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特許7229169生体高分子の精製のための超分子高アフィニティタンパク質結合系
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】生体高分子の精製のための超分子高アフィニティタンパク質結合系
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/315 20060101AFI20230217BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C07K14/315 ZNA
C07K1/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019553971
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2018024721
(87)【国際公開番号】W WO2018183417
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】62/478,886
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ホンガン ツイ
(72)【発明者】
【氏名】イー リー
(72)【発明者】
【氏名】シュアンクオ シュー
(72)【発明者】
【氏名】リー リン ロック
(72)【発明者】
【氏名】チョンジエン リー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06197927(US,B1)
【文献】Biochemistry,2009年,Vol.48,doi:10.1021/bi802356k
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/315
C07K 1/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質であって、
前記抗体結合ペプチドが黄色ブドウ球菌のプロテインAのZ33ペプチドの親水性アミノ酸配列を有し、
前記直鎖炭化水素鎖は、8から22個の炭素の長さであり、
前記Z33ペプチドの親水性アミノ酸の配列は、FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD(配列番号1)を含み、
前記Z33ペプチドの親水性アミノ酸は、そのN末端でC12または2C8と結合する、免疫両親媒性物質。
【請求項2】
前記抗体結合ペプチドが生理的pHの水溶液中にあるときにα-ヘリックス構造を有する、請求項1に記載の免疫両親媒性物質。
【請求項3】
蛍光色素に結合される、請求項1または2に記載の免疫両親媒性物質。
【請求項4】
前記蛍光色素がローダミンBである、請求項に記載の免疫両親媒性物質。
【請求項5】
以下の工程を含む、抗体またはFc融合タンパク質の精製方法:
a)請求項1~のいずれか一項に記載の免疫両親媒性物質を生理的pHの水溶液に溶解させ、該免疫両親媒性物質が免疫繊維(IF)に自己集合するように一晩熟成させる工程;
b)抗体またはFc融合タンパク質を含む試料を前記IFと混合し、これにより、前記IFを抗体またはFc融合タンパク質のFc部分に結合させ、溶液中に免疫繊維-抗体複合体または免疫繊維-Fc融合タンパク質複合体を形成させる工程;
c)塩を加えて遠心分離することにより、前記免疫繊維-抗体複合体または前記免疫繊維-Fc融合タンパク質複合体を溶液から分離する工程;ならびに
d)前記IFを前記抗体またはFc融合タンパク質から解離させ、未結合の抗体またはFc融合タンパク質を収集する工程。
【請求項6】
前記pHを溶出条件に下げることおよび濾過または精密濾過により、前記IFを前記抗体またはFc融合タンパク質から分離する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年3月30日に提出された国際特許出願第62/478,886号の利益を主張し、これは、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された資料の参照による組み込み)
本出願には、EFS-Webを介してASCII形式で送信された配列表が含まれており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年3月20日に作成された前記ASCIIの複写は、P14162-02_ST25.txtと名付けられ、サイズは1,016バイトである。
【背景技術】
【0003】
合成または天然のペプチドおよびそれらの誘導体の自己集合によって形成された超分子一次元(1D)ナノ構造について、再生医療、薬物送達、および診断学におけるそれらの重要な応用のために、過去30年間で急速に関心が高まっている1-10。例えば、Stupp研究所は、生理的条件下で超分子ナノ繊維に自己集合することができるβシート形成配列に直鎖炭化水素を結合させることにより、一連のペプチド両親媒性物質(PA)を設計および合成した。2、11-16PA集合体に望ましい生物活性を持たせて生物学と関連させるために、細胞接着モチーフRGDや神経突起促進配列IKVAV(配列番号2)などのさまざまな生物活性エピトープが分子設計に組み込まれている。13、17-20一例では、Webberらは、骨髄単核細胞(BMNC)の表面治療送達にRGDS(配列番号3)エピトープを表示する生物活性PAナノ繊維を調査し、生物学的接着の強化を示唆した。14自己集合ペプチドモチーフのC末端またはN末端のいずれかに対する生物活性ペプチドのこの直接配置は、特定の生物医学的応用における生物活性材料を作製するための一般的な戦略になっている。ペプチド集合体の免疫原性を調整するために、Collierと共同研究者らは自己集合ペプチドQ11を抗原OVAペプチドに共有結合させ、結果として生じる超分子OVA-Q11ナノ繊維では免疫原性が強化されていることを発見した。21
【0004】
高アフィニティ抗体結合粒子および材料について、生物学的治療薬に対するモノクローナル抗体の需要の増加により、製薬業界で急速に関心が高まっている。22-24プロテインAは、よく知られた抗体結合リガンドであり、ヒトを含むほとんどの哺乳動物種のIgGのFc部分に特異的に結合する能力を持っている。25-26しかしながら、プロテインAの大きなサイズによりその工業的応用が制限されているため、多くのプロテインAの合成ならびに最小化ドメインが設計および研究されている。27-29プロテインAのZドメインは59アミノ酸残基を持つ最初で最も有名な合成ドメインであり、IgG1に結合する場合、Kは~10nMである。30-31プロテインAのZドメインをさらに最小化するために、結合アフィニティを大幅に変化させることなく2ヘリックス誘導体Z33が設計された(K=43nM)。27高アフィニティリガンドが同定されているが、所望の基質にリガンドを提示する方法は、抗体精製プロセスにも同様に不可欠である。製薬業界では、抗体精製は主に、高い選択性を備えた抗体結合リガンド(例えば、プロテインA)の固定化に基づくアフィニティクロマトグラフィーに依存しているが、高いクロマトグラフィー媒体コストと限られた捕捉生産性とに悩まされている。32-34アフィニティ沈殿が、効果的な精製と比較的簡単なプロセスを使用して潜在的にボトルネックを解消するバッチスループットとを提供することにより従来のクロマトグラフィー法の魅力的な代替法になったのは、つい最近のことである。35-38
【0005】
アフィニティ沈殿の典型的な例は、エラスチン様タンパク質(ELP)融合Zドメインを使用して、温度および塩が誘発するELPの溶解度遷移によりIgGを沈殿させる。39-40しかしながら、細菌によって発現される大量のELP、各ELP融合リガンドの限定された結合部位、および高温での抗体の潜在的な変性は、抗体結合リガンドを提示する新しい基質を発見する関心を促す。
