(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】センサ素子、ガスセンサ及びガスセンサユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20230217BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/419 327K
(21)【出願番号】P 2020125870
(22)【出願日】2020-07-23
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019171199
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】古田 斉
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健太郎
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158866(JP,A)
【文献】特開2017-150933(JP,A)
【文献】特開2017-20838(JP,A)
【文献】特開2014-122878(JP,A)
【文献】特開2019-70551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/419
G01N 27/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定室と、
固体電解質体と、前記固体電解質体の表面に形成されて前記測定室に曝される内側電極と、前記固体電解質体の表面に形成されて前記測定室の外部に配置される外側電極と、を有し、前記測定室内に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し及び汲み入れを行うことで前記測定室内の酸素濃度を調整するポンプセルと、
前記測定室内の前記被測定ガス中の酸素濃度に応じた電圧を発生させる基準セルと、を有するセンサ素子であって、
前記内側電極及び前記外側電極のうち少なくとも一方の電極は、貴金属と前記固体電解質体の成分とを含有してなり、かつ厚み方向に沿って断面を観察した場合に、前記貴金属からなる貴金属領域と、前記固体電解質体の成分からなる固体電解質体領域と、前記貴金属と前記固体電解質体の成分とが共存してなる共存領域とを有し、
前記少なくとも一方の電極の前記断面において、{前記共存領域/(前記貴金属領域+前記固体電解質体領域+前記共存領域)}で表される前記共存領域の面積割合SRが15.5%以上、30%未満であることを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
前記酸素濃度を調整後の前記被測定ガス中の窒素酸化物の濃度を測定するためのNOx検知セルをさらに有し、
前記少なくとも一方の電極は、少なくとも前記内側電極を含み、
前記内側電極の前記断面における前記共存領域の面積割合SRが15.5%以上、30%未満であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記共存領域の面積割合SRが16%以上、27%以下である請求項1又は2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、を備えてなるガスセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のガスセンサと、
前記ガスセンサに接続されるガスセンサ制御部と、を備え、
前記ガスセンサ制御部は、前記基準セルの電位が一定になるよう、前記ポンプセルに流れる電流をフィードバック制御することを特徴とするガスセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子、ガスセンサ及びガスセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスの規制強化に伴い、排ガス中の窒素酸化物(NOx)量の低減が要求されている。そこで、近年、排ガス中のNOx濃度を直接測定できるNOxセンサの開発が進んでいる。NOxセンサは、ジルコニア等の酸素イオン伝導性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなるポンプセル及びNOx濃度の検知セルを有するNOxセンサ素子を備えている。
【0003】
NOxセンサは、NOxを含む被測定ガス空間に連通する測定室内の酸素をポンプセルによって汲み出し又は汲み入れる。このとき、測定室内が所定の酸素濃度となるようにポンプセルを制御する。さらに、酸素濃度が制御(調整)された被測定ガスのNOx濃度が検知セルで検出される。
上記構成のNOxセンサは、電極を固体電解質体に設けただけでは、NOxセンサ素子(検出素子)の電極が十分に活性せず、十分なセンサ特性が得られない。
