、又は形成後のNWのイオン注入により導入することができる。
【0141】
NW内に量子ドット、量子井戸又は超格子構造を作成するためには、一般に、NWバルク内に、非常に薄い、多くの場合わずか数ナノメートルのサイズである半導体層を形成することが必要とされる。それらの層は非常に薄いため、光学的特性及び電子的特性が、より厚い層とは異なる。
【0142】
よって、量子ヘテロ構造を含む場合は、本発明のNWは、単一のIII-V族材料から成るものではない。それらのNWはヘテロ構造化されているため、少なくとも2つの異なる半導体化合物を含む。NWのバルク材料組成物(量子ヘテロ構造の低いバンドギャップの領域よりもバンドギャップが高いことが好ましい)に第2のIII-V族半導体の薄い層を挿入することによって、光を発生させるための量子ヘテロ構造を有するNWを作製し得る。
【0143】
量子閉じ込めを実現するためには、前述したように、量子ヘテロ構造の低いバンドギャップの領域(例えば、層)が、通常、ドブロイ波長程度のサイズである必要がある。例えば、量子井戸ヘテロ構造の低バンドギャップ層を、該低バンドギャップ層のエネルギー準位が量子化されるように、数nm(1~20nmなど)の厚さに成長させてもよい。量子井戸は1次元でのみ量子閉じ込めが起こり、量子ドットは3次元の全てで量子閉じ込めが起こる。超格子(すなわち、半導体超格子)は、量子閉じ込め構造(量子井戸又は量子ドット)から成る周期的構造であり、障壁層が、トンネル効果によるキャリア輸送を量子井戸/量子ドット間で生じさせるほどに薄い(通常、数ナノメートルである)。短周期超格子も、バンドギャップを調整するのに適用可能であり、成長方向に沿って障壁層の厚さを増加(減少)させ井戸層の厚さを減少(増加)させることによってバンドギャップをグレーディングし、電荷キャリアが受けるバンドギャップを大きく(小さく)する。このようなグレーディング超格子は、例えば、ドープ領域において、よりバンドギャップの低い材料部分とよりバンドギャップの高い材料部分との間で、バンドギャップの異なるこれら2つの材料間の多数キャリア輸送特性を改善するために用いることができる。
【0144】
量子ドットは、薄いGaAsSb層をバンドギャップの低い領域として用い、GaAs層をバンドギャップの高い領域として(よって、この場合はGaAs層が障壁領域として機能する)用いて形成され得る。本発明のNWは、径方向又は軸方向にヘテロ構造形態を有するように成長させることができる。例えば、軸方向にヘテロ構造化されたNWの場合、p型ドープされたコアを最初に成長させた後、n型ドープされたコアを続けて成長させる(又はその逆)ことによりpn接合を軸方向に形成することができる。真性領域は、pin型のNWの場合、ドープされたコアの間に配置することができる。成長プロセス中に供給される元素を変えることにより、ヘテロ構造又は量子ヘテロ構造を真性領域に導入することができる。径方向にヘテロ構造化されたNWの場合、p型ドープされたNWを最初に成長させた後、真性シェル、次いでn型ドープされた半導体シェルを成長させる(又はその逆)ことによりpin接合を径方向に形成することができる。成長プロセス中に供給される元素を変えることにより、量子ヘテロ構造を真性領域に導入することができる。
【0145】
pin型NWでは、電荷キャリアがそれぞれのp領域及びn領域に注入されると、それらはi領域で再結合し、前述のように、この再結合により光が生成される。
【0146】
UV光(例えば、レーザ光)を提供するための好ましい実施形態において、NWは、pin構造を含み得る。i領域は、AlxGa1-xN/AlyGa1-yN(x>y)多重量子井戸/量子ドット又は超格子構造から成り得る。p領域は、少数キャリア(電子)のp領域へのオーバーフローを防ぐために電子ブロック層(伝導帯における単一又は複数の障壁)を含み(include/comprise)得る。n領域は、少数キャリア(正孔)のn領域へのオーバーフローを防ぐために正孔ブロック層(価電子帯における単一又は複数の障壁)を含み(include/comprise)得る。
【0147】
よって、好ましい実施形態は、NWに量子ヘテロ構造(例えば、多重量子井戸/量子ドット/超格子)が設けられているものである。よって、好ましい実施形態は、NWに電子ブロック層又は/及び正孔ブロック層が設けられているものである。