【0006】
自己集合ペプチド両親媒性物質の見事な分子設計から着想を得て、本発明者らは、プロテインA模倣ペプチドZ33を自己集合免疫両親媒性物質(IA)に組み込む方法を調査し、自己集合状態での標的抗体への結合能力を調査した。自己集合免疫繊維(IF)と治療用IgG間の結合アフィニティは、等温滴定熱量測定(ITC)を使用して調査され、IFを含むZ33が高いIgG結合アフィニティを維持することが示唆された。
【発明の概要】
【0007】
多くの1次元(1D)ナノ構造は、結果として生じる集合体の方向性、方向異方性成長を促進する分子間水素結合に不可欠なコアビルディングモチーフとして短いβシート配列を含むペプチドまたはペプチド複合体の自己集合によって構築される。この分子設計戦略は、細胞とのインターフェイスのための生理活性糸状βシート集合体の過剰生産に成功したが、アミロイドフィブリルを連想させる潜在的な毒性に関連する懸念は、α-ヘリックスペプチドを用いる他の超分子作製戦略を促進している。
【0008】
これまでに、生物活性ペプチドを、それらの生物活性を維持しながら超分子ペプチドナノ構造にうまく組み込むことができることを実証した研究が数多く文献にあった。しかしながら、エピトープが生理活性であるためにα-ヘリックス構造を保持しなければならない場合、β-シート形成配列の使用とα-ヘリックスモチーフの提示との間に間隔の非両立性の問題があるようである。これに関連して、本発明者らは、2つのα-ヘリックスを含むモチーフであるプロテインA模倣ペプチドZ33を直鎖炭化水素に直接結合させ、モノクローナル抗体に対して高い結合アフィニティを有する2つの自己集合免疫両親媒性物質が作製されることを示し、これらの発明の超分子免疫繊維(IF)がモノクローナル抗体免疫グロブリンG(IgG)の沈殿と精製に利用され得ることを初めて実証した。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、アミノ酸配列FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD(配列番号1)を有し、2つのα-ヘリックスを含むモチーフである黄色ブドウ球菌のプロテインA模倣ペプチドZ33を直鎖炭化水素へ直接結合させ、自己集合免疫両親媒性物質を作製することを含む。結果は、得られた両親媒性ペプチドが、必須のβシートセグメントを欠いているにも関わらず、生理学的条件下で、天然のα-ヘリックス構造を維持しながら超分子免疫繊維(IF)に効果的に結合することができることを示す。等温滴定熱量測定により、これらの自己集合免疫繊維はpH 7.4では高い特異性で免疫グロブリンG(IgG)抗体に結合することができるが、溶出緩衝液pH 2.8では検出可能な結合は生じないことが確認された。
【0010】
いくつかのさらなる実施形態によれば、本発明のIFは、標的IgG抗体の沈殿および精製を可能にするpH依存性特異的結合を有することが実証された。
【0011】
したがって、いくつかの実施形態では、タンパク質結合ペプチドの繊維状集合体への超分子工学は、効果的なタンパク質精製に有用である。
【0012】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質を提供する。
【0013】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質を提供し、ペプチドは生理的pHの水溶液中にあるときにα-ヘリックス構造を取る。
【0014】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質であって、抗体結合ペプチドが黄色ブドウ球菌のプロテインAのZ33ペプチドの親水性アミノ酸配列、またはその機能的部分もしくは断片もしくは誘導体を有する免疫両親媒性物質を提供する。
【0015】
別の実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質であって、抗体結合ペプチドがアミノ酸配列FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD(配列番号1)、またはその機能的部分もしくは断片もしくは誘導体を有する免疫両親媒性物質を提供する。
【0016】
別の実施形態によれば、本発明は、以下の工程を含む、抗体またはFc融合タンパク質の精製方法を提供する:a)免疫両親媒性物質を生理的pHの水溶液に溶解させ、一晩熟成させて免疫繊維(IF)に自己集合させる工程;b)抗体またはFc融合タンパク質を含む試料をIFと混合し、IFを抗体またはFc融合タンパク質のFc部分に結合させ、溶液中に免疫繊維-抗体複合体または免疫繊維-Fc融合タンパク質複合体を形成させる工程;c)塩を加えて遠心分離することにより、免疫繊維-抗体複合体または免疫繊維-Fc融合タンパク質複合体を溶液から分離する工程;ならびにd)IFを抗体またはFc融合タンパク質から解離させ、未結合の抗体またはFc融合タンパク質を収集する工程。例えば、pHを溶出条件に下げることおよび濾過または精密濾過により、IFを抗体またはFc融合タンパク質から分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(1A)IgGのFc部分に結合するZ33ペプチドの概略図。(1B)C12-Z33および2C8-Z33の配列。アルキル基とZ33は、それぞれ黄色と青色の斜線部分で示されている。Z33ペプチドの2つのαヘリックスには下線が引かれている。(1C)R-Z33 IFの自己集合およびIFとIgGとの結合の概略図。
図2】(A)C12-Z33の自己集合の概略図。(B)Z33ペプチドおよびZ33-C12のそれぞれpH 7.4および2.8での正規化CDスペクトル。C12-Z33のpH 7.4(C、D)および2.8(E、F)でのTEM特性評価。TEM試料は、PBS(pH 7.4)およびIgG溶出緩衝液(pH 2.8)で個別に100μMの濃度で調製した。TEM試料は、2wt%酢酸ウラニルでネガティブ染色した。
図3】15℃の以下の2μM IgG1溶液中への100μMC12-Z33の滴定のITCプロファイル:(A)PBS緩衝液、pH 7.4、および(B)IgG溶出緩衝液、pH 2.8。100μMの(C)Z33および(D)C12-SZ33の、15℃、pH 7.4のPBS中の2μM IgG1への滴定のITCプロファイル。
図4】(A)直径16.8±1.5nmのpH 7.4のPBSおよび(B)直径17.3±1.9nmのpH 2.8のIgG溶出緩衝液中の2C8-Z33のTEM特性評価。TEM試料の調製は、C12-Z33の調製と同様であった。(C)pH 7.4のPBS中の100μM 2C8-Z33の正規化CDスペクトルは、α-ヘリックスの二次構造を示した。以下の2μM IgG1溶液中への100μMの2C8-Z33の滴定のITCプロファイル:(D)PBS緩衝液、pH 7.4および(E)IgG溶出緩衝液、pH 2.8中。
図5】0.6M NaSO溶液によって引き起こされるIF-IgG複合体の沈殿の概略図。(B)0.6M NaSOの(i)添加前および(ii)添加後のC12-Z33の5mM PBS溶液ならびに(iii)5mM C12-Z33、(iv)0.6M NaSO、および(v)5mM C12-Z33と0.6M NaSOとを含むIgG1の20μM PBS溶液の写真。(ii)と(v)とで沈殿が観察された。(C)0.6M NaSOの添加前後のC12-Z33およびIgG1+C12-Z33複合体の吸光度スペクトル。純IgG1の上澄は、IgG1+C12-Z33の上澄からC12-Z33の上澄を引いたものに由来する。(D)0.6M NaSOの添加前後の2mM C12-SZ33およびIgG1+C12-SZ33複合体の吸光度スペクトル。
図6】PBS、pH 7.4中でのIgGコーティングAuナノ粒子とのインキュベーション後の(A、C)100μM C12-Z33および(B、D)100μM C12-SZ33のTEM画像。IgG濃度:0.33-0.66μM。
