(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】支援システム、支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20230217BHJP
【FI】
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2019568556
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028721
(87)【国際公開番号】W WO2019150608
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018016294
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
(72)【発明者】
【氏名】木下 康
(72)【発明者】
【氏名】井坂 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 隆太
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515574(JP,A)
【文献】特開2004-287502(JP,A)
【文献】特開2008-250502(JP,A)
【文献】特開2016-170686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援システムであって、
予定している手術の疾患情報、病変部情報、
手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する情報取得部と、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価部と、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアとして算出する医師評価部と、
前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する提案部と、を有する支援システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記予定している手術の患者の年齢を取得し、
前記病変部評価部は、前記類似手術の難度および前記年齢に基づいて、前記病変部スコアを算出する、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記過去の手術情報は、手術時間を含み、
前記医師評価部は、
前記予定されている手術と少なくとも前記疾患情報が一致する前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の同一疾患手術のうち、前記複数の医師のうちの一の医師が行った手術の平均手術時間と、の比較結果に基づいて、前記一の医師の前記医師スコアを算出する、請求項1または2に記載
の支援システム。
【請求項4】
複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援方法であって、
コンピュータが、
予定している手術の疾患情報、病変部情報、
手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する情報取得ステップと、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価ステップと、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する医師評価ステップと、
前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する提案ステップと、を
実行する支援方法。
【請求項5】
複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援プログラムであって、
コンピュータに、
予定している手術の疾患情報、病変部情報、
手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する手順と、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出す
る手順と、
前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する手順と、
前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する手順と、を実行
させる支援プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の支援プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術担当医の選択を支援する支援システム、支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療に関連する業務を自動的に行うシステムの開発が進められている。例えば下記特許文献1には、同日に複数の手術を行う際に、手術時間が重ならないように複数の手術の手術時間を決定するシステムが記載されている。このようなシステムによれば、手術に関連する業務を効率化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているシステムは、手術時間を決定する業務を支援するものの、例えば、複数の医師の中から適切な手術担当医を選択する業務等は支援しない。例えば、難度の比較的高い手術を熟練度の比較的低い医師が担当する場合、手術時間が長期化したり、手術成功率が低下したりする可能性がある。また、難度の比較的低い手術を熟練度の比較的高い医師が担当する場合、熟練度の比較的高い医師が難度の比較的高い手術を行う時間が奪われる可能性がある。また、熟練度の比較的高い医師であっても、手術の際に体調が悪い場合、本来の力を発揮できない可能性がある。そのため、複数の医師の中から、手術予定日の医師の体調および手術の難度に応じて、適切な手術担当医を効率的に選択したいという要望がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、手術予定日の医師の体調および手術の難度に応じて、複数の医師の中から適切な手術担当医を効率的に選択可能な支援システム、支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る支援システムは、複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援システムであって、予定している手術の疾患情報、病変部情報、手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する情報取得部と、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価部と、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアとして算出する医師評価部と、前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する提案部と、を有する。
