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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 29/04 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
F02B29/04 R
F02B29/04 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021550917
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039264
(87)【国際公開番号】W WO2021064980
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹
(72)【発明者】
【氏名】寺本 潤
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-129117(JP,A)
【文献】特開2011-074822(JP,A)
【文献】特開2012-211545(JP,A)
【文献】特表2013-527369(JP,A)
【文献】特開2016-153713(JP,A)
【文献】実開昭63-079437(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と接続される吸気流路に設けられる熱交換部と、
前記熱交換部で熱交換される冷媒が貯留される冷媒タンクと、
前記冷媒タンクに貯蔵される冷媒と前記吸気流路を流通する吸気との熱交換が行われる前記熱交換部を通過しない蒸気流路に設けられ、前記冷媒タンクと接続され、前記冷媒タンク内のガスを吸引するエジェクタと、
を備え
前記蒸気流路は、前記吸気流路に設けられ前記熱交換部とは異なる熱交換器、および、前記内燃機関と接続される排気流路に設けられる熱交換器と接続され、
前記吸気流路に設けられ前記熱交換部とは異なる熱交換器において、前記蒸気流路を流通する水と前記吸気流路を流通する吸気との熱交換が行われ、
前記排気流路に設けられる熱交換器において、前記吸気流路に設けられ前記熱交換部とは異なる熱交換器において生じた蒸気と前記排気流路を流通する排気との熱交換が行われる、
冷却システム。
【請求項2】
前記熱交換部は、前記吸気流路に設けられる熱交換器を含む、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記熱交換部は、前記吸気流路に設けられるノズルを含む、
請求項1または2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷媒タンクは、前記吸気流路に設けられ、
前記熱交換部は、前記冷媒タンクに設けられる通気管を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記吸気流路には、コンプレッサが設けられ、
前記熱交換部は、前記吸気流路における前記コンプレッサより上流側に設けられる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等に用いられるエンジン等の内燃機関では、熱効率を向上させる目的で、内燃機関(例えば、燃焼室)に送られる吸気が冷却される。例えば、特許文献1に開示されているように、吸気の冷却に用いられる冷媒がタンクに貯留される。タンク内の冷媒を気化冷却する(つまり、気化熱を利用して冷却する)ことにより、吸気を効果的に冷却する技術がある。吸気の温度を低下させることにより、燃焼室に送られる吸気の密度を増大させることができるので、熱効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-074822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸気の冷却に用いられる冷媒を気化冷却する従来の技術では、タンク内の減圧に電動ポンプが利用されていた。タンク内を減圧する減圧用の電動ポンプは、多くの電力を消費するので、電力消費量が増大してしまっていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑み、電力消費量の増大を抑制することが可能な冷却システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る冷却システムは、内燃機関と接続される吸気流路に設けられる熱交換部と、熱交換部で熱交換される冷媒が貯留される冷媒タンクと、冷媒タンクに貯蔵される冷媒と吸気流路を流通する吸気との熱交換が行われる熱交換部を通過しない蒸気流路に設けられ、冷媒タンクと接続され、冷媒タンク内のガスを吸引するエジェクタと、を備え、蒸気流路は、吸気流路に設けられ熱交換部とは異なる熱交換器、および、内燃機関と接続される排気流路に設けられる熱交換器と接続され、吸気流路に設けられ熱交換部とは異なる熱交換器において、蒸気流路を流通する水と吸気流路を流通する吸気との熱交換が行われ、排気流路に設けられる熱交換器において、吸気流路に設けられ熱交換部とは異なる熱交換器において生じた蒸気と排気流路を流通する排気との熱交換が行われる
