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  • 特許-眼科用粘弾性組成物 図1A
  • 特許-眼科用粘弾性組成物 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】眼科用粘弾性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/18 20170101AFI20230217BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230217BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230217BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230217BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230217BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61K47/18
A61K31/728
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/26
A61P27/02
A61P27/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020546283
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018061526
(87)【国際公開番号】W WO2019103932
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】62/589,866
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008847
【氏名又は名称】ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラード、キンバリー、アン
(72)【発明者】
【氏名】アヤーガリ、マデュ
(72)【発明者】
【氏名】シャ、アーニング
(72)【発明者】
【氏名】ラインデル、ビル
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0036387(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171393(US,A1)
【文献】国際公開第2017/053339(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0167480(US,A1)
【文献】米国特許第05880107(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0100173(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0133905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/18
A61K 31/728
A61K 47/02
A61K 47/04
A61K 47/10
A61K 47/20
A61K 47/22
A61K 47/26
A61P 27/02
A61P 27/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;
(b)リン酸緩衝剤;および
(c)平均分子量100~5,000,000の粘弾性物質
を含み、前記リン酸緩衝剤が、リン酸水素ナトリウム一塩基性、リン酸水素ナトリウム二塩基性、リン酸水素カリウム一塩基性およびリン酸水素カリウム二塩基性のうち1つ以上を含む、粘弾性組成物。
【請求項2】
前記粘弾性組成物の総重量に対して0.001~1wt.%のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたは前記その塩;
前記粘弾性組成物の総重量に対して0.001~2wt.%のリン酸緩衝剤;および
前記粘弾性組成物の総重量に対して0.001~10wt.%の粘弾性物質
を含む、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項3】
前記粘弾性物質が100~1,900,000又は2,000,000~5,000,000の平均分子量を有する、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項4】
前記粘弾性物質が、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムのうち1つ以上を含む、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項5】
抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項6】
ポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバース(reverse)ポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、及びリバース(reverse)ポロキサミンジ(メタ)アクリラートからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項7】
L-カルニチン、エリスリトール、ビタミンE TPGS(トコフェリルポリエチレングリコール・コハク酸)、NaCl、KCl;タウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の粘弾性組成物。
【請求項8】
(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(b)リン酸緩衝剤;および(c)平均分子量が100~1,900,000の粘弾性物質を含む第1の粘弾性組成物であって、
前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼において、前記眼を外科的に切開した後に、前記第1の粘弾性組成物を前記前房に充填すること
を含む、眼科手術を行うための方法に用いられる、第1の粘弾性組成物。