【0148】
[成長]
本発明のNWは、エピタキシャル成長するのが好ましい。それらは、共有結合、イオン結合又は準ファンデルワールス(quasi van der Waals)結合を介して下地基板に結合する。従って、NWのベースと基板との接合部において、NW内に結晶面がエピタキシャルに形成される。これらは、同じ結晶学的方向に互いに積み重なり合うことにより、NWをエピタキシャル成長させる。NWは、鉛直に成長するのが好ましい。本明細書において使用する鉛直にという用語は、NWが、基板に対して垂直に成長することを意味する。当然のことながら、実験科学では、成長角度は正確に90°でなくてもよいが、鉛直にという用語は、NWが、鉛直/垂直方向の約10°以内、例えば、5°以内にあることを意味する。共有結合、イオン結合又は準ファンデルワールス結合を介したエピタキシャル成長により、NWとグラファイト基板とが密接に接触することが期待される。接触特性をさらに高めるために、グラファイト基板をドープし、成長したNWの主要なキャリアと一致させることができる。
【0149】
NWは、高温での基板への物理的結合及び化学的結合を伴いエピタキシャル成長させるため、ボトムコンタクトは、オーミックであるのが好ましい。
【0150】
当然のことながら、基板は、1つまたは複数のNW、好ましくは複数のNWを含む。NWは、互いにほぼ平行に成長するのが好ましい。従って、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは実質的に全てのNWが、基板の同一面から同一方向に成長するのが好ましい。
【0151】
理想的には、成長したNWは、実質的に平行である。NWは、基板に対して実質的に垂直に成長するのが好ましい。
【0152】
本発明のNWは、好ましくは、六方晶構造又は立方晶構造を有するNWの場合、それぞれ[0001]又は[111]方向に成長すべきである。NWが六方(立方)晶構造を有する場合は、NWとグラファイト基板との間の(0001)[111]界面が、軸方向成長が生じる面である。NWは、好ましくは、MBE又はMOVPEにより成長させる。MBE法では、基板に各反応物の分子ビームを照射する。例えば、III族元素とV族元素とを同時に供給することが好ましい。グラファイト基板上におけるNWの核生成及び成長は、MBE技術を用いて、例えばIII族元素とV族元素とを交互に供給することができるマイグレーション・エンハンスト・エピタキシー(MEE)又は原子層MBE(ALMBE)を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0153】
窒化物の場合の好ましい技術は、プラズマ支援固体ソースMBEであり、ガリウム、アルミニウム及びインジウム等の非常に純粋な元素を、ゆっくりと蒸発し始めるまで、別個のエフュージョンセル内で加熱する。通常、rfプラズマ窒素源を使用し、低エネルギーの窒素原子ビームを生成する。その後、ガス状の元素は、基板上で凝結し、そこで互いに反応し得る。ガリウム及び窒素の例においては、単結晶GaNが形成される。「ビーム」という用語の使用は、プラズマ源からの蒸発した原子(例えば、ガリウム)及び窒素原子が、基板に到達するまで、互いに又は真空チャンバーガスと相互作用しないことを意味する。
【0154】
MBEは、バックグラウンド圧力が通常約10-10~10-9Torrの超高真空中で行われる。これにより、NWをエピタキシャル成長させることができ、構造性能が最大化される。
【0155】
放出光の性質は、NWの活性領域における量子ヘテロ構造の寸法および形状によって決まる。NWにおける量子ヘテロ構造の様々なバンドギャップを調整するために、温度及びフラックスを使用することができる。(Nanotechnology 25 (2014) 455201)。
【0156】
MOVPE法において、基板は、反応器内に保持され、キャリアガス及び各反応物の有機金属ガス、例えば、III族元素を含む有機金属前駆体及びV族元素を含む有機金属前駆体が基板に供給される。典型的なキャリアガスは、水素、窒素又はこれら2つの混合物である。グラファイト基板上におけるNWの核生成及び成長は、MOVPE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給することができるパルス層成長技術を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0157】
