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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】超音波を使用したユーザ認証制御
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/32 20130101AFI20230217BHJP
   G01S 15/50 20060101ALI20230217BHJP
   G01S 15/08 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G06F21/32
G01S15/50
G01S15/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020537043
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018074956
(87)【国際公開番号】W WO2019053220
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】62/559,214
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20171742
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520089657
【氏名又は名称】エリプティック ラボラトリーズ エーエス
【氏名又は名称原語表記】ELLIPTIC LABORATORIES AS
【住所又は居所原語表記】Akersgata 32, 0180 Oslo, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルセン,ライラ
(72)【発明者】
【氏名】ハスマン,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ストラット,グエナエル トーマス
【審査官】岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501464(JP,A)
【文献】特表2017-508962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286929(US,A1)
【文献】特開2015-121904(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/114806(JP,A1)
【文献】特表2013-536493(JP,A)
【文献】特開2012-094151(JP,A)
【文献】特開2005-071225(JP,A)
【文献】特開2016-197328(JP,A)
【文献】特開2016-051482(JP,A)
【文献】特開2016-162057(JP,A)
【文献】特開2014-086790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0180866(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0373435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/32
G01S 15/50
G01S 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスにより以下のプロセスを実行することによって認証プロセスを開始するための方法であって、
・超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、
・対象物によって反射された前記超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して、測定信号を生成するステップと、
・前記対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算することにより前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値を計算するステップと、
・前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスの前記認証プロセスを開始するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記認証プロセスは、顔認識プロセスである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波信号のストリームを送信し、前記対象物の軌道を計算して、前記電子デバイスに対する前記対象物の動きを推定するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物の予測軌道を計算するステップをさらに含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ユーザが前記電子デバイスを使用する確率に関連する信頼値を計算するステップをさらに含み、
前記信頼値は、1つまたは複数の前記対象物の動きに基づいて生成される、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記信頼値が信頼値しきい値よりも大きい場合、前記認証プロセスが開始される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象物が実施した動作ジェスチャが検出された場合、前記認証プロセスが開始される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電子デバイスにより以下のプロセスを実行することによって対象物の認証済み状態を維持するための方法であって、
・前記対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、前記電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、
・超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して、前記対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、
・超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち前記超音波受信機が受信した超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析し、かつ、前記対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、前記エコーストリームを分析して、前記対象物が前記正当なユーザであることに関連する確率値を計算し、前記確率値が第1の確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスがロック状態になるのを防止するステップと、