図7】C12-Z33のCMC測定。一連の濃度のC12-Z33とインキュベートした後にFluorolog蛍光光度計(Jobin Yvon、エジソン、ニュージャージー州)でモニターしたレポーター色素ナイルレッドの発光スペクトル。励起波長は560nmに固定した;580~720nmで発光スペクトルをモニターした。C12-Z33のCMCは、発光極大のブルーシフトによって決定され、遷移は、集合ナノ構造の疎水性コンパートメントへの色素の分配を示す。本明細書に示されている全てのスペクトルは、発光極大によって正規化されている。C12-Z33のCMC範囲:2-5μM。
図8】RB-C12-Z33のRP-HPLC(8A)およびMALDI-TOF MS(8B)特性評価。RP-HPLCスペクトルにより、生成物の純度が確認される(>99%)。予想される質量は4838.5である。4840.2のピークは[M+H]+に相当する。
図9】PBS、pH 7.4中での100μMの(9A)C12-SZ33および(9C)RB-C12-Z33のTEM画像。両方の分子は、それぞれ直径11.5±1.5nmおよび13.8±1.8nmのナノ繊維に自己集合した。pH 7.4のPBS中での100μMの(9B)C12-SZ33および(9D)RB-C12-Z33ナノ繊維の正規化CDスペクトルは、それぞれβシートおよびαヘリックス構造を示した。
図10】PBS(pH 7.4)中で2μM FITC-IgGとインキュベートした100μM RB-C12-Z33の共焦点蛍光画像は、ローダミンBの蛍光シグナルとFITCの蛍光シグナルの共局在を示している。(A)ローダミンB蛍光の画像。(B)FITC蛍光の画像、および(C)(A)と(B)との合成画像。スケールバー:20μm。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ブドウ球菌プロテインA(SPA)は、黄色ブドウ球菌の細胞壁に元々見られるタンパク質である。3ヘリックスバンドルに折り畳まれている5つの相同ドメインで構成されている。プロテインAは、ヒトを含むほとんどの哺乳動物種の免疫グロブリンG(別名IgG)のFc部分に特異的に結合するため、免疫学で重要な役割を果たす。プロテインAの広範な構造的および生化学的研究が実施されている。SPAをコードする最初の遺伝子は、1984年にクローン化、配列決定、および発現され、プロテインAに基づく多数の合成および最小化されたIgG結合ドメインが続いた。このうち、Z-58ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーおよびアフィニティ沈殿で広く使用される最初で最も有名な合成ドメインである。別の最小化された結合ドメインZ-33が、分子の機能を大きく変えることなく、1996年に得られた。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、SPAの抗体結合ドメインのアミノ酸配列を修飾および/または誘導体化してIFのビルディングユニットとして働く免疫両親媒性物質にする方法を提供する。本明細書に記載されるのは、IgG抗体またはその部分もしくは断片の結合に有用なIFの設計および作成の例である。生理的pH範囲の水溶液で免疫繊維が形成されると、表面に提示される露出した生理活性エピトープ(結合部位)は、IgGに特異的に結合することができる。
【0020】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質を提供する。
【0021】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質を提供し、免疫両親媒性物質は、生理的pHの水溶液中にあるときにα-ヘリックス構造を有する。
【0022】
一実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質であって、抗体結合ペプチドが黄色ブドウ球菌のプロテインAのZ33ペプチドの親水性アミノ酸配列、またはその機能的部分もしくは断片もしくは誘導体を有する免疫両親媒性物質を提供する。
【0023】
別の実施形態によれば、本発明は、直鎖炭化水素鎖に結合した抗体結合ペプチドを含む免疫両親媒性物質であって、抗体結合ペプチドがアミノ酸配列FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD(配列番号1)、またはその機能的部分もしくは断片もしくは誘導体を有する免疫両親媒性物質を提供する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「免疫両親媒性物質」という用語は、「免疫繊維」と呼ばれる個々の安定した超分子ナノ構造に自発的に会合することができる分子を意味する。一般的に、IFは、約2.8~約7.5のpH範囲で集合することができる。しかしながら、結合特性はpHにも依存する。より正に帯電したIFは、より高いpHの溶液で会合しやすく、逆に、負に帯電したIFは、より低いpHの溶液中で会合しやすくなる。
【0025】
いくつかの実施形態では、親水性ペプチドは、8~22個の炭素を有する炭化水素尾部に結合しており、直線状であるか、分岐していてもよい。水溶液への溶解性を考慮すると、炭素数には上限がある。親水性ペプチドは、ナノ構造の水溶性を高め、円柱状または球状ミセル、中空ナノチューブ、トロイド、ディスクおよびベシクルを含むが、これらに限定されない明確なナノ構造アーキテクチャの形成を、好ましい二次構造形成、例えばベータシート、アルファヘリックス、ポリプロリンタイプIIヘリックス、ベータターンを通じて促進することができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「抗体結合ペプチド」という用語は、抗体または抗体分子の特定の部分、例えばFc部分に高い特異性で結合する能力を有する、例えば約10-6M~約10-10MのKを有するペプチドを意味する。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体結合ペプチドは、黄色ブドウ球菌のプロテインAのZドメインの2ヘリックス誘導体ペプチドZ33の親水性アミノ酸配列、またはその機能的部分もしくは断片もしくは誘導体である。
【0028】
本明細書で使用される場合、プロテインAのZ33ペプチドは、FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD(配列番号1)のアミノ酸配列を有する。
【0029】
「アミノ酸」という用語には、天然のα-アミノ酸の残基(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Lys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)のDまたはL型、ならびにβ-アミノ酸、合成および非天然アミノ酸が含まれる。多くのタイプのアミノ酸残基がポリペプチドに有用であり、本発明は天然の遺伝的にコードされたアミノ酸に限定されない。本明細書に記載のペプチドに利用することができるアミノ酸の例は、例えば、Fasman, 1989, CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, CRC Press, Inc、およびその中に引用されている参考文献に見出すことができる。幅広いアミノ酸残基の別の供給源は、RSP Amino Acids LLCのWebサイトで提供されている。
【0030】
本明細書における「誘導体」への言及には、本発明の発明的抗体結合ペプチドの部位、断片、および部分が含まれる。誘導体には、単一もしくは複数のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加も含まれる。相同体には、同じ種のヘビから、またはヘビの同じ属もしくはファミリーからの毒液からの機能的、構造的または立体化学的に類似したペプチドが含まれる。そのような相同体は全て、本発明によって企図される。