[ナノワイヤの位置決め成長]
本発明のNWは、位置決め成長させることが好ましい。この方法では、グラファイト層上に堆積したナノ孔パターンを有するマスクが必要となり得る。
【0158】
成長したNWの高さ及び直径においてより均一でより規則的なNWのアレイを作製するために、本発明者らは、基板上におけるマスクの使用を想定している。このマスクは、規則的な孔を有し、NWは、基板全体にわたって規則的な配列で均一なサイズに成長することができる。マスクの孔パターンは、従来のフォト/電子ビームリソグラフィー又はナノインプリントを用いて容易に製造することができる。NWを成長させるグラファイト表面上に規則的な核生成サイトのアレイを生成するために、集束イオンビーム技術を使用してもよい。
【0159】
従って、マスクは、基板に適用し、基板表面を露出させる孔を、場合によっては規則的なパターンで、エッチングすることができる。さらに、孔のサイズ及びピッチは、慎重に制御することができる。孔を規則的に配置することにより、規則的なパターンのNWを成長させることができる。
【0160】
さらに、孔のサイズを制御し、各孔内に確実に1つのNWしか成長できないようにすることができる。最終的に、孔は、NWの成長を可能にするのに十分な大きさのサイズに作ることができる。このようにして、規則的なNWのアレイを成長させることができる。
【0161】
孔のサイズを変化させることにより、NWのサイズを制御することができる。孔は適切に離間されていることが重要である。孔、ひいては成長するNWがレーザによって放出される光の波長未満の間隔で離間されている場合、NWのアレイは、フォトニック結晶(PC)として機能し得る。75~150×75~150のNW、例えば、100×100のNWのアレイが、可能なサイズである。なお、これらの数は、デバイスの設計に応じて大きく変わり得る。
【0162】
マスク材は、堆積時、下地基板を損傷することのない任意の材料であり得る。マスクは、レーザ光に対して透明であってもよい。孔の最小サイズは、50nm、好ましくは、少なくとも100~200nmである。マスクの厚さは、10~100nm、例えば、10~40nmとすることができる。
【0163】
マスク自体は、不活性化合物、例えば、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などで作ることができる。特に、孔パターンマスクは、例えば、電子ビーム蒸着、CVD、プラズマ強化CVD(PE-CVD)、スパッタリング又は原子層堆積(ALD)により堆積される、SiO2、Si34、HfO2、TiO2又はAl23などの少なくとも1つの絶縁材料を含む。従って、マスクは、電子ビーム堆積、CVD、PE-CVD、スパッタリング及びALDによるなど、任意の便利な技術により基板表面に設けることができる。
【0164】
NW成長の前に窒化又は酸化されたTiマスクは、均一なNWの成長を可能にすることが分かっている(例えば、J.Crystal Growth 311(2009)2063-68を参照)ため、そのようなマスクの使用が特に好ましい。
【0165】
孔パターンマスクを用いた位置決め成長では、所定の位置に均一な長さ及び直径のNWが生成される。NWは、ナノ孔パターンを有するマスクなしで成長させることも可能である。その場合、NWは、サイズ(長さ及び直径)が不均一となり、ランダムな位置に配置されることになる。一実施形態では、マスクを使用することなく、本発明のNWを成長させるのが好ましい。さらに、本発明者らは、マスクがない場合にNW密度を最大にすることができることを見出した。1平方マイクロメートル当たり少なくとも20のNW、例えば、1平方マイクロメートル当たり少なくとも25のNWといったNW密度が可能である。これらの非常に高いNW密度は、特に、GaN、InGaN又はAlGaNのNWに関するものである。
【0166】
