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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】食用含有物を含む組成物の加熱方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20230217BHJP
   A23L 3/005 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A23L5/10 Z
A23L3/005
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535577
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086879
(87)【国際公開番号】W WO2019129784
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】BE2017/5994
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】505090469
【氏名又は名称】プラトス ナームローズ フェノートサップ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リュドビィク、プレアット
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-218958(JP,A)
【文献】特開2001-145469(JP,A)
【文献】特開平03-224450(JP,A)
【文献】特表2009-533068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に識別可能な食用含有物を含む、圧送可能な組成物を加熱する方法であって、下記の工程:
a)2%~7%(w/w)のデンプン、少なくとも20%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物、および任意に糖または糖代替物を含む圧送可能な組成物を提供する工程; b)連続オーム加熱器内で前記組成物に第1のオーム加熱処理を適用する工程であって、前記組成物が、前記第1のオーム加熱処理の終了時に60℃~95℃の範囲の温度を有する工程;
c)オーム加熱をせずに前記組成物に第1の保持工程を適用する工程であって、前記第1の保持工程の終了時の前記組成物の温度が、前記第1のオーム加熱処理の終了時の前記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
d)連続オーム加熱器内で前記組成物に第2のオーム加熱処理を適用する工程であって、前記組成物が、前記第2のオーム加熱処理の終了時に75℃~110℃の範囲の温度を有し、前記第2のオーム加熱処理の終了時の前記組成物の温度が、前記第1のオーム加熱処理の終了時の前記組成物の温度と比較して少なくとも5℃高い工程;
e)オーム加熱をせずに前記組成物に第2の保持工程を適用する工程であって、前記第2の保持工程の終了時の前記組成物の温度が、前記第2のオーム加熱処理の終了時の前記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
f)任意に、4℃~45℃の範囲の温度に前記組成物を冷却する工程;および
g)任意に、前記組成物を梱包する工程
を含み、
前記工程a)~e)が、少なくとも4barの初期背圧による連続プロセスとして行われる、前記方法。
【請求項2】
前記圧送可能な組成物が、20%~88%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物;および/または10%~40%(w/w)の糖または糖代替物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記圧送可能な組成物が、前記第1のオーム加熱処理を適用する前に、20℃で少なくとも0.014S/mの導電率を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記個別に識別可能な食用含有物の平均サイズが5mm~50mmの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の保持工程が0.2分~10分の期間にわたって適用され、かつ/または前記第2の保持工程が0.25分~5分の期間にわたって適用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、第1および/または第2の保持工程において熱処理を受けない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の保持工程が、それぞれ前記組成物を1つ以上の断熱導管に通すことを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記食用含有物が、生の、冷凍または乾燥した全果実、生の、冷凍または乾燥した果実片、穀、種子、ナッツまたはナッツ片、全野菜または野菜片、魚または魚片、および肉または肉片、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の食用含有物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧送可能な組成物が、1つ以上の食感付与剤(texturing agent)、酸性度調整剤、スパイス、香味剤、着色剤および/または芳香剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物の冷却が少なくとも5℃/分の冷却速度で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、果実調製物等の個別に識別可能な食用含有物を含む組成物、およびそのような組成物の加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、食品産業においては、新しい食感(texture)、および/または熱安定性等の機能性を有する新しい食品が次々に提供されている。食感に対処する場合、大きな問題の一つは、食用含有物(例えば、果実片)の完全性および新鮮さを、そのような食用含有物を含む食品を組織化および熱加工する間またはその後に、例えば、デンプンベースのマトリックス等の濃厚なマトリックスにおいてどのようにして維持するかという点にある。組織化された加工食品の例とは、果実、野菜、肉または魚、ミートボール、調理済み食品(ready meal)等を含む製品である。従来、食品加工方法は、本質的に食用含有物に深刻な損傷を与える可能性のある従来の加熱処理に基づいている。
【0003】
食用含有物を含む食品を調製および/または保存するための現在の技術としては、通常、スクレープ蒸気加熱ケトル(scraped steam heated kettle)で行われるバッチ処理、および、通常、スクレープ表面熱交換器(scraped surface heat exchanger)で行われる連続処理が含まれる。バッチ処理では、通常、食品にとって必要な温度に到達するまでに長い加熱時間を要する。これにより、製品が過剰に調理されてします可能性がある。そのような加工の結果、食品の構造、色および味の変化、ならびに食品中の望ましくない分子(例えば、フラン、ヒドロキシメチルフルフラール等)の形成が引き起こされる。さらに、食品の不均一な調理がバッチ処理中に発生する可能性がある。また、より速い加熱にもかかわらず、連続的スクレープ表面熱交換器(continuous scraped surface heat exchanger)による調理が食品片の完全性に及ぼす影響は依然として大きく、粒子の損傷を生じさせるものである。
【0004】
オーム加熱(または直接抵抗加熱)は、食品の液体および固体に電流を流すことによってそれらを同時に加熱するプロセスである。バッチ処理またはマイクロ波加熱において生じる事象とは対照的に、オーム加熱によれば食品が均一に加熱される。さらに、高温壁がないため、また調理される食品表面の加工中の汚染を減らすことにより、オーム加熱は、熱感受性の化合物の熱による劣化を回避することができる。さらなる利点は、オーム加熱により食品の品質が向上し、加工者のコストおよびエネルギーを節約できることにある。オーム加工食品の保存期間は、缶詰めされ、殺菌された無菌加工製品の保存期間と同程度である。
【0005】
デンプンおよび粒子を含む食品を調製するための、オーム加熱を含む現在の方法は、食品における導電率の均一な分布が可能ではなく、それにより、製品における未調理部分の形成等の品質問題を生じる。