【0007】
熱交換部は、吸気流路に設けられる熱交換器を含んでもよい。
【0008】
熱交換部は、吸気流路に設けられるノズルを含んでもよい。
【0009】
冷媒タンクは、吸気流路に設けられ、熱交換部は、冷媒タンクに設けられる通気管を含んでもよい。
【0010】
吸気流路には、コンプレッサが設けられ、熱交換部は、吸気流路におけるコンプレッサより上流側に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の冷却システムによれば、電力消費量の増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1の実施形態に係るエンジンの概略構成を示す模式図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る冷却システムの概略構成を示す模式図である。
図3】本開示の第2の実施形態に係る冷却システムの概略構成を示す模式図である。
図4】本開示の第3の実施形態に係る冷却システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1および図2を参照して、本開示の第1の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本開示の第1の実施形態に係るエンジン1の概略構成を示す模式図である。エンジン1は、具体的には、船舶用のエンジンである。図1に示されるように、エンジン1は、ピストン3が内部に設けられるシリンダ5を備える。ピストン3は、シリンダ5内を往復移動する。ピストン3には、ピストンロッド7の一端が取り付けられている。ピストンロッド7の他端には、クロスヘッド9のクロスヘッドピン11が連結される。クロスヘッド9の左右方向(つまり、図1中のピストン3のストローク方向に垂直な方向)の移動は、ガイドシュー9aにより規制される。ガイドシュー9aがガイドされることによって、クロスヘッド9はピストン3と一体に往復移動する。
【0018】
クロスヘッドピン11は、連接棒13の一端に設けられたクロスヘッド軸受15に軸支される。クロスヘッドピン11は、連接棒13の一端を支持している。ピストンロッド7の他端と連接棒13の一端は、クロスヘッド9を介して接続される。
【0019】
連接棒13の他端には、大端部13aが設けられる。大端部13aには、軸受孔13bが形成されている。軸受孔13bには、金属製のすべり軸受17が設けられる。すべり軸受17に、クランクシャフト19のクランクピン19aが回転可能に軸支されている。クランクシャフト19のクランクジャーナル19bは、クランクケース21に設けられる軸受部材に軸支されている。ピストン3と一体に連接棒13が往復移動すると、クランクシャフト19が回転する。
【0020】
クランクケース21は、クランクシャフト19の回転軸方向に延在する。図1では、シリンダ5が1つのみ示されているが、クランクケース21の上方には、複数のシリンダ5が、クランクシャフト19の回転軸方向に並列して設けられている。
【0021】
シリンダ5の上端には、シリンダカバー23が設けられる。シリンダカバー23には、排気弁箱25が挿通される。排気弁箱25の一端は、ピストン3に臨んでいる。排気弁箱25の一端には、排気ポート25aが開口する。排気ポート25aは、燃焼室27に開口する。燃焼室27は、シリンダカバー23とシリンダ5とピストン3に囲繞されてシリンダ5の内部に形成される。
【0022】
燃焼室27には、排気弁29の弁体が位置する。排気弁29のロッド部には、排気弁駆動装置31が取り付けられる。排気弁駆動装置31は、排気弁箱25に配される。排気弁駆動装置31は、排気弁29をピストン3のストローク方向に移動させる。
【0023】
排気弁29がピストン3側に移動して開弁すると、シリンダ5内で生じた燃焼後の排気ガスが、排気ポート25aから排気される。排気後、排気弁29が排気弁箱25側に移動して、排気ポート25aが閉弁される。
【0024】
排気管33は、排気弁箱25および過給機TCに取り付けられる。排気管33の内部は、排気ポート25aおよび過給機TCのタービンに連通する。過給機TCには、排出管35が取り付けられる。排出管35には、排出口が形成されている。排出管35の内部は、過給機TCのタービンに連通する。排気ポート25aから排気された排気ガスは、排気管33を通って過給機TCのタービンに供給された後、排出管35を通って外部に排気される。
【0025】
過給機TCには、吸気管37が取り付けられる。吸気管37には、吸気口が形成されている。吸気管37の内部は、過給機TCのコンプレッサに連通する。過給機TCのコンプレッサによって、活性ガス(例えば、空気)が吸気管37を通って吸引される。吸引される活性ガス(つまり、吸気)は、過給機TCのコンプレッサによって圧縮される。吸気は、掃気溜39に送られる。シリンダ5の下端は、シリンダジャケット41で囲繞される。シリンダジャケット41の内部には、掃気室43が形成される。掃気溜39に送られた吸気は、掃気室43に圧入される。
【0026】
シリンダ5の下端側には、掃気ポート5aが設けられる。掃気ポート5aは、シリンダ5の内周面から外周面まで貫通する孔である。掃気ポート5aは、シリンダ5の周方向に離隔して複数設けられている。ピストン3が掃気ポート5aより下死点側に移動すると、掃気室43とシリンダ5内の差圧によって、掃気ポート5aからシリンダ5内に吸気が吸入される。
【0027】
シリンダカバー23には、燃料噴射弁45が設けられる。燃料噴射弁45の先端は燃焼室27側に向けられる。燃料噴射弁45は、燃焼室27に液体燃料(燃料油)を噴出する。液体燃料が燃焼し、その膨張圧によってピストン3が往復移動する。
【0028】
図2は、本開示の第1の実施形態に係る冷却システム100の概略構成を示す模式図である。冷却システム100は、エンジン1の燃焼室27に送られる吸気を冷却するためのシステムである。冷却システム100により吸気を冷却することによって、熱効率を向上させることができる。
【0029】
図2ならびに後述する図3および図4では、エンジン1と、吸気流路111と、排気流路112とが示されている。
【0030】
吸気流路111は、掃気室43および掃気ポート5aを介して、エンジン1の燃焼室27と接続される。燃焼室27に送られる吸気は、吸気流路111を流通する。吸気流路111には、過給機TCのコンプレッサCが設けられる。吸気流路111は、吸気流路111におけるコンプレッサCより上流側の上流側吸気流路111aと、吸気流路111におけるコンプレッサCより下流側の下流側吸気流路111bとを含む。上流側吸気流路111aは、図1中の吸気管37により画成される。下流側吸気流路111bは、図1中の掃気溜39により画成される。
【0031】
排気流路112は、排気ポート25aを介して、エンジン1の燃焼室27と接続される。燃焼室27から排出される排気は、排気流路112を流通する。排気流路112には、過給機TCのタービンTが設けられる。排気流路112は、排気流路112におけるタービンTより上流側の上流側排気流路112aと、排気流路112におけるタービンTより下流側の下流側排気流路112bとを含む。上流側排気流路112aは、図1中の排気管33により画成される。下流側排気流路112bは、図1中の排出管35により画成される。
【0032】
図2に示されるように、冷却システム100の吸気流路111には、吸気を冷却するための冷却器として、熱交換器131が設けられる。熱交換器131は、下流側吸気流路111bに設けられる。熱交換器131は、冷媒供給源191から供給される冷媒(例えば、真水)が循環する冷媒流路113aに設けられる。冷媒流路113aを流通する冷媒は、海水等により冷却される。下流側吸気流路111bを流通する吸気は、熱交換器131を流通する冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0033】
また、図2に示されるように、冷却システム100の吸気流路111には、吸気を冷却するための冷却器として、熱交換器132および熱交換器133がさらに設けられる。熱交換器132は、上流側吸気流路111aに設けられる。熱交換器133は、下流側吸気流路111bにおける熱交換器131より下流側に設けられる。熱交換器132,133には、後述するように、気化冷却された冷媒(例えば、真水)が供給される。熱交換器132,133に供給される冷媒の温度は、熱交換器131に供給される冷媒の温度よりも低い。上流側吸気流路111aを流通する吸気は、熱交換器132を流通する気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。下流側吸気流路111bを流通する吸気は、熱交換器133を流通する気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0034】
冷却システム100では、熱交換器131に加えて熱交換器132,133により吸気が冷却されるので、気化冷却された冷媒によって吸気を効果的に冷却することができる。エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度を効果的に増大させることができるので、熱効率が効果的に向上する。
【0035】
以下、冷却システム100のより詳細な構成について説明する。
【0036】
上流側吸気流路111aには、熱交換器132および気液分離器181が、上流側(つまり、吸気口側)からこの順に設けられる。熱交換器132により冷却された吸気に含まれる水分は、気液分離器181によって分離され、タンク121に送られる。下流側吸気流路111bには、熱交換器134、熱交換器131、熱交換器133および気液分離器182が、上流側(つまり、コンプレッサC側)からこの順に設けられる。熱交換器134は、後述するように、吸気の熱により蒸気を生じさせるために設けられる。熱交換器134,131,133により冷却された吸気に含まれる水分は、気液分離器182によって分離され、タンク121に送られる。
【0037】
タンク121には、気液分離器181,182から送られる冷媒が貯留される。タンク121は、冷媒流路113bを介して冷媒供給源192と接続されている。冷媒流路113bには、開閉弁141が設けられている。開閉弁141を開くことにより、冷媒供給源192からタンク121に冷媒(例えば、真水)を供給することができる。タンク121は、冷媒流路113cを介してタンク122と接続されている。冷媒流路113cには、開閉弁142が設けられている。開閉弁142を開くことにより、タンク121からタンク122に冷媒を供給することができる。
【0038】
タンク122には、熱交換器132,133に供給される冷媒が貯留される。タンク122は、冷媒流路113dを介して三方弁143と接続されている。冷媒流路113dには、三方弁143に向けて冷媒を送出する電動ポンプ151が設けられている。三方弁143は、冷媒流路113eを介して熱交換器132と接続されている。三方弁143は、冷媒流路113gを介して熱交換器133と接続されている。冷媒流路113dと冷媒流路113e,113gとが連通するように三方弁143を制御し、電動ポンプ151を駆動することにより、タンク122から熱交換器132,133に冷媒を供給することができる。熱交換器132,133を通過した冷媒は、冷媒流路113f,113hを通ってタンク122に戻される。
【0039】
タンク122は、ガス流路114を介してエジェクタ171と接続されている。エジェクタ171は、後述するように、蒸気が流通する蒸気流路116に設けられる。エジェクタ171には、高圧の流体としての蒸気が供給される。タンク122内のガスは、エジェクタ171により生じる蒸気の流れで吸引される。タンク122内を減圧して、タンク122内の冷媒を気化冷却することができる。エジェクタ171を用いて冷媒を冷却することによって、大気圧下の冷媒よりも低温の過冷却冷媒を生成することができる。気化冷却された冷媒が熱交換器132,133に供給される。減圧用の電動ポンプを用いることなくタンク122内を減圧することができるので、電力消費量の増大を抑制することができる。
【0040】
エジェクタ171に供給される蒸気を生成するための水は、タンク123に貯留されている。タンク123は、水流路115aを介して水供給源193と接続されている。水流路115aには、開閉弁144が設けられている。開閉弁144を開くことにより、水供給源193からタンク123に水(具体的には、真水)を供給することができる。タンク123は、水流路115bを介して熱交換器134と接続されている。水流路115bには、熱交換器134に向けて水を送出する電動ポンプ152が設けられている。電動ポンプ152を駆動することにより、タンク123から熱交換器134に水を供給することができる。
【0041】
熱交換器134を流通する水は、下流側吸気流路111bを流通する吸気の熱により暖められることによって、気化して蒸気となる。蒸気流路116は、蒸気流路116a、蒸気流路116b、蒸気流路116c、蒸気流路116dおよび蒸気流路116eを含む。熱交換器134は、蒸気流路116aを介して熱交換器135と接続されている。熱交換器135は、下流側排気流路112bに設けられる。熱交換器134において生じた蒸気は、蒸気流路116aを通って熱交換器135に供給される。熱交換器135に供給された蒸気の圧力は、下流側排気流路112bを流通する排気の熱により暖められることによって、より高くなる。熱交換器134に加えて熱交換器135に蒸気を通すことによって、高圧の流体としての蒸気を得ることができる。
【0042】
熱交換器135は、蒸気流路116bを介して接続器161と接続されている。熱交換器135を通過した蒸気は、蒸気流路116bを通って接続器161に供給される。接続器161には、蒸気流路116cを介して蒸気供給源194が接続されている。蒸気供給源194は、吸気の熱および排気の熱以外の熱源により生じた蒸気を供給する供給源である。例えば、蒸気供給源194では、太陽光の熱を利用して蒸気が生じてもよい。また、例えば、蒸気供給源194では、船舶内のエンジン1以外の他の設備の排熱を利用して蒸気が生じてもよい。接続器161には、熱交換器134,135で生成された蒸気以外に、蒸気供給源194からも蒸気が供給される。
【0043】
エジェクタ171の一端は、蒸気流路116dを介して接続器161と接続されている。エジェクタ171の他端は、蒸気流路116eを介して凝縮器183と接続されている。エジェクタ171内には、当該エジェクタ171の一端から他端に亘って貫通路が形成されている。接続器161から供給される蒸気は、エジェクタ171内の貫通路を通過する。エジェクタ171内の貫通路には、ガス流路114が接続されている。エジェクタ171内の蒸気の流れにより生じた負圧でガス流路114からエジェクタ171内にガスが吸引される。エジェクタ171により、タンク122内のガスが吸引される。エジェクタ171の他端から噴射される蒸気は、凝縮器183によって凝縮されて水になり、タンク123に送られる。凝縮器183内は、大気圧となっている。凝縮器183内には、蒸気を冷却する熱交換器が設けられている。
【0044】
冷却システム100は、吸気流路111に設けられる熱交換部(つまり、吸気と冷媒とを熱交換させる部分)で熱交換される冷媒が貯留される冷媒タンクとしてタンク122を備える。冷却システム100は、蒸気流路116に設けられ、上記冷媒タンクと接続されるエジェクタとしてエジェクタ171を備える。減圧用の電動ポンプを用いることなく、タンク122内を減圧してタンク122内の冷媒を気化冷却することができる。気化冷却された冷媒を用いて吸気の冷却が実現される。電力消費量の増大が抑制される。エンジン1の吸気を効果的に冷却することができる。エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度を効率的に増大させることができる。熱効率が効率的に向上する。
【0045】
特に、冷却システム100では、吸気流路111に熱交換器132,133が上記熱交換部として設けられる。吸気は、熱交換器132,133を流通する冷媒と熱交換する。タンク121内で気化冷却された冷媒を用いた吸気の冷却を適切に実現することができる。
【0046】
冷却システム100では、上記熱交換部としての熱交換器132は、吸気流路111におけるコンプレッサCより上流側(つまり、上流側吸気流路111a)に設けられる。吸気流路111におけるコンプレッサCより上流側で、吸気が熱交換器132により冷却される。エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度は、コンプレッサCによる圧縮後の吸気の温度と比較して、コンプレッサCによる圧縮前の吸気の温度に強く依存する。冷却システム100のように、吸気流路111におけるコンプレッサCより上流側で、吸気を気化冷却された冷媒と熱交換させることによって、エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度をより効果的に増大させることができる。
【0047】
冷却システム100では、蒸気流路116は、吸気流路111に設けられる熱交換器134と接続される。エジェクタ171に供給される蒸気は、熱交換器134において、吸気の熱により生じる。エジェクタ171に供給される蒸気を吸気の熱により生じさせることによって、エンジン1の駆動に伴って生じる熱を有効に利用して吸気の冷却を実現することができる。
【0048】
冷却システム100では、蒸気流路116は、排気流路112に設けられる熱交換器135と接続される。エジェクタ171に供給される蒸気は、熱交換器135において、排気の熱により生じる。エジェクタ171に供給される蒸気を排気の熱により生じさせることによって、エンジン1の駆動に伴って生じる熱を有効に利用して吸気の冷却を実現することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図3を参照して、本開示の第2の実施形態について説明する。
【0050】
図3は、本開示の第2の実施形態に係る冷却システム200の概略構成を示す模式図である。冷却システム200は、上述した冷却システム100と同様に、エンジン1の燃焼室27に送られる吸気を冷却するためのシステムである。冷却システム200では、上述した冷却システム100と比較して、気化冷却された冷媒と吸気との熱交換にノズルが用いられる点が異なる。
【0051】
