(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】防犯装置
(51)【国際特許分類】
E05B 13/00 20060101AFI20230220BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20230220BHJP
E05B 17/20 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
E05B13/00 Z
E05C3/04 C
E05B17/20 D
(21)【出願番号】P 2021170523
(22)【出願日】2021-10-18
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】507122537
【氏名又は名称】株式会社日本リフレッシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】坪 則雄
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3115235(JP,U)
【文献】特許第6253537(JP,B2)
【文献】特許第3714034(JP,B2)
【文献】特開2011-080200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 13/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受部材および前記受部材に差し込まれる差込部材を備えるクレセントと、扉本体部の内側面と隙間が形成されるように前記受部材が設けられた第一扉と、前記差込部材が設けられ、前記第一扉より内側に配置された第二扉とを有する引き違い扉の内側に設置される防犯装置であって、
前記引き違い扉が閉じた状態で、少なくとも一部が前記隙間に入り込んで、前記第一扉の外側から前記受部材を遮蔽する位置と、前記第二扉の開閉ができる位置を移動でき
、板形状を備えている遮蔽部材
と、
前記遮蔽部材が前記第一扉に近づいたり、前記第一扉から遠ざかったりできる前記遮蔽部材の通路部材と、
を有
し、
前記遮蔽部材が前記第一扉に近づいたとき、前記遮蔽部材の先端が曲がって前記隙間に入り込む防犯装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記遮蔽部材の先端が前記隙間に入り込んだ状態で、前記第一扉の内側で前記遮蔽部材を固定する遮蔽固定部材をさらに有する防犯装置。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記引き違い扉が閉じた状態で、前記第一扉の内側で前記第一扉に装着されて前記第一扉および前記第二扉が開くのを妨げる板状の嵌込部材をさらに有する防犯装置。
【請求項4】
請求項
3において、
前記第一扉に装着された前記嵌込部材を固定する嵌込固定部材をさらに有する防犯装置。
【請求項5】
受部材および前記受部材に差し込まれる差込部材を備えるクレセントと、扉本体部の内側面と隙間が形成されるように前記受部材が設けられた第一扉と、前記差込部材が設けられ、前記第一扉より内側に配置された第二扉と、閉じた状態で前記第一扉と前記第二扉を囲む扉枠
とを有する引き違い扉の内側に設置される防犯装置であって、
前記引き違い扉が閉じた状態で、少なくとも一部が前記隙間に入り込んで、前記第一扉の外側から前記受部材を遮蔽する位置と、前記第二扉の開閉ができる位置を移動できる遮蔽部材と、
少なくとも一部が、前記扉枠の少なくとも一部に沿って設けられた枠部材
と、
を有し、
前記枠部材に支持されることによって、前記引き違い扉の内側に設置される防犯装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかにおいて、
前記第一扉および前記第二扉の内側に設けられ、前記第一扉および前記第二扉の外側から見える被表示物が設置される表示部材をさらに有する防犯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、引き違い扉が破壊されてクレセントが開錠されるのを抑制する防犯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓が破壊されてクレセントが開錠される空き巣の手口が知られている。これを防ぐために、引き違い窓の外側に格子を設ける、クレセントより防犯効果が高い鍵を引き違い窓に設ける、または引き違い窓に複数の施錠機構を設けることなどが考えられる。しかしながら、格子、防犯効果が高い鍵、または複数の施錠機構を引き違い窓に設けると、引き違い窓のコストアップを招く。