(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】アデノウイルスベクター及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20230217BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230217BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20230217BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230217BHJP
C07K 14/075 20060101ALI20230217BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230217BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230217BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/33
C12N15/62 Z
C07K14/075
C07K19/00
A61K35/761
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2020523711
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2018079719
(87)【国際公開番号】W WO2019086461
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516257833
【氏名又は名称】ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN VACCINES & PREVENTION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウイル,タコ,ギルス
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,スミトラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリンガ,ジョート
(72)【発明者】
【氏名】カーン,セリナ
(72)【発明者】
【氏名】カスターズ,ジェローム,エイチ.,エイチ.,ヴィ.
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0143302(US,A1)
【文献】特表2009-523007(JP,A)
【文献】特表2007-518414(JP,A)
【文献】特表2013-501001(JP,A)
【文献】特表2001-517080(JP,A)
【文献】PLoS ONE, 2012, Vol.7, Issue 4, e33920 (pp.1-13)
【文献】Journal of Virology, 2012, Vol.86, No.2, pp.1267-1272
【文献】Journal of Virology, 2011, Vol.85, No.20, pp.10774-10784
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含
み、ヒトアデノウイルス-26(Ad26)に基づく、アデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記ヘキソンポリペプチド配列が配列番号3又は配列番号4を含む、請求項1に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項3】
前記アデノウイルスベクターがさらにE1欠失を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項4】
前記アデノウイルスベクターがさらにE3欠失を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項5】
前記アデノウイルスベクターがさらに、ヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)E4 orf6を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記アデノウイルスベクターが、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項7】
前記アデノウイルスベクターがさらに少なくとも1つの導入遺伝子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、前記E1欠失、前記E3欠失、及び/又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項9】
前記アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-26(Ad26)に由来する1種以上の核酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを含む組換え細胞。
【請求項11】
(a)請求項10に記載の組換え細胞を、前記アデノウイルスベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び
(b)前記組換え細胞から前記アデノウイルスベクターを単離することを含む、
アデノウイルスベクターを作製する方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物。
【請求項13】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法
で用いるための、請求項12に記載の免疫原性組成物であって、
前記方法が、免疫原性組成物を前記対象に投与することを含む、
免疫原性組成物。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、免疫原性組成物を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーに関する。より詳細には、抗原を送達し、宿主において免疫応答を誘発するための複製欠損アデノウイルスベクターなどのアデノウイルスベクターの分野及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノウイルスベクターは、遺伝子治療適用及びワクチンに広く応用されている。AdV-5ベクターに基づくワクチンは、様々な動物モデルにおいて強力で保護的な免疫応答を誘発することが示されている(例えば、国際公開第2001/02607号パンフレット;国際公開第2002/22080号パンフレット;Shiver et al.,Nature 415:331(2002);Letvin et al.,Ann.Rev.Immunol.20:73(2002);Shiver and Emini,Ann.Rev.Med.55:355(2004))。しかしながら、組換えAdV-5ベクターに基づくワクチンの有用性は、ヒト集団におけるAdV-5特異的中和抗体(NAb)の高い血清有病率によって制限される可能性が高い。抗AdV-5免疫の存在は、マウス、アカゲザル、及びヒトにおける研究において、AdV-5に基づくワクチンの免疫原性を大幅に抑制することが示されている。
【0003】
最も一般的なヒトアデノウイルス、例えば、AdV-5により以前に感染又は治療された個体における既存の免疫の存在を回避するための一つの有望な戦略は、そのような既存の免疫に遭遇しないアデノウイルス血清型からの組換えベクターの開発を含む。1つのそのような戦略は、天然カプシドタンパク質配列(例えば、ヘキソン及び/又はファイバータンパク質配列)の、低い血清有病率を有する(又は有しない)アデノウイルス由来のカプシドタンパク質配列(例えば、ヘキソン及び/又はファイバータンパク質配列)による置換を含むキメラアデノウイルスの使用に基づく。
【0004】
したがって、大量に生産可能で、宿主の既存の免疫に遭遇しないが依然として免疫原性があり、ベクターに挿入された異種核酸によってコードされる抗原に対して強い免疫応答を誘導することができる代替的なアデノウイルスベクターが、この分野では必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、アデノウイルスベクターが提供される。アデノウイルスベクターは、配列番号1又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含み得る。特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、配列番号3又は配列番号4を含むヘキソンポリペプチド配列を含み得る。
【0006】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターはさらに、E1欠失を含む。特定の実施形態では、アデノウイルスベクターはさらに、E3欠失を含む。アデノウイルスベクターはさらに、ヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)E4 orf6を含み得る。アデノウイルスベクターは、例えば、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含み得る。
【0007】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターはさらに、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの導入遺伝子は、E1欠失、E3欠失、及び/又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する。
【0008】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス-26(Ad26)に由来する1つ以上の核酸配列を含む。
【0009】
また、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターを含む組換え細胞も提供される。また、アデノウイルスベクターを作製する方法も提供される。方法は、(a)本明細書に記載される組換え細胞を、アデノウイルスベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び(b)組換え細胞からアデノウイルスベクターを単離することを含む。
【0010】
また、本明細書に記載されるアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物が提供される。また、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法が提供される。方法は、対象に本明細書に記載される免疫原性組成物を投与することを含む。また、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、免疫原性組成物を作製する方法が提供される。
【0011】
上述の概要、及び下記の本願の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付した図面とともに読む場合により十分に理解されることになる。しかしながら、本願は、図面に示される明確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書に記載されるヘキソンキメラベクターのヘキソン配列置換の概略図を示す。
図1Aは、ヘキソンキメラHAdV-5ベクターAd5HVR48(1-7)を作製するためにHAdV-5とHAdV-48ヘキソンの間で以前に交換された5つのヘキソン遺伝子セグメント(灰色のバー)及び7つの短い超可変領域(HVR)(黒色のバー)の全長HAdV-26ヘキソン遺伝子(白色のバー)内の位置を示す概略図を示す(Roberts et al.,Nature 441:239-43(2006))。
図1Bは、HAdV-26、PtroAdV-1、PtroAdV-12、及びPtroAdV-13のヘキソンポリペプチド配列の部分的なアラインメントを示す。灰色のバーは、HAdV-26とPtroAdV-1、PtroAdV-12、又はPtroAdV-13の間において本明細書で交換された5つのヘキソン遺伝子セグメントに相当する。黒色のバーは、HAdV-5とHAdV-48の間で交換された前述の以前に割り当てられたHVRに相当する配列を示す。
【
図2-1】キメラpAd26ベクターの概略図を示す。
図2Aは、pAd26.HVRPtr12.luc(配列番号21)の一般的な特徴の概略図を示す。
図2Bは、pAd26.HVRPtr13.luc(配列番号22)の一般的な特徴の概略図を示す。
【
図3】pAd26.ApoA1.RSVF-2A-GLuc(配列番号29)の一般的な特徴の概略図を示す。
【
図4】(E1補完細胞において)アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucを作製するために使用された相同組換え戦略の概略図を示す。
【
