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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】南京錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 67/22 20060101AFI20230217BHJP
   E05B 67/24 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
E05B67/22
E05B67/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021538570
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2019030736
(87)【国際公開番号】W WO2021024355
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】514262473
【氏名又は名称】株式会社アッサアブロイジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】東 重企
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4158952(US,A)
【文献】国際公開第2017/103989(WO,A1)
【文献】特開2007-231721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 67/00-67/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部挿入孔の間に錠孔が形成された錠本体と、前記錠本体の脚部挿入孔のそれぞれにスライド自在に挿入される短脚部と長脚部を有するJ字状のシャックルと、前記錠本体の錠孔に組み込まれ、錠本体の下面に露出するキー孔を有し、そのキー孔に挿入される操作キーにより操作される錠シリンダと、前記錠シリンダにより作動され、前記シャックルを施錠状態でロックするロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記シャックルの長脚部に形成された切欠部に対して係脱自在とされたボールと、前記錠シリンダに連結され、前記ボールをシャックルの長脚部の切欠部に係合させてシャックルをロックする状態と、その係合が解除される位置へのボールの移動を許容する状態とを選択的に切り替えるロッキングピースとからなるものであり、
前記ロック機構のボールとシャックルの切欠部との係合が解除されて解錠状態となったときには、前記シャックルの錠本体からの抜け出しが、前記ボールとシャックルの長脚部に形成された抜止部との係合によって阻止されるようになっている南京錠において、
前記錠本体の内部に、錠本体の上面に露出する操作部を有し、その操作部に対する操作により回動されて、前記ボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持する状態と、その係合を生じない位置へのボールの移動を許容する状態とを選択的に切り替えるシャックル抜止ピースが設けられていることを特徴とする南京錠。
【請求項2】
前記ロック機構のロッキングピースが、前記ボールをシャックルの切欠部に係合する位置に保持するボール保持面と、前記ボールがシャックルの抜止部に係合しない位置まで移動することを許容する凹部を有するものであり、
前記シャックル抜止ピースが、前記ボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持するボール保持面と、前記ボールがシャックルの抜止部に係合しない位置まで移動することを許容する凹部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の南京錠。
【請求項3】
前記シャックル抜止ピースを前記錠孔の内周に回動自在に嵌合させ、そのシャックル抜止ピースに設けた径方向穴にピンとそのピンを径方向穴から突出する方向に付勢する弾性部材とを挿入し、前記シャックル抜止ピースがボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持する状態にあるときに、前記ピンの先端部がシャックル抜止ピースの径方向穴から突出して、前記錠孔の内周面に形成された凹部に入り込むようにしたクリック機構が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の南京錠。
【請求項4】