【0006】
したがって、デンプンおよび粒子を含む高品質の食品を製造するための改善されたプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、(i)デンプン、および少なくとも20%の個別に識別可能な食用含有物を含む組成物をオーム加熱により60℃~95℃の範囲の温度に加熱すること、(ii)第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して最大で5℃低い温度で組成物を保持する(オーム加熱の非存在下)こと、(iii)オーム加熱による2回目の加熱により組成物を75℃~110℃の範囲の温度とすることであって、組成物の温度は、第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して少なくとも5℃高く、(iv)第2のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して最大で5℃低い温度で組成物を保持する(オーム加熱の非存在下)ことであって、すべての工程が連続的に行われることによって、優れた食感(例えば、均一に食感が付与された、および/または濃厚な(thickened))、味および/または色を有する、均一に加熱および/または調理された組成物(例えば、調理されていない部分がない)を比較的短時間で得ることができる。さらに、本明細書に開示される加熱方法によって得られる組成物は、均一なレベルの無菌性および/または製品品質を有する。さらに、本明細書に開示される加熱方法によれば、食用含有物に対する損傷および/または損失が非常に少ない組成物を得ることができ、他の(従来の)方法を用いて加熱された個別に識別可能な食用含有物を少なくとも20%含む組成物と比較して、より高い含有量の(完全な)食用含有物がもたらされる。
【0008】
第1の態様によれば、個別に識別可能な食用含有物を含む、圧送可能な組成物を加熱する方法であって、下記の工程:
a)デンプン、少なくとも20%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物、および任意に糖または糖代替物を含む圧送可能な組成物を提供する工程;
b)連続オーム加熱器内で上記組成物に第1のオーム加熱処理を適用する工程であって、上記組成物が、上記第1のオーム加熱処理の終了時に60℃~95℃の範囲の温度を有する工程;
c)オーム加熱をせずに上記組成物に第1の保持工程を適用する工程であって、上記第1の保持工程の終了時の上記組成物の温度が、上記第1のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
d)連続オーム加熱器内で上記組成物に第2のオーム加熱処理を適用する工程であって、上記組成物が、上記第2のオーム加熱処理の終了時に75℃~110℃の範囲の温度を有し、上記第2のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度が、上記第1のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して少なくとも5℃高い工程;
e)オーム加熱をせずに上記組成物に第2の保持工程を適用する工程であって、前記第2の保持工程の終了時の上記組成物の温度が、上記第2のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
f)任意に、4℃~45℃の範囲の温度に上記組成物を冷却する工程;および
g)任意に、上記組成物を梱包する工程
を含み、
上記工程a)~e)が、好ましくは少なくとも4barの初期背圧による連続プロセスとして行われる、方法。
【0009】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、20%~88%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物;10%~40%(w/w)の糖または糖代替物;および/または2%~7%(w/w)のデンプンを含む。
【0010】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、第1のオーム加熱処理を適用する前に、20℃で少なくとも0.014S/mの導電率を有する。
【0011】
特定の実施形態において、個別に識別可能な食用含有物の平均サイズは、5mm~50mmの範囲である。
【0012】
特定の実施形態において、第1の保持工程は0.2分~10分の期間にわたって適用され、かつ/または第2の保持工程は、0.25分~5分の期間にわたって適用される。
【0013】
特定の実施形態において、組成物は、第1および/または第2の保持工程において熱処理を受けない。
【0014】
特定の実施形態において、第1および第2の保持工程は、それぞれ組成物を1つ以上の断熱導管に通すことを含む。
【0015】
特定の実施形態において、食用含有物は、生の、冷凍または乾燥した全果実、生の、冷凍または乾燥した果実片、(全)穀物、(全)種子、ナッツまたはナッツ片、全野菜または野菜片、魚または魚片、および肉または肉片、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の食用含有物である。
【0016】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、1つ以上の食感付与剤(texturing agent)、酸性度調整剤、スパイス、香味剤、着色剤および/または芳香剤をさらに含む。
【0017】
特定の実施形態において、組成物の冷却は、少なくとも5℃/分の冷却速度で行われる。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明を特定の実施形態に関して説明するが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲における参照符号は、いずれもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないと示されていない限り、単数および複数の指示対象の両方を包含する。
【0020】
本明細書で使用される「含んでいる(comprising)」、「含む(comprise)」および「含まれる(comprised)」という用語は、「含んでいる(including)」、「含む(include)」または「含んでいる(containing)」、「含む(contain)」と同義であり、包括的またはオープンエンド(open-ended)であり、追加の、列挙されていない成員、要素または方法工程を排除するものではない。列挙された成員、要素または方法工程に言及する場合の「有している(comprising)」、「有する(comprise)」および「有する(comprised of)」という用語は、列挙された成員、要素または方法工程「からなる(consist of)」実施形態も包含する。
【0021】
さらに、明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、特に明記されない限り、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時間的な順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の順序で運用することができることを理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される「約」という用語は、パラメータ、量、時間的持続時間等の測定可能な値を指す場合、開示される発明を実施するにあたり変動が適切である限りにおいて、指定された値の前後で+/-10%以下、好ましくは+/-5%、より好ましくは+/-1%以下、より一層好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含する。修飾語句「約」が指す値自体も、具体的かつ好ましくは開示されていることを理解されたい。
【0023】
端点による数値範囲の列挙には、それぞれの範囲内に含まれるすべての数および分数(fraction)、ならびに列挙された端点が包含される。
【0024】
本明細書において引用されるすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