【0031】
類似体および模倣物には、非天然アミノ酸を含む分子、またはアミノ酸を含まないがそれでもペプチドと機能的に同じように振る舞う分子を含む分子が含まれる。天然物のスクリーニングは、類似体および模倣物を特定するための有用な戦略の1つである。
【0032】
ペプチド合成中に非天然アミノ酸および誘導体を組み込む例には、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD-異性体の使用が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で企図される既知の非天然アミノ酸の部分的なリストを表1に示す。
【0033】
表1:非天然アミノ酸
【表1-1】
【表1-2】
【0034】
本明細書で企図される対象ペプチドの類似体には、ペプチド合成中の側鎖への修飾、非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組み込み、および架橋剤の使用、ならびにペプチド分子またはそれらの類似体に立体構造上の制約を課す他の方法が含まれる。
【0035】
本発明により意図される側鎖修飾の例には以下が含まれる:アルデヒドとの反応による還元的アルキル化とそれに続くNaBHでの還元などによるアミノ基の修飾;メチルアセトイミデートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化;2、4、6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸およびテトラヒドロ無水フタル酸によるアミノ基のアシル化;リジンのピリドキサール-5-リン酸によるピリドキシル化とそれに続くNaBHによる還元。
【0036】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサールなどの試薬との複素環縮合生成物の形成により修飾され得る。
【0037】
カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミド活性化とそれに続く、例えば対応するアミドへのその後の誘導体化により修飾され得る。
【0038】
スルフヒドリル基は、以下などの方法で修飾され得る:ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4-クロロメルクリ安息香酸、4-クロロメルクリフェニルフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノールおよびその他の水銀を使用した水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアン酸塩によるカルバモイル化。
【0039】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドまたはハロゲン化スルフェニルによるインドール環のアルキル化によって修飾され得る。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化により変更され、3-ニトロチロシン誘導体を形成し得る。
【0040】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカルボネートによるN-カルボエトキシル化によって達成され得る。
【0041】
架橋剤を使用して、例えば3D構造を安定化することができ、n=1~n=6の(CHスペーサー基を持つ二官能性イミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、および通常N-ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分と、マレイミドまたはジチオ部位(SH)またはカルボジイミド(COOH)などの別の基特異的反応性部位とを含むヘテロ二官能性試薬を使用する。さらに、ペプチドは以下によって立体構造的に制約され得る:例えば、CαおよびNα-メチルアミノ酸の取り込み、アミノ酸のCαおよびCβ原子間の二重結合の導入、ならびにNおよびC末端間、2つの側鎖間、または側鎖およびNもしくはC末端間のアミド結合の形成などの共有結合を導入することによる環状ペプチドまたは類似体の形成。
【0042】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、長さが4~100アミノ酸残基、好ましくは長さが約10~80残基、より好ましくは長さが15~65残基の配列を含み、ここで、1つのアミノ酸のα-カルボキシル基は、隣接するアミノ酸の主鎖(αまたはβ)アミノ基にアミド結合によって結合されている。
【0043】
いくつかの他の実施形態によれば、例えばダイアフィルトレーションなどのいくつかのろ過方法を使用して、結合した抗体から免疫繊維を分離することができる。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、一般に、本発明は、試料中の抗体またはFc融合タンパク質を生理学的pHの水溶液中で本発明の免疫繊維と混合することにより、抗体またはFc融合タンパク質を精製する方法を提供し、免疫繊維が抗体またはFc融合タンパク質のFc部分に結合することができるようにする。いくつかの実施形態では、免疫繊維はプロテインAのZ33部分を含み、抗体のFc部分に特異的である。しばらくして免疫繊維が結合することができるようになると、免疫繊維は溶液中に免疫繊維-抗体または免疫繊維-Fc融合タンパク質複合体を形成する。次いで、形成された複合体を、例えば塩誘導沈殿および遠心分離を含む多くの既知分離手段により、試料中の非結合免疫繊維および抗体またはFc融合タンパク質ならびに他の成分から分離することができる。分離された複合体は、酸性pHの別の溶液に導入され、免疫繊維は抗体またはFc融合タンパク質に対する結合アフィニティを失う。次いで、ダイアフィルトレーションまたは他の手段などの濾過により、抗体またはFc融合タンパク質を解離した免疫繊維から分離することができ、解離したモノマーも同様に除去することができる。
【0045】
本明細書で使用される「試料」という用語は、本発明の免疫繊維を使用して結合することができる目的の抗体または目的のFc融合タンパク質を含む任意の試料または溶液もしくは液体もしくは混合物を意味する。いくつかの実施形態では、試料は生体試料であり得る。例えば、試料には、例えば、細胞培養物、細胞溶解物、および清澄化バルク(例えば、清澄化細胞培養上澄)が含まれる。場合により、試料は、目的の抗体またはFc融合タンパク質を発現する宿主細胞または生物から(自然にまたは組換え的に)産生される。例えば、細胞培養物中の細胞には、目的の抗体またはFc融合タンパク質をコードする核酸を含む発現構成体でトランスフェクトされた宿主細胞が含まれる。これらの宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、または好ましくは培養で増殖された動物細胞であり得る。細菌宿主細胞には大腸菌細胞が含まれるが、これに限定されない。適切な大腸菌株の例には以下が含まれる:HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断できない任意の大腸菌株。使用され得る真菌宿主細胞には、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリスおよびアスペルギルス細胞が含まれるが、これらに限定されない。使用され得る昆虫細胞には、カイコガ、ヨトウガ、ツマジロクサヨトウ、イラクサギンウワバ、キイロショウジョウバエが含まれるが、これらに限定されない。多くの哺乳類細胞株が適切な宿主細胞であり、例えば、CHO、COS、PER.C6、TM4、VERO076、DXB11、MDCK、BRL-3A、W138、Hep G2、MMT、MRC 5、FS4、CHO、293T、A431、3T3、CV-1、C3H10T1/2、Colo205、293、HeLa、L細胞、BHK、HL-60、FRhL-2、U937、HaK、Jurkat細胞、Rat2、BaF3、32D、FDCP-1、PC12、M1x、マウス骨髄腫(例えば、SP2/0およびNS0)およびC2C12細胞、ならびに形質転換霊長類細胞株、ハイブリドーマ、正常な二倍体細胞、および初代組織と初代外植体のin vitro培養から得られた細胞株が含まれる。
