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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】押出機中での接着剤組成物の製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20230217BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20230217BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230217BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20230217BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230217BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230217BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20230217BHJP
   B29C 48/41 20190101ALI20230217BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
C09J201/10
C09J11/06
C09J175/08
C09J11/08
C09J11/04
B29B7/48
B29C48/41
C08L101/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019572124
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FR2018051633
(87)【国際公開番号】W WO2019008258
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】1756297
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グリソ-ソル,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】クワインベェシュ,セバスチァン
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506737(JP,A)
【文献】特表2012-517505(JP,A)
【文献】特表2011-503323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の段階を順に有することを特徴とする少なくとも2本の回転スクリューを備えた押出機を用いて接着剤組成物を製造する方法:
(1)押出機に少なくとも1つの可塑剤を導入し、
(2)上記押出機中で上記可塑剤を脱気し、
(3)少なくとも一種のシリル化プレポリマーを導入し、押出機中で前記シリル化プレポリマーと可塑剤とを混合し
(4)得られた混合物を上記押出機から排出する。
【請求項2】
押出機が互いに噛み合った共回転二軸スクリュー押出機である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
押出機がスクリューの内径に対するスクリューの外径の比De/Diで定義される幾何形状が1.3~1.8、好ましくは1.55~1.8である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スクリューの直径Dの倍数で定義される押出機の長さが28D~100D、好ましくは40D~80Dである請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
シリル化プレポリマーがポリエーテル主鎖、ポリエーテル-ポリウレタン主鎖、ポリエステル主鎖、ポリエステル-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリウレタン-ポリエステル主鎖、ポリオレフィン主鎖、ポリオレフィン-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリウレタン-ポリオレフィン主鎖、ポリアクリレート主鎖およびポリエーテル-ポリアクリレート主鎖から選択される主鎖と、2つの加水分解可能なアルコキシシラン末端基とを有し、好ましくはシリル化プレポリマーが加水分解可能な2つのアルコキシシラン末端基を有するポリエーテル型またはポリエーテル-ポリウレタン型のプレポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シリル化プレポリマーが下記の式(I)を有するプレポリマーである請求項1~5のいずれか一項に記載の方法:
(ここで、
は5~15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の芳香族または脂肪族の二価炭化水素基を表し、
は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
およびRは互いに同一または異なっており、各々が1~20個、好ましくは1~4個の炭素数を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR基またはR基を有する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、
nは式-[OR-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaとなるような整数であり、
はゼロまたはゼロでない整数であり、
nとmは式(I)のポリマーの平均分子量が600Da~60kDaの間となるような数であり、
pは0,1または2の整数であり、
好ましくは、23℃で測定した粘度は25~100Pa・sの範囲にある)
【請求項7】
シリル化プレポリマーが下記の式(VI)を有するポリエーテルである請求項1~5のいずれか一項に記載の方法:
(ここで、
は5~15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の芳香族または脂肪族の二価の炭化水素基を表し、
は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
およびRは互いに同一でも異なっていてもよく、その各々は1~4個の炭素数を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のRまたはRが存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、
は水素原子、フェニル基、2-スクシネートまたは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表し、
nは式-[OR-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaの間となるような整数であり、
はゼロでない整数であり、
nおよびmは式(VI)のポリマーの平均分子量が600Da~60kDaの間となるような数であり、
pは0,1または2の整数であり、
好ましくは、23℃で測定した粘度は25~100Pa・sの範囲にある)
【請求項8】
上記可塑剤が粘着付与樹脂であるか、粘着付与樹脂を含む請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記粘着付与樹脂が200Da~10kDaの間にある平均分子量を有し、好ましくは下記(i)~(vii)の中から選択される請求項8に記載の方法:
(i)フリーデル・クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールとの重合で得られる樹脂、
(ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法で得られる樹脂、
(iii)天然ロジン、変性ロジン、その水素化、二量化、ポリマー化または一価または多価のアルコールでエステル化した誘導体、
(iv)石油留分に由来する約5、9または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素混合物の水素化、重合または共重合で得られる樹脂、
(v)テルペン樹脂、
(vi)天然テルペンをベースにした共重合体、
(vii)100℃での粘度が100Pa・s以下であるアクリル系樹脂。
【請求項10】