次に、NWの成長に際し、グラファイト基板温度は、対象のNWの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、300~1200℃の範囲内であり得る。しかしながら、使用する温度は、NWの材料の性質及び成長方法により特定される。MBEにより成長させるGaNの場合、好ましい温度は、700~950℃であり、例えば、750~900℃、例としては760℃などである。AlGaNの場合、その範囲はわずかに高く、例えば、800~1100℃、例としては830~950℃など、例えば、840℃である。
【0167】
従って、当然のことながら、NWは、NW内に異なるIII-V族半導体を含むことができ、例えば、GaN基部に始まり、続いて、AlGaN成分又はAlGaInN成分といった具合である。
【0168】
MBEにおけるGaN NWの成長は、Gaエフュージョンセル、窒素プラズマセル及びドーパントセルのシャッターを同時に開くことにより開始され、ドープGaN NW(本明細書においては「基部」と呼ぶ)の成長を開始することができる。GaN基部の長さは、5nmから数百ナノメートルの間に維持することができる。その後、必要に応じて基板温度を上昇させ、Alシャッターを開きAlGaN NWの成長を開始することができる。GaN基部を成長させることなく、グラファイト層上においてAlGaN NWの成長を開始することができる。n型及びp型ドープされたNWは、NWの成長中に、それぞれ、n型ドーパントセル及びp型ドーパントセルのシャッターを開くことにより得られる。例えば、NWのn型ドーピングのためのSiドーパントセル、及びNWのp型ドーピングのためのMgドーパントセルなど。
【0169】
このプロセスは、適切なドーピングにより、他のIII-V族NWの成長に適合させることができる。
【0170】
エフュージョンセルの温度により、成長速度を制御することができる。従来の面(層ごとの)成長中に測定される、便利な成長速度は、1時間あたり0.05~2μm、例えば、1時間あたり0.5μmである。成長させるNWの性質に応じて、分子ビームの圧力を調整することもできる。好適なレベルのビーム等価圧力は、1x10-7~1x10-4Torrである。
【0171】
反応物(例えば、III族原子及びV族分子など)間のビームフラックス比は変化させることができ、好ましいフラックス比は、他の成長パラメーター及び成長させるNWの性質によって決まる。窒化物の場合、III族窒化物NWは、常に窒素が豊富な条件下で成長させる。
【0172】
従って、本発明の一実施形態では、2段階成長法などの多段階成長法を採用し、例えば、NWの核生成とNWの成長とを別々に最適化する。
【0173】
MBEの大きな利点は、例えば、反射高エネルギー電子回折(RHEED)を用いて、成長するNWをその場で分析できることである。RHEEDは、結晶材料の表面の特徴を明らかにするために通常使用される技術である。この技術は、NWがMOVPEなどの他の技術によって形成される場合には、容易に適用することはできない。
【0174】
MOVPEの大きな利点は、NWを、はるかにより速い成長速度で成長させることができることである。この方法は、例えば、真性AlN/Al(In)GaN多重量子井戸(MQW)から成るシェルを有するn型ドープされたGaNコア、AlGaN電子ブロック層(EBL)及びp型ドープされた(Al)GaNシェルなど、径方向にヘテロ構造化されたNW及びマイクロワイヤの成長に有利である。この方法はまた、例えば、V/IIIモル比をより低く、基板温度をより高くするなど、成長パラメーターを変更した連続成長モード又はパルス成長技術などの技術を用いて、軸方向にヘテロ構造化されたNWの成長も可能にする。
【0175】
より詳細には、反応器は、サンプルを配置した後、排気しなければならず、且つ、N2でパージし、反応器内の酸素及び水分を除去する。これは、成長温度でのグラフェンへの損傷を避けるためであり、且つ、前駆体と酸素及び水との望ましくない反応を避けるためである。全圧は、50~400Torrになるよう設定する。反応器をN2でパージした後、約1200℃の基板温度でH2雰囲気下において基板の熱的クリーニングを行う。その後、基板温度は、対象のNWの成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、700~1200℃の範囲内であり得る。しかしながら、使用する温度は、NWの材料の性質により特定される。GaNの場合、好ましい温度は、800~1150℃であり、例えば、900~1100℃、例としては1100℃などである。AlGaNの場合、その範囲はわずかに高く、例えば、900~1250℃、例としては1050~1250℃などであり、例えば、1250℃である。