【0046】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、「生体試料」または「生体液」という用語は、生存患者もしくは以前に生存していた患者または哺乳動物または培養細胞からの物質の任意量を含むが、これらに限定されないことが理解される。そのような物質には、血液、血清、血漿、尿、細胞、臓器、組織、骨、骨髄、リンパ、リンパ節、滑膜組織、軟骨細胞、滑膜マクロファージ、内皮細胞、皮膚、細胞培養、細胞溶解物、および清澄化バルク(例えば、清澄化細胞培養上澄)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明のある特定の実施形態では、本発明を使用して精製されたタンパク質は抗体である。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体断片、イムノアドヘシンおよび抗体-イムノアドヘシンキメラを包含する最も広い意味で使用される。
【0048】
「抗体断片」には、少なくとも抗体のFc部分、および典型的にはその抗原結合または可変領域が含まれる。
【0049】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同質な抗体の集団から得られる抗体であって、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在する可能性のある自然発生突然変異を除いて同一であるような抗体を指す従来の意味で使用される。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一抗原部位指向性である。これは、典型的には抗原の様々な決定基(エピトープ)に対して指向性である多様な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的であるが、モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向性である。抗体の説明における「モノクローナル」という用語は、抗体の実質的に同質な集団から得られるという抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載された従来のハイブリドーマ技術を使用して産生することができ、または組換えDNA法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)。モノクローナル抗体は、例えば以下に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから分離することもできる:Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991);ならびに米国特許第5,223,409; 5,403,484; 5,571,698; 5,427,908 5,580,717; 5,969,108; 6,172,197; 5,885,793; 6,521,404; 6,544,731; 6,555,313; 6,582,915; および6,593,081号明細書)。
【0050】
本明細書に記載のモノクローナル抗体には、「キメラ」および「ヒト化」抗体が含まれ、その重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である一方、鎖(単数または複数)の残りの部分は、所望の生物活性を示す限り、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片の対応する配列と同一または相同である(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域残基は、望ましい特異性、アフィニティ、および容量を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域残基に置き換えられている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの実質的に全ての可変ドメインを含み、全てまたは実質的に全ての超可変ループは非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てまたは実質的に全てのFR領域はヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照。
【0051】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体には「ヒト」抗体も含まれ、これは、例えばヒト患者の血液またはトランスジェニック動物を使用して組換えにより調製されたものなど、様々な供給源から単離することができる。そのようなトランスジェニック動物の例には、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽鎖トランス染色体を有するKM-MOUSE(登録商標)((Medarex、Inc.、プリンストン、ニュージャージー州)(WO 02/43478を参照)、XENOMOUSE(登録商標)(Abgenix、Inc.、フレモント、カリフォルニア州;例えば、Kucherlapatiらに対する米国特許第5,939,598; 6,075,181; 6,114,598; 6,150,584および6,162,963号明細書に記載)、およびHUMAB-MOUSE(登録商標)(Medarex、Inc .;例えば、以下に記載されている:Taylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6: 579-591; and Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851、米国特許5,545,806; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,789,650; 5,877,397; 5,661,016; 5,814,318; 5,874,299; and 5,770,429; 5,545,807;およびKormanらに対するPCT公開番号WO 92/03918, WO 93/12227, WO 94/25585, WO 97/13852, WO 98/24884 and WO 99/45962, WO 01/14424)。本発明のヒトモノクローナル抗体は、免疫時にヒト抗体応答が生成されるように、ヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを使用して調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、Wilsonらの米国特許第5,476,996および5,698,767号明細書に記載されている。
【実施例
【0052】
材料。全てのFmocアミノ酸および樹脂をAdvanced Automated Peptide Protein Technologies(AAPPTEC、ルイビル、ケンタッキー州、UXSA)から購入し、Fmoc-Lys(Fmoc)をNovabiochem(サンディエゴ、カリフォルニア州、USA)から入手した。治療用ヒトIgG1(IgG1)をBristol-Myers Squibb(ボストン、マサチューセッツ州、USA)から入手し、IgG溶出緩衝液をThermo Fisher Scientific(ロックフォード、イリノイ州、USA)から調達した。全ての他の試薬をVWR(ラドナー、ペンシルベニア州、USA)から入手し、さらなる精製なしでそのまま使用した。