【請求項9】
前記方法が、嚢切開を行い、白内障組織を除去した後、
前記水晶体嚢内への眼内レンズ埋め込み前に、前記水晶体嚢に(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(b)リン酸緩衝剤;および(c)平均分子量2,000,000~5,000,000の粘弾性物質を含む第2の粘弾性組成物を充填するステップ
をさらに含む、請求項8に記載の、第1の粘弾性組成物。
【請求項10】
(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(b)リン酸緩衝剤;および(c)平均分子量が2,000,000~5,000,000の粘弾性物質を含む粘弾性組成物であって、
前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼において、
前記水晶体嚢の眼内レンズの埋め込み前に、前記粘弾性組成物を前記水晶体嚢に充填すること
を含む、眼科手術を行うための方法に用いられる、粘弾性組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般に、眼科用粘弾性組成物、および眼科用粘弾性組成物を使用して眼において眼科手術を実施するための方法に関する。
【0002】
過去10年間、眼科手術の技術の進歩により、眼疾患および変形の外科的処置が代替療法にとって魅力的なものになった。白内障除去は、より一般的な外科的手順の1つである。白内障は、一般的に高齢者に発生する眼の水晶体の混濁である。典型的には、白内障手術は、最初に水晶体嚢から白内障レンズを除去し、次に白内障レンズを合成眼内レンズに置き換えることを含む。現在、この手順は、強膜を通り、患者の眼の前房へと切開することを含む。次に、水晶体嚢へとさらなる切開を行う。超音波水晶体乳化吸引術などの手順によって白内障レンズを水晶体嚢中で破砕し、その後、吸引などの手順によって水晶体嚢から除去する。その後、眼内レンズを水晶体嚢に挿入し、その中に配置する。
【0003】
全体的な手順は、水晶体嚢および前房の周囲の組織に外傷を与える可能性がある。外科的処置の間、患者の眼の生きているあらゆる組織への外傷の量を減少させることは有利である。特に、水晶体嚢中の水晶体内皮細胞は損傷に敏感である。水晶体内皮細胞への損傷は恒久的であることが多い。深刻な損傷は、失明および外科的処置の失敗を引き起こし得る。
【0004】
超音波水晶体乳化吸引術の工程に付随する問題は、フリーラジカルおよび/またはオキシダントの産生である。フリーラジカルおよび/またはオキシダントは不安定であり、組織中の生体分子と幾分無差別に反応する。例えば、超音波水晶体乳化吸引術で産生されるフリーラジカルおよび/またはオキシダントは、タンパク質、細胞壁またはさらに細胞のDNAにさえ損傷を与え得る。したがって、これらのフリーラジカルおよび/または高反応性のイオンによって引き起こされる損傷を減少させることは有利である。
【0005】
一般に、ヒトの眼において眼科手術を行う場合、組織を物理的外傷から保護するために、手術中、眼の前房および水晶体嚢に粘弾性組成物を注入する。粘弾性組成物は、器具と組織との間に物理的障壁またはクッションを提供する。さらに、粘弾性組成物は、前房および水晶体嚢を含め、手術中に腔の形状を維持するのに役立つ。
【0006】
通常、粘弾性組成物は、使用前に、例えば冷蔵庫などの冷涼な環境で保管される。手術を行う際に、粘弾性組成物を最初に冷涼な環境から取り出し、室温に戻す。しかし、粘弾性組成物は、使用されるために必要な規定を満たさなければならない。あるこのような必要とされる規定は組成物のpHである。
【0007】
粘弾性組成物の一例は、米国特許出願公開第2010/036387号明細書に開示されており、これは、ヒアルロン酸および/またはその塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび六価アルコールを含有する。しかし、この組成物の使用に関連する問題は、粘弾性組成物のpHが温度依存性であることである。冷涼な環境で保管する場合、粘弾性組成物は必要なpH規定を満たさない。したがって、粘弾性組成物は、使用するために室温にしなければならない。しかし、これは、眼科手術を行う場合には通常は当てはまらない。
【0008】
したがって、保管中の低温および使用のための室温の両方で必要なpH規定を満たすpHを有する改善された粘弾性組成物を提供することが所望される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、以下を含む粘弾性組成物が提供される:
【0010】
(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;
【0011】
(b)リン酸緩衝剤;および
【0012】
(c)平均分子量が約100~約5,000,000の粘弾性物質。
【0013】
本発明の第2の実施形態によれば、前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼で眼科手術を行うための方法が提供され、本方法は、眼を外科的に切開した後、次のことを含む:
【0014】
(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量約100~約1,900,000の粘弾性物質を含む第1の粘弾性組成物を前房に充填すること。
【0015】
本発明の第3の実施形態によれば、前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼で眼科手術を行うための方法が提供され、本方法は、次のことを含む:
【0016】
水晶体嚢での眼内レンズの埋め込み前に、(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;(iii)平均分子量約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む粘弾性組成物を水晶体嚢に充填すること。
【0017】
本発明の第4の実施形態によれば、前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼で眼科手術を行うための方法が提供され、本方法は、次のことを含む:
【0018】
(a)外科的に眼を切開すること;
【0019】