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る支援方法は、複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援方法であって、コンピュータが、予定している手術の疾患情報、病変部情報、手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する情報取得ステップと、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価ステップと、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する医師評価ステップと、前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する提案ステップと、を実行する。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る支援プログラムは、複数の医師の中から手術担当医を選択するのを支援する支援プログラムであって、コンピュータに、予定している手術の疾患情報、病変部情報、手術時間を含む前記予定されている手術と前記疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報および手術予定日を取得する手順と、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、手術時間を含む前記予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、前記過去の同一疾患手術の平均手術時間と、前記過去の類似手術の平均手術時間と、を比較して前記類似手術の難度を評価し、前記類似手術の難度の評価結果に基づいて、前記予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する手順と、前記過去の同一疾患手術の手術情報から、前記過去の類似手術の手術情報を取得すると共に、前記複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、前記過去の類似手術の平均手術時間と、前記各医師の前記過去の類似手術の平均手術時間とを比較して前記各医師の前記過去の類似手術の熟練度を評価し、前記熟練度に前記勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、前記各医師の前記手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する手順と、前記医師スコアが前記病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる前記医師を、前記手術担当医として提案する手順と、を実行させる。
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る記録媒体は、上記支援プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な、記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、過去の類似手術の手術情報を用いて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する。また、本発明は、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、手術の予定日の医師の力量を予想した医師スコアを算出する。そして、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内の医師が、手術担当医として提案される。すなわち、病変部スコア(手術の難度)に対して医師スコア(手術予定日の力量)が一定の範囲に収まる医師が手術担当医として提案される。そのため、本発明によれば、手術予定日の医師の体調および手術の難度に応じて、複数の医師の中から適切な医師を効率的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る支援システムの概要を示す図である。
【
図2A】本実施形態に係る支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2B】本実施形態に係る支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3A】本実施形態に係る支援システムの過去の手術情報を示す図である。
【
図3B】本実施形態に係る支援システムの勤務スケジュールを示す図である。
【
図4A】本実施形態に係る支援システムの過去の手術情報の分類の説明に供する図である。
【
図4B】本実施形態に係る支援システムの過去の手術情報の分類の説明に供する図である。
【
図5】本実施形態に係る支援方法を示すフローチャートである。
【
図6A】
図5の病変部評価ステップを示すサブルーチンである。
【
図6B】
図5の医師評価ステップを示すサブルーチンである。
【
図6C】
図5の提案ステップを示すサブルーチンである。
【
図7A】
図5の情報取得ステップで、院内端末のディスプレイに表示される内容を示す図である。
【
図7B】
図5の提案ステップで、院内端末のディスプレイに表示される内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態に係る支援システム100の全体構成の説明に供する図である。