を含む、
方法。
【請求項9】
前記確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、前記電子デバイスをロック状態に設定するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記確率値に応じて、前記電子デバイスのプライバシー状態を変更するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、前記プライバシー状態は高プライバシー状態であり、前記高プライバシー状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスの少なくとも一部の機能を実施できない状態である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ロック状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスの少なくとも一部の機能を実施できない状態である、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記ロック状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスのすべての機能を実施できない状態である、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の確率しきい値は、前記第2の確率しきい値に等しい、
請求項に記載の方法。
【請求項15】
電子デバイスであって、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成された超音波システムを備え、
前記超音波システムは、
・超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・前記超音波信号のエコーを受信するように、および前記エコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算することにより前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備え、
前記処理ユニットは、前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するように構成され、
前記処理ユニットは、前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成される、
電子デバイス。
【請求項16】
電子デバイスであって、前記電子デバイスの認証済み状態を維持するように構成された超音波システムを備え、
前記超音波システムは、
・超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・前記超音波信号のエコーを受信するように、および前記エコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算することにより前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備え、
前記処理ユニットは、前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するように構成され、
前記処理ユニットは、前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスを認証済み状態に保持するように構成される、
電子デバイス。
【請求項17】
以下のステップを実行する機能を有するコンピュータで読み取り可能なプログラムであって、
・超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、
・対象物によって反射された前記超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して、測定信号を生成するステップと、
・前記対象物と電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算することにより前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するステップと、
・前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
コンピュータで読み取り可能なプログラム。
【請求項18】
以下のステップを実行する機能を有するコンピュータで読み取り可能なプログラムであって、
・対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、前記電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、
・超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して、前記対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、
・超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち前記超音波受信機が受信した超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析し、かつ、前記対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するステップと、
・前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記対象物が前記正当なユーザであることに関連する確率値を計算するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
コンピュータで読み取り可能なプログラム。
【請求項19】
以下のステップを実行する機能を有するコンピュータで読み取り可能なプログラムを格納した記録媒体であって、
・超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、
・対象物によって反射された前記超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して、測定信号を生成するステップと、
・前記対象物と電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算することにより前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するステップと、
・前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
記録媒体。
【請求項20】
以下のステップを実行する機能を有するコンピュータで読み取り可能なプログラムを格納した記録媒体であって、
