(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ダンパユニット、ダンパアセンブリおよびダンパユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20230217BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16F1/373
(21)【出願番号】P 2020529478
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085028
(87)【国際公開番号】W WO2019115797
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-06
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520067644
【氏名又は名称】ヴィブラコースティック フォーシェダ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Vibracoustic Forsheda AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミュクレブスト,エーリク
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064808(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042850(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19653684(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 7/00- 7/14
B62D 1/00- 1/28
F16F 1/36
F16F 1/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール用の振動低減アセンブリで使用するためのダンパユニットであって、
軸に沿って延びる中央ボアを有するスライダであって、前記ステアリングホイール上のホーン作動時に、前記ボアに収容されるガイドシャフト上で前記軸の方向にスライドするように構成されたスライダと、
エラストマー材料から形成され、前記スライダの第1の部分上に成形されたダンパ要素と、
エラストマー材料から形成された成形ホーンバネ要素であって、ホーンバネ部分および取付部分を有し、それらホーンバネ部分および取付部分が、互いに一体にかつ、前記ダンパ要素と一体に形成される、成形ホーンバネ要素とを備え、
前記ホーンバネ要素の取付部分が、前記スライダの第2の部分上に成形され、前記ホーンバネ部分が、前記スライダに対して前記軸の方向に力を加えるように構成されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ要素の取付部分が、前記スライダに機械的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ要素の取付部分が、1または複数の成形固定要素によって前記スライダに機械的に結合され、前記1または複数の成形固定要素が、前記ホーンバネ要素および前記ダンパ要素と一体に成形されるとともに、前記スライダの関連する1または複数の固定開口部と機械的に固定係合することを特徴とするダンパユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のダンパユニットにおいて、
前記スライダが、
前記軸に沿って延在し、前記ボアを与える管状要素と、
前記管状要素から半径方向外向きに延び、貫通穴の形態で前記固定開口部を提供するフランジとを備え、
前記ダンパ要素および前記ホーンバネ要素が、前記フランジの軸方向両側に配置され、
前記ダンパ要素、前記ホーンバネ要素および前記固定要素が、互いに一体に成形され、それにより前記ダンパ要素および前記ホーンバネ要素が、前記フランジの固定開口部を通って延びる前記固定要素を介して、前記スライダに機械的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ要素のホーンバネ部分が、少なくとも部分的に軸方向に前記スライダを越えて延在することを特徴とするダンパユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ部分が、少なくとも部分的に蛇腹形状であることを特徴とするダンパユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ要素の取付部分が、接着結合などによって前記スライダに化学的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ダンパ要素が、前記スライダに機械的および/または化学的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項9】
ステアリングホイールの振動を減衰するための振動低減アセンブリであって、
前記ステアリングホイールに固定され、減衰すべき振動を示すベース構造と、
前記ベース構造に固定されたガイドシャフトと、
請求項1乃至8の何れか一項に記載のダンパユニットとを備え、
前記ガイドシャフトが、前記スライダの中央ボア内にスライド可能に受け入れられ、前記ダンパユニットのホーンバネ部分が、前記ステアリングホイール上のホーン作動時に、前記スライダが前記ダンパユニットの軸に沿って前記ベース構造に向かって移動するのに応答して、圧縮されるように構成され、
当該振動低減アセンブリがさらに、
質量体であって、前記軸に対して垂直な質量体の移動を可能にするために、前記ダンパユニットのダンパ要素を介して前記ベース構造によって支持される質量体を備え、
前記ダンパユニットのダンパ要素が、前記軸に対して垂直に向けられた振動を前記ステアリングホイールから前記質量体に伝達するように構成され、
前記ダンパ要素および前記質量体が、前記ベース構造および前記ステアリングホイールの振動を減衰させるための周波数調整動的ダンパを形成するバネ質量系として動作するように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項10】
請求項9に記載のアセンブリにおいて、
前記質量体の重量が、少なくともホーンプレートの重量および前記ホーンプレートによって支持されるエアバッグアセンブリの重量を含み、前記ホーンプレートが、前記ダンパユニット
のダンパ要素によって支持されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載のアセンブリにおいて、
前記ダンパユニットのダンパ要素が、前記ホーンプレートの取付開口部に受け入れられ、前記ダンパ要素が、前記振動を伝達するために、前記ホーンプレートの取付開口部の内側係合面と係合する外側係合面を提供することを特徴とするアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のアセンブリにおいて、
前記ダンパユニットのダンパ要素が、複数の互いに離間したリブを提供し、それらリブが一緒になって、前記ダンパ要素の外側係合面を形成することを特徴とするアセンブリ。
【請求項13】
請求項9乃至12の何れか一項に記載のアセンブリにおいて、
前記ガイドシャフトが、ネジ付きボルトの一部であり、前記ボルトのボルトヘッドが、一方向への前記スライダの動きを制限するストッパとして機能するように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項14】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のダンパユニットの製造方法であって、
前記ダンパユニットの軸に沿って延びる中央ボアを有するスライダを提供するステップと、
前記スライダの第1の部分にダンパ要素を設けるステップと、
ホーンバネ要素を設けるステップとを含み、
前記ホーンバネ要素が、互いに一体に成形されたホーンバネ部分および取付部分を備え、前記取付部分が、前記スライダの第2の部分に成形され、
前記ダンパ要素を設ける行為および前記ホーンバネ要素を設ける行為が、前記ダンパ要素および前記ホーンバネ要素をエラストマー材料から前記スライダ上で互いに一体に成形することを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法において、