【0176】
有機金属前駆体は、Gaの場合、トリメチルガリウム(TMGa)又はトリエチルガリウム(TEGa)、Alの場合、トリメチルアルミニウム(TMAl)又はトリエチルアルミニウム(TEAl)、及びInの場合、トリメチルインジウム(TMIn)又はトリエチルインジウム(TEIn)のそれぞれいずれかであり得る。ドーパント用の前駆体は、シリコンの場合、SiH4、また、Mgの場合、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)又はビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム((MeCp)2Mg)であり得る。TMGa、TMAl及びTMInの流量は、5~100sccmに維持することができる。NH3の流量は、5~150sccmの間で変化させることができる。
【0177】
特に、簡易な気相-固相成長の使用により、NWを成長させ得る。従って、MBEの場合、触媒を用いることなく基板に反応物(例えば、In及びN)を簡易適用することにより、NWを形成し得る。これは、従って、グラファイト基板上における上記の元素から形成された半導体NWの直接成長を提供する本発明の更なる態様を成す。よって、直接という用語は、成長を可能にする触媒が存在しないことを意味する。
【0178】
上記各領域は、NW内の層又はNWを形成するコア上のシェルにより示し得る。従って、本発明は、更に、真性多重量子井戸/量子ドット/超格子を含むシェルを備えたn型ドープコア、電子ブロックシェル層(EBL)及びp型ドープシェルをこの順に有する、グラファイト基板上にエピタキシャル成長させた複数の径方向III-V族NWを提供する。n型ドープ領域は、正孔ブロック層(価電子帯における単一又は複数の障壁)を含み(include/comprise)、少数電荷キャリア(正孔)のn型ドープ領域へのオーバーフローを防止し得る。
【0179】
[分布ブラッグ反射鏡又は金属ミラー]
本発明のレーザデバイスは、少なくとも1つ、好ましくは2つの分布ブラッグ反射鏡(DBR)又は金属ミラーを含む。該DBR又は金属ミラーは、共振キャビティ(NW)を画定し、デバイスは、一端が高反射性のDBRミラー又は金属ミラーによって画定され、好ましくはNWの他端がより反射率の低いDBR又は金属ミラーによって画定される。理想的には、反射率が高い方のDBR又は金属ミラーがグラファイト層に隣接して配置される。
【0180】
キャビティ内部において、NWは、光、例えば単一空間発振モードを有するレーザ光を発生させるために電流が注入される利得媒質を含む。DBRは、単一縦モードのみを反射するように設計される。その結果、レーザは、単一空間モード及び単一縦モードで動作する。レーザは、高反射性DBR又は金属ミラーとは反対側の出射面から発光するのが好ましい。
【0181】
DBRは、電流又は温度を変更することにより、約2nmの範囲にわたって調整可能である。
【0182】
DBRは、異なる屈折率を有する半導体の交互に重なる層を含んでいることが好ましい。各層が材料中のレーザ波長の1/4の厚さを有し、DBRの強度反射率が99%超となることが好ましい。使用される半導体は、理想的にはIII-V族半導体である。異なる屈折率は、各層に存在するIII族原子又はV族原子を変えることによって得ることができる。
【0183】
分布ブラッグ反射鏡は、複数の半導体層、好ましくはIII-V族半導体層を含むことが好ましい。半導体DBRは、2つの異なるIII-V族半導体、例えばGaAs及びAlAsを有している必要がある。
【0184】
隣接する層は異なる屈折率を有する。通常、各DBRは、8~40の層、例えば10~35の層を含むであろう。各層の厚さは、5~200nm、例えば10~100nmとすることができる。理想的には、層は、当の層の屈折率を反映する。このため、各層は、250nmをその層の屈折率で割ったものとなり得る。通常の屈折率は約3~4であるため、層の厚さは60nm程度とすることができる。
