(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20230217BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20230217BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230217BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230217BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230217BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20230217BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B01D46/00 302
B01D39/20 D ZAB
B01D53/86 222
B01D53/86 241
B01D53/86 245
B01D53/86 280
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 243
B01D53/94 280
B01J35/04 301C
B01J35/04 301E
F01N3/022 C
F01N3/035 A
(21)【出願番号】P 2020034885
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】仙藤 皓一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 悠
(72)【発明者】
【氏名】植田 修司
(72)【発明者】
【氏名】永井 隼悟
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/102487(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046242(WO,A1)
【文献】特開2019-118857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027837(WO,A1)
【文献】特開2004-360654(JP,A)
【文献】特開2020-006359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B01D 46/00 - 46/90
B01D 53/73 - 53/96
B01J 21/00 - 38/74
C04B 38/00 - 38/10
F01N 3/00 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
それぞれの前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側の開口部に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁が、コージェライトを主成分として含む材料から構成され、
前記隔壁の平均細孔径が、20~30μmであり、
前記隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の平均円相当径が、18~
28.3μmであり、
前記隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の単位面積当たりの個数が、400個/mm
2以上である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記隔壁の気孔率が、60~70%である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁の厚さが、152~305μmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁に、排ガス浄化用の触媒が担持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、排ガス浄化用の触媒を担持して使用することにより、捕集効率を有効に向上させ、且つ、圧力損失の上昇を抑制することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている。ハニカム構造体は、コージェライトなどによって構成された多孔質の隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、例えば、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。ハニカムフィルタにおいては、多孔質の隔壁が、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタの役目を果たしている。
【0003】
ハニカム構造体は、セラミックスの原料粉体に造孔材やバインダ等を加えて可塑性の坏土を調製し、得られた坏土を所定の形状に成形して成形体を得、得られた成形体を焼成することにより製造することができる(例えば、特許文献1及び2参照)。セラミックスの原料粉体としては、コージェライト化原料等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-326879号公報