前記錠本体の内部に、前記シャックル抜止ピースと錠本体との間をシールするOリングが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の南京錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠本体に取り付けられたJ字状のシャックルを施錠対象物に引っ掛けて施錠する南京錠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な南京錠は、錠本体の一対の脚部挿入孔にJ字状のシャックルの短脚部と長脚部がそれぞれスライド自在に挿入され、その一対の脚部挿入孔の間の錠孔に錠シリンダが組み込まれており、その錠シリンダのキー孔に操作キーを挿入して錠シリンダを操作することにより、錠本体に内蔵されたロック機構を作動させて、シャックルを施錠状態でロックするようにしている。
【0003】
このような南京錠では、使用中にシャックルが損傷したり、施錠対象物が変わったりしてシャックルの交換が必要となることがある。その場合は、通常、熟練作業者が錠全体を分解した後、新しいシャックルを用いて組み立てることになり、手間とコストがかかる。
【0004】
これに対し、特許文献1で提案されている南京錠では、頭部に六角穴を有するシャックル交換ねじをシャックルの長脚部に径方向でねじ込んで、解錠状態としたときにシャックル交換ねじがシャックルの錠本体からの抜け出しを阻止するようにしておき、シャックルの交換が必要となったときは、解錠状態でシャックルを回転させて、シャックル交換ねじの頭部を錠本体表面から脚部挿入孔に貫通するねじ取出孔に露出させたうえで、六角レンチを用いてシャックル交換ねじをねじ取出孔から取り出し、シャックルを錠本体から抜き取った後、新しいシャックルを逆の手順で組み込むようにしている。この構成によれば、熟練作業者でなくても容易にシャックルの交換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-231721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の南京錠では、シャックル交換時に取り外したシャックル交換ねじを紛失するおそれがあり、その紛失防止に注意を払いながら交換作業を行う必要がある。また、錠本体の側面に開口するねじ取出孔が外観のデザイン性を損なうという難点もある。
【0007】
そこで、本発明は、シャックル交換時に他の部品の取り外しを伴わずに効率よく作業でき、外観のデザイン性も確保できる南京錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、一対の脚部挿入孔の間に錠孔が形成された錠本体と、前記錠本体の脚部挿入孔のそれぞれにスライド自在に挿入される短脚部と長脚部を有するJ字状のシャックルと、前記錠本体の錠孔に組み込まれ、錠本体の下面に露出するキー孔を有し、そのキー孔に挿入される操作キーにより操作される錠シリンダと、前記錠シリンダにより作動され、前記シャックルを施錠状態でロックするロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記シャックルの長脚部に形成された切欠部に対して係脱自在とされたボールと、前記錠シリンダに連結され、前記ボールをシャックルの長脚部の切欠部に係合させてシャックルをロックする状態と、その係合が解除される位置へのボールの移動を許容する状態とを選択的に切り替えるロッキングピースとからなるものであり、前記ロック機構のボールとシャックルの切欠部との係合が解除されて解錠状態となったときには、前記シャックルの錠本体からの抜け出しが、前記ボールとシャックルの長脚部に形成された抜止部との係合によって阻止されるようになっている南京錠において、前記錠本体の内部に、錠本体の上面に露出する操作部を有し、その操作部に対する操作により回動されて、前記ボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持する状態と、その係合を生じない位置へのボールの移動を許容する状態とを選択的に切り替えるシャックル抜止ピースが設けられている構成を採用したのである。
【0009】
上記の構成によれば、通常使用時は、シャックル抜止ピースがボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持する状態として、解錠したときにシャックルが錠本体から抜け出さないようにしておき、シャックル交換時には、解錠状態とするとともにシャックル抜止ピースを回動させるだけで、シャックルを抜き取り可能な状態とすることができる。したがって、シャックル交換作業では、他の部品を取り外す必要がなく、部品を紛失するおそれがないので、効率よく作業を行うことができる。また、シャックル抜止ピースは錠本体の内部に設けられて、その操作部だけが錠本体の上面に露出しており、錠本体の側面にはシャックル交換作業のための孔等を設ける必要がないので、外観のデザイン性も確保できる。