前記スライダが、前記軸に沿って延在する管状要素と、前記管状要素から半径方向外向きに延在し、かつ貫通穴の形態の1または複数の固定開口部を提供するフランジとを含み、
前記ダンパ要素とホーンバネ要素を互いに一体に成形する行為が、前記ダンパ要素および前記ホーンバネ要素を、前記フランジの軸方向の両側で、互いに一体にかつ1または複数の固定要素と成形することを含み、前記固定要素が、前記固定開口部を通って延びて、前記ダンパ要素および前記ホーンバネ要素を前記スライダに機械的に結合することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して自動車用の周波数調整ダンパの分野に関する。ステアリングホイール用の振動低減アセンブリで使用するためのダンパユニットが開示されている。1または複数のそのようなダンパユニットを含む振動低減ダンパアセンブリ、並びに、そのようなダンパユニットを製造する方法も開示されている。
【背景技術】
【0002】
周波数調整振動ダンパは、調整質量ダンパ、動的ダンパまたは振動吸収材とも呼ばれ、その機能は、1または複数の弾性ダンパ要素を使用して振動構造から少なくとも1の質量体に振動を移し、それにより位相をずらして振動させて振動を減衰することにより、ダンパが接続されている構造または表面の振動を打ち消して低減する減衰バネ質量系に基づくものである。国際公開第01/92752号、国際公開第2013/167524号および国際公開第2008/127157号は、周波数調整振動ダンパの例を開示している。
【0003】
自動車産業において、いくつかのステアリングホイールには、道路やエンジンからの振動がステアリングホイールに伝わることによって引き起こされるステアリングホイールの振動を低減するために、周波数調整振動ダンパが設けられている。そのようなダンパ構造では、エアバッグモジュールの重量が、バネ質量系の質量体の重量の一部として使用される。また、ステアリングホイールには、一般に、運転者が車両のホーンを作動させるためのホーン作動機構が設けられている。機械式のホーン作動機構は、一般に、ホーン作動後にホーン作動機構をその通常の状態に戻すために、ホーンバネと呼ばれる1または複数の金属渦巻きバネを含む。ホーンバネを有さない電子ホーン作動メカニズムも利用することができる。
【0004】
欧州特許出願第2085290号は、ボルトシャフトにスライド可能に取り付けられたスライダに配置された弾性ダンパ要素を含む、ステアリングホイール用の先行技術の振動低減ダンパ構造の一例を開示している。ステアリングホイールの振動は、減衰のために、弾性ダンパ要素によってエアバッグアセンブリに伝達される。ホーン作動中、スライダはボルトシャフトに沿ってスライドする。従来の渦巻きバネは、ボルトシャフトに配置され、ホーン作動時に圧縮され、ホーン作動が終了するとスライダを通常の位置に戻す。この先行技術の1つの欠点は、全体的な構造の組立が複雑で時間がかかり、製造時間とコストが増加することである。
【0005】
米国特許第8,985,623号は、ステアリングホイール用の代替的なダンパ構造を開示している。全体的な動作は、上述した欧州特許出願第2085290号に開示されているものと同様であるが、弾性要素が、複数部分の硬質プロテクタ構造にカプセル化されている。プロテクタは、シャフトにスライド可能に配置されるとともに、ホーン作動機構の非作動位置に向けてホーンバネによって付勢されている。この先行技術の解決策は本質的に同じ欠点を有し、実際に、プロテクタの製造に追加のコストと時間を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
以上に鑑み、本発明の概念の一目的は、先行技術の上記欠点に対処することであり、この目的のために、(i)ステアリングホイール用の振動低減センブリに使用するためのダンパユニット、(ii)ステアリングホイールの振動を減衰する振動低減アセンブリ、並びに、(iii)そのようなダンパユニットの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の概念の第1の態様によれば、ステアリングホイール用の振動低減アセンブリで使用するためのダンパユニットが提供され、このダンパユニットが、
軸に沿って延びる中央ボアを有するスライダであって、前記ステアリングホイール上のホーン作動時に、前記ボアに収容されるガイドシャフト上で前記軸の方向にスライドするように構成されたスライダと、
エラストマー材料から形成され、前記スライダの第1の部分に配置されたダンパ要素と、
エラストマー材料から形成され、互いに一体に成形されたホーンバネ部分および取付部分を備える成形ホーンバネ要素とを備え、
前記ホーンバネ要素の取付部分が、前記スライダの第2の部分に成形され、前記ホーンバネ部分が、前記ステアリングホイール上のホーン作動前および作動時に、前記スライダに対して前記軸の方向に力を加えるように構成されている。
【0008】
本発明の概念の第2の態様によれば、ステアリングホイールの振動を減衰するための振動低減アセンブリが提供され、この振動低減アセンブリが、
前記ステアリングホイールに固定され、減衰すべき振動を示すベース構造と、
前記ベース構造に固定されたガイドシャフトと、
請求項1乃至8の何れか一項に記載のダンパユニットとを備え、
前記ガイドシャフトが、前記スライダの中央ボア内にスライド可能に受け入れられ、前記ダンパユニットのホーンバネ部分が、前記ステアリングホイール上のホーン作動時に、前記スライダが前記ダンパユニットの軸に沿って前記ベース構造に向かって移動するのに応答して、圧縮されるように構成され、
当該振動低減アセンブリがさらに、
質量体であって、前記軸に対して垂直な質量体の移動を可能にするために、前記ダンパユニットのダンパ要素を介して前記ベース構造によって支持される質量体を備え、
前記ダンパユニットのダンパ要素が、前記軸に対して垂直に向けられた振動を前記ステアリングホイールから前記質量体に伝達するように構成され、
前記ダンパ要素および前記質量体が、前記ベース構造および前記ステアリングホイールの振動を減衰させるための周波数調整動的ダンパを形成するバネ質量系として動作するように構成されている。
【0009】
本発明の概念の第3の態様によれば、ダンパユニットを製造する方法が提供され、この方法が
前記ダンパユニットの軸に沿って延びる中央ボアを有するスライダを提供するステップと、
前記スライダの第1の部分に、エラストマー材料で形成されたダンパ要素を設けるステップと、
ホーンバネ要素をエラストマー材料から成形するステップとを含み、
成形されたホーンバネ要素が、互いに一体に成形されたホーンバネ部分および取付部分を備え、前記取付部分が、前記スライダの第2の部分に成形される。
【0010】
本発明の概念は、先行技術を超える少なくとも以下の利点を提示する。
・本発明の概念によって得られる主な利点は、本発明のダンパユニットを使用することによって、製造、管理および組立の対象となる構成要素の数が減る。組立中、本発明のダンパユニットには成形されたホーンバネ要素が既に設けられている。これにより、ホーンバネがダンパユニットの一体要素として既に設置されるため、組立中に別個の渦巻きホーンバネを取り扱う必要がない。ホーンバネ機構は、スライダをガイドシャフトに取り付けることにより、直接かつ自動的に得られる。
・好ましい実施形態では、ユニットがアセンブリに取り付けられるときに、エラストマーダンパ要素もダンパユニットに既に設けられている。
・ホーンプレートは、1または複数のダンパユニットによって迅速かつ容易にベース構造に連結することができ、各ダンパユニットは、(ユニットを取り付ける直接的な結果として)別個の減衰要素または別個のホーンバネの取り扱いまたは組立を要することなく、振動減衰機能とホーンバネ機能の両方を自動的に提供する。
・ダンパ要素もスライダ上に成形される実施形態では、1回の成形工程でダンパ要素とホーンバネ要素をスライダ上で互いに一体に成形することにより、多機能一体型ダンパユニットを製造することができる。一体型ダンパユニット(スライダとダンパ要素とホーンバネ要素を含む)は、スライダ機能、振動減衰機能およびホーンバネ機能をそれぞれ提供するものとなる。
・エラストマーホーンバネ要素をスライダ上に成形することにより、ホーンバネを製造することと、ホーンバネをスライダに結合することの両方を1回の成形操作で行うことができる。
・ホーンバネ要素をスライダ上に成形することにより、ホーンバネの個別の位置決めと取り付けが不要になるため、最終製品の品質を向上させることができる。