図5-1】Ad26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.FLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答を示す。
図5Aは、実験構成を示す。
図5Bは、インターフェロンガンマ(IFN-γ)ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原(すなわち、Fluc、ホタルルシフェラーゼ)に対してAd26.FLuc、Ad26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.FLucによって誘導される免疫応答のグラフを示す。y軸は10
6個の脾細胞当たりのスポット形成単位(SFU)の数を示し、点線は中程度の刺激の95%パーセンタイルを示す。
【
図6-1】Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答を示す。
図6Aは、実験構成を示す。
図6Bは、Ad26.RSVF-2A-GLuc、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによる免疫化後8週目に実施されたRSV A2ウイルス中和アッセイ(VNA)の結果を示す。
図6Cは、IFN-γ ELISPOT分析によって決定されるとおりのベクターにコードされた抗原RSV Fに対してAd26.RSVF-2A-GLuc、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性免疫応答を示す。y軸は10
6個の脾細胞当たりのスポット形成単位(SFU)の数を示し、点線は中程度の刺激の95%パーセンタイルを示す。
図6Dは、免疫化後8週目の免疫化マウスの血清中のAd26.RSVF-2A-GLuc、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによって誘導されるRSVF特異的IgG結合抗体のグラフを示す。グラフは、終点力価として計算されたIgG ELISA力価を示す(log
10)。
【
図7】アデノウイルスベクターAd35、Ad26、Ad5、Ad4、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13で免疫化されたマウスにおいて誘導される同種及び異種アデノウイルス中和力価を示す。
【
図8】米国(US)及び欧州連合(EU)に居住する18歳~55歳までの成人に由来する200名のヒトコホート血清試料におけるAd26、Ad5、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13の血清有病率を示す。各ベクターに対してこれらの血清において測定された中和力価を、示されるとおりに図表において表される4種のカテゴリー(<16(中和なし)、16~300、300~1,000、1000~4000及び>4000)に分けた。
【
図9】生産細胞株sPER.C6における新規のカプシドキメラベクターAdHVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.FLucの生産性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、ヒト骨格及びキメラヘキソン又はファイバーポリペプチド配列のうちの少なくとも1つを含むキメラアデノウイルスベクターの作製に少なくとも部分的に基づく。アデノウイルスベクターは、免疫応答を誘発するが、低い血清有病率を維持することができる。アデノウイルスベクターは、ワクチンのために製剤化され、且つ目的の特異抗原に対する防御免疫を誘導するために使用され得る。
【0014】
背景技術の項で、また本明細書全体を通して、様々な刊行物、論文及び特許が引用又は記載されており、これらの参考文献はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文献、行為、材料、装置、物品などの議論は、本発明の文脈を提供することを目的とする。そのような議論は、これらの内容のいずれか又は全てが、開示されている、又は特許請求されているあらゆる発明に関する先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
【0015】
別途定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。さもなければ、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書で規定されている意味を有する。
【0016】
本明細書で使用する場合、及び添付した特許請求の範囲においては、単数形「a」、「an」及び「the」は、別途文脈が明白に規定していない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。
【0017】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などの任意の数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は、通常、列挙された値の±10%を含む。例えば、濃度1mg/mLは、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%(w/v)~10%(w/v)の濃度範囲は、0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、全ての可能な部分的範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含み、文脈に明らかに別段の指示がない限り、そのような範囲内の整数及び値の分数を含む。
【0018】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解すべきである。当業者は、通例の実験だけを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多数の等価物を認識することになるか、又は確認することがきできるであろう。このような等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(has)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(contains)」、若しくは「~を含有する(containing)」、又はそれらの任意の他の変形は、記載された整数又は整数群を包含することを意味するものと理解されるが、任意の他の整数又は整数群の排除を意味するものではなく、非排他的又はオープンエンドであることが意図されている。例えば、構成要素の一覧を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は必ずしもそれらの構成要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置が本来具備している他の構成要素を含むことができる。さらに、明確に反対のことを述べない限り、「又は」は包括的「又は」を意味し、排他的「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(又は、存在し)且つBが偽である(又は、存在しない)、Aが偽であり(又は、存在しない)且つBが真である(又は、存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は、存在する)。
【0020】
本明細書で使用する場合、多数の列挙された要素間の接続語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1選択肢は第2要素を伴わない第1要素の適用性を指す。第2選択肢は、第1要素を伴わない第2要素の適用性を指す。第3選択肢は、第1及び第2要素を合わせた適用性を指す。これらの選択肢のいずれか1つは、本明細書で使用する用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時の適用性は、さらに用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。
【0021】
本明細書で使用する場合、「~からなる(consists of)」という用語、又は「~からなる(consist of)」若しくは「~からなる(consisting of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含するが、その特定の方法、構造、又は組成物にさらなる整数又は整数群を加えることはできないことを意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「実質的に~からなる(consists essentially of)」という用語、又は「実質的に~からなる(consist essentially of)」若しくは「実質的に~からなる(consisting essentially of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含し、且つ、その特定の方法、構造、又は組成物の基本の又は新規の特性を実質的に変化させない記載された整数又は整数群を任意選択的に包含することを意味する。M.P.E.P.2111.03節を参照されたい。
【0023】
本明細書で使用する場合、「対象」は、本発明の実施形態による方法によってワクチン接種されることになるか又はワクチン接種されたあらゆる動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。用語「哺乳動物」は、本明細書で使用する場合、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ネズミ、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
語「右」、「左」、「下」及び「上」は、参照される図面における方向を指定する。
【0025】
また、本明細書で好ましい発明の構成要素の寸法又は特性に言及するときに使用される「約」、「略」、「一般に」、「実質的に」などの用語は、当業者に理解されるとおり、記載された寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じか又は類似している、そこからのわずかな変形を排除しないことを示すことは理解されたい。少なくとも、そのような数値パラメータを含む言及は、当該技術分野で受容されている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又はその他の系統誤差、製造上の公差など)を使用して、最下位数を変化させない変動を含むであろう。
【0026】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、ヘキソン及びファイバーポリペプチド並びにそれらをコードするポリヌクレオチド)の文脈における用語「同一」又はパーセント「同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は目視による調査によって測定されるとおり、最大の一致について比較及び整列される場合に、同じあるか、又は特定のパーセンテージの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0027】
配列比較のために、通常1つの配列が参照配列として作用し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0028】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は目視による調査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.,の合弁事業(1995年増補版)(Ausubel)を参照のこと)によって実行され得る。
【0029】
パーセント配列同一性及び配列類似性を判定するのに好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschuel et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402において記載される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さの文字列とアラインメントさせた場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致又はそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い文字列を同定することにより、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは隣接文字列スコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの最初の隣接文字列ヒットは、より長いHSPを含む文字列を探し出すための探索を開始するためのシードとして作用する。次に、文字列ヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。