シリル化プレポリマーの量が接着剤組成物の総重量に対し20~85重量%、好ましくは30~75重量%で、可塑剤の量が15~80重量%、好ましくは25~70重量である請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記接着剤組成物が架橋触媒を含まない請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記接着剤組成物が架橋触媒を含み、この触媒とそれと可塑剤およびシリル化プレポリマーとの混合物との導入段階を含み、好ましくは、この導入を押出機で行い、さらにより好ましくはシリル化プレポリマーの導入段階と混合物の排出段階との間に行う請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
架橋触媒の量が接着剤組成物の総重量に対して0.01~8重量%、好ましくは0.1~2重量%である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
押出機中の可塑剤の滞留時間が0.1~3分、好ましくは0.5~2.5分、さらにより好ましくは1~2分である請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
脱気後の可塑剤の含水量が500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下であり、および/または、脱気前の可塑剤の含水量が500ppm以上、好ましく1000ppm以上、さらにより好ましくは2000ppm以上である請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酸化防止剤、水分捕捉剤、熱可塑性ポリマー、可塑剤、パラフィン系およびナフテン系オイル、ポリエチレンのホモポリマーワックス、ポリエチレンとビニルアセテートとの共重合体ワックス、顔料、染料および充填剤から選択される一つまたは複数の化合物を一つまたは複数の段階で押出機に導入する請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
可塑剤の脱気時の押出温度が、ISO規格4625に準拠して測定した可塑剤の環-球軟化温度より5℃~100℃高い請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1回または複数の追加の脱気段階を含み、好ましくはシリル化プレポリマーと可塑剤とを混合した後に少なくとも1回の追加の脱気段階を含む請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
可塑剤の導入段階から混合物の排出段階までの間押出機の温度が、可塑剤の脱気時に室温から、好ましくは、150℃~220℃の間、より好ましくは160℃~180℃の間、更により好ましくは165℃~175℃の間であり、更により好ましくは、約170℃である、最高温度Tmaxまで上昇し、その後に、混合物の排出段階時に室温とTmaxの間の、好ましくは、80℃~145℃の間、より好ましくは120℃~140℃の間であり、更により好ましくは、約130℃である、最終温度Tfまで低下する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
レポリマーと可塑剤とを混合する際の押出機の温度であり、好ましくは、130℃~170℃の間、より好ましくは140℃~160℃の間、更により好ましくは145℃~155℃の間であり、更により好ましくは、約150℃であるTmが、TfとTmaxの間である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化プレポリマーと、可塑剤、特に粘着付与剤樹脂とをべースにした接着剤組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感圧性接着剤(自己接着性接着剤ともよばれ、英語ではPressure Sensitive AdhesivesまたはPSA)は軽い圧力を短時間加えただけで基材に瞬間的に接着できる室温で直ちに接着性(多くの場合「粘着性、タック」とよばれる)を支持体に与える物質である。このPSAは情報(例えばバーコード、名称、価格等)を表示するため、および/または、装飾のために物品に添付される粘着ラベルの製造で広く使用されている。PSAはさらに様々な用途のための自己粘着テープを製造するのに使われている。例としては日常生活で広く使用されている透明粘着テープの他に、段ボール容器の形成や組立、建設物の塗装作業での表面保護、電送業界での電気ケーブルのメンテナンス、両面接着テープによるカーペット接着等を挙げることができる。
【0003】
PSAの利用分野の中には、に接着剤の接合部(従って、接着ラベルおよび/またはテープで被覆れた物品)が広範囲に変化する温度に露出された時でも基材に対する接着ラベルおよび/または接着テープの固定力が維持されるのが望ましい場合がある。そのような例としてはエンジンに近い位置にある自動車(またはその他の車両)の特定物品、収容作業時に加熱液体を受ける容器、物品(例えばタイヤ)に生産ラインの終わりに加熱状態で付けられるラベル付けの場合が挙げられる。さらに、例えば航空機、その他車両の客室インテリアの場合に要求される耐熱性に優れた部品の組立てに使われる自己接着性テープも挙げられる。
【0004】
これらの用途に使用されるPSAの多くは非常に高分子量のアクリル系ポリマーで、水性エマルションの形または溶剤ベースの形をしている。しかし、このタイプの組成物にはいくつかの制約がある。すなわち、これらの組成物の場合には水または溶媒の乾燥、蒸発工程を設ける必要があり、有機溶媒の場合には健康および安全に問題が生じ、また、その性質からPSAを支持体上に連続的に塗布する時の量である70g/m2以上の量でラベルおよび/またはテープ、特に接着ラベルおよび/または接着テープを製造する工程が複雑になる。
【0005】
別の方法は[特許文献1](国際公開第WO2012/090151号公報)に記載のような架橋性熱可塑性タイプの化合物を使用する方法である。
【0006】
[特許文献2](欧州特許第EP2235133号公報)および[特許文献3](欧州特許第EP2336208号公報)には熱と湿度で架橋し、架橋後に温度安定性に優れた接着強度を与えるPSA特性を有する架橋可能なホットメルト組成物が記載されている。このPSAは加水分解可能なアルコキシシランタイプの2つの末端基を有するポリエーテルまたはポリエーテルポリウレタンタイプのプレポリマーと、相溶性粘着付与樹脂と、架橋触媒とを混合して得られる。この接着剤組成物は不連続法(すなわち「バッチ」)で製造され、第一段階でアルコキシシラン末端基を有するプレポリマーと粘着付与樹脂とを空気を遮断した状態、好ましくは不活性雰囲気下で50~170℃の温度で混合し、第二段階で混合物を50~90℃の温度に冷却し、第三段階で、得られた混合物に50~90℃の温度で触媒を添加する。
【0007】
しかし、この製造方法にはいくつかの欠点がある。すなわち、この架橋性ホットメルト組成物PSAで使用される粘着付与樹脂には水が存在(一般に3000~5000ppm)するので、製品全体に対して局所的に早期架橋した望ましくない制御不能な質量を有する分子鎖から成る不連続、不均質な部分が生じる危険が大きい。この架橋は組成物の混合中に生じるか、容器に貯蔵している間に経時的に生じ、架橋性PSAの塗膜を形成するコーティングの前に組成物が高い周囲温度に曝された時に生じる。これは望ましいことではなく、物理的な変化、例えば高度に架橋した不均一な小さな粒子を生じさせ、接着剤の粘度が上昇するのでコーティング装置を調整する必要がある。これらの問題を回避するために、バッチ混合操作の開始時に予め真空下で130~180℃の温度で数時間加熱して脱水することが多い。また、高温度で作用する酸化防止剤を上記工程中に添加することも可能であるが、それによって粘着付与樹脂が分解し、最終PSA組成物中の揮発性有機化合物(VOC)の量が増加する。さらに、高温度にすることでシリル化ポリマーのポリエーテルブロックが分解する。しかも、真空脱水工程では樹脂中に存在する水を十分に除去することはできず、真空を160℃で一時間維持したとしても500~600ppmの残留水が残る。上記の方法で製造した粘着剤組成物は水が存在するため貯蔵安定性が失われ、VOCが存在するため最終用途(粘着ラベルおよび/またはテープ)の品質が悪くなる。バッチ法で作った加熱架橋型の接着剤組成物に固有の他の欠点は触媒の添加温度と媒体の粘度との間を最適にバランスさせなければならないという点にある。架橋反応の開始を避けるのに理想的な方法は触媒の導入を低い温度または70℃以下の温度で行うことであるが、この状態では媒体の粘度が過度に高くなり、媒体中に触媒を分散させることができなくなり、均質化を良くすることが極めて困難になる。そのため触媒活性がゼロになる温度で作業する必要があるが、この制約下での触媒の選択および量は大きく制限される。それに加えて、不活性雰囲気下での混合とその後の混合タンクからの排出には長い時間がかかり、数時間に到達することもあるため材料の熱安定性、特に架橋前の熱安定性が犠牲になる。
【0008】
[特許文献4](中国特許第CN102827568号公報)には、二軸押出機を用いてシリルポリマーをベースにした湿気で架橋するマスチック、可塑剤、安定剤、チキソトロピー剤および無機充填剤(炭酸カルシウム)の組成物を連続的に製造する方法が記載されている。
