(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】マイクロトランスファー成形方法及びそれから得ることができるパターン基板
(51)【国際特許分類】
B28B 1/00 20060101AFI20230217BHJP
C04B 35/624 20060101ALI20230217BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20230217BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B28B1/00 H
C04B35/624
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
(21)【出願番号】P 2019572772
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2018065197
(87)【国際公開番号】W WO2019001934
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-02
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】519464533
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・トゥーロン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・グロッソ
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ボタン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011558(JP,A)
【文献】特開2004-230471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0098340(US,A1)
【文献】特開2013-121713(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094213(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0078796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0109201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230773(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0231781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00 - 1/54
C04B 35/624
B29C 53/00 -53/84
B29C 57/00 -59/18
H01L 21/30 -21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の逐次工程
(a)ゾル-ゲル層が10から60体積%の間で蒸気吸収によって膨潤するように調整された相対的溶媒圧の条件下で、第1の基板上にコーティングされた前記
ゾル-ゲル層を、少なくとも1つのキャビティを備えたソフトモールドに含浸させて、毛細管力の作用下、前記モールドに充填する工程、
(b)
前記モールドのキャビティ内にゲルが得られるように、前記第1の基板を取り除く工程、
(c)必要に応じて、
膨潤ゲルが得られるように、前記ゲルを膨潤させて、したがって、前記少なくとも1つのキャビティに全体的に充填するために、0から95%の間の相対的溶媒圧下、前記モールドのキャビティ内に前記ゲルを平衡化する工程、
(d)前記膨潤ゲルを第2の基板上へ適用して、パターン形成する工程、
(e)
前記第2の基板上に適用されたゲルを熱処理して、前記ゲルを硬くする工程、
(f)前記モールドを取り除く工程、及び
(g)前記ゲルを硬化させてセラミックにし、したがって、パターン基板を形成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ゾル-ゲル
層が
、0から70%の
間の相対的溶媒圧の条件下で、前記第1の基板上にコーティングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、THF、トルエン及びそれらの混合物からなる群から選択さ
れることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モールドが、シリコーンエラストマー、フッ素化ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)及びポリエーテルイミド(PEI)か
ら製造されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)の前記熱処理が、25から20
0℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記
ゾル-ゲル層が、15から45体積%の間で蒸気吸収