図2Aおよび
図2Bは、支援システム100の各部の説明に供する図である。
図3A~
図3C、
図4Aおよび
図4Bは、支援システム100が扱う情報の説明に供する図である。
【0014】
支援システム100は、
図1に示すように、病院内の複数の医師(院内医師)の中から、手術予定日の医師の体調および予定している手術の難度に応じて、適切な医師を手術担当医として提案するシステムである。
【0015】
支援システム100は、複数の院内端末200に院内ネットワークNWを介して接続しており、院内端末200との間でデータの送受信を行うサーバとして構成している。支援システム100の使用者は、一の院内端末200(操作端末)を操作して、支援システム100に手術担当医の提案を要求することができる。以下、支援システム100について詳述する。
【0016】
まず、支援システム100のハードウェアの構成について説明する。
【0017】
支援システム100は、
図2Aに示すように、CPU(Central Processing Unit)110、記憶部120、入出力I/F130、通信部140、および読み取り部150を備えている。CPU110、記憶部120、入出力I/F130、通信部140、および読み取り部150は、バス160に接続されており、バス160を介して相互にデータ等をやり取りする。以下、各部について説明する。
【0018】
CPU110は、記憶部120に記憶されている各種プログラムに従って、各部の制御や各種の演算処理などを実行する。
【0019】
記憶部120は、各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Randam Access Memory)、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等によって構成している。
【0020】
入出力I/F130は、特に限定されないが、例えば、キーボード、マウス等の入力装置およびディスプレイ、プリンタ等の出力装置を接続するためのインターフェースである。
【0021】
通信部140は、複数の院内端末200等と通信するためのインターフェースである。
【0022】
読み取り部150は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体MD(
図1参照)に記録されたデータを読み取る。コンピュータ読み取り可能な記録媒体MDは、特に限定されないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク、USBメモリ、SDメモリーカード等によって構成できる。読み取り部150は、特に限定されないが、例えば、CD-ROMドライブ、DVD-ROMドライブ等によって構成できる。
【0023】
次に、支援システム100の主要な機能について説明する。
【0024】
記憶部120は、病院内の複数の医師の中から、手術予定日の医師の体調および予定している手術の難度に応じて、適切な医師を手術担当医として提案する支援プログラムを記憶する。支援プログラムは、本実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記録媒体MDによって提供される。
【0025】
記憶部120は、院内医師が過去に行った手術に関する過去の手術情報D1、院内医師の勤務スケジュールD2等を記憶する。
【0026】
過去の手術情報D1は、例えば、
図3Aに示すように、手術番号(図では「No」と記載)、患者の年齢、疾患情報、病変部情報、手術方法、アクセス部位、手術時間、退院日数、担当医等の情報を含むことができる。これらの情報は、手術ごとに紐付けられた状態で記憶部120に記憶されている。疾患情報は、例えば、疾患名および疾患部位を含むことができる。病変部情報は、病変部の寸法および状態(例えば、血管が狭窄している場合は、狭窄部の長さが寸法に相当し、狭窄部の狭窄の程度が状態に相当する)を把握できるものである限り特に限定されないが、例えば、X線、CT、MRI等の方法によって撮影された病変部画像によって構成できる。手術方法は、
図3Aでは、説明を簡単にするために、カテーテルによって行われた手術(図では「カテーテル」と記載)と、カテーテル以外の方法で行われた手術(図では「その他」と記載)の2種類に分類しているが、手術方法の分類方法は特に限定されない。また、手術方法がカテーテルである場合は、右腕の橈骨動脈(図では「右radial」と記載)や左腕の橈骨動脈(図では「左radial」と記載)等のアクセス部位(穿刺部位)も手術情報に含むことができる。退院日数は、手術日から退院日までの日数である。
【0027】
勤務スケジュールD2は、例えば、
図3Bに示すように、日にちごとの院内医師の勤務状況(外出、休暇、勤務等)を示すスケジュール表によって構成している。
【0028】
CPU110は、
図2Bに示すように、記憶部120に記憶されている支援プログラムを実行することによって、情報取得部111、病変部評価部112、医師評価部113、および提案部114として機能する。以下、各部について説明する。
【0029】
まず、情報取得部111について説明する。
【0030】
情報取得部111は、
図1に示すように、使用者が操作している院内端末200から、予定されている手術に関する手術予定情報D3を取得する。手術予定情報D3は、例えば、疾患情報、病変部情報、手術予定患者の年齢、手術予定日等を含むことができる。疾患情報は、過去の手術情報と同様に、疾患名および疾患部位を含むことができる。病変部情報は、過去の手術情報と同様に、病変部の寸法および状態を把握できるものである限り特に限定されないが、例えば、X線、CT、MRI等の方法によって撮影された病変部画像によって構成できる。手術予定患者の年齢は、手術予定日における患者の年齢である。手術予定日は、一日に限定されず、複数の候補日がある場合等は複数の日でもよい。
【0031】
また、情報取得部111は、
図4Aに示すように、記憶部120に記憶されている過去の手術情報D1から、予定されている手術と疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報D10(以下、単に「同一疾患手術D10」と記載)を取得する。取得された同一疾患手術D10は、後述する病変部評価部112および医師評価部113による処理に使用される。
【0032】
次に、病変部評価部112について説明する。
【0033】
病変部評価部112は、