【0009】
[特許文献5](中国特許第CN103331891号公報)には、二軸スクリュー押出機を使用してスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)型のスチレンブロックコポリマーと、可塑化オイルと、粘着付与樹脂と、酸化防止剤とを含む非反応性HMPSA(ホットメルト感圧接着剤または感圧性熱溶融性接着剤)組成物を製造する方法が開示されている。
【0010】
[特許文献6](米国特許第8.431、675号明細書)にはシリル化ポリウレタンの製造方法と、このポリマーを含む接着剤組成物とが開示されている。
【0011】
[特許文献7](国際公開第WO2007/037824号公報)には、ジョイント、接着剤およびコーティングの使用に適したシリル化ポリウレタンポリマーを反応装置中で製造するための連続プロセスが開示されている。
【0012】
しかし、上記の各文献には粘着付与樹脂を効率的に脱水することが可能な、シリル化ポリマーと粘着付与樹脂とをベ―スにした接着剤組成物を製造する方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第WO2012/090151号公報
【文献】欧州特許第EP2235133号公報
【文献】欧州特許第EP2336208号公報
【文献】中国特許第CN102827568号公報
【文献】中国特許第CN103331891号公報
【文献】米国特許第8.431、675号明細書
【文献】国際公開第WO2007/037824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、シリル化プレポリマーと可塑剤(例えば粘着付与樹脂)とをベ―スにしたPSA組成物をより高速、より短い滞在時間、より低温度で製造でき、しかも、可塑剤をより効率的に脱水することができる製造方法に対する真のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記の(1)~(4)の段階を連続的に含む少なくとも2本の回転スクリューを備えた押出機を用いて接着剤組成物を製造する方法である:
(1)押出機に少なくとも1つの可塑剤を導入し、
(2)上記押出機中で可塑剤を脱気し、
(3)上記押出機に少なくとも一種のシリル化プレポリマーと、それと可塑剤との混合物とを導入し、
(4)上記押出機から混合物を排出する。
【0016】
本発明の一つの実施形態では押出機は互いに噛み合う共回転二軸スクリューである。
【0017】
本発明の一つの実施形態では、押出機はスクリューの内径に対するスクリューの外径の比De/Diによって定義される幾何形状が1.3~1.8、好ましくは1.55~1.8である。
【0018】
本発明の一つの実施形態では、押出機はスクリューの直径Dの倍数で定義されるスクリューの長さは28D~100D、好ましくは40D~80Dである。
【0019】
本発明の一つの実施形態では、シリル化プレポリマーはポリエーテル主鎖、ポリエーテル-ポリウレタン主鎖、ポリエステル主鎖、ポリエステル-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリエステル-ポリウレタン主鎖、ポリオレフィン主鎖、ポリオレフィン-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリオレフィン-ポリウレタン主鎖、ポリアクリレート主鎖、鎖ポリエーテル-アクリレート主から選択される主鎖と、2つの加水分解性アルコキシシラン末端基とを有する。シリル化プレポリマーは2つの加水分解性アルコキシシラン末端基を有するポリエーテル型またはポリエーテル-ポリウレタン型のプレポリマーである野か好ましい。
【0020】
本発明の第1の実施形態では、シリル化プレポリマーは下記式(I)を有するプレポリマーである:
【0021】
(ここで、
1は5~15個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族の直鎖、分岐鎖または環状の二価の炭化水素基を表し、
2は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
3は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
4およびR5は互いに同一でも異なっていてもよく、その各々は1~20個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR4またはR5が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、
nは式-[OR2n-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaの間となるような整数であり、
mはゼロまたはゼロでない整数であり、
m1およびnは式(I)のポリマーの平均分子量が600Da~60kDaの間となるような数であり、
pは0,1または2の整数であり、
23℃で測定した粘度が25~100Pa・sの範囲にあるのが好ましい)
【0022】
本発明の第2の実施形態では、シリル化プレポリマーは下記の式(VI)を有するポリエーテルである:
【0023】
(ここで:
1は5~15個の炭素原子を有す芳香族または脂肪族の直鎖、分岐鎖または環状の二価の炭化水素基を表し、
2は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
3は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
4およびR5は互いに同一または異なっていてよく、その各々は1~4個の炭素数を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR4およびR5が存在する場合にはそれら互いに同一でもて異なっていてもよく、
6は水素原子、フェニル基、2-スクシネートまたは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表し、
nは式-[OR2n-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaの間となるような整数であり、
2はゼロでない整数であり、
nおよびm2は式(I)のポリマーの平均分子量が600Da~60kDaの間となるような数であり、
pは0,1または2の整数であり、
23℃で測定した粘度は25~100Pa・sの範囲にあるのが好ましい)
【0024】
本発明の一つの実施形態では、可塑剤は粘着付与樹脂であるか、粘着付与樹脂を含む。
【0025】
本発明の一つの実施形態では、粘着付与樹脂は200Da~10kDaの平均分子量を有し、好ましくは下記の中から選択される:
(i)フリーデル-クラフツ触媒の存在下でテルペン炭化水素とフェノールとを重合して得られる樹脂、
(ii)α-メチルスチレンの重合を含むプロセスで得られる樹脂、
(iii)天然由来のロジンまたは変性ロジンおよびそれらの水素化、二量体化、重合または一価または多価アルコールでエステル化した誘導体、
(iv)石油留分に由来する約5、9または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素混合物の水素化、重合または共重合で得られる樹脂、
(v)テルペン樹脂、
(vi)天然テルペンをベースにしたコポリマー、
(vii)100℃における粘度が100Pa・s以下であるアクリル系樹脂。
【0026】
本発明の一つの実施形態では接着剤組成物の総重量に対するシリル化プレポリマーの量が20~85重量%、好ましくは30~75重量%であり、可塑剤の量が15%~重量80%、好ましくは25~70重量%である。
【0027】
本発明の一つの実施形態では接着剤組成物は架橋触媒を含まない。
【0028】
本発明の一つの実施形態では接着剤組成物が架橋触媒を含む。この場合、本発明方法は触媒と、それと可塑剤およびシリル化プレポリマーとの混合物の導入段階を含む。この導入は押出機中で行われるのが好ましく、より好ましくはシリル化プレポリマーの導入と排出との間に行う。
【0029】
本発明の一つの実施形態では、架橋触媒の量は接着剤組成物の総重量に対して0.01~8重量%、好ましくは0.1~2重量%である。
【0030】
本発明の一つの実施形態では、押出機中での可塑剤の滞留時間は0.1~3分、好ましくは0.5~2.5分、さらに好ましくは1~2分である。
【0031】
本発明の一つの実施形態では、脱気後の可塑剤の含水量は500ppm以下、好ましくは300ppm以下、好ましく200pp以下、より好ましく100ppm以下であり、および/または、脱気前の可塑剤の含水量は500ppm以上、好ましく1000ppm以上、より好ましくは2000ppm以上である。
【0032】