【文献】特開2003-238271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のハニカムフィルタの製造方法では、ハニカム構造体を作製する際に、コージェライト化原料の粒度を制御せず、発泡樹脂等の中空の樹脂粒子や架橋処理澱粉等の水膨潤粒子を造孔材に用いる方法が試みられている。しかしながら、このような従来の製造方法では、現在の排ガス規制に満足するハニカムフィルタの作製は不可能であった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、排ガス浄化用の触媒を担持して使用することにより、捕集効率を有効に向上させ、且つ、圧力損失の上昇を抑制することが可能なハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0008】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
それぞれの前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側の開口部に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁が、コージェライトを主成分として含む材料から構成され、
前記隔壁の平均細孔径が、20~30μmであり、
前記隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の平均円相当径が、18~28.3μmであり、
前記隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の単位面積当たりの個数が、400個/mm2以上である、ハニカムフィルタ。
【0009】
[2] 前記隔壁の気孔率が、60~70%である、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0010】
[3] 前記隔壁の厚さが、152~305μmである、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0011】
[4] 前記隔壁に、排ガス浄化用の触媒が担持されている、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス浄化用の触媒を担持して使用することにより、捕集効率を有効に向上させ、且つ、圧力損失の上昇を抑制することができるという効果を奏するものである。即ち、本発明のハニカムフィルタは、排ガス浄化用の触媒の担持において、触媒の塗工性の向上・改善を図ることができる。このため、排ガス浄化用の触媒を担持することにより、捕集効率が有効に向上され、且つ、圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。
【
図3】
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0015】
(1)ハニカムフィルタ:
図1~
図3に示すように、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態は、ハニカム構造部4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ100である。ハニカム構造部4は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。ハニカムフィルタ100において、ハニカム構造部4は、柱状を呈し、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。目封止部5は、それぞれのセル2の第一端面11側又は第二端面12側の開口部に配設されている。
【0016】
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。
図3は、
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0017】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造部4を構成する隔壁1が、以下のように構成されている。まず、隔壁1が、コージェライトを主成分として含む材料から構成されている。隔壁1は、不可避的に含有される成分を除いてコージェライトからなることが好ましい。
【0018】
ハニカムフィルタ100において、ハニカム構造部4を構成する隔壁1の平均細孔径は、20~30μmである。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径は、例えば、Micromeritics社製のAutoporeIV(商品名)を用いて測定することができる。隔壁1の平均細孔径が20μm未満であると、触媒コート後の圧力損失増加の点で好ましくない。また、隔壁1の平均細孔径が30μmを超えると、触媒コート後の捕集効率低下の点で好ましくない。隔壁1の平均細孔径は、20~30μmであるが、例えば、22~28μmであることが好ましい。本明細書において、「触媒コート」とは、ハニカムフィルタ100に、排ガス浄化用などの各種の触媒を担持することを意味する。