そこで、ポンプセルの一対の電極間に電圧を印加し、エージング処理を施して酸素分解活性を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術においては、電極の厚み方向に沿う断面にて、電極に含まれる貴金属と、固体電解質体の成分を含む混在領域の割合を30%以上にすることで、酸素分解活性が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、混在領域は結合性に劣るため、混在領域が多すぎると、電極が固体電解質体から剥離し易くなるという問題がある。又、基準セルの電位が一定になるよう、ポンプセルに流れる電流をフィードバック制御する場合、混在領域を含むポンプセルの電極と、基準セルの電極との応答性の差が大きくなり、発振の原因にもなり得る。
一方、混在領域が少なすぎると、電極の内部抵抗が低温時に上昇し、ポンプセルの電圧(Vp1)が高くなって排ガス中の測定対象成分を分解してしまう等の不具合がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ポンプセルにおける電極の酸素分解活性を向上させると共に、電極が固体電解質体から剥離することを抑制したセンサ素子、ガスセンサ及びガスセンサユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサ素子は、測定室と、固体電解質体と、前記固体電解質体の表面に形成されて前記測定室に曝される内側電極と、前記固体電解質体の表面に形成されて前記測定室の外部に配置される外側電極と、を有し、前記測定室内に導入される被測定ガス中の酸素の汲み出し及び汲み入れを行うことで前記測定室内の酸素濃度を調整するポンプセルと、前記測定室内の前記被測定ガス中の酸素濃度に応じた電圧を発生する基準セルと、を有するセンサ素子であって、前記内側電極及び前記外側電極のうち少なくとも一方の電極は、貴金属と前記固体電解質体の成分とを含有してなり、かつ厚み方向に沿って断面を観察した場合に、前記貴金属からなる貴金属領域と、前記固体電解質体の成分からなる固体電解質体領域と、前記貴金属と前記固体電解質体の成分とが共存してなる共存領域とを有し、前記少なくとも一方の電極の前記断面において、{前記共存領域/(前記貴金属領域+前記固体電解質体領域+前記共存領域)}で表される前記共存領域の面積割合SRが15.5%以上、30%未満であることを特徴とする。
【0007】
このセンサ素子によれば、ポンプセルにおける上記した一方の電極の酸素分解活性を向上させると共に、結合性に劣る共存領域が多過ぎないので上記した一方の電極が固体電解質体から剥離することを抑制できる。
又、基準セルの電位が一定になるよう、ポンプセルに流れる電流をフィードバック制御する場合に、共存領域を含む上記した一方の電極と、基準セルの電極との応答性の差が大きくなり過ぎず、発振を抑制できる。
さらに、共存領域が少なすぎて上記した一方の電極の内部抵抗が上昇することを抑制し、ポンプセルの電圧(Vp1)が高くなって測定対象のガス成分を分解してしまうことも抑制できる。なお、Vp1は、ポンプセルの両電極間に正方向又は負方向にポンプ電流(Ip1)を流して酸素の汲み出し又は汲み入れを行う際、ポンプセルの両電極間に印加する電圧(ポンプ電圧)である。
【0008】
本発明のセンサ素子は、前記酸素濃度を調整後の前記被測定ガス中の窒素酸化物の濃度を測定するためのNOx検知セルをさらに有し、前記少なくとも一方の電極は、少なくとも前記内側電極を含み、前記内側電極の前記断面における前記共存領域の面積割合SRが15.5%以上、30%未満であってもよい。
このセンサ素子によると、一般にNOx検知セルを有するガスセンサにおいて、酸素濃度の調整はほとんど酸素の汲み出しであり、内側電極が上記割合の共存領域を有することで、特に効果的に酸素濃度を調整することができる。
【0009】
本発明のセンサ素子において、前記共存領域の面積割合SRが16%以上、27%以下であってもよい。
【0010】
本発明のガスセンサは、前記センサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、を備えてなる。
【0011】
本発明のガスセンサユニットは、前記ガスセンサと、前記ガスセンサに接続されるガスセンサ制御部と、を備え、前記ガスセンサ制御部は、前記基準セルの電位が一定になるよう、前記ポンプセルに流れる電流をフィードバック制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ポンプセルにおける電極の酸素分解活性を向上させると共に、電極が固体電解質体から剥離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】NOxセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【
図2】センサ素子を軸線方向の一部を省略して示す斜視図である。
【
図3】センサ素子の先端側を厚み方向に破断しその内部構造を拡大して示す説明図である。
【