【0030】
累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメータM(一致残基の対に関する報酬スコア;常に>0)及びN(不適正残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関して、スコアリングマトリックスは、累積スコアを計算するために使用される。各方向における文字列ヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その最大到達値から量X減少する場合;1つ以上の負のスコアの残基のアラインメントが蓄積することにより、累積スコアが0以下となる場合;又はいずれかの配列の端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)が11、期待値(E)が10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を初期設定として使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、ワード長(W)が3、期待値(E)が10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを初期設定として使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))。
【0031】
パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993))。BLASTアルゴリズムによりもたらされる類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0032】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることのさらなる指標は、以下に記載されるとおり、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは通常、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載されるとおり、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「防御免疫」又は「防御免疫応答」は、ワクチン接種された対象が、このワクチン接種を行った対象の病原性因子による感染を防除できることを意味する。病原性因子は、例えば、抗原性遺伝子産物若しくは抗原性タンパク質、又はその断片であり得る。通常、「防御免疫応答」が発現された対象は、軽度~中程度の臨床症状を発現するにすぎないか又は症状を全く発現しない。通常、特定の因子に対する「防御免疫応答」又は「防御免疫」を有する対象は、前記因子による感染の結果として死亡しない。
【0034】
用語「アジュバント」は、免疫系の刺激を引き起こす1種以上の物質として定義される。この文脈において、アジュバントは、本発明のアデノウイルスベクターに対する免疫応答を増強させるために使用される。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「抗原性遺伝子産物又はその断片」又は「抗原性タンパク質」は、細菌、ウイルス、寄生虫、若しくは真菌タンパク質、又はその断片を含み得る。好ましくは、抗原性タンパク質又は抗原性遺伝子産物は、宿主において防御免疫応答を高め、例えば、疾患又は感染症(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、若しくは真菌疾患又は感染症)に対する免疫応答を誘導し、且つ/又は疾患又は感染症に対して対象を保護する免疫を対象において疾患又は感染症に対してもたらす(すなわち、ワクチン接種する)ことができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ」は、通常互いに関連付けられていない2種以上の遺伝子、核酸、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含む遺伝子、核酸、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを意味する。「キメラ」遺伝子、核酸、又はタンパク質は、2つ以上の無関係な配列(例えば、2つ以上の異なるタンパク質をコードする2つ以上の異なる核酸)間の融合であり得る。「キメラ」遺伝子、核酸、又はタンパク質は、2つ以上の関連する配列間の融合であり得る(例えば、核酸は同じタンパク質をコードするが、核酸は異なる供給源物質に由来する、すなわち、一方の核酸がヒトであり、他方の核酸がサルである)。
【0037】
アデノウイルスベクター
特定のアデノウイルスへの曝露は、特定のアデノウイルス血清型に対する免疫応答をもたらし、アデノウイルスベクターの有効性に影響を及ぼす可能性がある。ヒトアデノウイルスによる感染はヒトにおいて一般的であるため、ヒト集団におけるヒトアデノウイルスに対する中和抗体の有病率は高い。個体におけるこのような中和抗体の存在は、ヒトアデノウイルス骨格に基づく遺伝子導入ベクターの有効性を低減すると予想され得る。有効性の低減を回避するための1つの方法は、中和抗体の標的であるアデノウイルスカプシドタンパク質上のエピトープを置き換えることである。カプシドタンパク質上の標的配列は、低い有病率であり、したがって中和抗体がヒト集団において希少である他のアデノウイルス(例えば、サルアデノウイルス)に由来するタンパク質配列で置き換えられ得る。
【0038】
「カプシドタンパク質」は、特定のアデノウイルスの血清型及び/又は向性の決定に関与する、アデノウイルス又はその機能的断片若しくは誘導体のカプシド上のタンパク質を指す。カプシドタンパク質は通常、ファイバー、ペントン及び/又はヘキソンタンパク質を含む。特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、アデノウイルスの全体又は全長カプシドタンパク質である。他の実施形態では、カプシドタンパク質は、アデノウイルスの全長カプシドタンパク質の断片又は誘導体である。特定の実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターによってコードされるヘキソン、ペントン及びファイバーは、同じ又は異なるアデノウイルス骨格のものである。
【0039】
「ヘキソンポリペプチド」は、アデノウイルスヘキソンコートタンパク質、その機能的断片、及び誘導体を指す。
【0040】
「ファイバーポリペプチド」は、アデノウイルスファイバータンパク質、その機能的断片、及び誘導体を指す。
【0041】
アデノウイルスに対する中和抗体の1つの標的は、主要なコートタンパク質であるヘキソンタンパク質である。血清型を定義し、中和抗体に結合するヘキソンタンパク質又はヘキソンタンパク質内の可変配列を、ヒト集団では希少なアデノウイルスに由来するヘキソンタンパク質又はヘキソンタンパク質内の可変配列で置き換えることは、ヒトで一般的に見られる抗体による中和の影響を受けにくいアデノウイルスベクターの構築を可能にし得る。
【0042】
ヘキソン超可変領域(HVR)は、異なるアデノウイルス血清型間で最も高い可変性を示すヘキソンポリペプチドの領域である。一般に、これらのHVRは、ヘキソンタンパク質三量体の溶媒露出表面に相当すると考えられ(インタクトなウイルス粒子の文脈内)、関連して、それらは、抗体媒介性アデノウイルス中和の重要な決定基であると予想される(Roberts et al.,Nature 441:239-43(2006))。したがって、所与のアデノウイルスベクターのヘキソンHVRの、ヒトにおいて低い血清有病率を有する(又は有しない)アデノウイルのものによる置換は、ヒト標的集団における既存の抗ベクター体液性免疫を回避するための可能な手段となる。結果的に、主にHAdV-5に基づくベクター内でヘキソン配列置換を伴うヘキソンキメラ化のコンセプトを探求する複数の研究が存在している(Roy et al.,J Virol.72:6875-9(1998);Gall et al.,J Virol.72:10260-4(1998);Youil et al.,Hum.Gene Ther.13:311-20(2002);Wu et al.J Virol.76:12775-82(2002);Roy et al.,Virology.333:207-14(2005);Roberts et al.,Nature 441:239-43(2006);Bradley et al.,J Virol.86:1267-72(2012);Yu et al.,Biochem Biophys Res Commun.421:170-6(2012);Bruder et al,PLoS One.7(4):e33920(2012))。
【0043】
アデノウイルスに対する中和抗体の第2の標的は、ファイバータンパク質である。ファイバータンパク質を非ヒト起源である希少なアデノウイルスに由来するファイバー配列で置き換えること、より好ましくは、ファイバータンパク質内で可変配列を置き換えることは、ヒトで一般的に見られる抗体による中和の影響を受けにくいアデノウイルスベクターの構築をも可能にし得る。上記のファイバー置換とヘキソン置換との組合せは、ヒト集団に一般的に存在する抗体による中和に対する追加の抵抗性を付与することができる。
【0044】
本開示は、導入遺伝子及びキメラヘキソン核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターを提供する。アデノウイルスベクターは、例えば、配列番号1又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含み得る。特定の実施形態では、ヘキソンポリペプチド配列は、配列番号3又は配列番号4を含む。アデノウイルスベクターは、例えば、ヒトアデノウイルス-4、ヒトアデノウイルス-5、ヒトアデノウイルス-26、又はヒトアデノウイルス-35に由来する1種以上の核酸配列を含み得る。特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含む。
【0045】
「アデノウイルスベクター」は、アデノウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来するか又は含有する組換えベクターを指す。
【0046】
典型的には、本発明のアデノウイルスベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、又はバキュロウイルスベクター上に組換えアデノウイルスゲノム全体を含む。本発明の核酸分子は、クローニングにより得られるか、又は合成的に生成されるRNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得る。
【0047】
当業者であれば、複数の血清型に由来する要素が単一の組換えアデノウイルスベクター、例えば、ヒト又はサルアデノウイルスにおいて組み合わせ得ることを認識するであろう。したがって、異なる血清型から望ましい特性を組み合わせるキメラアデノウイルスベクターが生成され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、キメラヘキソン及び/又はファイバーポリペプチド配列の既存の免疫の不在を、rAd4、rAd5、rAd26、又はrAd35などの現存するアデノウイルスベクターの高いレベルの抗原送達能力及び抗原提示能力と組み合わせることができた。
【0048】
ワクチンとして使用するためのアデノウイルスベクターの利点としては、報告されている膨大な数のアデノウイルスベクターを用いた研究、開発、製造及び臨床試験における長年の経験に基づく、操作の容易性、良好な大規模での製造可能性、及び優れた安全性の記録が挙げられる。ワクチンとして用いられるアデノウイルスベクターは一般に、導入遺伝子にコードされたタンパク質又は導入遺伝子にコードされた遺伝子産物に対する良好な免疫応答、例えば細胞免疫応答をもたらす。本発明によるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスの任意の型に基づいてもよく、特定の実施形態では、ヒトアデノウイルスであり、それは任意の群又は血清型であってもよい。好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスは、群A、B、C、D、E、F又はGに由来するヒトアデノウイルスに基づく。他の好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型5、11、26、34、35、48、49、又は50に基づく。他の実施形態では、それはサルアデノウイルス、例えばチンパンジーアデノウイルス又はゴリラアデノウイルスであり、それらは任意の血清型であってもよい。特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、チンパンジーアデノウイルス1、3、7、8、21、22、23、24、25、26、27.1、28.1、29、30、31.1、32、33、34、35.1、36、37.2、39、40.1、41.1、42.1、43、44、45、46、48、49、50、67、又はSA7P型に基づく。