【0019】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁1は、隔壁1の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔において、当該細孔の円相当径(μm)の平均値が、18~28.3μmである。以下、「円相当径(μm)の平均値」を「平均円相当径(μm)」という。そして、「隔壁1の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の平均円相当径(μm)」を、単に、「隔壁1表面の細孔の平均円相当径(μm)」ということがある。隔壁1表面の細孔の平均円相当径が18μm未満であると、触媒コート後の圧力損失増加の点で好ましくない。また、隔壁1表面の細孔の平均円相当径が30μmを超えると、触媒コート後の捕集効率低下の点で好ましくない。隔壁1表面の細孔の平均円相当径は、18~28.3μmであるが、例えば、18~28μmであることが好ましい。
【0020】
ハニカム構造部4を構成する隔壁1は、隔壁1の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の単位面積当たり(具体的には、1mm2当たり)の個数が、400個/mm2以上である。以下、「隔壁1の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の1mm2当たり個数」のことを、隔壁1表面の「細孔数(個/mm2)」ということがある。隔壁1表面の細孔数が、400個/mm2未満であると、排ガス浄化用の触媒を担持した際に、捕集効率の向上と圧力損失の上昇抑制の両立を図ることが困難となる。隔壁1表面の細孔数の上限値については特に制限はないが、例えば、1000個/mm2以下であることが好ましい。したがって、隔壁1表面の細孔数は、400~10000個/mm2であることが好ましく、400~5000個/mm2であることが更に好ましい。
【0021】
隔壁1表面の細孔の平均円相当径(μm)、及び隔壁1表面の細孔数(個/mm2)は、以下の方法によって測定することができる。まず、ハニカム構造部4の隔壁1表面が観察できるように、ハニカム構造部4から測定用の試料を切り出す。そして、測定用の試料の隔壁1表面を、レーザ顕微鏡で撮影する。レーザ顕微鏡は、例えば、キーエンス社製の「VK X250/260(商品名)」の形状解析レーザ顕微鏡を用いることができる。隔壁1表面の撮影において、倍率は240倍とし、10視野の任意の箇所を撮影する。撮影した画像の画像処理を行い、隔壁1表面の細孔数を算出する。なお、画像処理は、当該画像処理を行う領域中に、隔壁1表面以外の隔壁1部位を含まないよう領域を選択し、隔壁1表面の傾きを水平に修正する。その後、細孔と認識する高さの上限を基準面より-3.0μmに変更する。円相当径が3.0μm以下の細孔を無視する条件にて、撮影画像の細孔数を画像処理ソフトにて算出する。隔壁1表面の細孔の円相当径(μm)は、各細孔の開口面積Sをそれぞれ計測し、計測した面積Sに対して、円相当径=√{4×(面積S)/π}にて算出することができる。隔壁1表面の細孔数(個/mm2)の値は、10視野の測定結果の平均値とする。画像処理ソフトとしては、例えば、キーエンス社製の「VK X250/260(商品名)」の形状解析レーザ顕微鏡に付属の「VK-X(商品名)」を用いることができる。また、隔壁1表面の細孔の平均円相当径(μm)は、以下のようにして求めることができる。まず、画像処理を行った撮影画像において、上述したようにして、隔壁1表面の各細孔の開口面積Sから、各細孔の円相当径(μm)を算出する。そして、円相当径が3.0μm超の細孔について、その円相当径(μm)の算術平均値(相加平均値)を算出し、算出した値を、隔壁1表面の細孔の平均円相当径(μm)とする。各細孔の円相当径の測定、及びの所定の円相当径の細孔を無視した画像解析は、上記した画像処理ソフトにて行うことができる。
【0022】
ハニカムフィルタ100は、隔壁1の厚さが152~305μmであることが好ましく、203~254μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さが152μm未満であると、強度の点で好ましくない。隔壁1の厚さが305μmを超えると、圧力損失の点で好ましくない。
【0023】
ハニカム構造部4のセル密度は、例えば、23~62個/cm2であることが好ましく、27~47個/cm2であることが更に好ましい。
【0024】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、例えば、50~70%であることが好ましく、55~70%であることが更に好ましく、60~70%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値であり、例えば、Micromeritics社製のAutoporeIV(商品名)を用いて測定することができる。気孔率の測定に際しては、ハニカムフィルタ100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、得られた試験片を用いて行うことができる。
【0025】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0026】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0027】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、第一端面11(例えば、流入端面)及び第二端面12(例えば、流出端面)の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0028】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0029】