【0185】
GaAsSbレーザ用の好ましい分布ブラッグ反射鏡は、GaAs及びAl(Ga)Asの交互に重なる層を含む。DBRは、2つのAlAs層の間に配置された複数のGaAs層を含んでいてもよい。分布ブラッグ反射鏡は、光を反射しなければならず、光を吸収してはならないため、それらのバンドギャップはNWで発生する光の波長と同等よりも高くなるべきである。
【0186】
DBRは、NWからの光、例えば、NWにおいて発生するレーザ光に合わせて調整される必要がある。光がNWを上下に反射するにつれ、強度が増幅される。レーザ発振閾値に達すると、コヒーレントな光が放出される。各NWは、特定の波長でレーザ発振する。
【0187】
一般的なVCSELでは、上下のDBRがp型材料およびn型材料としてドープされ、ダイオード接合を形成している。この場合、分布ブラッグ反射鏡がドープされているのも好ましい。使用されるドーピング材料は、NWに関して上述したものとすることができる。
【0188】
DBRは誘電体であってもよい。DBRは、異なる屈折率を有する誘電材料の交互に重なる層を含み得る。誘電体ブラッグ対は、例えば、TiO2(屈折率約2.5)及びシリカ(屈折率約1.5)である。誘電体DBRにおけるその他の一般的な材料は、フッ化マグネシウム、五酸化タンタル(n=2.275)及び硫化亜鉛(n=2.32)である。DBRにおいて使用される通常の誘電材料の融点は高い。
【0189】
デバイスのボトム及び/又はトップにおける分布ブラッグ反射鏡に代わるものとしては、例えばAlをベースとする金属反射層が用いられるであろう。VCSELにおいては、利得媒質の短い軸長を埋め合わせるために反射率の高いミラーが必要とされる。
【0190】
このような金属層は、アルミニウム、金、銀、クロム又はロジウムを含み得る。好ましくは、反射鏡は、NWから出射する光をNWに帰還させるように配置される。
【0191】
一実施形態では、実際のNW自体の内部で分布ブラッグ反射鏡を成長させてもよい。
【0192】
一実施形態では、ベース構造上にNWの島又は個別のNWを作製するために、グラファイト層及び分布ブラッグ反射鏡をエッチングすることが可能である。
【0193】
[フィラー]
フィラーが、放出光に対して透明であり得る場合、フィラーを使用してアセンブリを包囲することは、本発明の範囲内である。フィラーは、NW間の空間及び/又はアセンブリ全体の周囲に存在してもよい。NW間の空間には、アセンブリ全体とは異なるフィラーを使用してもよい。フィラーは、NWの材料よりも高いバンドギャップを有する半導体材料を含み得る。あるいは、フィラーは、ポリマー及び/又は樹脂を含み得る。
【0194】
[デバイス]
本発明のデバイスは、100×100のNWのアレイを含み得る。NWの高密度アレイは、デバイスの出力を高めるはずである。NWアレイのピッチは、性能向上のためにフォトニック結晶(PC)として機能するように調整されてもよい。NWの直径は、単一光学モード、好ましくは基本モードを閉じ込めるように設計されることが理想的である。UV、IR又は可視光スペクトル、特にUVスペクトルでの発光が行われ得る。
【0195】
VCSELは一般に多くの応用例を有し、その中でも最も重要なものを以下に簡単に述べる。
【0196】
共振器の光往復時間が短いため、VCSELは、優にギガヘルツ領域内の周波数で変調することが可能である。このことにより、VCSELは光通信用の送信器として有用である。光源としてのVCSELは高いトラッキング精度と低い電力消費とを両立することができるため、レーザコンピュータマウスに使用されるVCSELもある。
【0197】
別の有名な応用分野は、波長調整可能なVCSELによるガスセンシングである。VCSELは小型光学時計に使用することも可能であり、その場合、レーザビームがセシウム蒸気中の原子遷移を探る。このような時計は、コンパクトなGPSデバイスの一部となり得る。
【0198】
垂直共振器レーザを参照して本発明を説明したが、同じデバイスをRCLEDとして使用されるように適合させ得ることを想定している。励起レベルがレーザ発振閾値未満であれば、デバイスはRCLEDとして機能する。RCLEDでは、多層ファブリ・ペロー(FP)共振器内で自然放出が生じ、干渉効果によって内部の角度パワー分布が変化する。