【0049】
より好ましい実施形態では、第2の組成物のチンパンジーアデノウイルスベクターは、ChAdV3である。組換えチンパンジーアデノウイルス血清型3(ChAd3又はcAd3)は、ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)のものと類似した特性を有する亜群Cのアデノウイルスである。ChAd3は、C型肝炎ウイルス(HCV)のための候補ワクチンを評価するヒト試験において安全であり且つ免疫原性であることが示されている(Barnes E,et al.2012 Science translational medicine 4:115ra1)。ChAd3に基づくワクチンは、ヒトAd5ベクターワクチンに匹敵する免疫応答を誘導できたことが報告された。例えば、Peruzzi D,et al.2009 Vaccine 27:1293-300及びQuinn KM,et al.2013 J Immunol 190:2720-35;国際公開第2005/071093号パンフレット;国際公開第2011/0130627号パンフレット等を参照されたい。
【0050】
アデノウイルスベクター、その構築方法及びその増殖方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,559,099号明細書、同第5,837,511号明細書、同第5,846,782号明細書、同第5,851,806号明細書、同第5,994,106号明細書、同第5,994,128号明細書、同第5,965,541号明細書、同第5,981,225号明細書、同第6,040,174号明細書、同第6,020,191号明細書及び同第6,113,913号明細書、並びにそれぞれVirology,B.N.Fields et al.,eds.,3d ed.,Raven Press,Ltd.,New York(1996)の67及び68章に収録のThomas Shenk,「Adenoviridae and their Replication」、M.S.Horwitz,「Adenoviruses」、並びに本明細書で言及している他の参考文献に記載されている。一般的には、アデノウイルスベクターの構築は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Watson et al.,Recombinant DNA,2d ed.,Scientific American Books(1992)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,NY(1995)、並びに本明細書で言及している他の参考文献に記載されているものなど、標準的な分子生物学的手法の使用を含む。
【0051】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1欠失及び/又はE3欠失を含む。E1又はE3欠失は、例えば、遺伝子の完全な欠失又は部分的な欠失を含むことができ、これによりE1又はE3遺伝子産物が機能的に欠損する。したがって、特定の実施形態では、アデノウイルスは、複製欠損であり、例えば、これは、ゲノムのE1領域に欠失を含むためである。当業者に知られるとおり、アデノウイルスゲノムから必須領域が欠失している場合、これらの領域でコードされる機能は、好ましくは、プロデューサー細胞によってトランスに提供される必要がある。すなわち、E1、E2及び/又はE4領域の一部又は全部がアデノウイルスから欠失している場合、これらは、プロデューサー細胞内、例えばそのゲノムに組み込まれるか、又はいわゆるヘルパーアデノウイルス若しくはヘルパープラスミドの形態で存在する必要がある。アデノウイルスは、E3領域内にも欠失を有し得るが、これは複製に不要であるため、そのような欠失は補完される必要はない。E1、E2、E3及びE4領域のうちの1つ以上はまた、目的の導入遺伝子(通常、プロモーターに連結されている)を不活性化されることになる領域に挿入するなど、他の手段によっても不活性化され得る。
【0052】
使用可能なプロデューサー細胞(当該技術分野及び本明細書では、「パッケージング細胞」又は「補完細胞」と称される場合がある)は、所望のアデノウイルスが増殖し得る任意のプロデューサー細胞であり得る。例えば、組換えアデノウイルスベクターの増殖は、アデノウイルス内の欠損を補完するプロデューサー細胞内で行われる。そのようなプロデューサー細胞は、好ましくは、それらのゲノム内に少なくとも1つのアデノウイルスE1配列を有し、それによりE1領域内に欠失を有する組換えアデノウイルスを補完することができる。任意のE1を補完するプロデューサー細胞、例えばE1により不死化されたヒト網膜細胞、例えば911又はPER.C6細胞(米国特許第5,994,128号明細書を参照)、E1形質転換羊膜細胞(欧州特許第1230354号明細書を参照)、E1形質転換A549細胞(例えば、国際公開第98/39411号パンフレット、米国特許第5,891,690号明細書を参照)、GH329:HeLa(Gao et al.,2000,Hum Gene Ther 11:213-19)、293などを用いることができる。特定の実施形態では、プロデューサー細胞は、例えば、HEK293細胞、又はPER.C6細胞、又は911細胞、又はIT293SF細胞などである。プロデューサー細胞内でのアデノウイルスベクターの産生は(Kovesdi et al.,2010,Viruses 2:1681-703)において概説される。
【0053】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは、1種以上のヒトアデノウイルス核酸配列を含むキメラアデノウイルスベクターである。ヒトアデノウイルス核酸は、例えば、ヒトアデノウイルス-4(Ad-4)、ヒトアデノウイルス-5(Ad-5)、ヒトアデノウイルス-26(Ad-26)、又はヒトアデノウイルス-35(Ad-35)から選択され得る。特定の実施形態では、E1欠損アデノウイルスベクターは、ヒトAd5のアデノウイルスのE4-orf6コード配列を含む。これは、Ad5のE1遺伝子を発現するよく知られた補完細胞株、例えば293細胞又はPER.C6細胞におけるそのようなアデノウイルスの増殖を可能にする(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるFallaux et al.,1998,Hum Gene Ther 9:1909-17,Havenga et al.,2006,J Gen Virol 87:2135-43;国際公開第03/104467号パンフレットを参照のこと)。
【0054】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターは導入遺伝子を含む。「導入遺伝子」は、ベクター中において天然に存在しない核酸である異種核酸を指し、本発明によれば、導入遺伝子は、対象において免疫応答を誘発する抗原性遺伝子産物又は抗原性タンパク質をコードし得る。導入遺伝子は、例えば、標準的な分子生物学的手法によってベクターに導入され得る。導入遺伝子は、例えば、アデノウイルスベクターの欠失したE1若しくはE3領域内、又はE4領域とrITRとの間の領域内にクローン化され得る。導入遺伝子は、一般に、発現制御配列に作動可能に連結される。好ましい実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子挿入部位で挿入される。
【0055】
必要に応じて、本発明の実施形態によるヘキソン又はファイバー核酸配列、及び/又は導入遺伝子は、治療される宿主(例えば、ヒト)における適切な発現を確実にするためにコドン最適化され得る。コドン最適化は、当該技術分野において広く適用されている技術である。
【0056】
導入遺伝子は、アデノウイルス由来のプロモーター(例えば、主要後期プロモーター)の制御下に置かれ得る(すなわち、作動可能に連結され得る)か、又は異種プロモーターの制御下に置かれ得る。好適な異種プロモーターの例としては、CMVプロモーター及びRSVプロモーターが挙げられる。好ましくは、プロモーターは、発現カセット内部の目的の異種遺伝子の上流に位置する。
【0057】
好ましい実施形態では、アデノウイルスベクターは、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含む。
【0058】
免疫原性組成物
免疫原性組成物は、本発明における使用のための免疫学的有効量の精製された又は部分的に精製されたヒトアデノウイルスベクターを含む組成物である。前記組成物は、当該技術分野においてよく知られる方法に従ってワクチン(「免疫原性組成物」とも称される)として製剤化され得る。このような組成物は、免疫応答を増強させるためのアジュバントを含み得る。製剤における各々の構成成分の最適な比は、本開示に鑑みて当業者によく知られる技術によって決定され得る。
【0059】
本発明の実施形態による免疫原性組成物は、本開示に鑑みて当業者に知られる方法を用いて作製され得る。液体医薬組成物としては、一般に、水、石油、動物油若しくは植物油、鉱油、又は合成油などの液体担体が挙げられる。生理食塩水溶液、ブドウ糖若しくは他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれてもよい。
【0060】
本発明に有用な免疫原性組成物は、アジュバントを含み得る。本発明による同時投与に好適なアジュバントは、人において潜在的に安全であり、十分に耐容性を示し且つ有効であるものであるべきであり、QS-21、Detox-PC、MPL-SE、MoGM-CSF、TiterMax-G、CRL-1005、GERBU、TERamide、PSC97B、Adjumer、PG-026、GSK-I,AS01、AS03、AS04、AS15、GcMAF、B-alethine、MPC-026、Adjuvax、CpG ODN、Betafectin、Alum、及びMF59を含む。
【0061】
投与され得る他のアジュバントとしては、レクチン、増殖因子、サイトカイン及びリンホカイン、例えばアルファ-インターフェロン、ガンマインターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球コロニー刺激因子(gCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(gMCSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮増殖因子(EGF)、IL-I、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、及びIL-12又はこれらのコード核酸が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者によく知られる他の物質を含み得る。このような物質は、無毒性でなければならず、活性成分の効力を阻害してはならない。担体又は他の材料の厳密な性質は、投与経路、例えば筋肉内、皮下、経口、静脈内、皮膚、粘膜内(例えば、腸)、鼻腔内又は腹腔内経路に依存し得る。
【0063】
防御免疫を誘導するための方法
本発明の別の一般的な態様は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法に関する。方法は、例えば、本明細書に記載されるアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含むワクチンを対象に投与することを含み得る。また、本明細書ではワクチンを作製する方法も提供される。方法は、本明細書に記載されるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む。
【0064】
本明細書に記載されるものを含むが、それらに限定されない本発明の実施形態による免疫原性組成物のいずれかは、本発明の方法においてワクチンとして使用され得る。
【0065】
ベクターを含む免疫原性組成物/ワクチンの投与は通常、筋肉内又は皮下である。しかしながら、静脈内、皮膚、皮内又は経鼻などの他の投与様式も同様に想定され得る。免疫原性組成物の筋肉内投与は、アデノウイルスベクターの懸濁剤を注射するためのニードルを使用することにより行われ得る。代替法は、組成物を投与する無針注射デバイスの使用(例えばBiojector(商標)を使用する)、又はワクチンを含有する凍結乾燥粉末である。
【0066】
静脈内、皮膚若しくは皮下注射、又は罹患部位での注射のために、ベクターは、パイロジェンフリーであり且つ好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態となる。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張媒体を用いて好適な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が含まれ得る。徐放性製剤もまた利用され得る。
【0067】