ハニカムフィルタ100においては、所定のセル2の第一端面11側の開口部、及び残余のセル2の第二端面12側の開口部に、目封止部5が配設されている。ここで、第一端面11を流入端面とし、第二端面12を流出端面とした場合に、流出端面側の開口部に目封止部5が配設され、流入端面側が開口したセル2を、流入セル2aとする。また、流入端面側の開口部に目封止部5が配設され、流出端面側が開口したセル2を、流出セル2bとする。流入セル2aと流出セル2bとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカムフィルタ100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0030】
目封止部5の材質は、隔壁1の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部5の材質と隔壁1の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0031】
ハニカムフィルタ100は、複数のセル2を区画形成する隔壁1に排ガス浄化用の触媒が担持されていることが好ましい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100は、排ガス浄化用の触媒の担持において、触媒の塗工性の向上・改善を図ることができる。このため、排ガス浄化用の触媒を担持することにより、捕集効率が有効に向上され、且つ、圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。
【0032】
隔壁1に担持する触媒については特に制限はない。例えば、このような触媒として、白金族元素を含有する触媒であって、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒を挙げることができる。触媒の担持量は、100~150g/Lであることが好ましく、100~130g/Lであることが更に好ましい。なお、本明細書における、触媒の担持量(g/L)は、ハニカムフィルタの単位容積(L)当たりに担持される触媒の量(g)を示す。
【0033】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
本実施形態のハニカムフィルタの製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような、坏土調製工程と、成形工程と、焼成工程と、を備えた製造方法を挙げることができる。
【0034】
坏土調製工程は、コージェライト化原料に有機造孔材及び分散媒を加えて可塑性の坏土を調製する工程である。成形工程は、坏土調製工程によって得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製する工程である。焼成工程は、成形工程によって得られたハニカム成形体を焼成してハニカムフィルタを得る工程である。以下、ハニカムフィルタの製造方法における各工程について更に詳細に説明する。
【0035】
(2-1)坏土調製工程:
坏土調製工程では、まず、坏土の原料となる、コージェライト化原料、有機造孔材及び分散媒を用意する。ここで、「コージェライト化原料」とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0036】
坏土調製工程では、コージェライト化原料として、多孔質シリカ及び溶融シリカのうちの少なくとも一方を含むものを用いることが好ましい。多孔質シリカ及び溶融シリカは、コージェライト化原料において、シリカ組成となるシリコン源であるとともに、無機造孔材としても機能する。多孔質シリカは、例えば、JIS-R1626に準拠して測定されたBET比表面積が、100~500m2/gであるものが好ましく、200~400m2/gであるものが更に好ましい。
【0037】
コージェライト化原料は、上述した多孔質シリカ及び溶融シリカのうちの少なくとも一方以外に、コージェライトの化学組成となるように、マグネシウム源、シリコン源、及びアルミニウム源となる原料を複数種混合して用いることができる。例えば、コージェライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト(Boehmite)、結晶性シリカ、ディッカイト(Dickite)等を挙げることができる。
【0038】
坏土調製工程では、コージェライト化原料として、その粒度が以下のように調整されたものを用いる。ここで、コージェライト化原料の体積基準の累積粒度分布において、小径側から全体積の10体積%の粒子径をD(a)10とし、全体積の50体積%の粒子径をD(a)50とし、全体積の90体積%の粒子径をD(a)90とする。D(a)10、D(a)50、D(a)90のそれぞれの単位は「μm」である。コージェライト化原料の累積粒度分布は、レーザ回析散乱式粒度分布測定法によって測定した値とする。坏土調製工程では、コージェライト化原料として、下記式(1)の関係を満たすものを用いることが好ましい。
【0039】
式(1):D(a)50/(D(a)90-D(a)10)≧0.30
式(2):|log10D(a)50-log10D(b)50|≦0.60
【0040】