【0053】
分子合成。C12-Z33および2C8-Z33免疫両親媒性物質を、同様の方法を使用して合成した。簡単に説明すると、Z33ペプチドを最初に、標準的な9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相合成プロトコルを使用して、Focus XC自動ペプチド合成機(AAPPTEC、ルイビル、ケンタッキー州)で合成した。次に、C12(または2C8)アルキル鎖を、Z33ペプチドのN末端(Fmoc除去後)で、Z33ペプチドに対してラウリン酸(またはオクタン酸)/HBTU/DIEAを4(または8):4:6の比率で手動でカップリングさせ、室温で一晩振とうした。Fmoc脱保護を、DMF溶液中の20%4-メチルピペリジンを使用して10分間実行し、もう1回繰り返した。全ての場合において、遊離アミンのニンヒドリン試験(Anaspec Inc.、フレモント、カリフォルニア州)によって反応をモニターした。完成したペプチドを、2.5時間、92.5:5:2.5の比率のTFA/TIS/HOの混合物を使用して、固体支持体から切断した。過剰のTFAを回転蒸発により除去し、冷ジエチルエーテルを加えてクルードペプチドを沈殿させた。遠心分離法により、沈殿したペプチドとジエチルエーテルを6000rpmで3分間分離した。ペプチドをジエチルエーテルでさらに2回洗浄し、溶液を遠心分離により除去した。
【0054】
IAを、25°CでVarianポリマーカラム(PLRP-S、100Å、10μm、150×25mm)を使用する分取RP-HPLCで、フラクションコレクターを備えたVarian ProStar Model 325分取HPLC(Agilent Technologies、サンタクララ、カリフォルニア州)において精製した。0.1%v/v TFAを含む水/アセトニトリル勾配を、20ml/分の流速で溶離液として使用した。Z33ペプチドセグメントの吸光度ピークを220nmでモニターした。クルード物質を20mlの0.1%TFA水溶液に溶解し、各精製実験を10ml注入で実施した。収集した画分をMALDI-ToF分析し(BrukerAutoflex III MALDI-ToF機器、ビレリカ、マサチューセッツ州)、および所望の生成物を含むものを凍結乾燥し(FreeZone -105℃ 4.5L凍結乾燥機、Labconco、カンザスシティ、ミズーリ州)、-30℃で保存した。
【0055】
免疫両親媒性物質の自己集合およびTEMイメージング。1mM濃度の免疫両親媒性物質をHFIPで前処理した後、1×PBSまたは脱イオン水に溶解し、室温で一晩熟成させた;10倍希釈した試料10μlを400平方メッシュのカーボンフィルム銅グリッド(EMS:Electron Microscopy Sciencesから)にスポットし、フィルター紙で過剰分を除去し、グリッド上に試料の薄膜を残した。試料を5分間乾燥させた後、10μlの2%酢酸ウラニルを試料グリッドに加え、30秒後に過剰分を除去した。全ての試料を、TEMイメージングの少なくとも3時間前に乾燥させた。
【0056】
円偏光二色性分光法(CD)。両方の自己集合試料のCD実験を、Jasco J-710分光偏光計(JASCO、イーストン、メリーランド州、USA)において、1mm経路長の石英UV-Vis吸収セル(ThermoFisher Scientific、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、USA)を使用して25℃で実施した。試料を、実験前に1mMストック溶液から1×PBS中100μMに即座に希釈した。3回のスキャンの平均として、190~280nmの波長範囲でスペクトルを収集した。溶媒のバックグラウンドスペクトルを取得し、試料スペクトルから差し引いた。収集したデータを、試料濃度について正規化した。
【0057】
ITC実験。高精度VP-ITC滴定熱量測定システム(Microcal Inc.)を使用して、等温滴定熱量測定実験を実施した。IgG1溶液を、15℃の1×PBS(pH 7.4または2.8)中の免疫両親媒性物質で滴定した。IgG1濃度を、0.1%(1mg/ml)IgG溶液の280nmでの質量吸光係数1.4を使用して計算した。免疫両親媒性物質の濃度を、全窒素アッセイによって決定した(Anal. Biochem., 61.2 (1974): 623-627)。各注入後に発生する熱を、熱量測定信号の積分から得た。免疫両親媒性物質のIgG1への会合に伴う熱を、希釈熱を差し引くことにより得た。データの分析を、MicroCal OriginTMパッケージを使用して実行した。
【0058】
(実施例1)
全長Z33免疫両親媒性物質の分子設計。ペプチド両親媒性物質、ペプチド-ポリマー複合体、ペプチド薬物複合体などのこの両親媒性ペプチド複合体の構築を広く使用して、様々な超分子ナノ構造が作製されている。親水性Z33ペプチド配列(FNMQQQRRFYEALHDPNLNEEQRNAKIKSIRDD)(配列番号1)および疎水性アルキル鎖からなるIgG結合免疫両親媒性物質を、免疫繊維(IF)のビルディングモチーフとして機能するように設計した。Z33ペプチドは、高い結合アフィニティ(K=43nM)でIgGのFc部分に特異的に結合するプロテインAの2ヘリックス誘導体(図1A)である。28、41-42
【0059】
2つのIA、C12-Z33および2C8-Z33(図1B)は、ラウリン酸部位(C12)、または2つのオクタン酸部位(2C8)をZ33ペプチドのN末端に直接結合させることにより合成した。図1Cに示されているように、IAは自己集合してIFになり、抗体混合液からIgGに特異的に結合することが期待されていた。純粋なZ33ペプチドも合成し、Z33分子およびZ33含有IFの生物活性を比較した。別の対照分子C12-SZ33は、C12をZ33のN末端にスクランブル配列で結合させることにより設計した。全ての分子は、自動固相ペプチド合成(SPPS)方法およびRP-HPLCを使用して合成および精製した。合成化合物の純度および予想される分子量を、分析HPLCおよび質量分析を使用して確認した。
【0060】
(実施例2)
全長Z33免疫両親媒性物質の実施形態の分子自己集合および特性評価。2つのIAの自己集合は、2工程の操作で簡単に実現できる。まず、IAをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で個別に前処理し、溶解度と自己集合形態の均一性とに影響を与え得る既存のナノ構造を除去した。次に、HFIPを蒸発により除去した後、脱イオン水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加し、最終濃度を1mMにした。疎水性相互作用によってIFのコアにトラップされたアルキルセグメントで形成されたIFと、溶媒に面したシェルに提示される生理活性Z33配列(図2A)。室温で一晩熟成した後、透過型電子顕微鏡(TEM)および円偏光二色性(CD)を使用して、集合ナノ構造の形態を特性評価した。
【0061】
