IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エバーウィングスの特許一覧

<>
  • 特許-塗装材及び塗装材の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】塗装材及び塗装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230220BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230220BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230220BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/61
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019090383
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186291
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】599105470
【氏名又は名称】株式会社エバーウィングス
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大垣 恵一
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121497(JP,A)
【文献】特開2008-266547(JP,A)
【文献】特開2001-032403(JP,A)
【文献】特開2002-146293(JP,A)
【文献】特開平05-247378(JP,A)
【文献】特開2013-147542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/02
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住空間を形成する室内で使用される塗装材であって、少なくとも、全体重量に対して、
バインダーとしてのエマルジョン系樹脂25~35重量%と、
木炭粉末25~30重量%と、
ブラック珪岩粉末5~6重量%と、
を含むことを特徴とする塗装材。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装材の製造方法であって、
前記エマルジョン系樹脂と水とを攪拌する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記木炭粉末と前記ブラック珪岩粉末とを加え、攪拌する第2工程と、を含むことを特徴とする塗装材の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程の攪拌時間は、前記第1工程の攪拌時間の5.5~6.5倍の長さであることを特徴とする請求項2に記載の塗装材の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程の後に、100メッシュの網に通す第3工程を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の塗装材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住空間を形成する室内で使用される塗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木炭粉末が吸湿性や吸放臭性等を有すること、ブラック珪岩がアンモニアやホルムアルデヒト等の有害物質を含む気体を吸収・分解することが知られている。
【0003】
そこで、エマルジョンポリエステルをバインダーとして、ブラック珪岩粉末と備長炭を配合してそれぞれの物理的乃至物理化学的特性を発揮させる塗装材と、エマルジョンポリエステル100部に対し、ブラック珪岩粉末約40~60部、備長炭粉末約80~100部を配合して成る塗装材の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1の塗装材及び塗装材の製造方法によれば、取扱い安全で環境にやさしく、分散性、経時安定性、塗膜性に優れた塗装材と、その製造方法を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-121497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、居住空間を形成する室内で使用される塗装材には、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能だけでなく、塗装後の塗装面において、均一な色に仕上がることが要求される。
【0007】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、均一な色に仕上がる塗装材及び塗装材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る塗装材の構成は、
(1) 居住空間を形成する室内で使用される塗装材であって、少なくとも、全体重量に対して、
バインダーとしてのエマルジョン系樹脂25~35重量%と、
木炭粉末25~30重量%と、
ブラック珪岩粉末5~6重量%と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
(1)の構成によれば、居住空間を形成する室内で使用される塗装材は、少なくとも、全体重量に対して、バインダーとしてのエマルジョン系樹脂25~35重量%と、木炭粉末25~30重量%と、ブラック珪岩粉末5~6重量%と、を含む。木炭粉末を含むことで、吸湿性や吸放臭性を有し、ブラック珪岩粉末を含むことで、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能となる。
【0010】
ここで、ブラック珪岩粉末の量が、従来技術のように、バインダーとしてのエマルジョン系樹脂の半分近い量であると、ブラック珪岩粉末がエマルジョン系樹脂の中で、部分的に固まりになったり、偏ったり、乾燥後に、ブラック珪岩粉末の色がまだらに塗装面に現れてしまう場合や、また、均一に分散されたとしても、全体的に色合いが暗くなり、仕上がりが不適切になる場合もあった。
【0011】