【0010】
ここで、前記ロック機構のロッキングピースとしては、前記ボールをシャックルの切欠部に係合する位置に保持するボール保持面と、前記ボールがシャックルの抜止部に係合しない位置まで移動することを許容する凹部を有するものを採用し、前記シャックル抜止ピースとしては、前記ボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持するボール保持面と、前記ボールがシャックルの抜止部に係合しない位置まで移動することを許容する凹部を有するものを採用することができる。
【0011】
また、上記の構成においては、前記シャックル抜止ピースを前記錠孔の内周に回動自在に嵌合させ、そのシャックル抜止ピースに設けた径方向穴にピンとそのピンを径方向穴から突出する方向に付勢する弾性部材とを挿入し、前記シャックル抜止ピースがボールをシャックルの抜止部に係合する位置に保持する状態にあるときに、前記ピンの先端部がシャックル抜止ピースの径方向穴から突出して、前記錠孔の内周面に形成された凹部に入り込むようにしたクリック機構を設けるとよい。このクリック機構を設ければ、通常使用中にシャックル抜止ピースが振動等によって意図せずに回動することがなく、解錠時のシャックルの抜け出しを確実に防止することができる。一方、シャックル交換時には、工具等を用いてシャックル抜止ピースにある程度の回動方向の力を加えるだけで、クリック機構のピンをシャックル抜止ピースの径方向穴に没入させながらシャックル抜止ピースを回動させて、簡単にシャックルを抜き取り可能な状態とすることができる。
【0012】
また、前記錠本体の内部には、前記シャックル抜止ピースと錠本体との間をシールするOリングを設け、従来のものと同等の防水性、防塵性が確保されるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の南京錠は、上述したように、外部から操作されて、錠本体に対してシャックルを抜け止めする状態とシャックルの抜け出しを許容する状態とを選択的に切り替えるシャックル抜止ピースを設けたものであるから、シャックル交換時には、解錠状態でシャックル抜止ピースを操作するだけでシャックルの抜け出しを許容する状態として、他の部品を取り外すことなく効率よく交換作業を行うことができ、部品を紛失するおそれもない。また、シャックル抜止ピースはその操作部が錠本体の上面に露出するだけで、錠本体の側面の外観を損なわないので、外観のデザイン性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の南京錠の外観斜視図
図2図1の縦断正面図
図3図2の分解斜視図
図4図2の要部を拡大して示す縦断正面図
図5図4のV-V線に沿った断面図
図6】シャックル抜止ピースの上下を逆にした拡大斜視図
図7図2に対応してロック機構のロック解除状態を示す縦断正面図
図8A】シャックル抜止ピースの操作を説明する平面図
図8B】シャックル抜止ピースの操作を説明する平面図
図9図2に対応してシャックル抜き取り状態を示す要部の縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。この南京錠は、図1に示すように、錠本体1と、錠本体1の上面から突出する状態で組み込まれるシャックル2と、錠本体1の下面の大半部を覆うシリンダキャップ3とを備えている。
【0016】
図1乃至図3に示すように、前記錠本体1は、略直方体状に形成され、その上面に設けられたプレート嵌合凹部1aに、2枚の金属板からなる保護プレート4、5が重なる状態で嵌め込まれている。一方、錠本体1の下面側の一端には突出部1bが形成され、この突出部1bを除く部分の下面がシリンダキャップ3に覆われている。
【0017】
また、錠本体1には、一対の脚部挿入孔6、7と錠孔8がそれぞれプレート嵌合凹部1aの底面から下面に貫通する状態で設けられており、その脚部挿入孔6、7のそれぞれにJ字状のシャックル2の短脚部9と長脚部10がスライド自在に挿入されている。
【0018】
錠孔8は、一対の脚部挿入孔6、7の間(錠本体1の中央部)に設けられており、その内側に錠シリンダ11と、その錠シリンダ11により作動されてシャックル2をロックするロック機構12と、錠本体1の上面側から操作されるシャックル抜止ピース13とが組み込まれている。
【0019】
錠シリンダ11は、錠本体1に固定される外筒14と、錠本体1の下面に露出するキー孔15aを有し、外筒14の内側に回動自在に組み込まれる内筒15とからなり、その内筒15のキー孔15aに操作キー(図示省略)を挿入して内筒15を回動させることにより施解錠されるピンタンブラ錠である。なお、ピンタンブラ錠は、従来から周知のものであるため、錠シリンダ11の詳細については図示を省略している。また、錠シリンダ11は、ピンタンブラ錠に限定されず、操作キーの回動によって施解錠されるものであればよい。