図2Bに示すように、手術方法を分析する手術方法分析部112a、および、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部スコア算出部112bとして機能する。
【0034】
手術方法分析部112aは、情報取得部111が取得した同一疾患手術D10を、手術方法ごとに分類し、同一疾患手術D10の件数に対する、各手術方法による同一疾患手術の件数の比率を算出する。具体的には、例えば、
図4Aに示すように、手術方法分析部112aは、同一疾患手術D10を、手術方法がカテーテルである同一疾患手術D11(以下、単に「カテーテルによる同一疾患手術D11」と記載)と、手術方法がその他である同一疾患手術D12(以下、単に「その他による同一疾患手術D12」と記載)と、に分類する。そして、手術方法分析部112aは、同一疾患手術D10の件数に対する、カテーテルによる同一疾患手術D11の件数の比率と、同一疾患手術D10の件数に対する、その他による同一疾患手術D12の件数の比率と、を算出する。そのため、後述する提案部114は、使用者に、同一疾患手術D10における各手術方法の比率を提示し、使用者は、提示された情報を、手術方法の選択の参考にすることができる。
【0035】
また、手術方法分析部112aは、カテーテルによる同一疾患手術D11を、アクセス部位ごとに分類し、アクセス部位ごとの平均退院日数を算出してもよい。平均退院日数が短いほど、患者に負担の低いアクセス部位となる。そのため、後述する提案部114は、使用者に、アクセス部位を平均退院日数が短い順に提示し、使用者は、カテーテルによって手術する場合に、提示された情報をアクセス部位の選択の参考にすることができる。
【0036】
病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとの同一疾患手術の手術情報の中から、予定している手術と病変部情報が類似する類似手術の手術情報を抽出する。そして、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとに、同一疾患手術の平均手術時間と、類似手術の平均手術時間と、を比較する。手術時間が長いほど、手術の難度が高いと考えられる。そのため、平均時間の比較によって、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとに、類似手術の難度を評価することができる。すなわち、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとに、同一疾患手術において、類似手術がどの程度難しいかを評価することができる。
【0037】
手術方法がカテーテルである場合を例にして説明すると、病変部スコア算出部112bは、カテーテルによる同一疾患手術D11の中から、病変部情報が類似する類似手術の手術情報D111(以下、単に「カテーテルによる類似手術D111」と称する)を取得する。そして、病変部スコア算出部112bは、カテーテルによる同一疾患手術D11の平均手術時間と、カテーテルによる類似手術D111の平均手術時間と、を比較する。これによって、病変部スコア算出部112bは、カテーテルによる同一疾患手術D11において、類似手術D111がどの程度難しいかを評価することができる。例えば、カテーテルによる類似手術の難度は、下記の式1に示すように、カテーテルによる同一疾患手術D11の平均手術時間に対する、カテーテルによる類似手術D111の平均手術時間の比として、定義することができる。
【0038】
【0039】
なお、本実施形態では、病変部情報が類似するとは、病変部の寸法および状態を比較した場合に、その一致率が所定の範囲内に収まることを言う。例えば、血管が狭窄している場合、病変部情報が類似するとは、狭窄部の長さの一致率が所定の範囲内に収まり、狭窄部の狭窄の程度の一致率が所定の範囲内に収まることを言う。なお、病変部の寸法および状態は、病変部画像を画像解析することによって取得することができる。
【0040】
病変部スコア算出部112bは、各手術方法の類似手術の難度に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する。なお、例えば、手術予定患者が幼児や高齢者の場合、予定している手術の難度が高くなることが予想される。そのため、病変部スコア算出部112bは、本実施形態では、各手術方法の類似手術の難度および手術予定患者の年齢に基づいて、各手術方法による予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する。具体的には、例えば、病変部スコア算出部112bは、各手術方法による類似手術の難度に、手術予定患者の年齢に基づく重みづけ係数を掛けた値を、病変部スコアとして算出する。例えば、手術方法がカテーテルである場合の病変部スコアは、下記式2に示すように、カテーテルによる類似手術の難度に年齢に基づく重みづけ係数を掛けた値となる。
【0041】
【0042】
なお、年齢に基づく重みづけ係数は、年齢による手術の難度影響を病変スコアに反映可能であれば特に限定されない。年齢に基づく重みづけ係数は、例えば、手術予定患者の年齢が、各手術方法の同一疾患手術の患者の平均年齢を基準とした上限値および下限値の範囲外である場合は、1より大きい値に設定できる。なお、上記の式2では、病変部スコアが1より大きい場合、予定している手術の難度は比較的高く、病変部スコアが1より小さい場合、予定している手術の難度は比較的低く、病変部スコアが約1である場合は、予定している手術の難度は標準的である。
【0043】
次に、医師評価部113について説明する。
【0044】
医師評価部113は、
図2Bに示すように、同一疾患手術の手術経験があり、手術予定日のスケジュールに空きのある医師を抽出し、抽出した医師ごとに、同一疾患手術の手術方法を分析する医師分析部113a、および、手術予定日における各医師の力量を予想した医師スコアを算出する医師スコア算出部113bとして機能する。
【0045】
医師分析部113aは、勤務スケジュールD2を取得し、同一疾患手術D10の手術経験があり、かつ、手術予定日に空きのある医師を抽出する。
【0046】
医師分析部113aは、同一疾患手術D10から手術予定日に空きのある医師の同一疾患手術を抽出し、手術方法ごとに分類する。そして、医師分析部113aは、手術予定日に空きのある医師ごとに、同一疾患手術の件数に対する、各手術方法による同一疾患手術の件数の比率を算出する。具体的には、例えば、