通常、投与は、感染又は症状の発症の前に目的の抗原(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、及び/又は真菌病原体)に対する免疫応答を発生させる予防的な目的を有することになる。本発明により治療又は予防され得る疾患及び障害は、免疫応答が防御的又は治療的な役割を果たすことができるものを含む。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、曝露後の予防のために投与され得る。
【0068】
キメラヒトアデノウイルスベクターを含有する免疫原性組成物を対象に投与すると、対象において目的の抗原に対する免疫応答が生じる。検出可能な免疫応答を誘導するのに十分な組成物の量は、組成物の「免疫原的有効用量」又は「有効量」と定義される。本発明の免疫原性組成物は、体液性及び細胞性免疫応答を誘導することができる。典型的な実施形態において、免疫応答は、防御免疫応答である。
【0069】
投与される実際の量、及び投与の速度及び時間経過は、投与されているものの性質及び重症度に依存することになる。治療の処方、例えば、投与量などの決定は、一般開業医や他の医師、又は獣医の場合は獣医師の責任の範囲内であり、通常、治療対象の障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、及び開業医に知られるその他の要因を考慮する。上述の手法及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.ed.,1980において見出され得る。
【0070】
アデノウイルスベクターの作製及びこのような粒子の組成物への任意選択的な製剤化後、ベクターは、個体、特にヒト又は他の霊長類に投与され得る。投与は、ヒト又は別の哺乳動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、サル、イヌ又はネコに対するものであり得る。非ヒト哺乳動物への送達は、治療目的である必要はないが、実験の状況、例えばアデノウイルスベクターに対する免疫応答の機構の究明に使用するためであり得る。
【0071】
1つの例示的なレジメンにおいて、アデノウイルスベクターは、約104~1012ウイルス粒子/mlの濃度を含有する約100μl~約10mlの範囲の量で投与される(例えば、筋肉内)。好ましくは、アデノウイルスベクターは、0.1~2.0mlの範囲の量で投与される。例えば、アデノウイルスベクターは、100μl、500μl、1ml、2mlで投与され得る。より好ましくは、アデノウイルスベクターは、0.5mlの量で投与される。任意選択により、アデノウイルスベクターは、約107vp/ml、108vp/ml、109vp/ml、1010vp/ml、5×1010vp/ml、1011vp/ml、又は1012vp/mlの濃度で投与され得る。通常、アデノウイルスベクターは、ヒト対象に1回の投与で約109~約1012ウイルス粒子(vp)の量、より典型的には約1010~約1012vpの量で投与される。上記のとおり初回ワクチン接種の後にブーストが続く。
【0072】
初回ワクチン接種の後、目的の抗原をコードする同じアデノウイルスベクターを含むワクチン/組成物又は目的の同じ抗原をコードする異なるアデノウイルスベクターを含むワクチン/組成物からのブースト又はキックが続き得る。
【0073】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位投薬形態を含むものであり得るキット、パック又はディスペンサーで提示され得る。キットは、例えば、金属又はプラスチックのホイル、例えばブリスターパックを含み得る。キット、パック又はディスペンサーに投与のための使用説明書を付随させてもよい。
【0074】
本発明の組成物は、単独で又は他の治療と組み合わせて、治療対象の状態に応じて同時に又は順次に投与され得る。
【0075】
実施形態
実施形態1は、配列番号1又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターである。
【0076】
実施形態2は、ヘキソンポリペプチドが配列番号3又は配列番号4を含む、実施形態1のアデノウイルスベクターである。
【0077】
実施形態3は、アデノウイルスベクターがさらにE1欠失を含む、実施形態1又は2のアデノウイルスベクターである。
【0078】
実施形態4は、アデノウイルスベクターがさらにE3欠失を含む、実施形態1~3のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0079】
実施形態5は、アデノウイルスベクターがさらに、ヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)E4 orf6を含む、実施形態1~4のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0080】
実施形態6は、アデノウイルスベクターが、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含む、実施形態1~5のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0081】
実施形態7は、アデノウイルスベクターがさらに少なくとも1つの導入遺伝子を含む、実施形態1~6のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0082】
実施形態8は、導入遺伝子が、E1欠失、E3欠失、及び/又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する、実施形態1~7のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0083】
実施形態9は、アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-26(Ad26)に由来する1種以上の核酸配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つのアデノウイルスベクターである。
【0084】
実施形態10は、実施形態1~9のいずれか1つのアデノウイルスベクターを含む組換え細胞である。
【0085】
実施形態11は、(a)実施形態10の組換え細胞を、アデノウイルスベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び(b)組換え細胞からアデノウイルスベクターを単離することを含む、アデノウイルスベクターを作製する方法である。
【0086】
実施形態12は、実施形態1~9のいずれか1つのアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物である。
【0087】
実施形態13は、実施形態12の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法である。
【0088】
実施形態14は、実施形態1~9のいずれか1つによるアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、免疫原性組成物を作製する方法である。
【実施例】
【0089】
実施例1:ヘキソンキメラアデノウイルスベクターAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13の設計
この実施例では、チンパンジーアデノウイルスから得られた特定のヘキソン配列置換を保有する新規のHAdV-26に基づくベクターである、Ad26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13の設計について記載される。これらのヘキソンキメラアデノウイルスベクターは、製造可能であり、HAdV-26とは血清学的に異なり、且つヒト集団において低い先在する免疫が存在する(又はない)、可能な新規のアデノウイルスに基づく(ワクチン)ベクターを作製する目的で設計された。
【0090】
それぞれアデノウイルスベクターゲノム配列配列番号16、配列番号5、及び配列番号6を含むAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13が、以前に記載された組換えHAdV-26ベクター(国際公開第2007104792A2号パンフレット;Abbink et al.,2007)のヘキソンキメラバージョンとして設計された。したがって、これらのベクターは、以前に特定されたとおりの(国際公開第2007104792A2号パンフレット;Abbink et al.,2007)同じE1欠失、E3欠失、及びE4 orf6置換(HAdV-5のものによる)を保有するように設計された。
【0091】
以下の実施例において記載されるとおりの本明細書で作製され且つ試験されるヘキソンキメラベクターの特定の変異体は、それぞれウイルスゲノム配列配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11を含むAd26HVRPtr1.Fluc、Ad26HVRPtr12.Fluc、Ad26HVRPtr13.Fluc、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc、及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucである。それらのベクター名において示されるとおり、これらのベクターは、それらのE1欠失の位置で、ホタルルシフェラーゼ(FLuc)、又は呼吸器多核体ウイルス株A2融合糖タンパク質(RSV-F2A)、口蹄疫ウイルス2Aペプチド、及びガウシアルシフェラーゼ(GLuc)の融合物であるキメラタンパク質「RSV-FA2-2A-GLuc」(RSVF-2A-GLuc)のいずれかをコードするCMVプロモーター駆動発現カセットを保有するように作製された。FLuc及びRSVF-2A-GLuc発現カセットの両方が、CMVプロモーターによって駆動され、SV40ポリアデニル化シグナルを保有する。RSVF-2A-GLucに関するカセットはさらに、5’非翻訳領域内にヒトアポリポタンパク質A1(ApoA1)遺伝子のイントロン2を含む配列を含有する。
【0092】
アデノウイルスベクターAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13(それぞれ配列番号16、配列番号5、及び配列番号6を含む)は、それらのHAdV-26に基づくゲノム内の特定のヘキソン遺伝子セグメントが、他のアデノウイルスの対応するヘキソン遺伝子セグメントによって置き換えられたという点でヘキソンキメラとして設計された。Ad26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13のためのヘキソン配列ドナーとして作用するウイルスはそれぞれ、PtroAdV-1、PtroAdV-12、及びPtroAdV-13であった。これらのウイルスは、野生のチンパンジーの糞便試料において同定され、ヒトアデノウイルス種E(HAdV-E)に割り当てられてきた(Wevers et al.,J.Virol.85(20):10774-84(2011))。これらのウイルスの部分的なヘキソン遺伝子配列は、それぞれGenBank受入番号JN163971、JN163982、及びJN163983の下で公的に提供された。ヘキソン配列に関するアクセプターベクターがHAdV-26、すなわちヒトアデノウイルス種D(HAdV-D)のメンバーに基づく一方で、3つのヘキソン配列ドナーウイルスがHAdV-Eに属することを考慮すれば、本明細書で作製されるベクターは、混成アデノウイルス種ヘキソンキメラベクターとなる。
【0093】
ヘキソンキメラベクターAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13(及び導入遺伝子発現カセットを含有する本明細書で作製されるそれらの誘導体)を作製するために本明細書で置き換えられたHAdV-26ヘキソン遺伝子セグメントは、GenBank受入番号EF153474(バージョン1)の下で寄託されたHAdV-26の野生型完全ゲノムのヌクレオチド18178~18357、18379~18438、18556~18633、18685~18723、及び19027~19158に一致した。これらの5つのHAdV-26ヘキソン遺伝子セグメント、及びPtroAdV-1、PtroAdV-12、又はPtroAdV-13に由来するそれらの対応する置換セグメントは、超可変領域(HVR)をコードする配列に大部分であるが全体的ではなく一致した。これは
図1Aにおいて示され、そこでは5つのセグメント及び以前に割り当てられたHVRの位置は、HAdV-26ヘキソン遺伝子の略図内に示される。さらに、より詳細には、これは、HAdV-26、PtroAdV-1、PtroAdV-12、及びPtroAdV-13の(部分的な)ヘキソンポリペプチド配列により実施されたアミノ酸アラインメントによって示され、そこでは、本明細書で交換された特定のセグメントは、以前に割り当てられたHVRと並んで特に強調されている(
図1B)。
【0094】
