(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】空洞騒音を減少することが可能なタイヤを製造するための方法及びそれによって得られるタイヤの組
(51)【国際特許分類】
B29D 30/00 20060101AFI20230217BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B29D30/00
B60C5/00 F
(21)【出願番号】P 2020501127
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IT2018050119
(87)【国際公開番号】W WO2019021328
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】102017000086503
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】プッピ,クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】マンチーニ,ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】サンジョヴァッニ,ステファノ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0018418(KR,A)
【文献】国際公開第2003/103989(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0155686(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1642757(CN,A)
【文献】特開2008-120391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
B29D30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを製造するための方法(100)であって、
- 騒音低減要素(2)の複数Nの組を用意することであって、各組に属する全ての前記騒音低減要素(2)は、それぞれの実質的に等しい寸法L
xを有し、xは、1~Nの範囲であり、各組の前記騒音低減要素(2)の前記それぞれの寸法L
xは、他のN-1組の前記騒音低減要素(2)の前記それぞれの寸法L
xと異なり、前記複数Nの組は、4つ以下の組を含むように用意すること、
- 車両の車輪のためのタイヤの組を連続的に供給することであって、各タイヤは、それぞれの内周延在域を有し、前記タイヤの組は、前記内周延在域の異なる値を有するように供給すること、
- 前記内周延在域値のそれぞれの1つについて、前記内周延在域の前記値の関数として、騒音低減要素の各組について騒音低減要素のそれぞれの個数n
xを決定することであって、xは、1~Nの範囲であり、前記タイヤの組の前記内周延在域の少なくとも1つの値について、少なくとも2つのそれぞれの個数n
xは、0と異なるように決定すること、
- 前記タイヤの組の各タイヤ(1)について、騒音低減要素(2)の各組から、前記各タイヤの前記内周延在域の前記値について決定された前記それぞれの個数n
xの騒音低減要素(2)を収集し、且つ前記収集された騒音低減要素(2)を、前記それぞれの寸法L
xを周方向に向けた状態で前記各タイヤ(1)の内面(3)に沿って周方向シーケンスで着設すること
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記複数Nの組は、3つ以下の組を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数Nの組は、2つの組からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤの組の前記内周延在域の各値について決定された前記それぞれの個数n
xは、空き円弧の関数としても決定され、前記空き円弧は、着設された前記シーケンスの前記騒音低減要素が設けられていない前記内周延在域の全体部分の周方向長さとして定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記タイヤの組の前記内周延在域の各値について決定された前記それぞれの個数n
xは、前記騒音低減要素間の平均間隔の関数としても決定され、前記平均間隔は、着設された前記シーケンスの前記騒音低減要素間の平均距離として定義される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記それぞれの個数n
xは、前記タイヤの組の前記内周延在域の各値について、式:
【数1】
を使用して決定され、ここで、Cは、前記内周延在域の前記値であり、及びΔは、前記騒音低減要素間の平均距離である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- 各n
xがゼロ~所与の最大値、好ましくは15以下の範囲である、個数n
xの複数のnタプルについて、前記騒音低減要素が設けられていない前記内周延在域の全体部分の周方向長さとして定義されるそれぞれの空き円弧及び/又は前記騒音低減要素間の平均距離として定義されるそれぞれの平均間隔を計算すること、
- 考慮される前記個数n
xのnタプルの全ての中から、前記計算された空き円弧及び/又は前記計算された平均間隔の関数として、個数n
xの少なくとも1つのnタプルを選択すること
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記それぞれの個数n