また、坏土調製工程では、有機造孔材として、その粒度が以下のように調整されたものを用いることが好ましい。ここで、有機造孔材の体積基準の累積粒度分布において、小径側から全体積の50体積%の粒子径をD(b)50とする。D(b)50の単位は「μm」である。有機造孔材の累積粒度分布も、レーザ回析散乱式粒度分布測定法によって測定した値とする。坏土調製工程では、有機造孔材として、そのD(b)50が40μm以下のものを用いることが好ましい。また、坏土調製工程では、コージェライト化原料及び有機造孔材として、上記式(2)の関係を満たすものを用いることが好ましい。なお、式(2)において、「log10D(a)50」及び「log10D(b)50」は、10を底とする対数である。式(2)の左辺は、「log10D(a)50」と「log10D(b)50」の差の絶対値を示している。以下、特に断りのない限り、坏土調製工程に用いられる原料の粒子径の単位は「μm」とする。また、原料として用いられる各種原料において、単に「D50」という場合は、その原料の累積粒度分布において、小径側から全体積の50体積%の粒子径(μm)を意味する。即ち、「D50」はメジアン径を意味する。
【0041】
これまでに説明したようなコージェライト化原料及び有機造孔材を用いて調製された坏土を使用してハニカムフィルタを製造することにより、本実施形態のハニカムフィルタを良好に製造することができる。
【0042】
有機造孔材は、炭素を原料として含む造孔材であり、後述する焼成工程において、焼成より飛散消失する性質のものであればよい。有機造孔材は、上記式(2)の関係を満たすような粒度のものであれば、その材質については特に制限はなく、例えば、吸水性ポリマー、澱粉、発泡樹脂等の高分子化合物、ポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)、コークス(骸炭)等を挙げることができる。なお、有機造孔材は、有機物を主原料とした造孔材だけでなく、木炭、石炭、コークスのような焼成より飛散消失する造孔材を含む。
【0043】
コージェライト化原料の粒度は、コージェライト化原料として使用する各原料の累積粒度分布を個々に測定し、各原料の累積粒度分布の測定結果を用いて、それぞれの原料の調合割合から加重平均することで求めることができる。即ち、コージェライト化原料が、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、多孔質シリカからなる場合には、まず、それぞれの原料について、D(a)10、D(a)50及びD(a)90を測定する。そして、それぞれの原料の調合割合から加重平均することで、コージェライト化原料としてのD(a)10、D(a)50及びD(a)90を求めることができる。各原料の累積粒度分布は、レーザ回折/散乱法による測定値とする。例えば、各原料の累積粒度分布は、HORIBA社製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(商品名:LA-960)を用いて測定することができる。
【0044】
有機造孔材の粒度についても、上述した測定装置を用いて測定することができる。有機造孔材が1種類の場合は、測定した累積粒度分布からD(b)50を求めることができる。有機造孔材が2種類以上からなる場合には、コージェライト化原料と同様の方法で、その調合割合から加重平均することでD(b)50を求めることができる。
【0045】
コージェライト化原料の具体的なD(a)50については特に制限はないが、例えば、1~50μmであることが好ましく、3~30μmであることが更に好ましく、3~26μmであることが特に好ましい。コージェライト化原料のD(a)50が上記数値範囲であると、捕集効率向上の点に利点がある。
【0046】
式(1)における左辺の「D(a)50/(D(a)90-D(a)10)」の理論的な上限値は、1.00未満である。式(1)における左辺の実質的な上限値としては、例えば、0.90であることが好ましく、0.80であることが更に好ましい。
【0047】
式(2)における左辺の「|log10D(a)50-log10D(b)50|」の下限値については特に制限はない。「log10D(a)50」と「log10D(b)50」が同一の値を示す場合、式(2)における左辺の値は「0」となる。
【0048】
多孔質シリカ及び溶融シリカの粒子径については特に制限はない。多孔質シリカ及び溶融シリカのレーザ回析散乱式粒度分布測定法による体積基準の累積粒度分布において、小径側から全体積の50体積%の粒子径(μm)をD(c)50とした際に、多孔質シリカ及び溶融シリカのD(c)50は、1~50μmであることが好ましく、3~30μmであることが更に好ましい。
【0049】
コージェライト化原料は、当該コージェライト化原料100質量部中に、これまでに説明した無機造孔材としての多孔質シリカ及び溶融シリカの少なくとも一方を5~17質量部含むことが好ましく、8~15質量部含むことが更に好ましい。無機造孔材の含有比率が5質量部未満であると、造孔の効果が発現し難くなることがあり好ましくない。無機造孔材の含有比率が17質量部を超えると、コージェライトの熱膨張係数が増加し耐熱衝撃性の点で好ましくない。
【0050】
有機造孔材の添加量については特に制限はなく、作製するハニカムフィルタにおける隔壁の気孔率等に応じて適宜決定することができる。例えば、有機造孔材の添加量については、コージェライト化原料100質量部に対して、0.5~5質量部であることが好ましく、1~4質量部であることが更に好ましい。
【0051】