・対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、前記電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、
・超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して、前記対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、
・超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち前記超音波受信機が受信した超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析し、かつ、前記対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値と前記対象物の動きを計算するステップと、
・前記距離値と前記対象物の動きに基づいて、ユーザが前記電子デバイスを使用しようとする確率に関連する確率値および前記電子デバイスからの距離を計算するステップと、
・前記確率値が確率しきい値よりも大きい場合、前記対象物が前記正当なユーザであることに関連する確率値を計算するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスのためのユーザ認識に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの正当なユーザを認証するために、指紋検知、虹彩スキャン、パスワードまたはPINコード、音声認識および顔認識、または正当なユーザの他の固有の特徴に基づく認証などの多くの認証技術が存在する。これらの技術を使用するとき、ほとんどの場合、認証プロセスに関連するある程度の遅延が生じる。また、認証プロセスの開始に関連して遅延が生じる場合がある。例えば、モバイルデバイスの指紋スキャンシステムにおいて、ユーザによるモバイルデバイスのホームボタンの押下が、認証プロセスのトリガーとして使用され得る。
【0003】
特に専用のボタンがないような、顔認識に基づく認証システムなどの特定の認証システムにおいて、認証プロセスのトリガーのタイミングを、モバイルデバイスなどの電子デバイスが決定する必要がある。このようなトリガーの例として、リフト・トゥ・ウェイク機能(デバイスを持ち上げることでスリープを解除する機能)やモバイルデバイスのユーザが開始した他のプロセスが挙げられる。あるいは、顔認識システムを定期的に起動させてユーザを検出することもできるが、その間隔が頻繁でなくても、デバイスの電力を多く消費することに繋がる。また、認証プロセスのトリガーは、ユーザエクスペリエンスを損なうほど信頼性が低い場合がある。認証プロセスが開始されているはずなのに、トリガーシステムがプロセスを開始しない場合、認証プロセスは信頼性が低い。このような状況において、ユーザは、デバイスをロック解除するまでに望ましくない遅延を経験する場合がある。電子デバイスのスリープを解除するためのボタンまたは他の機構を有するデバイスでも、特にアクセスを要求しているデバイスのボタンまたはその他の機構をユーザが操作した後に認証に関連するプロセスがロードおよび実行される必要がある場合、認証プロセスが正当なユーザにアクセスを提供するまで遅延が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に固有の少なくともいくつかの問題は、添付の独立請求項に記載の特徴によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、対象物の位置および/または動きを推定するための方法が提供される。一実施形態において、本発明は、電子デバイスで認証プロセスを開始するための方法を提供し得る。該方法は、超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、対象物によって反射された超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して測定信号を生成するステップと、測定信号を処理して、エコーを分析するステップと、測定信号の処理に基づいて、電子デバイスで認証プロセスを開始するステップと、を含む。
【0006】
一実施形態によれば、該方法は、測定信号を処理して、対象物と電子デバイスとの間の距離に関連する距離値を計算するステップを含む。
【0007】
送信機および受信機は、互いに異なる構成要素であってもよく、超音波信号を送信するための送信モードおよび反射超音波信号を受信するための受信モードで使用される同一のトランスデューサであってもよいことに理解されたい。送信機と受信機が異なる構成要素の場合、これらは同じ位置に配置されてもよく、電子デバイス上の異なる位置に設置されてもよい。さらに、電子デバイスは、複数の送信機および/または複数の受信機を備えてもよい。対象物および/または周囲に関連する空間情報を抽出するために、複数の送信機と受信機との組み合わせが使用されてもよい。
【0008】
測定信号の処理は、コンピュータプロセッサなどの処理ユニットが行うことができる。
【0009】
電子デバイスは、ユーザの認証を必要とする携帯型または据え置き型の任意のデバイスであってもよい。したがって、電子デバイスという用語の範囲には、携帯電話、スマートウォッチ、タブレット端末、音声アシスタント、スマートスピーカー、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、および同様のデバイスが含まれる。また、その用語の範囲には、自動販売機、自動車、門、扉、家電製品、および電子認証を必要とするその他の種類の電子アクセスシステムのようなデバイスも含まれる。
【0010】
いくつかの場合において、ユーザの手が対象物とみなされてもよい。代替的に、ユーザが対象物とみなされる場合、手は対象物の一部とみなされてもよい。その他の場合において、超音波送信機/受信機の組み合わせの視野の範囲および/または感度を考慮して、手とユーザの体の残りの部分とが個別の対象物とみなされてもよい。範囲および/または感度は、構成要素の仕様に応じて制限されてもよく、処理要件に応じて特定の値に静的または動的に設定されてもよい。したがって、範囲および/または感度は、異なる大きさを有する対象物の入力への適応、1つまたは複数の受信機が受信した信号の受信信号強度または品質、周囲の騒音の量または様々な信号対雑音比(「SNR」)の条件などのうちの1つまたは複数の状況で調整されてもよい。
【0011】
好ましくは、認証プロセスは、顔認識システムである。ただし、本発明は、音声認識などの他の種類の認証プロセスに適用されてもよい。
【0012】