本発明の一つの実施形態では、酸化防止剤、水分捕捉剤、熱可塑性ポリマー、可塑剤、パラフィン系およびナフテン系オイル、ポリエチレンのホモポリマーのワックス、ポリエチレンとビニルアセテートの共重合体のワックス、顔料、染料および充填剤の中から選択される一つ以上の化合物を一回または複数回押出機に導入する段階を本発明方法がさらに含む。
【0033】
本発明の一つの実施形態では、可塑剤脱気時の押出機の温度はISO規格625に準拠して測定した可塑剤の環球軟化温度(リング-ボール軟化点)よりも5℃~100℃高い。
【0034】
本発明の一つの実施形態では、本発明方法は1回または複数回の追加の脱ガス段階をさらに含み、好ましくはシリル化プレポリマーと可塑剤との混合段階後に少なくとも1回の追加の脱気を含む。
【0035】
本発明の一つの実施形態では、押出機の温度は可塑剤の導入点から排出点までに室温から可塑剤の脱気時の最高温度Tmaxまで上昇される。Tmaxは150℃~220℃の間、好ましくは160℃~180℃の間、より好ましくは165℃~175℃の間であり、さらに好ましくは、Tmaxは約170℃である。その後は、排出時の最終温度Tfまで低下させる。Tfは室温とTmaxの間の温度で、好ましくは20℃~145℃の間、好ましくは120℃~140℃の間であり、Tfは好ましくは約130℃である。
【0036】
本発明の一つの実施形態では、プレポリマーと可塑剤とを混合する時の押出機の温度TmはTfとTmaxの間であり、Tmは130℃~170℃の間、好ましくは140℃~160℃の間、より好ましくは145℃~155℃の間であり、より好ましくはTmは約150℃である。
【0037】
本発明によって従来技術の欠点を克服することができる。本発明は特に、シリル化プレポリマーと可塑剤、好ましくは粘着付与樹脂とをベースにした接着剤組成物を比較的低温かつ短時間に可塑剤および/またはシリル化プレポリマーの分解リスクを減少させて製造することができる方法を提供する。本発明方法では組成物中に導入される水の量は極めて少ないので、早期架橋の危険を制限することができる。
【0038】
上記利点は押出機を使用し且つ特定の順番のステップを採用することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせて測定した、元の(粗)粘着付与樹脂(グレーの棒グラフ)と二軸押出機を用いて予め混合した樹脂(黒の棒グラフ)のVOCガスの含有量を表し、縦軸はサンプルの面積/重量比を表す。
図2】クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせて測定した、実施例3(A)に記載の本発明方法によって得られたPSA組成物とバッチ処理(B)によって製造された工業品のPSA組成物のVOC含有量を表す。縦軸は10で割った総VOC含有量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明が以下の説明に限定されるものではない。
特に明記しない限り、本明細書では全てのパーセント(%)は質量百分率を表す。
【0041】
数平均モル質量および重量平均モル質量はダルトン(Da)で表され、データ取得および処理ソフトウェアEmpower2(Waters)を備えたWaters Alliance 2695シリンダーテムを用いてサイズ排除クロマトグラフィーによって求めることができる。使用した溶媒は0.025%のブチル化ヒドロキシトルエンで安定化させたテトラヒドロフラン(Fisher)で、流速は1mL/分、カラム温度は35℃、注入量は50μlである。分離カラムは寸法が50×7.8mm×5μmのガードカラムと、1本のカラム103A(300×7.8mm、1K-75K MW;Phenomenex 00H-044-KO)と、2本のカラム104A(300×7.8mm、5K-500K Mw;Phenomenex 00H-045-KO)と、1本のカラム105A(300×7.8mm、10K-1000K Mw;Phenomenex 00H-046-KO)とで構成され、これらのカラムはポリスチレン標準(PS)で較正した。検出は35℃の温度でWaters410屈折計とWaters2996検出器とを用いて行った。
【0042】
記載した粘度はブルックフィールド粘度計を用い、センサ感度に合わせた速度(平均20回転/分)で回転するニードル7で測定した。
【0043】
本発明は、少なくとも1種の可塑剤と少なくとも一種のシリル化プレポリマーとをベースにした接着剤組成物を押出機で製造する方法に関する。本発明方法を用いることで接着剤組成物を連続的に製造することができる。
【0044】
接着剤組成物は感圧接着剤(PSA)組成物であるのが好ましい。
【0045】
本出願で「プレポリマー」とは「一種または複数のプレポリマー」を意味し、「可塑剤」または「粘着付与樹脂」は「一種または複数の可塑剤または粘着付与樹脂」をそれぞれ意味する。これは接着剤組成物の他の化合物についても同様である。
【0046】
本発明方法は下記段階を連続的に有する:
(1)押出機への可塑剤の導入、
(2)上記押出機中での可塑剤を脱気、
(3)上記押出機中へのシリル化プレポリマーとそれと可塑剤との混合物の導入、
(4)押出機からの混合物の排出。
【0047】
「下記段階を連続的に有する」とは、互いに異なる上記段階が可塑剤の所定部分に対して順次行われるということを意味する(プロセスを連続的に実行する場合、装置の観点からは、上記の段階が装置の別々の部分で同時に行われるということは理解できよう)。すなわち、シリル化プレポリマーは、可塑剤の導入の位置に対して、および、押出機への可塑剤の脱気位置に対して押出機の下流位置で導入される。本願で「下流」、「上流」という用語は押出機中での製品の移動の方向に対して定義される。
【0048】
シリル化プレポリマー
本発明の特定実施形態では、シリル化プレポリマーは少なくとも1つの加水分解性アルコキシシラン基を(好ましくは末端に)有し、好ましいシリル化プレポリマーは少なくとも2つの加水分解性アルコキシシラン基を(好ましくは末端に)有する。
【0049】
本発明の特定実施形態では、シリル化プレポリマーの主鎖はポリエーテル主鎖、ポリエーテル-ポリウレタン主鎖、ポリエステル主鎖、ポリエステル-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリエステル-ポリウレタン主鎖、ポリオレフィン主鎖、ポリオレフィン-ポリウレタン主鎖、ポリエーテル-ポリオレフィン-ポリウレタン主鎖、ポリアクリレート主鎖、ポリエーテル-ポリアクリレート主鎖から選択される。
【0050】
本発明の特定実施形態では、加水分解性アルコキシシラン基は式-Si(R4p(OR53-Pで表される。式中でR4およびR5は互いに同一でも異なっていてもよく、その各々は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR4またはR5が存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0051】
本発明の第1実施形態では、シリル化プレポリマーはポリエーテル型またはポリエーテルポリウレタン型である。
【0052】
シリル化プレポリマーは下記の式(I)を有するプレポリマーであるのが有利である:
【0053】
(ここで、
1は5~15個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族の直鎖、分岐鎖または環状の二価の炭化水素基を表し、
2は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
3は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
4およびR5は互いに同一でも、異なっていてもよく、その各々は1~20個、好ましくは1~4個の炭素数を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR4または5が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、
nは式-[OR2]n-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaの間となるような整数であり、
m1はゼロ(ポリエーテルプレポリマーの場合)であるか、ゼロではない整数(ポリエーテル-ポリウレタンプレポリマーの場合)であり、
nおよびm1は式(I)のポリマーの平均分子量が600Da~60kDaの間となるような数であり、
pは0,1または2の整数である)
【0054】
mがゼロでない場合、式(I)のプレポリマーは以下のステップで得ることができる。
【0055】
第1ステップで、以下の式を有する2つの末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル-ポリウレタンポリオールを合成する:
【0056】
そのために、1モルの式(III):NCO-R1-NCOのジイソシアネートを化学量論的に過剰量の式(IV)::H-[OR2n-OHのポリエーテルジオールと反応させる。これは官能数比NCO/OH<1に相当する。好ましくはこの比を約0.5にする。
【0057】
上記反応は必要に応じて触媒の存在下で60~90℃の間の温度で約2~8時間行う。
【0058】
第2ステップで、式(II)のポリエーテル-ポリウレタンポリオールを式(V):NCO-R3-Si(R4p(OR53-Pのイソシアネートシランとのシリル化反応によって式(I)のプレポリマーに変換する。シリル化反応は2モルの式(V)の化合物に対して約1モルの式(II)のポリエーテル-ポリウレタンポリオールでである。
【0059】
式(IV)のポリエーテルジオールは広く市販されており、式(V)のイソシアネートシランでも同様である。例としてはGENIOSIL(登録商標)GF40の商品名で入手可能なガンマー-イソシアネート-n-プロピル-トリメトキシシランまたはGENIOSIL(登録商標)XL42の商品名で入手可能なα-イソシアネート-N-メチルメチルジメトキシシランを挙げることができる(両方ともWacker社)。
【0060】
上記の2つの合成工程はアルコキシシラン基の加水分解を避けるために無水条件下で実施される。これらの反応を実施するための典型的な温度範囲は30~120℃、特に60~90℃である。上記の化学量論からわずかに変動しても問題はないが、第1ステップ(式(II)のポリエーテル-ポリウレタンポリオールの合成段階)では変動幅は10%を超えてはならず、第2ステップ(式(I)のプレポリマーの合成)では変動幅は2%を超えてはならない。
【0061】
m1がゼロでないアルコキシシラン型の末端基を有する式(I)のプレポリマーの製造に関する詳細は欧州特許第EP2235133号公報をされたい。
【0062】
式(I)のプレポリマーの平均分子量(Mn)は600Da~60kDaの間である。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)のプレポリマーの平均分子量(Mn)は4~50kDaであり、式:-[OR2]n-のポリエーテルブロックの質量平均分子量は2~25kDaである。
【0064】
別の好ましい実施形態では、式(I)のプレポリマーは下記の場合である:
1が2つの遊離原子価が下記で表される二価の基の1つから選択される:
a)二価の基がイソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導される:
b)二価の基が4,4'-および2,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)に由来する:
c)2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)から誘導される基:
d)4,4'-および2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から誘導される基:
e)m-キシリレンジイソシアネート(M-XDI)から誘導される基:
f)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される基:
-(CH26
2がエチレンおよび/またはイソnロピレンの二価の基で、
3がメチレンおよび/またはn-プロピレンの二価の基で、
4およびR5がそれぞれメチルまたはエチルである。
【0065】
特に好ましい実施形態では、式(I)のプレポリマーは下記の場合である:
1が下記の式のイソホロンジイソシアネート(IPDI)由来の二価の基で:
2がイソプロピレンの二価の基で、
3がn-プロピレンの二価の基で、
-基-Si(R4p(OR53-pがトリメトキシシリル基である。
【0066】
m1がゼロの場合の式(I)のプレポリマーは式(IV):H-[OR2n-OHのポリエーテルジオールを式(V):NCO-R3-Si(R4p(OR53-pのイソシアネートシランと反応させて得られる。比率は式(VII)の化合物の2モルに対して式(IV)のポリエーテルジオールの量を約1モルにする。
【0067】
この合成工程はアルコキシシラン基の加水分解を避けるために無水条件下で行う。この反応の実施のための温度範囲は一般的に30℃~120℃、特に60℃~90℃である。上記の化学量論からわずかな変動しても問題ないが、変動は2%を超えないようにする。
【0068】
m1がゼロであるアルコキシシラン末端基を有する式(I)のプレポリマーの製造に関する詳細については欧州特許第EP2336208号公報を参照されたい。
【0069】
有利な変形例では、式(I)のプレポリマーの多分散指数は1、1~2.0の間にある。この多分散性指数は数平均分子量に対する重量平均分子量の比である。このプレポリマーは多分散指数が1~1,6の間にある式(IV)のポリエーテルジオールから調製できる。そのようなポリエーテルは公知の方法で複合金属シアン化物錯体触媒存在下での対応するアルキレンオキシドの重合で得ることができる。
【0070】
上記プレポリマーは多分散指数が1~1.4のポリ(イソプロポキシ)ジオール(ポリプロピレングリコールまたはポリオキシイソプロピレンジオールとのよばれる)から好ましく調製できる。このポリプロピレングリコールは市販されている。ポリプロピレングリコールの例としては多分散指数が約1.1であるBayer社のACCLAIM(登録商標)が挙げられ、例えば平均分子量が約8250DaであるACCLAIM(登録商標)8200、平均分子量が11225DaのACCLAIM(登録商標)12200、平均分子量が18100DaのACCLAIM(登録商標)18200がある。
【0071】
式(I)のシリル化ポリエーテルおよびシリル化ポリエーテル-ポリウレタンも市販されている。
【0072】
本発明の特定実施形態では、式(I)のシリル化ポリエーテルおよびポリエーテルポリウレタン(m1がゼロまたは非ゼロ)の23℃で測定した粘度は25~60Pa・sの範囲にある。
【0073】
本発明の一つの特定実施形態では、式(I)のシリル化ポリエーテル(m1がゼロまたは非ゼロ)の23℃で測定した粘度は30~37Pa・sである。
【0074】
本発明の本発明の一つの実施形態では、式(I)のシリル化プレポリマー(m1がゼロまたは非ゼロ)の接着剤組成物の重量に対する比率は20~85重量%である。この比率は30~75重量%、さらに有利には40~65重量%であるのが好ましい。
【0075】
本発明の別の実施形態では、シリル化プレポリマーは式(VI)を有するポリエーテル-ポリウレタンである:
(ここで、
1は5~15個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族の直鎖、分岐鎖または環状の二価の炭化水素基を表し、
2は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
3は1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
4およびR5は互いに同一でも異なっていてもよく、その各々は1~4個の炭素数を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、複数のR4およびR5基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、
6は、水素原子、フェニル基、2-コハク酸または直鎖、分枝鎖または環状の1~6個の炭素原子を含むアルキルを表し、
nは式:-[OR2n-のポリエーテルブロックの平均分子量が300Da~30kDaの間となる整数であり、
2はゼロでない整数であり、
nおよびm2は式(I)のポリマーの数平均分子量が600Da~60kDaの間となるようなものであり、
pは0,1または2の整数である)
【0076】
式(VI)のプレポリマーは以下のステップで得ることができる。
最初のステップで、下記の式を有する2つの末端イソシアネート基を有するポリエーテルポリウレタンポリオールを合成する:
【0077】
そのために、1モルの式(IV)のポリエーテルジオール:H-[OR2]n-OHを化学量論的に過剰な量で式(III)のジイソシアネート:NCO-R1-NCOと反応させる。これは官能数比NCO/OHが1以上であることに対応する。好ましくは、化合物(ΙΙ')のNCO量は1.5~1.9%にする。
【0078】
第二ステップで、式(V')のアミノシラン:R6-NH-R3-Si(R4p(OR53-pとのシリル化反応で、式(ΙΙ')のポリエーテル-ポリウレタンポリオールを式(I)のプレポリマーに変換する。反応比は2モルの式(V')の化合物に対して約1モルの式(ΙΙ')のポリエーテルポリウレタンジイソシアネートである。
【0079】
式(IV)のポリエーテルジオールは市販されており、式(V)のアミノシランも同様である。例としてはγ-アミノ-N-プロピル-トリメトキシシランおよびα-アミノ-n-メチルメチルジメトキシを挙げることができ、Wacker社からGENIOSIL(登録商標)の名称で市販されている。
【0080】
この合成工程はアルコキシシラン基の加水分解を避けるために無水条件下で行う。この反応を実施するための典型的な温度範囲は30~120℃、特に60~90℃である。上記化学量論からわずかな変化してもよいが、変化は2%未満にするのが好ましい。
【0081】
アルコキシシラン末端基を有する式(VI)のプレポリマーの製造に関する詳細は欧州特許第EP2889348号公報を参照されたい。
【0082】
有利な変形例では、式(VI)のプレポリマーは600Da~60kDaの平均分子量(Mn)を有し、1.5~2.5の多分散性指数を有する。この多分散性指数は数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である。
【0083】
このプレポリマーは、多分散指数が1~1.6の間にある式(IV)のポリエーテルジオールから調製できる。このポリエーテルは複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で公知の方法で対応するアルキレンオキシドを重合して得ることができる。
【0084】
上記プレポリマーは、多分散性指数が1~1.4のポリ(イソプロポキシ)ジオール(ポリプロピレングリコールまたはポリオキシイソプロピレンジオールともよばれる)から調製できる。このポリプロピレングリコールも市販されている。その一つの例としてはBayer社からACCLAIM(登録商標)の名称で入手可能な多分散指数が約1.1であるポリプロピレングリコールを挙げることができる。例えば、平均分子量が約8250DaのACCLAIM(登録商標)8200、平均分子量が11225DaのACCLAIM(登録商標)12200、平均分子量が18100DaのACCLAIM(登録商標)18200がある。
【0085】
式(VI)のポリエーテルシリル化ポリウレタンも市販されている。
【0086】
有利な変形例では、式(VI)のプレポリマーは下記の特徴の1つまたは複数を有する:
4およびR5が同一または異なっており、その各々はメチル基またはエチル基を表し、
3が1~3個の炭素原子を有する直鎖の二価のアルキレン基を表し、
2がエチレン、イソプロピレン、n-プロピレン、n-ブチレン、エチル、エチレンから選択される二価の基を表し、
6がフェニル基、2-スクシネートまたは1~6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。
【0087】
好ましい実施形態では、式(VI)のプレポリマーは下記の場合である:
p=0または1、
4およびR5がそれぞれメチル、
3が3個の炭素原子を有するアルキレン基、
6がフェニル基、2-コハク酸基または1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキルを表す。
【0088】
別の好ましい実施形態では、式(VI)のプレポリマーは下記の場合である:
1が下記の式が2つの遊離原子価を表す下記の二価の基の中から選択され:
a)イソホロンジイソシアネート(IPDI)由来の二価基:
b)4,4'-および2,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)から誘導される二価の基:
c)2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)から誘導される基:
d)4,4'-および2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から誘導される基:
e)m-キシリレンジイソシアネート(M-XDI)から誘導される基:
f)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される基:
-(CH26
2がエチレンおよび/またはイソプロピレンの二価基で、
3がメチレンおよび/またはn-プロピレンの二価基で、
4およびR5がそれぞれメチルまたはエチルで、
6がフェニル、2-コハク酸基または1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキルである。
【0089】
特に好ましい実施形態では、式(VI)のプレポリマーは下記の場合である:
1がイソホロンジイソシアネート(IPDI)由来の下記式の二価の基で、
2がイソプロピレンの二価基で、
3がn-プロピレンの二価基で、
6がフェニル、2-コハク酸基または1~6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキルで、
基-Si(R4p(OR53-pがトリメトキシシリル基である。
【0090】
特定実施形態では、式(VI)のポリエーテル-ポリウレタンは23℃で測定した粘度が25~100Pa・sの範囲にある。
【0091】
本発明のさらに一つの実施形態では、式(VI)のポリエーテルは23℃で測定した粘度が25~60Pa・sの範囲にある。
【0092】
本発明の一つの実施形態では、シリル化プレポリマーの量は接着剤組成物の重量に対して20~85重量%である。さらに好ましくは、この量は30~75重量%であり、さらに有利には65~40重量%である。
【0093】
可塑剤
可塑剤は粘着付与樹脂を含むのが好ましい。特に好ましくは、可塑剤は粘着付与樹脂である。以下の説明では粘着付与樹脂として好ましい実施形態を示すが、粘着付与樹脂の代わりに(またはそれに加えて)他の任意の可塑剤を用いることができるということを考慮しなければならない。
使用ができる他の可塑剤としては以下のものがある:
(1)フタレート可塑剤;例えばビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、特に、ジイソデシルフタレート(BASF社からPALATINOLTM DIDPの名称で市販されている)
(2)ポリオールエステル;特にペンタエリスリトールテトラバレレート(tetravalerate)(PERSTORP社からPEVALENTMの名称で市販されている)
(3)エステル基のアルキルは各々独立して1~20個の炭素原子を有するシクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステル、特に、イソノニル-1、2-シクロヘキサンジカルボキシレート(BASF社からHexamollDINCH(登録商標)の名称で市販されている)
(4)フェノールのアルキルスルホン酸エステル(特に、LANXESS社からMESAMOLL(登録商標)の名称で市販されているもの)
【0094】
本発明の一つの実施形態では、粘着付与樹脂はシリル化プレポリマーと相溶性がある。相溶性がある粘着付与樹脂とは、シリル化プレポリマーと50%/50%の割合で混合した時に実質的に均質な混合物を形成する粘着付与樹脂を意味する。
【0095】
本発明の特定の実施形態では、粘着付与樹脂の平均分子量は200Da~10kDaの間にある。
【0096】
本発明では、粘着付与樹脂は下記から選択するのが特に有利である:
(i)フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールの重合で得られる樹脂、
(ii)α-メチルスチレンの重合を含むプロセスで得られる樹脂、
(iii)天然由来または変性したロジンおよびそれらの水素化、二量体化、重合または一価または多価アルコールとのエステル化誘導体、
(iv)石油留分に由来する約5、9または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素混合物の水素化、重合または共重合によって得られる樹脂、
(v)テルペン樹脂、
(vi)天然テルペンをベースにしたコポリマー、
(vii)100℃での粘度が100Pa・s以下であるアクリル系樹脂。
【0097】
これらの樹脂は市販されており、上記定義のタイプ(i)、(ii)および(iii)には下記の製品が含まれる。
タイプ(i)の樹脂
DRTから入手可能な分子量が約870DaのDertophene(登録商標)1510;同社から入手可能な分子量が約630DaのDertophene(登録商標)H150;Arizona Chemical社から入手可能な分子量が約1200DaのSylvarez(登録商標)TP95
タイプ(ii)の樹脂
Cray Valley社から入手可能なNorsolene(登録商標)W100:これはフェノールの作用なしにα-メチルスチレンを重合して得られ、分子量は900Daである;Arizona Chemical社から入手可能なSylvarez(登録商標)510:これはフェノール添加を含む方法で得られ、分子量は約1740Daである。
タイプ(iii)の樹脂
Arizona Chemical社から入手可能な分子量が約1700DaであるロジンとペンタエリスリトールのエステルであるSylvalite(登録商標)RE100
【0098】
さらに好ましくは、粘着付与樹脂はタイプ(i)またとタイプ(ii)の樹脂から選択される。
【0099】
別の好ましい変形例では、粘着付与樹脂としてタイプ(iii)、好ましくはロジンエステル樹脂が使用される。
【0100】
粘着付与樹脂の量は接着剤組成物の重量に対して15~80重量%であるのが好ましい。この量はより有利には25~70重量%、さらに好ましくは35~60重量%である。
【0101】
特定の実施形態では、脱気前の樹脂の含水量は500ppm以上、好ましく1000ppm以上、より好ましく2000ppm以上、例えば4000ppmである。樹脂の含水率はISO規格760に従ってカールフィッシャー定量法(dosage Karl Fisher)で測定する。
【0102】
架橋触媒
本発明方法で製造した接着剤組成物は架橋触媒を含んでいても、含んでいなくてもよい。後者の場合、接着剤組成物に硬化触媒を後で添加する、例えば接着剤組成物の塗布時に添加することもできる。
【0103】
接着剤組成物が触媒を含む場合には、本発明方法は触媒の導入工程を含む。有利な実施形態では触媒の導入は押出機で行う。別の方法では触媒の導入を押出機の外で行うことができる。例えば、接着剤組成物が押出機から排出された後に例えば動的ミキサーを用いて接着剤組成物に触媒を添加できる。
【0104】
押出機中で触媒の導入を行う時には押出機の任意の点で添加できる。架橋触媒の導入はシリル化プレポリマーの導入と押出機からの排出との間に押出機中で行われる。変形例では、粘着付与樹脂を押出機に導入する時と脱気時との間あるいは粘着付与樹脂の導入と同時に触媒の導入を行うことができる。
【0105】
本発明の一つの実施形態では、触媒は単独で導入される。別の実施形態では触媒はキャリア(担体)、例えばポリプロピレングリコールと混合して導入される。別の実施形態では、触媒は組成物の1つまたは複数の他の成分、例えば粘着付与樹脂またはシリル化プレポリマーと混合して導入される。
【0106】
架橋触媒が接着剤組成物中に存在する場合、架橋触媒は当業者にシラノール縮合用として公知の任意の触媒にすることができる。そのような触媒としては有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート(DBTL)またはジオクチルスズネオデカノエート(TIBKAT(登録商標)223の名称で市販)がある。また、チタンの有機誘導体触媒の例としはチタンアセチルアセトネート(DuPontからTYZOR(登録商標)AA75の名称で市販)、アルミニウムの有機誘導体触媒の例としはアルミニウムのキレート(例えばKing Industries社からK-KAT(登録商標)5218の名称で市販)アミンの有機誘導体触媒の例としは例えば1、1,8-ジアゾビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7またはDBUを挙げることができる。
【0107】
本発明の特定実施形態では、架橋触媒の量は接着剤組成物の重量に対して0.01~8重量%である。触媒量は0.1~2重量%であるのが好ましい。
【0108】
その他の添加剤
本発明方法ではHMPSAの製造でよく使用される熱可塑性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)またはスチレンブロックコポリマーをオプションとして導入することができる。これらの熱可塑性ポリマーはシリル化プレポリマーと組み合わせて導入してもよいが、シリル化プレポリマーとは独立して押出機に導入することもできる。
【0109】
本発明方法では1種または複数の酸化防止剤(または安定剤)を導入するのが有利である。酸化防止剤の量は0.1~2重量%にするのが有利である。この化合物は熱または光の作用で発生する可能性のある酸素との反応に起因する劣化から接着剤組成物を保護するために添加される。この化合物はフリーラジカルを除去する一次酸化防止剤を含むことができ、特に、CIBA社のIrganox1076のような置換フェノールが含まれる。この一次酸化防止剤は単独または他の二次酸化防止剤または紫外線安定剤と組み合わせて用いることができる。本発明の好ましい変形例では、酸化防止剤は粘着付与樹脂と同時に押出機に導入される。
【0110】
本発明方法では、1種または複数の水分捕捉剤、好ましくは加水分解性アルコキシシラン誘導体、より好ましくはトリメトキシシラン誘導体をさらに導入することができる。水分捕捉剤の量は3重量%以下にするのが有利である。水分捕捉剤は使用前の貯蔵中および輸送中の接着剤組成物の貯蔵寿命を延ばすのに有利である。その例としてはUS Momentive Performance Materials Inc社からSILQUEST(登録商標)A-174の商品名で市販のγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0111】
本発明方法ではさらに、フタレートまたはベンゾエート、パラフィン系およびナフテン系オイル(例えばESSO社のPrimol(登録商標)352)またはポリエチレンのホモポリマーワックス(例えばHoneywell社のAC(登録商標)617)またはポリエチレンとビニルアセテートとの共重合体ワックスのような可塑剤または顔料、染料または充填剤を導入することができる。
【0112】
上記添加剤は押出機に異なる位置または単一位置で導入することができ、可塑剤と同じ場所、シリル化プレポリマーと同じ場所に導入することができ、あるいは、可塑剤およびシリル化プレポリマーとは異なる位置に導入することができる。
【0113】
押出しプロセス
本発明方法は少なくとも2本の回転スクリューを備えた押出機を使用して実施される。
有利な一つの実施形態では、押出機は二軸押出機である。
【0114】
本発明の好ましい実施形態では、押出機は互いに噛み合う共回転二軸スクリュー押出機(extrudeuse bi-vis co-rotatives)である。この実施形態では2本の押出スクリューが互いに接触しながら同じ方向に回転する。別の方法では、押出機は2本の押出スクリューが互いに反対方向に回転する逆回転二軸スクリュー押出機(extrudeuse bi-vis contra-rotatives)にすることができる。
【0115】
本発明方法で使用する押出機は三軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機でもよい。
【0116】
好ましい実施形態では、押出機は、スクリューの内径に対するスクリューの外径の比(De/Di)によって定義される幾何形状が1.3~1.8の範囲、好ましくは1.55~1.8の範囲にある。
【0117】
特に有利な実施形態では、押出機は、スクリュー直径(D)の倍数で定義される長さが28D~100D、好ましくは40D~80Dである。
【0118】
スクリューの回転速度は150rpm~1200rpm、好ましくは300rpm~600rpmである。
【0119】
本発明方法は下記を連続的に含む:
- 押出機中への粘着付与樹脂の導入、
- 押出機中での粘着付与樹脂の脱気、
- 押出機中へのシリル化プレポリマーおよびそれと粘着付与樹脂との混合物の導入、
- 押出機からの混合物を排出。
【0120】
押出機への各化合物の導入は、押出機に沿って所望位置に配置されたホッパーを用いて行うことができる。これらホッパーには押出機に導入される化合物の量を制御するための計量器を備えることができる。
【0121】
本発明方法の一つの実施形態では、押出機中での粘着付与樹脂の滞留時間は0.1~3分である。この滞留時間は接着剤組成物の上記化合物にとって特に有利である。すなわち、特に、本発明方法実施時に粘着付与樹脂およびシリル化プレポリマーが高温に維持される時間が極めて短くなり、これらの化合物の劣化の危険性が少なくなる。この滞留時間は0.5~2.5分にするのがより有利であり、さらに好ましくは1~2分にする。
【0122】
脱気(degazage)とは化合物中または化合物の混合物中、例えば粘着付与樹脂中に存在する任意のガスの量を減少させる操作を意味する。特に、脱気によって粘着付与樹脂中に含まれる水分の一部または全てを除去することができる。さらに、樹脂中に含まれるVOC、特に本発明方法実施時の粘着付与樹脂の分解で形成されるVOCの全てまたは一部を除去することができる。
【0123】
脱気は真空(または減圧)を適用することによって達成できる。この真空は大気圧に対して760mmHg以下の減圧、例えば350~760mmHg、好ましくは400~700mmHg、より好ましくは600~700mmHgの減圧を加えることによって得られる。
【0124】
本発明の一つの実施形態では、脱気をした後に粘着付与樹脂は500ppm以下の低い量の水を含む。この含水量は好ましくは300ppm以下、より好ましく200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。樹脂の含水率はISO規格760に従ってカールフィッシャー法(un dosage Karl Fisher)によって測定できる。
【0125】
脱気時の押出温度は粘着付与樹脂の軟化点より5~100℃高くするのが有利である。粘着付与樹脂の軟化点はISO規格4625に従った環-球軟化温度で測定される。上記温度を適用することで樹脂の温度を十分に高くして効率的なガス抜きをするのに十分な流体を維持することができる。
【0126】
本発明方法は、上記の粘着付与樹脂の脱気に加えて、1回または複数の追加の脱気を含むことができる。本発明方法が粘着付与樹脂とシリル化プレポリマーとを混合した後に少なくとも1回の追加の脱気を含むのが特に有利である。粘着付与樹脂とシリル化プレポリマーとを混合した後に少なくとも1回の追加の脱ガス段階を存在させることで、気泡の含有量が低い最終接着剤組成物を得ることができる。この脱気は減圧することで達成でき、特に、大気圧に対して760mmHg以下に減圧、例えば350mmHg~760mmHg、好ましくは400mmHg~700mmHgに減圧することができる。
【0127】
本発明の一つの実施形態では、押出機の温度は押出機に沿って上流側から下流側に向かって、換言すれば粘着付与樹脂の導入点から排出点へ向かって変化する。
【0128】
本発明の一つの有利な実施形態では、押出機の温度は上流から下流へ向かって室温から粘着付与樹脂脱気時の最大温度Tmaxまで増加し、その後に混合物排出時の最終的温度Tfまで低下する。室温からTmaxまでの上昇とTmaxからTfへの温度変化は単調な変化にすることができる。あるいは、局地的な温度低下、それぞれの局地的な温度増加も観察できる。
【0129】
特定の実施形態では、Tmaxは150℃~220℃の間、好ましくは160℃~180℃の間、好ましくは165℃~175の間にある。好ましい実施形態では、Tmaxは約170℃である。この温度を適用することで一般に脱気時に良好な流動性を得ることができ、それによって効率が向上し、しかも、樹脂を劣化させる過度の加熱を回避することができる。
【0130】
本発明の一つの実施形態では、Tfは室温とTmaxの間にある。特定の実施形態では、Tfは80℃~145℃の間、好ましくは120℃~140℃の間にある。好ましい実施形態ではTfは約130℃である
【0131】
本発明の一つの実施形態では、、粘着付与樹脂とシリル化プレポリマーとを混合する時の押出機の温度TmはTfとTmaxの間にある。特定の実施形態では、Tmは130℃~170℃の間、好ましくは140℃~160℃の間、さらに好ましくは145℃~155の間にある。好ましい実施形態では、Tmは約150℃である。
【0132】
有利な実施形態では、押出機の温度は上流から下流に向かって下記(1)~(5)に変化する:
(1)室温から温度T1へ上昇し、この温度T1は100℃~180℃の間、好ましくは120℃~130℃の間、好ましくは約125℃であり、
(2)次いで、粘着付与樹脂の脱気温度Tmaxまで上昇し、このTmaxは150℃~220℃の間、、好ましくは160℃と180℃の間、好ましくは165℃~175℃の間、さらに好ましくは約170℃であり、
(3)温度T2まで低下し、この温度T2は130℃~155℃の間、好ましくは140℃~150℃、より好ましくは約145℃であり、
(4)粘着付与樹脂とシリル化プレポリマーとを混合する温度Tmまで上昇し、この温度Tmは130℃~170℃の間、、好ましくは140℃~160℃の間、さらに好ましくは145℃~155℃の間、より好ましくは約150℃であり、
(5)混合物排出時の温度Tfまで低下させる。この温度Tfは20℃~145℃の間、好ましくは120℃~140℃の間、より好ましくは約130℃である。
【0133】
押出機のシャフトには特定のプロファイルを付与するために異なるスクリュー要素を組み込むことができる。例えば、動的シール(des bouchons dynamique)または混合ゾーン(des zones de melange)を作るために当業者に公知の特定の要素を加え、必要な場合には適切な温度を加えることができる。押出機はさらに、化合物を排出点へ向かって送るための移送スクリュー要素を有することができる。
【0134】
本発明の一つの実施形態では、押出機が一つまたは複数の移送要素と動的シールまたは混合ゾーンを作成するための一つまたは複数の特定要素とを互いに交互に含む。一つの移送ゾーン区切る2つの動的シールを形成することによって上記2つのシールの間に実質的に密閉されたゾーンを作成することができる。この実質的に密閉されたゾーンによって脱気のための真空を容易に加えることができる。
【0135】
本発明の特定実施形態では、押出機は粘着付与樹脂の導入点から排出点までの間に下記を有する:移送ゾーン、溶融ゾーン(上記温度T1にあるのが好ましい)、粘着付与樹脂の脱気を行う移送ゾーン(上記温度Tmaxにあるのが好ましい)、動的シールゾーン(上記温度T2にあるのが好ましい)、シリル化プレポリマーが導入される移送ゾーン、プレポリマーと粘着付与樹脂とが混合される動的シールを有する混合ゾーン(上記温度Tmにあるのが好ましい)、必要に応じて別の脱気が行われる移送ゾーン(オプション、上記温度Tfにある)および最終なシール(オプション、上記温度Tfにある)(これは押出機先端の単なるダイの存在で形成できる)
【0136】
本発明の一つの実施形態では、押出機からの混合物の排出はノズルを介して行われる。本発明の一つの実施形態では、上記ノズルを用いて基材上に接着剤組成物をコーティングすることができる。コーティングは可能な任意の形態、例えばフィルム状、スプレー状、コード状またはクラスター状の形態で行うことができる。接着剤組成物が塗布される基板は剥離基材(substrat antiadherent)にすることができる。これは例えば後架橋するための接着剤組成物を担持する基板にすることができる。
【実施例
【0137】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
粘着付与樹脂中のVOC含有量の分析
押出試験はCoperionの互い噛み合う共回転二軸スクリュー押出機ZSK26MCで行った。スクリューの直径は26mm、幾何形状De/Diは1.55、押出機の長さは40Dである。押出機はそれぞれF1~F10と名付けられた一連の4Dのシリンダー(fourreaux)で構成されている。スクリュー回転速度は300rpm、全吐出量は15kg/時である。二軸押出機の温度はT1が125℃に維持され、Tmaxが170℃、T2が145℃、Tmが150℃、Tfが130℃となるように制御した。
【0138】
二軸スクリュー押出機の入口位置で粘着付与樹脂(DERTOPHENE H150樹脂)を酸化防止剤(Irganox245)と一緒に導入した。酸化防止剤の量は粘着付与樹脂に対して1重量%である。
次いで、シリンダーF4で700mnnHgの真空を加えて粘着付与樹脂を押出機中で脱気した。押出機から排出後に樹脂中のVOC含有量を測定した。
また、元の樹脂DERTOPHENE H150のVOC含有量も測定した。これは対照値である。
測定されたVOCは以下のとおり。
【表1】
【0139】
VOC含有量は質量分析に連結されたガスクロマトグラフィー(GC-MS)によって120℃で30分間測定した。
【0140】
結果は[図1]に示す。粘着付与樹脂を溶融状態で減圧脱気することで初期のVOCが数と質量で大幅減少することを示している。同定可能な揮発性化合物は初期に9種であったが、主として5種の揮発性化合物が残った。最終含有量も低減している。
【0141】
実施例2
粘着付与樹脂の含水率の分析
実施例1に記載の二軸スクリュー押出機に粘着付与樹脂DERTOPHENE H150を単独で導入した。樹脂の脱気のために加えた真空は700mmHgである。残留水の測定は押出機から排出後の樹脂で行った。
残留水分の測定は、元の樹脂DERTOPHENE H150(対照)と、バッチまたは非連続プロセスで脱気(タンク内160℃で1時間脱気)した樹脂DERTOPHENE H150(比較実験)とで行った。
結果を以下に示す。
【表2】
【0142】
二軸スクリュー押出機を用いた連続プロセスを用いることでバッチプロセスよりも効果的に樹脂中に含まれる残留水が除去でき、しかも、過酷が低い条件(押出機出口で測定した温度が低く(131℃)、滞留時間も短い)で残留水を除去できる。
【0143】
実施例3
接着剤組成物中のVOC含有量の分析
粘着付与樹脂を脱気した後に押出機のF6シリンダーにシリル化プレポリマーを導入したこと以外は実施例1と同じプロトコールで粘着剤組成物PSAを製造した。粘着付与樹脂とプレポリマーを押出機中で混合し、得られた粘着剤組成物を押出機から排出した後に、VOCをGC-MSによって120℃で30分間分析した。
また、バッチ法(比較試験)で製造した同じ工業品の粘着剤組成物PSAでもVOCの量を測定した。
結果は[図2]に示す。本発明方法を用いて得られた組成物中のVOCの量はバッチプロセスで製造した組成物中に存在する量よりも低いということを示している。
【0144】
実施例4
接着剤組成物のサイズ排除クロマトグラフィーによる分析
立体排除クロマトグラフィーを用いて、実施例3に記載の本発明方法によって調製された接着剤組成物と、バッチ処理で作られた工業品の着剤組成物とを分析した。
2つの曲線はほぼ重なり、2つの組成物は非常に近似していることを示す。従って、押出機による製造方法は接着剤組成物に影響を与えない、すなわち、押出機による製造方法の品質は工業品の粘着剤組成物の品質と同様である。
図1
図2