・スライダがホーンプレートの一方の側から挿入され、かつダンパ要素および固定手段がホーンプレートの両側から組み立てられる従来の解決策と比較して、本発明の概念に係るダンパユニットを使用することにより、実質的にホーンプレートの片面のみから組立を実行することが可能になる。
・上述したおよび更なる利点は、以下の開示から明らかになるであろう。
【0011】
本発明の概念の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
成形されたホーンバネ部分は、ステアリングホイール上のホーン作動前および作動時に、スライダに対して軸の方向に力を加えるように構成されている。ダンパユニットがアセンブリに取り付けられるときに、成形されたホーンバネ部分は事前に圧縮され、それによりホーン作動機構の非作動状態でもスライダに付勢力を及ぼすように構成される。ホーン作動時には、ホーンバネ部分がさらに圧縮される。ホーンバネ部分を付勢した状態で取り付ける理由は、運転者がホーンを作動させた直後に、完全に作り出されたホーンバネ力が利用できるようにするためである。
【0013】
好ましい実施形態では、ホーンバネ要素をスライダに結合するようにしてもよい。これには、スライダに成形されたホーンバネ要素が、スライダに結合されて、ダンパユニットが振動低減アセンブリに取り付けられるときにスライダ上の正しい位置に保持される、すぐに組み立て可能なダンパユニットが提供されるという利点がある。様々な結合手法を、個別にまたは組み合わせて使用することが可能である。1つの結合手法には摩擦結合が含まれる。いくつかの実施形態では、スライダの周りのエラストマー材料の成形後の収縮の結果として、摩擦結合が得られる場合もある。
【0014】
いくつかの実施形態では、ホーンバネ要素の取付部分が、スライダに機械的に結合されるようにしてもよい(摩擦結合も機械的結合と見なすようにしてもよい)。このような機械的結合を確立するために、ホーンバネ要素の取付部分が、1または複数の成形固定要素によってスライダに機械的に結合されるものであってもよい。成形固定要素は、ホーンバネ要素と一体に成形されるようにしてもよい。成形固定要素は、スライダの固定開口部など、スライダの関連する1または複数の構造と機械的に固定係合することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ホーンバネ要素の取付部分が、接着(例えば、添加剤および/またはプライマを使用すること)または他の反応などによって、スライダに化学的に結合されるものであってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、ホーンバネ要素の取付部分が、スライダに機械的結合および化学的結合の両方で結合されるものであってもよい。
【0017】
本開示において、エラストマー要素が「スライダ上に成形される」と述べられている場合、それは、第一に、関連要素が、成形によって製造される成形細部であると解釈されるべきである。第二に、「スライダ上に成形される」という表現は、スライダとは別個に製造されて別個の部品としてアセンブリに取り付けられた従来の螺旋状の金属バネの形態など、関連要素が別個の部品として作成される従来の解決策とは対照的に、関連要素がスライダに直接作成/成形されると解釈されるべきである。好ましい実施形態では、エラストマー材料がシリコーンゴムを含む。
【0018】
本開示では、「結合する」または「結合される」という用語は、関連要素がスライダから脱落したり、容易に取り外されたりするのを防ぐような、関連要素とスライダとの間の接続または固着として解釈されるべきである。したがって、「結合」という用語は、アセンブリの観点からダンパユニットの一体部分として、関連要素が、スライダの意図された位置における結合によって確実に保持される固着または接続として解釈されるべきである。軸方向に作用する機械的結合または接着なしにガイドシャフトが受け入れられる中央ボアを有する円筒形ダンパ要素など、要素がスライダから容易に取り外されたり、スライダから容易に脱落したりする実施形態では、スライダに対する半径方向の動きがたとえ制限されていたとしても、要素はスライダに「結合」されているとは見なされない。
【0019】
本開示では、「機械的結合」または「機械結合」は、「化学的結合」の代替として解釈されるべきである。機械的結合は、スライダへの関連要素の非化学的固着として解釈されるべきであり、関連要素がスライダ上の意図された位置に機械的に維持されることを保証する。
【0020】
本開示では、「化学的結合」、「化学結合」、「接着」結合または「接着」などの表現は、機械的結合の代替として解釈されるべきである。化学的結合は分子間の結合と見なされる。いくつかの実施形態では、機械的結合および化学的結合を組み合わせて使用することができる。好ましい化学的結合は、膠ではなく、接着結合である。成形中に化学的結合を提供することができる。いくつかの実施形態では、化学的結合は、類似のまたは関連するポリマー間の接着結合を伴うオーバーモールド技術を使用することによって得られるものであってもよい。
【0021】
スライダに対するホーンバネ要素の機械的結合を得る好ましい実施形態では、1または複数の固定要素を、ホーンバネ要素だけでなく、エラストマーダンパ要素とも一体に成形するようにしてもよい。それにより、エラストマーダンパ要素、エラストマーホーンバネ要素および1または複数の固定要素は、スライダ上で互いに一体に成形され、それにより、スライダに機械的に結合され、好ましくは化学的にもスライダに結合された一体成形体を形成することができる。スライダの固定開口部は、スライダの半径方向に伸びるフランジの貫通穴として形成することができ、ダンパ要素とホーンバネ要素は、フランジの軸方向の両側に配置することができ、固定要素は、ダンパ要素とホーンバネ要素の間の成形された「ブリッジ」を形成して、フランジの開口部を通って延びる。
【0022】
いくつかの実施形態では、スライダが、管状部分および半径方向に延びるフランジを含むが、固定開口部を有していない。半径方向に延びるフランジは、成形されたホーンバネ要素の取付部分と係合するようにしてもよく、ホーンバネ部分からのバネ力を支えるようにしてもよい。また、半径方向に延びるフランジを使用して、フランジの反対側のエラストマーダンパ要素に軸方向の支持を与えることもできる。好ましい実施形態では、単一のフランジを両方の目的に使用することができるが、2つのフランジを使用するようにしてもよい。フランジ以外の突出要素の他の設計も可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、スライダが、管状要素と、半径方向フランジとを備え、このフランジが、管状スライダ要素を第1および第2の管状部分に分割し、第1の管状部分にダンパ要素が配置され、第2の管状部分にホーンバネ要素が提供されるようにしてもよい。ホーンバネ要素の取付部分は、フランジおよび/または第2の管状部分に結合されるようにしてもよい。ホーンバネ要素のホーンバネ部分は、いくつかの実施形態では、ホーン作動時にホーンバネ部分の圧縮を可能にするために、第2の管状部分の端部を越えて少なくとも部分的に軸方向に延びるようにしてもよい。他の実施形態では、第2の管状部分を省略するようにしてもよく、取付部分を、例えば上述した固定要素によって、フランジに直接結合するようにしてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、成形ホーンバネ部分が、目的とするホーンバネ機能を提供するために、少なくとも部分的に蛇腹形状である。他の実施形態では、他のホーンバネ設計、例えば、エラストマー材料の屈曲ではなく少なくとも部分的に圧縮に依存する設計が可能であってもよい。
【0025】
好ましい実施形態では、ホーンバネ部分がスライダ上に成形されるだけでなく、ダンパ要素もスライダ上に成形され、任意選択的には、ダンパ要素が機械的および/または化学的にスライダに結合される。そのような実施形態では、ホーンバネおよびダンパ要素が、好ましくは、互いに一体に成形される。
【0026】
従来技術で知られているように、ステアリングホイールのエアバッグアセンブリの重量を、動的バネ質量系の動的減衰機能の質量体の一部として使用することにより、この目的のための別の荷重を使用することが好ましい。ホーンプレートの重量と、ホーンプレートによって支持される更なる構成要素の重量も、振動する質量体の総重量に寄与する。
【0027】