また、クレセントが設けられた既存の引き違い窓を改造して、格子、防犯効果が高い鍵、または複数の施錠機構などを設けるのは容易ではない。クレセントを備える既存の引き違い窓が設置された環境を活かしつつ、空き巣が侵入する意欲を失い、かつ引き違い窓が破壊されること自体を防げるような防犯装置の出現が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、このような事情に鑑みてなされたものであり、空き巣などの侵入者の侵入意欲を低下させる防犯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の防犯装置は、受部材および受部材に差し込まれる差込部材を備えるクレセントと、扉本体部の内側面と隙間が形成されるように受部材が設けられた第一扉と、差込部材が設けられ、第一扉より内側に配置された第二扉とを有する引き違い扉の内側に設置される防犯装置であって、引き違い扉が閉じた状態で、少なくとも一部が隙間に入り込んで、第一扉の外側から受部材を遮蔽する位置と、第二扉の開閉ができる位置を移動できる遮蔽部材を有する。
【発明の効果】
【0005】
本願の防犯装置は、引き違い扉の外側から見ると、遮蔽部材によってクレセントが覆われた状態にすることができる。このため、この引き違い扉から侵入するのに時間がかかると侵入者は考え、侵入者が侵入を断念する可能性は高くなる。したがって、本願の防犯装置によれば、侵入者が引き違い扉から侵入することと、引き違い扉が破壊されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】実施形態の防犯装置の第一位置での遮蔽部材およびその周辺部材の上面模式図。
【
図4】実施形態の防犯装置の第二位置での遮蔽部材およびその周辺部材の上面模式図。
【
図5】実施形態の防犯装置の第二位置での遮蔽部材およびその周辺部材の内側正面模式図。
【
図6】実施形態の防犯装置の嵌込部材およびその周辺部材の上面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願の防犯装置について、図面を参照しながら実施形態に基づいて説明する。なお、図面は、防犯装置、防犯装置を構成する部材、および防犯装置の周辺部材を模式的に表したものであり、これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略し、同一部材には同一符号を付与することがある。
【0008】
図1は、本願の実施形態の防犯装置10を内側正面から模式的に示している。防犯装置10は引き違い扉12の内側に設置する。
図2は、
図1のII-II線での防犯装置10と引き違い扉12の断面を模式的に示している。引き違い扉12は、クレセント14と、第一扉16と、第二扉18と、扉枠19を備えている。引き違い扉12は、網戸または障子などを含めて、三つ以上の扉を備えていてもよい。
【0009】
第二扉18は第一扉16より内側に配置されている。第一扉16、第二扉18、または引き違い扉12の内側または内側方向とは、第一扉16、第二扉18、または引き違い扉12を境界として、クレセント14を操作する側またはその方向をいう。第一扉16、第二扉18、または引き違い扉12の外側または外側方向とは、第一扉16、第二扉18、または引き違い扉12を境界として、これらの内側または内側方向と反対側または反対側方向をいう。
【0010】
クレセント14は、受部材20と、受部材20に差し込まれる差込部材22を備えている。すなわち、差込部材22の回動等によって、差込部材22が受部材20に差し込まれた状態になると、引き違い扉12はクレセント14によって施錠される。一方、差込部材22の回動等によって、受部材20に差し込まれていた差込部材22が受部材20から抜け出た状態になると、引き違い扉12はクレセント14によって開錠され、第一扉16および第二扉18は開閉できるようになる。受部材20は、第一扉16の扉本体部の内側面16aと隙間24を形成するように第一扉16に設けられている。差込部材22は第二扉18に設けられている。
【0011】
本実施形態では、第一扉16および第二扉18は、透明または半透明のガラス製の窓である。すなわち、第一扉16および第二扉18は、扉本体部である板状のガラスGと、このガラスGを周囲で挟むように設けられ、ガラスGより厚いサッシとも呼ばれる框(かまち)Sを備えている。第一扉および第二扉では、ガラスGに代えて、樹脂、木材、紙、または有機無機複合材などを使用してもよい。防犯装置10は、筐体Hと、遮蔽部材30と、遮蔽部材30の通路部材32と、遮蔽固定部材34(
図3参照)と、嵌込部材36と、嵌込固定部材38(