によって膨潤するように
、前記相対的溶媒圧が調整される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゾル-ゲル層が、水、一価若しくは二価アルコー
ルから選択される溶媒と組み合わせた、無機塩、有機塩、又は少なくとも1つの金属若しくはメタロイドの、若しくは少なくとも1つの金属の少なくとも1つのメタロイドとの組合せの、アルコキシドからなる群から選択される、金属又はメタロイド酸化物前駆体の溶液から形成されることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化させる工程(g)が、200から800
℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)方法の分野、より詳細には、いかなる残留層もなく基板上にゾル-ゲルパターン層を提供するために使用されるマイクロトランスファー成形方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
薄膜のサブミクロンのパターン形成は、とりわけ、感知、作動、情報処理、光導波路、表面弾性波デバイス及びホログラフィックメモリを可能にする微小電気機械システムにおける使用にとって、非常に興味深い。ソフトリソグラフィーは、高解像度、高処理能力、低コスト、広い領域、及び平坦でない湾曲した表面上のパターン形成に関わる、産業用途の実際的な需要に対処しつつ、ナノスケールでマスターを複製させるので、この目的にとって有望な技術である。
【0003】
ソフトリソグラフィーは、ハードマスターから複製されたソフトエラストマースタンプ(すなわち、モールド)を使用し、このマスターは、基板上の薄膜に決められたパターンを付与するために使用される。膜は、ポリマー又はゾル-ゲル材料から得られてよい。様々なパターン形成技術は、最終パターンにおいて望まれる基板のみに、膜材料を沈着させるように実施されてよい。これらの技術の中では、以下を言及できる。
- エンボス加工、これは、基板上へ強い力を加えて適用されるモールドの隆起した形状による、基板上に膜として適用される材料の置換に依拠する。この技術は、モールドの高くなった形状を基板に接触させるために、基板からの溶液の適切なディウェッテンィング(dewetting)を必要とする。通常、スタンプの縁の周りに乾燥した材料が残り、取り除く必要がある。したがって、この技術は、要求の厳しい用途のために及び脆弱な基板について使用できない。
- マイクロモールドキャピラリー(MIMIC)及びマイクロトランスファー成形(μTM)、これらは両方とも、スタンプの三次元形状に充填及び複写して、続いて、エラストマースタンプを取り外して基板のみにパターンを移送することに依拠する。
【0004】
MIMICにおいて、スタンプのパターン形成した表面は、前駆体溶液がチャネルに入り毛細管作用によって充填される開口端を有する連結したマイクロキャピラリーチャネルのネットワークを有し、基板上に置かれる。次に、ガスに対するスタンプの透過性によって、溶液を乾燥できる。次に、スタンプを取り外して、基板の表面上に微細構造を残す。多大な時間を必要とすることに加えて、この技術の主な制約は、溶液の乾燥に際して起こる体積収縮が理由で、ゾル-ゲル材料が、チャネルネットワーク全体に充填されることが、めったにないことである。加えて、例えば隔絶したキャビティ等、いくつかは、毛細管現象によって溶液へ接近し得ないので、全ての形状を、再現できない。したがって、形状の欠損が、観察される。
【0005】
μTMは、より速い点、及び隔絶した構造及び相互に連結した構造の両方を作り出す点で、MIMICの弱点のいくつかを克服する。μTMにおいて、プレポリマー又はゾル-ゲル前駆体溶液(又は「インク」)を、最も一般的には、スピンキャスティングによって、スタンプのパターン側の陥凹した領域上に沈着させる。スピンコーティング工程の間に、インクは乾燥し、陥凹したチャネルの壁から引き離される。モールド陥凹の不十分な充填を避けるために、時として、湿潤溶液を、モールドに適用する。しかし、その場合、過剰材料は、削り取り又は窒素流のいずれかで、スタンプの高くなった領域から取り除いて、残留層の形成を避けなければならない。次に、スタンプを、基板に接触させる。スタンプは剥ぎ取られるので、基板に対するエラストマーのより低い界面エネルギーによって、パターン形成した材料が表面上に残ることが可能になる。インクとスタンプの間のいかなる残留結合も、機械的応力をかけることによって、スタンピング工程の間に、破壊されなければならない。
【0006】
MIMIC技術と同様に、回避するための上記の工程がないので、材料の薄い残留層が、通常、パターン形成した領域の最上部に残り、これは、インプリントされた形状を連結し、プラズマエッチングによって取り除かれてよい(C. Fernandez-Sanchez、Chem. Mater. 2008年、20号、2662~2668頁)。したがって、基板への完全なパターン移送は、ゾル-ゲル前駆体が使用される場合における溶液のレオロジー特性を含む、プロセスパラメータの注意深い制御を必要とする。これは依然として課題のままなので、形状の歪みが、ゾル-ゲル材料に適用される場合、μTM技術によって、典型的に生成される。
【0007】