坏土調製工程においては、これまでに説明したように粒度が調整されたコージェライト化原料及び有機造孔材に、分散媒を加え、混合、混練して可塑性の坏土を調製する。分散媒としては、例えば、水を挙げることができる。また、坏土を調製する際には、更に、バインダ、界面活性剤等を加えてもよい。
【0052】
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤としては、例えば、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
コージェライト化原料等を混合、混練して坏土を調製する方法について特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等で混合、混練する方法を挙げることができる。
【0054】
(2-2)成形工程:
成形工程では、坏土調製工程にて得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製する。坏土をハニカム形状に成形する成形方法については特に制限はないが、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形方法を挙げることができる。中でも、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度に対応した口金を用いて押出成形する方法を好適例として挙げることができる。
【0055】
成形工程によって得られるハニカム成形体は、第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配置された隔壁を有する柱状の成形体である。ハニカム成形体は、焼成することにより、
図1~
図3に示すハニカムフィルタ100におけるハニカム構造部4となる。
【0056】
得られたハニカム成形体を乾燥させて、当該ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を得てもよい。乾燥方法については特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0057】
成形工程においては、ハニカム成形体のセルの開口部を目封止することで目封止部を形成することが好ましい。目封止部の形成は、従来公知のハニカムフィルタの製造方法に準じて行うことができる。例えば、目封止部を形成する方法としては、以下のような方法を挙げることができる。まず、セラミック原料に、水及びバインダ等を加えてスラリー状の目封止材を調製する。セラミック原料は、例えば、ハニカム成形体の作製に用いたコージェライト化原料等を用いることができる。次に、ハニカム成形体の第一端面側から、所定のセルの開口部に目封止材を充填する。所定のセルの開口部に目封止材を充填する際には、例えば、ハニカム成形体の第一端面に、所定のセル以外の残余のセルの開口部を塞ぐようにマスクを施し、所定のセルの開口部に目封止材を選択的に充填することが好ましい。この際、スラリー状の目封止材を貯留容器に貯留し、マスクを施したハニカム成形体の第一端面側を貯留容器中に浸漬して、目封止材を充填してもよい。次に、ハニカム成形体の第二端面側から、所定のセル以外の残余のセルの開口部に目封止材を充填する。目封止材を充填する方法は、上述した所定のセルの場合と同様の方法を用いることができる。目封止部の形成は、ハニカム成形体を乾燥させる前に行ってもよいし、乾燥させた後に行ってもよい。
【0058】
(2-3)焼成工程:
焼成工程は、成形工程によって得られたハニカム成形体を焼成してハニカムフィルタを得る工程である。ハニカム成形体を焼成する際の焼成雰囲気の温度は、例えば、1300~1450℃が好ましく、1400~1450℃が更に好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として2~8時間程度とすることが好ましい。
【0059】
ハニカム成形体を焼成する具体的な方法については特に制限はなく、従来公知のハニカムフィルタの製造方法における焼成方法を適用することができる。例えば、焼成経路の一端及び他端に投入口及び排出口がそれぞれ設けられた、既設の連続焼成炉(例えば、トンネルキルン等)や、バッチ焼成炉(例えば、シャトルキルン等)を用いて実施することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
コージェライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及び多孔質シリカを用意した。そして、各原料の累積粒度分布を、HORIBA社製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(商品名:LA-960)を用いて測定した。実施例1においては、各原料の配合比率(質量部)が表1に示す値となるように、各原料を配合してコージェライト化原料を調製した。表1において、「粒度D50(μm)」の横方向の行は、各原料の50体積%の粒子径(即ち、メジアン径)を示している。多孔質シリカは、JIS-R1626に準拠して測定されたBET比表面積が、200~400m2/gのものを用いた。
【0062】
次に、コージェライト化原料100質量部に対して、有機造孔材として吸水性ポリマーを3.5質量部、バインダを6.0質量部、界面活性剤を1質量部、水を86質量部加えて坏土を調製した。吸水性ポリマーは、50体積%の粒子径が25μmのものを用いた。表2に、有機造孔材及びその他原料の配合比率(質量部)を示す。表2において、「粒度D50(μm)」の横方向の行は、有機造孔材の50体積%の粒子径(即ち、メジアン径)を示している。また、表2に示す配合比率(質量部)は、コージェライト化原料100質量部に対する比率を示している。