図4】第1電極の厚み方向に沿う断面のFE-SEMにより得られた反射電子像を示す図である。
【
図5】
図4の画像を、各ドットのグレースケール値の大きさと分散度に基づいて組成(構成)判別した画像を示す図である。
【
図7】共存領域の面積割合を変化させたときの、センサ素子の温度と、Vp1との関係を示す図である。
【
図8】共存領域の面積割合を変化させたときのIp1(正確にはノイズレベル)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るガスセンサ(NOxセンサ)1について、図面を用いて説明する。
図1は、NOxセンサ1の軸線O方向に沿う断面図である。なお、以下では、
図1における下側をNOxセンサ1の先端側と呼び、
図1における上側をNOxセンサ1の後端側と呼ぶ。
【0015】
図1に示すように、NOxセンサ1は、主体金具5と、センサ素子(NOxセンサ素子)7と、セラミックスリーブ9と、絶縁セパレータ13と、6個のリードフレーム(端子金具)15と、を備える。なお、
図1では、6個のリードフレーム15の一部のみを図示する。
センサ素子7は、軸線O方向に延びる板状形状の積層部材である。センサ素子7は、主体金具5を貫通し、先端側が測定対象となる排気ガスに向けられている。排気ガスは被測定ガスに対応する。センサ素子7の先端側に検出部17が形成され、検出部17は、図示しない保護層に覆われている。
【0016】
図2に示すように、センサ素子7の後端側に、電極パッド23、25、27、29、31、33が形成されている。電極パッド23、25、27は、センサ素子7の外表面のうち、一方の面である第1板面19に形成されている。電極パッド29、31、33は、センサ素子7の外表面のうち、第1板面19とは反対の面である第2板面21に形成されている。
【0017】
セラミックスリーブ9は筒状の形態を有し、センサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置されている。絶縁セパレータ13は、例えば、アルミナからなる絶縁性材料で形成され、軸線O方向に貫通する素子挿通孔11を有する。素子挿通孔11は、センサ素子7及びリードフレーム15の少なくとも一部を取り囲む。
絶縁セパレータ13が、素子挿通孔11の内部でリードフレーム15及びセンサ素子7を保持することで、リードフレーム15は、センサ素子7の電極パッド23~33に、それぞれ電気的に接続される。また、リードフレーム15は、外部からセンサの内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されており、リード線35が接続される外部機器と電極パッド23~33との間に流れる電流の電流経路を形成する。
【0018】
主体金具5は、例えばステンレス鋼からなる略筒状形状の金属部材である。主体金具5は、軸線O方向に貫通する貫通孔37を有するとともに、貫通孔37の内部において径方向内側に突出する棚部39を有する。主体金具5の外表面には、排気管に固定するためのネジ部3が形成されている。主体金具5は、貫通孔37に挿通されたセンサ素子7を保持するよう構成され、貫通孔37の先端側外部にセンサ素子7の検出部17を配置し、貫通孔37の後端側外部に電極パッド23~33を配置する状態である。
【0019】
貫通孔37の内部には、センサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、粉末充填層(滑石リング)43、45、上述のセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
セラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締リング49が配置されている。セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、金属カップ51が配置されている。なお、後端部47は、加締リング49を介してセラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0020】
主体金具5の先端側には、センサ素子7の先端側を覆うように、例えばステンレス鋼からなる筒状のプロテクタ52が配置されている。プロテクタ52は、排気ガスの通過が可能な通気孔53を有している。プロテクタ52は、内側プロテクタ、及び外側プロテクタから成る二重プロテクタの構造を有する。
主体金具5の後端側には、例えばステンレス鋼からなる外筒55が固定されている。外筒55の後端側における開口部57は、例えばフッ素ゴムからなるグロメット59によって閉塞されている。
なお、絶縁セパレータ13は、後端側がグロメット59に当接した状態で、外筒55内に保持されている。絶縁セパレータ13の保持は、保持部材61によって行われている。保持部材61は、加締めによって、外筒55の内側に固定されている。
【0021】
次に、センサ素子7の構成を
図2~
図3に基づき説明する。
図2はセンサ素子7を軸線O方向の一部を省略して示す斜視図、