例えば、X. Zhaoら、Adv. Mater. 1996年、8号、837頁は、μTMを使用する、ゾル-ゲル材料からの分散した微細構造のパターン形成を報告している。SiO2及びZrO2のための前駆体を、モールド中に充填したことが言及されている。次に、モールドを、ウエハー上に適用し、ゲルを、熱板上で加熱することによって形成した。「μTMは、制約を有する。μTMを使用して平坦な表面上に作製された微細構造は、ポリマーの形状の間に薄膜を有し得る。」と結論付けた。したがって、著者らは、酸素反応性イオンエッチング(RIE)によって、この膜を取り除くことを示唆している。しかし、RIEは、低選択性が理由で、パターンの形を改変する可能性が高く、更に、プロセス全体にコストを追加する。
【0008】
μTMのこの制約は、Kang、「Fabrication of ceramic layer-by-layer infrared wavelength photonic band gap crystals」、Iowa State University、2004年、68~75頁によって確認されている。著者は、μTMによってゾル-ゲル材料にパターン形成する実験を報告している。2つの異なる浸透技術を使用して、シリコーンスタンプに、チタンアルコキシド前駆体を浸透させた。
【0009】
第1の変更形態において、浸透工程は、制御された雰囲気のグローブボックス中でのスピンコーティングによって実行され、次に、試料を、低湿度環境において乾燥させ、湿度チェンバー中で更に寝かせて、前駆体のゲル化を完了させた。モールドを、燃焼によって取り除き、ゲルを、同時に硬化させた。著者は、シリコーンスタンプに、1.87~3.73Nの力で圧力をかけて、充填材料を基板上へ移送しなければならなかったと述べている。これは、離型が容易でなかったことを示す。
【0010】
第2の変更形態において、少量の前駆体を、モールドに適用し、次に、平坦なPDMSブロックを、この少量の前駆体に適用して、ゾル-ゲル前駆体をモールドのキャビティ中へ押し入れ、この集合体を、ブロックへの圧力を維持しながら、乾燥させた。次に、ブロックを取り除いた後で、試料を上記の通り燃焼させた。著者は、この浸透技術は、粗い表面をもたらし、チャネルの最上部に残留材料を生成したと述べている。
【0011】
本発明者らは、スピンキャスティングの浸透法が、モールドキャビティの適切な充填をもたらさないことを、実験によって、実際に確認した。
【0012】
最後に、C.R. Martinら、Journal of Electroceramics、2004年、12号、53~68頁は、液体ゾル-ゲル前駆体を使用する、セラミック薄膜のサブミクロンスケールのパターン形成を報告している。この論文はまた、離型が容易でなく、圧力を、モールドにかけるべきであること示唆している。「実行可能な代替方法となる技術のために、ゾル-ゲルの両方に関する加圧条件(...)についてのさらなる研究が、技術が生成する主要な形状の歪みを除去するために必要とされる」と結論付けている。
【0013】
したがって、これらの著者らは、上に記述された通り、μTM技術の制約を確認している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】C. Fernandez-Sanchez、Chem. Mater. 2008年、20号、2662~2668頁
【文献】X. Zhaoら、Adv. Mater. 1996年、8号、837頁
【文献】Kang、「Fabrication of ceramic layer-by-layer infrared wavelength photonic band gap crystals」、Iowa State University、2004年、68~75頁
【文献】C.R. Martinら、Journal of Electroceramics、2004年、12号、53~68頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、ゾル-ゲル材料へ適用されるμTM技術の周知の弱点、つまり、貧弱な移送性質をもたらす、残留層の存在及びゲルの離型の難しさを克服するために、単純な溶液を提供する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、ゾル-ゲル溶液でのスタンプの特定の含浸工程を実施することによって、及びマイクロ成形方法の間に溶媒蒸気圧を調整することによって、上記の必要性を、満足させ得ることを示した。したがって、スタンプキャビティのみに正確に及び完全に充填し、したがって高解像度のパターンを得ることが、可能である。
【0017】
したがって、本発明は、以下の逐次工程を含む方法に対する。
(a)ゾル-ゲル層が10から60体積%の間で蒸気吸収によって膨潤するように調整された相対的溶媒圧の条件下で、第1の基板上にコーティングされたゾル-ゲル層を、少なくとも1つのキャビティを備えたソフトモールドに含浸させて、毛細管力の作用下、モールドに充填する工程、
(b)第1の基板を取り除く工程、
(c)必要に応じて、ゲルを膨潤させて、したがって、前記少なくとも1つのキャビティに全体的に充填するために、0から95%の間の相対的溶媒圧下、モールドのキャビティ内にゲルを平衡化する工程、
(d)膨潤ゲルを第2の基板上へ適用して、パターン形成する工程、