【0020】
ロック機構12は、錠シリンダ11の上方に組み込まれるテールピース16、ストッパプレート17およびロッキングピース18と、そのロッキングピース18とシャックル2の短脚部9および長脚部10のそれぞれとの間に組み込まれるボール19とで構成されている。
【0021】
テールピース16は、錠シリンダ11の内筒15の上端部に回り止めされ、内筒15と一体に回転するようになっている。このテールピース16の上部には径方向に延びる断面矩形のキー16aが設けられており、中央に形成された小径円筒部16bには錠孔8との間をシールするOリング20が嵌合されている。
【0022】
ストッパプレート17は、環状に形成され、テールピース16の小径円筒部16bの上面に当接する状態で、外周対向位置に形成された一対の突片17aが錠孔8の内周対向位置に形成された縦溝(凹部)8aに嵌合することにより回り止めされている。そして、このストッパプレート17に回動自在に通されたテールピース16のキー16aが、ストッパプレート17の内周対向位置に形成された突起17bに当接することにより、テールピース16および内筒15の回動角が90度に規制されるようになっている。
【0023】
ロッキングピース18は、ストッパプレート17の上面に当接する下端面に径方向に延びるキー溝18aが形成されており、このキー溝18aとテールピース16のキー16aとの嵌合によってテールピース16と一体に回転するようになっている。
【0024】
また、ロッキングピース18の外周には、上端側の部分円筒面とその下端に連続する傾斜面によって形成されるボール保持面18bと、径方向で対向する一対の軸方向溝(凹部)18cが設けられている。そのボール保持面18bは、後述するようにシャックル2と係合する位置(以下、「係合位置」と称する。)に配置された各ボール19と対向する状態において、ボール19のシャックル2との係合が解除される方向(内方向)への移動を阻止してボール19を係合位置に保持する。一方、各軸方向溝18cは、ボール19の一部を収容可能な深さとされ、係合位置にあるボール19の内方向への移動を許容する。
【0025】
ボール19は、錠孔8と各脚部挿入孔6、7とを連通する一対のポケット21、22のそれぞれに収容されて、シャックル2の短脚部9と長脚部10の互いの対向位置に形成された切欠部9a、10aに対して係脱自在とされている。これらの切欠部9a、10aにボール19の一部が嵌まり込む位置が、前述のボール19の係合位置である。
【0026】
ここで、シャックル2の長脚部10は、その切欠部10aから下端側へ向かって盗み部10bが形成され、その盗み部10bの下端に連続する位置に、全周にわたって切欠き状の抜止部10cが形成されている。そして、後述するように解錠時にシャックル2を引き上げても、その抜止部10cがボール19に係合することによって、長脚部10が抜け止めされるようになっている。なお、その抜止部10cがボール19に係合するときには、短脚部9が脚部挿入孔6から抜け出る状態となる。
【0027】
前記シャックル抜止ピース13は、図2乃至図5に示すように、略円盤状に形成され、ロッキングピース18の上面に載置される状態で、錠孔8の内周に回動自在に嵌合しており、錠孔8の上部に取り付けられた止め輪23によって抜け止めされている。
【0028】
このシャックル抜止ピース13の下面側には、図4および図6に示すように、部分円錐面からなるボール保持面13aと2つの凹部13b、13cが設けられている。そのボール保持面13aは、一端側のボール19がシャックル2の抜止部10cに係合する位置(以下、「抜止位置」と称する。)からその係合が解除される方向(内方向)へ移動することを阻止して、ボール19を抜止位置に保持するものである(図7参照)。また、各凹部13b、13cはボール19の一部を収容可能な深さとされており、そのうちの一方の凹部13bは、他端側のボール19がシャックル2の短脚部9の切欠部9aに係合しない位置まで移動することを許容するものであり、他方の凹部13cは、一端側のボール19がシャックル2の抜止部10cに係合しない位置まで移動することを許容するものである(図9参照)。すなわち、シャックル抜止ピース13の回動位置によって、解錠時にシャックル2が抜け止めされる状態とシャックル2が抜き取り可能な状態とが切り替わるようになっている。
【0029】
そして、この実施形態では、図2乃至図5に示すように、シャックル抜止ピース13がシャックル2を抜け止めする状態を保持するクリック機構24を設けて、通常使用中にシャックル抜止ピース13が振動等で意図せずに回動することがないようにしている。