特に定義しない限り、技術的および科学的用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。さらなるガイダンスによって、本発明の教示をよりよく理解するために、本明細書で使用される用語の定義が含まれている。本明細書で使用される用語または定義は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。
【0026】
本明細書の全体にわたり「一つの実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる様々な箇所における「一つの実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らず、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者には明らかであろうように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態にはいくつかの特徴が包含され、他の実施形態に包含される他の特徴は包含されないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求される実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用することができる。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、(i)デンプン、および少なくとも20%の個別に識別可能な食用含有物を含む組成物をオーム加熱により60℃~95℃の範囲の温度に加熱すること、(ii)第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して最大で5℃低い温度で組成物を保持する(オーム加熱の非存在下)こと、(iii)オーム加熱による2回目の加熱により組成物を75℃~110℃の範囲の温度とすることであって、組成物の温度は、第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して少なくとも5℃高く、(iv)第2のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して最大で5℃低い温度で組成物を保持する(オーム加熱の非存在下)ことであって、すべての工程が連続的に行われることによって、優れた食感(例えば、均一に食感が付与された、および/または濃厚な)、味および/または色を有する、均一に加熱および/または調理された組成物(例えば、調理されていない部分がない)を比較的短時間で得ることができる。さらに、本明細書に開示される加熱方法によって得られる組成物は、均一なレベルの無菌性および/または製品品質を有する。さらに、本明細書に開示される加熱方法は、食用含有物に対する損傷および/または損失が非常に少ない組成物を得ることができ、他の(従来の)方法を用いて加熱された個別に識別可能な食用含有物を少なくとも20%含む組成物と比較して、より高い含有量の(完全な)食用含有物がもたらされる。より具体的には、本明細書に開示される加熱方法の後、ほとんど(例えば、少なくとも65%)の個別に識別可能な食用含有物が組成物から回収され、および/またはほとんど(例えば、少なくとも65%)の個別に識別可能な食用含有物が加熱プロセス中に無傷で保持される。さらに、本明細書に開示される加熱方法によれば、圧送可能な組成物の制御されない濃厚化(thickening)および/または組織化(texturizing)による加熱装置の導管の閉塞が防止される。したがって、本明細書に開示される加熱方法(すなわち、2段階のオーム加熱工程を含む)によって得られる組成物は、当技術分野において公知の加熱方法、例えば、1段階のみのオーム加熱工程を含む加熱方法によって得られる組成物よりも優れた特性を有する。
【0028】
したがって、第1の態様によれば、個別に識別可能な食用含有物を含む、圧送可能な組成物を加熱する方法であって下記の工程:
a)デンプン、少なくとも20%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物、および任意に糖または糖代替物を含む圧送可能な組成物を提供する工程;
b)連続オーム加熱器内で上記組成物に第1のオーム加熱処理を適用する工程であって、上記組成物が、上記第1のオーム加熱処理の終了時に60℃~95℃の範囲の温度を有する工程;
c)オーム加熱をせずに上記組成物に第1の保持工程を適用する工程であって、上記第1の保持工程の終了時の上記組成物の温度が、上記第1のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
d)連続オーム加熱器内で上記組成物に第2のオーム加熱処理を適用する工程であって、上記組成物が、上記第2のオーム加熱処理の終了時に75℃~110℃の範囲の温度を有し、上記第2のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度が、上記第1のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して少なくとも5℃高い工程;
e)オーム加熱をせずに上記組成物に第2の保持工程を適用する工程であって、上記第2の保持工程の終了時の上記組成物の温度が、上記第2のオーム加熱処理の終了時の上記組成物の温度と比較して最大で5℃低い工程;
f)任意に、4℃~45℃の範囲の温度に上記組成物を冷却する工程;および
g)任意に、上記組成物を梱包する工程
を含み、
上記工程a)~e)、任意に上記工程a)~g)が、好ましくは少なくとも4barの初期背圧による連続プロセスとして行われる、方法。
【0029】
本明細書で使用される「圧送可能」という用語は、ポンプによって及ぼされる圧力によって組成物が流れる、または前方に移動する能力を指す。例えば、組成物は、組成物が移動する導管の屈曲部および/またはテーパーにおいて生成される壁摩擦および/または抵抗を克服する能力を有し得る。
【0030】
本明細書で使用される「個別に識別可能な食用含有物」という語句は、食用含有物が人間の目によって別個の実体として知覚される能力を指す。含有物は、好ましくは、本明細書に開示される加熱プロセスの間および直後の各時点で個別に識別可能であり、および/または60%を超える含有物、好ましくは65%を超える食用含有物が、加熱プロセス後に回収され得る。個別に識別可能な食用含有物は、無傷または食品全体(whole food)、さいの目状の小片、切り身、新鮮な小片(fresh piece)、乾燥した小片(dehydrated piece)または冷凍小片(例えば、個別急速冷凍)であり得る。食用含有物が冷凍小片である場合、本明細書に記載されるように、小片は好ましくは加熱プロセスを開始する前に完全に解凍される。食用含有物は、穀物、種子、ナッツ、野菜、肉、魚および/または果実の小片、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、食品片は、果実全体、またはさいの目状またはスライス状等の果実片である。
【0031】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、20%~90%、20%~88%(w/w)、30%~88%(w/w)、40%~88%(w/w)、50%~88%(w/w)、60%~82%(w/w)、70%~88%(w/w)または80%~88%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物を含み得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、60%~82%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物を含む。例えば、圧送可能な組成物は、70%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物を含み得る。
【0032】
特定の実施形態において、個別に識別可能な食用含有物の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%、好ましくは少なくとも65%を、本明細書に記載される加熱方法の後に回収することができる。食用含有物の回収率は、含有物の初期重量パーセントを掛けた含有物の開始重量(g)に対する食用含有物を含む組成物のふるいおよび/またはすすぎ後の含有物の重量(g)の比として計算することができる。
【0033】