図4Bに示すように、医師分析部113aは、同一疾患手術D10から、手術予定日に空きのある医師Aの同一疾患手術D13を取得する。そして、医師分析部113aは、医師Aの同一疾患手術D13を手術方法がカテーテルである同一疾患手術(以下、「医師Aのカテーテルによる同一疾患手術D131」と称する)と、手術方法がその他である同一疾患手術(以下、「医師Aのその他による同一疾患手術D132」)と、に分類する。そして、医師分析部113aは、医師Aの同一疾患手術D13の件数に対する、医師Aのカテーテルによる同一疾患手術D131の件数の比率と、医師Aの同一疾患手術D13の件数に対する、医師Aのその他による同一疾患手術D132の件数の比率と、を算出する。
【0047】
医師スコア算出部113bは、情報取得部111が取得した同一疾患手術D10から、予定している手術と病変部情報が類似する類似手術を取得する。また、医師スコア算出部113bは、取得した類似手術を手術方法ごとに分類する。そして、医師スコア算出部113bは、手術方法ごとに、類似手術の平均手術時間と、各医師の類似手術の平均時間とを比較する。手術時間が短いほど、その手術に熟練していると考えられる。そのため、平均時間の比較によって、医師スコア算出部113bは、手術方法ごとに、各医師の類似手術の熟練度を評価することができる。具体的には、例えば、医師スコア算出部113bは、
図4Aに示すように、(全ての医師の)カテーテルによる類似手術D111の平均手術時間と、医師Aのカテーテルによる類似手術D111aの平均手術時間と、を比較する。これによって、医師スコア算出部113bは、医師Aのカテーテルによる類似手術D111aの熟練度を評価することができる。例えば、医師スコア算出部113bは、医師Aのカテーテルによる類似手術の熟練度を、下記の式3に示すように、カテーテルによる類似手術D111の平均手術時間に対する、医師Aのカテーテルによる類似手術D111aの平均手術時間の比として、定義することができる。
【0048】
【0049】
また、医師の類似手術の熟練度が高くても、手術日に医師の体調が悪い場合、本来の力を発揮できない可能性がある。そのため、医師スコア算出部113bは、各医師の類似手術の熟練度に加え、手術予定日における医師の体調を考慮して、手術予定日の医師の力量を予想した医師スコアを算出する。本実施形態では、医師スコア算出部113bは、手術方法ごとの各医師の類似手術の熟練度に、勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛けた値を、手術予定日における各医師の力量を予想した医師スコアとして算出する。具体的には、手術方法がカテーテルである場合の医師Aの医師スコアは、下記式4に示すように、勤務スケジュールに基づく重みづけ係数と、医師Aのカテーテルによる類似手術の熟練度と、を掛け合わせた値として、定義することができる。
【0050】
【0051】
勤務スケジュールに基づく重みづけ係数は、体調による医師の力量への影響を医師スコアに反映可能であれば特に限定されない。勤務スケジュールに基づく重みづけ係数は、例えば、手術予定日直前に勤務が所定日以上連続している場合、手術予定日には疲れにより体調が悪化し、力量が低下することが予想されるため、1より大きい値となるように設定できる。なお、上記の式4では、医師スコアが1より大きい場合、その医師の熟練度は比較的低く、医師スコアが1より小さい場合、その医師の熟練度は比較的高く、医師スコアが約1である場合は、その医師の熟練度は標準的である。
【0052】
なお、本実施形態では、医師スコア算出部113bは、医師Aが行い、かつ、予定されている手術と病変部情報が類似する過去の類似手術D111aを用いて、医師Aの熟練度を評価した。ただし、医師スコア算出部113bが医師Aの熟練度の評価に用いる過去の手術情報は、予定している手術と少なくとも疾患情報が一致するものであれば、特に限定されない。例えば、医師スコア算出部113bは、(全ての医師の)カテーテルによる同一疾患手術の平均手術時間と、医師Aによるカテーテルによる同一疾患手術の平均手術時間と、の比較結果に基づいて、医師Aの同一疾患手術の熟練度を評価してもよい。そして、医師Aの同一疾患手術の熟練度および勤務スケジュールに基づいて、医師Aの医師スコアを算出してもよい。また、例えば、医師スコア算出部113bは、(全ての医師の)カテーテルによる同一疾患手術の平均手術時間と、医師Aによるカテーテルによる類似手術の平均手術時間と、の比較結果に基づいて、医師Aの類似手術の熟練度を評価してもよい。そして、医師Aの類似手術の熟練度および勤務スケジュールに基づいて、医師Aの医師スコアを算出してもよい。ただし、同一疾患手術の手術件数が多い場合、医師スコア算出部113bは、同一疾患手術の各病変部に対する医師の熟練度を正確に評価できるため、上記式3のように、医師Aのカテーテルによる類似手術の平均手術時間とカテーテルによる類似手段の平均手術時間との比を用いて、医師Aの熟練度を評価することが好ましい。
【0053】
また、例えば、医師スコアを算出する際に用いる過去の手術は、所定期間内に行われた手術に限定することができる。例えば、医師スコアを算出する際に用いる過去の手術を、最近のものに限定すれば、最近の医師の熟練度を評価することができる。
【0054】
次に、提案部114について説明する。
【0055】
提案部114は、手術方法ごとに、医師スコアが、病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる医師を、手術担当医として抽出する。例えば、上記式2および式4を用いた場合、上限値および下限値は、病変部スコアが比較的高い(難度が比較的高い)ときは、医師スコアが比較的低い(力量が比較的高い)医師が手術担当医となり、病変部スコアが中程度(難度が標準程度)のときは、医師スコアが中程度(力量が標準程度の)医師が手術担当医となり、病変部スコアが比較的低い(難度が比較的低い)ときは、医師スコアが比較的高い(力量が比較的低い)医師が抽出されるような値に設定できる。具体的には、例えば、上限値および下限値は、病変部スコアが1.5の(難度が比較的高い)場合、医師スコアが0.2~0.5の(力量が比較的高い)医師が抽出され、病変部スコアが1.0の(難度が標準程度)場合、医師スコアが0.8~1.0の(力量が標準程度)医師が抽出され、病変部スコアが0.5の(難度が比較的低い)場合、医師スコアが1.2~1.5の(力量が比較的低い)医師が抽出されるような値に設定することができる。
【0056】