本発明のIgG精製方法におけるpH条件の重要な役割を考慮して、pH変動に応じたC12-Z33の自己集合挙動を評価した。一般的に、中性pHは結合条件として通常使用され、一方で酸性pHはプロテインAアフィニティカラムから抗体を溶出するために使用される。32、34中性および低pHでの自己集合挙動を研究するために、PBS(pH 7.4)およびIgG溶出緩衝液(pH 2.8)を、C12-Z33の自己集合の水性環境として利用した。異なるpHでのC12-Z33 IFの形態を、TEM(図2C~2F)およびCD(図2B)で調べた。C12-Z33分子は、上記の両方のpH条件でよく溶解し、ナノ繊維に自己集合することができるとわかった。C12-Z33溶液100μMからの代表的なTEM画像は、C12-Z33が生理学的条件と酸性条件の両方において、完全に伸長したペプチド分子の長さより小さい値(βシート構造で約22.5nm)である直径16.0±1.7nmのナノ繊維構造に自己集合したことを明らかにした。ナノ繊維の長さはマイクロメートルスケールで示され、うまく制御できなかった。自己集合構造内の分子パッキングをさらに理解するため、円偏光二色性(CD)を使用してペプチドの二次構造を試験した。C12-Z33では222nm(n-π)および208nm(π-π)付近に強い負の信号が観察され、自己集合状態でのZ33セグメントのαヘリックス二次構造の形成が示唆され、純粋なZ33ペプチドで示された通りであった。CDスペクトルとIFの測定された直径に基づいて、IFにパッキングするときにペプチドはそのαヘリックス二次構造を維持すると推測するのが合理的である。PBS溶液またはIgG溶出緩衝液中のC12-Z33のCDスペクトルは、部分的なαヘリックス信号のみを維持していたが、同じ緩衝液中のZ33ペプチドと比較して、222nmおよび208nm付近の2つの負のピークの楕円率が変化したことは注目に値する。CDスペクトルのシフトは、Z33セグメントの分子パッキングをその遊離状態から変更することができるIFの形成に起因する可能性があり、その結果、結合部位に必要な特定の構造のためにIgGへの結合アフィニティに影響を与える可能性がある。
【0062】
(実施例3)
IFの結合アフィニティを測定するためのITC実験。IFへの組み込み後のZ33ペプチドの二次構造の構造変化を考慮すると、C12-Z33 IFの形成が元のZ33ペプチドに存在するIgG結合能力に影響するかどうかを知ることに大きな関心が寄せられる。自己集合C12-Z33 IFの結合アフィニティを調べるために、IgG1への結合の熱力学的特性を等温滴定熱量測定(ITC)で調べた。ITCは、多くのタンパク質およびリガンド間の結合事象をモニターするために広く採用されており、43-45これは、C12-Z33 IFおよびIgG1間に結合が発生するかどうかを調べる優れた方法である。46-47結合反応に関連する熱を段階的な注入中に記録し、熱力学的解離定数(K)、モルエンタルピー変化(ΔH°)、および化学量論(N)を含む熱力学的パラメーターを直接取得することができる。44
【0063】
テーブル1.pH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水中15℃でZ33ベースのリガンドがIgG1に結合するための熱力学的パラメーター。データはリガンドごとに報告される。
【表2】
【0064】
テーブル2.pH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水中15℃でZ33ベースのリガンドがIgG1に結合するための熱力学的パラメーター。データはIgG1ごとに報告される。
【表3】
【0065】
典型的なITC実験では、PBS緩衝液中の100μM C12-Z33の溶液を一晩熟成させ、15℃、pH 7.4の同じ緩衝液中の2μM IgG1の溶液に注入した。典型的なサーモグラムと結合等温線を図3Aに示し、リガンドごとに報告された熱力学的パラメーターをテーブル1にまとめる。IgG1へのC12-Z33 IFの結合のITC結果は、650のKを特徴とするエンタルピー駆動結合事象を明らかにした。C12-Z33 IFの結合効率をさらに比較して、本発明者らは、表面プラズモン共鳴で測定した43nMのKでIgG1にしっかりと結合することが証明されたZ33ペプチドを合成した。Z33ペプチドのIgG1への結合特性を、ITCによりpH 7.4のPBS中15℃で測定し、典型的なサーモグラムと結合等温線を図3Cに示した。100倍良好なアフィニティに加えて、Z33の化学量論は2.3であったが、C12-Z33の見掛けの化学量論は3.1であり、IFの全てのC12-Z33をIgG1分子への結合に利用することができるわけではないことが示された。IgG1に結合することができるC12-Z33分子の効率は、Z33の化学量論をC12-Z33の化学量論で割ることにより、74.2%と見積もることができる。
【0066】
リガンドごとの正規化により、結合の見かけの化学量論の決定が可能になるが、テーブル2に示すように、IgGのモルあたりの正規化後に熱力学的パラメーターの比較を行う必要がある。Z33のIgGへの結合は、大きくて不利なエントロピー変化とは対照的に、大きくて有利なエンタルピーによって特徴付けられた。エンタルピーおよびエントロピー変化の規模は小さかったが、C12-Z33の結合の熱力学的特性は類似していた。C12-Z33はZ33よりも不利ではないエントロピーで結合するが、有利なエンタルピーの損失はさらに大きく、全体的に低い結合アフィニティをもたらす。有利な結合エンタルピーの全体的な損失は、IFの崩壊に関連する不利なエンタルピーによって引き起こされる可能性がある。IFの制限により、IgG1との好ましい相互作用が制限される可能性もある。C12-Z33によるIgG1の滴定を、15℃のIgG溶出緩衝液(pH 2.8)でも行ったのは(図3B)、IFからの溶出に適するこの低pHでの結合アフィニティが著しく低いことを示すためである。
【0067】
IFとIgG1との間の非特異的結合を排除するために、スクランブルZ33ペプチド配列を有するC12-SZ33を陰性対照として使用した。このC12-SZ33 IAは、TEMとCDとで特徴付けられた同様の自己集合特性および二次構造を示している(データは示していない)。ITC実験は、100μM C12-SZ33 IAをpH 7.4のPBS中15℃の2μM IgG1溶液に注入して結合能を測定することにより実施した。図3Dのサーモグラムと結合等温線は、IgG1とZ33ペプチド間の特異的な相互作用を示唆している。
【0068】
(実施例4)
IFの機能の普遍性をさらに証明するために、二重鎖アルキル化IA 2C8-Z33も、自己集合特性からIgG1への結合アフィニティまで研究した(図4A-E)。均一な直径のナノスケールIFがTEM画像で観察され、αヘリックスの二次構造がCDで確認された。ITCの結果から、2C8-Z33とIgG1の結合はpH 7.4のPBS中15℃で発生したが、pH 2.8の溶出緩衝液中では検出可能な結合は発生しなかった。2C8-Z33の結合の見掛けの化学量論は9.1であり、結合の効率がさらに低いことを示している。2C8-Z33はC12-Z33よりも結合のエンタルピーが有利ではないが、エントロピーからの寄与は不利ではないため、わずかに良好な結合アフィニティをもたらす(テーブル2)。上記の結果から、表面に高密度の結合部位が提示されることにより、元のZ33ペプチドで示される通り、自己集合IFはIgG1への有利な結合能力を維持することができると示された。それにもかかわらず、エンタルピー起源であるIFについて観察された全体的な結合アフィニティの損失がある。有利なエンタルピーの損失は、IFの制限による相互作用の損失と、粒子の崩壊に関連する不利なエンタルピーの寄与によって説明できる。IF内の分子レベルのパッキングは、生体活性の性能に大きく影響する可能性のある形態学的ならびに機能的特性を決定する。
【0069】
(実施例5)
(IgG分子の精製への潜在用途)
構成アミノ酸の多様性は、水素結合、π―πスタッキング、疎水性崩壊、および自己集合ペプチドナノ繊維間の静電相互作用を含む非共有相互作用の幅広い基盤を提供する。例えば、酸性および塩基性アミノ酸の溶解度は、イオン化の程度、pHおよびイオン強度に依存する特性によって決まる。したがって、帯電ペプチドの自己集合プロセスは、pHを調整するか、または塩を添加して静電反発力を減らし、凝集を促進し、さらには沈殿を促進することによって容易にすることができる。Z33ペプチドに提示される多数の荷電アミノ酸残基を考慮すると、本発明の発明的免疫繊維系の魅力的な利点は、容易に調整可能な溶解度に頼る。いったんIgGがIFに結合すると、IgG-IF複合体は、イオン強度の高い塩を添加することで沈殿する可能性が高くなる(図5A)。
【0070】