図3はセンサ素子7の先端側を厚み方向に破断しその内部構造を拡大して示す説明図である。
図2に示すように、センサ素子7は、長方形状の軸断面を有する板状をなし、素子部63と、ヒータ65とが積層された構造を有する。素子部63及びヒータ65は、それぞれ、軸線O方向に延びる板状に形成されている。
図3に示すように、センサ素子7は、
図3における上方から順に、絶縁層67、第1固体電解質体69、絶縁層71、第2固体電解質体73、絶縁層75、第3固体電解質体77、及び絶縁層79、81が積層された構造を有している。このうち、絶縁層67、第1固体電解質体69、絶縁層71、第2固体電解質体73、絶縁層75、及び第3固体電解質体77は素子部63に対応する。センサ素子7は、第1ポンプセル83、基準セル85、及び第2ポンプセル87を備える。
【0022】
第1固体電解質体69と第2固体電解質体73との間には、第1測定室89が形成されている。
図3において、第1測定室89の左端は入口である。この入口に、第1拡散抵抗部91が配置されている。第1拡散抵抗部91を介して、排気ガスGMが外部から第1測定室89に導入される。第1測定室89における入口とは反対側の端には、第2拡散抵抗部93が配置されている。
第2拡散抵抗部93の右側には、第2測定室95が形成されている。第2測定室95は、第2拡散抵抗部93を介して第1測定室89と連通する。第2測定室95は、第1固体電解質体69と第3固体電解質体77との間に形成されている。第2固体電解質体73のうち、第2測定室95に該当する部分は切り欠かれている。
【0023】
第1~第3固体電解質体69、73、77は、それぞれ、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主成分とする。各絶縁層67、71、75、79、81は、それぞれ、アルミナを主成分とする。第1、第2拡散抵抗部91、93は、それそれ、アルミナ等の多孔質物質から成る。なお、主成分とは、セラミック層中における含有量が50質量%以上である成分を意味する。
絶縁層79、81の間には、抵抗発熱体97が埋設されている。抵抗発熱体97は、
図3における左右方向に沿って延びる。抵抗発熱体97は、例えば、白金から成る。絶縁層79、81と、抵抗発熱体97とは、ヒータ65を構成する。ヒータ65は、センサ素子7を所定の活性温度に昇温し、第1~第3固体電解質体69、73、77の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させる作用を奏する。
【0024】
第1ポンプセル83は、第1固体電解質体69と、第1電極101と、第2電極99と、を備える。第1電極101及び第2電極99は第1固体電解質体69を挟む。
第1電極101は、白金と、ジルコニアと、後述する共存領域と、気孔と、を含む。ジルコニアは第1固体電解質体69に含まれるセラミック成分に対応する。第2電極99は、白金を主成分とする。
第1電極101は、第1測定室89に面している。第1電極101の表面は、ガスの通過が可能な多孔質層107で覆われている。第2電極99は、センサ素子7の外部に面している。第2電極99は、多孔質層105により覆われている。多孔質層105は、絶縁層67の開口部103に埋め込まれている。多孔質層105は、酸素等のガスが通過可能な多孔質体から成る。この多孔質体として、例えばアルミナ等が挙げられる。
【0025】
基準セル85は、第2固体電解質体73と、第3電極109と、第4電極111と、を備える。基準セル85は、は第1測定室89内の被測定ガス中の酸素濃度に応じた(第1測定室89内の被測定ガスの雰囲気を基に)電圧を発生させる。第3電極109及び第4電極111は第2固体電解質体73を挟む。第3電極109は第1測定室89に面する。第4電極111は、後述する基準酸素室113に面する。第3電極109及び第4電極111は、それぞれ、白金を主成分とする。
基準酸素室113は、絶縁層75の一部が切り抜かれた部分である。基準酸素室113は、第2固体電解質体73、第3固体電解質体77、及び絶縁層75により周囲を囲まれた空間である。基準酸素室113では、酸素濃度が所定の濃度に維持される。
【0026】
第2ポンプセル87は、第3固体電解質体77と、第5電極115と、第6電極117と、を備える。第5電極115及び第6電極117は、それぞれ、第3固体電解質体77の一方の表面に形成されている。第5電極115は、第2測定室95に面している。第6電極117は、基準酸素室113に面している。第5電極115と、第6電極117とは、絶縁層75により隔てられている。第5電極115及び第6電極117は、それぞれ、白金を主成分とする。第6電極117は、多孔質から成る絶縁保護層165により覆われている。基準酸素室113には、何も充填されていない空間である空隙167が存在する。
【0027】
なお、第1測定室89、第1固体電解質体69、第1電極101、第2電極99、第1ポンプセル83が、それぞれ特許請求の範囲の「測定室」、「固体電解質体」、「内側電極」、「外側電極」、「ポンプセル」に相当する。