図6参照)と、枠部材40と、表示部材42を備えている。
【0012】
筐体Hは直方体状の形状を備えている。防犯装置10が引き違い扉12の内側に設置されたとき、引き違い扉12の内側方向および外側方向における筐体Hの側面は、「目」字を紙面で90°回転させたような3つの開口、すなわち中央開口部CP、左開口部LP、および右開口部RPが設けられた形状を備えている。遮蔽部材30は、2つの位置の間を移動できる。この2つの位置のうちの1つ(以下「第一位置」と記載することがある)は、引き違い扉12が閉じた状態で、遮蔽部材30の少なくとも一部が隙間24に入り込んで、第一扉16の外側から受部材20を遮蔽する位置である。
【0013】
第一扉16の外側から遮蔽部材30の少なくとも一部が受部材20を遮蔽するとは、第一扉16が透明で遮蔽部材30が不透明であるならば、第一扉16の外側の正面から受部材20を見たときに、受部材20が見えないように、遮蔽部材30の少なくとも一部が受部材20を覆うことをいう。この2つの位置のうちのもう1つ(以下「第二位置」と記載することがある)は、第二扉18の開閉ができる位置である。第二扉18の開閉ができるとは、第二扉18を任意の開閉位置に移動するときに、第二扉18が遮蔽部材30とぶつからないことをいう。
【0014】
図1に示すように、クレセント14の操作は、筐体Hの中央開口部CPから手を入れて行う。なお、筐体Hの左開口部LPと右開口部RPは、下記で詳しく述べる表示部材42を構成している。
図3は、防犯装置10のクレセント14、第一扉16、第二扉18、および第一位置での遮蔽部材30の位置関係を上面から模式的に示している。
図4は、防犯装置10のクレセント14、第一扉16、第二扉18、および第二位置での遮蔽部材30の位置関係を上面から模式的に示している。
図5は、防犯装置10の第一位置での遮蔽部材30とその周辺部材を内側正面から模式的に示している。なお、
図3から
図5では、嵌込部材36の図示を省略している。
【0015】
本実施形態では、遮蔽部材30は、折り曲げ可能な長方形の板形状を備えている。遮蔽部材30は、基部30aと、折り曲げられるように基部30aに接続された可動部30bと、可動部30bの先端に接続され、ゴムなどの弾性体から構成される先端部30cを備えている。本実施形態では、蝶番31によって基部30aと可動部30bが接続されている。遮蔽部材は、可動部30bを設けずに、基部と、基部の先端に接続され、弾性体から構成される先端部から構成されていてもよい。
【0016】
基部30aの上端と下端は、「コ」字を紙面で90°回転させたような断面を備える長いレール状の通路部材32,32にそれぞれ装着されている。すなわち、2つの通路部材32,32の溝に基部30aの上端と下端がそれぞれ嵌め込まれている。通路部材32,32に沿って遮蔽部材30を移動させると、遮蔽部材30が第一扉16に近づいたり、第一扉16から遠ざかったりする。そして、基部30aと重なるように折り曲げられていた可動部30bと先端部30cを引き違い扉12の外側方向に折り返して、基部30a、可動部30b、および先端部30cを平坦形状に近づけながら、通路部材32に沿って基部30aを引き違い扉12の外側方向に押すと、遮蔽部材30が第一扉16に近づき、遮蔽部材30の先端が曲がって、すなわち、先端部30cの少なくとも一部が曲がって隙間24に入り込む。
【0017】
さらに基部30aを引き違い扉12の外側方向に押すと、
図3および
図5に示すように、基部30aと可動部30bがほぼ直角に折れ曲がり、先端部30cの少なくとも一部が隙間24に入り込む。先端部30cの少なくとも一部が隙間24に入り込むと、第一扉16の外側から受部材20が遮蔽されるため、侵入者は、引き違い扉12に防犯措置が講じられている、および引き違い扉12から侵入するのに時間がかかると考える。その結果、侵入者が侵入を断念する可能性は高くなる。
【0018】
遮蔽固定部材34は、先端部30cの少なくとも一部が隙間24に入り込んだ状態で、第一扉16の内側で遮蔽部材30を固定する。より具体的には、遮蔽部材30が第一位置にあるとき、基部30aより引き違い扉12の内側で、ネジまたはピンなどの遮蔽固定部材34を筐体Hに装着し、遮蔽部材30が引き違い扉12の内側に動くのを妨げる。これに代えて、基部30a自体を通過するように、遮蔽固定部材34を筐体Hに装着してもよい。遮蔽固定部材34を設けることによって、侵入者の侵入をより抑制できる。遮蔽固定部材34を取り外し、通路部材32に沿って引き違い扉12の内側方向に基部30aを引くと、遮蔽部材30が第一扉16から遠ざかり、第二位置に移動する。
図4に示すように、遮蔽部材30が第二位置に移動したら、基部30aと重なるように可動部30bを折り曲げる。