本発明の振動低減アセンブリのいくつかの実施形態では、ダンパユニットのエラストマーダンパ要素が、ホーンプレートの取付開口部に受け入れられ、ダンパ要素が外側係合面を提供し、この外側係合面が、振動を伝達するために、ホーンプレートの取付開口部の内側係合面と係合する。内側係合面は、軸方向に延びる係合境界面を提供するためにホーンプレートから延びるスリーブによって形成されるものであってもよい。そのようなスリーブは、ホーンプレート上に成形されたスリーブであってもよい。この係合面の様々な設計を後で開示する。
【0028】
本発明の振動低減ダンパアセンブリは、少なくとも1、好ましくは複数の本発明に係るダンパユニットを含む。任意選択的には、ダンパユニットが、様々な方向の振動を減衰するように構成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次に、本発明の概念、いくつかの非限定的な好ましい実施形態、および本発明の概念の更なる利点を、図面を参照して説明する。
【
図1】
図1Aは、車両のステアリングホイールを例示している。
図1Bは、振動低減アセンブリの主要部分を例示している。
【
図2】
図2は、振動低減アセンブリの分解図である。
【
図6】
図6は、
図2のアセンブリに取り付けられたダンパユニットを拡大して示している。
【
図7】
図7は、
図2のアセンブリに取り付けられたダンパユニットを拡大して示している。
【
図8】
図8A~
図8Dは、ダンパユニットの第1の実施形態のスライダを例示している。
【
図17】
図17A~
図17Cは、第4の実施形態に係るダンパユニットを含むアセンブリのホーン作動を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の概念は、概して、動的ダンパとも呼ばれる、周波数調整振動ダンパの分野に関する。そのようなダンパは、自動車のステアリングホイールのような振動する構成要素など、振動する表面または構造における振動を減衰させるために使用することができる。動的振動ダンパは、振動体として機能する質量体と、少なくとも1の弾性ダンパ要素とにより構成される。質量体および少なくとも1の弾性ダンパ要素は一緒に、減衰されるバネ-質量系を提供するとともに、任意選択的には中間構成要素によって、振動する構造に接続される。
【0031】
質量体の重量、並びに、弾性減衰要素の剛性および減衰は、振動する構造に減衰効果を提供するように選択され、振動構造は、1または複数の予め設定された目標周波数で振動することが期待される。振動構造が目標周波数で振動すると、質量体は構造と同じ周波数で振動/共振するが、位相がずれているため、構造の振動は実質的に減衰する。質量体は、振動構造の振動振幅よりも実質的に大きい振幅で振動することができる。
【0032】
本発明の概念は、ステアリングホイールの振動を減衰させるために車両のステアリングホイールに配置される、そのような動的ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットに関する。
【0033】
第1の実施形態
図1Aは、自動車4のステアリングホイール2を例示している。道路およびエンジンからの振動は、ステアリングホイール2に伝達されることがある。それらステアリングホイールの振動は、上下および左右の矢印に示すように、ステアリングコラムに対して垂直となる場合がある。ステアリングホイール2には、ステアリングホイール2内部の破線ボックスによって概略的に示される振動低減アセンブリ6が設けられ、この振動低減アセンブリが、ステアリングホイールの振動の少なくとも一部を動的に減衰するように構成されている。
【0034】
当技術分野で知られているように、ステアリングホイール2には、車両4のホーン(図示省略)を作動させるためのホーン作動機構も設けられている。そのために、ホーン作動パッド8が、ホーン作動時に運転者によって押圧されるようにステアリングホイール2の中央に配置されている。運転者がホーン作動パッド8を解放すると、ホーン作動機構は、1または複数のホーンバネによって非作動状態または初期状態に戻る。図示の実施形態では、ホーン作動機構が機械式である。ホーンバネを含まない電子設計のホーン作動機構も存在する。
【0035】
また、エアバッグアセンブリは、ホーン作動パッド8の下のステアリングホイール2内に配置することができる。
図1Bは、エアバッグアセンブリのガス発生器の部分10を概略的に示している。本実施形態では、エアバッグアセンブリの重量が、振動低減バネ質量系で使用される質量体の総重量の少なくとも一部として使用される。これにより、この目的のための別個の重りの使用を省くか、または大幅に削減することができる。
【0036】
ステアリングホイール2内部の振動低減アセンブリ6は、ステアリングホイール2に固定されたベース構造またはアーマチュア12上に配置されて、それらによって支持される。このため、ステアリングコラムに対して垂直な
図7の振動Vによって示されるように、ステアリングホイール2の振動は、ベース構造12にも存在する。振動低減アセンブリ6は、ホーンプレート14を備え、このホーンプレート上に、ガス発生器およびエアバッグを含むエアバッグアセンブリが取り付けられている。好ましい実施形態では、ホーンプレート14が金属で作られ、このホーンプレートには、任意選択的には、ホーンプレート14上に成形された比較的硬質のプラスチック材料からなるプラスチックカバーが設けられ、このプラスチックカバーが、トップカバー16およびボトムカバー18を含む。ホーンプレート14には3つの開口部が設けられ、各々が、後述するように、ダンパユニット40の一部を受け入れるように構成されている。図示の実施形態では、円筒状スリーブ20が、ホーンプレート14の各開口部の周りに配置されるとともに、ホーンプレート14の平面の上に延在する。スリーブ20は、プラスチックカバー16、18と一体に成形され、よってホーンプレート14にしっかりと結合されている。他の実施形態では、スリーブ20を省くことができる。
【0037】
図2に示すように、ベース構造12は、ホーンプレート14に向かって突出し、それぞれにネジ付きボルト穴が設けられた3つの支持体13を含むことができる。支持体13上には、別個のブラケット22が支持されている。ブラケット22は、各支持体13と位置合わせされた貫通開口部24を有する。各貫通開口部24に隣接して、ブラケット22は、ホーンプレート14を向くホーンバネ支持面26を提供し、その反対側に、ベース支持体12を向くブラケット支持面28を提供する。組立状態(
図7)では、ブラケット22が、支持体13によってブラケット支持面28で支持されている。
【0038】
ブラケット22は、様々な構成要素を支持するための多機能ブラケットであり、特に、ステアリングホイール2のホーンスイッチ機構の部品、ここでは4つの接触スタッド30の形態のものを含むことができ、それら接触スタッドが、ホーンプレート14に向かって突出し、ホーンプレート14の底面から突出する対応する接触パッド15と整列している。
図5に示すように、接触スタッド30と接触パッド15は、通常、互いに距離Dを置いて配置されている。ホーン作動時には、接触パッド15と接触スタッド30が電気的に係合してホーンが作動し、同時に、ホーンプレート14の移動が停止するまで、ブラケット22に向けてホーンプレート14が押圧される。例示的な実施例では、距離Dが、数ミリメートル程度である。
【0039】
エアバッグアセンブリが固定されたホーンプレート14は、3つのダンパユニット40を介してベース構造12上で移動可能に支持される。このユニットを本開示では「ダンパユニット」と呼ぶが、ダンパユニット40は、後述するように、振動減衰機能と別個のホーンバネ機能の両方を提供することに留意されたい。各ダンパユニット14は、少なくともホーンプレート14およびエアバッグアセンブリによって提供される質量体が、(i)振動減衰目的でダンパユニット40の軸Aに対して垂直に移動することができ、かつ(ii)ホーン作動目的で主軸Aに沿って移動することができるように構成される。次に、ダンパユニット40の第1の実施形態を、
図8A~
図8D、
図9A~
図9Dおよび
図10Aおよび10Bを参照して説明する。
【0040】
ダンパユニット40は、スライダ50、ダンパ要素70およびホーンバネ要素90を含む。好ましい実施形態では、スライダ50、ダンパ要素70およびバネ要素90が、1ユニット40に互いに結合され、それら3つの構成要素が、ベース構造12およびホーンプレート14にすぐに接続される単一構造を形成する。構成要素50、70、90は、互いに簡単に分離できないように、機械的および/または化学的に互いに結合することができる。
【0041】
図8A~