注目すべきことに、Ad26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13を作製するために本明細書で置き換えられたHAdV-26の5つのヘキソン遺伝子セグメントは、ヘキソンキメラHAdV-5に基づくベクターを記載している以前の報告(Roberts et al.,Nature 441:239-43(2006);Bradley et al.,J Virol.86:1267-72(2012);Yu et al.,Biochem Biophys Res Commun.421:170-6(2012);Bruder et al,PLoS One.7(4):e33920(2012))において置き換えられたヘキソンHVRを含む配列に全体的には一致しなかった。例えば、
図1A及び1Bにおいて示されるとおり、5つのヘキソン遺伝子セグメントは、HAdV-5に基づき且つHAdV-48のヘキソンHVRを含むヘキソンキメラベクターであるAd5HVR48(1-7)を作製するために以前に交換された7個のアミノ酸区間に完全には一致できなかった(Roberts et al.,Nature 441:239-43(2006))。
【0095】
アデノウイルスベクターAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13の完全なキメラヘキソン遺伝子ヌクレオチド配列はそれぞれ、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15において記載される。これらのベクターの完全なキメラヘキソンポリペプチドは、それぞれ配列番号12、配列番号3、及び配列番号4において記載される。
【0096】
実施例2:Ad26HVRPtr1.Fluc、Ad26HVRPtr12.Fluc及びAd26HVRPtr13.Flucの完全なアデノウイルスベクターゲノムを保有するプラスミドの分子構築
アデノウイルスE1領域におけるCMVプロモーター駆動FLuc発現カセットを保有するAd26HVRPtr1、Ad26HVRPtr12、及びAd26HVRPtr13ベクターゲノム含有プラスミドは、ヘキソンキメラFlucコード化ベクター「Ad26.HVR5C」の作製について以前に記載されたものと同じ方法及び戦略を用いて構築された(Ma et al.,J.Canc.Res.Clin.Oncol.141(3):419-29(2015)、付録の
図4)。簡潔に述べると、ヘキソン遺伝子に対する所望の変更は、中間体の「ヘキソンシャトル」プラスミドpHex26-Shuttle.BamHIの文脈において最初に導入された。これは、標準的な遺伝子合成及びサブクローニング手順によってなされ(GeneArt(LifeTechnologies、Carlsbad、CA)によって実行された)、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15において記載される前述のキメラヘキソン遺伝子配列を保有する改変ヘキソンシャトルプラスミドが得られた。次に、E.コリ(E.coli) BJ5183(Stratagene/Agilent Technologies、Santa Clara、CA)における相同組換えによって、キメラヘキソン遺伝子は、ヘキソンシャトルプラスミドから、2つのPacI制限部位の間においてCMVプロモーター駆動Flucコード化発現カセットによるそのE1欠失の位置に備えられたヘキソン遺伝子欠失組換えHAdV-26ベクターゲノムを保有するpAd26.luc.dHプラスミドに運ばれた。上記の分子クローニング手順によって、プラスミドpAd26.HVRPtr1.luc(配列番号20)、pAd26.HVRPtr12.luc(配列番号21;
図2A)、及びpAd26.HVRPtr13.luc(配列番号22;
図2B)の作製をもたらした。
【0097】
3つの一致対照ヘキソンキメラアデノウイルスベクタープラスミドもまた、上記と全く同じ様式において構築された。pAd26.HVR5.luc(配列番号17)、pAd26.HVR35.luc(配列番号18)、及びpAd26.HVR52.luc(配列番号19)と呼ばれるこれらのプラスミドにおいて、前述の5つのHAdV-26ヘキソン遺伝子セグメントのセットは、それぞれHAdV-5、HAdV-35、及びHAdV-52のセグメントの対応するセットによって置き換えられた。これらのプラスミドは、それぞれ配列番号23、配列番号24、及び配列番号25において記載されるキメラヘキソン遺伝子ヌクレオチド配列を含む。これらのヘキソン遺伝子は、それぞれ配列番号26、配列番号27、及び配列番号28において記載されるキメラヘキソンポリペプチド配列をコードする。
【0098】
実施例3:アデノウイルスベクターAd26HVRPtr1.Fluc、Ad26HVRPtr12.Fluc、及びAd26HVRPtr13.Flucの生存率、増殖効率、及び生産性の最初の評価
以前の研究は、混成アデノウイルス種ヘキソン配列交換を含むキメラアデノウイルスベクターが、生存不能であるか又は増殖キネティクスの遅延を示し且つ低い収量をもたらし得ることを示している(Youil et al.,Hum.Gene Ther.13:311-20(2002);Wu et al.J Virol.76:12775-82(2002);Bradley et al.,J Virol.86:1267-72(2012);Bruder et al.,PLoS One.7(4):e33920(2012))。したがって、新規のヘキソンキメラアデノウイルス(ワクチン)ベクターは、基本的な増殖特性、生産収量、及び粒子品質について試験されるべきである。
【0099】
本明細書で設計され且つ構築されるヘキソンキメラアデノウイルスベクターは、生存率、増殖効率、生産性、及び粒子の感染性について評価され、それらの親HAdV-26に基づくベクターと比較した。この目的のため、アデノウイルスベクターAd26HVRPtr1.Fluc、Ad26HVRPtr12.Fluc、及びAd26HVRPtr13.Fluc、並びに対照ベクターAd26HVR5.Fluc、Ad26HVR35.Fluc、及びAd26HVR52.Flucを、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Invitrogen;Carlsbad、CA)を用いる標準的な手順に従って、実施例2に記載される対応するAdベクターゲノムプラスミド(すなわち、それぞれpAd26.HVRPtr1.luc、pAd26.HVRPtr12.luc、pAd26.HVRPtr13.luc、pAd26.HVR5、pAd26.HVR35、及びpAd26.HVR52)のT25フラスコで培養されたE1補完PER.55K細胞(Vogels et al.,J Virol.77:8263-71(2003))へのトランスフェクションによって作製した。トランスフェクションに先立って、Adベクターゲノムプラスミドを、それぞれのアデノウイルスベクターゲノムをプラスミドから放出するためにPacIで消化した。トランスフェクト細胞培養物を毎日モニターして、最初のウイルスプラーク形成の発生日及び総細胞変性効果(CPE)に達した日を登録した(表1)。完全なCPEで、感染細胞及び培地を回収し、3サイクルの凍結融解によってウイルスが放出された。ウイルスレスキュートランスフェクションの回収後、E1補完細胞培養物に対する複数回の連続的な感染ラウンドによって、ウイルスをさらに増幅した。次に、ウイルスを粗製のウイルス回収物から(2工程の塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心法によって)精製した後、ウイルス粒子(VP)及び感染単位力価(IU/mL)を、全て以前に記載された標準的な方法によって決定した(Alba R,Baker AH,Nicklin SA.Vector systems for prenatal gene therapy:principles of adenovirus design and production.Methods Mol Biol 2012;891:55-84.:55-84)。
【0100】
【0101】
試験された6つのキメラベクターのうちのAd26HVRPtr12.Fluc及びAd26HVRPtr13.Flucのみが、それらのカプシド改変がベクター生産性及び感染性を損なわなかったことを示す結果をもたらした(表1)。(E1補完細胞へのウイルスDNAトランスフェクション後の)プラーク形成の発生の時間及び完全なCPEに達するのに必要となる時間によって反映されるとおり、これらの2つのベクターのウイルスレスキュー及び増殖効率は、親ベクターAd26.Flucについて見られたものの範囲内であった。これは、Ad26HVRPtr1.Fluc以外の試験された他のキメラベクターについてはそうではなかった。さらに、試験された全てのベクターのうちのAd26HVRPtr12.Fluc及びAd26HVRPtr13.Flucは、大規模生産及び精製時に最も高いウイルス粒子(VP)収量をもたらした。最後に、他のキメラベクターが全て親Ad26.Flucのものより高いVP:IU比率を示した一方で、Ad26HVRPtr12.Fluc及びAd26HVRPtr13.FlucはVP:IU比率の変化を有しないことが見出された。
【0102】
4つの他のキメラベクター、すなわち、Ad26HVR5.Fluc、Ad26HVR35.Fluc、Ad26HVR52.Fluc、及びAd26HVRPtr1.Flucは、生産性及び/又は感染性が損なわれた様々な程度を示した。Ad26HVR52.Flucは全く生存可能ではなかったが(すなわち、ウイルスDNAトランスフェクション後にウイルスプラークが検出できなかった)、他の3つのベクターは順調にレスキューされた。これらの3つのうちのAd26HVR5.Fluc及びAd26HVR35.Flucは、明らかにレスキュー及び増殖キネティクスの遅延し示したが、Ad26HVRPtr1.Flucは、親ベクターとほぼ同じくらい効率的にレスキューし且つ増殖するように見えた。精製されたベクターバッチの特徴付けにより、物理的なウイルス粒子の収量がAd26HVR5.Fluc及びAd26HVRPtr1.Flucで特に影響を受けていることが明らかになったが、粒子の感染性はそれらのうちの3つ全てで強く損なわれているように見えた(これらのベクターで見られるより高いVP:IU比率によって示される)。
【0103】
結論として、混成アデノウイルス種ヘキソン配列交換を含むヘキソンキメラベクターであるAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13は、良好な増殖及び生産性特性を示し、したがって、(製造性の観点から)新規のワクチンベクターとして作用する有望な候補であると考えられる。同じキメラヘキソン設計を用いるがヘキソン配列ドナーとして他のアデノウイルスを用いることによって作製された4つの他のヘキソンキメラベクターは、より好ましくない特性を示した。
【0104】
実施例4:アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.Fluc及びAd26HVRPtr13.Flucの作製
この実施例は、実施例6、8、及び9において記載される免疫原性、血清有病率、交差中和、及び製造性の実験において使用されるヘキソンキメラFlucコード化アデノウイルスベクターの作製について記載する。
【0105】
それぞれアデノウイルスベクターゲノム配列配列番号8及び配列番号9を含む、アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.Fluc(Ad26C4NVT005とも命名される)及びAd26HVRPtr13.Fluc(Ad26C3NVT005とも命名される)は、対応するAdベクターゲノムプラスミド(すなわち、それぞれpAd26.HVRPtr12.luc及びpAd26.HVRPtr13.luc)のE1補完PER.C6細胞へのトランスフェクションによって作製された。10%ウシ胎仔血清(FBS)及び10mM MgCl2が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の接着細胞培養物として増殖されたPER.C6細胞へのトランスフェクションの前に、Adベクターゲノムプラスミドは、PacIで消化されて、プラスミドから対応するアデノウイルスベクターゲノムを放出した。トランスフェクションは、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Invitrogen;Carlsbad、CA)を用いて標準的な手順に従って実施された。ウイルスレスキュートランスフェクションの回収後、PER.C6細胞培養物に対する複数回の連続的な感染ラウンドによって、ウイルスをさらに増幅した。ウイルスを、以前に記載された2工程の塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心法を用いて粗製のウイルス回収物から精製した(Havenga et al.,「Novel replication-incompetent adenoviral B-group vectors:high vector stability and yield in PER.C6 cells」,J.Gen.Virol.87(8):2135-43(2006))。ウイルス粒子(VP)力価は、以前に記載された分光光度法に基づく手順によって測定された(Maizel et al.,「The polypeptides of adenovirus:I.Evidence for multiple protein components in the virion and a comparison of types 2,7A,and 12」,Virology, 36(1):115-25(1968))。