【0063】
【0064】
【0065】
次に、得られた坏土を、連続押出成形機を用いて成形して、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、ハニカム成形体の第一端面に、所定のセル以外の残余のセルの開口部を塞ぐようにマスクを施した。次に、マスクの施された端部(第一端面側の端部)をスラリー状の目封止材に浸漬し、マスクが施されていない所定のセルの開口部に目封止材を充填した。その後、ハニカム成形体の第二端面に、所定のセルの開口部を塞ぐようにマスクを施し、上記した方法と同様にして、所定のセル以外の残余のセルの開口部に目封止材を充填した。
【0066】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を、最高温度が1420℃となるように焼成して、実施例1のハニカムフィルタを製造した。
【0067】
実施例1のハニカムフィルタは、端面の直径が132mmであり、セルの延びる方向の長さが102mmであった。セルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状は、四角形であった。ハニカムフィルタの隔壁厚さは0.25mmであり、セル密度は46.5個/cm2であった。表3に、ハニカムフィルタの隔壁厚さ(mm)及びセル密度(個/cm2)を示す。
【0068】
【0069】
実施例1のハニカムフィルタについて、隔壁の気孔率及び平均細孔径を測定した。結果を、表3に示す。気孔率及び平均細孔径の測定は、Micromeritics社製のAutoporeIV(商品名)を用いて行った。ハニカムフィルタから隔壁の一部を切り出して試験片とし、得られた試験片を用いて気孔率の測定を行った。試験片は、縦、横、高さのそれぞれの長さが、約10mm、約10mm、約20mmの直方体のものとした。試験片の採取箇所については、ハニカム構造部の軸方向の中心付近とした。気孔率及び平均細孔径を求める際に、コージェライトの真密度を2.52g/cm3とした。
【0070】
実施例1のハニカムフィルタについて、隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の1mm2当たりの個数、及び隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の平均円相当径(μm)を測定した。測定方法は、以下の通りである。まず、実施例1のハニカムフィルタのハニカム構造部の隔壁表面が観察できるように、ハニカム構造部から測定用の試料を切り出した。そして、測定用の試料の隔壁表面を、レーザ顕微鏡で撮影した。レーザ顕微鏡は、キーエンス社製の「VK X250/260(商品名)」の形状解析レーザ顕微鏡を用いた。隔壁表面の撮影において、倍率は240倍とし、10視野の任意の箇所を撮影した。撮影した画像の画像処理を行い、隔壁表面の細孔数及び表面開気孔率を算出した。画像処理は、隔壁表面以外の隔壁部位を含まないよう領域を選択し、隔壁表面の傾きを水平に修正した。その後、細孔と認識する高さの上限を基準面より-3.0μmに変更し、円相当径が3.0μm以下の細孔を無視する条件にて、撮影画像の細孔数及び表面開気孔率を画像処理ソフトにて算出した。隔壁表面の細孔の円相当径(μm)は、各細孔の開口面積Sをそれぞれ計測し、計測した面積Sに対して、円相当径=√{4×(面積S)/π}にて算出した。隔壁表面の細孔数(個/mm2)及び隔壁表面の開気孔率(%)の値は、10視野の測定結果の平均値とした。画像処理ソフトは、キーエンス社製の「VK X250/260(商品名)」の形状解析レーザ顕微鏡に付属の「VK-X(商品名)」を用いた。隔壁表面の細孔の平均円相当径(μm)は、以下のようにして求めた。まず、画像処理を行った撮影画像において、上述したようにして、隔壁表面の各細孔の開口面積Sから、各細孔の円相当径(μm)を算出した。そして、円相当径が3.0μm超の細孔について、その円相当径(μm)の算術平均値(相加平均値)を算出し、算出した値を、隔壁表面の細孔の平均円相当径(μm)とした。結果を表3に示す。表3において、「細孔数(個/mm2)」の欄は、隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の1mm2当たりの個数を示す。また、「平均円相当径(μm)」の欄は、隔壁の表面に存在する円相当径3.0μm超の細孔の平均円相当径(μm)を示す。
【0071】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、捕集効率、及び圧力損失の評価を行った。なお、捕集効率、圧力損失の各評価においては、評価を行う各ハニカムフィルタに対して、以下の方法によって白金族元素含有触媒を担持し、触媒担持前後においてそれぞれ測定を行った。表4において、「触媒担持前」の欄は、触媒を担持する前のハニカムフィルタにおける評価結果であり、「触媒担持後」の欄は、触媒を担持する後のハニカムフィルタにおける評価結果である。各結果を、表4に示す。
【0072】
(触媒の担持方法)