【0030】
前記クリック機構24は、シャックル抜止ピース13にそのボール保持面13aおよび各凹部13b、13cと干渉しない部位を貫通する径方向穴13dを設け、その径方向穴13dに一対のピン25と、その一対のピン25を互いに離反する方向(径方向穴13dから突出させる方向)に付勢する弾性部材としてのコイルスプリング26を挿入し、シャックル抜止ピース13のボール保持面13aが一端側のボール19と対向する位置にあるときに、各ピン25の半球状の先端部がシャックル抜止ピース13の径方向穴13dから突出して、それぞれ錠孔8の内周面の縦溝8aに入り込むようにしたものである。
【0031】
そして、このシャックル抜止ピース13は、錠本体1の上側の保護プレート4から露出する小径円筒状の操作部13eを有しており、その操作部13eの上面に形成された操作溝13fにドライバー等の工具(図7参照)の平板状の先端部を挿入して回動操作できるようになっている。なお、その操作溝13fは径方向に延びて矢印状に形成されており、この操作溝13fと上側の保護プレート4の上面に記されたマーク(図1および図8A図8B参照)との位置関係により、シャックル抜止ピース13の回動位置を容易に判別できるようになっている。
【0032】
ここで、上側の保護プレート4の中央部には、シャックル抜止ピース13の操作部13eを露出させるために、その操作部13eとほぼ同径の孔4aが設けられ、下側の保護プレート5の中央部には操作部13eよりも大径の孔5aが設けられている。そして、下側の保護プレート5の孔5aの内側に、シャックル抜止ピース13と錠本体1の上面をなす上側の保護プレート4との間をシールするOリング27が設けられ、シャックル抜止ピースのない従来のものと同等の防水性、防塵性が確保されている。
【0033】
また、図2および図3に示すように、各保護プレート4、5の一端部にはシャックル2の長脚部10が挿入される孔4b、5bが設けられており、上側の保護プレート4の他端部にはシャックル2の短脚部9が挿入される筒部4cが設けられている。その筒部4cは下側の保持プレート5の他端部に形成された孔5cから脚部挿入孔6に嵌合されており、他端側のボール19を組み込むためのボール孔4dが形成されている。
【0034】
他端側の脚部挿入孔6には、シャックル2の短脚部9と干渉しない下側部分に、シリンダキャップ3の他端部の上面に固定されたスライドピン28が挿入されている。スライドピン28は、その上端面にねじ込まれたビス29の頭部と脚部挿入孔6の下端の小径孔部6aの段差面との間に組み込まれたコイルスプリング30により、シリンダキャップ3とともに上向きに付勢されている。
【0035】
シリンダキャップ3は、錠本体1の下面の突出部1bを除く部分とほぼ同一の平面形状に形成され、スライドピン28を中心にして回転自在とされている。また、このシリンダキャップ3の上面に形成された凹部3aには、錠本体1の下面に密着し、錠シリンダ11の内筒15のキー孔15aを密閉するキャップシール31が固着されている。そのキャップシール31はゴム等の弾性体で形成されている。
【0036】
次に、この南京錠を用いて施錠対象物に施錠する際の動作について以下に説明する。この南京錠を使用していないときは、通常、図1図2図4および図5に示した状態とされている。すなわち、シャックル2の短脚部9および長脚部10の切欠部9a、10aにボール19が係合し、その係合位置でボール19がロッキングピース18のボール保持面13aに保持されて、シャックル2がロックされた状態となっている。このとき、シャックル抜止ピース13は、ボール保持面13aが一端側のボール19に、一方の凹部13bが他端側のボール19にそれぞれ径方向の隙間をもって対向しており、クリック機構24の各ピン25の先端部が錠孔8の縦溝8aに入り込んでいる。また、シリンダキャップ3は、コイルスプリング29の弾力により錠本体1の下面の突出部1bを除く部分に押し付けられて、錠シリンダ11のキー孔15aを遮蔽している。
【0037】
この状態から施錠対象物に施錠する際には、まず、図2に二点鎖線で示すように、シリンダキャップ3をスライドピン28と一体にコイルスプリング29の弾力に抗して引き下げる。そして、図7に示すように、シリンダキャップ3をスライドピン28のまわりに回動させて、錠シリンダ11のキー孔15aを露出させ、そのキー孔15aに操作キーを挿入して回動操作することにより、錠シリンダ11の内筒15とロック機構12のテールピース16およびロッキングピース18を一体に90度回動させる。
【0038】