【0106】
実施例5:アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucの作製
この実施例は、実施例7において記載される免疫原性実験において使用されるヘキソンキメラRSVF-2A-GLucコード化アデノウイルスベクターの作製について記載する。
【0107】
それぞれアデノウイルスベクターゲノム配列配列番号10及び配列番号11を含むアデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc(Ad26C4NVT001とも命名される)及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-Gluc(Ad26C3NVT001とも命名される)の作製は、それぞれ前述のプラスミドpAd26.HVRPtr12.luc(配列番号21;
図2A)及びpAd26.HVRPtr13.luc(配列番号22;
図2b)、並びにプラスミドpAdApt26.ApoAI.RSVF-2A-GLuc(配列番号29;
図3)の使用を伴った。
【0108】
pAdApt26.ApoAI.RSVF-2A-GLucは、アデノウイルスE1欠失の位置で、「RSV-FA2-2A-GLuc」(RSVF-2A-GLuc)をコードする前述の導入遺伝子発現カセットをさらに含有する以前に記載された(国際公開第2007104792A2号パンフレット;Abbink et al.,2007)E1欠失HAdV-26に基づくベクターの左末端ゲノム断片を内部に持つプラスミドである。pAdApt26.ApoAI.RSVF-2A-GLucは、前記RSVF-2A-GLucカセットの作製及び前記左末端Adベクターゲノム断片を内部に持つ以前に記載された(国際公開第2007104792A2号パンフレット;Abbink et al.,2007)プラスミドであるpAdApt26への挿入を合わせたいくつかの標準的な遺伝子合成及び分子クローニング工程によって構築された。
【0109】
アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucは、以下のとおりに作製された。プラスミドpAd26.HVRPtr12.luc及びpAd26.HVRPtr13.lucを、これらのプラスミドからキメラヘキソン配列を含む特定の28kbの左末端欠失アデノウイルスベクターゲノム断片を放出するために制限酵素PacI及びPsiIによって消化した。得られたそれぞれの消化産物を、それぞれ別々にE1補完PER.C6にPacI消化pAdApt26.ApoAI.RSVF-2A-GLucでコトランスフェクトして、
図4において示されるとおりの重複しているベクターゲノム制限断片間の相同組換えを介するそれぞれのヘキソンキメラRSVF-2A-GLucコード化ウイルスのレスキューを可能にした。この戦略において、相同組換えは、pAdApt26.ApoAI.RSVF-2A-GLucの6.7kbのPacI-PacI制限断片(
図4、上段)とpAd26.HVRPtr12.luc又はpAd26.HVRPtr13.lucの28kbのPsiI-PacI制限断片(
図4、下段)の間の重複領域の2.7kb領域で発生する。トランスフェクションは、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Invitrogen;Carlsbad、CA)を用いて標準的な手順に従って実施された。2つのレスキューされたウイルスAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-Glucの単一の単離されたプラークをさらにPER.C6細胞で増殖させた後、精製し、実施例4においてベクターAd26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.Flucについて本明細書で記載されるとおりに力価測定した。
【0110】
新規のアデノウイルスベクターによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
実施例6及び7は、本明細書で生成された新規のAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクターの免疫原性を評価するために実施された実験を記載する。これらの実験では、筋肉内免疫後のマウスにおいて、ベクターにコードされる(モデル)抗原に対する体液性及び細胞性免疫応答を誘導する能力について新規のベクターが評価された。ベクターは、2つの異なる抗原:ホタルルシフェラーゼ(FLuc)及びRSV-FA2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて試験された。RSVF-2A-GLucは、呼吸器多核体ウイルス株A2融合糖タンパク質、口蹄疫ウイルス2Aペプチド、及びガウシアルシフェラーゼ(GLuc)で構成されるキメラタンパク質である。各ベクターは、同じ抗原をコードする導入遺伝子カセットを保有するヒトアデノウイルス26型(HAdV-26、本明細書ではAd26とも称される)に基づくベンチマークベクターと並べて比較された。それぞれの抗原に対する免疫応答は、酵素免疫スポットアッセイ(ELISPOT)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、及びRSVF-2A-GLuc抗原の場合は呼吸器多核体ウイルス中和アッセイ(VNA)などのよく知られる免疫学的アッセイを用いて測定された。
【0111】
実施例6:Ad26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.FLucによって誘導される細胞性免疫応答
新規のアデノウイルスベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13の細胞性免疫原性を評価するために、Balb/Cマウスを、Ad26.FLuc(陽性対照)、FLucを発現するAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクター(すなわち、Ad26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.FLuc)、又はFLucをコードしないアデノベクターである空のAd26で筋肉内において免疫化した。FLuc発現ベクターは、マウス毎に10
9及び10
10個のウイルス粒子(vp)で試験され、Ad26空ベクターは10
10vpで投与された。免疫化の2週間後、マウスを屠殺し、脾細胞を単離した(
図5A)。細胞性免疫応答を、15量体の重複FLucペプチドプールによる一晩の脾細胞刺激後にIFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した(
図5B)。結果は、高用量の免疫化(10
10)で、Ad26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクターにより誘導される細胞性免疫応答が、Ad26.Flucに関して見られる応答と同じ範囲又はより高かったことを示す。
【0112】
全体的に見て、本発明のFLuc発現組換えAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクターにより誘導される細胞性免疫応答は、明らかにマウスにおけるこれらのベクターの強力な免疫原性を示している。
【0113】
実施例7:Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによって誘導される細胞性及び体液性免疫応答
新規のAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクターの免疫原性はさらに、ベクターにコードされた(モデル)ワクチン抗原としてRSV-F
A2-2A-GLuc(RSVF-2A-GLuc)を用いて評価された。Balb/Cマウスを、3種の異なる濃度(それぞれマウス毎に10
8vp、10
9vp、又は10
10vp)のAd26.RSVF-2A-GLuc(陽性対照)、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc、若しくはAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLuc、又はマウス毎に10
10vpのAd26.FLuc、Ad26HVRPtr12.FLuc、若しくはAd26HVRPtr13.FLucで筋肉内において免疫化した。免疫化の8週間後、マウスを屠殺し、血液試料及び脾細胞を回収した(
図6A)。様々な免疫パラメータを下記のとおりに評価した。
【0114】
ウイルス中和アッセイ(VNA)を、呼吸器多核体ウイルス中和抗体を誘発するAd26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucの能力を評価するために実施した。
図6Bは、免疫化の8週後に回収された血清試料について測定された呼吸器多核体ウイルス株A2(RSV A2)VNA力価を示す。各点は1頭のマウスを表し;バーは群平均を表し、点線は定量下限に相当する(LLOQ=6,88;直線性試料の平均終点力価)。結果は、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucによる10
10vp用量の免疫化により、同じ抗原をコードするベンチマークのAd26について見られたものと同様のRSV A2中和力価が生じたことを示す。RSVF-2A-GLucをコードする3つの全てのベクターAd26、Ad26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13によって誘導される力価は、主に免疫化について使用された最も高い用量10
10vpで検出された。予想されるとおり、RSV A2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼをコードするそれぞれのアデノベクターに対して検出されなかった。
【0115】
ベクターにコードされた抗原に対する細胞性免疫の誘導は、RSV-F
A2特異的ELISPOTアッセイによって評価された。この目的のため、免疫化の8週間後、免疫化されたマウスから脾細胞を単離し、RSV-F
A2タンパク質を架橋する15量体の重複ペプチドで一晩刺激し、細胞性免疫応答を、IFN-γ分泌細胞の相対的な数を測定するエクスビボELISPOTアッセイによって決定した。データは、RSVF-2A-GLucをコードする新規のベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13によって誘発される抗原特異的細胞性免疫応答が、用量依存的であり、且つそれぞれベンチマークベクターであるAd26.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものより用量毎に高い及び同様の大きさであったことを示す(
図6C)。予想されるとおり、RSVF-F
A2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼをコードするアデノベクターで免疫化されたマウスの脾細胞から測定されなかった。
【0116】
RSV-F
A2特異的IgG抗体を誘発するRSVF-2A-GLuc発現ベクターの能力を、ELISAによって評価した。RSVF-2A-GLuc導入遺伝子又はホタルルシフェラーゼ(対照)を発現するAd26(陽性対照)、Ad26HVRPtr12、Ad26HVRPtr13で免疫化されたマウスから免疫化の8週間後に回収された血清が、抗RSV F
A2 IgG抗体ELISAにおいて試験された。特に、このELISAは、組換え安定型プレ融合RSV-F
A2タンパク質(プレ-RSV-F)に対して結合可能なIgG抗体を検出する。結果は、Ad26HVRPtr12.RSVF-2A-GLuc及びAd26HVRPtr13.RSVF-2A-GLucが、Ad26.RSVF-2A-GLucによって誘導されるものに類似するプレRSV-F特異的IgG抗体力価を用量依存的に誘発したことを示す(
図6D)。予想されるとおり、RSV-F
A2特異的応答は、ホタルルシフェラーゼのみをコードするアデノベクターで免疫化されたマウスの血清から測定されなかった。グラフは、終点力価として計算されたIgG ELISA力価を示す(log
10)。各点は1頭のマウスを表し;バーは群平均を表し、点線は、1,36 log
10として計算される定量下限(LLOQ)である。
【0117】
まとめると、データは、新規のAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクターが、HAdV-26に基づくベンチマークベクターによって誘導されるものと同様の大きさの又はそれより高いコードされた抗原に対する強力な細胞性及び体液性免疫応答を誘導したことを示す。これらの免疫応答は、明らかにマウスにおけるAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクターの強力な免疫原性を示す。