本発明によれば、ブラック珪岩粉末の量を、全体重量に対する重量%で、エマルジョン系樹脂の約1/5程度に抑えたことで、ブラック珪岩粉末がエマルジョン系樹脂の中で分散しやすくなり、塗装後の塗装面において、適切な色に仕上がる。したがって、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、適切な色に仕上がる塗装材を提供できる。
【0012】
(2) (1)に記載の塗装材の製造方法であって、
前記エマルジョン系樹脂と水とを攪拌する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記木炭粉末と前記ブラック珪岩粉末とを加え、攪拌する第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
(2)の構成によれば、第1工程において、エマルジョン系樹脂と水とを攪拌した後に、木炭粉末とブラック珪岩粉末とを加え、攪拌する第2工程を行う。これにより、エマルジョン系樹脂を水と攪拌し、流動体を形成し、この流動体に木炭粉末とブラック珪岩粉末とを加え攪拌するので、よりブラック珪岩粉末がエマルジョン系樹脂の中で、部分的に固まりになってしまったり、偏ってしまったりすることを防止できる。したがって、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、適切な色に仕上がる塗装材を提供できる。
【0014】
(3) 前記第2工程の攪拌時間は、前記第1工程の攪拌時間の2.5~3.5倍の長さであることを特徴とする。
【0015】
(3)の構成によれば、エマルジョン系樹脂と水とを攪拌する第1工程の2.5~3.5倍の長さで、木炭粉末とブラック珪岩粉末とを加え、攪拌する第2工程を行うので、エマルジョン系樹脂を水とが攪拌された流動体において、十分に木炭粉末とブラック珪岩粉末とを攪拌できる。これにより、よりブラック珪岩粉末がエマルジョン系樹脂の中で、部分的に固まりになってしまったり、偏ってしまったりすることを防止できる。したがって、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、適切な色に仕上がる塗装材を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、均一な色に仕上がる塗装材及び塗装材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態における塗装材の製造方法のフローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
[塗装材の構成]
本発明の一実施の形態における塗装材の構成について説明する。
【0020】
本実施形態に係る塗装材は、エマルジョン系樹脂と、水と、消泡剤と、木炭粉末と、ブラック珪岩粉末と、を含む。
【0021】
塗装材は、例えば、総重量153kgを製造する場合の配合は、
エマルジョン系樹脂45kg(全体重量に対して、約29重量%)、
水59kg(全体重量に対して、約39重量%)、
消泡剤0.5kg(全体重量に対して、約0.3重量%)、
木炭粉末40kg(全体重量に対して、約26重量%)、
ブラック珪岩粉末8.5kg(全体重量に対して、約6重量%)、
となる。
なお、上記配合は、一例であり、塗装材は、少なくとも、全体重量に対して、エマルジョン系樹脂25~35重量%、木炭粉末25~30重量%、ブラック珪岩粉末5~6重量%となる範囲で変更してもよい。
【0022】
エマルジョン系樹脂は、例えば、水分散型高分子ポリエステル樹脂であり、水分散性を有し、塗膜乾燥により形成された被膜は耐水性を有する。水は、精製水を用いるのが望ましい。消泡剤は、例えば、非反応性シリコーンオイル(例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル)であり、塗膜調整剤としても機能する。
【0023】
木炭粉末は、例えば、備長炭を粉末状にしたものである。木炭は、周知のように、吸湿性、吸放臭性、防虫性、マイナスイオン効果を有する。
【0024】
ブラック珪岩粉末は、例えば、シリカブラック(登録商標)等のブラック珪岩を粉末状にしたものである。ブラック珪岩は、先第三系黒色硬質泥岩類中の断層破砕部に産出し、炭素含有率数%の黒色物の通称で、二酸化珪素を主成分とする。その物理的特異性として、常温にして高放射率の中間赤外線(波長4μm~14μmの生育光線)を放射し、その生育光線波長域の電磁波は、生体に様々な好影響をもたらし、水のクラスター(重合)を切断したり、植物・種子中の低分子物質の重合を切断したり、不飽和脂肪酸の二重結合を切断したりすることが、最近の研究成果で明らかにされ、さらに、特許文献1に示されるように、サルモネラ菌、赤痢菌、チフス菌等の病原菌や、アンモニア、ホルムアルデヒト、硫化水素等の気体を吸収・分解することも確認されている。
【0025】
[塗装材の製造方法]
本実施形態における塗装材の製造方法について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における塗装材の製造方法のフローを説明する図である。
ステップS1において、攪拌機の攪拌用容器に、エマルジョン系樹脂と、水と、消泡剤と、を上記の配合で、投入する。
【0026】
ステップS2において、ステップS1で攪拌用容器に投入したエマルジョン系樹脂・水・消泡剤を、30分攪拌する。このようなステップS1及びステップS2の工程は、第1工程である。
【0027】
ステップS3において、ステップS2で30分攪拌した後、攪拌用容器に更に、木炭粉末と、ブラック珪岩粉末と、を投入する。
【0028】
ステップS4において、ステップS3で攪拌用容器に、更に、木炭粉末・ブラック珪岩粉末を加えた状態で、180分攪拌する。すなわち、ステップS4の攪拌時間は、ステップS2の攪拌時間の6倍である。なお、ステップS4の攪拌時間は、気温、湿度等の環境に応じて、S2の攪拌時間の5.5~6.5倍の範囲に設定してもよい。このようなステップS3及びステップS4の工程は、第2工程である。
【0029】
ステップS5において、攪拌を続けながら、攪拌用容器内の攪拌されている材料を抜き取る。このとき、100メッシュの網に通すことが望ましい。このようなステップS5の工程は、第3工程である。この抜き取られた材料が、塗装材となり、流通用の容器に封入される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、建築物、飛行機・船舶、車両等の床下、内壁などにおいて、吸湿性や吸放臭性、有害物質を含む気体を吸収・分解する性能を発揮することが可能であり、塗装後の塗装面において、均一な色に仕上がる塗装材及び塗装材の製造方法を提供することができる。
図1