xは、n
xが0~前記所与の最大値の範囲である、前記個数n
xのnタプルの全ての中から、前記空き円弧の最小値が対応する、ある個数のnタプルを選択することによって決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記空き円弧の最小値が対応する、前記個数n
xのnタプルの全ての中から、前記個数n
xの最小和
【数2】
を有する、ある個数のnタプルを選択することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記それぞれの個数n
xは、各n
xがゼロ~前記所与の最大値の範囲である、前記個数n
xのnタプルの全ての中から、前記平均間隔が所与の最大閾値以下及び/又はゼロと異なる所与の最小閾値以上である、ある個数のnタプルを選択することによって決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記平均間隔の前記所与の最大閾値は、20mmに等しく、及び/又は前記平均間隔の前記所与の最小閾値は、3mmに等しい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記平均間隔が前記所与の最大閾値以下及び/又は前記所与の最小閾値以上である、前記ある個数のnタプルの全ての中から、前記個数n
xの最小和
【数3】
を有する、ある個数のnタプルを選択することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
全ての前記騒音低減要素の前記それぞれの寸法L
xは、100mm以上及び/又は300mm以下であり、前記騒音低減要素の組を、前記それぞれの寸法L
xの昇順でソートすると、各組の前記騒音低減要素の前記それぞれの寸法L
xと、それぞれの前及び/又は後の組の前記騒音低減要素の前記それぞれの寸法L
xとの間の差は、10mm以上及び/又は80mm以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、車両車輪のためのタイヤを製造するための方法の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、空洞騒音を低減することが可能なタイヤを製造するための方法及び関連するタイヤの組に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術
典型的には、タイヤは、動作中、その回転軸を中心とした実質的にトロイド状の構造を有し、回転軸に対して垂直な軸方向中央平面を有し、前記平面は、典型的には(実質的に)幾何対称面である(例えば、トレッドパターン、及び/又は側面のレタリング、及び/又は内部構造など、小さい非対称性は無視する)。
【0004】
「内部空洞」とは、タイヤの内面と、装着時にタイヤの内面に面する装着リムの表面とによって画定される空間を意味する。
【0005】
「内周延在域」とは、タイヤの軸方向中央平面上におけるタイヤの内面の線状の延在域を意味する。
【0006】
用語「径方向の」及び用語「軸方向の」並びに表現「径方向に内側/外側」及び表現「軸方向に内側/外側」は、それぞれタイヤの回転軸に対して垂直な方向及び平行な方向を表すものとして使用される。
【0007】
一方、用語「周方向」及び用語「周方向に」は、タイヤの環状延在域の方向、すなわちタイヤの転動方向を表すものとして使用される。
【0008】
表現「騒音低減要素」は、タイヤの内面(典型的には、トレッドバンドに配された内面の部分)に着設されると、転動中に内部空洞の存在により発生する騒音(空洞騒音)を減衰させる機能を有する要素を意味する。この機能は、通常、前記要素が作製される材料の種類により、及び/又はその寸法により、及び/又は空洞内に配置される要素の個数により前述の要素に与えられる。そのような騒音低減要素は、例えば、発泡ポリマー材料などの多孔質材料の実質的に平行六面体形状のブロックからなり得、これらのブロックは、トレッドバンドに位置するタイヤの表面の内側部分に接着され、タイヤ自体の内周延在域に沿って順次並べて配置される。以下の説明では、騒音低減要素を備えるタイヤを「防音タイヤ」と呼ぶ。
【0009】
欧州特許第1510366号は、タイヤと、リムと、内部空洞の全体積の0.4%~20%の体積を有する騒音低減体とのアセンブリを開示している。一実施形態では、騒音低減体は、複数の等距離のブロックを備える。
【0010】
米国特許第7874329号は、多孔質材料で作製された複数の騒音低減要素がタイヤの内面に取り付けられた防音タイヤを開示している。騒音低減要素の長さの積算によって得られる全長は、タイヤの内周延在域の75%以上である。隣接する騒音低減要素の各対の距離は、騒音低減要素の端部での騒音低減要素の最大厚さ以上であるが、タイヤの内周延在域の15%以下である。
【0011】
欧州特許第2067633号は、タイヤの振動及び騒音を低減することができる騒音低減デバイス及びタイヤを開示している。騒音低減デバイスは、タイヤ空洞の断面積を変えるように適合された2つの主騒音低減要素と、2つの主騒音低減要素間に配設された2つの補助騒音低減要素とを備える。欧州特許第2067633号で述べられている実施形態では、全ての主騒音低減要素及び全ての補助騒音低減要素は、実質的にタイヤの内周延在域の1/4の長さを有する。
【0012】
欧州特許第2123491号は、タイヤトレッド部分の内面に取り付けられた多孔質材料から作製された少なくとも1つの騒音低減要素を備える騒音低減デバイスを開示している。騒音低減要素は、タイヤの周方向に沿って間隔を空けて配置された複数の部品を含み得る。
