(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】光学用スチレン系樹脂組成物及び光学部品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20230217BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20230217BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230217BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C08L25/04
C08K5/524
C08K5/13
C08K5/00
(21)【出願番号】P 2020504939
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007240
(87)【国際公開番号】W WO2019172015
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018039940
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】宮島 悠平
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082800(JP,A)
【文献】特開2007-224221(JP,A)
【文献】特開2014-173034(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151055(WO,A1)
【文献】特開2015-195151(JP,A)
【文献】特開2012-149156(JP,A)
【文献】特開2012-149157(JP,A)
【文献】特開2015-017152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スチレン系樹脂と、(b)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤と、(c)
Disperse Blue14、Disperse Blue60、Disperse Blue197、Disperse Blue198、Disperse Blue334、Disperse Blue72、Solvent Blue11、Solvent Blue35、Solvent Blue36、Solvent Blue45、Solvent Blue59、Solvent Blue63、Solvent Blue67、Solvent Blue78、Solvent Blue83、Solvent Blue87、Solvent Blue94、Solvent Blue95、Solvent Blue97、Solvent Blue104、Solvent Blue105、Solvent Blue122、Solvent Violet13、Solvent Violet33、Solvent Violet34、Solvent Violet14、Solvent Violet31、Solvent Violet36、Solvent Violet37、Disperse Violet26、Disperse Violet28、Disperse Violet31、Disperse Violet57、Solvent Green3、Solvent Green20、Solvent Green28から選ばれた1種類以上のアントラキノン系化合物を含み、
スチレン系樹脂組成物100質量%中の前記(b)の含有量は0.02~1質量%であり、
樹脂成分全質量に対する前記(c)の含有量は
1~70ppbであることを特徴とする光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学用スチレン系樹脂組成物からなる光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用スチレン系樹脂組成物及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、透明性、剛性、低吸水性、寸法安定性などの特性に優れ、成形加工性に優れることから、射出成形、押出成形、ブロー成形などの各種成形方法により、電気製品や各種工業材料、食品包装容器、雑貨等として広く用いられている。また、透明性を生かした用途として、導光板等の光学部材にも用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイのバックライトには光源を表示装置の正面に配置する直下型バックライトと側面に配置するエッジライト型バックライトがある。導光板はエッジライト型バックライトに組み込まれ、側面からの光を液晶パネルに導く役割を果たし、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューターのモニター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなど幅広い用途で使用される。そのような導光板に用いられるスチレン系樹脂組成物として、長期間の使用においても透過率の変化が小さいスチレン系樹脂組成物が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献記載の従来技術では、長期間の使用における透過率の変化を抑制できる一方で、均一面発光性及び長期的な均一面発光性が十分でないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、初期の均一面発光性に優れ、且つ長期的な均一面発光性に優れるスチレン系樹脂組成物及び光学部品を提供するという課題を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、(a)スチレン系樹脂と、(b)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤と、(c)アントラキノン系化合物を含み、スチレン系樹脂組成物100質量%中の前記(b)の含有量は0.02~1質量%であり、樹脂成分全質量に対する前記(c)の含有量は0.1~90ppbであることを特徴とする光学用スチレン系樹脂組成物が提供される。
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するため、鋭意研究を進めたところ、特定量のリン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤と、アントラキノン系化合物を併用することで、前記目的が達成されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す種々の実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、光路長115mmでの波長380nm~780nmの平均透過率が80%以上である(但し前記平均透過率は、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行って得た127×127×3mm厚みの板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出しの端面をバフ研磨によって研磨し作成した端面に鏡面を有する試験片を用いて測定するものとする)。