特定の実施形態において、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%、好ましくは少なくとも65%の個別に識別可能な食用含有物が、本明細書に記載される加熱方法によりそれらの完全性を維持する。食用含有物の完全性は、本明細書に記載される加熱方法に供される、食用含有物を含む組成物のふるいおよび/またはすすぎ後の個別に識別可能な食用含有物の重量(g)に対する、本明細書に記載される加熱処理に供される前の完全な個別に識別可能な食用含有物の重量(g)の比として計算することができる。完全性は、本明細書に記載される加熱方法に供される圧送可能な組成物の特定の量を、1~2mmのメッシュのふるいを通して冷水で洗浄し、残りの食用含有物において完全な食用含有物の割合(w/w)を計算することにより決定され得る。
【0034】
特定の実施形態において、最大で30%、最大で25%または最大で20%、好ましくは最大で25%の個別に識別可能な食用含有物が、本明細書に記載される加熱方法で損傷を受ける。
【0035】
食用含有物への損傷は、当業者に公知の任意の方法によって決定することができる。例えば、専門家のパネルは、個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物に含まれるか、またはそこから回収される食用含有物の外観を評価し、目に見える損傷の兆候がある場合には、専門家は損傷した食用含有物を検討する。
【0036】
当業者は、本明細書に記載されるような加熱方法に供された後に、組成物から食品含有物を回収することができ、元の形状(すなわち、本明細書に記載される加熱方法に供される前)の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を有する場合に、食用含有物の完全性が維持されていると考えられ得ることを理解するであろう。例えば、食用含有物が最初に立方体形状を有する場合、本明細書に記載される加熱方法に供した後に組成物から回収される食用含有物の形状が依然として本明細書に記載される立方体形状を有する場合、食用含有物の完全性は維持されているとみなすことができる。
【0037】
特定の実施形態において、食用含有物がサクランボやイチゴ等の果実の全体である場合、果実全体が1つの連続した小片として回収することができる場合、および/または果実の外部の殻または皮が連続的である場合(すなわち、破裂していない、開裂していない)に、食用含有物の完全性は維持されているとみなすことができる。特定の実施形態において、本明細書に開示される加熱処理後の組成物中の食用含有物の重量パーセントは、初期(すなわち、加熱処理前)の組成物における食用含有物の重量パーセントの少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも50%であり得る。上記の割合は、処理の前後に得られる同じ重量の組成物を、1~2mmのメッシュを有するふるいを通して冷水で洗浄し、洗浄された食用含有物を秤量することにより測定され得る。
【0038】
特定の実施形態において、個別に識別可能な食用含有物は、3mm~100mm、5mm~90mm、5mm~80mm、10mm~80mm、15mm~80mm、5mm~70mm、5mm~60mm、5mm~50mmまたは10mm~50mmの平均サイズを有し得る。好ましくは、個別に識別可能な食用含有物は、5mm~80mmの平均サイズを有し得る。より好ましくは、個別に識別可能な食用含有物は、5mm~50mmの平均サイズを有し得る。
【0039】
本明細書で使用される「平均サイズ」という用語は、含有物が球状である場合の平均直径を指し、組成物中に含まれる含有物が非球状である場合は、体積ベースの平均粒子サイズを指す。体積ベースの粒子サイズは、特定の粒子と同じ体積を有する球の直径と同じである。体積ベースの粒子サイズは、非球形粒子の体積ベースの粒子サイズを決定するために当業者に公知のいずれの方法、例えば、式:D=2(3V/4π)1/3[式中、Dは代表的な球の直径であり、Vは粒子の体積である]を用いて決定され得る。
【0040】
特定の実施形態において、個別に識別可能な食用含有物の最大直径は、最大で100mm、最大で90mm、最大で80mm、最大で70mm、最大で60mmまたは最大で50mmであり得る。好ましくは、個別に識別可能な食用含有物の最大直径は、最大で80mmであり得る。より好ましくは、個別に識別可能な食用含有物の最大直径は、最大で50mmであり得る。
【0041】
特定の実施形態において、食用含有物は、生の、冷凍または乾燥した全果実、生の、冷凍または乾燥した果実片、(全)穀物、(全)種子、ナッツまたはナッツ片、全野菜または野菜片、魚または魚片、および肉または肉片、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の食用含有物であり得る。好ましくは、生の、冷凍または乾燥した全果実または果実片である。より好ましくは、上記食用含有物は、イチゴ、ベリー、サクランボ、アプリコット、モモ、マンゴー、レーズン、イチジク、ナツメヤシ、キウイ、パイナップル、パッションフルーツおよびプルーンまたはそれらの小片からなる群から選択される、生の、冷凍または乾燥した全果実または果実片である。
【0042】
特定の実施形態において、食用含有物は、ベリー全体、サクランボ全体、イチゴ全体、アプリコットの半分、リンゴのスライス、桃のスライスまたはマンゴーダイスからなる群から選択される1つ以上の食用含有物であり得る。
【0043】
本明細書で使用される「デンプン」または「加工デンプン」という用語は、食用含有物を含む組成物を調製するための当業者に公知の任意のデンプンまたは1つ以上のデンプンの組み合わせを指し得る。本明細書に開示されるデンプンは、加工デンプンであり得る。デンプン加工の例としては、物理的加工(例えば、ドラム乾燥、押し出し調理、噴霧乾燥、小粒デンプン、アニーリングおよび湿熱処理、高静水圧処理)、酵素的および化学的加工が挙げられる。デンプンの非限定的な例としては、クズウコン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン(すなわち、ワキシーメイズデンプン)、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ、タピオカ、ヒドロキシプロピル-ジスターチホスフェート(E1442)、アセチル化ジスターチアジペート(E1422)および物理的に加工されたデンプンが挙げられる。
【0044】
特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物中のデンプンは、ワキシーメイズデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペートおよび物理的に加工されたデンプンからなる群から選択される1つ以上のデンプンであり得る。
【0045】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、1%~10%(w/w)、2%~8%(w/w)、2%~7%(w/w)または3%~6%(w/w)のデンプンを含み得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、2%~7%(w/w)のデンプンを含む。例えば、圧送可能な組成物は、5%(w/w)のデンプンを含み得る。
【0046】
本明細書で使用される「糖または糖代替物」という語句は、甘味を有する食品グレードの物質を指す。糖または糖代替物は、個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物の調製における使用に好適な任意の糖、糖代替物またはそれらの組み合わせであり得る。糖代替物は人工甘味料であってもよい。糖または糖代替物の非限定的な例は、単糖(例えば、フルクトース、グルコース、デキストロースおよびガラクトース)、二糖(例えば、サトウダイコンまたはサトウキビからのスクロース等のスクロース)、ラクトースおよびマルトース、オリゴ糖(例えば、オリゴフルクトース、マルトデキストリン、ラフィノースおよびスタキオース)、多糖類、アガベ花蜜(agave nectar)、蜂蜜、スクラロース、ステビア葉エキス、アセスルファムカリウム(Ace-K)、アドバンテーム、ネオテーム、スクラロースおよび糖アルコール(例えば、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトール)である。
【0047】
特定の実施形態において、糖または糖代替物は、粉末形態またはシロップとして存在し得る。
【0048】
特定の実施形態において、糖または糖代替物は、スクロース、グルコース、フルクトース、グルコースシロップ、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトールおよびグリセロールからなる群から選択される1つ以上の糖または糖代替物であり得る。