一実施形態によれば、計算された距離値が距離しきい値よりも小さい場合、認証プロセスが開始される。別の実施形態によれば、該方法は、超音波信号のストリームを送信して且つ対象物からの反射超音波信号のストリームに関連する計算された距離値を組み合わせて対象物の軌道を計算して、電子デバイスに対する対象物の動きを推定するステップを含んでもよい。すなわち、送信超音波信号のストリームまたはシーケンスは、対象物によって反射された超音波信号のストリームまたはシーケンスとなる。ここで、受信機が受信した超音波信号のストリームの反射信号ごとに対応する測定信号が生成されて、測定信号値のストリームが得られる。測定信号のストリームは、対象物の軌道を推定するために使用され得る。推定軌道は、対象物の予測軌道を計算するために使用されてもよい。予測軌道は、推定軌道に基づく対象物の将来の動きの確率論的推定である。一実施形態によれば、認証プロセスの開始は、対象物の推定軌道および/または予測軌道に基づいて行われる。このような場合、該方法は、信頼値を計算するステップを含んでもよい。信頼値は、ユーザが電子デバイスを使用する確率に関連する場合がある。信頼値は、1つまたは複数の動きの特徴に基づいて生成されてもよい。信頼値が信頼値しきい値よりも大きい場合、認証プロセスが開始されてもよい。
【0013】
したがって、認証プロセスは、プリロードされてもよく、実行のために準備されてもよく、または計算された距離値が距離しきい値よりも小さいこと、信頼値が所定の信頼しきい値以上であること、および推定軌道が電子デバイスから所定の距離範囲しきい値で交差すること、のうちの1つまたは複数をトリガーとしてもよい。信頼値、所定の距離範囲しきい値および距離しきい値は、静的な値であってもよく、動的な値であってもよいことに理解されたい。所定の距離範囲は、電子デバイスからの直線距離を含み、電子デバイスの送信機/受信機構成の視野(「FoV」)を表すことに理解されたい。送信機/受信機構成は、近接感知構成と呼ばれる場合がある。したがって、対象物の検出を、認証プロセスをプリロードするためまたはトリガーとするために使用することができる電子デバイスにおいて、FoVは、その周囲の不可視のエンベロープまたは空間を表す。特定の場合において、FoVは、近接感知構成の検出範囲、すなわち近接感知構成が対象物を検出することができる範囲または(空中の)自由空間を表してもよい。したがって、所定の距離範囲は、近接感知構成のFoV以下であり得る。いずれの場合でも、FoVまたは所定の距離範囲は、規則的なエンベロープまたは不規則なエンベロープであり得る。規則的とは、電子デバイスからFoVの境界までの各直線距離または所定の距離範囲が等しい値を有することを意味する。その結果、エンベロープは球体のような形状を有する。不規則とは、電子デバイスからFoVの境界までの直線距離の少なくとも一部または所定の距離範囲が等しくない値を有することを意味する。その結果、FoVまたは所定の距離範囲は、任意の三次元形状を有することができる。
【0014】
本明細書において、エンベロープや形状などの用語は、近接感知構成が対象物を検出することができる領域を表す電子デバイスの周囲の(空中の)自由空間を、読者が視覚化できるように使用されていることに理解されたい。自由空間におけるこのような領域またはエンベロープは、例えば対象物の大きさや検出が実施されている特定の時間における信号対騒音比に応じて、異なる境界または限界を有することができる。さらに、いくつかの場合において、例えば対象物が検出される範囲を限定するために、可能な最大制限値よりも小さくなるように、FoVが意図的に限定されてもよいことに理解されたい。このような態様は、信号処理に関連し、本発明の一般性または範囲を限定するものではない。
【0015】
動きの特徴には、対象物の速度、対象物の方向、および対象物の大きさが含まれる。いくつかの場合において、対象物の様々な部分から様々な反射が受信されてもよい。対象物がユーザである場合、超音波受信機は、ユーザの手やユーザの顔などのユーザの体の様々な部分から反射を受信してもよい。したがって、該方法は、信頼値を計算するため、または以前に計算された信頼値を改善するために、対象物の様々な部分の相対位置および/または動きを測定するステップを含んでもよい。また、該方法は、必要に応じて、対象物の様々な部分の相対的な動きを追跡するステップを含んでもよい。
【0016】
別の実施形態によれば、該方法は、認証プロセスを開始するために、対象物の少なくとも一部が実行した動作ジェスチャを認識するステップを含む。デバイスをスリープ解除および/または認証プロセスを開始するために、所定のジェスチャがユーザによって使用されてもよい。
【0017】
しきい値は、固定値であってもよく、電子デバイスの使用事例に基づいて動的な値であってもよい。本明細書において、使用事例のしきい値のいくつかの非限定的な例を後述する。
【0018】
また、別の実施形態によれば、該方法は、対象物に関連するデータを電子デバイスの別の電子モジュールに送信するステップを含む。対象物関連データには、対象物の位置、距離、速度、推定軌道および予測軌道のうちの1つまたは複数が含まれてもよい。別の電子モジュールは、ハードウェアまたはソフトウェアモジュールであってもよく、アプリケーションプログラミングインタフェース(「API」)およびセンサフュージョンモジュールのうちの1つまたは複数を含んでもよい。例えば、距離、動きの速度、位置およびジェスチャタイプのうちの1つまたは複数に関連するデータが、顔認識アルゴリズムに送信されてもよい。
【0019】
別の実施形態によれば、該方法は、認証プロセスの開始の堅牢性を向上させるために、電子デバイス内の別のセンサまたはモジュールのうちの少なくとも1つからデータを受信するステップを含む。別のセンサまたはモジュールには、加速度センサ、慣性センサ、IRセンサ、または電子デバイス内のセンサフュージョンモジュールに関連する他のセンサまたはモジュールが含まれてもよい。
【0020】
該方法は、電子デバイスの画面に面した対象物からの反射信号またはエコーの測定に基づいて、および電子デバイスの側方に位置する対象物からの反射信号またはエコーの測定に基づいて、認証プロセスを開始するために使用され得ることに理解されたい。したがって、対象物が電子デバイスのいずれかの側面に接近した場合、該方法が認証プロセスの開始を提供することができる。そのため、認証プロセスを開始するためのより広い感度空間が得られる。これにより、電子デバイスをロック解除するための貴重な時間を節約することができる。このようにして、よりスムーズでよりシームレスなユーザエクスペリエンスが得られる。またはより一般的には、該方法は、電子デバイスのFoV内で認証プロセスの開始を提供することができると言える。さらに、近接構成のFoVが電子デバイスの大部分または全体を取り囲むように構成された近接感知構成の場合、いずれかの方向から物体が電子デバイスに接近したときに、認証プロセスが開始されてもよい。これは、例えば受信機を、電子デバイスの周囲の広い領域内でいずれかの方向から反射された受信信号を受信することができるように電子デバイスに配置することで、または電子デバイスの周囲に複数の受信機または送信機を設けることで、達成され得る。音声アシスタントやスマートスピーカーなどのデバイスにおいて、広いFoVが望ましいことに理解されたい。
【0021】