(e)この集合体を熱処理して、ゲルを硬くする工程、
(f)モールドを取り除く工程、及び
(g)ゲルを硬化させてセラミックにし、したがって、パターン基板を形成する工程。
【0018】
本発明はまた、上記の方法によって得ることができるパターン基板、及び光学的、フォトニック、電気的又は生物学的用途のためのデバイスを製造するためのこのパターン基板の使用に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による方法の逐次工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
【0021】
本発明によるナノインプリントリソグラフィー(NIL)方法は、ソフトスタンプ又はモールドを使用する、ソフトNIL法である。
【0022】
このモールドは、マスターテンプレートからネガティブコピーとして、典型的に得られる。最初に、マスターテンプレートそれ自体を、シリコン又はいずれかのその他の好適な材料、例えば、ガラス、金属酸化物、ポリマー、ハイブリッド材料及び複合材料から、作製してよい。マスターテンプレートは、電子ビームリソグラフィー(EBL)、集束イオンビームリソグラフィー(FIB)又はいずれかのその他の好適なパターン形成技術によって、製造されてよい。次に、マスターの表面を処理して、その上に付着防止層を形成してよい。次に、液体モールド材料を、マスターテンプレート中へスピンコーティング又はキャスティングして、パターン層を複写してよい。材料は、通常、低圧真空チェンバー中で脱気される。続いて、バックプレーン(backplane)又は柔軟層を、パターン層に結合してよい。次に、粗さを減少させ、熱収縮が理由の張力の集積を避けるために、熱硬化又はUV硬化を、一般的に実施する。複製されたモールドを、放置して室温まで冷却し、マスターテンプレートから注意深く剥がす。
【0023】
モールドの製造のために使用されてよい材料の例は、ポリシロキサンを有する反応性(例えば、水素化物又はビニル)基を架橋するシリコーンオリゴマーと混合することによって得られ得る、シリコーンエラストマー(架橋ポリシロキサン)である。かかるモールドは、通常、「PDMSモールド」と呼ばれる。ソフトモールドの製造のために使用されてよいその他の材料は、フッ素化ポリマー、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)及びその誘導体、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)とハイパーブランチポリマー(HP)とのコポリマー樹脂であるHPFPE、アクリルオキシPFPE(a-PFPEとして表される)又はa-、w-メタクリルオキシ官能性PFPE(PFPE-DMA)、並びにテトラフルオロエチレン及びその誘導体、例えば、(エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマーである)ETFE及び2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソールとテトラフルオロエチレンとのコポリマーである。その他の好適な材料は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)及びポリエーテルイミド(PEI)から選択されてよい。シリコーンエラストマーは、本発明における使用にとって、好ましい。
【0024】
本発明の方法において、上記のモールドに、金属又はメタロイド酸化物前駆体の溶液から形成されたゾル-ゲル層を含浸させる。
【0025】
表現「金属酸化物前駆体」は、いずれかの金属酸化物前駆体、メタロイド酸化物前駆体又はそれらの組合せのことであり、ゾル-ゲル法において、従来から使用されている。前駆体は、例えば、無機塩、有機塩、又は少なくとも1つの金属若しくはメタロイドの、若しくは少なくとも1つの金属と少なくとも1つのメタロイドとの組合せの、アルコキシドからなる群から選択されてよい。無機塩の例は、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物、特に、塩化物)、酸塩化物及び硝酸塩である。有機塩は、例えば、シュウ酸塩及び酢酸塩から選択されてよいが、一方で、アルコキシドは典型的に、式(RO)nMからなり、式中、Mは金属又はメタロイドを表し、nはMに連結するリガンドの数を表し、Mの原子価に相当し、Rは1から10個の炭素原子又はフェニル基を有する、直鎖状又は分枝状アルキル鎖を表し、式XyR1
zMの有機金属化合物からなり、式中、Mは金属又はメタロイドを表し、Xはハロゲン、アクリレート、アセトキシ、アシル又はOR’基から選択される加水分解性基を表し、式中R’は1から10個の炭素原子又はフェニル基を含む、直鎖状又は分枝状アルキル鎖であり、R1は、1から10個の炭素原子又はフェニル基を含む、場合によって全フッ素置換した直鎖状又は分枝状アルキル基から選択される、非加水分解性基を表し、y及びzは、y+zがMの原子価に等しくなるように選択された整数である。金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム、銅、鉄、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、コペルニシウム、セリウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム及びそれらの混合物から選択されてよく、一方で、好適なメタロイドとしては、例えば、シリコン、セレン及びテルルが挙げられる。シリコン前駆体の例は、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルアミノメチルトリエトキシシラン(PAMS)、トリエトキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びメチルトリイソプロポキシシラン、好ましくは、テトラエトキシシラン(TEOS)であり、チタン前駆体の例は、TiCl4、Ti(OPr)4、Ti(NO3)4、Ti(SO4)2及び酢酸チタンである。金属又はメタロイド前駆体は更に、水和物の形で存在してよい。決められた化学量を有する複合酸化物の形のセラミックを得るために、異なる金属若しくはメタロイドの前駆体又は少なくとも1つの金属と少なくとも1つのメタロイドとの組合せの前駆体を使用してもよい。
【0026】
本発明において使用される溶液を形成するために、前駆体は典型的に、水、一価若しくは二価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はそれらの混合物から選択される溶媒と組み合わされる。無機前駆体及び有機金属前駆体の場合、有機溶媒と組み合わせた水が、一般的に使用される。前者の場合、基板の湿潤性を改善し、前駆体を分散し、加水分解の速度を減少させて架橋を避けるために、エタノールが、溶液中に好ましくは存在する。溶液は、触媒を追加的に含んでよく、その触媒は、塩基性触媒(例えば、NH3)及び酸性触媒、好ましくは、低分子で揮発性の酸(例えば、酢酸又は塩酸)、それらほど好ましくはないが、不揮発性の酸(例えば、硝酸)から選択されてよい。溶液は、例えば、金属又はメタロイド酸化物膜中にメソ細孔を形成すること又は均一性を改善することを意図して、1つ又は複数のポリマー、例えば、両親媒性ブロックコポリマーを、更に含んでよい。溶液はまた、前駆体の加水分解及び重合後に形成された、コロイド性溶液又は「ゾル」を安定させるために、界面活性剤、例えば、陽イオン性界面活性剤を含んでよい。本発明によれば必要ではないが、キレート剤が、溶液中に更に供給されてよい。ゾル-ゲル膜の移動性が、本明細書において提供された方法によれば、十分高く、キレート剤によって調整される必要がないことが、実際に示された。
【0027】
この溶液を、適切な手段によって、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング又はスピンコーティングによって、より詳細には、ディップコーティングによって、第1の基板に塗布して、5nmから数ミクロン、好ましくは20から200nmの厚さを有する層を形成する。ゾル-ゲル層が沈着される基板は、例えば、ガラス、金属又はポリマー基板から選択されてよい。基板として使用されてよいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリカーボネート及びポリエステル(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。膜の厚さは、沈着条件(ディップコーティング離脱率、スピンコーティング回転率)並びに溶液の粘度及び濃度を制御することによって、調整されてよい。
【0028】
第1の基板のコーティングは、均一な層の厚さ、典型的には、10%未満の厚さ変動を得るのに必要な条件下で、実施されてよい。これは、沈着の間に適切な相対的蒸気圧をかけることによって達成できる。TiO2ベースのゾル-ゲル溶液のために、例えば、低い相対的溶媒圧、好ましくは低い相対的水圧、例えば0から70%の間、好ましくは0から40%の間が、使用されてよい。溶媒(水)の相対的蒸気圧は、マスフローコントローラーを用いて、乾燥した空気と選択された溶媒蒸気で飽和された空気の混合物を流すことによって、得られる。乾燥した空気50%及び溶媒蒸気中で飽和された空気50%からなる流れは、50%の相対的溶媒蒸気圧をもたらす。飽和空気は典型的に、溶媒蒸気の液体相中へ乾燥した空気を通気することによって得られる。次に、得られた相対的溶媒蒸気圧を、適切な手段、例えば、センサーによって計測する。
【0029】
この目的のために使用されてよい溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、THF、トルエン及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、溶媒は、水である。
【0030】