【0049】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、5%~50%(w/w)、10%~40%(w/w)、10%~30%(w/w)または15%~20%(w/w)の糖または糖代替物を含み得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、10%~40%(w/w)の糖または糖代替物を含む。
【0050】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、20%~88%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物;10%~40%(w/w)糖または糖代替物;および/または2%~7%(w/w)のデンプンを含み得る。
【0051】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、60%~82%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物;15%~20%(w/w)の糖または糖代替物;および/または3%~6%(w/w)のデンプンを含み得る。
【0052】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、1つ以上の組織化剤(texturizing agent)(例えば、ペクチン、キサンタンガム、寒天および親水コロイド)、酸性度調整剤(例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびそれらの塩)、スパイス、香味剤、脂肪、油、着色剤および/または芳香剤をさらに含み得る。
【0053】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、0.1%~5%(w/w)の組織化剤、好ましくは0.3%~3%(w/w)の組織化剤を含み得る。
【0054】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、0.1%~2%(w/w)の酸性度調整剤、好ましくは0.5%~1.5%(w/w)の酸性度調整剤を含み得る。
【0055】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、ジャム、ミネストローネ、ソース、スプレッド、バッター、コンポート、またはベーカリー製品の具もしくはトッピング(例えば、パイの具、ケーキの具、ケーキのトッピング)であり得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、ベーカリー製品用の具またはトッピング(例えば、パイの具、ケーキの具、ケーキのトッピング)である。
【0056】
特定の実施形態において、本明細書に開示される加熱方法の工程a)は、圧送可能な組成物を調製することを含み得る。圧送可能な組成物は、まずデンプンを水に分散させ(例えば、圧送可能な組成物中の水に5~10%(w/w))、溶液を45℃~65℃の温度に加熱し;次いで、組成物の他の成分(例えば、食用含有物、糖、組織化剤、酸性度調整剤)をデンプン溶液に添加することにより調製することができる。特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、まずデンプンを一部(例えば、50%)または全部の糖と一緒に水に分散させ、次いで、他の成分をデンプン/糖溶液に添加することによって調製され得る。
【0057】
特定の実施形態において、本明細書に開示される加熱方法の工程a)は、デンプン、少なくとも20%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物、および任意に糖または糖代替物を含む圧送可能な組成物を提供することを含み、圧送可能な組成物の温度は、10℃~50℃、15℃~50℃、20℃~50℃または20℃~40℃であり、好ましくは20℃~50℃である。
【0058】
特定の実施形態において、デンプン、少なくとも20%(w/w)の個別に識別可能な食用含有物、および任意に糖または糖代替物を含む圧送可能な組成物は、本明細書に開示される加熱方法の工程a)で完全に解凍され得る。より具体的には、圧送可能な組成物内の液相および食用含有物の温度は、好ましくは十分にバランスが取れているか、または均一である。
【0059】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、第1のオーム加熱処理の適用前において、20℃で少なくとも0.014S/m、少なくとも0.050S/m、少なくとも0.1S/m、少なくとも0.2S/mまたは少なくとも0.25S/mの導電率を有し得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、第1のオーム加熱処理の適用前において、20℃で少なくとも0.014S/mの伝導率を有する。
【0060】
本明細書で使用される「導電率」という用語は、材料が電流を導くまたは運ぶ能力を指す。電気伝導率は、メートルあたりのジーメンスであるSI単位(S/m)を有する。当業者であれば、金属およびプラズマ等の材料は一般に電気伝導率が高いのに対し、ガラスおよび純水等の電気絶縁体は電気伝導率が低いことを理解するであろう。さらに、当業者であれば、温度が材料の導電率に影響を与えることも理解するであろう。例えば、加熱すると、金属の電気伝導率は低下する。電気伝導率は、個別に識別可能な食用含有物を含む組成物の電気伝導率を測定するための当業者に公知の任意の方法によって決定され得る。例えば、一定量(例えば、500g)の圧送可能な組成物の導電率は、25℃の温度で、一定の距離(例えば、20cm)および50Vの電流で2つのチタン電極を使用して、ポリプロピレン受容(polypropylene recipient)において決定され得る。
【0061】
本明細書に開示されるような圧送可能な組成物の導電率は、圧送可能な組成物全体、すなわち、液相および個別に識別可能な食用含有物としての導電率を指す。当業者であれば、液相および個別に識別可能な食用含有物の導電率が好ましくは同じであることを理解するであろう。
【0062】
本明細書で使用される「オーム加熱器」または「ジュール加熱器」という用語は、圧送可能または流動可能な組成物の電気抵抗を使用して、代替の電流が導電性材料を通過することによるジュール効果によって組成物自体の内部で直接生成される熱を発生させる電気加熱装置を指す。その結果、エネルギーが変換され、温度が上昇する。オーム加熱器は、通常、2つ以上の電極を使用して、圧送可能または流動可能な組成物に電流を供給する。オーム加熱器は、コンテナ容器(container vessel)内の静的システムとして、またはそれを通過する連続流(すなわち、連続またはフロースルーオーム加熱器)として設置することができる。本明細書に開示されるようなオーム加熱処理は、含有物を含む組成物の連続的なオーム加熱のための任意の好適な装置によって行われ得る。フロースルー場合には、オーム加熱器の電極は以下の構成のいずれかに配置することができる:平行平板型、同一直線型、ねじれ棒型(staggered rod)または平行棒型(parallel rod)。オーム加熱器の電極は、そのために好適なステンレス鋼等の電気伝導性材料で作ることができる。当業者であれば、オーム加熱器が1つ以上のオーム加熱ユニットまたは部分(stage)を連続的に含み得ることを理解するであろう。特定の実施形態において、1つ以上のオーム加熱ユニットは、本明細書の他の箇所に記載されるような保持部分等の1つ以上の非加熱ユニットによって相互接続される。本明細書で使用される「オーム加熱ユニット」または「オーム加熱部分」という用語は、互いに平行に配置され、組成物の流れに対して平行または垂直に配置される2つの連続する電極間の加熱部分を指す。好ましくは、オーム加熱ユニットは管状であり、および/または電極はステンレス鋼の環状電極である。
【0063】
本明細書で使用される「オーム加熱処理」という用語は、1つ以上のオーム加熱ユニット(例えば、連続する2つ以上のオーム加熱ユニット)によって生成されるオーム加熱に圧送可能または流動可能な組成物を処理または供する期間を指し、その間、圧送可能または流動可能な組成物は連続的に動いている。このようなオーム加熱処理は、前記圧送可能または流動可能な組成物を1つ以上のオーム加熱ユニットに移し、1つ以上のオーム加熱ユニットを介して組成物を圧送し、同時に前記組成物を通して電流を加えるような工程を含み得る。
【0064】
特定の実施形態において、組成物は、第1のオーム加熱処理の終了時に、60℃~95℃、65℃~85℃または65℃~75℃の温度を有し得る。好ましくは、組成物は、第1のオーム加熱処理の終了時に60℃~85℃の温度を有する。より好ましくは、組成物は、第1のオーム加熱処理の終了時に60℃~75℃の温度を有する。