図8Dは、スライダ50の第1の実施形態を示している。スライダ50は、適切な合成樹脂材料などの比較的硬質の材料から作製することができる。機械式のホーン作動構造では、スライダが、後述するように、ホーン作動時にガイドシャフト上をスライドするように配置されている。スライダ50は、ガイドシャフトを受けるための貫通ボア54を規定する管状要素52と、半径方向に延びるフランジ56とを備える。フランジ56は、管状要素52を、フランジ56の片側の第1の管状部分58と、フランジ56の軸方向反対側の第2の管状部分60とに分割する。図示の実施形態では、第1の管状部分58が、第2の管状部分60よりも長い。フランジ56は、複数の軸方向を向く貫通穴62の形態の1または複数の固定開口部を提供し、それらが、ダンパ要素40およびホーンバネ要素90を機械的に互いに結合し、それら要素をスライダ50に機械的に結合するために使用される。フランジ56は、ホーンバネ要素90からのバネ力を吸収し、スライダ50およびダンパ要素70間の軸方向の力を伝達する働きもする。
【0042】
ここで
図9A~
図9Eを参照すると、第1の実施形態の完成したダンパユニット40が示されている。弾性ダンパ要素70は、第1のスライダ部分58上に配置されている。弾性ダンパ要素70は、シリコーンゴムなどのエラストマー材料で作られ、動的ダンパの弾性バネ要素としての使用に適している。ダンパ要素70は、少なくともエアバッグモジュールおよびホーンプレート14によって与えられる質量体とともにバネ質量系として作動して、ベース構造体12およびステアリングホイール2における振動Vを減衰する周波数調整動的振動ダンパを形成するように構成されている。
【0043】
図示の実施形態では、ダンパ要素70が、フランジ56とは反対側を向く遠位端71と、フランジ56の方を向く近位端72と、外側係合面75とを備えた略円筒形状を有する。例示的な非限定的な例では、ダンパ要素の軸方向の長さを7mmのオーダーとすることができる。
図7に示す最終的な振動低減アセンブリでは、各ダンパ要素70の外側係合面75が、ホーンプレート14上の関連するスリーブ20の内側係合面21と係合して、振動をホーンプレート14に伝達する。図示の実施形態では、ダンパ要素70の軸方向長さが、本質的に第1のスライダ部分58の軸方向長さに対応するが、第1のスライダ部分58の遠位端を越えて軸方向に短い距離だけ延びている。ダンパ要素70の近位端72は、フランジ56と接触している。ダンパ要素70の遠位端71は、リング形状の半径方向拡張部73を形成するために、外径が増大している。ダンパー要素70の近位端72は、さらに大きい直径を有し、アセンブリ6のホーンプレート14の下方に延在するように配置される。近位端72は、後述する理由のために、リング形状の溝76によって規定される上向きの支持リング74を提供することができる。
【0044】
図示の第1の実施形態では、ダンパ要素70が、複数の軸方向に延びるリブ77(
図9D)に分割され、それらリブが、ダンパユニット40の軸Aの周りに周方向に分配され、その間に空間78を規定している。リブ77の半径方向外面は一緒になって、ダンパ要素70の外側係合面75を形成する。リブ77および空間78によって得られる作用および利点は後で述べる。他の実施形態では、ダンパ要素40が、連続的な外側係合面を規定する周方向に途切れていない円筒の形態を有することができる。
【0045】
ダンパユニット40のホーンバネ要素90は、スライダ50の第2の部分、この実施形態ではフランジ56の軸方向反対側、第2の管状部分60、およびフランジ56の一部にも配置される。バネ要素90は、エラストマー材料から作られ、ホーンバネ部分94および取付部分92(
図9C)を含み、それらが、エラストマー材料により、互いに一体に成形されている。ホーンバネ要素90の成形中、少なくともその取付部分92がスライダ50上に成形され、それによりホーンバネ要素90が製造時にスライダ50上に正確に位置決めされるようになっている。
【0046】
図9Cに最もよく示されるように、ホーンバネ要素90の取付部分92はL字形断面を有し、一方の辺がスライダ50の短い管状部分60と接触し、もう一方の辺がフランジ56と接触する。他の実施形態では、短い管状部分60が省略されて、取付部分92がフランジ56のみと係合するようにしてもよい。
【0047】
ホーンバネ要素90に使用されるエラストマー材料は、必要なバネ定数に応じて、目的とするホーンバネ機能を提供するのに適した任意のエラストマー材料であってよい。好ましい実施形態では、材料がシリコーンゴムを含む。特にダンパ要素40およびホーンバネ要素90が互いに一体に成形される場合、それら要素を成形するために同じエラストマー材料を使用することができる。図示の第1の実施形態では、ホーンバネ部分94が、軸Aの方向にバネ作用を提供するために蛇腹形状である。他の実施形態は、蛇腹形状設計のように屈曲するのではなく、圧縮に部分的にまたは圧縮のみに依存する異なるバネ設計を有するようにしてもよい。バネ定数は、ホーンバネ部分94の1または複数のパラメータ、例えば材料、軸方向長さ、直径、壁厚、および蛇腹設計(角度など)を変えることによって、変えることができる。開口部および/または別個のバネ脚部を与える「途切れた」設計を使用することも可能であり、それは、バネ特性の更なる調整オプションも提供するであろう。
【0048】
最終的な振動低減アセンブリ6では、成形されたホーンバネ部分94が、軸線Aの方向にホーンバネとして作用し、スライダ50およびダンパ要素40を介してホーンプレート14にバネ力を及ぼすように構成される。ホーン作動が終了すると、ホーンプレート14を戻すためのバネ力が提供される。ホーンバネ部分94の事前圧縮により、バネ力は、非作動状態にあっても付勢バネ力として提供される。それにより得られる利点は、運転者がホーンを操作するときに、ホーンバネによって生成されるバネ力をより早く利用できることである。
【0049】
図示の第1の実施形態では、ホーンバネ要素90が、スライダ50上に直接成形されており、その結果、金属渦巻きバネを別個に製造する必要がなく、そのような別個の金属渦巻きバネを、組立中にスライダに対して取付けおよび/または位置合わせする必要がない。現在のところ、オーバーモールディングが好ましい成形方法と考えられるが、スライダ50とエラストマー部品の両方が1台の2K射出成形機を使用して製造される2K射出成形など、他の手法も考えられる。現在好ましいわけではないが、ダンパ要素70とホーンバネ要素90に異なる成形技術を使用することが可能である。好ましい実施形態では、ホーンバネ要素90が、スライダ50上に成形されるだけでなく、スライダ50にも結合される。結合は、機械的(摩擦結合を含む)および/または化学的なものとすることができる。
【0050】
図示の第1の実施形態では、スライダ50の図示の位置にホーンバネ要素90を維持するために、ホーンバネ要素90がスライダ50に機械的に結合されている。これは、複数の固定要素100によって達成され、それらは、ホーンバネ要素90と一体に成形され、フランジ56の固定開口部62と固定係合している。図示の実施形態では、ダンパ要素40も、スライダ50に機械的に結合され、それにより、スライダ50の図示の位置にダンパ要素40が維持される。これも、固定要素100によって達成される。好ましい実施形態では、同じ固定要素100が、ホーンバネ要素90とダンパ要素40の両方を結合するために使用され、その結果、エラストマーホーンバネ要素90、エラストマーダンパ要素40および固定要素100が、一つの単一体として成形されるとともに、貫通開口部62によってスライダ50に機械的に結合される。説明目的のためだけに、この単一のエラストマー本体70、90、100は、
図10Aおよび
図10Bでは、スライダ50なしで示されている。この実施形態では、エラストマー要素70、90とスライダ50の管状部分との間に摩擦結合も存在するようにしてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、ダンパ要素40およびホーンバネ要素90の一方または両方が、接着によりスライダ50に化学的に結合されるものであってもよい。ダンパ要素40およびホーンバネ要素90の一方または両方に対して、図面に開示されるような機械的結合および化学的接着の両方を使用することも可能である。化学的接着は、成形中に実行されるものであってもよい。摩擦結合のみに、または部分的に依存することも可能である。摩擦結合は、エラストマー材料の成形後の収縮によって得ることができる。
【0052】
次に、
図2~
図7を参照して、第1の実施形態に係る多数のダンパユニット40を使用して振動低減アセンブリ6を組み立てる方法を説明する。ここで説明するステップの順序または順番は変更することが可能である。第1のステップとして、ブラケット22をベース構造12の突出部13上に配置する。第2のステップとして、各ダンパユニット40のスライダ50およびリブ形状のダンパ要素70を、
