IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

特許7229466乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア
<>
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図1
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図2
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図3
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図4
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図5
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図6
  • 特許-乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】乗客コンベアのハンドレール除菌装置及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
B66B31/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021020263
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122791
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅昭
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193319(JP,A)
【文献】特開平02-231391(JP,A)
【文献】特開2012-197154(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0098342(KR,A)
【文献】実開昭50-119193(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部とを備え、
制御部は、i)ヒータを駆動するとともに、送風ファンを駆動停止する第1の駆動モード、ii)第1の駆動モードと同様にヒータを駆動するとともに、送風ファンを低風量で駆動する第2の駆動モード、iii)第1の駆動モードと同様にヒータを駆動する、第1の駆動モードよりも発熱量が低くなるようにヒータを駆動する、又は、ヒータを駆動停止する、のいずれかであるとともに、第2の駆動モードよりも風量が高くなるように送風ファンを駆動する第3の駆動モード、を選択的に切り替える機能を有する
客コンベアのハンドレール除菌装置。
【請求項2】
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータであって、一方向に長い長尺な直方体状であり、長手方向がハンドレールの幅方向と一致し、幅方向がハンドレールの長手方向と一致するように配置されるヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ハンドレールの幅方向における幅がヒータの長さよりも小さくかつハンドレールの長手方向における幅がヒータの幅よりも大きい開口を有するベースとを備え、
ヒータは、開口を横断するようにベースの内面に取り付けられ、
送風ファンは、開口よりも大きな外形状を有し、開口の外周部に配置される複数のスペーサを介して開口と対向するようにベースの外面に取り付けられる
乗客コンベアのハンドレール除菌装置。
【請求項3】
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部と、
開口を有するベースであって、ハンドレールの中央部の表面と所定の間隔を有して対向するベース本体と、ベース本体の両側縁から立ち上がり、ハンドレールの側部の表面と所定の間隔を有して対向する側壁とを備えることにより、ハンドレールを取り囲む形状を有するとともに、ハンドレールの長手方向において所定の幅を有するベースとを備え、
ヒータは、開口を横断するようにベースの内面に取り付けられ、
送風ファンは、開口と対向するようにベースの外面に取り付けられる
客コンベアのハンドレール除菌装置。
【請求項4】
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のヒータ式のハンドレール除菌装置とを備える
乗客コンベア。
【請求項5】
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
遮蔽部の内部に設置されるヒータ式のハンドレール除菌装置であって、ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部とを備えるハンドレール除菌装置とを備え、
乗客がいないために搬送部が運転停止又は低速運転となるとき、i)ヒータは、通電量を減らして発熱量が低くなるように駆動されること又は駆動停止されること、ii)送風ファンは、風量が高くなるように駆動されること、の両方が実行される
客コンベア。
【請求項6】
遮蔽部の内部に紫外線照射式のハンドレール除菌装置を追加的に備える
請求項4又は請求項5に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのハンドレール除菌装置及びハンドレール除菌装置を備える乗客コンベアに関する。なお、除菌とは、細菌の除菌ないし殺菌、ウイルスの不活性化を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアのハンドレールは、移動手摺とも呼ばれ、利用者が手で掴む部分である。利用者は不特定多数であり、ハンドレールの表面には種々の細菌やウイルスが付着する。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。対策の一つとして、ハンドレール除菌装置が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-193319号公報
【文献】特開2019-052021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のハンドレール除菌装置は、紫外線源を備え、ハンドレールの表面に紫外線を照射して、ハンドレールの表面に付着した種々の細菌やウイルスを除菌する紫外線照射式である。紫外線照射式のハンドレール除菌装置は、実際上の効果が認められ、実用化されている。
【0005】
本発明は、多様性の観点から、紫外線照射式とは異なる新規斬新な方式のハンドレール除菌装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部とを備え、
制御部は、i)ヒータを駆動するとともに、送風ファンを駆動停止する第1の駆動モード、ii)第1の駆動モードと同様にヒータを駆動するとともに、送風ファンを低風量で駆動する第2の駆動モード、iii)第1の駆動モードと同様にヒータを駆動する、第1の駆動モードよりも発熱量が低くなるようにヒータを駆動する、又は、ヒータを駆動停止する、のいずれかであるとともに、第2の駆動モードよりも風量が高くなるように送風ファンを駆動する第3の駆動モード、を選択的に切り替える機能を有する
乗客コンベアのハンドレール除菌装置である。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置は、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータであって、一方向に長い長尺な直方体状であり、長手方向がハンドレールの幅方向と一致し、幅方向がハンドレールの長手方向と一致するように配置されるヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ハンドレールの幅方向における幅がヒータの長さよりも小さくかつハンドレールの長手方向における幅がヒータの幅よりも大きい開口を有するベースとを備え、
ヒータは、開口を横断するようにベースの内面に取り付けられ、
送風ファンは、開口よりも大きな外形状を有し、開口の外周部に配置される複数のスペーサを介して開口と対向するようにベースの外面に取り付けられる
乗客コンベアのハンドレール除菌装置である。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置は
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設置される乗客コンベアのハンドレール除菌装置であって、
ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、
ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、
ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部と、
開口を有するベースであって、ハンドレールの中央部の表面と所定の間隔を有して対向するベース本体と、ベース本体の両側縁から立ち上がり、ハンドレールの側部の表面と所定の間隔を有して対向する側壁とを備えることにより、ハンドレールを取り囲む形状を有するとともに、ハンドレールの長手方向において所定の幅を有するベースとを備え、
ヒータは、開口を横断するようにベースの内面に取り付けられ、
送風ファンは、開口と対向するようにベースの外面に取り付けられる
乗客コンベアのハンドレール除菌装置である。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアは、
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
上記ヒータ式のハンドレール除菌装置とを備える
乗客コンベアである。
【0012】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
遮蔽部の内部に紫外線照射式のハンドレール除菌装置を追加的に備える
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベア
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
遮蔽部の内部に設置されるヒータ式のハンドレール除菌装置であって、ハンドレールの表面と所定の間隔を有して対向配置され、通電により発熱するヒータと、ヒータに対してハンドレールとは反対側から送風を行う送風ファンと、ヒータ及び送風ファンをそれぞれ個別に駆動制御可能な制御部とを備えるハンドレール除菌装置とを備え、
乗客がいないために搬送部が運転停止又は低速運転となるとき、i)ヒータは、通電量を減らして発熱量が低くなるように駆動されること又は駆動停止されること、ii)送風ファンは、風量が高くなるように駆動されること、の両方が実行される
乗客コンベアである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乗客コンベアにおいて、紫外線照射式とは異なる新規斬新な方式で、除菌効果に優れるハンドレール除菌装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエスカレータの概略断面側面図である。
図2図2は、図1のA-A線における遮蔽部の断面正面図である。
図3図3(a)は、図2のC部におけるヒータ式ハンドレール除菌装置の一部断面正面図である。図3(b)は、図2のD-D線におけるヒータ式ハンドレール除菌装置の一部断面側面図である。
図4図4は、図1のB-B線における遮蔽部の断面正面図である。
図5図5(a)は、図4のE部における紫外線照射式ハンドレール除菌装置の正面図である。図5(b)は、図4のF-F線における紫外線照射式ハンドレール除菌装置の側面図である。
図6図6(a)ないし(c)は、ヒータ式ハンドレール除菌装置の駆動方法の説明図である。
図7図7(a)は、他実施形態に係るヒータ式ハンドレール除菌装置の一部断面正面図である。図7(b)は、ヒータ式ハンドレール除菌装置の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態として、乗客コンベアの一つであり、ヒータ式及び紫外線照射式のハンドレール除菌装置を備えるエスカレータについて、図1ないし図6を参酌して説明する。
【0017】
図1に示すように、エスカレータ1は、搬送部2を備える。搬送部2は、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。搬送部2は、無端搬送体20と、ハンドレール22と、欄干パネル23とを備える。無端搬送体20は、複数の踏段(ステップ)21,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール22は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体20と連動して循環駆動される。欄干パネル23は、下辺部がトラス3に支持され、ハンドレール22を循環移動可能に支持する。ハンドレール22及び欄干パネル23は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0018】
ハンドレール22の下辺部(復路部分)及び欄干パネル23の下辺部は、遮蔽部4により遮蔽される。遮蔽部4は、トラス3に支持される。図1及び図2に示すように、遮蔽部4は、デッキカバー40と、スカートガード41と、外装板42と、インレットガード43とで構成される。デッキカバー40は、上面側に配置され、内デッキカバー40Aと、外デッキカバー40Bとを備える。内デッキカバー40Aは、欄干パネル23及びスカートガード41の上縁間の開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。外デッキカバー40Bは、欄干パネル23及び外装板42の上縁間の開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。スカートガード41は、通路に接する側に配置され、遮蔽部4の内面を構成する。外装板42は、スカートガード41と反対側に配置され、遮蔽部4の外面を構成する。インレットガード43は、長手方向の両端部(ハンドレール22の下辺部(復路部分)が出入りする部分)を覆うように配置される。遮蔽部4は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0019】
図2及び図3に示すように、エスカレータ1は、ヒータ式のハンドレール除菌装置5を備える。ハンドレール除菌装置5は、遮蔽部4の内部においてハンドレール22の下辺部(復路部分)に対して設けられる。ハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の表面を加熱して、ハンドレール22の表面に付着した種々の細菌やウイルスを除菌する。
【0020】
ハンドレール除菌装置5は、ベース50と、ヒータ51と、送風ファン52とを備える。ベース50は、板状であり、ハンドレール22の表面と所定の間隔を有して対向配置される。ヒータ51は、ベース50の内面、すなわち、ハンドレール22の表面との対向面に取り付けられる。送風ファン52は、ベース50の外面、すなわち、ハンドレール22の表面との対向面の反対面に取り付けられる。
【0021】
ベース50は、ベース本体50aと、左右の側壁50b,50bとを備える。ベース本体50aは、板状であり、ハンドレール22の中央部22aの表面と所定の間隔を有して対向する。側壁50bは、板状であり、ベース本体50aの側縁から立ち上がり、ハンドレール22の側部22bの表面と所定の間隔を有して対向する。これにより、ベース50は、ハンドレール22を取り囲む形状を有する。なお、ハンドレール22の中央部22aは、平坦面であり、左右の側部22b,22bは、曲面である。本実施形態においては、ベース50は、1枚の矩形状の金属板を板金加工(曲げ加工)することにより、ベース本体50a及び左右の側壁50b,50bが一体的に形成される。
【0022】
ベース50は、ハンドレール除菌装置5をトラス3又はトラス3に取り付けられるフレーム等に取り付けるための取付部材でもある。すなわち、ハンドレール除菌装置5は、ベース50を介してトラス3又はトラス3に取り付けられるフレーム等に取り付け、支持される。
【0023】
なお、ハンドレール22の下辺部(復路部分)は、ハンドレール22の内部に挿入されるハンドレールガイド31により支持される。ハンドレールガイド31は、取付部材30を介してトラス3又はトラス3に取り付けられるフレーム等に取り付けられ、支持される。他方、ハンドレール除菌装置5は、ベース50の側壁50bがたとえば締結部材を用いて取付部材30に取り付けられることにより、ベース50を介して取付部材30に取り付けられ、支持される。このため、ハンドレール22及びハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の長手方向と直交する方向(幅方向や上下方向)において、相対的に位置決めされる。これにより、ハンドレール22の表面とヒータ51との距離は、安定的に維持される。この点で、ハンドレール除菌装置5は、ヒータ51及びハンドレール22の表面の相対位置関係を定める位置決め手段として、ハンドレールガイド31を備える。
【0024】
ハンドレール除菌装置5は、ヒータ51とハンドレール22の表面との間に所定の間隔が形成されるように配置される。これにより、ヒータ51とハンドレール22の表面との間の空間に高温雰囲気が形成され、ハンドレール22の表面の加熱対象領域全域が十分な熱量で加熱される。
【0025】
ヒータ51は、通電により発熱する抵抗器である。ヒータ51は、一方向に長い長尺な直方体状であり、長手方向がハンドレール22の幅方向と一致し、幅方向がハンドレール22の長手方向と一致するように、ベース本体50aの内面、すなわち、ハンドレール22の中央部22aの表面との対向面に配置される。ヒータ51は、ベース50の左右の側壁50b,50b間の間隔よりも短くかつハンドレール22の幅に対応した長さを有する。本実施形態においては、ヒータ51は、長さが約150mmで幅が約40mmの大電力形セメント抵抗器が用いられる。
【0026】
ヒータ51は、ヒータ本体51aと、放熱フィン51bとを備える。ヒータ本体51aは、抵抗を内蔵して通電により発熱する部分である。放熱フィン51bは、ヒータ本体51aで発熱した熱を放出する部分である。放熱フィン51bは、ヒータ51の長手方向に沿ったフィンがヒータ51の幅方向に間隔を有して複数並列するフィン構造である。ヒータ51は、ヒータ本体51aがベース50のベース本体50aに接し、放熱フィン51bがハンドレール22の表面と対向するように、ベース本体50aの内面に配置される。
【0027】
ヒータ51とハンドレール22の表面との間の空間に形成される高温雰囲気を有効に保持する(閉じ込める)ため、ハンドレール22の長手方向におけるベース50の幅は、ヒータ51の幅の120%以上、より好ましくは、130%以上の大きさを有する。
【0028】
ベース本体50aは、内面及び外面を貫通する開口50cを備える。ハンドレール22の幅方向における開口50cの幅は、ヒータ51の長さよりも小さい。ハンドレール22の長手方向における開口50cの幅は、ヒータ51の幅よりも大きい。ヒータ51は、開口50cを横断するように配置される。より詳しくは、ヒータ51は、中心部が開口50cの中心部と一致するように配置される。本実施形態においては、開口50cは、矩形状である。
【0029】
送風ファン52は、開口50cよりも大きな外形状を有する。送風ファン52は、吹出口が開口50cと対向するように、ベース本体50aの外面、すなわち、ハンドレール22の中央部22aの表面との対向面の反対面に配置される。より詳しくは、送風ファン52は、開口50cの外周部に配置される複数のスペーサ53,…を介してベース本体50aの外面に配置される。本実施形態においては、送風ファン52は、直方体状のケーシング内にファンが収められ、一方の平面が吸込面となり、反対側の平面が吹出面となる軸流ファンが用いられる。
【0030】
図4及び図5に示すように、エスカレータ1は、紫外線照射式のハンドレール除菌装置6を備える。ハンドレール除菌装置6は、遮蔽部4の内部においてハンドレール22の下辺部(復路部分)に対して設けられる。ハンドレール除菌装置6は、ハンドレール22の表面に紫外線を照射して、ハンドレール22の表面に付着した種々の細菌やウイルスを除菌する。
【0031】
ハンドレール除菌装置6は、ベース60と、紫外線源61とを備える。ベース60は、板状であり、ハンドレール22の下方にハンドレール22の中央部22aと所定の間隔を有して対向配置される。紫外線源61は、ベース60の内面に実装される。本実施形態においては、紫外線源61は、ピーク波長が100nm以上280nm以下の範囲内の深紫外光を照射する紫外線LED(UV-LED)である。
【0032】
なお、ハンドレール22の下辺部(復路部分)は、ハンドレール22の内部に挿入されるハンドレールガイド31により支持される。ハンドレールガイド31は、取付部材30を介してトラス3又はトラス3に取り付けられるフレーム等に取り付けられ、支持される。他方、ハンドレール除菌装置6は、取付部材62を介して取付部材30に取り付けられ、支持される。このため、ハンドレール22及びハンドレール除菌装置6は、ハンドレール22の長手方向と直交する方向(幅方向や上下方向)において、相対的に位置決めされる。これにより、ハンドレール22の表面と紫外線源61との距離は、安定的に維持される。この点で、ハンドレール除菌装置6は、紫外線源61及びハンドレール22の表面の相対位置関係を定める位置決め手段として、ハンドレールガイド31を備える。
【0033】
ハンドレール除菌装置6は、紫外線出射面とハンドレール22の表面との間に所定の間隔が形成されるように配置される。これにより、紫外線の拡散、反射及び散乱が有効に作用し、ハンドレール22の表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線が照射される。
【0034】
図1に示すように、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は、搬送部2の傾斜領域の両端部に2台設置される。紫外線照射式のハンドレール除菌装置6は、搬送部2の傾斜領域の中央部に1台設置される。これにより、循環移動するハンドレール22の各箇所は、1台目のハンドレール除菌装置5、ハンドレール除菌装置6、2台目のハンドレール除菌装置5を順次通過する。
【0035】
エスカレータ1は、エスカレータ1の各部に対する制御を行い、エスカレータ1の円滑な運行を制御する制御部を備える。制御部は、ハンドレール除菌装置5,6の駆動制御も行う。制御部は、制御盤の形態で設けられ、トラス3内に配置される。
【0036】
本実施形態に係るエスカレータ1は、以上の構成からなる。次に、ハンドレール除菌装置5の駆動方法について説明する。
【0037】
ハンドレール除菌装置5の駆動方法は、大きく分けると、3つある。第1の駆動方法は、図6(a)に示すように、ヒータ51のみを駆動する方法である。第2の駆動方法は、図6(b)に示すように、ヒータ51及び送風ファン52の両方を駆動する方法であって、送風ファン52を弱運転で駆動する方法である。第3の駆動方法は、図6(c)に示すように、ヒータ51及び送風ファン52の両方を駆動する方法であって、送風ファン52を強運転で駆動する方法である。
【0038】
第1の駆動方法において、ヒータ51は、所定の電流が通電され、発熱温度が100℃以上となるように駆動される。発熱温度は、通電量を変えることによって、適宜の温度に設定することができる。これにより、ヒータ51とハンドレール22の表面との間の空間に高温雰囲気が形成され、ハンドレール22の少なくとも中央部22aの表面が十分な熱量で加熱される。なお、本実施形態においては、120Wの大電力形セメント抵抗器がヒータ51に用いられ、定格電力の約30%の通電により発熱温度が120℃程度に設定される。搬送部2の定格速度は約30m/minであり、ヒータ51の幅は約40mmであるところ、循環移動するハンドレール22の各箇所は、約80msec間加熱される。この加熱時間は瞬間的であり、ハンドレール22の表面が熱損傷を受けることはない。
【0039】
第2の駆動方法において、ヒータ51は、第1の駆動方法と同様に駆動され、これに加え、送風ファン52は、低風量で駆動される。送風ファン52は、ヒータ51に対してハンドレール22とは反対側から送風を行う。このため、送風ファン52が駆動すると、送風がベース50の開口50cを介してベース50の内側に入り込む。ヒータ51とハンドレール22の表面との間の高温雰囲気は、ベース50の内側に閉じ込められているが、ベース50は、ハンドレール22を取り囲むように配置される。したがって、送風がベース50の内側に送り込まれると、高温雰囲気がハンドレール22の側部22bの表面とベース50の側壁50bとの間の空間にまで拡がり、ハンドレール22の側部22bの表面も十分な熱量で加熱される。第2の駆動方法において、送風ファン52は、高温雰囲気の拡張手段として機能する。
【0040】
第3の駆動方法において、ヒータ51は、第1の駆動方法と同様に駆動され、あるいは、第1の駆動方法よりも通電量を減らして発熱量が低くなるように駆動され、これに加え、送風ファン52は、第2の駆動方法よりも風量が高くなるように駆動される。風量が高くなることで、ヒータ51が冷却され、高温雰囲気の温度が下がる。第3の駆動方法において、送風ファン52は、ヒータ51及び高温雰囲気の冷却手段として機能する。
【0041】
第1の駆動方法及び第2の駆動方法は、エスカレータ1の搬送部2が通常運転時に用いられる。第3の駆動方法は、乗客がいないために搬送部2が運転停止又は低速運転(たとえば搬送部2の定格速度の1/3の速度)となるときに用いられる。あるいは、搬送部2が運転停止又は低速運転となるときは、ハンドレール除菌装置5は、通電が停止されて、ヒータ51、送風ファン52ともに駆動が停止されるようにしてもよい。なお、搬送部2が運転停止又は低速運転となるとき、ハンドレール除菌装置6は、搬送部2の通常運転時よりも紫外線照射量が下がるように駆動され、あるいは、紫外線を照射しないように駆動される。
【0042】