ゲルを、金属又はメタロイド酸化物前駆体から形成して、第1の基板上にコーティングされるゲル膜を得る。前記ゲルは、前記前駆体の加水分解及び重合によって形成される。ゾル-ゲル溶液が水を含む場合、又は金属若しくはメタロイド前駆体が水和物の形である場合、加水分解は、自発的に始まり得る。溶液が酸性触媒を含む場合、重合は、遅延し得る。いずれの場合においても、方法のこの段階で基板上に形成される膜又は層は、方法の次の工程において、それと接触させるモールドの陥凹を充填することができるほど十分に柔軟なままであるべきである。ゲル層の柔軟性(流動性)は、チェンバーにおいて溶媒(例えば、水)中の相対的蒸気圧を調整することによって制御される。柔軟なゲル層は、雰囲気の組成と平衡化する傾向にあり、揮発性種を自然に吸収することになる。TiO2、Al2O3、ZrO2及びSiO2にとって、ソフトNIL処理のための理想的な流動性は、層の体積が、この特別な場合において水を吸い上げることによって、30%±10%の倍率で膨潤するように相対的湿度を調整する場合に、得られることが示された。蒸気の種類は、同様の結果を得るために容易に変化させることができる。膨潤のこの最適な度合はまた、その他のゾル-ゲル系に適用し、適用される相対的蒸気圧は、ゾル-ゲルの種類に、より正確には、非硬質である状態の場合、その吸湿性に、依存することが想定される。
【0031】
本発明の方法は、従来のマイクロトランスファー成形方法におけるように、スピンコーティングによってゾル-ゲル層を沈着する代わりに、第1の基板上に沈着されたこのゾル-ゲル層を、上述のソフトモールドに含浸させる工程を含むことを特徴とする。含浸は、数秒から10分の間、好ましくは30秒から2分の間、モールドの開放キャビティがゾル-ゲル層に直面するように、基板上に沈着されたゾル-ゲル層をモールドと単に接触させるだけで、実行されてよい。接触は通常、モールド又は基板に圧力をかけずに実施される。モールドは典型的に、含浸工程の前に、数分間、脱気され、したがって、その多孔度は、ゾル-ゲル膜中へ含有される溶媒を注ぎ込む「スポンジ」として作用するのに十分な空隙があり、一方で、レジストゾル-ゲルは、モールドの隆起の内側に吸引される。したがって、含浸の間、モールドに高圧をかける必要がない。詳細には、本発明の好ましい実施形態によれば、上述の含浸工程の間にモールドにかけられる圧力は、モールドの重量のみの圧力である(すなわち、典型的に、10g/cm2未満)。
【0032】
ゾル-ゲル溶液(キセロゲル)は、スピンコーティング又はいずれかのその他の直接的手段によって塗布される場合、均一に、モールドのキャビティを充填できなかったことが、本発明者らによって示された。これは、希釈ゾル-ゲル溶液によるモールドの直接的な含浸、その後の蒸発が、不均一で制御されない様態で、材料の局所的集積をもたらしたからであった。
【0033】
キャビティの完全な充填を達成するために、この含浸工程は、毛細管力の作用下でモールドに充填するような条件下で、つまり制御された相対的溶媒圧下で、実行されることが重要である。モールドに適用されるゾル-ゲル材料の量は、前の工程で第1の基板上に沈着されたゾル-ゲル層の厚さを変化させることによって、容易に調整できる。したがって、キセロゲルの同量をそれぞれのキャビティに適用することが可能である。
【0034】
層が10から60体積%の間、理想的には15%から45体積%の間で蒸気吸収によって膨潤して、毛細管力の作用下、モールドに最適に充填するように、含浸工程の間、相対的溶媒圧を、調整する。この目的のために使用されてよい溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、THF、トルエン及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、溶媒は水である。
【0035】
本発明による方法の次の工程において、充填されたモールドを、基板から取り除く。次に、キセロゲルを、5秒から10分の間、好ましくは10秒から2分、乾燥させる。その時間の間、キセロゲルが不安定なので、キャビティの外側に残る材料は、表面からディウエットし、周囲のキャビティに充填される。次に、キセロゲルは、毛細管力によって安定したままのキャビティの内側で収縮する。したがって、キャビティの選択的充填が達成され、いかなる残留層もない最終パターンが得られ得る。
【0036】
モールドに含浸させ、続いて、モールドを除去し、ゲルを乾燥させる逐次工程は、充填されるキャビティの深さ次第で、並びに/又はパターンが、異なる金属酸化物の積み重なった層からなるべき場合、数回反復されてよいことが、記述されるべきである。
【0037】
必要に応じて、次に、モールドキャビティ内のゲルは、キャビティから隆起するのに十分な膨潤をさせるために、相対的溶媒圧下、ゲルを、平衡化する。相対的溶媒圧は、それぞれの特定の場合に合わせる必要があり、膨潤の最適な度合を得るために、溶媒が水である場合、0から95%相対的溶媒圧、例えば20から95%、例えば70から95%溶媒圧まで変化できる。これは、本発明の方法の重要な工程であり、その理由は、上に述べられた収縮の前に、ゲルがキャビティに全体的に充填しなかった場合でさえも、ゲルをモールドキャビティに完全に充填するばかりでなく、その後のゲルの適切な離型を保証するからである。キャビティが、前記平衡化の前に、すでに充填されている場合、溶媒からのゲルの膨潤は、必要でない可能性がある。
【0038】
方法の次の工程において、膨潤ゲルを、通常、モールドの構造化表面を第2の基板に単に接触させることによって、パターン形成される第2の基板上に適用する。この基板は、方法の第1の工程において使用された、上に収載されたものから選択されてよい。しかし、第1の基板及び第2の基板は、同一である必要はない。接触は、第2の基板又はモールドにいかなる圧力もかけずに実施される。
【0039】