すると、ロッキングピース18の各軸方向溝18cがボール19と対向して、各ボール19の内方向への移動を許容するようになる。そして、このときにはシャックル抜止ピース13も各ボール19の内方向への移動を許容する状態にあるので、シャックル2を引き上げることにより、各ボール19がシャックル2の切欠部9a、10aから抜け出してロッキングピース18の軸方向溝18cへ一部入り込むとともに、シャックル2の短脚部9が脚部挿入孔6から抜け出し、シャックル2を施錠対象物に掛け外しできる解錠状態となる。
【0039】
この解錠状態では、シャックル2の長脚部10は、その抜止部10cがシャックル抜止ピース13のボール保持面13aに保持されたボール19に係合することによって抜け止めされる。したがって、シャックル2全体が錠本体1から抜け出すおそれはなく、安心して施錠対象物への掛け外しを行うことができる。
【0040】
そして、シャックル2を施錠対象物に掛けた後は、その短脚部9と長脚部10を脚部挿入孔6、7内の解錠前の位置まで押し込んで操作キーを復帰回動させる。すると、ロッキングピース18が回動して、その軸方向溝18cの開口部のエッジで押し出されたボール19がシャックル2の各切欠部9a、10aに係合した後、ロッキングピース18のボール保持面13aがボール19と対向して、ボール19を係合位置に保持するようになる。これにより、シャックル2がロック状態とされて施錠対象物は施錠される。
【0041】
その後、シリンダキャップ3を引き下げて錠本体1の下面を覆う位置まで回動させ、錠シリンダ11のキー孔15aを遮蔽する状態に戻しておく。
【0042】
一方、この南京錠のシャックル2を交換する際は、まず、通常使用中と同じくシャックル2のロックを解除して図7に示した解錠状態とする。このときは、シャックル抜止ピース13のボール保持面13aが、一端側のボール19をシャックル2の抜止部10cに係合する抜止位置に保持している。また、図8Aに示すように、クリック機構24の各ピン25の先端部が錠孔8の縦溝8aに入り込んでおり、シャックル抜止ピース13の操作部13eの矢印状の操作溝13fは、上側の保護プレート4の上面に記されたIIのマークを指し示している。
【0043】
そして、上記の解錠状態から、図7に二点鎖線で示すように、シャックル抜止ピース13の操作部13eの操作溝13fに工具Tの先端部を挿入し、この工具Tを回動操作することにより、図8Bに示すように、クリック機構24のピン25をコイルスプリング26の弾力に抗してシャックル抜止ピース13の径方向穴13dに没入させながら、操作溝13fが上側の保護プレート4のIのマークを指し示す位置までシャックル抜止ピース13を回動させる。
【0044】
すると、図9に示すように、シャックル抜止ピース13は、一方の凹部13bが回動操作前と異なる位置で他端側のボール19に対向するとともに、他方の凹部13cが一端側のボール19に対向してそのボール19の内方向への移動を許容するようになる。したがって、この状態でシャックル2を引くことにより、一端側のボール19が抜止位置から内方へ移動し、シャックル2の抜止部10cがそのボール19の側方を通過して、シャックル2全体を錠本体1から抜き取ることができる。シャックル2を抜き取った後は、新しいシャックルを組み込んで、シャックル抜止ピース13を復帰回動させておく。
【0045】
この南京錠は、上述したように、解錠状態でシャックル抜止ピース13を外部から操作して回動させるだけで、シャックル2が抜き取り可能な状態となるので、シャックル交換時には、他の部品を取り外す必要のある従来のものよりも効率よく交換作業を行うことができ、部品を紛失するおそれもない。しかも、シャックル抜止ピース13は、その操作部13eが錠本体1の上面に露出するだけで、錠本体1の側面の外観を損なわないので、南京錠全体の外観のデザイン性も確保できる。
【0046】
また、シャックル抜止ピース13はロッキングピース18の上面に載置される状態で組み込まれているので、従来製品のロッキングピースを上下2分割して、その上側部分を変形させたものとすることができる。このようにすれば、従来製品からの仕様変更の際に、ほとんどの在庫部品をそのまま使用できるので、在庫部品の破棄による損失を極めて少なく抑えることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 錠本体
2 シャックル
3 シリンダキャップ
4、5 保護プレート
6、7 脚部挿入孔
8 錠孔
8a 縦溝(凹部)
9 短脚部
9a 切欠部
10 長脚部
10a 切欠部
10c 抜止部
11 錠シリンダ
12 ロック機構
13 シャックル抜止ピース
13a ボール保持面
13b、13c 凹部
13d 径方向穴
13e 操作部
13f 操作溝
15a キー孔
18 ロッキングピース
18b ボール保持面
18c 軸方向溝(凹部)
19 ボール
24 クリック機構
25 ピン
26 コイルスプリング(弾性部材)
27 Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9