また、2台のハンドレール除菌装置5,5は、両方同時に稼働するようにしてもよい。あるいは、いずれか一方のみが稼働するようにしてもよい。後者の場合、乗り口側のハンドレール除菌装置5が稼働するようにしてもよい。この場合、ハンドレール22の下辺部(復路部分)の移動方向において、紫外線照射式のハンドレール除菌装置6は上流側、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は下流側、の配置となる。あるいは、降り口側のハンドレール除菌装置5が稼働するようにしてもよい。この場合、ハンドレール22の下辺部(復路部分)の移動方向において、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は上流側、紫外線照射式のハンドレール除菌装置6は下流側、の配置となる。
【0043】
以上のとおり、本実施形態によれば、ハンドレール22は、ヒータ式及び紫外線照射式という方式が異なる二種類のハンドレール除菌装置5,6を備える。このため、本実施形態によれば、ハンドレール22の表面に付着した種々の細菌やウイルスを効果的に除菌することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
上記実施形態においては、ヒータ式及び紫外線照射式という方式が異なる二種類のハンドレール除菌装置5,6を備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、紫外線照射式のハンドレール除菌装置は必須ではない。
【0046】
また、上記実施形態においては、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は、2台設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ヒータ式のハンドレール除菌装置は、1台であってもよい。この場合、ヒータ式のハンドレール除菌装置は、たとえば、搬送部の傾斜領域の中央部に設置することができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は、ヒータ51及び送風ファン52を備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、送風ファンは必須ではない。送風ファンを備える場合であっても、送付ファンは、軸流ファンに限定されず、各種のファンを採用することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、ヒータ式のハンドレール除菌装置5は、ベース50を備え、ベース50は、ヒータ式のハンドレール除菌装置5を取り付けるための取付部材としての機能と、ヒータ51及び送風ファン52を取り付けるためのベースとしての機能とを備える。しかし、本発明は、このようなベースを備えることに限定されるものではない。たとえば、取付部材及びベースは、それぞれ別部材で構成されるようにしてもよい。また、ベースの形状も、断面形状がコ字状ないしC字状といった、ハンドレールを取り囲む形状に限定されない。ベースは、たとえば平板状であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、ヒータ51は、ハンドレール22の中央部22aの表面と対向するように配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図7に示すように、ハンドレール22の側部22bの側方にも別のヒータ54が配置されるようにしてもよい。一例として、ヒータ54は、ヒータ51よりも小電力タイプで、放熱フィンを備えず、ヒータ51よりも小型である。また、一例として、ヒータ54は、長手方向がハンドレール22の長手方向と一致し、幅方向がハンドレール22の厚み方向と一致するように、ベース50の側壁50bの内面、すなわち、ハンドレール22の側部22bの表面との対向面に配置される。
【0050】
また、上記実施形態においては、ヒータ51は、放熱フィン51bを備える大電力形セメント抵抗器である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ヒータは、放熱フィンの有無を含め、各種の抵抗器型のヒータを採用することができる。
【0051】
また、「板状」、「矩形状」、「直方体状」、「端部」、「中央部」、「側部」、「直交」、「一致」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【0052】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1…エスカレータ、2…搬送部、20…無端搬送体、21…踏段、22…ハンドレール、22a…中央部、22b…側部、23…欄干パネル、3…トラス、30…取付部材、31…ハンドレールガイド、4…遮蔽部、40…デッキカバー、40A…内デッキカバー、40B…外デッキカバー、41…スカートガード、42…外装板、43…インレットガード、5…ハンドレール除菌装置、50…ベース、50a…ベース本体、50b…側壁、50c…開口、51…ヒータ、51a…ヒータ本体、51b…放熱フィン、52…送風ファン、53…スペーサ、54…ヒータ、6…ハンドレール除菌装置、60…ベース、61…紫外線LED(紫外線源)、62…取付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7