【0199】
これらのデバイスでは、少なくとも1つの寸法が放出光の波長程度であるキャビティに活性層が埋め込まれる。そのような状況下では、自然放出プロセスそのものが、内部放出が等方性ではなくなるように改質される。
【0200】
[図面の簡単な説明]
図1は、集積NW/グラフェン/DBRレーザ又はRCLEDデバイスの製造プロセスの概要を示す。DBRとNWと反射率の高いNWトップミラーとのコヒーレント結合により、低閾値電流と高発光効率とを達成することを究極の目的とする、NWをベースとした垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)が示される。NWの直径とNW間のピッチサイズとを調整することにより、面発光PC特性を発現させることも可能である。DBRは、MBE(例えば、GaAs/AlAs)によって成長させた多層の薄膜から作ることができ、結晶配向は一般に(100)である。絶縁層を用いて別のタイプのDBRを作製することができる。しかしながら、このような、結晶配向が(100)である薄膜又は絶縁層は、NWの垂直成長に使用することができない。この問題は、グラフェンをバッファ層として用いることによって解決できる。その上、グラフェンの高い導電性及び透明性により、グラフェンをキャリア注入層として用いることができる。
【0201】
図1(a)において、グラフェン層(図b)が載置されるDBRを用意する。続いて、マスク層を付加してエッチングし、NWの位置決め成長(図c)用の孔を形成することができる。
【0202】
n型ドープ領域が最初に作られ、続いてi領域とp型ドープ領域(図d)とが作られるように、孔の中でNWを成長させる。次いで、Al金属層(すなわち、金属ミラー)などのトップ反射層を付加する。真性領域は、一連の量子ヘテロ構造(例えば、量子井戸/量子ドット又は超格子)を含み得る。
【0203】
任意に、グラフェン層とブラッグ反射鏡とをエッチングし、個別のNWレーザ(f)を作製することができる。
【0204】
電気励起NWレーザ及び光励起NWレーザのいずれも、レーザ発振のための利得を高めるために、よりバンドギャップの低い材料とよりバンドギャップの高い材料とから成る軸方向のヘテロ構造(図2(a)及び図2(b))又は径方向のヘテロ構造(図2(c))を有するように設計される。GaAs系NWレーザ、例えばInGaAsインサート/井戸又はGaAsSbインサート/井戸を有するGaAsをグラフェン上に成長させるのに自己触媒気相-液相-固相法が用いられ、III-N系NWレーザ、例えばGaNインサート/井戸又はInGaNインサート/井戸を有するAlGaN NWをグラフェン上に成長させるのに無触媒法が用いられる。更に、例えばAlAs/GaAs又はAlN/GaNのブラッグ対を有する高品質のDBRをMBE又はMOCVDによって成長させ、その上に、後でNWレーザ又はRCLEDを成長させるために、グラフェン(例えば、単層又は二層)を転写する。
【0205】
図3は、単一のGaAsSb/GaAsヘテロ構造化NWレーザの構造及びレーザスペクトルを示す。NWレーザは、GaAsSbとGaAsとの周期的部分から成る。光励起により、NWは、近赤外でレーザ発振し、図3(b)に示すように干渉パターンを生じる。組成及び構造を調整することにより、GaAsSb/GaAsヘテロ構造化NWレーザは、図3(c)に示すように広い波長域にわたってレーザ発振することが可能である。
【0206】
図4(a)では、ボトムDBR又は金属ミラーが、シリカ層などの透明中間層を備え、その上にグラフェン層が位置している。この配置により、グラフェン上に更にNWをエピタキシャル成長(高温で)させる際に、例えばGaAs/Al(Ga)As DBRの反射率の調整及び/又は保護(キャッピング)が可能になる。
【0207】
図4(b)では、DBRがNWのトップに位置しており、透明シリカ、例えば溶融シリカから成る支持体などの透明支持体がグラフェン層を担持するために用いられている。任意に、グラフェンガラスを、基板兼支持体として用いてもよい
図4(c)は、図4(a)に示した構造の代替として選択できる構造を示し、グラフェンと透明中間層との代わりに、NWの成長時に支持体となることも可能なグラフェンガラスが用いられている。ボトムDBR又は金属ミラーをNWの成長後に設けることができる。
【0208】
図4(d)では、ガラスがDBRを支持している。
【0209】
図5(a)は、成長したNW/グラフェン/DBR構造の概略を示す。NWを成長させる前に、図5(b)の光学画像に示されているように、剥離したグラフェンフレークをDBR反射鏡の上に配置した。図5(c)は、図5(b)中に赤丸で囲み「C」と印をつけたごく小さいグラフェンフレーク上に垂直にエピタキシャル成長させた長さ7μmのGaAsSb系超格子NWの30°傾斜SEM像である。GaAs/AlAsのDBR構造について測定された正規化反射率を、図5(d)に青色曲線として示す。この曲線は、890~990nm辺りの高い反射率の水平部分と、該水平部分の外側の反射率外縁部(reflectance fringes)とを含む。光励起を行うことによって、ファブリ・ペローモードでGaAsSb系超格子NWからフォトルミネセンスが観察され、それを垂直の赤い破線で示している。ファブリ・ペローモードの間隔は11.6nm前後であり、950nm辺りでδE=16meVのエネルギー間隔に相当する。これは、FDTDシミュレーションに基づく計算から求めたngroup=5.35を用いて予測TE01モードについて求めた理論値の16.7meVとよく相関する。
【0210】
NWは、[111]結晶方向に、グラファイト表面に対して垂直に成長させ、GaAs/AlAs DBR(薄膜)は、n型GaAs(001)ウェハ上で[001]結晶方向に成長させている。
【0211】
[実施例1]
グラフェン/DBR上の電気励起AlN/AlGaN/GaN軸方向ヘテロ構造化NWレーザ(RCLED)
AlN/AlGaN軸方向量子ヘテロ構造化活性利得媒質を有するGaN系NWを、グラフェンバッファを用いて誘電体DBR(例えば、SiO2(n=1.5)とTiO2(n=2.5)とのブラッグ対を有するDBR)上に成長させる。高濃度にnドープされたGaN NW部分をグラフェン/DBR構造上に直接エピタキシャル成長させた後、高濃度にnドープされたAlN部分と、5周期分の真性AlN/AlGaN量子ヘテロ構造化活性利得媒質と、pドープされたAlN部分とを成長させる。その後、pドープされたGaNトップ部分をトップコンタクト用に成長させる。
【0212】
[実施例2]
グラフェン/DBR上の光励起GaAsSb/GaAs軸方向ヘテロ構造化NWレーザ
GaAsSb/GaAs軸方向量子ヘテロ構造化活性利得媒質を有する真性GaAsを、グラフェンバッファを用いてGaAs/AlAs DBR上に成長させる。AlAsSbバッファを核生成基部として用いることにより核生成した後、GaAs NWをグラフェン/DBR構造上に直接エピタキシャル成長させ、その後、各部分ごとに100nmの厚さを有する60周期分の真性GaAsSb/GaAs量子ヘテロ構造化活性利得媒質を成長させる。活性利得媒質の成長後、光性能向上を目的として表面をパッシベーションするために、厚さ15nmのAlGaAsシェルを成長させる。
【0213】
[実施例3]
NW/グラフェン/DBRのRCLED
NWを成長させる前に、剥離したグラフェンフレークをGaAs/AlAs DBR反射鏡の上に配置した。GaAs/AlAs DBR(薄膜)をn型GaAs(001)ウェハ上で[001]結晶方向に成長させる。GaAs/AlAs DBR構造について測定された正規化反射率を図5(d)に示す。890~990nm辺りの高い反射率の水平部分と、該水平部分の外側の反射率外縁部とを含んでいる。
【0214】
長さ7μmのGaAsSb系超格子NWを、グラフェン/DBR構造上に垂直に、[111]結晶方向にエピタキシャル成長させた。
【0215】
光励起を行うことによって、ファブリ・ペローモードでGaAsSb系超格子NWからフォトルミネセンスが観察され、それを垂直の赤い破線で示している。ファブリ・ペローモードの間隔は11.6nm前後であり、950nm辺りでδE=16meVのエネルギー間隔に相当する。これは、FDTDシミュレーションに基づく計算から求めたngroup=5.35を用いて予測TE01モードについて求めた理論値の16.7meVとよく相関する。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d