好ましくは、波長480nmの透過率(t480)と波長580nmの透過率(t580)の比率が、以下の関係である。
0.96<t580/t480<1.04
好ましくは、(a)スチレン系樹脂と、(b)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤と、(c)アントラキノン系化合物を含み、スチレン系樹脂組成物100質量%中の前記(b)の含有量は0.02~1質量%であり、光路長115mmでの波長380nm~780nmの平均透過率が80%以上であり(但し前記平均透過率は、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行って得た127×127×3mm厚みの板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出しの端面をバフ研磨によって研磨し作成した端面に鏡面を有する試験片を用いて測定するものとする)、波長480nmの透過率(t480)と波長580nmの透過率(t580)の比率が、以下の関係である。
0.96<t580/t480<1.04
好ましくは、上記光学用スチレン系樹脂組成物からなる光学部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐熱スチレン系樹脂組成物は、初期の均一面発光性に優れ、且つ長期的な均一面発光性に優れるスチレン系樹脂組成物及び光学部品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
<<スチレン系樹脂>>
本発明のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を重合して得ることができる。スチレン系単量体とは、芳香族ビニル系モノマーである、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等の単独又は2種以上の混合物であり、好ましくはスチレンである。また、本発明の特徴を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合可能な単量体と共重合してもよく、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。なお、これらの中でもスチレン系単量体のみからなる重合体が好ましく、特にスチレンホモポリマーが好ましい。
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、スチレン系樹脂組成物100質量%中のスチレン系樹脂の割合は、例えば90~99.96質量%であり、95~99.96質量%が好ましい。スチレン系樹脂の割合は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.96質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0013】
スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを共重合して得られるスチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂である場合、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が80.0~99.9質量%、(メタ)アクリル酸単位の含有量が0.1~20.0質量%であることが好ましい。ただし、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単位の含有量の合計を100質量%とする。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸等であり、メタクリル酸が好ましい。
【0014】
スチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸単位含有量の測定は室温で実施する。スチレン系樹脂0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム0.1mol/Lエタノール溶液にて中和滴定を行い、終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、(メタ)アクリル酸単位の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動滴定装置を使用することができ、京都電子工業株式会社製AT-510により測定を行うことができる。スチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸単位の含有量は、スチレン系樹脂の重合時における原料のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体との組成比によって調整することができるが、相溶する範囲において(メタ)アクリル酸単位を含有するスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸単位を含有しないスチレン系樹脂とをブレンドして調整することもできる。
【0015】
スチレン系樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0016】
スチレン系樹脂の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0017】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0018】
<<リン系酸化防止剤/フェノール系酸化防止剤>>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の少なくとも一方を必須成分として含有する。好ましくは、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の両方を含有する。
【0019】
リン系酸化防止剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%中0.02~1質量%含有することが好ましく、0.02~0.50質量%含有することがより好ましく、0.02~0.30質量%含有することがさらに好ましい。また、フェノール系酸化防止剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%中0.02~1質量%含有することが好ましく、0.02~0.50質量%含有することがより好ましく、0.02~0.30質量%含有することがさらに好ましい。リン系又はフェノール系酸化防止剤を上記含有量で添加した場合、長期的な均一面発光性に優れるからである。スチレン系樹脂組成物100質量%中のリン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の含有量は、それぞれ、具体的には例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08であり、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