提案部114は、同一疾患手術D10における各手術方法の比率、手術方法ごとの手術担当医として抽出された医師のリストを、使用者に提示する。また、提案部114は、手術方法がカテーテルの場合、平均退院日数の短い順にアクセス部位を提示する。支援システム100の使用者は、提示された医師のリストから手術担当医を選択する。提案部114は、選択された医師に、手術担当医となった旨をメール等で通知するとともに、選択された医師の勤務スケジュールに、手術予定を登録する。
【0057】
このように、支援システム100は、手術予定日の医師の体調および手術の難度を自動的に予想し、手術の方法ごとに、複数の医師の中から適切な医師を提案することができる。そのため、使用者は、効率的に適切な医師を選択することができる。これにより、医療従事者の業務負担を軽減することができる。また、難度の高い手術を力量の高い医師が担当するため、手術の成功率を向上させることができる。また、熟練度の低い医師は、難度の低い手術を経験することで、経験を積み熟練度を向上させることができる。
【0058】
なお、例えば、同一疾患手術D10においてカテーテルによる手術の比率が高い場合、提案部114は、手術方法がカテーテルである場合に手術担当医として抽出された医師のリストを提示し、その他の手術方法については、単にその他の手術方法の比率が高い医師を所定人数提示するだけでもよい。
【0059】
【0060】
支援方法は、
図5を参照して概説すると、情報取得ステップS1と、病変部評価ステップS2と、医師評価ステップS3と、提案ステップS4と、医師選択ステップS5と、を有する。以下、各ステップについて説明する。
【0061】
まず、情報取得ステップS1について説明する。
【0062】
まず、情報取得部111は、
図1に示すように、支援システム100の使用者が操作している院内端末200から、予定されている手術に関する手術予定情報D3を取得する。具体的には、情報取得部111は、
図7Aに示すように、使用者が操作している院内端末200のディスプレイ210を介して、手術予定情報を入力するように指示する。支援システム100の使用者は、院内端末200を操作して、手術予定日、患者名、患者の年齢、疾患名、疾患部位、病変部情報等の情報を入力する。
【0063】
次に、情報取得部111は、
図4Aに示すように、記憶部120に記憶されている過去の手術情報D1から、同一疾患手術D10を取得する。
【0064】
次に、病変部評価ステップS2について説明する。
【0065】
まず、手術方法分析部112aは、
図6Aに示すように、情報取得部111が取得した同一疾患手術D10を、手術方法ごとに分類し、同一疾患手術D10の件数に対する、各手術方法による手術の件数の比率を算出する(ステップS21)。この際、手術方法分析部112aは、カテーテルによる手術方法がある場合、カテーテルによる同一疾患手術D11を、アクセス部位ごとに分類し、アクセス部位ごとの平均退院日数を算出してもよい。
【0066】
次に、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとに、類似手術の難度を評価する(ステップS22)。具体的には、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとの同一疾患手術の中から、類似手術を取得する。そして、病変部スコア算出部112bは、例えば、上記式1に示すように、手術方法ごとに、同一疾患手術の平均手術時間に対する、類似手術の平均手術時間の比を類似手術の難度として、算出する。
【0067】
次に、病変部スコア算出部112bは、手術予定患者の年齢に基づく重みづけ係数を算出する(ステップS23)。
【0068】
次に、病変部スコア算出部112bは、手術方法ごとの類似手術の難度および手術予定患者の年齢に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアとして算出する(ステップS24)。具体的には、例えば、上記式2に示すように、手術方法ごとの類似手術の難度に、手術予定患者の年齢に基づく重みづけ係数を掛けた値を、予定している手術の難度を予想した病変部スコアとして算出する(ステップS24)。
【0069】
次に、医師評価ステップS3について説明する。
【0070】
まず、医師分析部113aは、
図6Bに示すように、同一疾患手術D10の手術経験があり、かつ、手術予定日のスケジュールに空きのある院内医師を抽出する(ステップS31)。
【0071】
次に、医師分析部113aは、ステップS31で抽出された医師ごとに、同一疾患手術を手術方法ごとに分類し、同一疾患手術の件数に対する、各手術方法による同一疾患手術の件数の比率を、算出する(ステップS32)。
【0072】
次に、医師スコア算出部113bは、ステップS31で抽出された医師ごとに、各手術方法による類似手術の熟練度を評価する(ステップS33)。具体的には、医師スコア算出部113bは、情報取得部111が取得した同一疾患手術D10から、予定している手術と病変部情報が類似する類似手術を取得する。また、医師スコア算出部113bは、取得した類似手術を手術方法ごとに分類する。そして、医師スコア算出部113bは、例えば、上記式3に示すように、手術方法ごとに、類似手術の平均手術時間に対する、各医師の類似手術の平均時間の比を、各医師の類似手術の熟練度として算出する。
【0073】
次に、医師スコア算出部113bは、各医師の勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を算出する(ステップS34)。
【0074】
次に、医師スコア算出部113bは、手術方法ごとの各医師の類似手術の熟練度および勤務スケジュールに基づいて、医師スコアを算出する(ステップS35)。具体的には、例えば、医師スコア算出部113bは、上記式4に示すように、各医師の類似手術の熟練度に、勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を掛け合わせた値を、手術予定日における医師Aの力量を予想した医師スコアとして算出する。
【0075】
次に、提案ステップS4について説明する。
【0076】
まず、提案部114は、
図6Cに示すように、手術方法ごとに、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる医師を、手術担当医として抽出する(ステップS41)。
【0077】