本発明の別の態様によれば、対象物の認証済み状態を維持するための方法が提供され得る。該方法は、対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち超音波受信機が受信した対応する超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析するステップと、エコーストリームを分析して、対象物が正当なユーザであることに関連する確率値を計算するステップと、を含む。該方法は、確率値が第1の確率しきい値よりも大きい場合、電子デバイスがロック状態になるのを防止するステップをさらに含む。確率値は、電子デバイスからの対象物の距離に関連し得る。したがって、対象物またはユーザが電子デバイスから距離値しきい値を超えて移動すると、電子デバイスは、電子デバイスを使用する前にユーザによる認証を要求するロック状態に入るようなされてもよい。さらに別の実施形態によれば、追跡中に複数の対象物または複数のユーザが検出された場合、追跡によって複数の対象物から正当なユーザを識別できるような確実性に基づいて、確率値が低減されてもよい。また、受信したエコーにおいて競合が検出された場合にも、確率値が低減されてもよい。さらに別の実施形態によれば、該方法は、確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、電子デバイスをロック状態に設定するステップをさらに含む。第1の確率しきい値と第2の確率しきい値とは、互いに異なる値であってもよく、同じ値であってもよい。ヒステリシスを得るために、第1および第2の確率しきい値が異なることが望ましい場合があることに理解されたい。したがって、本発明は、モバイルデバイスのためのオンボディ検出を可能にするように構成されてもよい。ここでは、モバイルデバイスは、正当なユーザが自分自身を認証した後にモバイルデバイスの近傍から離れない限り、ロック状態に入る必要がない。このような状況は、例えば、認証済みユーザのポケットの中にモバイルデバイスがある場合などを含む。
【0022】
認証済みユーザという用語は、電子デバイスにアクセスするために正常に認証された(ユーザ認証プロセスを受けた)ユーザを意味する。正当なユーザという用語は、認証された後に電子デバイスにアクセスすることができるユーザを意味する。認証済みユーザおよび正当なユーザという用語は、本明細書において交換可能に使用される場合があるが、そのようなユーザが既に認証されているかどうかに関する内容は、関連する説明から明らかであろう。
【0023】
ロック状態とは、認証されていないユーザが電子デバイスのすべての機能を実行できない状態であってもよく、認証されていないユーザが電子デバイスの機能のサブセットを実行できない状態であってもよい。機能のサブセットには、高プライバシー通知や詳細な通知が含まれてもよい。すなわち、ロック状態は、認証されていないユーザが電子デバイスで低プライバシー機能を実行することができる状態であってもよい。低プライバシー機能または低プライバシー状態に関連する機能には、音量調整、音楽または動画の再生制御、着信拒否、緊急時通話、電子デバイスの電源オフ、および他の重要でない機能のうちの1つまたは複数が含まれてもよい。
【0024】
したがって、本発明によって、電子デバイスがロック解除されている間、電子デバイスを非セキュアまたは低プライバシー状態にすることができる。これにより、セキュアな環境であっても電子デバイスを繰り返しロック解除する必要がなくなり、時間を節約してより迅速なアクセスを提供することで、よりスムーズなユーザエクスペリエンスを提供することができる。電子デバイスは、ロックされている間、高プライバシー状態に切り替わる。したがって、正当なユーザは、電子デバイスの近傍から離れても、個人情報が他人に見られなくなることを信じることができる。
【0025】
特定の実施形態において、正当なユーザが電子デバイスのユーザ範囲距離内にいる間に、第2のユーザ(another user)が電子デバイスの所定のセキュア範囲距離に接近するまたはセキュア範囲距離内に進入すると、電子デバイスは、例えばロック状態のような高プライバシー状態に切り替わる。所定のセキュア範囲距離は、ユーザ範囲距離値に等しくてもよく、ユーザ範囲距離値と異なる距離値であってもよい。例えば、所定のセキュア範囲距離値は、より高いプライバシー設定に対してユーザ範囲距離値よりも大きくてもよく、中程度のプライバシー設定に対してユーザ範囲距離値に等しくてもよく、より低いプライバシー設定に対してユーザ範囲距離値よりも小さくてもよい。
【0026】
プライバシー設定は、正当なユーザによって手動で高、中または低のいずれかに設定されてもよく、または、第2のユーザが、正当なユーザによって電子デバイスのプライバシー権が提供された第2の認証済みユーザ(authenticated another user)として識別されたかどうかに基づいて、自動的に設定されてもよい。特定の場合において、第2の認証済みユーザは、正当なユーザと同等の権利を有してもよい。このような場合、識別され且つ正当なユーザによって同等の権利が提供された第2のユーザに対する所定のセキュア範囲距離値は、ゼロであるか無効にされる。
【0027】
一態様によれば、高プライバシー設定において、第2の認証済みユーザは、認証されていないユーザと同等の権利を有してもよい。
【0028】
プライバシー状態において利用可能または利用不可の機能に関する具体的な内容は、本発明の範囲または一般性を限定するものではないことに留意されたい。当業者であれば、プライバシー状態は、所望のセキュリティまたはプライバシープロファイルに従って設計されてもよいことを理解するであろう。
【0029】
上述した自動プライバシー設定において、少なくとも第2のユーザに対する認証が、電子デバイスから所定のセキュア範囲距離の外側に第2のユーザがいるときに行われることが有利であり得ることを理解されたい。したがって、このような場合、音声認識のような認証スキームが、単独で、または顔認識のような他の種類の認証スキームとの組み合わせで、より適している場合がある。
【0030】
電子デバイスが、同じまたは異なるタイプの機能的に連結された複数の電子デバイスの一部である場合、第2のユーザが複数の電子デバイスのうちの第2の電子デバイスのユーザ範囲距離またはセキュア範囲距離から第1の電子デバイスに向かって移動する際に、第1の電子デバイスのプライバシー設定にアクセスおよび/またはプライバシー設定を制御できるように第2のユーザを検証するために、第2の電子デバイスが実施した第2のユーザの正常な認証が使用されてもよい。したがって、第1のユーザ範囲を有する第1の電子デバイスが認証した第2の認証済みユーザは、第2の電子デバイスによる認証を必要とすることなく、第1のユーザ範囲から第2の電子デバイスに関連する第2のユーザ範囲に移動することができる。第2の認証済みユーザは、第1のユーザ範囲から第2のユーザ範囲への移行中に追跡され得ることに留意されたい。これは、例えば第1のユーザ範囲を少なくとも部分的に第2のユーザ範囲と重ねることで行うことができる。第1のユーザ範囲および第2のユーザ範囲は、第1の電子デバイスおよび第2の電子デバイスをそれぞれ取り囲む自由空間を表し、それらの空間内では、その空間内にいる唯一の認証済みユーザに関連する確率値が第1の確率しきい値よりも大きいことを理解されたい。