図3に示されるように、冷却システム200の吸気流路111には、吸気を冷却するための冷却器として、上述した冷却システム100の熱交換器132および熱交換器133に替えて、ノズル201およびノズル202が設けられる。ノズル201は、上流側吸気流路111aに設けられる。ノズル202は、下流側吸気流路111bにおける熱交換器131より下流側に設けられる。ノズル201,202には、後述するように、気化冷却された冷媒(例えば、真水)が供給される。ノズル201,202は、供給される冷媒を吸気流路111に噴射する。ノズル201,202に供給される冷媒の温度は、熱交換器131に供給される冷媒の温度よりも低い。上流側吸気流路111aを流通する吸気は、ノズル201から噴射される気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。下流側吸気流路111bを流通する吸気は、ノズル202から噴射される気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0052】
冷却システム200では、熱交換器131に加えてノズル201,202により吸気が冷却されるので、冷却システム100と同様に、気化冷却された冷媒によって吸気を効果的に冷却することができる。エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度を効果的に増大させることができるので、熱効率が効果的に向上する。
【0053】
以下、冷却システム200のより詳細な構成について説明する。
【0054】
冷却システム100と同様に、タンク122は、冷媒流路113dを介して三方弁143と接続されている。タンク122と三方弁143との間には、三方弁143に向けて冷媒を送出する電動ポンプ151が設けられている。冷却システム100と異なり、三方弁143は、冷媒流路213aを介してノズル201と接続されている。三方弁143は、冷媒流路213bを介してノズル202と接続されている。
【0055】
タンク122内のガスは、エジェクタ171により蒸気の流れで吸引されることによって、気化冷却される。冷媒流路113dと冷媒流路213a,213bとが連通するように三方弁143を制御し、電動ポンプ151を駆動することにより、タンク122からノズル201,202に気化冷却された冷媒を供給することができる。
【0056】
冷却システム200は、冷却システム100と同様に、吸気流路111に設けられる熱交換部で熱交換される冷媒が貯留される冷媒タンクとしてタンク122を備える。冷却システム200は、蒸気流路116に設けられ、上記冷媒タンクと接続されるエジェクタとしてエジェクタ171を備える。冷却システム100と同様に、電力消費量の増大を抑制することができる。エンジン1の吸気を効果的に冷却することができる。
【0057】
特に、冷却システム200では、吸気流路111にノズル201,202が上記熱交換部として設けられる。吸気は、ノズル201,202から噴射される冷媒と熱交換する。タンク122内で気化冷却された冷媒を用いた吸気の冷却を適切に実現することができる。ノズル201,202は、例えば熱交換器132,133と比較して、安価である。タンク122内で気化冷却された冷媒を用いた吸気の冷却を低コストで実現することができる。
【0058】
<第3の実施形態>
図4を参照して、本開示の第3の実施形態について説明する。
【0059】
図4は、本開示の第3の実施形態に係る冷却システム300の概略構成を示す模式図である。冷却システム300は、上述した冷却システム100と同様に、エンジン1の燃焼室27に送られる吸気を冷却するためのシステムである。冷却システム300では、上述した冷却システム100と比較して、気化冷却された冷媒と吸気との熱交換が当該冷媒を貯留するタンクを介して行われる点が異なる。
【0060】
図4に示されるように、冷却システム300の吸気流路111には、吸気を冷却するための冷却器として、上述した冷却システム100の熱交換器132および熱交換器133に替えて、タンク301およびタンク302が設けられる。タンク301は、上流側吸気流路111aに設けられる。タンク302は、下流側吸気流路111bにおける熱交換器131より下流側に設けられる。タンク301,302には、後述するように、気化冷却される冷媒(例えば、真水)が貯留される。タンク301,302は、冷媒を貯留する機能の他に、熱交換器としての機能も有する。タンク301,302に貯留される冷媒の温度は、熱交換器131に供給される冷媒の温度よりも低い。上流側吸気流路111aを流通する吸気は、タンク301に貯留される気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。下流側吸気流路111bを流通する吸気は、タンク302に貯留される気化冷却された冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0061】