図2の下側から、ホーンプレート14の関連する開口部に挿入する。
【0053】
なお、各ダンパユニット40のスライダ50およびエラストマーダンパ要素70は、ホーンプレート14の片側のみから一緒に挿入されることに留意されたい。ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70の半径方向外側係合面75を対応するスリーブ20の内側係合面21と係合させて、ステアリングホイールの振動Vがダンパ要素70からホーンプレート14に伝達されるようにする。好ましくは、ダンパ要素70が、スライダ50とスリーブ20の内側係合面21との間で径方向に幾分圧縮されるように、半径方向の寸法が選択される。
【0054】
ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70と一体的に形成された支持リング74は、
図7に示すようにホーンプレート14の底面に係合し、最終的な挿入位置を規定する。ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70の上部半径方向拡張部73は、スリーブ20を通過するために一時的に圧縮される。最終位置では、拡張部73が、スリーブ20の上縁の上に延びる。これにより、支持リング74および半径方向拡張部73は、一緒になって、ダンパ要素70がホーンプレート14に対して正確に軸方向に位置決め/固定されて保持されるようにする。別個の固定要素は不要であり、ダンパユニットの片側挿入時に、軸方向固定が自動的に得られる。また、この第1の実施形態におけるエラストマーダンパ要素70の軸方向遠位部分が、スリーブ20の遠位端を越えて軸方向に延びることにも留意されたい。
【0055】
ダンパ要素70がホーンプレート14に正確に配置されると、ボルト120を各スライダ50のボア54内に挿入することができる。各ボルト120は、ボルトヘッド126、円筒ガイドシャフト122およびねじ付き端部124を有する。スライダ50の管状部分52は、ガイドシャフト122に沿ってスライドすることができる。
図7に示すように、ボルト120は、ベース構造12の延出部13のボルト穴に固定される。各ボルト120の最終的な締結中に、対応するホーンバネ部分94の事前圧縮が得られる。非限定的な例として、ホーンバネ部分は、組立中に10mmから7mmに事前に圧縮され、その後、ホーンが作動すると1または数mmさらに圧縮される。最終組立において、各ホーンバネ部分94の遠位端95は、ブラケット22の関連するホーンバネ支持面26と係合する。最終組立状態では、ボルトヘッド126が、エラストマーダンパ要素70の上部端71と軸方向に係合し、半径方向拡張部73がスリーブ20とボルトヘッド126との間に突出する。
【0056】
ダンパユニット40を製造し、本発明のダンパユニット40を使用して振動低減アセンブリを組み立てる開示の方法は、製造コストと時間の面だけでなく、品質の面でも大きい利点がある。多数の個々の部分の製造、処理および組立を行う必要のある従来技術と比較して、そして、多くの場合ホーンプレート14の両側から、多くの様々な部品の処理および組立を行う必要のある従来技術と比較して、本発明の概念は、各ダンパユニット40において、単純なボルト120とともに単一のダンパユニット40のみを使用することにより、ダンパ機能およびホーンバネ機能の両方を確立することを可能にする。
【0057】
アセンブリ6のホーン作動機構の動作は以下の通りである。すなわち、ホーン機構が運転者によって作動されないとき、各事前圧縮または付勢されたホーンバネ部分94が、スライダ50のフランジ56を押圧し、スライダ50をベース構造12から離れる方向に上方へと付勢する。軸方向のバネ力は、フランジ56を介してダンパ要素70に伝達され、支持リング74を介してホーンプレート14に伝達される。ここで、ボルト120は複数の機能を有し、すなわち、
・ボルト120は、ホーン作動中のスライダ50の軸方向移動のためのガイドシャフト122を提供し、
・ボルトヘッド126は、ダンパユニット40の軸方向移動のための上部軸方向ストッパを規定し、
・ボルトヘッド126は、ダンパ要素70の上部を押圧することにより、ホーンプレート14に対してダンパユニット40を定位置に固定するのを補助することに留意されたい。
【0058】
図示の実施形態では、ダンパ要素70の遠位端71が、スリーブ20の上縁を越えて短い距離だけ延び、それにより、ダンパユニット40の上部停止位置が、ダンパ要素70の端部71とボルトヘッド120との間の柔軟な係合によって規定される。
【0059】
ホーン作動時に、運転者がステアリングホイール2のホーンパッド8を押すと、ホーンプレート14がベース構造12に向かって押される。力は、ダンパ要素40を介してスライダ50に伝達され、それによりスライダがガイドシャフト122に沿って変位し、
図5の距離Dがゼロに減少してホーンスイッチ15、30が閉じるまで、ホーンバネ部分94を軸方向にさらに圧縮する。ホーンパッド8への圧力が解放されると、ホーンバネ部分94がホーンプレート14をその通常の位置に戻し、エラストマー端部分71とボルトヘッド124との間の柔軟な係合が「ソフトな」停止を与える。
【0060】
アセンブリ6の振動減衰機能は次の通りである。先ず、ステアリングホイール2およびベース構造12に生じるステアリングホイールの振動V(
図7)が、ボルト120およびスライダ50を介してエラストマーダンパ要素70に伝達される。エラストマーダンパ要素70は、スリーブ20を介してステアリングホイールの振動Vをホーンプレート14に伝達し、それにより、質量体(ホーンプレート、エアバッグアセンブリ、およびホーンプレート14によって支持される他の任意の細部構造の質量によって提供される)を位相をずらして振動させて、ステアリングホイール2の振動Vが動的に減衰されるようにする。振動減衰の間、ダンパ要素70のエラストマー材料の半径方向の圧縮は変化することとなる。ダンパ要素70のリブ付き設計により、エラストマー材料は、振動中にリブ77間の空間78内に拡張することができる。この設計は、ダンパの圧縮とダンパ要素70のバネ定数との間に、より直線的な有利な関係を与える。リブのない中実円筒のエラストマー材料においては、材料にそのような「逃げ」がないため、より非直線的なばね定数となり、それにより、目標周波数に一致させるのがより困難となって、動的減衰機能の効率が低下する。リブ付き構成によって得られる更なる利点は、設計および製造中の周波数調整における柔軟性の向上である。アセンブリの減衰周波数は、リブ77の数、リブ77およびリブ77間の空間78の周方向寸法、半径方向寸法および/または軸方向の寸法等のうちの1または複数のパラメータを変えることによって調整することができる。このため、より厚いまたはより薄いリブ、軸方向により長いまたはより短いリブ、半径方向により長いまたはより短いリブなどを使用することができる。また、ダンパ要素70を調整することができる周波数間隔は、従来のダンパ要素と比較して、リブ付き構成を使用することにより、拡大することができる。
【0061】
このため、振動減衰動作中、ホーンプレート14は、特にホーンプレート14を軸方向に支持するダンパ要素70の下側部分または近位部分72に対して、軸Aに垂直な方向に移動させられる。半径方向に移動するホーンプレート14がその後面で下側部分72の表面に直接接触しているため、ホーンプレート14のそのような半径方向の移動は、ホーンプレート14の底面と
図7の符号74におけるダンパ要素70との間の境界面で不要な摩擦運動およびシリコーン摩耗を引き起こす可能性がある。また、ダンパ要素70の下側部分72とホーンプレート14の後面との間のこの軸方向の直接的な接触は、減衰機能(調整)に否定的な形で影響を及ぼす可能性がある。これが、リング状の溝76を設ける理由である。これにより、支持リング74は、減衰中に、ホーンプレート14の左右の動きとともに、
図7の左右方向により自由に動くことができ、その結果、ホーンプレート14とダンパ要素70との間の摩擦運動が少なくなり、また、ダンパ要素部分70とホーンプレート14の後面との間の接触から振動減衰を「分離」することができる。
【0062】
第2の実施形態
図11Aおよび
図11Bは、ダンパユニット240の第2の実施形態を示している。第1の実施形態と同じ符号が200番台で使用されている。前の段落で説明したリング74およびリング状溝76による解決策は有利となることもあるが、追加の可動性は振動方向のみにおいて得られることに留意されたい。例えば、振動Vが