次に、提案部114は、同一疾患手術D10における各手術方法の比率、各手術方法において手術担当医として抽出された医師のリストを、支援システム100の使用者に提示する(ステップS42)。この際、提案部114は、手術方法がカテーテルの場合、平均退院日数の短い順にアクセス部位を提示してもよい。具体的には、例えば、提案部114は、
図7Bに示すように、使用者の操作している院内端末200のディスプレイ210に、同一疾患手術のカテーテル手術の比率、手術方法ごとに手術担当医として抽出された医師のリスト、手術方法がカテーテルの場合は平均退院日数の短い順にアクセス部位を表示する。
【0078】
次に、医師選択ステップS5について説明する。
【0079】
まず、支援システム100の使用者は、ステップS42で提示された医師のリストから手術担当医を選択する。
【0080】
次に、提案部114は、選択された医師に、手術担当医となった旨をメール等で通知するとともに、選択された医師の勤務スケジュールに、手術予定を登録する。
【0081】
なお、実際に手術が行われた後、記憶部120は行われた手術の手術情報を過去の手術情報D1に追加する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る支援システム100は、手術担当医の選択を支援する支援システムである。支援システム100は、予定している手術の疾患情報、病変部情報、および手術予定日を取得する情報取得部111と、予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、過去の類似手術の手術情報を用いて類似手術の難度を評価し、類似手術の難度の評価結果に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価部112と、複数の医師のそれぞれが過去に行い、かつ、予定している手術と少なくとも疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報、および複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、複数の医師のそれぞれの手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する医師評価部113と、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる医師を、手術担当医として提案する提案部114と、を有する。
【0083】
上記支援システム100によれば、過去の類似手術の手術情報を用いて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアが算出される。また、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、手術の予定日の医師の力量を予想した医師スコアが算出される。そして、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内の医師が、手術担当医として提案される。すなわち、病変部スコア(手術の難度)に対して医師スコア(手術予定日の力量)が一定の範囲に収まる医師が手術担当医として提案される。そのため、支援システム100によれば、手術予定日の医師の体調および手術の難度に応じて、複数の医師の中から適切な医師を提案することができる。そのため、使用者は、効率的に適切な医師を選択することができる。
【0084】
また、過去の手術情報は、手術時間を含み、病変部評価部112は、予定されている手術と疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の平均手術時間と、予定されている手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の平均手術時間と、を比較することによって、類似手術の難度を評価する。そのため、病変部評価部112は、同一疾患手術の中でも、予定している手術と病変部情報が類似する類似手術がどの程度難しいかを評価し、評価結果に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出することができる。
【0085】
また、情報取得部111は、手術予定患者の年齢を取得し、病変部評価部112は、類似手術の難度および手術予定患者の年齢に基づいて、病変部スコアを算出する。そのため、手術予定患者の年齢を考慮して、予定している手術の難度を予想することができる。
【0086】
また、過去の手術情報は、手術時間を含み、医師評価部113は、予定されている手術と少なくとも疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の平均手術時間と、過去の同一疾患手術のうち、複数の医師のうちの一の医師が行った手術の平均手術時間と、の比較結果に基づいて、一の医師の医師スコアを算出する。そのため、各医師の少なくとも同一疾患手術の力量を評価することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る支援方法は、手術担当医の選択を支援する支援方法である。支援方法は、予定している手術の疾患情報、病変部情報、および手術予定日を取得する情報取得ステップS1と、予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、過去の類似手術の手術情報を用いて類似手術の難度を評価し、類似手術の難度の評価結果に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価ステップS2と、複数の医師のそれぞれが過去に行い、かつ、予定している手術と少なくとも疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報、および複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、複数の医師のそれぞれの手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する医師評価ステップS3と、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる医師を、手術担当医として提案する提案ステップS4と、を有する。
【0088】