次に、この集合体を、熱処理して、キセロゲル中に含有される金属酸化物前駆体を、更に重合し、凝縮し、キセロゲルと第2の基板との間の付着を改善し、したがって、いかなるクラックもなく、次の工程のパターンの適切な移送に好都合である。この熱処理の持続時間及び温度は、モールドと比べて第2の基板へ優先的に付着すること及び型から外した後のパターンの崩壊を避けるのに十分硬くなったことを示す、ゲル化された膜を得るために、いずれの好適な範囲にも調整され得る。ゾル-ゲル溶液の成分次第で、処理は例えば、25から200℃の温度で、典型的には、1から20分の間で、好ましくは50から150℃の間、より好ましくは60から120℃の間の温度で実施されてよい。
【0040】
次に、モールドを取り除いて、凝固し始め得るパターン形成したゲルでコーティングされた基板を得て、このゲルを、硬化によって更に密度を高くして、前記第2の基板上にパターン形成した金属又はメタロイド酸化物材料を得る。この硬化(又はアニーリング)工程は、コロイド性溶液中に存在する溶媒、膜によって吸収される溶媒、並びに前駆体によって産生された有機副産物及びゾル-ゲル溶液中に存在し得るポリマーの、完全な除去につながる。この硬化処理の持続時間及び温度は、一定の寸法のパターンを得るように、コロイド性溶液の成分次第で、いずれの好適な範囲にも調整されてよく、例えば、200から800℃、通常、300から500℃である。金属酸化物構造の間にいかなる残留層もないパターン基板が、このようにして得られる。
【0041】
そのようにして得られたパターン基板は、様々な用途、特に、光学的、フォトニック、電気的又は生物学的用途のためのデバイスを製造するために使用されてよい。かかる用途の中では、例えば、光起電力デバイスのための太陽電池、フォトニック結晶ファイバー、光導波路、レーザー発光若しくは光学センサーのためのフォトニック結晶、メンブラン、共振器、タンパク質パターン形成のための微細構造、光学的デバイスのための反射防止コーティング、又は光触媒に言及できる。
【0042】
次に、モールドを、再利用して、その他の基板にインプリントしてよい。必要であれば、モールドは最初に、好適な構造化基板に接触させることによって表面上に残るいずれのキセロゲルもなくてよい。
【0043】
上記の方法を、自動化して、大きな基板領域にインプリントし、複数の異なる表面(例えば、湾曲した、疎水性又は多孔性の表面)上に並べて、異なる形態及び/又は組成を有する様々なパターンを適用してよい。直接又は3Dネットワークを作るためにゾル-ゲル膜中にパターンのそれぞれの層を包埋した後で、異なる組成及び形態を有する様々なパターンを積み重ねることもまた、使用できる。
【0044】
図2に示された通り、本発明の方法は場合によって、ロールツーロールデバイスを用いて連続的に実行されてよく、ゾル-ゲル溶液を、キャビティを有するスタンプ(例えば、PDMSスタンプ)として使用される第2のロールと接触している第1のロール上へ移送する。次に、第2のロールの充填された陥凹を、基板(例えば、プラスチック基板)と接触させる。
【0045】
(実施例)
本発明は、例証の目的のみのために示され、本発明の範囲を限定することを意図しない、以下の実施例に照らして、よりよく理解されることになり、添付の請求項の範囲によって定義される。
【0046】
(実施例1)TiO2ゾル-ゲルからの回折グリッドのマイクロトランスファー成形
マスターを、シリコンウエハー上に、集束イオンビームリソグラフィーによって製造した。
【0047】
次に、マスターが、回折グリッド、すなわち、幅5±0.2μm、長さ5mm及び深さ1200±100nm、距離2±0.2μmを有する、線形のキャビティを、モールド上に付与するように、このマスターのネガティブを、シリコーンエラストマー(PDMS)材料から成形することによって調製した。モールドを調製するために、最初に、マスターを、30分間、0.05MのSiCl2(CH3)2のエタン酸溶液中に浸漬し、次に、溶液から離脱させ、大量のエタノールですすいだ。PDMS前駆体(90重量%のRhodorsil(登録商標)RTV141A、10%のRTV141B)を混合して、次に、マスター上へ注いだ。脱気後、PDMSを、30分間70℃でアニールし、次に、離型した。PDMSモールドを、複製工程の直前に、脱気した。
【0048】
モル比1:40:7:2×10-4のTiCl4:EtOH:H2O:Pluronic(登録商標)F127からなるゾル-ゲル溶液を使用して、膜の厚さ100nm±10nmを得ることを可能にする条件下で、制御チェンバー(T=22℃、RH=20%)におけるディップコーティングによって、脱脂したガラススライド(VWR(登録商標))上にコーティングを得た。ディップコーティング後すぐに、ガラススライドを、制御雰囲気(RH=70%)のチェンバー中へ入れた。ガスの相対的蒸気圧(この場合、相対的湿度)を、正確に制御し、1分間維持して、キセロゲル層を平衡化させ、次に、モールドを、追加の圧力をかけずに膜上へ適用し、制御された湿度(70%RH)下、1分間保って、モールドキャビティに充填した。次に、充填されたモールドを、ガラス基板から取り除き、1分間、異なる制御雰囲気(85%RH)下に置いた。最後に、モールドを、いかなる追加の圧力もかけず、脱脂したガラススライド(VWR(登録商標))上に置いた。この集合体を、乾燥炉中で5分間70℃まで加熱した。冷却後、モールドを、ガラススライドから取り除き、後者上にゾル-ゲル材料を残した。次に、インプリントされたガラススライドを、TiO2を結晶化してアナターゼ型にするために、10分間400℃で熱処理した。