図7で左右を向く場合、
図7の左側と右側に示される支持リング74の部分は、溝76によって、ホーンプレート12とともに自由に移動することができる。しかしながら、
図7の読み手に向かいかつ読み手から離れる方向を向く支持リング74上の様々な周方向の位置において、そのような左右の動きは、溝76によって許容されることはない。
【0063】
この問題に対処するために、第2の実施形態に係るダンパ要素270の底部分271が、
図11Aおよび
図11Bに示すように設計されている。第1の実施形態における支持リング74は、多数の個々の支持スタッド274へと周方向に分割されて、周方向におけるそれらの間に空間279が設けられている。リング設計74と比較して、個々の支持スタッド274は、すべての半径方向でより柔軟となる。この設計により、ホーンプレート14の後面と係合している支持スタッド274が、振動減衰中に、振動減衰動作に実質的に影響を与えることなく、ホーンプレート14と一緒に、軸Aに対して半径方向および周方向の両方に移動することができる。この設計は、支持スタッド274がホーンプレート14の動きによりよく追従することを可能にする。すべての方向で均一な可動性を得るために、支持スタッド274は好ましくは円形断面を有すること、すなわち、軸Aに垂直なすべての方向においてほぼ同じ寸法を有するようにしてもよい。
【0064】
第3の実施形態
図12Aおよび
図12Bは、異なる方向に異なる減衰特性が必要とされる状況で使用するためのバネユニット340の第3の実施形態を示している。上記と同じ符号が300番台で使用されている。支持スタッド374および空間376は、第2の実施形態と同様に配置される。第3の実施形態では、バネユニット340のエラストマーダンパ要素370が、長円形または楕円形構成などの非円形構成を有する。
図12Bに示すように、非円形ダンパ要素370は、ホーンプレート14の対応する非円形開口321に収容される。この非円形設計により、アセンブリは、
図12Bの垂直方向および水平方向で異なる調整周波数を提供することができる。
【0065】
第4の実施形態
図15A~
図15Cは、ダンパユニット440の第4の実施形態を示している。上記と同じ符号が400番台で使用されている。ダンパユニット440のスライダ450は、
図13A~
図13Dに示されている。ダンパユニット440のダンパ要素470は、
図14A~
図14Cに示されている。製造、任意選択的な結合、機能、材料などに関する先の実施形態について述べたすべてが、すべての関連部分において、この第4の実施形態440にも当てはまる。
【0066】
第2の実施形態と同様に、第4の実施形態に係るダンパユニット440のダンパ要素470は、複数の軸方向に延びるリブ477に分割され、それらリブが、ダンパユニット440の軸Aを中心に周方向に分配され、それらの間に空間478が規定されている。上述したリブの動作および利点は、この第4の実施形態にも、すべての関連する態様で当てはまる。しかしながら、ダンパユニット440のこの第4の実施形態は、いくつかの追加の特徴を提供する。
【0067】
第4の実施形態では、軸Aの方向に見られるように、各リブ477が、リブ477の振動減衰部分を形成する近位リブ部分477aと、振動減衰動作に主に関与しない遠位リブ部分477bとを有する(
図14A~
図14C)。近位リブ部分477aは、軸Aと平行に延びる外側半径方向面475を有する。それらリブ477の半径方向外側面475は一緒になって、ダンパ要素470の外側係合面を形成する。最終アセンブリでは、近位リブ部分477aが、上述したように、半径方向に僅かに圧縮された状態で保持されることとなる。遠位リブ部分477bは、第1の実施形態の半径方向拡張部73と同様に、固定目的で、半径方向拡張部473を有する。半径方向拡張部473は、近位傾斜固定面473aおよび遠位傾斜挿入面473bを提供する。さらに、図示の第4の実施形態では、遠位リブ部分477bとスライダ450の管状要素458との間に半径方向にギャップ473cがあってもよい。他の実施形態では、この半径方向のギャップ473cを省いてもよい。
【0068】
ダンパユニット440のホーンバネ要素490は、スライダフランジ456の反対側、スライダ450の下側管状部分460上に配置されている。ホーンバネ要素90の構造、製造、代替例および動作に関して第1の実施形態で述べたことは、すべての関連する態様において、この第4の実施形態のホーンバネ要素490に適用される。図示の実施形態では、ホーンバネ要素490が、第1の実施形態と同様に、スライダ450上でエラストマーダンパ要素470と一体に成形され、エラストマー固定要素100が、スライダフランジ456の開口部462を通って延在する。この実施形態では、エラストマー材料の部分101が、スライダフランジ456の外側リムの半径方向外側にも延在する。代替的な実施形態では、ダンパ要素470およびホーンバネ要素490が、固定要素100のみによって、または部分101のみによって、一体に保持される。
【0069】
第4の実施形態では、
図14A~
図14Cおよび
図15A~
図15Dに示すように、エラストマーダンパ要素470には、個別の支持スタッド474aの第1のセットおよび個別の支持スタッド474bの第2のセットが設けられている。第1のセットの支持スタッド474aは、第2のセットの支持スタッド474bと比較して、軸方向に量Δだけ僅かに高い。非限定的な例として、Δの値は、大凡1ミリメートルまたは数ミリメートルである。図示の実施形態では、2つのセットの支持スタッド474a、474bが、周方向に織り交ぜられている。支持スタッド474a、474bは、周方向に互いに離間しており、半径方向にスライダから離間している。図示のような好ましい実施形態では、第2のセットの支持スタッド474bが、軸Aに垂直な断面が大きいという点で、第1のセットの支持スタッド474aよりも大きくなっている。以下では、これらの異なるスタッドを、小さい支持スタッド474aおよび大きい支持スタッド474bと称する。図示の実施形態では、小さい支持スタッド474aは円形の断面を有し、大きい支持スタッド474bは細長い断面を有する。支持スタッド474a、474bの設計および形状は、この例とは異なってもよい。小さい支持スタッド474aは、第2の実施形態の支持スタッド274と本質的に同じ機能を有する。すなわち、小さい支持スタッドは、振動減衰を妨げることがないよう、支持スタッドとホーンプレート14の後面との間の接触または境界面が半径方向平面においてフレキシブルであることを確実にする。大きいスタッド474bの機能については以下に述べる。
【0070】
図16A~
図16Eは、第4の実施形態に係る3つのダンパユニット440を備える振動ダンパアセンブリ6(
図16F)を組み立てる方法を示している。
図16Aは、ホーンプレート14の3つの開口部のうちの1つに下方から挿入されるダンパユニット440を示している。前述した実施形態と同様に、各ダンパユニット440のスライダ450およびエラストマーダンパ要素470は、ホーンプレート14の一方の面のみから、一緒に挿入される。図示の実施形態では、ホーンプレート14の各開口部にスリーブ20が設けられている。スリーブは、ホーンプレートに成形される硬質プラスチック材料のような比較的硬質の材料から形成されることが好ましい。スリーブ20の一機能は、ダンパ要素470に軸方向に延びる係合面を提供することである。スリーブ20の別の機能は、組立中および動作中の損傷からエラストマーダンパ要素470を保護することである。
【0071】
図16Bに示すように、リブ477の遠位傾斜挿入面473bがダンパユニット440を開口部内に案内し、また、エラストマーダンパ要素470を開口部内に通すか又は押圧するのも補助するように、スリーブの内側半径寸法が選択されている。
【0072】
図16Cは、ダンパユニット440がスリーブ20の開口部を通って移動するときに、リブ477の半径方向拡張部473が半径方向内向きにどのように押されるのかを示している。この半径方向の移動は、遠位リブ部分477bの半径方向内向きの曲げおよび/または拡張部473の半径方向の圧縮により、可能となる。
【0073】
図16Dは、ホーンプレート14に対するダンパユニット440の最終取付位置を示している。最終位置は、小さい支持スタッド474aがスリーブ20の下側と係合に至る挿入位置によって規定される。その係合は、ホーンプレート14の後面と直接であってもよい。ダンパユニット440がその最終位置まで完全に挿入されると、リブ477の拡張部473が、