また、本実施形態に係る支援プログラムは、手術担当医の選択を支援する支援プログラムである。支援プログラムは、予定している手術の疾患情報、病変部情報、および手術予定日を取得する手順と、予定している手術と病変部情報が類似する過去の類似手術の手術情報を取得し、過去の類似手術の手術情報を用いて類似手術の難度を評価し、類似手術の難度の評価結果に基づいて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアを算出する病変部評価手順と、複数の医師のそれぞれが過去に行い、かつ、予定している手術と少なくとも疾患情報が一致する過去の同一疾患手術の手術情報、および複数の医師のそれぞれの勤務スケジュールを取得し、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、複数の医師のそれぞれの手術予定日における力量を予想した医師スコアを算出する手順と、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内となる医師を、手術担当医として提案する手順と、を実行する。
【0089】
また、本実施形態に係る記録媒体MDは、上記支援プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0090】
上記支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体MDによれば、過去の類似手術の手術情報を用いて、予定している手術の難度を予想した病変部スコアが算出される。また、過去の同一疾患手術の手術情報および勤務スケジュールを用いて、手術の予定日の医師の力量を予想した医師スコアが算出される。そして、医師スコアが病変部スコアを基準とした上限値および下限値の範囲内の医師が、手術担当医として提案される。すなわち、病変部スコア(手術の難度)に対して医師スコア(手術予定日の力量)が一定の範囲に収まる医師が手術担当医として提案される。そのため、上記支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体MDは、手術予定日の医師の体調および手術の難度に応じて、複数の医師の中から適切な医師を提案することができる。そのため、使用者は、効率的に適切な医師を選択することができる。
【0091】
以上、実施形態を通じて本発明に係る支援システム、支援方法、支援プログラム、および支援プログラムを記録した記録媒体を説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0092】
例えば、支援システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピュータのいずれによっても実現してもよい。また、支援プログラムは、インターネットなどのネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。
【0093】
また、本発明に係る支援システムは、上記実施形態に係る支援システムのように心臓血管疾患の手術担当を提案するものに限定されない。例えば、本発明に係る支援システムは、下肢動脈疾患の手術担当医や末梢血管疾患の手術担当医を提案するものであってもよい。
【0094】
また、過去の手術情報は、手術時の患者の血圧や心電図等の患者の容体に関する情報、手術時および手術後に生じたトラブルに関する情報等を含んでもよい。この場合、例えば、医師スコア算出部は、患者の容体に関する情報および/またはトラブルに関する情報等を考慮し、医師の熟練度を評価してもよい。
【0095】
また、手術予定情報は、患者の治療歴や患者が持つリスクファクターなどを含んでもよい。リスクファクターとは、手術予定の疾患と異なる他の疾患を発生させる可能性がある要因(例えば、高血圧、糖尿病等)である。情報取得部は、例えば、記憶部に記憶されている患者の電子カルテ等から患者の治療歴およびリスクファクターを取得できる。また、提案部は、支援システムの使用者が操作している操作端末のディスプレイに、手術担当医として抽出された医師のリストとともにリスクファクターを表示してもよい。これによって、支援システムの使用者は、リスクファクターを考慮して、より適切な手術担当医を選択することができる。
【0096】
また、勤務スケジュールは、日にちごとの医師の勤務状況(外出、休暇、勤務等)だけでなく、時間ごとの医師の仕事内容(カンファレンス、事務作業、手術、外来、宿直)を含むスケジュール表によって構成してもよい。この場合、医師スコア算出部は、例えば、手術予定日前に、所定日数連続で手術を行っている場合や前日に宿直していた場合に、勤務スケジュールに基づく重みづけ係数を1以上に設定してもよい。
【0097】
また、病変部スコアおよび医師スコアの算出方法は、上記の方法に特に限定されない。例えば、病変部スコアは、同一疾患手術の平均手術時間と、類似手術の平均手術時間との差に基づいて定めてもよい。例えば、医師スコアは、同一疾患手術または類似手術の平均手術時間と、各医師の同一疾患手術または類似手術の平均手術時間との差に基づいて定めてもよい。また、例えば、病変部スコアは、同一疾患手術の平均手術時間と、類似手術の平均手術時間との比または差に基づいて、0~100点の間の何れかの値をとなるように定めてもよい。また、例えば、医師スコアは、同一疾患手術または類似手術の平均手術時間と、各医師の同一疾患手術または類似手術の平均手術時間との比または差に基づいて、0~100点の間の何れかの値となるように定めてもよい。
【0098】
また、支援システムは、他の病院の端末や地域医療のサーバ等に、外部ネットワークを介して接続されていてもよい。この場合、記憶部は、他の病院の医師が行った過去の手術の手術情報を記憶し、病変部評価部および医師評価部は、他の病院の医師が行った過去の手術の手術情報を用いて、病変部スコアおよび医師スコアを算出してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、提案部は、平均退院日数の短い順にアクセスポイントを提示したが、件数の多い順にアクセスポイントを提示してもよい。
【0100】
本出願は、2018年2月1日に出願された日本国特許出願第2018-016294号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0101】
100 支援システム、
111 情報取得部、
112 病変部評価部、
113 医師評価部、
114 提案部、
200 院内端末、
D1 過去の手術の手術情報、
D2 勤務スケジュール、
D3 手術予定情報、
MD 記録媒体、
NW 院内ネットワーク。