(b)(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量約100~約1,000,000の粘弾性物質を含む第1の粘弾性組成物を前房に充填すること;
【0020】
(c)嚢切開を行い;白内障組織を全て除去すること;
【0021】
(d)(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;(iii)平均分子量約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む第2の粘弾性組成物を水晶体嚢に充填すること;および
【0022】
(e)水晶体嚢に眼内レンズを埋め込むこと。
【0023】
本発明は、本明細書中に記載の粘弾性組成物のpHが温度に依存しないという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明の粘弾性組成物は、保管温度および眼科手術で使用される温度、すなわち室温の両方で同等のpHを有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、保管温度と周囲温度との間の温度にわたる、トリス緩衝液に対する予測pHを概略的に示す。
図1B図1Bは、保管温度と周囲温度との間の温度にわたる、本発明の粘弾性組成物中で使用されるような二重緩衝液系に対する予測pHを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は粘弾性組成物に関する。一般に、本発明による粘弾性組成物は、(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(b)リン酸緩衝剤;および(c)平均分子量約100~約5,000,000の粘弾性物質を含む。
【0026】
粘弾性組成物の第1の成分は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、(トロメタミンとしても知られ、一般にトリス、トリス緩衝液またはトリス塩基とも呼ばれる。)またはその塩である。好ましい一実施形態において、第1の成分は、塩基形態のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。
【0027】
一実施形態において、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約1重量%の範囲の量で存在する。別の実施形態において、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.05~約1重量%の範囲の量で存在する。
【0028】
適切なリン酸緩衝剤は、粘弾性組成物中で使用するための何らかの既知のリン酸緩衝剤であり得る。一実施形態において、リン酸緩衝剤は、リン酸水素ナトリウム一塩基性(sodium hydrogen phosphate monobasic)、リン酸水素ナトリウム二塩基性(sodium hydrogen phosphate dibasic)、リン酸水素カリウム一塩基性(potassium hydrogen phosphate monobasic)およびリン酸水素カリウム二塩基性(potassium hydrogen phosphate dibasic)のうち1つ以上を含む。
【0029】
一実施形態において、リン酸緩衝剤は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約2重量%の範囲の量で存在する。別の実施形態において、リン酸緩衝剤は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約1~約2重量%の範囲の量で存在する。
【0030】
一般に、本発明による粘弾性組成物での使用に対する適切な粘弾性物質は、約100~約5,000,000の平均分子量を有する粘弾性物質である。粘弾性物質の平均分子量は、クロマトグラフィーサイズ排除を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。典型的には、粘弾性組成物の2つの一般的クラスがある。分散粘弾性組成物は、組織をよく分散させるかまたはコーティングし、組織によく接着する特性を有する。分散粘弾性組成物(「接着性粘弾性組成物」としても知られる。)は一般に、低分子量の粘弾性物質を含有する。粘着性粘弾性組成物は、ヒト組織の腔内の空間を維持する際により良好であり、低またはゼロせん断条件下で腔から漏出する可能性がより低い。一般に、粘着性粘弾性組成物は高分子量の粘弾性物質を含有する。
【0031】
したがって、当業者が容易に理解するように、適切な粘弾性物質は、それが、白内障手順の段階1のための粘弾性組成物(すなわち分散粘弾性組成物)中で使用されるかまたは段階2のための粘弾性組成物(すなわち粘着性粘弾性組成物)中で使用されるかに依存する。したがって、段階1または段階2に対して選択される適切な粘弾性物質は、例えば、それらの分子量、粘度、擬塑性、弾性、剛性、被覆性、粘着性および分子電荷および製品中の物質濃度を含む、各物質または組み合わせの物理学的および化学的特徴に依存する。
【0032】
一実施形態において、段階1の分散粘弾性組成物用の粘弾性物質は、約100~約1,900,000の平均分子量を有する。別の実施形態において、段階1の分散粘弾性組成物用の粘弾性物質は、約500,000~約1,000,000の平均分子量を有する。
【0033】
一実施形態において、段階2の粘着性粘弾性組成物用の粘弾性物質は、約2,000,000~約5,000,000の平均分子量を有する。別の実施形態において、段階2の粘着性粘弾性組成物用の粘弾性物質は、約2,000,000~約3,000,000の分子量を有する。
【0034】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物中で使用するための粘弾性物質は、多糖を含む。一実施形態において、多糖はアニオン性多糖を含む。適切なアニオン性多糖としては、例えば、ヒアルロン酸またはその塩、例えばヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸カリウム、コンドロイチン硫酸、キトサン、アロエベラおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。一実施形態において、多糖は非イオン性多糖を含む。適切な非イオン性多糖としては、例えば、ヘミセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースが挙げられる。