【0013】
国際公開第2016/067192号は、車両車輪のためのタイヤに自動的に騒音低減要素を着設するための方法及び装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の概要
空洞騒音を低減するためにタイヤの内面に着設された騒音低減要素のシーケンスを有するタイヤに関連して、本出願人は、タイヤの高品質及び高性能を保証し、同時にこのタイプのタイヤの製造に特化したプロセス及びラインの高い生産性を保証することができる可能性を感じている。
【0015】
本出願人は、タイヤの工業生産のためのプラントにおいて、典型的には、同時に又は時間的に近いシーケンスでも異なるモデル又はサイズのタイヤが製造されていることに注目した。騒音低減要素のシーケンスを着設する操作は、成形及び加硫ステップ後にタイヤに対して行われる。本出願人は、騒音低減要素を着設するためのステーションに供給されるタイヤが、典型的には、モデル及びサイズに関して、したがって騒音低減要素が着設される内周延在域に関してランダムに到着することに注目した。
【0016】
本出願人は、この事実が幾つかの問題を明確にすることに注目した。
【0017】
例えば、本出願人は、騒音低減要素を着設するためのステーションに供給されるタイヤの内周延在域のばらつきを管理することができ、周方向延在域の各値に対して騒音低減要素の特定のシーケンスを関連付け、全ての騒音低減要素が、互いに等しく、周方向延在域の所望の被覆を得るための個数において、周方向延在域のその値に最適化された周方向長さを有することが可能であることを認識した。このようにして、異なる周方向長さを特徴とする多数の異なる騒音低減要素(原則として、異なる周方向延在域の数、例えば数十に匹敵する)を使用することが必要である。
【0018】
これは、購入、保管、取扱い及び着設機器への供給を含む、多数の異なる騒音低減要素を提供及び供給するのに必要な物流の複雑な及び/又は費用のかかる管理をもたらす。さらに、機械のダウンタイムにより、及び/又は各内周延在域に「特化」された様々な騒音低減要素の管理、取扱い及び着設に特化された装置を構成及び設置するのに必要なリソースの消費により、製造プロセスの効率及び/又はコストが悪化する可能性がある。
【0019】
また、本出願人は、前述の生産性の問題を解決するために、全てが同じ周方向長さを有する単一のタイプの騒音低減要素を使用して、騒音低減要素を着設するためのステーションに供給されるタイヤの内周延在域のばらつきを管理することが可能であることも認識した。しかし、本出願人は、この場合、異なるモデル及びサイズのタイヤを製造するために、必要に応じて各内周延在域を覆うことが可能なシーケンスを実現することが必ずしも可能でないことを認識した。例えば、内周延在域の1つ又は複数の値に関して、空いているそのような延在域の部分が過大になり、防音機能を低下させ得る。
【0020】
原則として、この問題は、全てが等しく且つ十分に短い周方向長さを有する騒音低減要素を使用することによって少なくとも軽減することができる。しかし、この場合、特に内周延在域のより高い値に関して、各シーケンスを構成する騒音低減要素の全体数が非常に多くなり、騒音低減要素の着設にかかる時間が明らかに長くなり、その結果、全体的な生産性が低下し、及び/又はコストが増大することになる。
【0021】
したがって、これに関連して、本出願人は、同時に、高い生産性、及び/又は限られたコスト、及び/又は複雑さで騒音低減要素を着設するプロセスにより、音響性能を含め、製造された防音タイヤの望ましい性能を維持するという問題に直面した。
【0022】
また、本出願人は、各内周延在域に「特化」された騒音低減要素及び/又は単一のタイヤに着設される非常に多い要素に依拠する必要なく、騒音低減要素により、様々なモデル及びサイズのタイヤの製造における内周延在域の所望の被覆を得る必要があるという問題も提起している。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本出願人は、内周延在域の値の関数として適切なシーケンスを選択するために、内周延在域の大きいばらつきがある場合でも、長さが均一な騒音低減要素の幾つかの組(4つ~2つのみ)で内周延在域の所望の被覆を得るために十分であり、同時に、(要素の種類の数を減らしたことにより)騒音低減要素の管理及び着設を必要以上に複雑にせず、及び/又は個々のタイヤに要素を着設するのに必要な時間を過剰に長くしないことを見出した。
【0024】
一態様によれば、本発明は、タイヤを製造するための方法であって、
- 騒音低減要素の複数Nの組を用意することであって、各組に属する全ての騒音低減要素は、それぞれの実質的に等しい寸法Lxを有し、xは、1~Nの範囲であり、各組の騒音低減要素の前記それぞれの寸法Lxは、他のN-1組の騒音低減要素のそれぞれの寸法Lxと異なり、前記複数Nの組は、4つ以下の組を含む、用意すること、
- 車両の車輪のためのタイヤの組を連続的に供給することであって、各タイヤは、それぞれの内周延在域を有し、タイヤの組は、内周延在域の異なる値を有する、供給すること、
- 前記内周延在域値のそれぞれの1つについて、内周延在域の前記値の関数として、騒音低減要素の各組について騒音低減要素のそれぞれの個数nxを決定することであって、xは、1~Nの範囲であり、前記タイヤの組の内周延在域の少なくとも1つの値について、少なくとも2つのそれぞれの個数nxは、0と異なる、決定すること、
- 前記タイヤの組の各タイヤについて、騒音低減要素の各組から、前記各タイヤの内周延在域の値について決定されたそれぞれの個数nxの騒音低減要素を収集し、且つ収集された騒音低減要素を、前記それぞれの寸法Lxを周方向に向けた状態で前記各タイヤの内面に沿って周方向シーケンスで着設すること