リン系酸化防止剤とは、三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4'-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス-[2-メチル-4,6-ビス-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エチルフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、耐加水分解性に優れたものが好ましく、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカンであることが好ましい。特に好ましくは、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイトである。リン系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0021】
フェノール系酸化防止剤とは、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、DL-α-トコフェロール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス-[3,3-ビス-(4'-ヒドロキシ-3'-tert―ブチルフェニル)-ブタン酸]-グリコールエステル等が挙げられる。好ましくは、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。フェノール系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0022】
上記のようにリン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤には非常に多様なものがその中でも、リン系酸化防止剤が、以下に示す(B1-1)~(B1-4)の中から選ばれる少なくとも1種であり、フェノール系酸化防止剤が、以下に示す(B2-1)~(B2-4)の中から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0023】
(B1-1)トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト
(B1-2)2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス
(B1-3)ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(B1-4)3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン
【0024】
(B2-1)オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(B2-2)3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
(B2-3)エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕
(B2-4)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
【0025】
リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の添加方法としては、スチレン系樹脂の重合工程、脱揮工程、造粒工程で添加混合する方法や成形加工時の押出機や射出成形機などで添加混合する方法、親水性添加剤を高濃度に調整した樹脂組成物を無添加のスチレン系樹脂によって目的の含有量に希釈混合する方法などが挙げられ、特に限定されることではない。
【0026】
<<アントラキノン系化合物>>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、アントラキノン系化合物を必須成分として含有する。スチレン系樹脂組成物中における樹脂成分全質量に対するアントラキノン系化合物の含有量は、0.1~90ppbが好ましく、1~70ppbがより好ましく、5~50ppbがさらに好ましく、15~45ppbが特に好ましい。アントラキノン系化合物を上記含有量で添加した場合、初期及び長期的な均一面発光性が優れるからである。上記アントラキノン系化合物の含有量は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90ppbであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
アントラキノン系化合物としては、例えば以下の物が挙げられる。なお、以下に挙げる名称はCOLOR INDEX GENERIC NAMEである。Disperse Blue14、Disperse Blue60、Disperse Blue197、Disperse Blue198、Disperse Blue334、Disperse Blue72、Solvent Blue11、Solvent Blue35、Solvent Blue36、Solvent Blue45、Solvent Blue59、Solvent Blue63、Solvent Blue67、Solvent Blue78、Solvent Blue83、Solvent Blue87、Solvent Blue94、Solvent Blue95、Solvent Blue97、Solvent Blue104、Solvent Blue105、Solvent Blue122、Solvent Violet13、Solvent Violet33、Solvent Violet34、Solvent Violet14、Solvent Violet31、Solvent Violet36、Solvent Violet37、Disperse Violet26、Disperse Violet28、Disperse Violet31、Disperse Violet57、Solvent Green3、Solvent Green20、Solvent Green28。
【0028】
<<その他の添加剤>>
スチレン系樹脂組成物には、本発明の無色透明性を損なわない範囲でミネラルオイルを含有しても良い。また、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアミド等の内部潤滑剤や、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、帯電防止剤、外部潤滑剤等の添加剤が含まれていても良い。また、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドが好適であり、含有量としては樹脂組成物中に30~200ppmであることが好ましい。
【0029】
紫外線吸収剤は、紫外線による劣化や着色を抑制する機能を有するものであって、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸アニリド系、マロン酸エステル系、ホルムアミジン系などの紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、ヒンダートアミン等の光安定剤を併用してもよい。