【0065】
当業者であれば、第1のオーム加熱処理中に、組成物の温度が典型的には徐々に所望の温度まで上昇し、処理の終了時に所望の温度に到達することを理解するであろう。第2のオーム加熱処理においても同様である。
【0066】
特定の実施形態において、組成物は、第2のオーム加熱処理の終了時に、75℃~110℃、80℃~100℃、85℃~100℃または90℃~100℃、好ましくは85℃~100℃の温度を有し得;第2のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度は、第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃または少なくとも10℃、好ましくは少なくとも10℃高い。
【0067】
特定の実施形態において、1つ以上のオーム加熱ユニットの流体通路の内径は、少なくとも30mm、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも60mm、少なくとも70mm、少なくとも80mm、少なくとも90mmまたは少なくとも100mmであり、好ましくは少なくとも50mmである。
【0068】
特定の実施形態において、1つ以上のオーム加熱ユニットの流体通路の内径および保持導管の内径は等しく、かつ/または1:1の比を有する。
【0069】
特定の実施形態において、1つ以上のオーム加熱ユニットの流体通路の内径および保持導管の内径
【0070】
特定の実施形態において、第1のオーム加熱処理は、0.1~5分、0.15~4分、0.15~3分または0.15~2分の期間にわたり行われ得る。好ましくは、第1のオーム加熱処理は0.15~2分の期間にわたり行われる。
【0071】
特定の実施形態において、第2のオーム加熱処理は、0.10~10分、0.15~7.5分、0.20~5分または0.25~5分の期間にわたり行われ得る。好ましくは、第2のオーム加熱処理は0.25~5分の期間にわたり行われる。
【0072】
特定の実施形態において、第1のオーム加熱処理における印加電力は、少なくとも10kW、少なくとも11kW、少なくとも12kW、少なくとも13kW、少なくとも14kW、少なくとも15kW、少なくとも16kW、少なくとも17kW、少なくとも18kW、少なくとも19kWまたは少なくとも20kWである。好ましくは、第1のオーム加熱処理における印加電力は少なくとも15kWである。
【0073】
特定の実施形態において、所望の温度に到達するために、1つ以上のオーム加熱ユニットが必要である。例えば、2つ以上の連続オーム加熱ユニットを連続的に配置することができる。
【0074】
特定の実施形態において、第1のオーム加熱処理は、オーム加熱器の1つのオーム加熱ユニットを使用して行われ、第2のオーム加熱処理は、オーム加熱器の2つのオーム加熱ユニットを使用して行われる。第1のオーム加熱処理に使用されるオーム加熱ユニットは、圧送可能な組成物の連続的な流れを確実にするために、第2のオーム加熱処理の2つのオーム加熱ユニットとは異なる。
【0075】
特定の実施形態において、オーム加熱器の1つ以上の連続オーム加熱ユニットは、それぞれ組成物に電流を与えながら圧送可能な組成物を通過させるための導管を有していてもよく、各加熱ユニットの導管は、少なくとも70cm、少なくとも80cm、少なくとも90cm、少なくとも100cm、少なくとも110cm、少なくとも120cm、少なくとも130cm、好ましくは少なくとも100cmの長さを有する。
【0076】
特定の実施形態において、各加熱ユニットの導管は、実質的にガラスから構成される。
【0077】
本明細書で使用される「保持工程」という用語は、圧送可能な組成物を特定の温度範囲内で、可能な限り特定の温度に近く特定の期間維持し、および/または圧送可能な組成物の冷却を防ぐことを指し;圧送可能な組成物は連続的に動いている。本明細書に開示されるように、保持工程は、通常、オーム加熱処理に続く。本明細書に開示されるように、保持工程中の組成物の温度は、特定の保持工程の直前に組成物に適用されたオーム加熱処理後の組成物の温度と比較して、最大で5℃低くてもよい。
【0078】
特定の実施形態において、組成物は、第1および/または第2の保持工程において熱処理を受けない。
【0079】
特定の実施形態において、第1のオーム加熱工程の後に、オーム加熱がない第1の保持工程が続き、第1の保持工程の終了時の組成物の温度は、第1のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して、最大で5℃、最大で4℃、最大で3℃、最大で2℃、最大で1℃、好ましくは最大で2℃低い。好ましくは、組成物の温度は、定常状態の値に維持される。
【0080】
特定の実施形態において、第1の保持工程は、0.05分~15分、0.10分~12.5分、0.15分~10分または0.2分~10分の期間適用されてもよい。好ましくは、第1の保持工程は0.2分~10分の期間適用される。
【0081】
特定の実施形態において、第2のオーム加熱工程の後に、オーム加熱がない第2の保持工程が続き、第2の保持工程の終了時の組成物の温度は、第2のオーム加熱処理の終了時の組成物の温度と比較して、最大で5℃、最大で4℃、最大で3℃、最大で2℃、最大で1℃、好ましくは最大で2℃低い。好ましくは、組成物の温度は、定常状態の値に維持される。
【0082】
特定の実施形態において、第2の保持工程は、0.05分~15分、0.10分~12.5分、0.15分~10分または0.2分~10分の期間適用されてもよい。好ましくは、第2の保持工程は0.2分~10分の期間適用される。
【0083】
特定の実施形態において、第1の保持工程は、第2の保持工程が適用される期間よりも長い期間適用されてもよい。
【0084】
特定の実施形態において、第1の保持工程は0.2分~1分の期間適用され、第2の保持工程は0.75分~5分の期間適用される。
【0085】
本明細書で使用される「導管」、「チューブ」、「ダクト」または「チャネル」という用語は、圧送可能で流動可能な組成物を運搬することができる密閉された中空の通路を指す。導管の形状の非限定的な例は、長方形、管状、三角形および台形である。
【0086】
特定の実施形態において、断熱導管は管状である。管状形状は、導管を通る圧送可能な組成物の流れを促進することができ、および/または組成物中に含まれる個別に識別可能な食用含有物の損傷を防ぐことができる。
【0087】
特定の実施形態において、断熱導管は、その長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%で直線状である。
【0088】
本明細書で使用される「管状」という用語は、円筒の形状、より具体的には長く丸い中空の形状を指す。
【0089】
本明細書で使用される「断熱された」という用語は、環境への熱の通過、移動および/または漏れを防止および/または低減する材料から実質的(例えば、少なくとも75%(w/w))になる、実質的にそれから構成される、実質的にそれにより被覆されている、および/または実質的にそれにより裏打ちされていることを指す。当業者であれば、特別に設計された方法またはプロセス、ならびに好適な物体の形状および材料を用いて断熱が達成され得ることを理解するであろう。材料の断熱能力は、通常、熱伝導率(k)によって決定される。低い熱伝導率は、通常、高い断熱能力(R値)と同等である。SI単位系において、熱伝導率はワット/メートルケルビン(W・m-1・K-1)で測定され;ワットは電力の単位、メートルは距離の単位、およびケルビンは温度の単位である。
【0090】
本明細書で言及される断熱導管はまた、連続する2つ以上の導管であってもよく、前記2つ以上の導管は、異なる断熱材から実質的(例えば、少なくとも75%(w/w))になる、実質的にそれから構成される、実質的にそれにより被覆されている、および/または実質的にそれにより裏打ちされている。
【0091】
特定の実施形態において、断熱導管は、0.025W/mK~0.075W/mK、0.030W/mK~0.050W/mKまたは0.034W/mK~0.042W/mKの熱伝導率を有する材料を含んでもよく、または実質的(例えば、少なくとも75%(w/w))にそれからなってもよく、または実質的にそれから構成されてもよく、実質的にそれにより被覆されていてもよく、および/または実質的にそれにより裏打ちされていてもよい。好ましくは、断熱導管は、0.034W/mK~0.042W/mKの熱伝導率を有する材料を含む、実質的(例えば、少なくとも75%(w/w))にそれからなる、または実質的にそれから構成される、実質的にそれにより被覆されている、および/または実質的にそれにより裏打ちされている。