【0118】
実施例8:新規及び既存のアデノウイルスベクター間の血清学的交差中和の評価
新規のアデノウイルスワクチンベクターとしてのそれらの潜在的な有用性に関して、本明細書で作製される新規Ad26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクターは、好ましくは、ヒトアデノウイルス血清型HAdV-5及びHAdV-35に基づくベクターなどの、ワクチンベクターとして現在既に開発中の既存のアデノウイルスベクターとは血清学的に異なるであろう。したがって、交差中和試験を、HAdV-4、HAdV-5、HAdV-26、及びHAdV-35に基づく新規Ad26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13アデノウイルスベクター及びいくつかの既存のベクター間で実施した。この目的のため、これらのアデノウイルスベクターの1つに対してそれぞれ産生されるマウス抗血清は、アデノウイルス中和アッセイにおいて各種ベクターの各々に対して試験された。このアッセイのために使用されるマウス抗血清は、マウス当たり1010ベクター粒子によるそれらの免疫化の2週間又は8週間後にBalb/Cマウスから回収された。アデノウイルス中和アッセイは、以前に記載されたとおりに行われた(Spangers et al 2003.J.Clin.Microbiol.41:5046-5052)。簡潔に述べると、1:16の希釈度から始めて、血清を2倍ずつ段階希釈し、続いてホタルルシフェラーゼ(FLuc)を発現するアデノウイルスベクターと事前に混合した後、A549細胞とともに(細胞当たり500個のウイルス粒子の感染の多重度で)一晩インキュベートした。感染の24時間後に測定された感染細胞ライセートにおけるルシフェラーゼ活性レベルは、ベクター感染効率を表した。所与のベクターに対する中和力価は、ベクター感染効率の90%の低減をもたらすことができる最高の血清希釈度として定義された。中和力価は、以下のカテゴリーに任意に分けられた:<16(中和なし)、16~200、200~2,000、及び>2,000。
【0119】
結果は、試験されたベクターの間で交差中和を示さないか又は非常に低いレベルの交差中和を示す(
図7)。Ad26HVRPtr12はAd26及びAd26HVRPtr13ベクターに対して;Ad26HVRPtr13はAd26及びAd26HVRPtr12ベクターに対して、軽微な交差中和が観察された。これらのベクターについて見られる相反的な交差中和力価は、これらの同じベクターについて得られたそれぞれの相同的な中和力価より著しく低かった。重要なこととして、新規のAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクターは、交差中和が非常に低いレベルで観察されたAd26を除いて、試験されたパネルに含まれるヒトアデノウイルスベクター、すなわち、Ad35、Ad5及びAd4と交差中和を示さなかった。したがって、新規のアデノウイルスベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13はそれぞれ、場合によっては、例えば、異種プライム-ブーストワクチン接種レジメンの文脈において、或いは又はさらに、異なる疾患若しくは抗原に対する一連の2回以上の継続的なワクチン接種の文脈において、連続的な免疫化におけるこれらの又は他の異なるアデノウイルスベクターの1種以上と組み合わせて使用され得る。
【0120】
実施例9:ヒト集団における新規のアデノウイルスベクターの血清有病率
有効なワクチンベクターとしてのそれらの潜在的な使用のために重要なことは、本明細書に記載される新規のアデノウイルスベクターが、ワクチン標的集団における高レベルの既存の抗ベクター体液性免疫によって妨げられないことである。したがって、ベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13はそれぞれ、米国(US)及び欧州連合(EU)に居住する18歳~55歳までの成人に由来する200名のヒトコホート血清試料内のそれらの血清有病率について評価された。ベクターは、実施例7において実行され且つ以前に記載されたとおりの標準的なアデノウイルス中和アッセイを実施することによって、ヒト血清試料による中和について試験された(Spangers et al 2003.J.Clin.Microbiol.41:5046-5052)。簡潔に述べると、1:16の希釈度から始めて、血清を2倍ずつ段階希釈し、続いてホタルルシフェラーゼ(FLuc)を発現するアデノウイルスベクターと事前に混合した後、A549細胞とともに(細胞当たり500個のウイルス粒子の感染の多重度で)一晩インキュベートした。感染の24時間後に測定された感染細胞ライセートにおけるルシフェラーゼ活性レベルは、ベクター感染効率を表した。所与のベクターに対する中和力価は、ベクター感染効率の90%の低減をもたらすことができる最高の血清希釈度として定義された。中和力価は、以下のカテゴリーに任意に分けられた:<16(中和なし)、16~300、300~1,000、1000~4000及び>4000。
【0121】
結果は、アデノウイルスベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13が、試験されたヒト対象において対照Ad5ベクターより著しく低い結成有病率を有し、且つこれらの対象においてベンチマークAd26ベクターと同様の血清有病率を有することを示す(
図8)。さらに、新規のAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクターに対して見られた陽性中和力価は一般に、非常に低く、概して300より高くなかった。対照的に、Ad26及びAd5の両方に対して見られた陽性中和力価の大部分は、300より高かった。
【0122】
まとめると、上のデータは、Ad26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13ベクターに対する既存の体液性抗ベクター免疫が、評価されたワクチン標的集団において低いと考えられ得ることを示し、これらのベクターがこれらの集団において有効なワクチンベクターとしての可能性を有することを示唆している。
【0123】
実施例10:懸濁PER.C6細胞中のアデノウイルスベクター生産性
臨床試験及びそれ以降に使用されるアデノウイルスベクターは、スケーラブルな無血清アデノウイルス生産プラットフォームで高力価まで容易に生産可能である必要がある。本明細書で懸濁PER.C6細胞又はsPER.C6とも呼ばれる懸濁適応PER.C6(登録商標)細胞は、バイオリアクターでのアデノウイルスベクターの大規模製造を支援し、高力価で臨床グレードのベクター製剤、例えば、HAdV-26又はHAdV-35に基づくE1欠損ベクターを大量にもたらすことが示されているため、このようなプラットフォームとなる(欧州特許第2536829B1号明細書、欧州特許第2350268B1号明細書)。
【0124】
本明細書に記載される新規のベクターが、sPER.C6細胞に基づく生産プロセスに合うかどうかに関する最初の評価として、小規模のベクター生産性実験を、振盪フラスコ中で培養されたsPER.C6細胞に対して実施した。これらの生産性実験は、新規キメラベクターAd26HVRPtr12及びAd26HVRPtr13(実施例4において記載される)のFlucコード化バージョンを用いて実行された。ベンチマーク対照として、HAdV-26に基づくベクターAd26.Flucを使用した。4mMのL-グルタミン(Lonza)を補充した10mlの総量のPERMEXCIS(登録商標)培地(Lonzaから入手可能)中において1×106細胞/mlの密度で振盪フラスコに播種された懸濁PER.C6細胞培養物が、様々なウイルス粒子(VP)対細胞比率で各種ベクターにより感染され、4日間インキュベートされた。感染のために使用された様々なVP対細胞比率は、70、150及び900であった。感染細胞培養物の試料を毎日採取し、VP力価を、これらの試料中においてCMVプロモーター(試験された全てのベクターに存在する)に特異的なプライマー及びプローブを用いる定量的PCR(qPCR)に基づくプロトコルによって決定した。このプロトコルでは、遊離のベクターDNA(すなわち、ウイルス粒子にパッケージされていないベクターゲノム)を除去するために、qPCRの前に試験試料をDNA分解酵素処理する必要がある。
【0125】
キメラベクターAd26HVRPtr12.FLuc及びAd26HVRPtr13.Flucについて得られた生産性の結果を
図9に示す。2つのキメラベクターにより、親ベンチマークベクターAd26.Flucに対して得られたものと同等であったVP力価が得られた。これらの結果は、sPER.C6に基づく無血清懸濁細胞培養物モデルに対して新規のキメラベクターの各々の良好な生産性を実証している。
【0126】
まとめると、上で示されるとおりの本発明の新規の組換えアデノウイルスベクターに対する体液性及び細胞性免疫応答の試験は、明らかにマウスにおけるこれらのベクターの強力な免疫原性を示す。加えて、これらのベクターは、特定の既存のアデノウイルスワクチンベクター候補(例えば、Ad26及びAd35)に対して交差中和抗体応答を誘導しないか、若しくはほとんど誘導せず、又はその逆もまた同じであること、及び互いに交差中和抗体応答を誘導しないか、又は非常に低い交差中和抗体応答のみを誘導することを実証した。さらに、新規のベクターは、ヒトにおいて低い血清有病率を示した。最後に、新規のベクターは、高い収量で容易に生産され得る。低い血清有病率、強力な免疫原性及び生産性の組合せは、本発明の新規のアデノウイルスベクターが、様々な病原体に対する新規のワクチンベクター候補として有用である可能性があり、且つさらに遺伝子治療及び/又は診断において有用性を有し得ることを示唆する。
【0127】
上記の実施形態に対して、この広い発明概念から逸脱することなく変更を加えることができることが当業者に理解されるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書によって規定される本発明の趣旨及び範囲に含まれる変形形態を包含することが意図されることを理解されたい
以下の態様を包含し得る。
[1] 配列番号1又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むヘキソン超可変領域包含ポリペプチドを含むヘキソンポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクター。
[2] 前記ヘキソンポリペプチド配列が配列番号3又は配列番号4を含む、上記[1]に記載のアデノウイルスベクター。
[3] 前記アデノウイルスベクターがさらにE1欠失を含む、上記[1]~[2]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[4] 前記アデノウイルスベクターがさらにE3欠失を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[5] 前記アデノウイルスベクターがさらに、ヒトアデノウイルス-5(HAdV-5)E4 orf6を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[6] 前記アデノウイルスベクターが、配列番号5又は配列番号6から選択される核酸配列を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[7] 前記アデノウイルスベクターがさらに少なくとも1つの導入遺伝子を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[8] 前記導入遺伝子が、前記E1欠失、前記E3欠失、及び/又は右逆位末端配列(rITR)に隣接して位置する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[9] 前記アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルス-26(Ad26)に由来する1種以上の核酸配列を含む、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
[10] 上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを含む組換え細胞。
[11] (a)上記[10]に記載の組換え細胞を、前記アデノウイルスベクターを産生するための条件下で増殖させること;及び
(b)前記組換え細胞から前記アデノウイルスベクターを単離することを含む、
アデノウイルスベクターを作製する方法。
[12] 上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物。
[13] 必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、上記[12]に記載の免疫原性組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[14] 上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、免疫原性組成物を作製する方法。
【配列表】