まず、平均粒子径30μmの酸化アルミニウムを含む触媒スラリーを調製した。そして、調製した触媒スラリーを用いて、ハニカムフィルタに触媒を担持した。具体的には、触媒の担持は、ハニカムフィルタをディッピング(Dipping)することによって行い、その後、余分な触媒スラリーを空気にて吹き飛ばすことによって、ハニカムフィルタの隔壁に所定量の触媒を担持した。その後、触媒を担持したハニカムフィルタを100℃の温度で乾燥し、更に500℃、2時間の熱処理を行うことにより、触媒付きハニカムフィルタを得た。実施例1のハニカムフィルタに担持した触媒の担持量は、100g/Lであった。
【0073】
(捕集効率)
まず、各実施例及び比較例のハニカムフィルタ(又は触媒付きハニカムフィルタ)を排ガス浄化用フィルタとした排ガス浄化装置を作製した。次に、作製した排ガス浄化装置を、1.2L直噴ガソリンエンジン車両のエンジン排気マニホルドの出口側に接続して、排ガス浄化装置の流出口から排出されるガスに含まれる煤の個数を、PN測定方法によって測定した。走行モードに関しては、RDE走行のワーストを模擬した走行モード(RTS95)を実施した。モード走行後に排出された煤の個数の累計を、判定対象となる排ガス浄化装置の煤の個数とし、その煤の個数から捕集効率(%)を算出した。また、表4の「捕集効率比」の欄に、比較例1の触媒付きハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値を100%とした場合における、各実施例及び比較例の触媒付きハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の捕集効率の値(%)を示す。捕集効率評価においては、下記評価基準に基づき、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの評価を行った。
評価「優」:捕集効率比(%)の値が、110%を超える場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:捕集効率比(%)の値が、105%を超え、110%以下である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:捕集効率比(%)の値が、100%を超え、105%以下である場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」:捕集効率比(%)の値が、100%以下の場合、その評価を「不可」とする。
【0074】
(圧力損失)
1.2L直噴ガソリンエンジンから排出される排ガスを700℃、600m3/hの流量で流入させて、ハニカムフィルタ(又は触媒付きハニカムフィルタ)の流入端面側と流出端面側との圧力を測定した。そして、流入端面側と流出端面側との圧力差を算出することにより、ハニカムフィルタの圧力損失(kPa)を求めた。表4の「圧力損失比」の欄に、比較例1の触媒付きハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合における、各実施例及び比較例の触媒付きハニカムフィルタを圧力損失の値(%)を示す。圧力損失評価においては、下記評価基準に基づき、各実施例のハニカムフィルタの評価を行った。
評価「優」:圧力損失比(%)の値が、90%以下である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:圧力損失比(%)の値が、90%を超え、95%以下である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:圧力損失比(%)の値が、95%を超え、100%以下である場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」:圧力損失比(%)の値が、100%を超える場合、その評価を「不可」とする。
【0075】
【0076】
(実施例2~4)
実施例2~4においては、コージェライト化原料に用いる各原料の配合比率(質量部)を表1に示すように変更した。また、有機造孔材及びその他原料の配合比率(質量部)についても表2に示すように変更した。このような原料を用いて坏土を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。
【0077】
(比較例1~3)
比較例1~3においては、コージェライト化原料に用いる各原料の配合比率(質量部)を表1に示すように変更した。また、有機造孔材及びその他原料の配合比率(質量部)についても表2に示すように変更した。このような原料を用いて坏土を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。比較例1においては、有機造孔材としての吸水性ポリマーに加えて、粒度D50が45μmの発泡樹脂を造孔材として用いた。表2において、「有機造孔材」の欄に、造孔材としての発泡樹脂の配合比率(質量部)を示す。
【0078】
実施例2~4及び比較例1~3のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、捕集効率、及び圧力損失の評価を行った。各結果を、表4に示す。
【0079】
(結果)
実施例1~4のハニカムフィルタは、捕集効率、及び圧力損失の評価結果が、比較例1,2のハニカムフィルタよりも優れたものであった。また、比較例3のハニカムフィルタは、捕集効率の評価結果が優れていたものの、圧力損失の評価結果が著しく悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:目封止部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカムフィルタ。