(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】軌間可変車輪セット用の潤滑構造及び軌間可変車輪セット
(51)【国際特許分類】
B61F 17/30 20060101AFI20230217BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20230217BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20230217BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20230217BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20230217BHJP
B61F 7/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B61F17/30
F16C33/66 Z
F16C35/077
F16C35/073
F16J15/06 L
B61F7/00
(21)【出願番号】P 2021546036
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2019110241
(87)【国際公開番号】W WO2020140527
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】201910002745.4
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516183897
【氏名又は名称】中▲車▼青▲島▼四方▲機車車▼輌股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC QINGDAO SIFANG CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.88 Jinhongdong Road, Chengyang District, Qingdao, Shandong, 266111, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュ
(72)【発明者】
【氏名】チィァォ,チンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,フォン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,チャンロン
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108407839(CN,A)
【文献】仏国特許発明第02073946(FR,A5)
【文献】特開平06-092230(JP,A)
【文献】特開2003-327121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 7/00,17/30
F16C 33/66,35/073,
35/077
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪、車軸、及びスライド機構を備え、
前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構はそれぞれ、前記車輪の軸方向外側に接続されると共に、前記車軸の両端の軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によってロック解除及びロックを実現され、
前記車輪の軸方向内側と前記車軸との間にシール構造が設けられ、前記車輪の軸方向内側と前記車軸及び前記シール構造との間に第1のキャビティが形成され、前記車輪の軸方向外側と前記スライド機構との間に第2のキャビティが形成され、前記スライド機構と前記軸箱体との間に第3のキャビティが形成され、
前記車輪には、前記車輪と車軸との接続箇所に通じる第1の注油孔が設けられ、前記第1の注油孔にグリースを注入することで前記車輪と前記車軸との接続箇所を潤滑し、グリースを前記第1のキャビティに貯蔵し、前記軸箱体には、前記スライド機構に通じる第2の注油孔が設けられ、前記第2の注油孔にグリースを注入することで前記スライド機構と前記軸箱体との間を潤滑し、グリースを前記第3のキャビティに貯蔵し、前記スライド機構と前記車軸との嵌合箇所にグリースが塗布され、前記スライド機構と前記車軸との間を潤滑し、グリースを前記第2のキャビティに貯蔵
し、
前記スライド機構は、内側スリーブを備え、前記内側スリーブは、前記車軸に隙間嵌めされ、前記内側スリーブは、前記車輪の一端に向かって前記軸箱体から延出し且つ前記車輪と締結接続され、前記内側スリーブの延伸端と前記車軸との間に軌間変更空間が残され、前記軌間変更空間によって前記第2のキャビティが形成され、
前記スライド機構は、転がり軸受と外側スリーブとをさらに備え、前記内側スリーブ、転がり軸受及び外側スリーブは、内から外へ順にしっかりと嵌めて接続され、前記外側スリーブは前記軸箱体の内表面に隙間嵌めされ、前記外側スリーブの外端面と前記軸箱体の外端カバーとの間に前記第3のキャビティが形成され、
前記外側スリーブ外の対向する両側にそれぞれ前記外側スリーブ軸方向に沿って延びるボスが設けられ、前記ボスの長さ方向に沿って間隔をおいて複数の凹溝が設けられ、前記軸箱体の内壁に前記凹溝と一対一で対応する内凹弧面が設けられ、前記軸箱体の前記凹溝と前記内凹弧面とによって限定されたロック空間にロックピンが設けられ、前記軸箱体には前記内凹弧面に連通する第3の注油孔がさらに設けられることを特徴とする軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項2】
前記第3の注油孔は、前記ロックピンに対応する前記軸箱体の側壁に設けられることを特徴とする請求項
1に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項3】
車輪、車軸、及びスライド機構を備え、
前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構はそれぞれ、前記車輪の軸方向外側に接続されると共に、前記車軸の両端の軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によってロック解除及びロックを実現され、
前記車輪の軸方向内側と前記車軸との間にシール構造が設けられ、前記車輪の軸方向内側と前記車軸及び前記シール構造との間に第1のキャビティが形成され、前記車輪の軸方向外側と前記スライド機構との間に第2のキャビティが形成され、前記スライド機構と前記軸箱体との間に第3のキャビティが形成され、
前記車輪には、前記車輪と車軸との接続箇所に通じる第1の注油孔が設けられ、前記第1の注油孔にグリースを注入することで前記車輪と前記車軸との接続箇所を潤滑し、グリースを前記第1のキャビティに貯蔵し、前記軸箱体には、前記スライド機構に通じる第2の注油孔が設けられ、前記第2の注油孔にグリースを注入することで前記スライド機構と前記軸箱体との間を潤滑し、グリースを前記第3のキャビティに貯蔵し、前記スライド機構と前記車軸との嵌合箇所にグリースが塗布され、前記スライド機構と前記車軸との間を潤滑し、グリースを前記第2のキャビティに貯蔵し、
前記スライド機構は、内側スリーブを備え、前記内側スリーブは、前記車軸に隙間嵌めされ、前記内側スリーブは、前記車輪の一端に向かって前記軸箱体から延出し且つ前記車輪と締結接続され、前記内側スリーブの延伸端と前記車軸との間に軌間変更空間が残され、前記軌間変更空間によって前記第2のキャビティが形成され、
前記スライド機構は、転がり軸受と外側スリーブとをさらに備え、前記内側スリーブ、転がり軸受及び外側スリーブは、内から外へ順にしっかりと嵌めて接続され、前記外側スリーブは前記軸箱体の内表面に隙間嵌めされ、前記外側スリーブの外端面と前記軸箱体の外端カバーとの間に前記第3のキャビティが形成され、
前記軸箱体内には、前記外側スリーブに摺動嵌合される軸方向貫通孔が設けられ、前記第2の注油孔は前記軸箱体の頂部及び/又は底部から鉛直に設けられ且つ前記軸方向貫通孔に連通することを特徴とす
る軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項4】
前記車軸の、前記車輪の軸方向内側と前記シール構造との間に位置する部分の径方向に貯油溝が設けられ、前記車輪の軸方向内側と、貯油溝と、前記シール構造との間に、前記第1のキャビティが形成されることを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項5】
前記シール構造は、外輪、内輪及び弾性スリーブを備え、前記外輪の内径は、内輪の外径よりも大きく、前記弾性スリーブの一端が前記外輪の内周に固定接続され、前記弾性スリーブの他端が前記内輪の外周に固定接続され、前記外輪が前記弾性スリーブを動かして前記内輪に対して移動させることが可能になり、前記外輪は、前記車輪のホイールハブに固定外嵌することに用いられ、前記内輪は、前記車軸に固定外嵌することに用いられ、前記外輪と、弾性スリーブと、内輪と、車輪のホイールハブと、前記車軸の貯油溝との間に、前記第1のキャビティが形成されることを特徴とする請求項
4に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項6】
前記車輪の内周に内スプラインが設けられ、前記車軸の両端にそれぞれ外スプラインが設けられ、前記車輪と前記車軸の両端は、内スプライン及び外スプラインによって嵌合して接続され、前記第1の注油孔の出口は、前記内スプラインの隣接する二つのスプライン歯の間の凹溝内に位置することを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項7】
前記第1の注油孔が複数設けられ、複数の前記第1の注油孔は、前記車輪の内側面の周方向に均一に分布し、前記第1の注油孔は、前記車輪の内側面から前記車輪と車軸との接続箇所に向かって傾斜して設置されることを特徴とする請求項1に軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項8】
前記第1の注油孔、前記第2の注油孔、及び前記第3の注油孔の入口には、いずれも雌ねじセクションが設けられ、雄ねじ締結具を対応する雌ねじセクションに螺設することにより、各注油孔の入口に対するシールが実現されることを特徴とする請求項
1に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造。
【請求項9】
請求項1乃至請求項
8のいずれか一項に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造を備えることを特徴とする軌間可変車輪セット。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年01月02日に提出された、出願番号が201910002745.4であり、発明の名称が「軌間可変車輪セット用の潤滑構造及び軌間可変車輪セット」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、鉄道車両の軌間変更技術分野に関し、特に、軌間可変車輪セット用の潤滑構造及び軌間可変車輪セットに関する。
【背景技術】
【0003】
世界的な経済の一体化の急速な発展に伴い、国境を越えた旅客及び貨物の輸送は近年急速に成長しているが、国によって鉄道の軌間が異なることで国境を越えた鉄道輸送に深刻な障害をもたらしている。その問題を解決するために、軌間可変車輪セットが提案されている。つまり、列車が他国の鉄道を走行する際、自身の車輪セットにおける車輪の間の間隔を変更することにより、他の国の鉄道の軌間に適応する。
【0004】
改軌過程では、車輪セットにおけるスライド機構が地面ガイドレールによる押圧につれて、車軸に対してスライドし、車輪と車軸、スリップ機構と車軸との間で相対摩擦が発生してしまうため、主な摩耗しやすい箇所に潤滑設計を採用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施例は、従来技術又は関連技術中に存在する技術課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【0006】
本開示の目的は、主な摩耗しやすい箇所の摩耗を低減し、軌間可変車輪セット全体の寿命を向上させる軌間可変車輪セット用の潤滑構造及び軌間可変車輪セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を解決するために、本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用の潤滑構造を提供する。当該潤滑構造は、車輪、車軸、及びスライド機構を備え、前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構はそれぞれ、前記車輪の外側に接続されると共に、前記車軸の両端の軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によってロック解除及びロックを実現され、前記車輪の内側と前記車軸との間にシール構造が設けられ、前記車輪の内側と前記車軸及び前記シール構造との間に第1のキャビティが形成され、前記車輪の外側と前記スライド機構との間に第2のキャビティが形成され、前記スライド機構と前記軸箱体との間に第3のキャビティが形成され、前記車輪には、前記車輪と車軸との接続箇所に通じる第1の注油孔が設けられ、前記軸箱体には、前記スライド機構に通じる第2の注油孔が設けられる。
【0008】
本開示の実施例では、前記スライド機構は、内側スリーブを備え、前記内側スリーブは、前記車軸に隙間嵌めされ、前記内側スリーブは、前記車輪の一端に向かって前記軸箱体から延出し且つ前記車輪と締結接続され、前記内側スリーブの延伸端と前記車軸との間に軌間変更空間が残され、前記軌間変更空間によって前記第2のキャビティが形成される。
【0009】
本開示の実施例では、前記スライド機構は、転がり軸受と外側スリーブとをさらに備え、前記内側スリーブ、転がり軸受及び外側スリーブは、内から外へ順にしっかりと嵌めて接続され、前記外側スリーブは前記軸箱体の内表面に隙間嵌めされ、前記外側スリーブの外端面と前記軸箱体の外端カバーとの間に前記第3のキャビティが形成される。
【0010】
本開示の実施例では、前記外側スリーブ外の対向する両側にそれぞれ前記外側スリーブ軸方向に沿って延びるボスが設けられ、前記ボスの長さ方向に沿って間隔をおいて複数の凹溝が設けられ、前記軸箱体の内壁に前記凹溝と一対一で対応する内凹弧面が設けられ、前記軸箱体の前記凹溝と前記内凹弧面とによって限定されたロック空間にロックピンが設けられ、前記軸箱体には前記内凹弧面に連通する第3注油孔がさらに設けられる。
【0011】
本開示の実施例では、前記第3の注油孔は、前記ロックピンに対応する前記軸箱体の側壁に設けられる。
【0012】
本開示の実施例では、前記軸箱体内には、前記外側スリーブに摺動嵌合される軸方向貫通孔が設けられ、前記第2の注油孔は前記軸箱体の頂部及び/又は底部から鉛直に設けられ且つ前記軸方向貫通孔に連通する。
【0013】
本開示の実施例では、前記車軸の、前記車輪の内側と前記シール構造との間に位置する部分の径方向に貯油溝が設けられ、前記車輪の内側と、貯油溝と、前記シール構造との間に、前記第1のキャビティが形成される。
【0014】
本開示の実施例では、前記シール構造は、外輪、内輪及び弾性スリーブを備え、前記外輪の内径は、内輪の外径よりも大きく、前記弾性スリーブの一端が前記外輪の内周に固定接続され、前記弾性スリーブの他端が前記内輪の外周に固定接続され、前記外輪が前記弾性スリーブを動かして前記内輪に対して移動させることが可能になり、前記外輪は、前記車輪のホイールハブに固定外嵌することに用いられ、前記内輪は、前記車軸に固定外嵌することに用いられ、前記外輪と、弾性スリーブと、内輪と、車輪のホイールハブと、前記車軸の貯油溝との間に、前記第1のキャビティが形成される。
【0015】
本開示の実施例では、前記車輪の内周に内スプラインが設けられ、前記車軸の両端にそれぞれ外スプラインが設けられ、前記車輪と前記車軸の両端は、内スプライン及び外スプラインによって嵌合して接続され、前記第1の注油孔の出口は、前記内スプラインの隣接する二つのスプライン歯の間の凹溝内に位置する。
【0016】
本開示の実施例では、前記第1の注油孔が複数設けられ、複数の前記第1の注油孔は、前記車輪の内側面の周方向に均一に分布し、前記第1の注油孔、前記車輪の内側面から前記車輪と車軸との接続箇所に向かって傾斜して設置される。
【0017】
本開示の実施例では、前記第1の注油孔、前記第2の注油孔、及び前記第3の注油孔の入口には、いずれも雌ねじセクションが設けられ、雄ねじ締結具を対応する雌ねじセクションに螺設することにより、各注油孔の入口に対するシールが実現される。
【0018】
本開示の別の実施例は、上記技術案に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造を備える軌間可変車輪セットを提供する。
【発明の効果】
【0019】
従来技術に比べて、本開示の上記技術案は以下の利点を有する。
【0020】
本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用の潤滑構造を提供する。当該潤滑構造は、車輪、車軸、及びスライド機構を備え、前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構はそれぞれ、前記車輪の外側に接続されると共に、前記車軸の両端の軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によってロック解除及びロックを実現され、前記車輪の内側と前記車軸との間にシール構造が設けられ、前記車輪の内側と前記車軸及び前記シール構造との間に第1のキャビティが形成され、前記車輪の外側と前記スライド機構との間に第2のキャビティが形成され、前記スライド機構と前記軸箱体との間に第3のキャビティが形成され、前記車輪には、前記車輪と車軸との接続箇所に通じる第1の注油孔が設けられ、このように、前記第1の注油孔にグリースを注入することで前記車輪と前記車軸との接続箇所を潤滑し、グリースを前記第1のキャビティに貯蔵する。前記軸箱体には、前記スライド機構に通じる第2の注油孔が設けられ、このように、前記第2の注油孔にグリースを注入することで前記スライド機構と前記軸箱体との間を潤滑し、グリースを前記第3のキャビティに貯蔵する。前記スライド機構と前記車軸との嵌合箇所にグリースが塗布され、前記スライド機構と前記車軸との間を潤滑し、グリースを前記第2のキャビティに貯蔵する。車輪が改軌していない状態で、グリースが対応するキャビティに貯蔵され、車輪が改軌している過程において、スライド機構が動き、各キャビティの体積が変化し、グリースが押圧して流され、摩擦面に充填されて潤滑層が形成される。これにより、摩擦面を潤滑して保護するという役割を果たし、主な摩耗しやすい箇所の摩耗を低減し、軌間可変車輪セット全体の寿命を向上させる。
【0021】
また、グリースのメンテナンス及び補充をいつでも行うことが可能にするように、第1の注油孔及び第2の注油孔を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施例に係る軌間可変車輪セット用の潤滑構造の一部の軸方向断面図である。
【
図2】本開示の実施例に係る軸箱体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本開示を説明するためのものに過ぎず、本開示の範囲を制限するためのものではない。
【0024】
本開示の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づく方位又は位置関係であり、本開示の実施を便利に又は簡単に説明するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位において構成されて操作されると明示又は暗示するものではないので、本開示の実施例に対する限定であると理解されるべきではない。なお、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を明示又は暗示すると理解されるべきではない。
【0025】
本開示の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」の用語の意味は広く理解されるべきである。例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接接続することや、中間媒体を介して互いに間接接続することや、2つの素子の内部の連通でも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本開示の実施例での具体的な意味を理解することができる。
【0026】
本開示の実施例の説明において、特に明記しない限り、「複数」、「複数本」、「複数組」とは、2つ又は2つ以上を意味する。
【0027】
図1に示すように、本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用の潤滑構造を提供する。当該潤滑構造は、車輪1、車軸2、及びスライド機構を備え、前記車輪1は、前記車軸2の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構はそれぞれ、前記車輪1の外側に接続されると共に、前記車軸2の両端の軸箱体13内に位置し、前記車輪1は、前記スライド機構によってロック解除及びロックを実現され、前記車輪1の内側と前記車軸2との間にシール構造6が設けられ、前記車輪1の内側と前記車軸2及び前記シール構造6との間に第1のキャビティ7が形成され、前記車輪1の外側と前記スライド機構との間に第2のキャビティ8が形成され、前記スライド機構と前記軸箱体13との間に第3のキャビティ9が形成される。
図3に示すように、前記車輪1には、前記車輪1と車軸2との接続箇所に通じる第1の注油孔10が設けられ、このように、車輪1が軌間変更を行う時、車輪1は車軸2に対して移動し、車輪1と車軸2との間は摩擦面となり、前記第1の注油孔10にグリースを注入することで前記車輪1と前記車軸2との接続箇所を潤滑して、摩擦面に潤滑層が形成され、グリースを前記第1のキャビティ7に貯蔵する。
図2に示すように、前記軸箱体13には、前記スライド機構に通じる第2の注油孔11が設けられ、このように、車輪1が軌間変更を行う時、スライド機構は、車輪1と共に移動し、軸箱体13に対して移動し、軸箱体13との間に摩擦面が形成される。前記第2の注油孔11にグリースを注入することで前記スライド機構と前記軸箱体13との間を潤滑して、潤滑層を形成し、グリースを前記第3のキャビティ9に貯蔵する。車輪1が移動するとき、スライド機構が車軸2に沿って移動する。同様に、スライド機構と車軸2との間に摩擦面が形成され、前記スライド機構と前記車軸2との嵌合箇所にグリースが塗布され、前記スライド機構と前記車軸2との間を潤滑して、潤滑層を形成し、グリースを前記第2のキャビティ8に貯蔵する。車輪1が改軌していない状態で、グリースが対応するキャビティに貯蔵され、車輪1が改軌している過程において、スライド機構が動き、各キャビティの体積が変化し、グリースが押圧して流され、対応する摩擦面に充填されて潤滑層が形成される。これにより、摩擦面を潤滑して保護するという役割を果たし、潤滑効率の向上に有利であり、主要な摩耗しやすい箇所の摩耗を低減し、軌間可変車輪セット全体の寿命を向上させる。
【0028】
本開示の実施例では、キャビティ7、8、9を連通するための通路14、15、16が設けられ、これにより、キャビティ7、8、9における圧力の強さが同じように確保される。
【0029】
本開示の実施例では、具体的に、前記スライド機構は内側スリーブ3を含み、前記内側スリーブ3は前記車軸2と隙間嵌めし、前記内側スリーブ3は前記車輪1の一端に向かって前記軸箱体13から延出し且つ締結具によって前記車輪1と締結接続され、前記内側スリーブ3の延伸端と前記車軸2との間に軌間変更空間が残され、このように、軌間変更を行う時、内側スリーブ3は、車軸2に干渉することなく、車軸2に沿って移動するのに十分な距離を有することが確保される。前記軌間変更空間によって前記第2のキャビティ8が形成される。具体的に、前記車軸2は、中間直径が両端直径よりも大きい段付き軸として設けられ、前記車輪1は、前記段付き軸の中間軸に設けられ且つ前記中間軸の両端にそれぞれ設けられ、前記スライド機構は、前記段付き軸の両端軸に設けられる。前記内側スリーブ3の前記車輪1に接続される一端は外へ拡張する段付き孔として設けられ、前記段付き孔の大孔の内径が前記段付き軸の中間軸の外径に適合し、前記段付き孔の小孔内径が前記段付き軸の両端軸の内径に適合する。前記段付き孔の大孔と前記段付き軸のショルダとの間に前記軌間変更空間が設けることにより、前記第2のキャビティ8を形成する。スライド機構を取り付ける前に、まず内側スリーブ3内又は車軸2外の対応する部分にグリースを塗布し、そして内側スリーブ3を車軸2に外嵌して車輪1に接続させる。グリースは一定の流動性を有し、余分なグリースは第2のキャビティ8に貯蔵され、軌間変更過程において、グリースは押圧して流され、内側スリーブ3と車軸2との間の摩擦面に充填されて潤滑層を形成し、摩擦を低減し、内側スリーブ3及び車軸2を保護するという役割を果たす。
【0030】
本開示の実施例では、前記スライド機構は、転がり軸受4と外側スリーブ5をさらに含み、前記内側スリーブ3、転がり軸受4及び外側スリーブ5は、内から外へ順にしっかりと嵌めて接続され、車輪1が回転する時、内側スリーブ3及び転がり軸受4の内輪は車輪1と共に回転し、外側スリーブ5と転がり軸受4の外輪は相対的固定に保持され、前記外側スリーブ5は前記軸箱体13の内面と隙間嵌めし、これにより、外側スリーブ5及び内側スリーブ3、転がり軸受4全体が軸箱体13に沿って移動しやすくなる。前記外側スリーブ5の外端面と前記軸箱体13の外端カバーとの間にはスライド機構が移動する空間が残されることで、グリースを充填して外側スリーブ5と軸箱体13との間を潤滑するために用いられる前記第3のキャビティ9が形成される。
【0031】
本開示の実施例では、前記外側スリーブ5外の対向する両側に、それぞれ前記外側スリーブ5の軸方向に沿って延びるボスが設けられ、前記ボスの長手方向に沿って間隔をあけて複数の凹溝が設けられ、前記軸箱体13の内壁に前記凹溝と一対一で対応する内凹弧面が設けられ、前記軸箱体13の、前記凹溝と前記内凹弧面とによって限定されたロック空間に位置する部分にはロックピンが設けられ、前記凹溝と前記内凹弧面とによって限定されたロック空間にロックピンが挿入され、且つ外力の作用により複数の前記ロック空間の間で切り替わることで、車輪1の軌間変更を実現する。具体的に、ロックピンは、ロック空間に挿入される時、その一部が凹溝に位置し、他の一部が内凹弧面にフィットされ、外側スリーブ5は軸箱体13に対して位置が固定され、ロックを実現する。このとき、車輪1は車軸2に対して位置が固定される。軌間を変更する必要がある場合、ロックピンは外力の作用により位置するロック空間から離脱し、ロック解除を実現する。本実施例では、上向きの推力でロックピンをロック空間から離脱させることが好ましく、このとき、車輪1が押されてを車軸2に沿って外向き又は内向きに移動させ、それに伴い、スライド機構全体を動かして軸箱体13及びロックピンに対して移動させ、変更された軌間に対応するロック空間がロックピンの真下まで移動したとき、ロックピンは、それ自体の重力及び下向きの力の作用により当該ロック空間に挿入され、車輪1の軌間変更が完成する。前記軸箱体13には前記内凹弧面に連通する第3の注油孔12がさらに設けられることにより、第3の注油孔12から軸箱体13の内凹弧面にグリースを注入しやすくなり、前記ロックピン及びその位置するロック空間を潤滑し、ロックピンの上下移動時に軸箱体13及び外側スリーブ5との間の摩擦を低減させる。
【0032】
本開示の実施例では、
図2に示すように、第3の注油孔12の設置を容易にするために、前記第3の注油孔12は前記ロックピンに対応する前記軸箱体13の側壁に設けられ、第3の注油孔12から注入されたグリースは流動して内凹弧面と外側スリーブ5の凹溝との間のロック空間全体を覆うことができる。
【0033】
本開示の実施例では、
図2に示すように、前記軸箱体13内には、前記外側スリーブ5に摺動嵌合される軸方向貫通孔51が設けられ、前記第2の注油孔11は、前記軸箱体13の頂部及び/又は底部から鉛直に設けられ且つ前記軸方向貫通孔51に連通し、これにより、軸箱体13の頂部からグリースを上から下へ注入して軸箱体13と外側スリーブ5との間を潤滑することをしやすくする。もちろん、軸箱体13の底部からグリースを下から上へ注入して軸箱体13と外側スリーブ5との間を潤滑してもよい。軸箱体13と外側スリーブ5との間の空間全体を覆うために、軸箱体13の頂部と底部とに第2の注油孔11を同時に設けてもよく、注入効率を向上させるために、軸箱体13の頂部と底部とに複数の第2注油孔11を同時に設けてもよい。
【0034】
本開示の実施例では、グリースの貯蔵を容易にするために、前記車軸2の、前記車輪1の内側と前記シール構造6との間に位置する部分の径方向には貯油溝が設けられ、前記車輪1の内側と、貯油溝と、前記シール構造6との間には前記第1のキャビティ7が形成される。
【0035】
本開示の実施例では、具体的に、前記シール構造6は、外輪、内輪及び弾性スリーブを含み、前記外輪の内径は内輪の外径よりも大きく、前記弾性スリーブは、一端が前記外輪の内周に固定的に接続され、他端が前記内輪の外周に固定的に接続され、前記外輪は前記弾性スリーブを動かして前記内輪に対して移動可能である。前記外輪は、前記車輪1のホイールハブに固定的に外嵌されるために用いられ、前記内輪は、前記車軸2に固定的に外嵌されるために用いられ、軌間変更を行う時、外輪が車輪1と共に移動し、弾性スリーブは、その形状の可変性及び復元性を利用して外輪と共に移動し、内輪が移動せず固定されることで、軌間変更時における車輪1と車軸2とが相対的にスライドする過程におけるシール問題を解決した。前記外輪と、弾性スリーブと、内輪と、車輪1のホイールハブと、前記車軸2の貯油溝との間には、前記第1のキャビティ7が形成され、このように、車輪1と車軸2との間を常に潤滑することが維持されるように第1のキャビティ7にグリースを貯蔵することで、内輪と外輪との間の相対的な移動によるシール部材の摩耗が回避され、また、シール性能に優れ、漏れがない。
【0036】
本開示の実施例では、前記車輪1の内周に内スプラインが設けられ、前記車軸2の両端にそれぞれ外スプラインが設けられ、前記車輪1と前記車軸2の両端は、内スプライン及び外スプラインによって嵌合接続されることで、トルクが容易に伝達されると共に、車輪1が移動しやすくなる。前記第1の注油孔10の出口は前記内スプラインの隣接する二つのスプライン歯の間の凹溝内に位置することで、グリース注入後の貯蔵を容易にすると共に、スプラインが噛み合う時に潤滑層を形成しやすくなる。第1の注油孔10に起因して内スプラインの強度が弱まることを低減させるように、第1の注油孔10を内スプラインのスプライン歯に設けることを回避すべきである。
【0037】
図3に示すように、本開示の実施例では、前記第1の注油孔10は複数設けられ、複数の前記第1の注油孔10は、前記車輪1の内側面の周方向に均一に分布することにより、車輪1の停止形態にかかわらず、適切な角度を有する第1の注油孔10にグリースが注入される。
図4に示すように、前記第1の注油孔10は前記車輪1の内側面から車輪1と車軸2との接続箇所に向かって傾斜して設けられることで、グリースが車輪1と車軸2との接続箇所に流れ込んで潤滑を行いやすくなる。
【0038】
本開示の実施例では、前記第1の注油孔10、第2の注油孔11、及び第3の注油孔12の入口には、いずれも雌ねじセクションが設けられ、雄ねじ締結具を対応する雌ねじセグメントに螺設することで、各注油孔の入口のシールを実現し、これにより、車両が高速運転する時、グリースが注油孔から振り飛ばされることを回避し、シール作用を確実に果たす。各注油孔の設置により、グリースのメンテナンスと補充をいつでも行うことがやすくなる
【0039】
本開示の別の実施例は、上記の技術案に記載の軌間可変車輪セット用の潤滑構造を備える軌間可変車輪セットをさらに提供する。例えば車輪1と車軸2との間、内側スリーブ3と車軸2との間、及び外側スリーブ5と軸箱体13との間などの主な摩耗しやすい箇所の摩耗を低減し、軌間可変車輪セット全体の寿命を向上させる。
【0040】
以上の実施例から分かるように、本開示は、グリースを対応するキャビティに貯蔵することにより、車輪が改軌している過程において、スライド機構が動き、各キャビティの体積が変化し、グリースが押圧して流されて、摩擦面に充填されて潤滑層を形成し、摩擦面を潤滑して保護する役割を果たす。これにより、主な摩耗しやすい箇所の摩耗を低減し、軌間可変車輪セット全体の寿命を向上させる。
【0041】
以上に説明した内容は、本開示の好適な実施例に過ぎず、本開示を制限するものではなく、本開示の精神及び原則の範囲内で実施されるいずれの変更、同等の交換、改良などは、本開示の保護の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0042】
1:車輪、2:車軸、3:内側スリーブ、4:転がり軸受、5:外側スリーブ、51:軸方向貫通孔、6:シール構造、7:第1のキャビティ、8:第2のキャビティ、9:第3のキャビティ、10:第1の注油孔、11:第2の注油孔、12:第3の注油孔、13:軸箱体、14、15、16:通路。