冷却システム300では、熱交換器131に加えてタンク301,302により吸気が冷却される。冷却システム100と同様に、気化冷却された冷媒によって吸気を効果的に冷却することができる。エンジン1の燃焼室27に送られる吸気の密度を効果的に増大させることができるので、熱効率を効果的に向上させることができる。
【0062】
以下、冷却システム300のより詳細な構成について説明する。
【0063】
冷却システム100と異なり、タンク121は、冷媒流路113c,313a,313bを介してタンク301,302と接続されている。具体的には、タンク121は、冷媒流路113cの一端と接続されている。冷媒流路113cの他端は、冷媒流路313aを介してタンク301と接続されている。冷媒流路313aには、開閉弁341が設けられている。開閉弁341を開くことにより、タンク121からタンク301に冷媒を供給することができる。冷媒流路113cの他端は、冷媒流路313bを介してタンク302と接続されている。冷媒流路313bには、開閉弁342が設けられている。開閉弁342を開くことにより、タンク121からタンク302に冷媒を供給することができる。
【0064】
タンク301は、ガス流路314aを介してエジェクタ371と接続されている。タンク302は、ガス流路314bを介してエジェクタ372と接続されている。エジェクタ371,372には、後述するように、蒸気が供給される。タンク301内のガスは、エジェクタ371により生じる蒸気の流れで吸引されることによって、気化冷却される。タンク302内のガスは、エジェクタ372により生じる蒸気の流れで吸引されることによって、気化冷却される。
【0065】
タンク301には、吸気が通過する通気管301aが設けられている。通気管301aの内周側を吸気が通過する。通気管301aの外周面は、タンク301内の冷媒と接触する。タンク301内の冷媒と通気管301aを通過する吸気とは、通気管301aを介して熱交換する。通気管301aは、金属等の高い熱伝導性を有する材料によって形成されることが好ましい。タンク301には、例えば、複数の通気管301aがタンク301を貫通して設けられる。なお、通気管301aの数および通気管301aのタンク301内での配置は、特に限定されない。
【0066】
蒸気流路116は、蒸気流路116a、蒸気流路116b、蒸気流路116c、蒸気流路116f、蒸気流路116g、蒸気流路116hおよび蒸気流路116iを含む。エジェクタ371の一端は、蒸気流路116fを介して接続器161と接続されている。エジェクタ371の他端は、蒸気流路116gを介して凝縮器183と接続されている。接続器161から蒸気流路116fを介して供給される蒸気は、エジェクタ371内の貫通路を通過して、凝縮器183に送られる。蒸気が通過するエジェクタ371内の貫通路には、ガス流路314aが接続されている。エジェクタ371内の蒸気の流れにより生じた負圧でタンク301内のガスが吸引される。
【0067】
エジェクタ372の一端は、蒸気流路116hを介して接続器161と接続されている。エジェクタ372の他端は、蒸気流路116iを介して凝縮器183と接続されている。接続器161から蒸気流路116hを介して供給される蒸気は、エジェクタ372内の貫通路を通過して、凝縮器183に送られる。蒸気が通過するエジェクタ372内の貫通路には、ガス流路314bが接続されている。エジェクタ372内の蒸気の流れにより生じた負圧でタンク302内のガスが吸引される。
【0068】
冷却システム300は、冷却システム100と同様に、吸気流路111に設けられる熱交換部で熱交換される冷媒が貯留される冷媒タンクとしてタンク301,302を備える。冷却システム300は、蒸気流路116に設けられ、上記冷媒タンクと接続されるエジェクタとしてエジェクタ371,372を備える。冷却システム100と同様に、電力消費量の増大を抑制することができる。エンジン1の吸気を効果的に冷却することができる。
【0069】
特に、冷却システム300では、上記冷媒タンクとしてのタンク301,302は、吸気流路111に設けられ、タンク301,302に通気管301a,302aが上記熱交換部として設けられる。吸気は、タンク301,302に貯留される冷媒と熱交換する。それにより、タンク301,302内で気化冷却された冷媒を用いた吸気の冷却を適切に実現することができる。さらに、気化冷却される冷媒が貯留されるタンクから他の冷却用の機器までの冷媒流路(例えば、冷却システム100におけるタンク122から熱交換器132,133までの冷媒流路113d,113e,113g等)を省略することができる。気化冷却された冷媒を用いた吸気の冷却を、少ないスペースかつ少ない冷媒量で実現することができる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