C12-Z33 IFは、IgG1への結合アフィニティが比較的高いため、IgG1を沈殿させる可能性を研究するために選択された。図5B(i-ii)に示すように、5mM C12-Z33はPBS溶液によく溶けるが、0.6M NaSOのPBS溶液では沈殿する。PBS溶液中のC12-Z33のゼータ電位は―7.61mVであり、NaSOの添加によりIFの表面の電荷が遮蔽され、沈殿が誘発される可能性がある。IgG1の場合、5mM C12-Z33ならびに0.6M NaSOによく溶解する。しかしながら、20μM IgG1と5mM C12-Z33を5分間混合した後、0.6M NaSOを添加すると、沈殿が観察された。沈殿物の組成を決定するために、2つの並列実験を実行した。0.6M NaSO中の5mM C12-Z33を遠心分離し、紫外可視(UV-Vis)分光法を使用して、NaSOの添加前後の280nmでの上澄の吸光度変化をモニターした。0.6M NaSO中の5mM C12-Z33と20μMIgG1との混合液で同じ手順を実施した。図5Cに示すように、ほとんどのC12-Z33 IFは0.6M NaSOで沈殿させることができた。IgG1-IF複合系の場合、280nmでの吸光度はIgG1の初期吸光度を下回るレベルまで低下し、溶液からIgG1が除去されたことを示している。より明確に、青線から緑線の値を引くことにより、純IgG1の上澄の吸光度がプロットされ、60%以上のIgG1が上澄から除去されたことを示唆している。これまでに、IFが新しいアフィニティ沈殿剤として機能する可能性が予備的に証明された。
【0071】
(実施例6)
(本発明のIFへのIgG結合の確認。)
TEMでIgG構造を特定することが困難なため、免疫繊維とIgGの結合を直接視覚化することは制限された。IgGが免疫繊維の表面に存在することを確認するために、事前に形成されたC12-Z33およびC12-SZ33免疫繊維を10nmのIgG標識Auナノ粒子とともに2時間別個にインキュベートした。各溶液をTEMグリッドに滴下した後、グリッドをろ紙で吸い取り、自然乾燥させた。次に、試料を酢酸ウラニルで染色する前に、結合していないAuナノ粒子を除去するために、PBS緩衝液でグリッドを慎重に3回洗浄した。密領域と疎領域の両方でIgGコーティングAuナノ粒子とインキュベートしたC12-Z33のTEM画像(図6Aおよび6C)は、Z33提示ナノ繊維の表面へのIgGの結合を確認した。スクランブルZ33配列を持つ対照ナノ繊維に付着するAuナノ粒子はほとんど観察されなかった(図6Bおよび6D)。この研究は、C12-Z33免疫繊維とIgGコーティングAuナノ粒子の共局在化は、実際に特異的結合の結果であることを示唆している。Auナノ粒子の密度が長い免疫繊維で比較的低かったことに注意する必要があり、ナノ繊維への自己集合後のZ33免疫両親媒性物質のタイトパッキングのアクセスが制限されているためである可能性が高い。別の可能性は、IgGコーティングAuナノ粒子がモノマー状態でC12-Z33に結合し、洗浄工程で取り除かれ得ることであり、これはIgGコーティングAuナノ粒子のIgG濃度(0.33-0.66μM)が、2~5μMであるC12-Z33の臨界ミセル濃度値以下であったことが理由である(図7)。
【0072】
(実施例7)
(本発明のIFとのIgG相互作用の可視化。)
C12-Z33免疫繊維とIgGの相互作用をよりよく視覚化するために、C12-Z33を蛍光色素(ローダミンB)で標識すると、共焦点レーザー走査顕微鏡下で蛍光免疫繊維とFITC-IgGを直接イメージングすることができる。ローダミンBは、生体材料の染色に広く使用されている。ローダミンB標識C12-Z33(RB-C12-Z33)を、Z33のN末端にリジンを追加することにより合成し(図8)、ローダミンBおよびC12を、新たに追加したリジンの側鎖および主鎖のアミン基に個別に結合させた。蛍光標識はC12-Z33の結合能力を妨げないと想定されたが、これは、C12と共に免疫繊維に自己集合した後、色素が疎水性コアに留まり、それが結合配列Z33から離れて位置するためである。PBSでの自己集合繊維形態は、TEMを使用して確認した(図9C)。1mMストック溶液から希釈した100μM RB-C12-Z33と2μM FITC-IgGをPBS中に事前混合した。イメージングの直前に30μlの溶液をきれいな顕微鏡スライドにスポットし、カバースリップで覆って液体の薄層を得た。次に、蛍光画像(図10A-C)を共焦点レーザー走査顕微鏡で撮影し、RB-C12-Z33(赤色)とFITC-IgG(緑色)との両方からの蛍光シグナルの共局在を示した。FITC-IgGは、純粋なFITC-IgG溶液および同じ条件でC12-SZ33とインキュベートした溶液では決して観察されない大きな明るい集合体を形成することがわかった(データは示していない)。RB-C12-Z33とインキュベートした場合のFITC-IgGの明るい蛍光と比較して、低い蛍光シグナルがPBS溶液中またはC12-SZ33とインキュベートした後に検出された。これは、RB-C12-Z33とFITC-IgGの結合がFITC-IgGの凝集と強い蛍光を誘発する一方で、FITC-IgGがPBS緩衝液またはC12-SZ33の存在下でよく分散することを示した。
【0073】
本明細書に引用される出版物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に示されるのと同程度に、参照により組み込まれる。
【0074】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲における)用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象の使用は、本明細書で特に明記しない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む」、「有する」、「含む」、「含有する」という用語は、特に断りのない限り、非限定的用語(つまり、「含むが、これに限定されない」を意味する)と解釈される。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で特に明記しない限り、範囲内に入る各個別の値を個別に参照する略記法として機能することを単に意図しており、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれている。本明細書で説明される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言葉(例えば「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、特に請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中の言語は、特許請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0075】
本発明を実施するために発明者に知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の説明を読めば当業者に明らかになる可能性がある。本発明者は、当業者がそのような変形形態を適切に使用することを期待し、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法で許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正および等価物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書で特に明記しない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0076】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6D】
図7
図8
図9
図10A-10C】
【配列表】
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