【0049】
ガラススライド上に移送した構造を、電子顕微鏡で分析した。残留層は、観察されなかった。更に、構造は、完全に移送され、数百ミクロンを超える均一なアスペクトを有した。
【0050】
残留層が存在しないことを確認するために、上記の方法を、30%モル比のCaCl2(TiCl4と対照)を含有する同様のゾル-ゲル溶液によりシリコン基板上で反復した。CaTiO3パターンを、このようにして得た。次に、反応性イオンエッチング(RIE)を実施し、構造を、原子間力顕微鏡によって分析した。CaTiO3は、RIEに対して非常に耐性があり、したがって、フォトレジストとして作用する。構造がエッチングに耐えた一方で、エッチングは、パターン構造の間のシリコンにとって既知の速度で行われたので、この実験は、残留層が上記の方法によって生成されなかったことを確認する。
【0051】
(実施例2)ガラス基板上へのTiO2ゾル-ゲルからの正方形構造のマイクロトランスファー成形
マスターを、シリコンウエハー上に集束イオンビームリソグラフィーによって製造した。
【0052】
次に、マスターが、20×20μmの領域上に、それぞれ、一辺の寸法1.5、2及び2.5μm並びに深さ800及び1500nmを有する、正方形ナノ構造のキャビティを、モールド上に付与するように、このマスターのネガティブを、シリコーンエラストマー(PDMS)材料から成形することによって調製した。モールドを調製するために、最初に、マスターを、30分間、0.05MのSiCl2(CH3)2のエタン酸溶液中に浸漬し、次に、溶液から離脱させ、大量のエタノールですすいだ。PDMS前駆体(90重量%のRhodorsil(登録商標)RTV141A、10%のRTV141B)を混合して、次に、マスター上へ注いだ。脱気後、PDMSを、30分間70℃でアニールし、次に、離型した。PDMSモールドを、複製工程の直前に、脱気した。
【0053】
モル比1:40:7:2×10-4のTiCl4:EtOH:H2O:Pluronic(登録商標)F127からなるゾル-ゲル溶液を使用して、膜の厚さ40nm±10nmを得ることを可能にする条件下で、制御チェンバー(T=22℃、RH=20%)におけるディップコーティングによって、脱脂したガラススライド(VWR(登録商標))上にコーティングを得た。ディップコーティング後すぐに、ガラススライドを、制御雰囲気(RH=70%)のチェンバー中へ入れた。ガスの相対的蒸気圧(この場合、相対的湿度)を、正確に制御し、1分間維持して、キセロゲル層を平衡化させ、次に、モールドを、追加の圧力をかけずに膜上へ適用し、制御された湿度(70%RH)下、1分間保って、モールドキャビティに充填した。次に、充填されたモールドを、ガラス基板から取り除き、1分間、異なる制御雰囲気(85%RH)下に置いた。最後に、モールドを、いかなる追加の圧力もかけずに、脱脂したガラススライド(VWR(登録商標))上に置いた。この集合体を、乾燥炉中で5分間70℃まで加熱した。冷却後、モールドを、ガラススライドから取り除き、後者上にゾル-ゲル材料を残した。次に、インプリントされたガラススライドを、TiO2を結晶化してアナターゼ型にするために、10分間400℃で熱処理した。
【0054】
ガラススライド上に移送した構造を、電子顕微鏡で分析した。残留層は、観察されなかった。更に、マスターのパターンは、ソフトNIL法によって通常得られるものと同様の複製された構造のアスペクト比で、正確に複製された。
【0055】
(実施例3)ステンレス鋼上へのTiO2ゾル-ゲルからの正方形構造のマイクロトランスファー成形
実施例2に記載された実験を、ガラスの代わりに基板としてステンレス鋼を使用して再現した。ステンレス鋼上のゾル-ゲル層の形成は、基板の酸化をもたらすゾル-ゲル溶液の酸性度に起因して、通常、不可能であるが、パターンは、この基板上にプリントできた。本発明によれば、この層が基板上へ移送されるとき、ゾル-ゲル材料はすでに部分的に凝縮していて、したがって、ゾル-ゲル溶液中に存在する塩酸のほとんどが蒸発してしまったので、これが達成できると推測される。したがって、基板のいずれの種類も、本発明により成功裏にプリントできる。
【0056】
(実施例4)大きい基板上へのTiO2ゾル-ゲルからの正方形構造のマイクロトランスファー成形
実施例2に記載された方法を、大きい基板上に同一のモールドによって実行した。モールドをいかなる中間処理もしないで、同一のモールドを基板に接触させることによって、パターンを、数回、反復した。並んだ構造を形成し、縮小した寸法の単一のモールドを使用して大きい基板に、そのようにしてプリントすることが可能であることが示された。
【0057】
さらに、それぞれのプリント工程は、最適化された場合、2分未満を必要とし得る。1cm2のモールドを使用して、3.5時間以内に100cm2を移送することが可能であり得る。モールドは、マスターとして、その後使用できる。異なる構造のいくつかのスタンプ及びゾル-ゲル前駆体のいくつかの供給源によって、この方法を実行する場合、異なる組成及び形態のいくつかの構造を、積み重ねる及び/又は並べて置くことができる。