【0092】
特定の実施形態において、断熱導管は、1つ以上の合成フォーム(例えば、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノール酸硬質フォーム、ポリ塩化ビニル(PVC)フォーム、または同上(ditto))、ガラス繊維シート、ゴム、停滞空気(stagnant air)、ヘリウムまたはロックウール、好ましくはロックウール)を含んでもよく、または実質的(例えば、少なくとも75%(w/w))にそれからなってもよく、実質的にそれから構成されてもよく、実質的にそれにより被覆されていてもよく、および/または実質的にそれにより裏打ちされていてもよい。
【0093】
特定の実施形態において、第1および/または第2の保持工程は、圧送可能な組成物を、少なくとも30mm、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも60mm、少なくとも70mm、少なくとも80mm、少なくとも90mmまたは少なくとも100mm、好ましくは少なくとも50mmの(内部)直径を有する断熱導管を通過させることを含み得る。例えば、断熱導管は、50mmの(内部)直径を有し得る。当業者であれば、断熱導管の(内部)直径が、好ましくは、個別に識別可能な食用含有物の平均サイズ以上であることを理解するであろう。
【0094】
特定の実施形態において、第1および/または第2の保持工程は、それぞれが少なくとも100cm、少なくとも110cm、少なくとも120cm、少なくとも130cm、少なくとも140cm、少なくとも150cm、少なくとも160cm、少なくとも170cmまたは少なくとも180cm、好ましくは少なくとも150cmの長さを有する1つ以上の断熱導管に組成物を通過させることを含み得る。例えば、断熱導管は、160cmの長さを有し得る。
【0095】
特定の実施形態において、第2の保持工程の1つ以上の断熱導管の長さは、第1の保持工程の1つ以上の断熱導管の長さよりも長い。例えば、第1の保持工程の1つ以上の断熱導管の長さは少なくとも100cmであり得、第2の保持工程の1つ以上の断熱導管の長さは少なくとも300cmであり得る。
【0096】
特定の実施形態において、本明細書に開示される圧送可能な組成物の加熱方法は、第2の保持工程の後、圧送可能な組成物を4℃~45℃の範囲の温度に冷却する工程をさらに含み得る。
【0097】
本明細書で使用される「冷却」という用語は、圧送可能な組成物の温度の低下を指す。例えば、圧送可能な組成物は、熱放射、熱伝導または対流を介して熱エネルギーを伝達することができる。冷却は、個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物を冷却するための当技術分野で公知の任意の方法および/または手段によって行うことができ、好ましくは組成物は能動的な冷却手段によって冷却される。冷却方法の非限定的な例は、空冷、空調、蒸発冷却、ペルチェ冷却(Peltier cooling)、接触冷却、液体冷却および/または冷凍である。例えば、圧送可能な組成物は、管状の熱交換器等の熱交換器を通過させることができる。
【0098】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、少なくとも5℃/分、少なくとも6℃/分、少なくとも7℃/分、少なくとも8℃/分、少なくとも9℃/分または少なくとも10℃/分、好ましくは少なくとも8℃/分の冷却速度で冷却され得る。例えば、圧送可能な組成物は、8.3℃/分の冷却速度で冷却することができる。第2の保持工程後に少なくとも5℃/分の冷却速度で圧送可能な組成物が冷却されると、圧送可能な組成物の色および食感が改善される。
【0099】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、最大で45℃、最大で40℃、最大で35℃、最大で30℃、最大で25℃、最大で20℃、最大で15℃、最大で10℃または最大5℃の温度に冷却され得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、最大で45℃の温度に冷却される。
【0100】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、0℃~50℃、4℃~45℃、4℃~40℃、4℃~35℃、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃または4℃~10℃の温度に冷却され得る。好ましくは、圧送可能な組成物は、4℃~45℃の温度に冷却される。
【0101】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるような個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物の加熱方法は、第2の保持工程の後および任意に冷却工程の後に組成物を梱包する工程を含み得る。
【0102】
本明細書で使用される「梱包(packaging)」という用語は、圧送可能な組成物を保護するため、分割するため、および/または貯蔵するために、圧送可能な組成物を1つ以上の材料で包むまたは収容することを指す。本明細書に記載されるような加熱プロセスに供される圧送可能な組成物のための梱包の非限定的な例は、無菌ポーチ、密閉バケットおよびステンレス鋼容器である。
【0103】
上述したように、本明細書に開示されるような個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物の加熱方法の工程は、一連のプロセスとして行われ、好ましくは連続的に行われる。
【0104】
本明細書で使用される「一連の」という用語は、中断なしに行われる工程(例えば、中断されない延長時間によって特筆されるプロセス)を指す。
【0105】
特定の実施形態において、本明細書に開示される個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物の加熱方法の工程a)~e)、より好ましくは本明細書に開示される個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物の加熱方法の工程a)~g)は、一連かつ連続的なプロセスとして行われる。
【0106】
プロセスの一連性は、第1および第2のオーム加熱工程で使用される1つ以上のオーム加熱ユニットと、第1および第2保持工程で使用される1つ以上の断熱導管とが物理的に相互接続されることによって保証される。
【0107】
したがって、特定の実施形態において、1つ以上の断熱導管および1つ以上のオーム加熱ユニットが物理的に相互接続される。好ましくは、第1および第2のオーム加熱工程で使用される1つ以上のオーム加熱ユニット、ならびに第1および第2の保持工程で使用される1つ以上の断熱導管は、同じ形状および/または直径を有する。好ましくは、第1および第2のオーム加熱工程で使用される1つ以上のオーム加熱ユニット、および第1および第2の保持工程で使用される1つ以上の断熱導管は管状である。
【0108】
さらに、相互接続された1つ以上のオーム加熱ユニットおよび1つ以上の断熱導管を介して連続的に圧送可能な組成物を移動させるために、圧送可能な組成物に圧力を加えることができる。特定の実施形態において、背圧を克服するために圧送可能な組成物に加えられる連続圧力は、少なくとも4bar、少なくとも5bar、少なくとも6bar、少なくとも7bar、少なくとも8bar、少なくとも9barまたは少なくとも10barであり、好ましくは少なくとも4barである。特定の実施形態において、ラインの始点(すなわち、圧力発生器(例えば、ポンプ)の直後で、オーム加熱ユニットおよび断熱導管の前)の動作圧力は、少なくとも4bar、少なくとも5bar、少なくとも6bar、少なくとも7bar、少なくとも8bar、少なくともbarまたは少なくとも10barであり、好ましくは少なくとも4barである。
【0109】