【0035】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物中での使用のための粘弾性物質は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸カリウムを含む。
【0036】
当業者が認識するように、本発明による粘弾性組成物の粘度は、粘弾性物質の量および分子量に依存する。したがって、一実施形態において、粘弾性物質は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約10重量%の範囲の量で存在し得る。一実施形態において、粘弾性物質は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.5~約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0037】
本発明による粘弾性組成物は、必要に応じて1つ以上の追加の添加剤を含有し得る。適切な1つ以上のさらなる添加剤としては、例えば抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物が挙げられる。当業者が認識するように、1つの添加剤が多機能であり得る。例えば、抗酸化剤として機能する添加剤は、浸透圧調節物質としても機能し得る。
【0038】
一実施形態において、抗酸化剤は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約5重量%の範囲の量で存在する。
【0039】
一実施形態において、非イオン性界面活性剤は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
一実施形態において、浸透圧調節物質は、本発明による粘弾性組成物中に、粘弾性組成物の総重量に対して約0.01~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0041】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物は、例えばL-カルニチン、エリスリトール、ビタミンE TPGS(トコフェリルポリエチレングリコール・コハク酸)などの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0042】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物は、例えば1つ以上の末端官能化界面活性剤などの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。適切な末端官能化界面活性剤は、例として、1つ以上の末端官能化ポリエーテルを含む。末端官能化されるべき有用なポリエーテルは、1つ以上の(-O-R-)反復単位を有する1つ以上の鎖またはポリマー成分を含み、式中、Rは2~約6個の炭素原子を有するアルキレンまたはアリーレン基である。ポリエーテルは、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との異なる比率の成分から形成されるブロックコポリマーから誘導され得る。このようなポリエーテルおよびそれらの個々の構成成分セグメントは、異なる付着疎水性および親水性化学官能基部分およびセグメントを含み得る。
【0043】
末端官能化し得る適切なポリエーテルの代表的な例は、ポロキサマーブロックコポリマーである。ポロキサマーブロックコポリマーの1つの特定のクラスは、商標Pluronic(BASF Wyandotte Corp.,Wyandotte,Mich.)で入手可能なものである。ポロキサマーとしては、Pluronicおよびリバース(reverse)Pluronicが挙げられる。Pluronicは、一般的に式VII:
HO(CO)(CO)(CO)H(VII)
(式中、aは独立して少なくとも1であり、bは少なくとも1である。)
で表されるような、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)ブロックから構成される一連のABAブロックコポリマーである。
【0044】
リバース(reverse)Pluronicは、それぞれ一般的に式VIII:
HO(CO)(CO)(CO)H(VIII)
(式中、aは少なくとも1であり、bは独立して少なくとも1である。)で表されるような、ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックから構成される一連のBABブロックコポリマーである。ポリ(エチレンオキシド)、PEO、ブロックは親水性であり、一方でポリ(プロピレンオキシド)、PPO、ブロックは本来疎水性である。各シリーズにおけるポロキサマーは、PEOとPPOとの比率が異なり、それにより最終的に材料の親水性-親油性バランス(HLB)が決定され、すなわちHLB値の変動は、aおよびbの値の変動に基づいており、aは、分子中に存在する親水性ポリ(エチレンオキシド)単位(PEO)の数を表し、bは、分子中に存在する疎水性ポリ(プロピレンオキシド)単位(PPO)の数を表す。
【0045】
ポロキサマーおよびリバース(reverse)ポロキサマーは、末端官能化され得る末端ヒドロキシル基を有する。末端官能化ポロキサマーの例は、以下で論じられるように、米国特許出願公開第2003/0044468号明細書で開示されるようなポロキサマージメタクリラート(例えばPluronic(登録商標)F127ジメタクリラート)である。他の例としては、米国特許第6,517,933号明細書で開示されるようなポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのグリシジル末端コポリマーが挙げられる。
【0046】
末端を官能化し得る適切なポリエーテルの別の例は、ポロキサミンブロックコポリマーである。ポロキサマーおよびリバース(reverse)ポロキサマーは(末端ヒドロキシル基に基づく)二官能性分子とみなされる一方で、ポロキサミンは四官能性の形態であり、すなわちこの分子は、一級ヒドロキシル基が末端にあり、中央のジアミンにより連結される、四官能性ブロックコポリマーである。ポロキサミンブロックコポリマーの1つの特定のクラスは、商標Tetronic(BASF)下で入手可能なものである。ポロキサミンとしては、Tetronicおよびリバース(reverse)Tetronicが挙げられる。ポロキサミンは、式IXの次の一般構造:
【化1】

を有し、式中、aは独立して少なくとも1であり、bは独立して少なくとも1である。
【0047】
ポロキサマーおよび/またはポロキサミンは、分子の末端に所望の反応性を提供するために官能化される。官能性は変動させ得、官能化PEOおよびPPO含有ブロックコポリマーの意図する使用に基づいて決定される。すなわち、意図するデバイス形成(device forming)モノマー混合物と相補的である末端官能基を提供するために、PEOおよびPPO含有ブロックコポリマーを反応させる。本明細書中で使用されるブロックコポリマーという用語は、それらのポリマー主鎖に2個以上のブロックを有するものとしてのポロキサマーおよび/またはポロキサミンを意味すると理解されるべきである。
【0048】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物は、例えばポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバース(reverse)ポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、リバース(reverse)ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、MirjおよびBirjなどの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0049】
一実施形態において、本発明による粘弾性組成物は、例えば、NaCl、KCl;アミノタウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールなどの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0050】
本発明による粘弾性組成物は、浸透圧およびpH、ゼロせん断粘度および1rpmで測定される見かけの粘度を含むが限定されない1つ以上の特性を有する。一実施形態において、粘弾性組成物の浸透圧は、最小で約200mOsmol/Kg、最大で約400mOsmol/Kgである。一実施形態において、本粘弾性組成物の浸透圧は、最小で約220mOsmol/Kgまたは約260mOsmol/Kgまたは約280mOsmol/Kgまたは約300mOsmol/Kgまたは約320mOsmol/Kgであり、最大で約400mOsmol/Kgまたは約380mOsmol/Kgまたは約360mOsmol/Kgまたは約340mOsmol/Kgである。
【0051】
一実施形態において、本粘弾性組成物のpHは、最小で約5、最大で約8である。一実施形態において、本粘弾性組成物のpHは、約6.5~約7.8の範囲であり得る。一実施形態において、本粘弾性組成物のpHは、最小で約5.5または約6または約6.5であり、最大で約7.8または約7.2または約7である。
【0052】
一実施形態において、分散粘弾性組成物の低せん断粘度(25℃でcPせん断速度0.01秒-1)は、約20,000センチポアズ(cP)~約80,000cPの範囲であり得る。一般に、分散粘弾性組成物の低せん断粘度は、最小で約20,000cPまたは約30,000cPまたは約40,000cPであり、最大で約80,000cPまたは約70,000cPまたは約60,000cPであり得る。
【0053】
一実施形態において、分散粘弾性組成物の見かけの粘度(25℃でcPせん断速度1秒-1)は、約15,000センチポアズ(cP)~約75,000cPの範囲であり得る。一般に、分散粘弾性組成物の見かけの粘度は、最小で約15,000cPまたは約25,000cPまたは約35,000cPであり、最大で約75,000cPまたは約65,000cPまたは約55,000cPであり得る。
【0054】
一実施形態において、粘着性粘弾性組成物の低せん断粘度(25℃でcPせん断速度0.01秒-1)は、約75,000センチポアズ(cP)~約475,000cPの範囲であり得る。一般に、粘弾性組成物の低せん断粘度は、最小で約75,000cPまたは約125,000cPまたは約175,000cPであり、最大で約475,000cPまたは約425,000cPまたは約375,000cPであり得る。
【0055】
一実施形態において、本粘弾性組成物の見かけの粘度(25℃でcPsせん断速度1秒-1)は、約10,000センチポアズ(cP)~約90,000cPの範囲であり得る。一般に、粘弾性組成物の見かけの粘度は、最小で約10,000cPまたは約20,000cPまたは約30,000cPであり、最大で約90,000cPまたは約80,000cPまたは約70,000cPであり得る。
【0056】
一実施形態において、前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼で眼科手術を行うための方法が提供され、この方法は、眼を外科的に切開した後、次のことを含む:
【0057】
(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量約100~約1,900,000の粘弾性物質を含む第1の粘弾性組成物を前房に充填すること。
【0058】
第1の粘弾性組成物の量および構成成分は、上記で論じられたものの何れかであり得る。この方法は、以下の段階の1つ以上をさらに含み得る:
【0059】
嚢切開を行うこと;
【0060】
白内障組織を全て除去すること;
【0061】
水晶体嚢に第2の粘弾性組成物を充填すること;および
【0062】
水晶体嚢に眼内レンズを埋め込むこと。
【0063】
第2の粘弾性組成物は、水晶体嚢に充填されることが知られている何れかの粘弾性組成物であり得る。一実施形態において、第2の粘弾性組成物は、(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む。第2の粘弾性組成物の量および構成成分は、上記で議論されたものの何れかであり得る。
【0064】
別の実施形態において、前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼で眼科手術を行うための方法が提供され、この方法は、次のことを含む:
【0065】