上記では、船舶用のクロスヘッド型のエンジン1の吸気を冷却するための冷却システム100,200,300について説明した。しかしながら、本開示に係る冷却システムは、エンジン1以外の他の内燃機関(例えば、トランクピストン型のエンジン、船舶以外の移動体に搭載されるエンジンまたはガスタービンエンジン等)の吸気を冷却するための冷却システムであってもよい。
【0072】
上記では、上流側吸気流路111aおよび下流側吸気流路111bの双方で、吸気が気化冷却された冷媒と熱交換する例を説明した。しかしながら、上流側吸気流路111aまたは下流側吸気流路111bの一方のみで、吸気が気化冷却された冷媒と熱交換してもよい。例えば、冷却システム100から熱交換器132または熱交換器133の一方が省略されてもよい。また、例えば、冷却システム200からノズル201またはノズル202の一方が省略されてもよい。また、例えば、冷却システム300からタンク301またはタンク302の一方が省略されてもよい。
【0073】
上記では、上流側吸気流路111aと下流側吸気流路111bとの間で、気化冷却された冷媒と吸気との熱交換の方法が同様である例を説明した。しかしながら、上流側吸気流路111aと下流側吸気流路111bとの間で、気化冷却された冷媒と吸気との熱交換の方法が異なっていてもよい。例えば、冷却システム100における熱交換器132が冷却システム200におけるノズル201または冷却システム300におけるタンク301に置き換えられてもよい。冷却システム100における熱交換器133が冷却システム200におけるノズル202または冷却システム300におけるタンク302に置き換えられてもよい。冷却システム200におけるノズル201が冷却システム300におけるタンク301に置き換えられてもよい。冷却システム200におけるノズル202が冷却システム300におけるタンク302に置き換えられてもよい。
【0074】
上記では、エジェクタ171,371,372に供給される蒸気を生じさせる蒸気供給源が熱交換器134,135および蒸気供給源194である例を説明した。しかしながら、蒸気供給源は、熱交換器134,135および蒸気供給源194の一部であってもよい。例えば、蒸気供給源は、熱交換器134,135および蒸気供給源194のうちのいずれか1つであってもよい。ただし、蒸気供給源で蒸気を生じさせるための熱源の温度は高いことが好ましい。
【0075】
上記で説明した冷却システム300のようにエジェクタの数が複数である場合、各エジェクタに供給される蒸気を生じさせる蒸気供給源が異なっていてもよい。例えば、冷却システム300において、熱交換器135で生じた蒸気がエジェクタ371のみに供給され、熱交換器134で生じた蒸気がエジェクタ372のみに供給されるように、水および蒸気の回路が形成されていてもよい。また、このように、複数のエジェクタ間で蒸気供給源が異なる場合、減圧の対象となるタンクとエジェクタの組み合わせは、適宜設定されてよい。冷却システム100における熱交換器132,133の各々に異なるタンクが接続される場合、各タンクと接続されるエジェクタは異なっていてもよい。冷却システム200におけるノズル201,202の各々に異なるタンクが接続される場合、各タンクと接続されるエジェクタは異なっていてもよい。
【0076】
上記で説明した冷却システム100,200,300に対して一部の構成要素を追加、削除または変更してもよい。例えば、エジェクタ171,371,372の下流側に真空ポンプを追加してもよい。エジェクタ171,371,372における蒸気の流速を上昇させることができるので、タンク122,301,302内のガスの吸引能力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、冷却システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:エンジン(内燃機関) 27:燃焼室 100,200,300:冷却システム 111:吸気流路 112:排気流路 121,123:タンク 122:タンク(冷媒タンク) 131,134,135:熱交換器 132,133:熱交換器(熱交換部) 141,142,144:開閉弁 143:三方弁 151,152:電動ポンプ 161:接続器 171,371,372:エジェクタ 181,182:気液分離器 183:凝縮器 191,192:冷媒供給源 193:水供給源 194:蒸気供給源 201,202:ノズル(熱交換部) 301,302:タンク(冷媒タンク) 301a,302a:通気管(熱交換部) 341,342:開閉弁 TC:過給機 C:コンプレッサ T:タービン
図1
図2
図3
図4