本明細書で使用される「背圧」という用語は、少なくともオーム加熱ユニット、断熱導管、および圧送可能組成物によって与えられる、少なくともオーム加熱ユニットおよび断熱導管を通過する圧送可能な組成物の順流を確立するためにポンプが克服する必要がある圧力を指す。初期背圧は、ラインが空のとき(すなわち、ラインに組成物が供給される前)のラインの最初の圧力である。初期背圧は、通常、ラインの端に位置する(すなわち、オーム加熱ユニットおよび断熱導管に続く)受け側の加圧タンクによって与えられる。特定の実施形態において、ラインの始点(すなわち、圧力発生器(例えば、ポンプ)の直後で、オーム加熱ユニットおよび断熱導管の前)の初期背圧は、少なくとも4bar、少なくとも5bar、少なくとも6bar、少なくとも7bar、少なくとも8bar、少なくとも9barまたは少なくとも10barであり、好ましくは少なくとも4barである。圧送可能な組成物によってラインが満たされると、背圧は徐々に低下する。しかしながら、圧送可能な組成物の粘度は、それに加えられるオーム加熱の結果として増加するので、圧送可能な組成物の流れを維持するためにポンプが克服しなければならない圧力もまた増加する。本明細書で使用される「ライン」という用語は、圧送可能な組成物を連続的に加熱することができる、圧送可能な組成物を連続的に加熱する装置に配置された導管(すなわち、オーム加熱ユニットおよび断熱導管を含む)を指す。
【0110】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるような個別に識別可能な食用含有物を含む圧送可能な組成物を加熱する方法は、無菌環境で行われてもよい。より具体的には、第2のオーム加熱工程のオーム加熱ユニットと、第2の保持工程で使用される断熱導管とを相互接続することにより、圧送可能な組成物の無菌性を維持することができる。
【0111】
特定の実施形態において、本明細書に開示される加熱方法は、工程b)~e)のいずれか、好ましくは工程b)~g)のいずれか、より好ましくは工程a)~g)のいずれかにおける圧送可能な組成物の混合、配合(blend)、混合(mingle)および/または撹拌を含まない。
【0112】
特定の実施形態において、圧送可能な組成物は、本明細書に開示される加熱方法の工程b)~e)のいずれか、好ましくは工程b)~g)のいずれかにおいて、少なくとも200l/h、少なくとも250l/h、少なくとも300l/h、少なくとも350l/h、少なくとも400l/h、少なくとも450l/hまたは少なくとも500l/h、好ましくは少なくとも400l/hの流量を有する。
【0113】
さらなる態様は、本明細書に開示される加熱方法によって得られる圧送可能な組成物に関連し得る。本明細書に開示される加熱方法によって得られる組成物は、4℃または室温(すなわち、周囲温度)で、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも9カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18か月、少なくとも24か月または少なくとも30か月、好ましくは少なくとも18か月間にわたり、保存料の非存在下、好ましくはソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムまたは二酸化硫黄等の非天然保存料の非存在下で安定であり得る。
【0114】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明してきたが、上記の説明に照らして、当業者には多くの代替、修正および変形が明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲において、以下に示すそのような代替、修正および変形のすべてが包含されることが意図されている。
【0115】
本明細書で開示される本発明の態様および実施形態は、以下の非限定的な例によってさらにサポートされる。
【実施例
【0116】
実施例1:サクランボを含む食品の調製
【表1】
【0117】
組成物の調製
-デンプンと冷水およびグルコースシロップとを高剪断下で混合した
-擦った(scraped)加熱ケトルに移し、65℃に加熱した
-糖および着色剤を添加して混合した
-サクランボを添加し、穏やかな交互の撹拌(1分間オン、1分間オフ、かつ時計回りに1分間、反時計回りに1分間)により40℃まで温度を上げた
-緩衝塩および酸を添加した。
組成物の特性:
-糖度=32.5°B
-pH=3.37
-導電率:0.235S/m。
【0118】
本明細書に開示される加熱プロセス
i)第1のオーム工程
組成物を、ステンレス鋼電極を備え、内部直径50mmの2本のガラスチューブで構成されるオーム加熱器パイロットライン(Catelli Food Technology社製)の第1の段階またはユニットを介してポンプ(ピストンポンプ、Bertolli社製)で送った。本プロセスのパラメータは以下の通りであった:
-組成物流:400l/h
-初期背圧:4bar
-目標加熱温度:69℃
-供給電力:16kW
ii)第1の保持工程
3段階/ユニットのオーム加熱器パイロットは、第1および第2のオーム加熱段階/ユニットの間に長さ160cmの絶縁チューブ(直径50mm)を挿入することにより変更された。
第1の保持工程における組成物の滞留時間は約0.5分(0.47分)であった。
断熱管の出口の組成物の温度は67℃であった。
iii)第2のオーム加熱工程
第1の保持工程の後、組成物をオーム加熱器パイロットに戻し、装置の第2および第3のオーム加熱段階/ユニットを通過させた。本プロセスのパラメータは以下の通りであった:
-到達温度:96℃
-組成物流:400l/h
-目標温度:96℃
iv)第2の保持工程
第2のオーム加熱工程の後、組成物を、400cmの長さの断熱管(直径50mm)を通過させた。
低温殺菌値(P0)は1.48分であった。
第2の保持工程における組成物の滞留時間は約1.2分(1.18分)であった。
断熱管の出口での組成物の温度は94℃であった。
v)冷却工程
食品調製物の温度が40℃未満になるまで、食品調製物を8.3℃/分の冷却速度で管状熱交換器を通過させた。
vi)梱包
製品を、2インチの注ぎ口を備える無菌袋詰め機(Cateli Food Technologies社製のLabopack)を介して、約5kgのポーチバッグに梱包した。
サンプルを、評価のためのプロセスを考慮して定期的に取得した。
【0119】
比較加熱プロセス1:従来のバッチ調理
-ケトル中でデンプンと冷水およびブドウ糖シロップとを高剪断下で混合した
-水平ミキサー(蒸気で加熱して擦ったもの)にサクランボを添加し、穏やかに交互に撹拌しながら(1分間オン、1分間オフ、かつ時計回りに1分間、反時計回りに1分間)ゆっくりと加熱を開始した
-デンプン/グルコース混合物を、サクランボを含む水平ミキサーに移した
-糖および着色剤を添加して混合した
-穏やかに交互に撹拌しながら(1分間オン、1分間オフ、かつ時計回りに1分間、反時計回りに1分間)温度を40℃まで上げた
-15分静置した
-緩衝塩および酸を添加した
-表面を擦ったスチームジャケットを使用して、撹拌しながら(20~60rpm)、75~80℃まで加熱した
-表面を擦った冷却ジャケットを使用して、撹拌しながら(20~60rpm)65~70℃まで冷却した
-上記したように製品を梱包した。
食品調製物の特性:
-糖度=32.5°B
-pH=3.37
【0120】
比較加熱プロセス2:1つのオーム加熱工程のみを含む加熱プロセス
サクランボを含む同じ組成物を、第1の保持工程を省略したこと以外は「本発明のプロセス」と同様のプロセスに供した。
【0121】
オーム加熱工程の終了時の目標温度を96℃とした。
【0122】
オーム加熱工程中に制御不能なデンプンの増粘が観察され、チューブ内の食品組成物が沸騰し、不均一な製品が形成された。
【0123】
プロセスの最後に食品調製物を回収することはできなかった。
【0124】
比較加熱プロセス3:初期背圧が異なる加熱プロセス
サクランボを含む同じ組成物を、初期背圧を3barに設定したこと以外は「本発明のプロセス」と同様のプロセスに供した。
【0125】
処理の開始時に、制御不能な食品調製物の沸騰が観察された。完全なプロセスを行うことができなかった。
【0126】
食品調製物を回収することはできなかった。
【0127】
製品評価:果実の回収と果実の完全性
-約0.5kgの果実調製物を秤量した(=開始重量)
-ふるいを秤量した(ふるいの重量)
-果実調製物をふるいに置き、果実を囲むすべてのゲルが洗い流されるまで充填物(filling)をすすいだ
-ふるいの底を乾燥させ、残留物の量を計量した(すすぎ後の小片の重量=(残留物の重量-ふるいの重量))
-果実を2つの群に分けた:完全な果実と損傷した果実とを別々に計量した(完全な果実の重量および損傷した果実の重量)。
【0128】
【数1】
【0129】
完全な果実のパーセンテージおよび損傷した果実のパーセンテージの合計は、調製物の中に果実の破片および残留すすぎ水の一部があるため、100未満になる場合がある。
【0130】
評価結果を表2に示す。
【表2】
【0131】
この結果から、本発明の方法を用いることにより、より多くの果実が回収され、それらが従来の技術を用いるよりも無傷であることが示された。