水晶体嚢での眼内レンズの埋め込み前に、(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;(iii)平均分子量約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む粘弾性組成物を水晶体嚢に充填すること。本粘弾性組成物の量および構成成分は、上記で議論されたものの何れかであり得る。この方法は、水晶体嚢への充填前に、以下の段階の1つ以上をさらに含み得る:
【0066】
外科的に眼を切開することと;
【0067】
前房に別の粘弾性組成物を充填すること;および
【0068】
嚢切開を行い;白内障組織を全て除去すること。
【0069】
他の粘弾性組成物は、前房に充填されることが知られている何れかの粘弾性組成物であり得る。一実施形態において、他の粘弾性組成物の量および構成成分は、上記で論じられたごときものである。
【0070】
患者の眼から水晶体を除去するための手順の例としては、その全体において参照により全て本明細書中に組み込まれる、米国特許第3,589,363号明細書(白内障手術)、同第3,693,613号明細書(超音波水晶体乳化吸引術)および同第5,718,676号明細書(マイクロフローニードルを使用した工程)が含まれるが限定されない。この工程は一般に、強膜または角膜を通過して眼の前房に入る通路を提供することを含む。この工程は、強膜または角膜に小さな切開を入れることを含む。あるいはまたはさらに、強膜または角膜を通る通路を生成させるためにカニューレまたはトロカールが使用される。一般に、切開または通路は可能な限り小さく、例えば、約5mmまたは約4mmまたは約3mmよりも小さい。その後、眼房水を引き出すか、またはそうでなければ眼の前房から除去する。
【0071】
一実施形態によれば、送達装置を含む、本発明による粘弾性組成物用のパッケージがある。本装置は、粘弾性組成物を患者の眼の前房に送達する。本装置は、本発明による粘弾性組成物を含有するシリンジを含む。シリンジはさらに、出口ポートおよび、場合によっては出口ポートに密封可能に接続するように構成されるカニューレを含む。カニューレの最大内径は約2mmである。通常、最大内径は、約1.8mmまたは約1.5mmまたは約1mmである。一般に、最小内径は、約0.8mmまたは約0.6mmまたは約0.4mmである。
【0072】
一実施形態において、本粘弾性組成物は、0.02mL/秒の送達速度で長さ2.2cmおよび内径0.5mmのステンレス鋼カニューレを通過するのに30Nの最大力を必要とする。一実施形態において、本粘弾性組成物は、0.02mL/秒の送達速度で長さ2.2cmおよび内径0.5mmのステンレス鋼カニューレを通過するのに、約27N、約25N、約20Nまたは約18Nの最大力を必要とする。
【0073】
本粘弾性組成物を前房に挿入したら、角膜レンズを除去する。水晶体を除去するための技術には、嚢切開を行い、超音波水晶体乳化吸引術または他の既知の技術を通じて水晶体をより小さな破片に破壊することが含まれる。その後、例えば吸引により破片を除去する。
【0074】
本粘弾性組成物は、空間維持の目的で水晶体嚢に挿入される。さらに、本粘弾性組成物は、水晶体嚢を被覆し、外科的処置におけるさらなる段階のためにそれを保護する。一実施形態によれば、眼内レンズを水晶体嚢に挿入する。一般的には、眼内レンズを眼の水晶体嚢に挿入する方法がある。この方法は、眼内レンズを受け入れるように構成された装填可能なチャンバー、この装填可能なチャンバーに接続された第1の端部および第2の端部を有するテーパコンジットを含むレンズ挿入装置を提供することを含む。第2の端部は、角膜レンズの通路を貫通して水晶体嚢に入るように構成される。レンズ挿入装置の例は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,558,419号明細書で見られる。レンズ挿入装置は、スライド可能なアクチュエータとともにさらに構成される。一実施形態のスライド可能なアクチュエータは、第2の端部を通過するコンジットを通して眼内レンズを作動させるように構成される。典型的には、テーパコンジットの第2の端部は、最大で約5mmの内径を有する。一実施形態において、テーパコンジットの第2の端部は、最大で約4mm、約3.5mm、約3mmまたは約2.8mmの内径を有する。一実施形態において、カニューレを通して眼内レンズを送達するために、約30Nの最大力が必要である。一実施形態において、カニューレを通して眼内レンズを送達するために、約27N、約25N、約20Nまたは約18Nの最大力が必要である。
【0075】
以下の例は、当業者が本発明を実施可能となるために提供され、本発明の単なる例示である。例は、特許請求の範囲で定義されるとおりの本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
【0076】
例1および2ならびに比較例AおよびB
粘弾性組成物は、表1で列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって作製した。例1および比較例Aは分散粘弾性組成物であり、例2および比較例Bは粘着性粘弾性組成物である。
【表1】

【0077】
表1から分かり得るように、比較例AおよびBの分散および粘着性粘弾性組成物のpHが22℃および4℃の2つの異なる温度でそれぞれ顕著に異なったのに対して、例1および2の分散および粘着性粘弾性組成物のpHはそれぞれ22℃および4℃の両方で一致した。したがって、例1の分散粘弾性組成物および例2の粘着性粘弾性組成物が指示されるように使用されない場合、それらは、室温での使用に必要なpHを有する。したがって、本発明による、および例1および2に例示されるような粘弾性組成物のさらなる利点は、処方者が、保管温度で、または室温での意図される使用の何れでも、pH変動を心配することなく、本発明の範囲内で粘弾性組成物を処方し得ることである。
【0078】
したがって、本発明の粘弾性組成物で使用されるような二重緩衝液系によって、有利なことに、処方者が、保管温度で、または室温での意図される使用時の何れでもpH変動を心配することなく粘弾性組成物を処方できるようになる。これは、保管温度と周囲温度との間の温度範囲にわたり、トリス緩衝液(図1A)対本発明の粘弾性組成物で使用されるような二重緩衝液系(図1B)に対して、市販のソフトBuffer Maker.exeを使用して予測pHを概略的に示す図1Aおよび図1Bでさらに見ることができる。以下の表2で示されるように、トリス緩衝液対二重緩衝液系に対する予測pHは、20mMトリス緩衝液処方物対18.3mMトリス/リン酸緩衝液処方物に基づいた。