【0030】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形等、目的に応じた成形方法で成形することができ、その形状は制限されるものではない。例えば板状成形品であれば、導光板等に加工することができる。得られた成形品は、導光板等の成形品内部に光を透過させることによって機能する光学用部材として用いられる。導光板等の光学部材では、光の透過する距離(光路長)が長いため、均一面発光性に優れることが好ましい。ここで、均一面発光性に優れるとは、透過性が優れ、光の吸収率の波長依存性が小さい材料であることを意味する。
【0031】
透過率については、光路長115mmでの波長380nm~780nmの平均透過率が80%以上であることが好ましく、82.5%以上であることがより好ましく、84%以上であることがさらに好ましい。但し、上記平均透過率は、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行って得た127×127×3mm厚みの板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出しの端面をバフ研磨によって研磨し作成した端面に鏡面を有する試験片を用いて測定するものとする。また、80℃で1000時間保管後と初期の平均透過率の差の絶対値は2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
光の吸収率の波長依存性は、例えば、波長480nmの透過率(t480)と波長580nmの透過率(t580)の比率(t580/t480)により評価することができる。本発明においては、比率(t580/t480)は、0.96<t580/t480<1.04であることが好ましく、0.97<t580/t480<1.03であることがより好ましく、0.98<t580/t480<1.02であることがさらに好ましく。ここで、光の吸収率の波長依存性が小さいとは、上記比率(t580/t480)が原則1に近いことを意味する。上記比率(t580/t480)は、具体的には例えば、0.97、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
光路長115mmの透過率は、次の手順にて測定を行った。スチレン系樹脂組成物のペレットを用い、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×3mm厚みの板状成形品を成形した。ここで長期の熱安定性を評価するサンプルは、80℃のオーブン内に1000時間保管した。次に、板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定した。
【0034】
導光板は、板状の成形品の端面(側面)から光を入射し、成形品の後面(非発光面)に形成された反射パターンにより、成形品の前面(発光面)に光を導き、面発光させる機能を持った部材である。反射パターンは、スクリーン印刷法、射出成形法、レーザー法やインクジェット法などの方法によって形成することができる。板状の成形品から導光板に加工する際、光の入射面或いは端面全面を研磨処理して、鏡面とすることが好ましい。また、出射光の均一性を高めるために、板状成形品の前面(発光面)にプリズムパターン等を設けることができる。板状成形品の前面あるいは後面のパターンは、板状成形品の成形時に形成させることができ、例えば射出成形では金型形状、押出成形ではロール転写などによって、パターンを形成させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(スチレン系樹脂の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレン及びメタクリル酸の合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通り
重合開始剤:2,2-ジ(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラAを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却及び切断しペレット化した。
【0037】
【0038】
(実施例1~4、比較例1~3)
表2に示す含有量にて、(a)スチレン系樹脂PS-1と、(b)リン系酸化防止剤/フェノール系酸化防止剤、(c)アントラキノン系化合物をスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。表2で用いた(b)のリン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤はそれぞれ、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(株式会社ADEKA製 アデカスタブHP-10)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)であり、(c)のアントラキノン系化合物はSolvent Violet33(三菱ケミカル株式会社製 Blue J)である。
【0039】
また、得られたペレットを用いて、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×3mm厚みの板状成形品を成形した。長期の熱安定性を評価するため、得られた成形品を80℃のオーブン内で1000時間保管した。保管前の初期の成形品と保管後の成形品について光学特性を評価するため、板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定した。
【0040】
【0041】
表2においては、各評価について下記のような基準により示した。なお、×、△、○、◎を設定し、×が最も劣り、◎が最も優れ、×、△、○、◎の順に評価が高くなる。
透過性
◎:透過率が84%以上
○:透過率が82.5%以上、84%未満
△:透過率が80%以上、82.5%未満
×:透過率が80%未満
波長依存性
◎:0.98<t580/t480<1.02
○:0.97<t580/t480≦0.98、又は、1.02≦t580/t480<1.03
△:0.96<t580/t480≦0.97、又は、1.03≦t580/t480<1.04
×:t580/t480≦0.96、又は、t580/t480≧1.04
均一面発光性
透過性及び波長依存性の2つの評価を併せて評価した項目である。
◎:透過性及び波長依存性が共に◎
○:透過性と波長依存性の両方が○以上、且つ、少なくとも一方が○
△:透過性と波長依存性の両方が△以上、且つ、少なくとも一方が△
×:透過性と波長依存性の少なくとも一方が×
長期均一面発光性
初期の均一面発光性、及び長期熱安定性試験後(80℃、1000時間後)の面均一発光性について総合評価した項目である。
◎:初期の均一面発光性が◎且つ長期熱安定性試験後の均一面発光性が○以上
○:初期の均一面発光性が○且つ長期熱安定性試験後の均一面発光性が△以上
△:初期の均一面発光性が△且つ長期熱安定性試験後の均一面発光性が△
×:初期の均一面発光性が×又は長期熱安定性試験後の均一面発光性が×
【0042】
実施例の成形品は、初期の均一面発光性に優れ、且つ長期的な均一面発光性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の光学用スチレン系樹脂組成物及び成形品は、初期の均一面発光性に優れ、且つ長期的な均一面発光性に優れることから、例えば、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなどの導光板用途で好適に用いることができる。