【0019】
図6は、防犯装置10の嵌込部材36とその周辺部材を上面から模式的に示している。嵌込部材36は、長方形の板形状を備えており、引き違い扉12が閉じた状態で、第一扉16の内側で第一扉16に装着されて第一扉16および第二扉18が開くのを妨げる。本実施形態では、嵌込部材36は、第一扉16のガラスGの内側表面とガラスGの両側の框S,Sが形成する溝部(以下「第一扉溝部」と記載することがある)に装着される。この状態では、クレセント14が開錠されていても、第一扉16と第二扉18が開けられない。このため、仮にクレセント14の施錠を忘れても、侵入者の侵入を防げる可能性がある。
【0020】
本実施形態では、嵌込部材36は、蝶番37を介して筐体Hの上面に接続されている。嵌込部材36が筐体Hの上面に重ねられた状態(
図2参照)から、第一扉16の外側方向に嵌込部材36を180°回転すると、嵌込部材36が第一扉溝部に装着される。嵌込部材36が第一扉溝部に装着されると、嵌込部材36によって、第一扉16および第二扉18の開放が制限される。したがって、侵入者は、引き違い扉12から侵入するのにさらに時間がかかると考え、侵入者が侵入を断念する可能性はより高くなる。
【0021】
また、本実施形態では、ネジまたはピンなどの嵌込固定部材38を、嵌込部材36を介して筐体Hに取り付けることによって、嵌込部材36が第一扉溝部に装着された状態で、嵌込部材36が固定できる。このため、防犯効果がより一層向上する。なお、嵌込部材が第一扉16の内側と外側の相互方向に水平移動できるような通路またはガイドなどを設けて、嵌込部材を第一扉溝部に装着したり、第一扉溝部に装着された嵌込部材を非装着状態にしたりしてもよい。
【0022】
扉枠19は、引き違い扉12の枠体であり、引き違い扉12が閉じた状態で第一扉16と第二扉18を囲んでいる。枠部材40の少なくとも一部は、扉枠19の少なくとも一部に沿って設けられている。防犯装置10は、枠部材40に支持されることによって、引き違い扉12の内側に設置される。本実施形態では、扉枠19の下側に、「山」字状の枠部材40が設けられている。枠部材40に載せることによって、防犯装置10が引き違い扉12の内側に設置される。
【0023】
そして、枠部材40に防犯装置10が載せられたときに、防犯装置10が引き違い扉12の外側方向と内側方向に動かないように、枠部材40にガイド44が設けられている。このようにガイド44が設けられている枠部材40によって、引き違い扉12の内側で引き違い扉12に沿って防犯装置10を上から降ろせば、防犯装置10が引き違い扉12に容易に設置できる。また、防犯装置10を持ち上げることによって、防犯装置10が引き違い扉12から容易に取り外せる。
【0024】
表示部材42は、第一扉16および第二扉18の内側に設けられている、本実施形態では、
図1に示すように、表示部材42は、筐体Hで囲まれた左右の開口部LP,RPである。この開口部LP,RPは、第一扉16の内側方向と外側方向が透明カバーで覆われていてもよい。表示部材42には、第一扉16および第二扉18の外側から見える被表示物(不図示)が設置される。被表示物は、装飾的な物品でもよいし、例えば「防犯カメラ録画中」などを表示したシートのような機能的な物品でもよい。装飾的な物品を設置することにより、防犯装置の見た目の機能的な主張を和らげることができる。また、機能的な物品を設置することにより、侵入者が侵入を断念する可能性がさらに高くなる。
【符号の説明】
【0025】
10…防犯装置、 12…引き違い扉、 14…クレセント、 16…第一扉、 16a…内側面、 18…第二扉、 19…扉枠、 20…受部材、 22…差込部材、 24…隙間、 30…遮蔽部材、 30a…基部、 30b…可動部、 30c…先端部、 31,37…蝶番、 32…通路部材、 34…遮蔽固定部材、 36…嵌込部材、 38…嵌込固定部材、40…枠部材、 42…表示部材、 44…ガイド、 H…筐体、 G…ガラス、 S…框、 CP…中央開口部、 LP…左開口部、 RP…右開口部
【要約】
【課題】空き巣などの侵入者の侵入意欲を削ぐ防犯装置を提供する。
【解決手段】防犯装置10は、受部材および受部材に差し込まれる差込部材を備えるクレセント14と、扉本体部の内側面16aと隙間が形成されるように受部材が設けられた第一扉16と、差込部材が設けられ、第一扉16より内側に配置された第二扉18とを有する引き違い扉12の内側に設置される。防犯装置10は、引き違い扉12が閉じた状態で、少なくとも一部が隙間に入り込んで、第一扉16の外側から受部材を遮蔽する位置と、第二扉18の開閉ができる位置を移動できる遮蔽部材30を有する。
【選択図】
図1