を含む方法に関する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、車両の車輪のためのタイヤの組であって、各タイヤは、内周延在域のそれぞれの値を有し、タイヤの組の少なくとも幾つかのタイヤは、内周延在域の異なる値を有し、
騒音低減要素のそれぞれのシーケンスは、前記タイヤの組の各タイヤの内面に沿って周方向に着設され、
前記タイヤの組に着設された騒音低減要素は、騒音低減要素の複数Nの組に属し、騒音低減要素の各組に属する全ての騒音低減要素は、それぞれの実質的に等しい周方向寸法Lxを有し、xは、1~Nの範囲であり、騒音低減要素の各組の騒音低減要素のそれぞれの周方向寸法Lxは、騒音低減要素の他のN-1組の騒音低減要素のそれぞれの周方向寸法Lxと異なり、前記複数Nの組は、4つ以下の組を含み、
騒音低減要素の各組について、騒音低減要素の前記それぞれのシーケンスは、それぞれの個数nxの騒音低減要素を含み、xは、1~Nの範囲であり、それぞれの個数nxのNタプルは、内周延在域の前記それぞれの値の関数であり、
騒音低減要素の少なくとも1つのシーケンスについて、少なくとも2つのそれぞれの個数nxは、ゼロと異なる、タイヤの組に関する。
【0026】
騒音低減要素の寸法Lxについて言及する用語「実質的に」は、製造公差(例えば、切断操作による)及び/又は変形(湾曲した内面への適合など)を考慮に入れることが意図されている。製造のそのような操作及び/又は変形は、通常、公称サイズに対して約3%以下だけ大きいか又は小さい騒音低減要素の寸法変動を含む。例えば、約150mm~250mmの周方向寸法に関して、公差は、約1.5mmであり得る。
【0027】
本出願人は、本発明により、騒音低減要素の着設プロセス、したがってタイヤ製造プロセス全体の高い効率を維持しながら、モデル及び/又はサイズが異なるタイヤの製造全体におけるタイヤの全体的な性能(特に騒音低減に関する性能)を所望のレベルに維持することが可能になることを見出した。
【0028】
実際、限られた数(2~4)の異なるサイズの騒音低減要素を用いて、内周延在域の各値について、この値が変化するとき、利用可能なサイズの中から選択される要素の適切なシーケンスを実現することが可能であり、このシーケンスが空洞騒音低減の目的で内周延在域を適切に覆う。
【0029】
本発明により、例えば、内周延在域を変えながら、空いている内周延在域の全体部分の長さ(本明細書では以後、「空き円弧」とも呼ぶ)を正確に制御することが可能なシーケンスを実現し、及び/又はそれぞれの単一のシーケンスを構成する要素の総数を制限して保つことが可能となる。
【0030】
実現されるシーケンスは、典型的には、異なる周方向サイズを有する複数の要素(すなわち少なくとも2つ、より典型的には全てのnx数がゼロよりも大きい)を含むが、本発明では、内周延在域の幾つかの値に対して、シーケンスは、全て同じ周方向寸法を有する要素(すなわち1つのみのnx数が0でない)からなり得ることが考えられる。
【0031】
本発明は、前述の態様の少なくとも1つにおいて、以下で述べる好ましい特徴の1つ又は複数を有し得る。
【0032】
好ましくは、前記複数Nの組は、3つ以下の組を含み(N=2又はN=3)、より好ましくは2つの組(N=2)からなる。このようにして、購入、保管、選別及び着設を含む騒音低減要素の管理の複雑さが軽減される。特に、本出願人は、多様な周方向延在域を適切に被覆するのに騒音低減要素の2つの組のみで十分あり、それにより、2つの異なるサイズ又はタイプの騒音低減要素のみを管理する必要があることを見出した。
【0033】
好ましくは、騒音低減要素の前記それぞれのnx数は、それぞれ0以上及び/又は15以下、より好ましくは12以下、さらにより好ましくは10以下である。好ましくは、各シーケンスは、15以下、より好ましくは12以下の騒音低減要素の全体数(nxの合計)を含む。このようにして、収集されてタイヤに着設される要素の総数が制限され、その結果、それらの着設に必要な合計のサイクルタイムが制限される。
【0034】
好ましくは、前記タイヤの組の内周延在域の各値について決定されたそれぞれの個数nxは、空き円弧Aの関数としても決定され、空き円弧Aは、着設されたシーケンスの騒音低減要素が設けられていない内周延在域の全体部分の周方向長さとして定義される。実際、空き円弧は、タイヤの音響性能に影響を及ぼし得るパラメータである。例えば、過大な空き円弧値の場合、要素は、空洞騒音低減機能を十分に発揮できない。
【0035】
好ましくは、前記タイヤの組の内周延在域の各値について決定されたそれぞれの個数nxは、騒音低減要素間の平均間隔の関数としても決定される。
【0036】
「平均間隔」とは、空き円弧と、着設されたシーケンスの騒音低減要素の総数との間の比、すなわち騒音低減要素間の平均距離を意味する。騒音低減要素が内周延在域に沿って均等に分布された場合、前記平均間隔は、シーケンスの隣接する要素間の実際の周方向距離と実質的に一致する。
【0037】
本出願人は、この平均間隔が、タイヤの音響性能及び/又は要素の着設プロセスに影響を及ぼし得るパラメータであることに注目している。例えば、この平均間隔の値が大きすぎる場合、要素は、十分な空洞騒音低減アクションを実施できない。例えば、本出願人は、この平均間隔の値が小さすぎる場合、隣接する要素が互いに接触し得(要素の周方向長さの製造公差及び/又は内側曲面への適合時に受ける変形による要素の周方向長さの変動にも起因する)、摩擦、及び/又は摩耗、及び/又は切断の問題が生じ得るか、又はさらに互いに近すぎる要素の着設が実用上難しくなり得ることを認識している。したがって、本出願人は、この平均間隔を例えば所望の最小及び/又は最大閾値内に正確に制御することが有利であることを理解している。