【表2】

図1Aで見られるように、トリス緩衝液は0℃~40℃で同等の予測pHを提供不可能であった。しかし、図1Bで示されるように、二重緩衝液系は0℃~40℃で同等の予測pHを提供可能であった。
【0079】
例3
表3で列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表3】
【0080】
例4
表4で列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表4】
【0081】
例5
量/重量で表5において列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表5】
【0082】
例6
量/重量で表6において列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表6】
【0083】
例7
量/重量で表7において列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表7】
【0084】
例8
量/重量で表8において列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表8】
【0085】
例9
量/重量で表9において列挙される個々の量で以下の構成成分を混合することによって粘弾性組成物を作製する。
【表9】
【0086】
本明細書中で開示される実施形態に対して様々な変更をなし得ることが理解されよう。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、上記の、本発明を実施するための最良の方式として実行される機能は、例示のみを目的とする。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者により他の組み合わせ方および方法が実施され得る。さらに、当業者は、本明細書に添付される特徴および利点の範囲および精神内で他の改変を想定する。
なお、下記[1]から[32]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
(a)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;
(b)リン酸緩衝剤;および
(c)平均分子量約100~約5,000,000の粘弾性物質
を含む、粘弾性組成物。
[2]
前記リン酸緩衝剤が、リン酸水素ナトリウム一塩基性、リン酸水素ナトリウム二塩基性、リン酸水素カリウム一塩基性およびリン酸水素カリウム二塩基性のうち1つ以上を含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[3]
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約1重量%のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたは前記その塩;
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約2重量%のリン酸緩衝剤;および
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約10重量%の粘弾性物質
を含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[4]
前記粘弾性物質が約100~約1,900,000の平均分子量を有する、[1]に記載の粘弾性組成物。
[5]
前記粘弾性物質が約2,000,000~約5,000,000の平均分子量を有する、[1]に記載の粘弾性組成物。
[6]
前記粘弾性物質が多糖を含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[7]
前記多糖がアニオン性多糖または非イオン性多糖を含む、[6]に記載の粘弾性組成物。
[8]
前記多糖が、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸、キトサン、アロエベラ、カルボキシメチルセルロース、ヘミセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースのうち1つ以上を含む、[6]に記載の粘弾性組成物。
[9]
前記粘弾性物質が、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムのうち1つ以上を含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[10]
抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[11]
L-カルニチン、エリスリトールおよびビタミンE TPGS(トコフェリルポリエチレングリコール・コハク酸)からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[12]
ポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバースポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、リバースポロキサミンジ(メタ)アクリラート、MirjおよびBirjからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[13]
NaCl、KCl;タウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[1]に記載の粘弾性組成物。
[14]
前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼において眼科手術を行うための方法であって、前記眼を外科的に切開した後に、
(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量が約100~約1,900,000の粘弾性物質を含む第1の粘弾性組成物を前記前房に充填すること
を含む、方法。
[15]
前記第1の粘弾性組成物が、