【0031】
一部の実施形態において、ロック状態または高プライバシー状態と、ロック解除状態または低プライバシー状態との間の遷移は、異なる確率しきい値を使用して達成される。これにより、電子デバイスを、高プライバシー状態にありながらロック解除することができる。
【0032】
上記のことから、電子デバイスのプライバシー状態は、電子デバイスからの正当なユーザの距離値に応じて変更または切り替えることができると言える。したがって、正当なユーザが電子デバイスからの距離値しきい値を超えて移動した場合、電子デバイスのプライバシー状態が変更される。あるいは、電子デバイスのプライバシー状態は、確率値に応じて変更されるとも言える。すなわち、確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、後続のユーザ(ユーザまたは第2のユーザ)には、電子デバイスを使用する前に認証が要求される。同様に、正当なユーザがユーザ範囲距離内にいる間に第2のユーザが電子デバイスの所定の第2のユーザ距離内に到着したことに応答して、電子デバイスは、そのプライバシー状態を切り替えるように構成される。所定の第2のユーザ距離値は、所定のセキュア範囲距離値であってもよく、ユーザ範囲距離値であってもよい。プライバシー状態は、高プライバシー状態、中プライバシー状態、または低プライバシー状態の中から1つ選択されてもよい。これらの状態は、電子デバイスでユーザ機能を実施するためのユーザ権利の範囲を変化させることに関連する。プライバシー状態は、1よりも大きい任意の数の状態であってもよい。
【0033】
しきい値は、静的であってもよく、動的であってもよい。使用に応じて動的な値を使用することが好ましい場合がある。例えば、オンボディ検出のための所与のパラメータのしきい値は、別モードにおける同じパラメータのしきい値と異なるものであってもよい。例えば、距離しきい値は、1センチメートル未満から数メートルまでの範囲であってもよい。検出の範囲は、構成要素の仕様および消費電力に依存するため、距離値は、本発明の一般性を限定するものと考えるべきではない。
【0034】
エコー信号の処理は、送信超音波信号と対応する測定信号との間の飛行時間(「TOF」(time of flight))測定値に基づいてもよい。また、エコー信号の処理は、測定信号の振幅、または送信信号と測定信号との間の位相差、または送信信号と測定信号との間の周波数差、またはそれらの組み合わせに基づいてもよい。送信超音波信号には、単一の周波数が含まれてもよく、複数の周波数が含まれてもよい。別の実施形態において、送信超音波信号には、チャープ信号が含まれてもよい。
【0035】
好ましくは、該方法ステップは、コンピュータまたはデータプロセッサなどの計算ユニットを使用して実現される。
【0036】
別の態様によれば、本発明は、上述した実施形態または任意の方法ステップを実現する電子デバイスを提供することができる。より詳細には、本発明は、電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成された超音波システムを備える電子デバイスを提供することができる。ここで、超音波システムは、
・ 超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・ 超音波信号のエコーを受信するように、およびエコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・ 測定信号を処理して、エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備える。処理ユニットは、測定信号の処理に基づいて、電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成される。
【0037】
処理ユニットは、DSP、FPGA、またはASICなどの任意のタイプのコンピュータプロセッサであり得る。処理ユニットは、機械学習モジュールをさらに備えてもよい。また、処理ユニットは、人工知能プロセッサを備えてもよい。
【0038】
また、別の態様によれば、本発明は、電子デバイスの認証済み状態を維持するように構成された超音波システムを備える電子デバイスを提供することができる。ここで、超音波システムは、
・ 超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・ 超音波信号のエコーを受信するように、およびエコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・ 測定信号を処理して、エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備える。処理ユニットは、測定信号の処理に基づいて、電子デバイスを認証済み状態に保持するように構成される。
【0039】
また、さらに別の態様によれば、本発明は、本明細書に記載の任意の方法ステップを実現するためのコンピュータソフトウェア製品を提供することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載の任意の方法ステップを実行するための特定の機能を有するコンピュータで読み取り可能なプログラムコードに関する。すなわち、本発明は、電子デバイスが本明細書に記載の任意の方法ステップを実行するように、プロクラムを記憶する非一過性の、コンピュータで読み取り可能な媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下、本発明の実施例を、添付の図面を参照しながら説明する。
図1】電子デバイスの認証プロセスを開始するための方法を示すフローチャートである。
図2】電子デバイスの認証済み状態を維持するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、電子デバイスで認証プロセスを開始するための方法を示すフローチャート100である。開始101されると、最初のステップ102において、超音波送信機が超音波信号を送信する。次のステップ103において、超音波受信機が超音波信号のエコー信号を受信する。対象物が超音波送信機および受信機の視野内に存在する場合、エコー信号は、対象物によって反射された少なくとも1つのエコーを含む。超音波受信機は、受信したエコー信号に対して測定信号を生成する。次のステップ104において、測定信号を処理することで、エコー信号が分析される。処理は、コンピュータプロセッサが実施する。処理の間、プロセッサは、対象物に関連するパラメータを抽出する。パラメータには、距離、位置、速度、方向、動き、または対象物が実施したジェスチャのタイプのうちの1つまたは複数が含まれる。1つまたは複数のパラメータは、所定のしきい値または各評価パラメータに関連する基準に対して評価される。これらは、複数のステップ105として示されている。図において、3つの評価ステップ105a、105bおよび105cを示すが、評価ステップの数は、図示するものよりも多くてもよく、少なくてもよい。さらに、評価ステップは、互いに並行して実施されてもよく、順次実施されてもよい。また、評価ステップは、選択的に実施されてもよく、例えば要件に応じて一部の評価ステップが実施されてもよい。