【0038】
好ましくは、前記タイヤの組の内周延在域の各値について決定されたそれぞれの個数n
xは、式:
【数1】
を使用して決定されるか又はそれを満たし、ここで、L
xは、第xの組の騒音低減要素のそれぞれの寸法であり、Cは、内周延在域の前記値であり、及びΔは、前記平均間隔である。この式により、例えば、各内周延在域Cについて、それぞれの個数n
xを決定して、平均間隔パラメータを所定の間隔内に維持することが可能になる。左辺の第1の加数は、要素によって覆われる全長を表し、左辺の第2の加数は、空き円弧Aを表すことが観察される。
【0039】
好ましくは、以下が提供される。
- より好ましくは、各nxがゼロ~所与の最大値(例えば、15、又は12、又は10)の範囲である、個数nxの複数のNタプルについて、前述の式を使用して空き円弧及び/又は平均間隔を計算すること、
- 考慮される個数nxのNタプルの全ての中から、前記計算された空き円弧及び/又は前記計算された平均間隔の関数として、個数nxの少なくとも1つのNタプルを選択すること。
【0040】
一実施形態では、前記それぞれの個数nxは、nxが0~前記所与の最大値の範囲である、個数nxのNタプルの全ての中から、前記空き円弧の最小値に対応する、ある個数のNタプルを選択することによって決定される。このようにして、各周方向延在域の各値について、内周延在域の最大の被覆を保証し、要素の総数を制限して保つシーケンスが特定される。
【0041】
好ましくは、前記空き円弧の最小値が対応する、個数n
xのNタプルの全ての中から、個数n
xの最小和
【数2】
を有する、ある個数のNタプルを選択することが提供される。実際、ある個数の2つ以上のNタプルにおいて、空き円弧の最小値が生じることがあり得る。この場合、最も少数の要素を有するNタプルを選択することが有利である。
【0042】
一実施形態では、前記それぞれの個数nxは、各nxがゼロ~前記所与の最大値の範囲である、個数nxのNタプルの全ての中から、前記平均間隔が所与の最大閾値以下である、ある個数のNタプルを選択することによって決定される。好ましくは、平均間隔の前記決定された最大閾値は、20mmに等しく、より好ましくは15mmに等しく、さらにより好ましくは10mmに等しい。このようにして、例えば騒音低減に関して、平均間隔の許容値を予め決定しておくと、各周方向値Cについて、この結果を保証する少なくとも1つのシーケンスが特定される。
【0043】
一実施形態では、前記それぞれの個数nxは、各nxがゼロ~前記所与の最大値の範囲である、個数nxのNタプルの全ての中から、前記平均間隔がゼロと異なる所与の最小閾値以上である、ある個数のNタプルを選択することによって決定される。好ましくは、前記所与の最小閾値は、3mmに等しく、より好ましくは4mmに等しい。本出願人が実際に実験に基づいて検証したように、幾つかの場合、空き円弧を最小にするか又はさらに無くすことを試みるよりもむしろ、隣接する要素間の最小距離を保証することが有利であり得、それにより、例えば要素の製造公差に対処し、及び/又は隣接する要素間の接触及び/又は相互の衝突を回避し、及び/又は互いに近づきすぎる要素の着設に起因する技術的な難点を回避する。
【0044】
好ましくは、前記平均間隔が前記所与の最大閾値以下及び/又は前記所与の最小閾値以上である、ある個数のNタプルの全ての中から、個数n
xの最小和
【数3】
を有する、ある個数のNタプルを選択することが提供される。実際、典型的には、平均間隔に関する最小及び/又は最大許容値を仮定して、平均間隔に対する条件を実証する複数のNタプルが存在し得る。この場合、最も少数の要素を有するものを選択することが有利である。
【0045】
好ましくは、各騒音低減要素は、防音材料、好ましくは高分子発泡体、好ましくは発泡ポリウレタン(好ましくは連続気泡を含む)を含むか又はそれらから形成される。
【0046】
好ましくは、防音材料は、約5kg/m3~約60kg/m3の範囲の密度を有する。
【0047】
好ましくは、各騒音低減要素は、前記寸法Lxと、さらなる一の寸法と、厚さとを有する平行六面体(必須ではないが、典型的には直方体)である。
【0048】
好ましくは、各騒音低減要素は、平面図において、前記寸法Lx及び前記さらなる一の寸法を有する長方形を有する。例えば、前記寸法Lxは、長方形の長辺に対応することができる。使用中、厚さは、径方向に配され、さらなる一の寸法は、実質的に軸方向に配される(要素の変形は無視する)。
【0049】
好ましくは、各組に属する全ての騒音低減要素は、それらの取扱いを単純化するために、同じ三次元形状及び/又は実質的に同じ寸法及び厚さを有する。
【0050】
好ましくは、全ての組の全ての騒音低減要素は、同一のさらなる一の寸法及び/又は同一の厚さを有する(換言すると、異なる組に属する騒音低減要素は、前記寸法Lxの値のみが異なる)。このようにして、実現された要素のシーケンスは、それぞれ横方向寸法に関するその展開全体に沿って実質的に均一であり、それにより転動中のタイヤのアンバランスの問題を回避し、及び/又は空洞の一様な占有を保証する。
【0051】
好ましくは、全ての組に属する全ての騒音低減要素は、それらの処置を単純化するために、同じ三次元形状を有する。
【0052】
