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  • 特許-窓用断熱パネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】窓用断熱パネル
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20230220BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
E06B5/00 C
E06B9/24 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018244804
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105778
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591209361
【氏名又は名称】DAISEN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細澤 孝晃
(72)【発明者】
【氏名】西尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】中平 智博
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122461(JP,A)
【文献】特開2014-237982(JP,A)
【文献】特開2014-122481(JP,A)
【文献】特開2002-147133(JP,A)
【文献】特開2009-144376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱基材層に多数の貫通孔を形成した窓用断熱パネルであって、
貫通孔の開口率が30%以上であり、
断熱基材層の厚みDが2mm以上であり、
貫通孔の高さHは上記厚みDの2倍以下であり、
貫通孔は左右、または左右と上側の側壁を室内側に向けて拡げた横長形状であることを特徴とする窓用断熱パネル。
【請求項2】
貫通孔の高さHを断熱基材層の厚みDの1.2~2倍としたことを特徴とする請求項1に記載の窓用断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や校舎などの建築物のガラス窓の内側に貼り付けて使用される窓用断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏季に建築物の南側のガラス窓から室内に入射する太陽光線は室内温度を高め、特に冷房装置が設置されていない学校の教室などでは、子供達の学習意欲を低下させたり、授業中に熱中症を引き起こす可能性がある。また冷房装置が設置されている部屋であっても、冷房装置の負担が増加しエネルギー効率が悪化することとなる。
【0003】
このため従来から、建築物の南側の窓にはカーテンやブラインドを設置して太陽光線を遮断している。しかし、遮光性カーテンを用いると室内が暗くなるうえ、外の様子が全く見えなくなる。半透光性のカーテンや樹脂製のブラインドを用いるとある程度は外の様子は見えるが、太陽光線の遮断効率が悪いという問題がある。このように、太陽光線の遮断性を高めると外部の視認性が悪くなり、室内から外の様子が見えなくなる。
【0004】
また、冬季においては窓に結露が生じるという問題がある。結露は窓の内面温度が室内空気の露点以下となるため発生するものであり、厚地のカーテンで窓と室内との間を仕切り、湿度を含む室内空気が窓に接触することを防止すれば、ある程度は抑制することができる。しかしブラインドではその隙間から室内空気が窓に接触することを防止できないため、特に寒冷地においては大量の結露に悩まされることとなる。
【0005】
なお、ガラス窓の内側に貼り付けて遮光・断滅効果や補強効果を付与するためのシートも広く用いられているが、上記した問題点を十分に解消するものではない。
【0006】
そこでこれらの問題点を一掃するためのアイデアが、特許文献1、2に示されている。これらの特許文献1、2には、厚みが2mm以上の断熱基材層に開口率が45%以上となるように多数の貫通孔を形成し、貫通孔の直径をその奥行(断熱基材層の厚み)の2倍以下とすることにより、太陽光線が室内に入射することを防止しつつ、多数の貫通孔を通じて外の様子を見ることができるようにした窓用断熱パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5266409号公報
【文献】特許第5720855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1、2に示された窓用断熱パネルにおいては、貫通孔の形状は円形である。このため貫通孔の開口面積を大きくして視認性を高めるためには、直径を大きくしなければならないが、貫通孔の直径は断熱基材層の厚みの2倍以下と規定されているから、直径を大きくするためには断熱基材層の厚みを増加させることとなる。しかし断熱基材層の厚みを増加させると次第に室内側への突出量が増加して見苦しくなるうえ、製造コストが増加するという問題が生じる。従って十分に視認性を高めることはできないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1、2の窓用断熱パネルにおいては、貫通孔は断熱基材層をパンチングして形成されているため、断熱基材層の厚み方向に同一径である。従って貫通孔の正面方向の視認性は良好であるとしても、斜め方向の視線は貫通孔の左右、または左右と上側の側壁に邪魔されるため、斜め方向からの視認性が悪いという問題があった。
【0010】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、断熱基材層の厚みを必要以上に増加させることなく、遮光性と視認性をともに向上させた窓用断熱パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、断熱基材層に多数の貫通孔を形成した窓用断熱パネルであって、貫通孔の開口率が30%以上であり、断熱基材層の厚みDが2mm以上であり、貫通孔の高さHは上記厚みDの2倍以下であり、貫通孔は左右、または左右と上側の側壁を室内側に向けて拡げた横長形状であることを特徴とするものである。
【0012】
なお、貫通孔の高さHを断熱基材層の厚みDの1.2~2倍とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
【0014】
本願発明によれば、断熱基材層に形成された貫通孔の高さHを断熱基材層の厚みDの2倍以下として太陽光線が室内に入射することを防止しながらも、貫通孔を左右、または左右と上側の側壁を室内側に向けて拡げた横長形状としたので、斜め方向からの視線が貫通孔の左右、または左右と上側の側壁に邪魔されにくくなる。このため、斜め方向からの視認性を従来よりも大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1参考形態を示す正面図及びA-A,B-B断面図である。
図2】貫通孔の部分の拡大縦断面図である。
図3本発明の実施形態を示す正面図及びA-A,B-B断面図である。
図4本発明の実施形態の作用効果を示す水平断面図である。
図5】使用状態の説明図である。
図6】正面からの視認性を示す説明図である。
図7】斜め方向からの視認性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
参考形態
以下に本発明の参考形態と好ましい実施形態を説明する。図1は本発明の参考形態を示す正面図及びA-A,B-B断面図であり、10は断熱基材層、20は断熱基材層10に形成された多数の貫通孔である。
【0017】
断熱基材層10は不透明な樹脂製であり、断熱性を向上させるとともに軽量化を図るため、発泡樹脂製とすることが好ましく、この参考形態では発泡ウレタン樹脂製である。断熱基材層10の厚みDは2mm以上とする。厚みDが2mm未満であると断熱性が低下し、また以下に説明する太陽光線を遮光する効果が不十分となるからである。厚みDの上限は20mm程度である。厚みDを大きくすると断熱性は向上するが、コスト高となるうえ、窓ガラスに貼り付けた時の室内側への突出量が増加し、見苦しくなるからである。好ましい範囲は3~10mm、より好ましくは4~6mmである。なお、断熱基材層10の全体のサイズは任意であり、窓ガラスに貼り付けやすいサイズとすればよい。
【0018】
貫通孔20の高さHは断熱基材層10の厚みDの2倍以下とする。図2は貫通孔20の部分の縦断面図であり、Lは貫通孔20の外側面の上端と、内側面の下端とを通る直線であり、その水平面に対する角度をαとする。図2から分かるように、この角度αと、断熱基材層10の厚みDと、貫通孔20の高さHとの間には、H=Dtanαの関係が成立する。そして太陽光の入射角度が図2のαよりも大きい角度で入射すると、太陽光は遮断されてしまい、室内側に到達しなくなる。
【0019】
この窓用断熱パネルが使用される場所の緯度をXとすると、夏至のときの太陽の南中角度は(90-X+23.4)°であり、春分・秋分のときは(90-X)°である。例えば出願人の所在地である岐阜の緯度はほぼ35°であるから、夏至のときの太陽の南中角度は78.4°であり、春分・秋分のときは55°である。教室内の高温が問題となるときの太陽の南中角度を60°と仮定すると、tan60°=1.73であるから貫通孔20の高さHを断熱基材層10の厚みDの1.73倍としておけば、太陽の高さが60°よりも高くなった状態では太陽光が室内に入射しなくなり、夏季の日中における太陽光を遮断できることとなる。
【0020】
また札幌の緯度は約43°であるから、夏至のときの太陽の南中角度は70.4°であり、春分・秋分のときは47°である。仮に教室内の高温が問題となるときの太陽の南中角度を50°と仮定すると、tan60°=209であるから貫通孔20の高さHを断熱基材層10の厚みDの1.2倍としておけば、太陽の高さが50°よりも高くなった状態では太陽光が室内に入射しなくなり、夏季の日中における太陽光を遮断できることとなる。このように緯度によって好ましいH/Dの値は異なるが、高緯度地域では気温が下がり、低緯度では太陽の南中角度はより大きくなるので、貫通孔20の高さHを断熱基材層10の厚みDの1.2~2倍としておけば、実用上は問題がないと考えられる。
【0021】
参考形態の窓用断熱パネルでは、貫通孔20が横長形状となっている。すなわち、貫通孔20の横幅Wを貫通孔20の高さHの2~10倍としてある。このように貫通孔20の横幅Wを大きくすると横長のスリットが形成された状態となり、視認性を向上させることができる。横長のスリットは、日本において古くから用いられてきた葦簀やすだれと同様、外の様子が見易く、従来よりも視認性を大幅に高めることができる。人の目が横方向に並んでいることも、横長のスリットの方が物体の形状を認識し易い原因ではないかと考えられる。
【0022】
しかも、貫通孔20の高さHは前記したように太陽光の遮断機能に影響するが、貫通孔20の横幅Wを変化させても太陽光の遮断機能に影響は及ばない。このため視認性を高めるためには横幅Wを大きくすればよいが、横幅Wが貫通孔20の高さHの10倍を超えると、強度が低下して変形し易くなったり、成形し難くなるなどの別の問題が生ずる。また横幅Wが貫通孔20の高さHの2倍未満であると従来技術に近づき、視認性を高める効果が不十分となる。よって本発明では横幅Wを貫通孔20の高さHの2~10倍としたが、より好ましくは2~5倍程度である。図1参考形態では約3倍となっている。
【0023】
以上に説明した本発明の窓用断熱パネルは、従来品と同様に太陽光の室内への入射を防止する効果を維持しつつ、視認性を向上させることができる。このため特許文献に示された従来品では開口率を45%以上と規定しているが、本発明では開口率を30%にまで低下させても、校庭等の外部の様子を教室内から視認することができる。なお図1に示されたものの開口率は約50%である。ウレタン樹脂ビーズを用いて発泡樹脂成形を行う場合には、金型を用いて成形可能な開口率の上限は60%程度であるから、開口率の好ましい範囲は30~60%である。
【0024】
本発明の実施形態)
図3以下に本発明の実施形態を示す。上記の参考形態では、貫通孔20はパンチで打ち抜かれたように同一径であり、観察者の正面にある窓用断熱パネルについては、外部の視認性に優れる。しかし貫通孔20の軸線と観察者の視線がなす角度が大きくなると、視線の一部が貫通孔20の左右の側壁に遮られ、各貫通孔20の視野が狭くなる。このため、観察者から斜め方向にある窓用断熱パネルからは、外部が観察しにくくなる。
【0025】
そこで本発明の実施形態では、上記の参考形態の基本構成を維持したまま、図3図4に示すように貫通孔20の左右の側壁を室内側に向けて拡げた。これらの図に示された実施形態では、参考形態の貫通孔20の横長形状を維持したままで、貫通孔20の左右の側壁を室内側に拡げたが、貫通孔20が円形であってもその左右の側壁を室内側に向けて拡げれば、室内側から見ると横長形状となる。
【0026】
図4は貫通孔20の左右の側壁を45°ずつ斜めに面取りした様子を示す水平断面図である。この場合には、左右の側壁がなす角度θは90°となる。貫通孔20の横幅Wを10mmとし、厚みDを4mmとしたとき、従来のように左右の側壁が平行であると、図4に示すように外部を視認できる最大角度は136°である。しかし45°ずつ斜めに面取りした場合には、外部を視認できる最大角度は148°にまで拡大する。窓から1m離れた距離では、外部を視認可能な範囲が5mから7mにまで拡がる。
【0027】
本発明の窓用断熱パネルは、この図5のように教室等の窓ガラスに貼り付けて使用されるものであり、外の様子を例えば図6のように視認することができる。特に実施形態のように貫通孔20の左右の側壁を斜めに面取りすれば、図7に示すように斜め方向からの視認性も高まることとなる。
【0028】
なお、左右の側壁を室内側に拡げる効果は貫通孔20の横幅Wが長くなると相対的に低減し、横幅Wが貫通孔20の高さHと等しい場合、すなわち正方形又は円形の場合に、左右の側壁を室内側に拡げる効果は最大となる。図3の実施形態は貫通孔20の横幅Wを高さHの3倍とし、かつ左右の側壁を室内側に拡げたものである。
【0029】
貫通孔20の左右の側壁のみならず、上下の側壁を斜めに成形することも考えられる。しかし上側の側壁は斜めにしても差し支えないが、下側の側壁に角度を付けると太陽光の入射可能な角度が変わってしまうので、好ましくない。このように貫通孔20の側壁に勾配を付けることは、貫通孔20をパンチで打ち抜く方法で形成するのではなく、貫通孔20付きの断熱基材層10を金型を用いて成形する場合には、成形性が向上する利点がある。
【0030】
(結露防止効果)
上記したように、本発明の窓用断熱パネルは夏季における室内への太陽光の入射を防止する効果を有するものであるが、冬季における結露防止効果もある。特に断熱基材層10を断熱性に優れた発泡ウレタン樹脂製、または熱可塑性樹脂粒子製とすれば、優れた結露防止効果が得られる。
【0031】
前記したように、結露は窓の内面温度が室内空気の露点以下となるため発生するものであり、ブラインドではその隙間から室内空気が窓に接触することを防止できないという問題があった。本発明の窓用断熱パネルは多数の貫通孔20を備えているため、貫通孔20を通って室内空気が窓に接触する可能性が想定される。
【0032】
しかし本発明者の観測によれば、貫通孔20の外側の端面は窓ガラスに密着されているため、貫通孔20の内部は閉塞された小空間となり、室内の空気が流入しにくい構造となっている。このため貫通孔20の内部の空気が貫通孔内で対流することはあっても、湿度を含む室内空気が貫通孔20を通じて窓に接触することはほとんどなく、冬季における窓ガラスの結露を効果的に防止することができる。
【0033】
断熱基材層10の厚さDを厚くすれば結露防止効果が向上することはいうまでもないが、それに連れて製造コストが増加することとなる。このため断熱基材層10の厚さDを必要以上に厚くすることは避けるべきであり、前記したように2~10mmとすれば、十分な結露防止効果を得ることができる。
【0034】
以上に説明したように、本発明の窓用断熱パネルは、断熱基材層10の厚みを必要以上に増加させることなく、遮光性と視認性を向上させることができ、併せて冬季における結露防止効果も得ることができる。
【0035】
以上の説明は校舎の窓ガラスに使用することを中心としたが、本発明の窓用断熱パネルは、一般家屋やビルなどの窓ガラスにも同様に使用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10 断熱基材層
20 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7