前記第1の粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約1重量%のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;
前記第1の粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約2重量%のリン酸緩衝剤;および
前記第1の粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約10重量%の粘弾性物質
を含む、[14]に記載の方法。
[16]
前記リン酸緩衝剤が、リン酸水素ナトリウム一塩基性、リン酸水素ナトリウム二塩基性、リン酸水素カリウム一塩基性およびリン酸水素カリウム二塩基性のうち1つ以上を含む、[14]に記載の方法。
[17]
前記粘弾性物質が、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、アロエベラ、カルボキシメチルセルロース、ヘミセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムのうち1つ以上を含む、[14]に記載の方法。
[18]
前記第1の粘弾性組成物が、抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[14]に記載の方法。
[19]
前記第1の粘弾性組成物が、L-カルニチン、エリスリトール、ビタミンE TPGS、ポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバースポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、リバースポロキサミンジ(メタ)アクリラート、Mirj、Birj、NaCl、KCl;タウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[14]に記載の方法。
[20]
嚢切開を行い、白内障組織を除去した後、
前記水晶体嚢内への眼内レンズ埋め込み前に、前記水晶体嚢に第2の粘弾性組成物を充填するステップ
をさらに含む、[14]に記載の方法。
[21]
前記第2の粘弾性組成物が、(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む、[20]に記載の方法。
[22]
前記リン酸緩衝剤が、リン酸水素ナトリウム一塩基性、リン酸水素ナトリウム二塩基性、リン酸水素カリウム一塩基性およびリン酸水素カリウム二塩基性のうち1つ以上を含む、[21]に記載の方法。
[23]
前記第2の粘弾性組成物の粘弾性物質が、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、アロエベラ、カルボキシメチルセルロース、ヘミセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムのうち1つ以上を含む、[21]に記載の方法。
[24]
前記第2の粘弾性組成物が、抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[21]に記載の方法。
[25]
前記第2の粘弾性組成物が、L-カルニチン、エリスリトール、ビタミンE TPGS、ポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバースポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、リバースポロキサミンジ(メタ)アクリラート、Mirj、Birj、NaCl、KCl;タウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[21]に記載の方法。
[26]
前房、後房および後房内に位置する水晶体嚢を有する眼において眼科手術を行うための方法であって、
前記水晶体嚢の眼内レンズの埋め込み前に、(i)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;(ii)リン酸緩衝剤;および(iii)平均分子量が約2,000,000~約5,000,000の粘弾性物質を含む粘弾性組成物を前記水晶体嚢に充填すること
を含む、方法。
[27]
前記粘弾性組成物が、
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約1重量%のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩;
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約2重量%のリン酸緩衝剤;および
前記粘弾性組成物の総重量に対して約0.001~約10重量%の粘弾性物質
を含む、[26]に記載の方法。
[28]
前記リン酸緩衝剤が、リン酸水素ナトリウム一塩基性、リン酸水素ナトリウム二塩基性、リン酸水素カリウム一塩基性およびリン酸水素カリウム二塩基性のうち1つ以上を含む、[26]に記載の方法。
[29]
前記粘弾性物質が、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、アロエベラ、カルボキシメチルセルロース、ヘミセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムのうち1つ以上を含む、[26]に記載の方法。
[30]
前記粘弾性組成物が、抗酸化剤、非イオン性界面活性剤、浸透圧調節物質およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[26]に記載の方法。
[31]
前記粘弾性組成物が、L-カルニチン、エリスリトール、ビタミンE TPGS、ポロキサマージ(メタ)アクリラート、リバースポロキサマージ(メタ)アクリラート、ポロキサミンジ(メタ)アクリラート、リバースポロキサミンジ(メタ)アクリラート、Mirj、Birj、NaCl、KCl;タウリン、グリシン、ジグリシン、アラニン;マンニトール、ソルビトールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[26]に記載の方法。
[32]
粘弾性組成物を前記水晶体嚢に充填するステップの前に、
前記眼を外科的に切開し;
別の粘弾性組成物を前記前房に充填し;
嚢切開を行い、白内障組織を全て除去する
ステップを含む、[26]に記載の方法。
図1A
図1B