好ましくは、全ての騒音低減要素の前記それぞれの寸法Lxは、100mm以上、より好ましくは150mm以上、及び/又は300mm以下、より好ましくは250mm以下である。好ましくは、全ての騒音低減要素の前記さらなる一の寸法は、80mm以上、及び/又は160mm以下、より好ましくは140mm以下である。好ましくは、全ての騒音低減要素の厚さは、10mm以上及び50mm以下である。これらの騒音低減要素は、良好な騒音減衰機能を有する。これらの騒音低減要素は、接着剤で接着することによってタイヤの内側に容易に取り付けることができる。接着されると、これらの騒音低減要素は、路面を転動するタイヤの変形サイクルにさらされたときに劣化せず且つ外れない。また、これらの騒音低減要素は、他のタイヤ性能が実質的に変わらないように実質的に維持する。
【0053】
好ましくは、前記騒音低減要素の組を前記それぞれの寸法Lxの昇順でソートすると、各組の騒音低減要素の前記それぞれの寸法Lxと、それぞれの前及び/又は後の組の騒音低減要素の前記それぞれの寸法Lxとの間の差は、10mm以上、より好ましくは20mm以上、及び/又は80mm以下、より好ましくは60mm以下である。本出願人は、多数の異なる周方向延在域を覆うという点でこれらの値がより大きい自由度をもたらすことを検証した。
【0054】
好ましくは、各タイヤにおいて、騒音低減要素は、タイヤのトレッドバンドに順次着設される。
【0055】
さらなる特徴及び利点は、本発明の好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0056】
図面の簡単な説明
以下の説明は、添付図面を参照して述べるが、例示の目的でのみ提供されており、したがって限定する目的はない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の方法によって製造されたタイヤの中央平面に沿った断面(縮尺通りではない)を単に概略的に説明目的でのみ示す。
【
図1a】タイヤの内面に着設されたときの騒音低減要素の考えられる変形プロファイルを示す。
【
図2】本発明の方法のフローチャートを概略的に示す。
【
図3a】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【
図3b】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【
図5】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【
図6】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【
図7a】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【
図7b】本発明の実施形態の数値結果をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
発明の幾つかの実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、タイヤ1は、回転軸線10と、中央平面での内面3の内周延在域とを有する。
【0059】
2つの異なる寸法(周方向長さ)L1、L2を有する騒音低減要素2のシーケンスが周方向でタイヤの内面部分3に着設され、好ましくはトレッドバンド4の位置に配される。
【0060】
図1aは、騒音低減要素2の考えられる変形プロファイルを示し、この変形プロファイルは、例として、変形されていない状態で直線の平行六面体の形態である(ただし、角錐や非直線の平行六面体など、他の形状も考えられる)。
【0061】
各騒音低減要素は、変形されていないとき(実線)、寸法L、さらなる一の寸法(
図1aの平面に垂直)、及び厚さTを有する。
【0062】
タイヤに着設されるとき(破線)、要素2は、その形状をタイヤの湾曲した内面に適合させるように変形を受ける。変形の性質及び程度は、変形されていない要素2の材料及び形状、タイヤの曲率プロファイル並びに要素の変形モダリティなど、幾つかの因子の1つ又は複数に依存する。
【0063】
なお、前述の変形により、2つの隣接する要素間の距離は、要素の厚さ方向に沿って(すなわち径方向に沿って)変化することがあり得る。例えば、タイヤに着設された要素2の側面は、(
図1に示すように)互いに向かって収束して軸線10に近づくことがあり、その結果、径方向内面5での2つの隣接する要素間の距離は、ライナ3でのそれぞれの距離よりも小さくなる。
【0064】
本明細書では、要素2のサイズ及び厚さへの言及は、変形されていない要素に関するものであることを理解されたい。この手法は、特に実用的であり且つ単純である。しかし、本発明から逸脱することなく、変形された要素に言及することも可能である。例えば、タイヤの内面3に接する要素の面の周方向長さL’又は厚さに沿った任意の高さでの要素の周方向長さL’’、例えば(図に示すように)半分の高さでの若しくは径方向内面5での要素の周方向長さL’’などを、要素の前述の寸法として参照することが可能である。長さL、L’、L’’は、それぞれ上述した寸法Lxに関連付けることができる。
【0065】
同様に、以下では、中央平面での内面3(典型的にはライナの内面)で測定した内周延在域Cが使用される。しかし、本発明から逸脱することなく、前述の内周延在域Cに応じた他の線状の周方向延在域を使用することも可能である。例えば、
図1を参照すると、要素2の径方向内面5を包絡するリムの円周を使用することが可能である。
【0066】
図2は、本発明による車両の車輪のためのタイヤ1を製造するための方法100のフローチャートを示す。
【0067】
騒音低減要素の複数Nの組を用意する操作20が提供され、ここで、Nは、2~4の数であり、各組に属する全ての騒音低減要素は、実質的に等しい寸法Lx(xは、1~Nの範囲である)を有し、各組の騒音低減要素の寸法Lxは、他の組の騒音低減要素の寸法Lxと異なる。