【0042】
例えば、第1の評価ステップ105aは、測定信号を処理して計算された距離値と、所定の距離しきい値とを比較するステップであり得る。同様に、第2の評価ステップ105bは、速度値と、所定の距離しきい値とを比較するステップであり得る。同様に、第3の評価ステップ105cは、動きのパターンと、認識されたジェスチャの所定のデータベースとを比較するステップであり得る。速度や動きなどのパラメータを抽出するために、複数の超音波信号やエコーが必要になる場合があることを理解されたい。その結果、超音波信号の送信およびエコーの受信は、いずれも単一のパルスとパルスのバーストとを含む。送信超音波信号は、異なるプロファイルを有してもよく、そのすべてが本明細書の記載に関連する。例えば、超音波信号には、チャープ信号が含まれてもよい。さらに、測定信号の処理には、飛行時間測定、位相シフト測定、振幅測定、または周波数シフト測定のうちの1つまたは複数が含まれてもよい。それぞれのしきい値は、静的であってもよく、動的であってもよい。距離値が所定の距離しきい値よりも小さい場合、次のステップ106において、認証プロセスが開始される。距離値が所定の距離しきい値よりも大きい場合、方法ステップ102が繰り返される。すなわち、送信機を介して新しい超音波信号が送信される。新しい超音波信号は、例えば測定信号の処理に応じて、以前送信された信号に類似するものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、処理中に所定の限界を超える周囲騒音が検出された場合、後続の測定において、より良好な信号対雑音比が得られるように、超音波信号が変更されてもよい。認証プロセスを開始する方法ステップ106が実行されるか超音波信号を送信するステップ102が実施されるかは、評価ステップ150a~150cのいずれかで個別にまたはそれらを組み合わせて、認証プロセスを開始するのにより良好な確信を提供する方法によって、決定されてもよい。ステップ102~104またはステップ102~105において行われる一連の測定または測定の流れは、対象物の推定軌道、対象物の予測軌道、複数の対象物の測定/追跡、および複数の対象物または対象物の複数の部分の相対的な動きの測定/追跡のうちの1つまたは複数を計算するために使用されてもよい。
【0043】
図2は、対象物の認証済み状態を維持するための方法を示すフローチャート200である。最初のステップ201において、対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、電子デバイスの認証モジュールから受信する。任意の次のステップ203において、ロック状態が他のモジュールによって開始されたかどうかを確認することができる。例えば、ロック状態が、ユーザ自身によるボタンの押下によって開始されたか、別のセキュリティモジュールによって開始されたかを確認することができる。ロック状態が開始されていない場合、ステップ203において、超音波送信機が超音波信号のストリームを送信する。次のステップ204において、超音波受信機が送信超音波信号のエコーストリームを受信する。受信機の一部としてまたは別個のモジュールとして、プロセッサがエコーストリームを分析する。上述したように、受信機は、エコーストリームに対して測定信号を生成する。これにより、プロセッサは、超音波受信機が受信したエコーストリームに応じて生成された測定信号に対して、1つまたは複数の分析を実施することができる。ステップ206において、測定信号またはエコーストリームの1つまたは複数の分析に基づいて、プロセッサまたは処理ユニットが確率値を計算する。図において、1つまたは複数の分析を、ステップ205a~205cとして示す。確率値は、評価ステップ205a~205cのいずれか1つの結果として、またはそれらの組み合わせの結果として生成されてもよい。図において、3つの評価ステップ205a~205cを示すが、評価ステップの数は3つよりも多くてもよく、3つよりも少なくてもよい。評価ステップは、並行して実施されてもよく、順次実施されてもよく、選択的に実施されてもよい。
【0044】
例えば、第1の評価ステップ205aは、電子デバイスからの対象物の距離を計算するステップであってもよい。第2の評価ステップ205bは、視野内の他の対象物を検出するステップであってもよい。第3の評価ステップ205cは、対象物の動きであってもよい。
【0045】
次のステップ207において、確率値と第1の確率しきい値とが比較される。確率値が第1の確率しきい値よりも大きい場合、対象物が認証済みユーザであるという十分な確信が得られる。このような場合、対象物を追跡して新しい確率値を計算するために、ステップ202以降を繰り返すできる。確率値が第1の確率しきい値よりも小さい場合、任意のステップ209の方法において、確率値と第2の確率しきい値とが比較されてもよい。確率値が第2の確率しきい値よりも大きい場合、対象物が認証済みユーザであるという十分な確信がまだ存在すると仮定することができる。このような場合、対象物を追跡して新しい確率値を計算するために、ステップ202~207を繰り返すことができる。確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、検出された対象物が認証済みユーザであるという十分な確実性または確信が得られないと判断される。この場合、次のステップ210において、電子デバイスがロック状態に設定されて、電子デバイスをロック解除するためにユーザ認証が実施される必要がある。最後のステップ211において、該方法が終了してもよく、上述した認証プロセスを開始するための方法が開始されてもよい。
【0046】
以上、電子デバイスの認証プロセスを制御するための方法および超音波システムを備える電子デバイスの様々な実施形態を説明した。当業者であれば、添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更および修正を行うことができることを理解するであろう。また、本明細書に記載の方法および製品の態様を自由に組み合わせすることができることも理解するであろう。
【0047】
本発明の特定の実施形態を、以下の付記にまとめる。
【0048】
[付記1]
電子デバイスで認証プロセスを開始するための方法であって、
・ 超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、
・ 対象物によって反射された前記超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して、測定信号を生成するステップと、
・ 前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するステップと、