基準セル85が特許請求の範囲の「基準セル」に相当する。
第2ポンプセル87が特許請求の範囲の「NOx検知セル」に相当する。
又、後述するセンサ制御装置169が特許請求の範囲の「ガスセンサ制御部」に相当する。
【0028】
次に、
図4を参照し、第1電極101について説明する。
図4は、第1電極101の厚み方向に沿う断面のFE-SEMにより得られた反射電子像である。
上記したように、断面201を観察した場合に、第1電極101は、白金(貴金属)からなる貴金属領域205と、ジルコニア(固体電解質体の成分)からなる固体電解質体領域203と、貴金属と固体電解質体の成分とが共存してなる共存領域207と、気孔209と、を含む。
なお、断面201としては、例えば視野の大きさが8.5μm×12μmのSEM像を用いることができる。
【0029】
そして、{共存領域207/(貴金属領域205+固体電解質体領域203+共存領域207)}で表される共存領域の面積割合SRが15.5%以上、30%未満である。
これにより、第1ポンプセル83における第1電極101の酸素分解活性を向上させると共に、結合性に劣る共存領域が多過ぎないので第1電極101が第1固体電解質体69から剥離することを抑制できる。
又、基準セル85の電位が一定になるよう、第1ポンプセル83に流れる電流をフィードバック制御する場合に、共存領域を含む第1電極101と、検知電極(第3電極109)との応答性の差が大きくなり過ぎず、発振を抑制できる。
さらに、共存領域が少なすぎて第1電極101の内部抵抗が上昇することを抑制し、第1ポンプセル83の電圧が高くなって測定対象のガス成分を分解してしまうことも抑制できる。
【0030】
共存領域207の面積割合SRが15.5%未満であると、第1電極101の内部抵抗が低温時に上昇し、第1ポンプセル83の電圧(Vp1)が高くなって被測定ガス中の測定対象成分である特定ガスを分解してしまい、測定精度が低下する。
一方、共存領域207の面積割合SRが30%以上であると、共存領域207は電極焼成時の結合性に劣るため、第1電極101が第1固体電解質体69から剥離し易くなる。又、基準セル85の電位が一定になるよう、第1ポンプセル83に流れる電流(Ip1)をフィードバック制御する場合、共存領域207を含む第1電極101と、第3電極109との応答性の差が大きくなり、発振の原因にもなり得る。
なお、上記したIp1の発振(ノイズ)は、基準セル85の電圧を基にして、第1ポンプセル83をフィードバック制御していることに起因するものである。
【0031】
断面201における貴金属領域205、固体電解質体領域203、共存領域207、及び気孔209の判別は次のように行う。
まず、断面201をFIB加工によって作製する。
そして、この断面201につき、STEM/EDSで元素分析を行い、O(酸素)が検出されるか否かで共存領域207か、合金かが分かる。Oが検出されると固体電解質体の成分がZrO2の状態で存在するため、共存領域207である。Oが検出されないと固体電解質体の成分が金属Zrの状態で存在するため、合金である。
又、貴金属領域205及び固体電解質体領域203は、以下のEDS分析から同定できる。
気孔209は、SEM画像において入射電子に対する応答がほとんどないため、黒く見え、他の領域と判別することができる。
【0032】
次に、共存領域207の面積は、EDS分析、及びSEM画像の解析から求めることができる。具体的には、EDS分析により、貴金属(Pt)を含む領域の面積A(=貴金属領域205+共存領域207+合金)と、Zrを含む領域の面積B(=固体電解質体領域203+共存領域207+合金)とがそれぞれ求められる。
(面積A+面積B)=固体電解質体領域203+貴金属領域205+2×共存領域207+2×合金、となる。
次に、視野全体のうち、気孔209を除いた領域の面積C(=固体電解質体領域203+貴金属領域205+共存領域207+合金)を求める。
(面積A+面積B)-面積C=(共存領域207+合金)となるが、ここから上述のように合金(Oが検出されない領域)の面積を除くと、共存領域207の面積が求められる。
つまり、共存領域207は、EDSでZrが検出され、かつOが検出されない領域を除く部分であり、その面積割合SRが15.5%である。
【0033】
なお、
図5に示すように、SEMの反射電子像のコントラスト等を調整して各領域のコントラストを際立たせることで、貴金属領域205、固体電解質体領域203、共存領域207、及び気孔209の判別及び面積A,B,Cを確実に求めることができる。
ここで、例えば、BMP形式のSEM像をCSV形式にし、その際にグレースケールをカラースケールの数値(RGB:0~255)に変換する。その後、RGBの数値範囲が所定の範囲内の領域を同一の領域であると判定し、グループ分けを行うことにより、貴金属領域205、固体電解質体領域203、共存領域207、及び気孔209を区別できる。
なお、共存領域207には貴金属と固体電解質体の両方が共存しているが、例えば10×10ドットのエリアにおける貴金属と固体電解質体のRGBの分散度が一定値以上である場合は、共存領域であるといった判定により区別できる。
【0034】
共存領域の面積割合SRを、15.5%以上、30%未満に管理する方法としては、第1電極101のエージング処理の温度や印加電圧、印加時間などの条件を管理することが挙げられる。例えば、エージング処理の温度及び印加電圧を高く、印加時間を長くすると、共存領域の面積割合SRは増える傾向にある。
エージング処理の条件は、例えば、以下のとおりである。
第1電極の雰囲気:リッチ雰囲気
第1電極の温度: 800℃以上950℃未満
第1電極と第2電極との間の電圧: 0.75~1.00V
エージング処理の時間:40~200sec
リッチ雰囲気とは、理論空燃料比率(λ=1)に対して酸素の割合が少ない雰囲気である。理論空燃料比率とは、理想的な完全燃焼ができる空気と燃料との混合比である。
エージング処理温度が高過ぎると、第1固体電解質体69の内部抵抗が下がることで、エージング処 理中に第1固体電解質体69に流れる電流が増加する。エージング処理は、通常、酸素欠乏雰囲気での処理であるため、エージング処理温度が高過ぎると、電流を流そうとして第1固体電解質体69に含まれる酸素をポンピングしようするブラックニング現象が起きるという懸念がある。従って、エージング温度は1000°C以下が好ましい。
【0035】
又、第1電極101と第2電極99の少なくとも一方の共存領域の面積割合SRが上記範囲であればよく、両電極101、99の両方の共存領域の面積割合SRが上記範囲であってもよい。特に、少なくとも第1電極101の共存領域の面積割合SRが上記範囲であると、被測定ガスの流速等によるポンプセルの電圧変動が抑えられ、測定精度が向上する。
例えばNOxセンサであれば、NOxはリーン時に多く存在し、リーン時には酸素をポンプアウトする方向に動くため、第1電極101の面積割合SRを規定することによる効果が高い。又、酸素センサであっても、リーン時に第1電極101の面積割合SRを規定することによる効果が高い。
エージング処理において第1電極101及び/又は第2電極99を加熱する手段は、ヒータ65であってもよいし、外部のヒータであってもよい。
第1電極と第2電極の間に正電圧と負電圧を印加する方法は、交番電圧でもよく、まずどちらか一方の極性で一方の電極のエージング処理を終了した後、反対の極性で他方の電極のエージング処理をしてもよい。
【0036】
次に、
図6に基づきセンサ素子7の動作を制御するセンサ制御装置169の構成を説明する。
図6は、センサ制御装置169の構成を示す図である。
センサ制御装置169は、マイクロコンピュータ171、電気回路部173等を有している。マイクロコンピュータ171は、各種演算を実行するCPU175と、演算結果等が記憶されるRAM177と、CPU175が実行するプログラム等を記憶するROM179とを備えている。
また、マイクロコンピュータ171は、A/Dコンバータ181と、信号入出力部185と、図示しないタイマクロック等を備えている。信号入出力部185は、A/Dコンバータ181を介して電気回路部173に接続すると共に、ECU183と通信する。
電気回路部173は、基準電圧比較回路187、Ip1ドライブ回路189、Vs検出回路191、Icp供給回路193、抵抗検出回路194、Ip2検出回路195、Vp2印加回路197、及びヒータ駆動回路199から構成される。電気回路部173は、マイクロコンピュータ171による制御を受けて、センサ素子7を用いて排気ガスGM中のNOx濃度の検出を行う。
第1電極101、第3電極109、及び第5電極115は、基準電位に接続されている。また、抵抗発熱体97の一方の電極は接地されている。
【0037】
次に、センサ制御装置169及びNOxセンサ1が実行する、排気ガスGM中のNOx濃度を検出する処理を説明する。ヒータ駆動回路199は抵抗発熱体97に駆動電流を流す。抵抗発熱体97は昇温し、第1~第3固体電解質体69、73、77を加熱し、活性化する。これにより、第1ポンプセル83、基準セル85、及び第2ポンプセル87が動作するようになる。
排気ガスGMは、第1拡散抵抗部91による流通量の制限を受けつつ第1測定室89内に導入される。ここで、Icp供給回路193は、基準セル85において、第4電極111から第3電極109へ微弱な電流Icpを流す。このため、排気ガスGM中の酸素は、負極側となる第1測定室89内の第3電極109から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって第2固体電解質体73内を流れ、基準酸素室113内に移動する。つまり、第3電極109と第4電極111との間で電流Icpが流されることによって、第1測定室89内の酸素が基準酸素室113内に送り込まれる。
【0038】
Vs検出回路191は、第3電極109と第4電極111との間の電圧Vsを検出する。電圧Vsは、第1測定室89内と基準酸素室113内との酸素濃度差に応じた電圧である。Vs検出回路191は、検出した電圧Vsを、基準電圧比較回路187を用いて基準電圧(425mV)と比較し、比較結果をIp1ドライブ回路189に対し出力する。ここで、電圧Vsが425mV付近で一定となるように、第1測定室89内の酸素濃度を調整すれば、第1測定室89内の排気ガスGM中の酸素濃度は所定値(例えば10-8~10-8atm)に近づくこととなる。
【0039】
Ip1ドライブ回路189は、第1測定室89内に導入された排気ガスGMの酸素濃度が所定値より薄い場合、第2電極99側が負極となるように第1ポンプセル83に電流Ip1を流し、センサ素子7の外部から第1測定室89内へ酸素のみ入れを行う。一方、第1測定室89内に導入された排気ガスGMの酸素濃度が所定値より濃い場合、Ip1ドライブ回路189は、第1電極101側が負極となるように第1ポンプセル83に電流Ip1を流し、第1測定室89内からセンサ素子7の外部へ酸素のみ出しを行う。
【0040】
第1測定室89において酸素濃度が調整された排気ガスGMは、第2拡散抵抗部93を介し、第2測定室95内に導入される。第2測定室95内で第5電極115と接触した排気ガスGM中のNOxは、Vp2印加回路197により第6電極117と第5電極115との間に電圧Vp2を印加することで、第5電極115上でN2とO2とに分解される。分解された酸素は、酸素イオンとなって第3固体電解質体77内を流れ、基準酸素室113内に移動する。このため、第2ポンプセル87を流れる電流は、NOx濃度に応じた値を示す。
【0041】
センサ制御装置169は、Ip2検出回路195により第2ポンプセル87を流れる電流Ip2を検出し、電流Ip2から、排気ガスGM中のNOx濃度の検出を行う。詳しくは、NOx濃度と電流Ip2との関係を予め求めて、予めマップ等を作製しておき、測定された電流Ip2をこのマップに参照して、NOx濃度を求める。
【0042】
NOxセンサ1は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、絶縁層67、第1固体電解質体69、第2固体電解質体73、第3固体電解質体77、及び絶縁層79、81の原材料となるセラミックシートを用意する。セラミックシートには、適宜、スルーホール等を形成する。また、セラミックシート上へのスクリーン印刷により、絶縁層71、75を形成する。
次に、各電極99、101、109、111、115、117を形成するために、対応するセラミックシートの表面に、電極の原料を含むペーストを塗布する。第1電極101を形成するためのペーストは、白金と、ZrO2とを含む。他の電極を形成するためのペーストは、白金を主成分とする。
【0043】
次に、セラミックシートを積層して積層体を作製し、この積層体を焼成する。このとき、後に第1電極101となる部分には、第1電極前駆体が形成される。第1電極前駆体は、白金とZrO2とを含む。第1電極前駆体に含まれる白金の質量を100質量部とした場合、第1電極前駆体に含まれるZrO2の質量は22質量部である。また、第1電極前駆体において、白金が占める体積は56体積%であり、ZrO2が占める体積は44体積%である。
【0044】
次に、第1電極前駆体に対し、エージング処理を行う。エージング処理の条件は、上述の通りである。第1電極前駆体の温度は、チノ社製の赤外放射温度計を用いて測定した値である。
エージング処理により、第1電極前駆体から第1電極101が形成され、ガスセンサ素子7が完成する。
NOxセンサ1のうち、ガスセンサ素子7以外の部分は、公知の方法で製造できる。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0046】
第1固体電解質体69のうち、第1電極101及び第2電極99に挟まれない部分の全部又は一部は、固体電解質以外の材料から成っていてもよい。固体電解質以外の材料として、例えば、アルミナ等が挙げられる。
また、第2固体電解質体73のうち、第3電極109及び第4電極111に挟まれない部分の全部又は一部は、固体電解質以外の材料からなっていてもよい。固体電解質以外の材料として、例えば、アルミナ等が挙げられる。
【0047】
本開示のセンサは、NOxセンサ以外のセンサであってもよい。例えば、上述したNOxセンサ1から、第2ポンプセル87を除いたセンサであってもよい。このセンサは、通電量Ip1に基づき、被測定ガス中の酸素濃度を測定するセンサとすることができる
【0048】
第1固体電解質体69、及び第1電極101に含まれるセラミック成分はジルコニア以外のものであってもよい。ジルコニア以外のセラミック成分として、例えば、CeO2(セリア)、ThO2(トリア)、HfO2、Bi2O3等が挙げられる。
セラミック成分CeO2である場合、エージング処理により、第1電極101にCeO2を含む共存領域が生じる。セラミック成分がThO2、HfO2、Bi2O3の場合も、同様にそれぞれを含む共存領域が生じる。
【0049】
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
上述したNOxセンサの他、当該NOxセンサを構成要素とするシステム等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
上述した方法でNOxセンサ1を製造した。
エージング処理の温度条件は、以下のようにした。
第1電極前駆体の雰囲気:リッチ雰囲気
第1電極前駆体の温度:800~870℃
第1電極前駆体の温度は、チノ社製の赤外放射温度計を用いて測定した値である。
【0051】
エージング処理以外の条件は以下のとおりである。
エージング処理における第1電極前駆体の雰囲気:H
2=2.35体積%、H
2O=0.8体積%、N
2=残部
エージング処理における第1電極前駆体と第2電極99との間の電圧:0.77V
エージング処理の時間:40sec
エージング処理後、NOxセンサ1について、第1電極101における共存領域の面積割合SRを上述の方法により測定した。
その結果、
図4に示す断面像から、第1電極101における共存領域の面積割合SRが約16%となった。
【0052】
[実施例2]
上述した方法で、共存領域の面積割合SRを種々変化させたNOxセンサ1を製造した。各NOxセンサ1につき、センサ制御装置169の温度設定を変えてセンサ素子100の温度を変化させ、被測定ガスを大気としたときのVp1を測定した。
図7は、共存領域の面積割合SRを変化させたときの、センサ素子100の温度と、Vp1との関係を示す。
ここで、
図7の横軸は、センサ素子100の所定の温度TMを基準(0)としたときの、温度変化ΔTを示す。例えば、「-40℃」は、センサ素子100の温度が所定温度TMより40℃低いときを表す。
図7の縦軸は、共存領域の面積割合SRが16%のセンサ素子100の所定温度TMにおけるVp1を基準(V0)としたときのVp1の変化ΔVp1を示す。例えば、「5mV」は、センサ素子100のVp1がV0より5mV高いときを表す。
【0053】
図7に示すように、共存領域の面積割合SRがそれぞれ16%、27%、33%の場合、センサ素子100の温度が低下するとVp1が減少した。これは、温度低下に伴って被測定ガス(大気)の拡散速度も低下するためであり、正常なセンサ素子が示す傾向を表している。
一方、共存領域の面積割合SRがそれぞれ12%、5%の場合、センサ素子100の温度が低下してもVp1がほとんど減少しないか(SR=12%)、又は却ってVp1が上昇した(SR=5%)。これにより、SR=12%、5%の場合、外乱の影響等によって温度が低下した際に、第1電極101の内部抵抗が上昇し、第1ポンプセル83の電圧(Vp1)が高くなって被測定ガス中の測定対象成分である特定ガスを分解してしまい、測定精度が低下するものと考えられる。
また、SR=16%,27%,33%の場合、Vp1の温度依存性に寄与する要因として、被測定ガスの拡散速度の影響が大きく、一方でSRの値による要因が小さいため、設計や補正によって、Vp1の温度依存性を考慮した上で測定精度を容易に高めることができる。しかし、この傾向と異なるSR=12%,5%の場合、Vp1の温度依存性に対して、内部抵抗などのSRの値によって大きく変化する要因の影響が大きくなるため、設計や補正によって測定精度を高めることが困難となる。
【0054】
[実施例3]
上述した方法で、共存領域の面積割合SRを種々変化させたNOxセンサ1を製造した。各NOxセンサ1につき、センサ素子100の温度を所定温度に制御し、被測定ガスを大気として所定時間中のIp1を測定した。
図8は、共存領域の面積割合SRを変化させたときのIp1(正確には以下のノイズレベルNL)を示す。
ここで、
図8の縦軸NL(Noise Level)は、所定時間中のIp1の最大値と最小値の差である。横軸に沿った太線は、NLの許容閾値TH(NLがこれ以上になると酸素の測定精度が低下する)を示す。例えば、「0.01mA」は、センサ素子100のNLがSHより0.01mA高いときを表す。
【0055】
図8に示すように、共存領域の面積割合SRが33%の場合、NLが急激に上昇して許容閾値THを超えた。このように、Ip1の変動(ノイズ)が大きいと、外乱要因(被測定ガス中の酸素濃度やガス流速の急変等)による発振を起こしやすくなる。つまり、共存領域207を含む第1電極101と、第3電極109との応答性の差が大きくなり、発振し易くなると考えられる。
以上のことより、面積割合SRが15.5%以上、30%未満であると、測定精度の低下を抑制し、発振も抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0056】
1 NOxセンサ(ガスセンサ)
5 主体金具
69 第1固体電解質体(固体電解質体)
83 第1ポンプセル(ポンプセル)
85 基準セル(基準セル)
87 第2ポンプセル(NOx検知セル)
89 第1測定室(測定室)
99 第2電極(外側電極)
100 NOxセンサ素子(センサ素子)
101 第1電極(内側電極)
169 センサ制御装置(ガスセンサ制御部)
201 断面
203 固体電解質体領域
205 貴金属領域
207 共存領域