図16Dに矢印で示すように、半径方向外向きにスナップする。各リブ477の近位傾斜固定面473bは、ダンパユニット440を定位置に固定すべく、スリーブ20の半径方向拡張部の上側と固定係合する。このとき、ダンパユニット440は、エラストマーダンパ要素470によって、すなわち一方では小さい支持スタッド474aによって、そして他方では半径方向拡張部473によって、その最終位置で軸方向に保持される。大きい支持スタッド474bは、この段階では使用されない。
【0074】
第1の実施形態において述べたように、ダンパ要素470の挿入中に、近位リブ部分477aの半径方向外側の係合面475は、対応するスリーブ20の内側係合面21と係合し、その結果、ステアリングホイールの振動Vをダンパ要素470からホーンプレート14に伝達することができる。適切な振動減衰効果を達成するためには、ダンパ要素470が挿入の結果としてスライダ450とスリーブ20の内側係合面21との間で半径方向にある程度事前圧縮されるように、半径方向の寸法を選択することが好ましい。
【0075】
図16Eに示すように、ダンパ要素470がホーンプレート14に正確に配置されている場合、ボルト120を各スライダ450のボア454内に挿入することができる。各ボルト120は、ボルトヘッド126、円筒ガイドシャフト122およびねじ付き端部124を有する。スライダ450の管状部分452は、ガイドシャフト122に沿ってスライドすることができる。ボルト120は、ベース構造12の延出部13のボルト穴に固定される。
【0076】
各ボルト120の最終的な締結中(
図16F)に、対応するホーンバネ部分494の事前圧縮が得られる。非限定的な例として、ホーンバネ部分494は、組立中に10mmから7mmに事前に圧縮され、その後、ホーンの作動時に1ミリメートルまたは数ミリメートルさらに圧縮されるようにしてもよい。最終アセンブリ6では、各ホーンバネ部分494の遠位端495が、ブラケット22の関連するホーンバネ支持面26と係合する。
【0077】
図16Fの拡大図に示すように、各ボルト120の最終締結中に、リブ477の遠位端がスライダ450の遠位端と同じ高さになるまで、ボルトヘッド126は、リブ477と係合して、リブを軸方向に圧縮することができる。
図16Fに矢印で示すように、この最終圧縮は、半径方向拡張部473またはリブ477をスリーブ20によりしっかりと固定し、それによりホーンプレート14に対して軸方向にダンパユニット440をさらに確実に固定することができる。他の実施形態では、そのような最終的な圧縮を省くことができる。
【0078】
ここで、より大きい/より剛性のある支持スタッド474bの動作を、
図17A~
図17Cを参照して説明する。運転者がホーンを作動させる前(
図17A)は、各スリーブ20の後面が、小さい支持スタッド474aのみと接触し、スリーブ20の後面と大きい支持スタッド474bとの間に軸方向のギャップΔが存在する。
【0079】
図17Bは、運転者がホーン起動パッド8を押圧することによってホーン作動を開始したばかりのホーン作動の初期段階を示している。ここで、ホーンプレート14は、距離Δだけ軸方向に移動している。小さい支持スタッド474aは、相対的に小さい断面寸法のため、軸方向に圧縮されている。したがって、ホーンバネ494の圧縮はまだ始まっていない。小さい支持スタッド474aが大きい支持スタッド474bと同じ軸方向高さを有する程度まで軸方向に圧縮されると、
図17Bの拡大図に示すように、スリーブ20の後面が、小さい支持スタッド474aおよび大きい支持スタッド474bの両方と接触することになる。このとき、距離Δがなくなる。よって、支持スタッド474aの第1のセットに小さい寸法を選択することは、柔軟な境界面を確保し、ホーン作動時の軸方向の圧縮を確保するという両方の利点を有する。
【0080】
図17Cは、ホーン作動の次の段階を示している。大きい支持スタッド474bへの距離Δがなくなったとき、すべての支持スタッド474a、474bを合わせた総軸方向剛性は、運転者によってホーン作動パッド8が押されたときにホーンバネ部分494を圧縮するのに十分なものとなる。説明のために、
図17Cは、ホーンプレート14の動きおよびホーンバネの圧縮を非常に誇張した大きさで示している。実際には、この動きはたった1ミリメートルまたは数ミリメートル程度であり得る。
【0081】
異なる高さの支持スタッド474a、474bを含み、任意選択的には軸方向の剛性が異なるこの設計によって得られる特定の利点は、2つの有利な特性が同時に得られることであり、その1つが振動減衰に関するもので、もう1つがホーン作動に関するものである。振動減衰に関しては、エラストマー材料とスリーブ20またはホーンプレート14の後面との間に半径方向に柔軟な境界面が好ましい。ホーン作動に関しては、運転者がパッド8を押したときにホーンバネがなるべく直ぐに圧縮されるように、軸方向に硬い境界面が同じ位置で好ましい。この「ジレンマ」は、異なる支持スタッド474a、474bを提供して「動的」支持境界面を作り出すことによって解決される。
【0082】
一方で、ホーン作動が存在しない場合、ホーンプレート14の後面は、比較的可撓性のある小さい支持スタッド474aのみによって支持される。これは、エラストマー材料とホーンプレート14の後面との間の境界面が振動減衰機能を妨害しないという利点を有する。大きい支持スタッド474bは、ホーン作動が存在しないときは、非作動である。一方、ホーンの作動が開始されたとき、完全に作り出されたホーンバネ力ができるだけ早く得られることが好ましい。大きくて比較的硬質な支持スタッド474bと、軸方向剛性が比較的低い小さい支持スタッド474aの存在により、小さい支持スタッド474aの軸方向の圧縮によってホーン作動が開始されると、距離Δが急速に取り除かれ、その結果、通常の振動減衰時に境界面が柔軟であるにもかかわらず、望ましい軸方向に硬い境界面を確立することができる。
【0083】
代替例
上述した図示の実施形態は、多くの方法で変更することができる。
【0084】
図示の実施形態では、ガイドシャフトが、振動ベース構造にねじ込まれるボルトの一部である。ガイドシャフトは、例えば、振動する構造と一体に作られたガイドシャフトであって、任意選択的にナットによりアセンブリを固定するための自由ねじ端部を有するガイドシャフトによって、異なる形で実現されるものであってもよい。また、いくつかの実施形態では、ボルトを反対方向に向けること、すなわち、代わりにホーンプレートにねじ込むことを可能にすることができる。
【0085】
代替的な実施形態では、ホーンプレートのスリーブ20が省略され、ダンパ要素が、異なる方法でホーンプレート14に接続されて、任意選択的にはホーンプレート14と直接接触する。
【0086】
他の実施形態は、スライダの第2の管状部分が、ホーンバネ部分の中にさらに延びるが、ホーンの作動時にスライダの移動を可能にするために、その中全体には延びないことが好ましい。いくつかの実施形態では、第2の管状部分が省略され、ホーンバネ要素が、フランジのみに取り付けられるなど、他の方法でスライダに取り付けられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、振動が本質的にすべての半径方向に伝達され得るように、ダンパ要素の外側係合面が、ダンパユニットの軸の周りで周方向に実質的に360度にわたって延在するようにしてもよい。そのような実施形態は、外側係合面が周方向に連続的ではないリブ付き設計も含むとみなすことができる。
【0088】
他の実施形態では、ダンパユニットが特定の方向にのみ振動を伝達するように構成されている場合に、ダンパ要素の外側係合面が一部の方向のみに存在するものであってもよい。これは、周方向に限られた内側係合面を規定する内側突出部分、例えばスリーブの内側突出部分をホーンプレートの取付開口部に配置するなどして、様々な方法で実現することができる。これは、一部の方向にのみ係合面を有するエラストマーダンパ要素を設計することによって実現されるものであってもよい。単一のダンパユニットが特定の方向のみに振動を伝達するように構成されたそのような実施形態では、完成したアセンブリが、異なる方向の振動を処理するように構成されたいくつかのダンパユニットを含むことができる。一例としては、1または複数のダンパユニットが、垂直方向の振動を減衰するように構成され、1または複数の他のダンパユニットが、水平方向の振動を減衰するように構成される。
【0089】
代替の実施形態では、例えば異なる方向において異なる減衰特性が望まれていて、ダンパユニットをガイドシャフト上で特定の方向に向ける必要がある場合に、スライダおよびエラストマー要素の対応するチャネルまたはボアが非円形断面を有するようにしてもよい。