・ 前記測定信号の処理に基づいて、前記電子デバイスで前記認証プロセスを開始するステップと、
を含む、
方法。
【0049】
[付記2]
前記測定信号の処理に基づいて、前記対象物と前記電子デバイスとの間の距離に関連する距離値を計算するステップを含む、
付記1に記載の方法。
【0050】
[付記3]
前記認証プロセスは、顔認識プロセスである、
付記1に記載の方法。
【0051】
[付記4]
前記距離値が距離しきい値よりも小さい場合、前記認証プロセスが開始される、
付記2に記載の方法。
【0052】
[付記5]
前記超音波信号のストリームを送信し、前記対象物の軌道を計算して、前記電子デバイスに対する前記対象物の動きを推定するステップを含む、
付記1に記載の方法。
【0053】
[付記6]
前記対象物の予測軌道を計算するステップをさらに含む、
付記5に記載の方法。
【0054】
[付記7]
ユーザが前記電子デバイスを使用する確率に関連する信頼値を計算するステップをさらに含む、
付記5に記載の方法。
【0055】
[付記8]
前記信頼値が信頼値しきい値よりも大きい場合、前記認証プロセスが開始される、
付記7に記載の方法。
【0056】
[付記9]
前記対象物が実施した動作ジェスチャが検出された場合、前記認証プロセスが開始される、
付記1に記載の方法。
【0057】
[付記10]
対象物の認証済み状態を維持するための方法であって、
・ 前記対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、前記電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、
・ 超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して、前記対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、
・ 超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち前記超音波受信機が受信した超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析するステップと、
・ 前記エコーストリームを分析して、前記対象物が前記正当なユーザであることに関連する確率値を計算するステップと、
を含む、
方法。
【0058】
[付記11]
前記確率値が第1の確率しきい値よりも大きい場合、前記電子デバイスがロック状態になるのを防止するステップを含む、
付記10に記載の方法。
【0059】
[付記12]
前記確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、前記電子デバイスをロック状態に設定するステップを含む、
付記10に記載の方法。
【0060】
[付記13]
前記確率値に応じて、前記電子デバイスのプライバシー状態を変更するステップを含む、
付記10に記載の方法。
【0061】
[付記14]
前記確率値が第2の確率しきい値よりも小さい場合、前記プライバシー状態は高プライバシー状態であり、前記高プライバシー状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスの少なくとも一部の機能を実施できない状態である、
付記13に記載の方法。
【0062】
[付記15]
前記ロック状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスの少なくとも一部の機能を実施できない状態である、
付記11または12に記載の方法。
【0063】
[付記16]
前記ロック状態は、少なくとも認証されていないユーザが前記電子デバイスのすべての機能を実施できない状態である、
付記11または12に記載の方法。
【0064】
[付記17]
前記第1の確率しきい値は、前記第2の確率しきい値に等しい、
付記11および12に記載の方法。
【0065】
[付記18]
付記1~17のいずれか1項に記載のステップを実施するように構成される、
電子デバイス。
【0066】
[付記19]
付記1~17のいずれか1項に記載のステップを実行するための特定の機能を有する、
コンピュータで読み取り可能なプログラムコード。
【0067】
[付記20]
電子デバイスであって、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成された超音波システムを備え、前記超音波システムは、
・ 超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・ 前記超音波信号のエコーを受信するように、および前記エコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・ 前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備え、
前記処理ユニットは、前記測定信号の処理に基づいて、前記電子デバイスの認証プロセスを開始するように構成される、
電子デバイス。
【0068】
[付記21]
電子デバイスであって、前記電子デバイスの認証済み状態を維持するように構成された超音波システムを備え、前記超音波システムは、
・ 超音波信号を送信するように構成された超音波送信機と、
・ 前記超音波信号のエコーを受信するように、および前記エコーに対して測定信号を生成するように構成された超音波受信機と、
・ 前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するように構成された処理ユニットと、
を備え、
前記処理ユニットは、前記測定信号の処理に基づいて、前記電子デバイスを認証済み状態に保持するように構成される、
電子デバイス。
【0069】
[付記22]
コンピュータソフトウェア製品であって、
・ 超音波送信機から超音波信号を送信するステップと、
・ 対象物によって反射された前記超音波信号のエコーを超音波受信機で受信して、測定信号を生成するステップと、
・ 前記測定信号を処理して、前記エコーを分析するステップと、
・ 前記測定信号の処理に基づいて、電子デバイスで認証プロセスを開始するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
コンピュータソフトウェア製品。
【0070】
[付記23]
コンピュータソフトウェア製品であって、
・ 対象物が電子デバイスの正当なユーザであることを確認する確認信号を、前記電子デバイスの認証モジュールから受信するステップと、
・ 超音波送信機が送信した送信超音波信号のストリームを使用して、前記対象物を追跡するための追跡フェーズを開始するステップと、
・ 超音波受信機が受信したエコーストリーム、すなわち前記超音波受信機が受信した前記超音波信号のストリームの反射であるエコーストリームを分析するステップと、
・ 前記エコーストリームを分析して、前記対象物が前記正当なユーザであることに関連する確率値を計算するステップと、
を実行するための特定の機能を有する、
コンピュータソフトウェア製品。
図1
図2