【0068】
車両の車輪のためのタイヤの組を典型的には騒音低減要素着設ステーションに連続的に供給する操作30が提供され、各タイヤは、それぞれの内周延在域Cを有し、タイヤの組は、内周延在域の異なる値を有し、例えばタイヤの組は、モデル及び/又はサイズが異なるタイヤを含む。
【0069】
典型的には、前記供給は、供給されるタイヤのモデル及び/又はサイズに関して、したがって内周延在域の値に関してランダムに行われる。典型的には、異なるモデル及び/又はサイズの数は、一のタイヤ工業生産で数十に及び得る。
【0070】
好ましくは、例えばバーコード又はQRコードなどのタイヤ識別子に含まれるタイヤのサイズ及び/又はモデルを識別することにより、各タイヤについて、それぞれの内周延在域Cの値が決定される。
【0071】
騒音低減要素の各組について、内周延在域Cの前記値の関数として、騒音低減要素のそれぞれの個数nx(xは、1~Nの範囲である)を決定する操作40が提供される。この決定は、騒音低減要素を着設しなければならない様々なタイヤの内周延在域の各値について行われる。前記内周延在域値の少なくとも1つに関して、少なくとも2つのそれぞれの個数nxは、ゼロと異なる。
【0072】
典型的には、操作40は、オフラインで行われる。特に、各内周延在域値について個数nxのNタプルを予め決定して、騒音低減要素着設ステーションに到着するタイヤの処理レシピにロードすることができる。ステーションに到着するタイヤの内周延在域が識別されると、関連する個数nxのNタプルが選択される。
【0073】
前記タイヤの組の各タイヤについて、騒音低減要素の各組から、それぞれの個数n
xの騒音低減要素を収集し、且つ収集された騒音低減要素を、寸法L
xを周方向に向けた状態で前記各タイヤの内面に沿って周方向シーケンスで着設する。シーケンスに沿った着設の順序は、任意のものであり得る。好ましくは、騒音低減要素は、周方向で互いに等距離に着設される。一実施形態では、異なるサイズの騒音低減要素は、(例えば、
図1に示すように)できるだけ一様に挿間される。
【0074】
図1に例示的に示すタイヤでは、騒音低減要素のシーケンスは、周方向寸法が均一である2つの組(すなわちN=2)に属する11個の要素からなり、ここで、5個の騒音低減要素6は、残りの4個の騒音低減要素7の寸法L2よりも大きい寸法L1を有する。
【0075】
以下では、幾つかの例示的な実施形態を述べる。それらの実施形態は、上述したことに従って、N及びLxの様々な値を用い、内周延在域の異なる値を有する異なるモデル及び/又はサイズのタイヤの組に関する様々なNタプル選択方法を用いる。
【0076】
全ての例及び実施形態について、要素の厚さは、30mmに等しい。
【0077】
図に示される全てのグラフにおいて、横軸は、内周延在域Cをmm単位で表し、内周延在域Cの考慮される値は、1760~2600mmの範囲である。
【0078】
第1の実施形態
N=2
L
1=220mm
L
2=176mm
内周延在域Cの各値について、個数n
1及びn
2(例えば、n
1及びn
2がそれぞれ0~15である)の全ての対に関し、関連する空き円弧Aは、前述の式:
【数4】
を使用して計算され、空き円弧Aの最小値、すなわち項
【数5】
の最小が特定される。
【0079】
最小値が個数n1及びn2の幾つかの対に対応する場合、2つの個数の合計n1+n2が最小になる対を選択する。
【0080】
図3a及び
図3bは、このようにして計算された数値のグラフを示す。
図3aは、延在域Cの関数として、mm単位での空き円弧Aの傾向(実線、左軸)及びmm単位での平均間隔Δの傾向(破線、右軸)を示す。延在域Cの値の考慮される範囲全体にわたる平均間隔Δの平均値及び標準偏差は、それぞれ2.1mm及び1.3mmに等しい。
【0081】
図3bは、延在域Cの関数として、対応する要素の総数(n
1+n
2、実線)、寸法L
1を有する要素の個数n
1(破線)及び寸法L
2を有する要素の個数n
2(破線)を示す。
【0082】
見てわかるように、この例では、内周延在域は、延在域Cが広範囲にわたって変化するとき、常に約0~5mmを保った平均間隔で、12個の要素を超えない総数の要素で覆われている。
【0083】
C=1900mmでは、空き円弧は、ある個数の2つの対、すなわちn1=7及びn2=2(平均間隔=8/9=0.9mm)、n1=3及びn2=7(平均間隔=0.8mm)に対応して、(個数n1及びn2の全ての可能な対の中で)その最小値8mmを取ることが観察される。この場合、第2の対よりも1つ少ない要素からなる第1の対(10個の要素に対して9個の要素)を選択することが有利であり得る。
【0084】
C=2400mmでは、空き円弧は、ある個数の3つの対、すなわちn1=10及びn2=1、n1=6及びn2=6、並びにn1=2及びn2=11に対応して、その最小値24mmを取る。この場合、11個の要素のみからなる第1の対を選択することが有利であり得る。
【0085】
Cの幾つかの値(例えば、C=2000mm)に関して、最適な解決策は、単一の長さL1又はL2を有する(すなわち単一の組に属する)要素を提供することにも留意されたい。
【0086】
比較例
図4a及び
図4bは、2つの比較例に関して計算された結果をそれぞれ示し、ここで、それぞれ寸法L=130mm、L=200mmを有する要素の1つのみの組(N=1)が使用され、空き円弧の最小値が探索されている。特に、
図4a及び
図4bは、それぞれ同じ左側の縦軸において、延在域C(前の例と同じ値の範囲で変動する)の関数として、mm単位での平均間隔Δの傾向(破線)及び要素の個数nの傾向(実線)を示す。
【0087】
図4aの例では、延在域Cの値の範囲にわたる平均間隔Δの平均値及び標準偏差は、それぞれ4.2mm及び2.5mmに等しい。
【0088】
図4bの例では、延在域Cの値の範囲にわたる平均間隔Δの平均値及び標準偏差は、それぞれ4.2mm及び2.5mmに等しい。
【0089】
見てわかるように、
図4aの例では、いずれにしてもより高いピーク値及び/又はより大きい偏位を有する平均間隔Δに加えて、(例えば、
図3bの例に関する)本発明よりも要素の個数がかなり多い。
【0090】
図4bの例では、(例えば、
図3bの例に関する)本発明のものと同等の要素の個数に対して、平均間隔Δは、
図3bの例のものよりもはるかに高いピーク値及び偏位を取る。
【0091】
したがって、1タイプのみの要素の使用では、とりわけ、平均間隔の効果的な制御及び/又はシーケンスを構成する要素の総数の制限が可能でない。
【0092】
第2の実施形態
N=3
L
1=220mm
L
2=199mm
L
3=174mm
前述の第1の実施形態と同様に、空き円弧Aの最小値が特定される。
図5は、延在域Cの関数として、要素の総数(n
1+n
2+n
3)(実線、左軸)及びmm単位での平均間隔Δ(破線、右軸)を示す。延在域Cの値の範囲全体にわたる平均間隔の平均値及び標準偏差は、それぞれ0.11mm及び0.13mmである。
【0093】
例えば、C=1900mmでは、空き円弧は、計9個の要素に関して最適な3つ組の個数、すなわちn1=5、n2=4及びn3=0に対応して、その最小値4.0mmを取る(平均間隔=4/9=0.44mm)。一方、C=2400mmでは、空き円弧は、計13個の要素に関して最適な3つ組の個数、すなわちn1=3、n2=0及びn3=10に対応して、その最小値0.0mmを取る(平均間隔=0.0mm)。
【0094】
第3の実施形態
N=4
L
1=220mm
L
2=203mm
L
3=188mm
L
4=175mm
前述の第1の実施形態と同様に、空き円弧の最小値が特定される。
図6は、延在域Cの関数として、要素の総数(n
1+n
2+n
3+n
4)(実線、左軸)の傾向及びmm単位での平均間隔Δの傾向(破線、右軸)を示す。延在域Cの値の範囲にわたる平均間隔の平均値及び標準偏差は、それぞれ0.01mm及び0.04mmである。
【0095】
例えば、C=1900mmでは、空き円弧は、計10個の要素に関して最適な4つ組の個数、すなわちn1=1、n2=2、n3=3及びn4=4に対応して、その最小値0.0mmを取り(平均間隔=0.0mm)、C=2400mmでは、空き円弧は、計12個の要素に関して最適な4つ組の個数、すなわちn1=4、n2=1、n3=4及びn4=3に対応して、その最小値0.0mmを取る(平均間隔=0.0mm)。
【0096】
見てわかるように、騒音低減要素の組の数Nが増えるにつれて、より多数(N)の要素の管理の複雑さが増す一方、平均間隔の偏位が急激に低下する(換言すると、平均間隔及び/又は空き円弧のより高度な制御が可能になる)。
【0097】
第4の実施形態
N=2
L1=220mm
L2=176mm
この例では、平均間隔の最小閾値及び最大閾値は、例えば、それぞれ3mm及び8mmに設定される。
【0098】
前述の間隔での内周延在域Cの各値について、個数n
1及びn
2(例えば、n
1及びn
2は、それぞれ0~15である)の全ての対に関して、それぞれの平均間隔Δは、前述の式
【数6】
によって計算され、平均間隔Δが所定の最小値及び最大値を満たす全ての対が特定される。各値Cに関してこのようにして特定された個数の全ての対の中から、2つの個数の合計n
1+n
2が最小になる個数n
1及びn
2の対が(場合により)選択される。
図7a及び
図7bは、このようにして計算された数値の2つのグラフを示す。
図7aは、延在域Cの関数として、mm単位での空き円弧Aの傾向(実線、左軸)及びmm単位での平均間隔Δの傾向(破線、右軸)を示す。この図には、平均間隔Δの所定の下限及び上限も示されている。
図7bは、延在域Cの関数として、要素の総数(n
1+n
2、実線)、寸法L
1を有する要素の個数n
1(破線)及び寸法L
2を有する要素の個数n
2(一点鎖線)を示す。
【0099】
本解決策は、
図3a及び
図3bの解決策と同様に、とりわけ、要素の限られた合計数(この例では8~12個の要素)に対して、平均間隔について、考慮される値Cの範囲全体にわたって特性の顕著な均一性を保証することが観察される。
【0100】
比較例
図8a及び
図8bは、比較例に関して計算された結果を示し、比較例において、寸法L=130mmを有する要素の1つのみの組(N=1)が使用され、前述の間隔での内周延在域Cの関数として、平均間隔Δがそれぞれ3mm及び8mmに予め決定された最小値及び最大値を満たす解決策が探索される。特に、
図8aは、mm単位での延在域Cの関数として、mm単位での空き円弧Aの傾向(破線、左軸)及びmm単位での平均間隔Δの傾向(破線、右軸)を示す。この図には、平均間隔Δの所定の下限及び上限も示されている。
図8bは、延在域Cの関数として要素の数nを示す。
図8a及び
図8bでは、傾向の全てのラインが延在域Cの値の領域で中断されており、平均間隔Δに課された条件を満たす解決策がない。換言すると、これらの領域では、利用可能な騒音低減要素を用いて、平均間隔Δを3~8mmに留めるシーケンスを作成することができない。
【0101】
したがって、
図8a及び
図8bの比較例では、要素の個数(13~19個の要素で変化する)及び空き円弧の変動(最大144mm)が(例えば、
図7a及び
図7bの例に関する)本発明の個数及び変動よりもかなり大きいだけでなく、延在域Cの幾つかの値に関して所望の解決策を見つけることができない。